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2010年7月8日 第58回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成22年7月8日(木)
17:00~19:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
岩谷委員   金澤委員   川越委員    桐野委員
佐藤委員   末松委員   高杉委員    西島委員
廣橋委員   福井委員   町野委員   南(裕)委員
南(砂)委員  宮田委員   望月委員   森嶌委員

○議題

1. 今後の厚生労働科学研究について
2. 平成21年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について
3. ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しについて
4. ヒト幹細胞臨床研究について
5. 平成22年度の政策評価について
6. その他

○配布資料

資料1-1今後の厚生労働科学研究について
資料1-2今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について
資料2-1厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成21年度報告書)(案)
資料2-1別紙厚生労働科学研究費補助金の成果表(平成21年度)
資料2-2厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
資料2-3厚生労働科学研究費補助金平成21年度個別の事業の概要
資料2-3別紙平成21年度採択課題一覧
資料3-1「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の改正等について
資料3-2「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」新旧対照表
資料3-3ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の改正案
資料4ヒト幹細胞臨床研究実施計画について
資料5平成22年度の政策評価について
資料6厚生労働省の研究助成等のあり方に関する省内検討会の設置について
資料7-1戦略研究新規課題フィージビリティ・スタディについて
資料7-2戦略研究の中間評価について
資料8遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成22年4月1日厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定)
参考資料3ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料

○議事

○坂本研究企画官
 傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意事項
をお守りくださいますようお願いいたします。
 定刻になりましたので、ただ今から第58回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたしま
す。委員の皆様には、ご多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。
 本日は井部委員、今井委員、橋本委員、松田委員、宮村委員からご欠席のご連絡をいた
だいております。少し遅れて見える先生もいらっしゃいますが、委員22名のうち、出席委
員が過半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことをご報告いたします。
 次に委員の変更についてご報告いたします。これまで委員をお願いしておりました木下勝
之先生が委員を辞任され、新たに社団法人日本医師会常任理事の高杉敬久先生にご就任いた
だいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。資料の欠落等がございましたら
ご指摘ください。議事次第に配布資料一覧があります。資料1-1「今後の厚生労働科学研究
について」、資料1-2「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について(案)」、
資料2-1「厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成21年度報告書)(案)」、資
料2-1別紙「厚生労働科学研究費補助金の成果表(平成21年度)」、資料2-2「厚生労働科
学研究費補助金研究事業の概要(平成21年度報告書)」、資料2-3「厚生労働科学費補助金
平成21年度個別の事業の概要」、資料2-3別紙「平成21年度採択課題一覧」、資料3-1「『ヒ
ト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針』の改正等について」、資料3-2「『ヒト幹細胞を用
いる臨床研究に関する指針』新旧対照表(案)」、資料3-3「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に
関する指針の改正案」、資料4「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」、資料5「平成22年
度の政策評価について」、資料6「厚生労働省の研究助成等のあり方に関する省内検討会の
設置について」、資料7-1「戦略研究新規課題フィージビリティ・スタディについて」、資料
7-2「戦略研究の中間評価について」、資料8は「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設から
の報告について」です。参考資料1は「厚生科学審議会科学技術部会委員名簿」、参考資料
2「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」、参考資料3は「ヒト幹細胞を用いる臨床
研究実施計画の申請に関する参考資料」です。
 そのほか委員の先生方には、厚生労働科学研究費補助金の成果の評価に関するご意見の記
入用紙を、一枚紙で、資料番号を付してないものですが、お配りしております。資料はよろ
しいでしょうか。
 それでは部会長、議事の進行をよろしくお願いします。
○永井部会長
 それでは早速、議事に入ります。最初に「今後の厚生労働科学研究について」ということ
で、事務局より説明をお願いします。
○坂本研究企画官
 関係資料としては、資料1-1、資料1-2、資料2-2、それから資料6「厚生労働省の研究助
成等のあり方に関する省内検討会の設置について」を用いてご説明いたします。
 まず前回の科学技術部会以降の動きについてご報告、ご説明いたします。資料6「厚生労
働省の研究助成等のあり方に関する省内検討会の設置について」を先にご覧ください。1頁
に趣旨などがありますが、厚生労働省の研究助成等について、交付先・事業選定の適切性を
高める方策や、研究成果の施策等の連動性の確保のあり方などを検討して、もって、研究助
成等に関する予算の適正な運営等に資するものとするため、大臣の指示によって、この検討
会が省内に設置されております。
 主な検討事項としては、「交付先等の選定の適切性を高める方策」、「研究成果の施策への
連動性(反映)の確保及びその評価のあり方」、「その他助成事業の適正な運営の確保に関す
ること」となっております。検討会の構成員については2頁にあります。こちらは厚生労働
省内部の検討会ということで、事務局は厚生科学課が担当しております。
 3頁に「主な検討の視点(たたき台)」があります。1は「交付先選定や事業内容の適切性
を高める方策」、2は「政策との連動性(反映)の確保・評価・公表のあり方」、3は「その
他」として、「適正な執行の確保等のための取り組み、研究の戦略・重点化等を適切に判断
できる仕組み」といった課題を示しています。
 4頁からは参考資料となっており、最後の13頁に「今後の厚生労働科学研究について」
という、こちらの部会におけるご議論も参考資料として付けております。
 6月2日に第1回の会合を開催しており、大臣からは、客観的にどういう評価を得て、ど
ういうふうに政策形成に役立っていくのか、省としてのチェックポイントを設けて評価して
いくということ、実態把握能力が重要であるが、人文科学についての研究が少ないように思
われるということ、実態把握に資するような評価がなされる指標作り等が望まれるといった
ご発言がありました。こちらの検討会については、現在、省内で検討を進めているところで、
早い段階にとりまとめを行いたいと考えているところです。
 戻りまして、資料1-1は前回ご審議いただき、この部会として(案)をとってとりまとめ
ることとされたものです。前回の議論の結果を踏まえた修正箇所としては、2頁の真ん中辺、
プログラムディレクター/プログラムオフィサーに関する三つ目の○の文章について、議論
を踏まえた修正をしております。また、3.の評価についてですが、最初の○の2行目の、専
門家の後ろのところに、「当該研究の対象となる現場の関係者を含む」という括弧書きを付
けて、そういう方も、ここでいう専門家であるということを記載しております。そういう修
正で(案)をとって本日お配りしています。
 資料1-2は「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について(案)」ですが、
前回のご議論で、一番下の●で、評価研究という表現がございましたが、別の表現の方が良
いというご指摘があり、今回の資料ではご議論を踏まえて「『技術評価・政策評価に関する
研究』も重視する」という表現に修正しております。
 今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について、ご議論していただくための材
料、現在の状況に関する資料として、本来は次の議題のための資料ですが、資料2-2をご覧
いただければと思います。厚生労働科学研究費補助金の研究事業については、毎年度その成
果の評価を当部会にお願いしております。本日もこの次の議題で前年度の評価をお願いする
わけですが、これまでは資料2-2と2-3を一つの資料としておりましたものを、今回は研究
費の全体の概要を資料2-2として、個別事業の方を資料2-3と分けました。今後、こちらの
部会においては、概算要求前の評価や平成23年度の公募要綱などのご審議もお願いするわ
けですが、平成21年度における厚生労働科学研究費補助金研究事業の全体像ということで
資料2-2を用いてご説明します。
 1枚めくったところから制度の概要の説明があり、もう1枚めくった2頁に厚生労働科学
研究費の経緯があります。その下から、行政施策研究、厚生科学基盤研究、疾病・障害対策
研究、健康安全確保総合研究の厚生科学研究の4分野についての説明、予算額の割合を示し
ております。今回は3頁に平成18年度からの割合のデータも示しております。
 3頁を見て頂きますと、平成18年度から平成20年度までの総額は大体同じ規模です。平
成18年度から平成19年度にかけて、疾病・障害対策研究分野の割合が52%から55%に増
え、健康安全確保総合研究分野の割合が少し減少しているという動きがあります。
 平成21年度は、2頁に戻りますが、こちらは平成20年度よりも総額が1割少し増えて、
分野毎の割合としては疾病・障害対策研究分野が61%と増えています。難病関係の研究費
が100億円に増額された影響が大きいものとなっています。こちらの割合が増えたこともあ
って、健康安全確保総合研究、厚生科学基盤研究の割合が3~4%下がっております。
 通して見ますと、行政施策研究分野の割合は金額的には3%程度で、厚生科学基盤研究分
野は3割程度から3割弱ぐらい、健康安全確保総合研究分野が1割強から1割弱といったと
ころで、疾病・障害対策研究分野は5~6割となっています。
 4頁は、課題設定と公募の関係、予算額と採択件数の推移のデータです。4頁の図3-1に
ありますように、予算額については400億円強で数年推移してきたわけですが、平成21年
度に484億円と増額されています。
 5頁の図3-2にありますように、採択件数についても1,400課題程度で推移して、課題数
の絞り込みの方向が、平成18年度以後、少しあったわけですが、平成21年度は研究費が増
額された影響もあったと思われ、1,548課題の研究を実施しております。これまでのご議論
では研究課題数については、むしろ絞るという検討課題も示されておりますが、研究費が増
えますと課題数も増える傾向があるような感じです。
 5頁の下の方に各研究事業の予算額に占める割合(平成21年度)を示しております。生
活習慣病・難治疾患克服総合研究が28%、先端的基盤開発研究が14%、臨床応用基盤研究
が13%、感染症対策総合研究が13%、第3次対がん総合戦略研究が12%ということで、こ
の五つで大体80%を占めることになります。
 6頁に金額ベースでの各金額階層の研究費予算全体に占める割合の図と研究費額階層毎
の採択課題数のグラフを示しています。1,000万円~3,000万円台が4割以上を占め、500
万円以上2,000万円台までの課題が採択数の2/3近くを占めています。
 7頁の一番下の行に記載がありますが、全体を平均しますと、1課題当たりの研究費額は、
間接経費を含めて約2,800万円となります。
 7頁の真ん中辺の図ですが、厚生労働科学研究費の対象範囲が幅広いこともあって、研究
事業によって平均研究費の額は相当異なってきております。平均でみますと、2,000万円ぐ
らいまでの事業が過半を占めています。
 8頁に申請と採択の状況がありますが、後ろの方に少しまとめた表があります。12頁にこ
れまでの取組について、平成21年度の公募より若手研究については年齢制限を39歳以下と
したことや間接経費の拡充等についてこちらに整理して記載しております。
 13頁には申請と採択の状況があります。新規課題についての採択率は33.2%、継続課題
については99.3%となっております。
 15頁からは参考資料で、各研究事業毎の状況です。こちらの集計が指定研究も含む形で
しかできておりませんので、公募の倍率というわけではありません。申請件数と採択件数の
比がそのまま公募の倍率にはならないのですが、それを前提に比較してみますと、3の先端
的基盤開発の再生医療、医療機器開発、8の生活習慣病・難治性疾患の真ん中の腎疾患対策
といったところが採択件数に対して申請件数が多い状況です。件数で見ますと、難治性疾患
のところが申請件数的には一番多いといった状況です。
 16頁は各研究事業の論文数、学会発表件数等のデータをまとめたものです。各分野で状
況がかなり異なりますので、相互比較するのは難しく、また、あまり意味もないのではない
かと思われますが、それぞれの分野について、論文等を数量化した情報を見ても、各分野と
もそれぞれ成果が上がっている状況と考えております。
 次回の当部会については、来年度の研究事業に関する評価、概算要求前の評価をお願いす
る予定です。本日いただいたご意見で次年度に向けて反映できそうなものはその方向で検討
したいと考えておりますし、また来年度には間に合いにくい課題、中長期的な課題について
も、当然検討させていただきますので、ご意見をよろしくお願いいたします。資料の説明は
以上です。
○永井部会長
 それでは、ただいまのご説明について、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。
○末松委員
 資料2-2ですが、厚生労働科学研究の補助金の研究事業の概要を示す数値として、数値
化しやすいものとして論文数や学会発表件数があります。厚生労働科学研究の全てが対応す
るわけではないと思いますが、臨床系の研究でEBMの件数とか、もう少し別の指標でいいも
のはないのかということについて、見解を伺いたい。この数字を見て、研究費が2,000万円
のわりには論文がよく出ているなとか、そういう見方をするデータではないと思います。要
は学会件数と原著論文の数で、本当に厚生労働科学研究の効果が出ているということがもっ
と言える別の指標がないのだろうかと思うのですが、そこはいかがですか。
○坂本研究企画官
 次の議題でも、資料の中では行政的なところの評価を重視ということは打ち出しておりま
す。そういったことは以前にもご指摘いただいていますが、通知に反映した件数、ガイドラ
イン作成に貢献した件数といった指標は、施策に反映というところにあるのですが、その1
件1件の重み等については、定性的な件数以上のものが今はできていなくて、改善できない
かと考えてはいるのですが、現状、こういう整理以上のことが、今はできていないというと
ころです。
○福井委員
 その点について、全ての研究に当てはまるわけではないのですが、臨床研究では、少なく
ともエビデンスレベルという考え方があります。エビデンスレベル1の研究とか、エビデン
スレベル3の研究という意味のランク付け、評価はできると思います。レベルの高いエビデ
ンスを出さない限り誰も臨床的に応用しようとしないし、ガイドラインに取り込まれること
もほとんどないわけです。
 ただ、全体的には、そのようなレベル付けができるような研究がどのぐらいあるのか、分
からないという気はします。
○宮田委員 
 それに関連して、いつもここで議論をする場合に頭を整理したいと思っているのは、文
科省が医学系の研究にも資金を提供しているのですが、その辺の仕分けというか、仕分けと
いう言葉は適当ではありませんが、区別というか、そういったものを考えたときに、厚生労
働科学研究費の特徴として、例えばトランスレーショナルな臨床研究をどのぐらいサポート
しているのかという指標を別の形でご提示いただけると、もう少し文科省の基礎医学的な研
究と、厚生労働科学研究費が支援している研究の特徴というのがよくつかめるようになるし、
皆さんも外に説明しやすくなるのではないかと思います。
 私自身の個人的な思惑としては、国家が臨床研究あるいは臨床試験に対して、もっと積極
的に資金を投下すべきだと思っています。そのような別の角度からこの予算を切っていただ
いて、今年はどのぐらいがそういった試験に投入されたのだという指標を出していただける
とありがたいと思います。これは希望です。
○坂本研究企画官
 先生が今ご指摘になったのは、例えば、どのような切り口を想定されていますでしょうか。
○宮田委員
 例えば、この場合には医薬品の開発とか、診断薬の開発を具体的にイメージしています。
あるいは医薬品の適用拡大でもいいのですが、この厚生労働科学研究費を使って、実際にそ
ういうもののエビデンスを確保するような研究に、この研究費はどのぐらい投下されている
のかという形で、マウスとか、前臨床レベルの研究費と区分けして集計していただけると見
えやすくなるかと思います。これはかなり難しいことなので、たぶん分野も限定されると思
いますが、そのような指標もあれば、国民にも説明しやすいと思います。
○三浦厚生科学課長
 今日の資料の2-2の1頁目、先ほど飛ばしてご説明したところですが、厚労科学研究費の
特徴というのは、研究が施策につながっていくことであり、それはひいては国民の健康や福
祉の向上に役立つことがポイントなのだろうと思っています。
 文部科学省が行っているのは、一つは学問の追求、それは知の創造ということでもあるか
もしれません。基礎研究は文部科学省、臨床研究は厚生労働省という仕分けは決してないの
ではないかとも思いますが、文部科学省の科学研究費は一般的には基礎研究が中心なのはご
指摘のとおりです。いずれにせよ、この指標として、特にガイドラインなどについては学問
的に高いレベルというよりも、むしろこれが全国に普及して、より多くの方々の健康を作っ
ていく、あるいは生命を助けることにつながってくるということや、ガイドラインを書いた
から、インパクトファクターの高い論文としてピュアレビューのある雑誌に載るわけではな
いということもご案内のとおりですので、私どもも非常に悩みながら、どのように客観的な
評価ができるのかと考えております。ややもすると主観的なものも多くなりますが、ご指摘
のように、できる限り、エビデンスから施策へというところが評価されるような手法を考え
ていきたいと思います。
○廣橋部会長代理
 厚生労働省の研究助成などのあり方に関する省内検討も進んでいるようですが、厚生労働
省で行われる研究だけではなく、他の省で行われている研究との間の連携、あるいはその役
割の違いをどう合わせて大きな成果を上げていくかといった視点での議論も、是非お願いし
たいと思います。
 先ほど厚生科学課長が、文科省の行っている研究と、厚労省の研究の区別をおっしゃいま
したが、いま政府がイノベーションであるとか、成長戦略とかということで、出口に近い研
究をより強調されますと、他の省もますますそちらの方に研究の内容が向かっているように
見えるときがあるのです。ですから、決して中だけの議論ではなく、全体で連携して強力に
推進できる体制までも含めて、厚労省で議論していただけると非常にいいのではないかと思
います。
 総論的なことで恐縮ですが、ただ単に電子的方法で重複を避けることだけに止まらないで、
課題の設定のときに、もっとお互いが連携してやれるところにまで踏み込んでいただきたい
という希望を持っております。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。
○佐藤委員
 全然違う話ですが、資料2-2の5頁の図が一番よく出ているかと思いますが、労働安全衛
生総合研究の割合が0.3%ぐらいです。これはいかにも少ないのかなという気がするのです。
例えば、働く人たちの健康を守るという意味でも、現在などは生活習慣病みたいな方へ研究
の主流が行ってしまっているのかもしれません。何だか随分少ないなという気がするのです
が、理由みたいなものがあったら教えていただきたいと思います。応募してくる研究者の数
が非常に少ないということですか。
○坂本研究企画官
 元々小規模な研究でして、かつ先ほど廣橋先生からもご指摘があったのですが、政府全体
として、ここに取り組むといった内閣府などの打出しがあるような研究事業については、予
算獲得というときには、そういう流れというと言葉が良くないのかもしれませんが、そうい
う形での研究事業の構築がしやすいのですが、我が省の間口は広いため、そのような流れに
なっていない小規模な研究というのは、なかなか予算増は難しいということが、これまであ
ったことは認めざるを得ないのではないかと思っています。我々も、前にご説明しましたよ
うに、小さい研究というか、幅広い研究全体をできるだけ守るというか、必要性があるとい
うことを主張しているのですが、いろいろな意味で額を増やすという方向性にするためには、
さらにプラスアルファ、新しいものがないと、なかなか予算が付かないというのが、ここ数
年の状況で、そういったことも積み上がって、こうなったとしか説明のしようがないかなと
思います。
○三浦厚生科学課長
 厚生労働科学研究費の話としては、確かにそういう数字になります。一方で資料6をご覧
いただければと思います。5頁に厚労省の研究助成はさまざまな制度があって、いまご議論
いただいているのは、一番上にある厚生労働科学研究費の補助金472億円ですが、それ以外
にも2番目の国の試験研究機関によるもの、あるいは独法によるもの、委託によるもの、公
益法人が行うなど、さまざまな研究が行われています。
 資料6の5頁を見ますと、例えば、独法による研究費は、独法が自ら行う研究として4番
目に労働安全衛生総合研究所もありますし、その二つ下で、労災病院等を所管している労働
者健康福祉機構、そのほか労働政策研究・研修機構、高齢・障害者雇用支援機構、雇用・能
力開発機構等々、ここにいわゆる厚生労働科学研究費として現れてない研究助成の制度もあ
って、今回の省内検討会も、厚生労働科学研究費の中だけではなくて、これらを横串に刺し
て全体で見ていこうという考えですので、厚生労働科学研究費のみならず、全体としてのバ
ランスもあるのではないかと思います。
○永井部会長
 ほかにいかがですか。ご意見ございませんようでしたら、今後の主な研究課題等について
は、次回も引き続き議論することといたしますので、よろしくお願いしたいと思います。
 では、議事2にまいります。「平成21年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価につ
いて」です。既に一部の資料については、先にご説明いただいておりますが、続きましてこ
の件について、ご審議をお願いします。事務局よりご説明をお願いします。
○坂本研究企画官
 関連します資料は資料2-1、資料2-1の別紙、資料2-3及びその別紙です。それとご意見
記入の一枚紙もお配りしています。資料2-1が、この議題の中心となる資料です。ほかの資
料の説明を先にしますと、資料2-1の別紙は、各研究課題毎に報告された成果について、原
著論文数等のデータも含めて整理した資料となっています。資料2-3は、各研究事業毎に、
目的、予算、課題採択の状況、研究の成果等をまとめた資料です。研究の成果はできるだけ
分かりやすく、具体的な事例の要点を簡潔に示す方向で整理しております。こちらの方でも
論文等の数量化した指標も示しています。資料2-3の別紙は、平成21年度の採択課題の一
覧となっています。
 資料2-1をご覧ください。今回の評価の対象については、資料2-1の5頁の評価方法、上
の方にありますが、評価対象は厚生労働科学研究の各研究事業と平成21年度終了課題の成
果となっております。終了課題についは、6月16日時点でのデータを基礎資料としており
ます。
 8頁から「4.評価結果」となっており、9頁から各研究課題の記述的評価です。個別の評
価については時間の関係もありますので、かいつまんだ説明とさせていただきます。
 最初が?Tの<行政政策研究分野>となっており、9頁の下の(1-1)に「政策科学総合研究」
があります。こちらの評価については10頁の半ばに記載がありますように、近年、施策立
案において根拠(エビデンス)に基づくものであることが求められるということがあって、
厚生労働行政の企画立案、効果的推進のためのベースとして必要といった評価が記載してあ
ります。
 10頁の「(1-2)(a)地球規模保健課題推進研究」です。こちらについては11頁の上から5
行目ぐらいから、「今後も引き続き、体系的・戦略的な国際協力政策に資する研究を推進す
る必要がある」といったコメントを記載してあります。
 11頁の「(b)国際医学協力研究」です。我が国のみならず、アジア地域の人々の健康維持・
増進に寄与することが期待される疾病の原因・病態の解析や病原体の検査法の開発等の成果
があったという評価です。
 12頁の厚生労働科学特別研究事業では、新型インフルエンザ等における成果が行政に活
用されたこと等の評価が記載されています。
 13頁からは<?U.厚生科学基盤研究分野>となっています。(3)の「先端的基盤開発研究
事業」の(3-1)が「再生医療実用化研究」ですが、こちらについては、再生医療の安全性・
品質管理に必要なシステムの構築などが進められており、再生医療の実用化の推進に寄与し
ているといった評価が記載されています。
 14頁の(3-2)の「創薬基盤推進研究」は、「(a)ヒトゲノムテーラーメード研究」、「(b)政
策創薬総合研究」、「(c)創薬バイオマーカー探索研究」、「(d)次世代ワクチン開発研究」、「(e)
生物資源・創薬モデル動物研究」という五つの研究を含むものです。14頁のヒトゲノムテ
ーラーメードの最後に書いてありますように、こちらについては今後はバイオマーカー探索
研究に重点を移していくという方針が示されています。そのほかについても各研究の成果の
評価を記載しております。
 16頁、(3-3)の「医療機器開発推進研究」です。「(a)ナノメディシン研究」では、アルツ
ハイマー病の診断が可能な分子有機化合物の開発などの成果があったということ。「(b)の活
動領域拡張医療機器開発研究」では、長寿命型の人工股関節開発などの成果があり、「(c)
の医工連携研究推進基盤研究」では、循環器系シミュレーター技術を用いた外科訓練センタ
ーの創設のパイロットスタディの実施などの成果があったという評価です。
 17頁の「(4)臨床応用基盤研究事業」の「(4-1)の医療技術実用化総合研究」の(a)は治験
推進研究です。こちらでは治験環境の整備を行うとともに、医療上必要であるが採算性等の
理由により、企業等による治験が実施されにくい医薬品・医療機器の医師主導治験を行って
おり、22件の治験届を提出し、そのうち6品目については薬事法上の承認を取得したとい
うことで、十分な成果が得られているとの評価です。
 こちらの事業では18頁以降、「(b)臨床研究基盤整備推進研究」、「(c)基礎研究成果の臨床
応用推進研究」、「(d)臨床研究・予防・治療技術開発研究」、「(e)臨床疫学基盤整備研究」、
「(f)臨床研究支援複合体研究」が実施されておりまして、各研究の評価を記載しておりま
す。
 20頁から<?V.疾病・障害対策研究分野>です。21頁から(5)の「長寿・障害総合研究事
業」です。(5-1)の「障害保健福祉総合研究」では、ブレイン・マシン・インターフェース
の実用化に向けて臨床実証研究につなげる成果を得たこと等の評価があります。
 22頁の(5-2)の「感覚器障害研究」では、既存の気道補聴器が使えない難聴者が使用可能
な新たな補聴器の開発など着実な成果があった、という評価です。
 「(5-3)長寿科学総合研究」には、いくつか分野がありますが、「運動器疾患総合研究分野」
では骨粗鬆症治療が期待される新薬の研究など、介護予防の推進に資する成果があったとい
うこと、「老年病等長寿科学技術分野」では、褥瘡の病態に基づいた治療選択と予防に関す
る研究など、高齢者の生活の質向上への寄与が期待される成果が得られたということ、「介
護予防・高齢者保健福祉分野」では、24時間訪問看護・介護の効果的・効率的な実施方法
の開発研究などが行われたという評価があります。
 23頁の(5-4)の「認知症対策総合研究」では、認知症高齢者の家族介護者に対する支援マ
ニュアルの作成等が行われたことが評価されています。
 「(6)子ども家庭総合研究事業」では、どちらかと言えば社会医学的な研究に総合的に取
り組んでおり、課題間の連携が不十分などとの指摘があり、今後は戦略性を持って成育疾患
対策の強化・充実を図っていく必要があるといった評価が記載されています。
 24頁、「(7)第3次対がん総合戦略研究事業」では、がんの本態解明等の研究のほか、行
政的・社会的な研究等各種のがん対策に対して必要性・重要性の高い研究を推進し、着実な
成果を上げていると評価されています。
 25頁の「(8)生活習慣病・難治性疾患克服総合研究事業」です。26頁の「(8-1)循環器疾
患等生活習慣病対策総合研究事業」では、特定保健指導等の成功事例等を検討して、成功要
因を明らかにするなどの成果が上がったという評価です。
 「(8-2)腎疾患対策研究」は、平成21年度からの事業ですが、CKDの病態解明などについ
て、初年度の研究として一定の成果があったという評価になっています。
 27頁の「(8-3)免疫アレルギー疾患等予防・治療研究」では、生物学的製剤の投与により、
リウマチの寛解導入が期待できることが明らかになる等の成果があり、また移植医療分野で
はドナー及びレシピエントの症例登録と追跡制度の確立に向け、登録システムの試験運用を
開始するなどの成果があったという評価です。
 「(8-4)難治性疾患克服研究」では、130の希少難治性疾患について研究を実施しており、
さらに130疾患以外の原因不明の希少難治性疾患で、未だ実態が明らかでない疾患、177疾
患について、患者数など疫学情報の把握や疾患概念の検討を行い、一部の疾患については、
新たな治療法の可能性についても明らかにしたことなどが評価されております。
 「(9)感染症対策総合研究事業」は29頁から「(9-1)エイズ対策研究」となっております
が、エイズの医療体制の確立等に資する研究を行っており、着実な成果を上げているという
評価です。
 「(9-2)肝炎等克服緊急対策研究」では、治療効果に影響する宿主側及びウイルス側因子
の同定が進み、ペグインターフェロン及びリバビリン併用療法のより精度の高い治療効果予
測が期待される等の評価が記載されております。
 30頁の「(9-3)新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究」では、「インフルエンザ脳
症ガイドライン改訂版」の策定などの成果が評価されております。
 31頁、「(10)こころの健康科学研究」の精神分野では、認知行動療法の実施マニュアルの
作成などの成果があり、神経・筋疾患分野では、筋ジストロフィーの新たな治療法の開発を
進めるなど、今後の発展が期待されるといった評価が記載されております。
 33頁から<?W.健康安全確保総合研究分野>です。「(11)地域医療基盤開発推進研究事業」
では、医療制度改革に向けた基礎資料となることが期待される成果が得られているという評
価を記載しております。
 34頁の「(12)労働安全衛生総合研究事業」では、転倒事故が社会問題化している基礎工
事用大型建設機械の不安定化メカニズムの解明などの成果を上げているといった評価が記
載されております。
 (13)が「食品医薬品等リスク分析研究事業」です。35頁から食品の安心・安全確保推進
研究があり、こちらでは添加物の新たな安全性試験法の開発等の成果があったという評価で
す。
 「(13-2)医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究」では、最新の知見をも
とに、経口糖尿病薬などについて、実効性ある臨床評価ガイドラインを作成したことなどが
評価されております。
 36頁の「(13-3)化学物質リスク研究」では、動物試験削減にも資する新規試験法ガイド
ライン化のための検証などの成果があるといった評価が記載されています。
 37頁、(14)の「健康安全・危険管理対策総合研究事業」です。水安全対策に関しては、
研究により得られた知見を水道水質基準の逐次見直し等に反映させる等の成果があったと
いうこと、生活環境安全対策に関しては、建築物の用途別の維持管理の必要性等を明らかに
し、さらに、健康危機管理としての初動期医療の提供に関し、NBCテロ発生に対する医療体
制の改善などについて検討しております。全体として国民の健康保持をする上で、極めて有
用といった評価になっております。
 37頁までが記述的評価となっており、38頁から終了課題の成果の評価です。この次の頁
から定量的な指標となるデータの表もあります。原著論文等の発表状況を集計して、今回数
値が得られている583課題については、原著論文数は1万5,848件、その他の論文は7,512
件となっております。口頭発表等は2万5,213件です。
 39頁の右下の2番目の施策への反映の件数としては265件です。こちらは通知とかガイ
ドラインへの反映です。普及・啓発活動については2,792件あります。40頁には研究事業
ごとの1課題あたりの成果の平均値を示しております。
 41頁の5.「おわりに」では、終了課題に関する集計では1万5,000件以上の原著論文が
ある等、学術的な成果があったということ、施策への反映についても、終了課題に関する集
計で265件あったということを評価しています。最後から二つ目のパラグラフの終わりには、
研究成果が活用されるよう、成果の発表会の拡充等の取り組みも今後の課題と考えられると
いうことを記載しています。最後のパラグラフでは、今後は行政施策に反映できる成果に事
後評価の重点を置くべきであり、そういった観点から評価についての検討を今後も進める必
要があるということを記載しています。駆け足になりましたが、資料の説明は以上です。よ
ろしくご審議のほどをお願いいたします。
○永井部会長
 ご質問、ご発言がありましたらお願いします。
○福井委員
 38頁で終了課題の成果の評価にあたって、いろいろ考慮する点があることが指摘されま
したが、例えば研究費100万円あたり論文いくつとか、研究費1,000万円あたり論文いくつ
という出し方も可能ではないかと思います。それから、分担研究者何名あたりいくつの論文
が出たかという評価も可能ではないかと思いました。
○坂本研究企画官
 かなり作業的に時間がかかりそうなところもありますが、やる意味があるのであれば、次
回から取り組みたいと思います。先生がおっしゃっているようなお話だと、同じ領域内の比
較検討は比較的いいかと思いますが、それを出しても、領域を越えた比較は非常に難しいと
ころが、こういう全体像としての比較を、こういう形で整理したときに悩ましいなと思って
いるところです。臨床研究など研究分担者が相当多い場合、数字ですので、やってみないと
分かりませんが、そういうことも考えてみないと、評価が悪くなる指標となるかもしれませ
ん。一つのご提案として少し検討はしてみたいと思います。
○金澤委員
 別件ですが、実は先日、総合科学技術会議でアクションプランを立てる中で議論が出てき
たものの一つに、健康食品の話がありまして、大変困ったのです。厚生労働省として、この
厚生労働科学研究費の中で、健康食品についてある程度きちんとしたサイエンティフィック
なことを研究することをお考えいただくことはできないものでしょうか。突然変なことを申
しますが、私も突然変なことを言われて非常に困ったのです。
○坂本研究企画官
 既にそれをやる分野としては、本日の資料2-1では(13-1)の食品の安心・安全確保推進研
究のところで、一部取り組みをしているものがあります。その他、国立健康・栄養研究所で
も、そういった健康食品関係はやっております。過去には、当省の研究で、健康食品に使わ
れている成分の毒性試験等もやっていたことがあったかと思います。
○金澤委員
 謳い文句を含めて、毒性ではなくて有効性なのです。ここに明示的に書いてないので質問
した次第です。
○永井部会長
 例の特定保健用食品とか、そういう問題になるわけですね。
○金澤委員
 はい。
○西島委員
 今の金澤先生のと関連することですが、政策創薬総合研究というのがあります。これは
HS(Human Science)財団が実際には担当しているのですが、HS財団では以前は医薬品に加え
て食品の分野もあったのです。ところが、現在は政策創薬ということで、薬だけになって、
食品の部分がなくなってしまいました。私たちの研究所では食品に関する研究も非常に多い
のですが、その中でそれがなくなってしまって、非常に不満があります。金澤先生がおっし
ゃったようなことも、HSに従来あったようなところでカバーしていけばいいという非常に
強い希望があります。
○福井委員
 いつ終わったか忘れたのですが、私は、3年間厚生労働科学研究費をいただいて、統合医
療のエビデンス関係の研究をやらせていただきました。その中にサプリメントも入れていた
のですが、方法論的に有効性評価というのが本当に難しくて、一応報告書は書いたのですが、
どのような切り口で今後評価していったらいいのかが、なかなか見出せなかったというのが
正直なところです。
○金澤委員
 そういう亡霊がいまでも出てくるのです。実を申しますと、それの扱いに非常に困るので
す。曖昧ではなく、国としてもう一回きちんとした指針を作るべきではないかと思っている
ものですから申し上げました。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。事務局も是非、ご検討いただきたいと思います。
○三浦厚生科学課長
 特に健康食品の有効性については、食品の表示ということと非常に深い関係があります。
現在、食品の表示については、消費者庁に所管が移っておりまして、消費者庁と連携しなが
ら、国立健康・栄養研究所が研究や調査を行っているというスキームになっているというこ
とを付け加えさせていただきたいと思います。
○永井部会長
 ほかにありませんか。
○西島委員
 記述のミスかも分からないと思ったのですが、39頁の一番下の「健康安全・危機管理対
策総合」で、集計課題が19で、施策への反映が35になっているのです。ところが、これを
40頁で見ますと、施策への反映の件数が平均すると0.9になっているのですが、割ると0.9
にならないのです。
○坂本研究企画官
 申し訳ございません、元のデータをたどって検算して、修正します。
○宮田委員
 同じ39頁の表をさっきから眺めていたのですが、特許というのは、確かにいま各省庁に
役に立つような研究をやれというプレッシャーがかかっていますから、これはこれで意味を
持つと思うのですが、本当にいい特許を出しているかどうかというのは、ライセンスアウト
できたかどうかということになると思うのです。これはいまの指標ではありませんが、やは
りトラックレコードをきちんととっていただいて評価しないと。出願だけは誰でもできます
ので、そこはこれだけだとちょっと問題だと思います。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。まだご意見はあろうかと思いますが、時間の関係もありますので、
とりあえず今日はこの議論はここまでにさせていただきたいと思います。お気づきの点があ
りましたら、7月15日(木)までに事務局にご連絡いただきたいと思います。本日のご意
見と併せてとりまとめを行い、最終的なバージョンは科学技術部会として改めて会議は開き
ませんが、その作業を部会長にご一任いただければと思います。是非、ご意見を来週までに
お寄せいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。もしご異議がなければ、
そのように進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしようか。ありがとうござい
ます。
 それでは、議事3にまいります。「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに
ついて」、ご審議をお願いしたいと思います。審査委員会の結果について、ご審議をいただ
くことになりますので、事務局より説明をお願いいたします。
○千村研究開発振興課長
 それでは、研究開発振興課からご説明いたします。資料3-1、資料3-2、資料3-3をご用
意いただきます。
 資料3-1「『ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針』の改正等について」の1にある
指針改正に至る検討の経緯についてですが、ヒト幹細胞を用いた臨床研究に関する指針は、
平成18年7月に公布し、同じ年の9月から施行されております。この指針の中において、
科学技術の進歩、あるいはヒト幹細胞の取り扱いに関する社会的情勢の変化等を勘案して、
必要に応じて見直しを行うものということが規定されています。この指針の公布がされた後
に、いま申し上げたような諸情勢の変化がありましたので、指針の改正が必要であろうとい
うことで、改正に向けて当部会に専門委員会を設置し、ご議論をいただいてきたところです。
 この議論に至る諸情勢の変化について簡単に申し上げますと、まず、臨床研究に関する倫
理指針の改正を平成20年7月に行っております。その後の諸情勢の中で、ヒトiPS細胞の
樹立があって、これによりiPS細胞を用いた臨床研究に対する期待が高まってきたという状
況があります。これについては総合科学技術会議において、平成20年7月に「iPS細胞研
究の推進について」というとりまとめがあります。この中で基礎研究、臨床研究の推進、ま
たそれに合わせたそのためのさまざまな環境の整備を進めるべきということで、とりまとめ
がされているところです。このような諸情勢の変化を踏まえて、昨年5月から今年の6月ま
で計12回にわたって専門委員会においてご議論をいただいてきております。一定のとりま
とめができておりますので、内容についてご報告したいと思っております。
 2の指針改正案の主な変更点についてです。指針の適用範囲ですが、病気やけがで失われ
た臓器や組織の再生を目的とするものを対象とするということを明記しております。また、
この次に申し上げますが、ヒト幹細胞等を疾病の治療を目的として人の体内に移植又は投与
する臨床研究を対象としたということです。
 次に、ヒト幹細胞等の定義ですが、ヒト幹細胞とは、自己複製能を持つもの、多分化能を
持つヒト細胞と定義するということです。この中には、ヒト胚性幹細胞、ヒト人工多能性幹
細胞、それぞれES細胞、iPS細胞ですが、それを指針の対象に加えたということです。な
お、iPS細胞を指針の対象とするにあたって、自己由来iPS細胞のみならず、他家由来iPS
細胞の臨床研究についても研究の対象とし得る方向で意見を取りまとめたということです。
 ES細胞について若干補足すると、資料3-3の8頁の上から3行目の細則ですが、「ヒト胚
の臨床利用に関する基準が定められるまでの間はヒトES細胞を用いる臨床研究は実施しな
いこととする」ということで、現状においては指針の対象としてES細胞を含めております
が、臨床研究の実施については、ここにあるような臨床利用に関する基準を定めるという条
件整備を待って、臨床研究が可能になるという指針の作り方をしております。
 資料3-1にお戻りください。1頁の下の方ですが、細胞の範囲を明確にしたということで、
?@~?Bを対象とするということです。
 2頁です。(3)のヒト幹細胞の調製についてですが、ヒト幹細胞等に対して最小限の操作、
人為的な増殖、細胞・組織の活性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作、非細
胞・組織成分との組み合わせ又は遺伝子工学的改変操作等を施す行為を調製と定義したとい
うことです。
 (4)ヒト幹細胞臨床研究の有効性と安全性についてですが、臨床研究を施行する際の留意
事項として以下の項目をまとめました。1点目はミニマムリクワイアメント、品質管理シス
テム、汚染の危険の排除といったものです。2点目として、調製工程に用いるフィーダー細
胞からのウイルス感染に対する配慮です。次に研究体制ですが、この中には、治療に関わる
研究者だけではなく、基礎研究等のさまざまな領域にわたる研究者が連携した体制を整備す
るということです。また、基礎研究段階からさまざまな方々との意見交換に努める。基礎研
究を含めた研究成果について広く公開する、周知を図るという点に留意をするということで
す。有効性の証明についてですが、投与する細胞の有効性が動物実験等によって十分期待さ
れる、あるいはその作用機序も明らかにされていることが必要だということです。安全性に
対する配慮として、造腫瘍性の懸念がある場合には動物実験を適切に行うこと、目的外の細
胞の混入を避けること、投与する細胞の特異性に対応した個別の評価方法を定めること、想
定し得る合併症の危険性を明らかにして、それぞれ予防策と対応策を定めること、投与後は
長期の経過観察を行うこと、常に技術の進歩を研究に反映させるように努めることの定めを
しました。
 (5)研究体制についてですが、研究機関あるいは研究責任者、研究機関の長といった研究
に関わる方たちのさまざまな責任、あるいは連携を明確にしたところです。
 (6)ヒト幹細胞の採取、調製あるいは移植又は投与についてですが、これについては1点
目として感染症の伝播、不適切な調製等による不良調製物の発生、さらには不適切な調製物
の取扱い、あるいは使用による問題の発生といったものを防止する必要があるということで、
採取、調製、投与又は移植まで一貫した方策が必要であることを明確にしております。2点
目は、ヒト幹細胞に由来する感染症の伝播等の危険性を完全には排除し得ないおそれがある
ということで、十分な検討を行った結果、他の治療薬や治療法と比較して同等以上の有用性
が期待されるときに研究が実施されるべきものであるということです。3点目は、治療法の
ない致死性もしくは障害性の高い疾患等に対して、新規性の高いヒト幹細胞を用いる臨床研
究実施計画を立てる場合には、用いられるヒト幹細胞の特性あるいは有用性の評価に関して、
その時点での学問・技術の限界といったものがありますが、この指針に従って、迅速かつ適
正に臨床研究が推進されることが期待されるということを述べております。
 その他の点ですが、「臨床研究に関する倫理指針」の改正に伴い、研究計画等々について
は適切にデータベースに登録すべきこと、臨床研究に伴って被験者に健康被害が生じた場合
の補償等については、必要な措置を義務付けたということです。専門委員の検討委員会の結
果は以上のような内容です。
○永井部会長
 ありがとうございました。ただいまの説明についてご質問、ご意見がありましたらお願い
します。
○廣橋部会長代理
 iPS細胞を含めた新しい治療法を開発していくときには、対象とする疾患の致死性のよう
な、どのような難しい症例を対象とするかということと、有効性と安全性とのバランスを取
って着実に進めることが重要なのだろうと思います。それが書いてあるのですが、これを具
体的に進めるときに、一つずつ積み上げていくことになるのかなと感じて読みました。こう
は書いたけれど、実際に運用していくときには、大きな課題ではないかと思います。
 もう一つは、これは表現の問題なのですが、場所によって「ヒト幹細胞等」と「ヒト幹細
胞」と書いてあって、そこがきちんと整理されているのかどうか分からないところがあるの
です。いま説明された資料3-1では、2枚目に「ヒト幹細胞の調製について」とあって、そ
の次の説明の中では「ヒト幹細胞等」となっているのです。場所によってその二つがあるこ
とが気になったので、そこは確認していただければと思います。
 また、ヒト幹細胞等の対象として、「採取時にすでに分化しているヒト細胞に関して」と
いう項目がわざと設けてあるのは、何か特別な意味があるのでしょうか。
○研究開発振興課
 1点目に関しては、安全性と有効性のバランスをどのように取っていくのかとのご質問で
す。これは一つ一つの研究をしっかりと審査する過程、またはデータを集積・確認する過程
で、おそらく事務局ともども審査委員が、それぞれの審査において成長しながらやっていく
べきであろうと認識しております。
 二つ目のご懸念ですが、これは確かになかなか分かりづらいところがあるかと思います。
まず、「ヒト幹細胞」と「ヒト幹細胞等」の違いについてご説明します。「ヒト幹細胞」とい
う言葉は、定義にありますように、自己複製能と多分化能を従来持っている細胞です。「ヒ
ト幹細胞等」という意味はだいぶ広がっております。1頁にありますが、先ほどのヒト幹細
胞やそれを豊富に含む集団、もしくはそういった細胞を調製した、何らかの加工を加えたも
の、採取時は分化細胞であっても、それを調製したもの。この3点、加工していない幹細胞、
加工した幹細胞、加工した分化細胞といった、最終的にヒトに投与するものを全部含めて、
「ヒト幹細胞等」と定義しております。
○金澤委員
 大変慎重にいろいろ議論なさったことはよく分かりますし、先ほど廣橋先生がおっしゃっ
たように、実際に応用していくにはまだ相当大きなバリアがあることは分かるのですが、二
つほどこのままではいかがなものかと思う点についてお話します。
 一つは全体を通して、例えばiPSのことで言うと、iPSは日本で開発されたものですので
非常に大事ですし、下手なことが起こって潰れては絶対に困るわけです。そういう意味で、
まず行われるべきことは、自己由来のiPS細胞の自己への導入を実行して、それをうまく活
かすのが最初なのではないかと私は思っているのです。もちろん、その前にはin vitro
でのiPS細胞をうまく使って、薬物スクリーニングなど大きな進展を示してもらいたいと思
っています。ここでは自己由来のみならず、他家由来についても研究の対象とし得る方向で
というのが少し分かりにくい。他家は他家なりの問題がないわけではないと思うのです。そ
の辺はもう少し議論していただければと思っています。
 理由は、ご承知と思いますが、iPS細胞はある意味では歴史をなくした細胞です。細胞と
しての過去の歴史をすべて圧縮して、ゼロに戻してご破算にしているわけです。そういう細
胞の寿命が一体どうなのかとか、そういうことは当然ながらベーシックな問題ですから、山
中さんをはじめ、みんな一生懸命やっていらっしゃる最中なわけです。ですから、ここはも
う少し議論して欲しいというのが一つです。
 もう一つは、これが難しいところなのですが、いまこの時点でこういう臨床研究指針を世
に出すということになると、当然対象になるであろう患者たちは非常に期待されるわけです。
もちろん、期待されるのは当然だと思いますし、山中さんたちもそのために研究されている
わけですが、それが実現に至るためにはとてつもない時間がかかるのだということを、どこ
かできちんと明言すべきなのではないかと思います。あたかも1年や2年のうちにこれが実
現するような思いを抱かせるのは、過剰な期待を持たせることになりかねないと、私は臨床
家として非常に気になります。その辺をご考慮いただければと思います。
○永井部会長
 その点については、私がこの委員会を預っていたものですから、少しご説明しますが、当
初は自己を原則として、ただ他家を妨げるものではないとのことでした。自己移植にしても
他家にしても、とにかく安全性が最優先されないといけないということ、また、実際iPS
細胞のゲノム解析の話も参考人からお聞きしましたが、かなりの頻度でゲノムのリアレンジ
メントが起こっているということもあって、相当安全性を重視しないといけないということ
は、委員全員が認識していたところだと思います。
 ただ、その安全性の確認の仕方で、自己移植だから安全、あるいは他家だから危険という
ことも、必ずしも言えないところもあるという意見も出まして、書きぶりとしては原則とし
て自己ではなくて、自己も他家も同一線上にあると。しかし、安全性に相当厳しく対応しな
ければいけないということは確認した上で、現在のような表現になっているということです。
ですから、この辺をどのように考えるか、もう少し委員の先生方のご意見を伺いたいと思い
ますが、いかがでしょうか。
○宮田委員
 この件についてiPSの研究者と随分議論したことがあるのですが、二つの点で他家を是非
とも認めていただきたいということで、研究者たちの意見はそうだなと思ったことがありま
す。一つは、適用する疾患によっては、自家由来のものを用意していても間に合わない可能
性があるということです。もう一つは、安全性の面で細胞のキャラクタリゼーションが、先
ほどのゲノムの解析もありますし、エピゲノムの解析もありますが、徹底的に他家でやって
バンキングして、HLAを揃えたものを50種類ぐらい取って、日本国民を80%ぐらいカバー
できる細胞バンクを用意するという意見もあります。徹底的に安全性を評価した細胞を供給
する方が、ひょっとしたら。自家でどんなiPSができるか分からない、非常に大きなバリエ
ーションがありますので、それを適用するよりも、どちらが安全かは今のところ科学的に言
えないのではないかという意見もあり、私もそうではないかと思っているわけです。そうい
う意味では、臨床研究の場合、安全性の確保と有効性の確保の両方を睨んでいくと、片方の
自家だけをいま認めていて、他家の方を遅らせるという科学的な理由はあまりないのではな
いかと、私は個人的に思っています。
○永井部会長
 いかがでしょうか。しかし、安全性をとにかく気をつけないと、何か事故があったときに
再生医療全体に大きな影響が出ると思います。そこは全員が認識していたところですので、
そこが十分伝わらないまま過剰な期待を社会に与えるのも、気を付けないといけないところ
だろうと思います。金澤委員のおっしゃるのはそこだろうと思いますが、事務局から何か意
見はございますか。
○千村研究開発振興課長
 まさに今の先生方のご議論のようないろいろな考え方もあろうかと思いますし、もう少し
ご議論をいただければと思っております。
○金澤委員
 宮田委員がそのようにおっしゃったので追加しますが、確かにおっしゃるとおりの部分が
あるのかもしれません。しかし、これは対象に何を考えるかによるのです。最も期待されて
しまっているのは、自分の細胞ではどうにもならない患者さんたちです。自分の細胞ではも
ともと病気になる要素を持っておられるから、その細胞を使ってもしょうがないではないか
という意味なのです。それこそ先の話なのです。いまそれを議論すべき時ではないと、私は
思うのです。そういう期待を抱かせることに、私は賛成ではないという意味です。
○川越委員
 全くの門外漢で、的外れな質問になるかもしれませんが、先ほどの話を伺っていると、宮
田委員がおっしゃっていたのは、いわゆるバンクみたいなものを設けて、安全供給できるよ
うな体制まで踏み込んだらいいのではないかという考え方だという理解でよろしいでしょ
うか。そうしますと、現在、遺伝子操作を加えた機能を持った細胞が、どの段階でどのぐら
い安全かというのは、はっきり保証はされているのでしょうか。
○永井部会長
 まだ、とてもそこまではいっておりません。
○川越委員
 では、そこをしっかり押さえないと、応用ばかりが先走ると危険ではないかという気がし
ます。
○永井部会長
 もちろん、他家に使用するにしても、安全性は十分担保された上でという条件はついてお
りますので。
○川越委員
 ヒトES細胞を用いる臨床研究は当面しないというお話がありましたが、それはまだ臨床
応用に関する基準が定められていないからだということだったと思います。臨床利用に関す
る基準は、いまどの辺りまで進んでいるのでしょうか。班会議、あるいは何かそういう検討
会が出ているのか、もし分かったら教えていただきたいというのが一つです。
 もう一つ、こういう基準とか指針が出たときに、ものによって法的な罰則規定みたいなも
のを考えなければいけないことがあるのではないかという気がするのです。その点について
はご議論されているのでしょうか。その2点を教えてください。
○千村研究開発振興課長
 ES細胞の件ですが、先ほど申し上げたヒト胚の臨床利用に関する基準については、もう
少し具体的に申し上げますと、ES細胞は受精胚から作るわけですが、その場合の作成の方
法とか、その関係で配慮すべき事柄、これは科学的、倫理的なものも含めて、臨床研究のた
めに作る場合に配慮すべきことをきちんと決める必要があるということです。具体的に検討
がどうなっているかというご質問ですが、これから検討を始める状況です。
 罰則については、基本的に指針という性格から、罰則はそもそも想定できません。
○川越委員
 というのは、臨床研究よりも臨床応用が先に進むようなところもありますので、その辺の
規制も考えておく必要があるのではないかと考えております。
○永井部会長
 実際には、研究を始めるときには審査委員会を経ないといけませんので、そこでかなりの
ことはチェックできるのではないかということでしたが。
○川越委員
 生殖医学の分野で、応用の方は進んでしまっているところがあります。これはここの議論
とは違うかもしれませんが、私はその点を気にしております。
○宮田委員
 1点は、指針が確定するとなると、一番問題なのは、この指針を皆さんがきちんと理解し
て、研究を準備して、審査会でも迅速に問題点を指摘して、そのプロトコルを練り直すよう
なコミュニケーションがうまくいくことだと思うのです。この指針案を一生懸命読んでも、
実は分からないところがいっぱいあって、Q&Aを充実させる必要があるのではないかと思う
のです。例えば、安全性及び有効性が確立されている、一般的に行われている医療行為は適
用の範囲外だと書いてありますが、骨髄移植などではそうなのかというのは容易に推定でき
ますが、ひょっとしたら幹細胞がコンタミしているかもしれない皮膚にグラフトを移植した
ときはどうかとか、細かいことで分からないことが多いと思うのです。そのために、もう少
しQ&Aみたいなものを充実させていただかないと、審査そのものが難しくなってしまって、
せっかくこれだけの指針をお作りになったのに、また1年も審議にかかるとか、悪評嘖々に
なってしまう可能性があります。啓蒙も含めてですが、Q&Aを是非充実させていただきたい
し、どうやって皆さんがご説明なさるのかも確認したいと思います。
 もう1点は、7頁の対象疾患のところで、「ヒト幹細胞臨床研究の対象は、病気やけがで
失われた臓器や組織の再生を目的とするものであること」と明記したことは評価します。一
方で、先ほどから議論しているように、安全性を確かめるためだけに臨床研究を行う場合だ
ってあると思うのです。例えば、かつて遺伝子治療の研究のときに、NIHの初期の研究は全
部マーキングした細胞がどこに行くかをトラッキングするだけでしたね。これを果たして治
療目的とする研究と読み替えることができるのか、当然それがまず主流になると思いますか
ら、読み替えなければいけないと思うので、Q&Aでそれを明確にして欲しいと思っておりま
す。だから、ここは治療及び安全性を確認するみたいなことを入れておいてもいいのかもし
れないと思っております。
○千村研究開発振興課長
 今の宮田委員のご指摘は、トータルで言うと、実際にこれを運用するにあたって、それぞ
れ細部にわたるところまで研究者の皆さんにもご理解いただくようにする必要があるとい
うご指摘と、実際に研究計画を審査する場合には、迅速に審査をする必要があるという2
点に集約できると考えられます。そのいずれについても、実際に運用する段になれば、我々
の方で対応するように検討を進めて、対応したいと思っております。
○宮田委員
 ありがとうございます。大いに期待しています。ただ、一つ言い忘れましたが、これは5
年で改定すると後ろの方に書いてありますが、この5年が適当か。もし研究のスピードが速
いとすると、3年とする案もありますし、5年をそのままで置いて、Q&Aみたいなもので研
究の進展に対応するという次善の策を考えるとか。
○永井部会長
 これは「必要に応じ、又は施行後5年」ということで、ES細胞の状況によっては、半年
や1年後の改定ということはあると。そういうことでよろしいですね。
○宮田委員
 分かりました。それは了解です。
○千村研究開発振興課長
 それはそのとおりです。
○宮田委員
 3番目の質問で、治療目的以外のマーカー細胞などの臨床研究も、この治療を目的とする
研究だと明記したことと矛盾しないということだけを、議事録に残しておきたいです。
○研究開発振興課
 確認なのですが、それは健常人に対してということではないですね。
○宮田委員
 遺伝子治療のときには、必ずしも健常人に対してだけではなかったと思います。対象の患
者に対しても、同じようなことが行われていたと思います。
○研究開発振興課
 今回の委員会の議論の中では、何か疾患のある被験者に対して、細胞を移植又は投与する
ことに限定するというまとめになっております。安全性を確認するとしても、疾患を持って
いる患者でなければ、研究の対象になり得ないという議論でした。
○宮田委員
 その意味で治療目的という言い方をしたのですか。
○金澤委員
 それを含めて、私たちは臨床研究と呼んでいるつもりなのです。薬の開発の場合もそうで
す。フェーズによりますから、当然含んでいると思います。
○桐野委員
 現在行われている再生を目的とした動物研究の中には、動物実験の範囲内では、A群とB
群の間で効果があるように思われますが、それが再生かどうかが非常に不明確なものがあり
ます。つまり、再生が起こっていることによって効果があるものなのかどうかが、よく分か
らないと。しかし、A群とB群を比べると、どうもA群の方がよさそうだという研究があり
ます。
 そのような研究においても、患者の症状を改善するために再生医療を促進するべきだとい
う研究者がいるわけですが、この「対象疾患等」の1を見ると、他の治療に比べて優れてい
ると動物実験では予測されるけれど、再生を目指してはいるけれど、それが再生なのかどう
かよく分からない段階では、どう考えればいいのかがよく分からないのです。
○永井部会長
 そうですね。例えば、実質細胞の再生を目指したら間質細胞が増えてきて、それが症状を
改善することは十分にあり得るわけです。
○桐野委員
 その場合はある意味の再生ですから、それがきちんと科学的に証明できるのなら、なぜだ
か分かりませんが、再生ではありますね。それも分からないという研究もありますね。
○千村研究開発振興課長
 今ご指摘の点ですが、一つは先ほどご説明した3-1の2頁の中ほどの「有効性の証明」の
ところにありますように、有効性が動物実験等によって十分期待される、作用機序も明らか
にされているということです。個々の技術についてどう評価するかは、また個々の技術ごと
の議論になろうかと思いますが、ここがきちんと明らかになっていることが、基本的な考え
方としては求められるということで考え方が整理されております。
○宮田委員
 桐野委員に補足しますと、いままでの臨床研究で幹細胞を、これは骨髄が多いのですが、
ブスブス筋肉に打って血管を再生したという場合があります。それは別にその細胞から増え
て血管ができたのではなくて、その細胞はリンフォカインとか成長因子が充填されたバック
として機能していて、幹細胞の本来の機能ではない効能で組織再生が起こった場合どうなの
かという議論だろうと思うのです。この指針を見ると、投与された幹細胞が臓器になって再
生するというイメージの指針だと思うのですが、実は間接的な効果が臨床で随分出てきてし
まっていて、実際に細胞が生着していないのだけれど、血管再生みたいなものが起こるとい
う例もあるのです。だから、その辺が確かに難しい定義にはなると思います。
○森嶌委員
 私は医学的なことは全く分からないのですが、この分野は国際競争がものすごく激しいと
ころです。日本として将来的に勝っていかなければいけない分野であろうと思っております。
これから具体的に進めるときに、先ほど廣橋先生もおっしゃいましたように、たくさんいろ
いろな問題が出てきて、なかなか結論が出せない状況が出てくるのではないかと思います。
いろいろな所が審査をなさるときに、できるだけスピードを上げて審査をしていただいて、
あとのフォローをしっかりウオッチングできる体制を国としても是非作るべきであろうと
思っております。これから進めるにあたっては、そういったところをお願いしたいと思いま
す。
○永井部会長
 まだご意見はあろうかと思いますが、引き続き次回の科学技術部会でもご議論いただきた
いと思います。今日ご意見がありましたように、この指針の位置づけや改正のこともありま
すが、特に安全性の強調の仕方の辺りはお時間をいただいて、次回さらに詰めたいと思いま
す。
 よろしいでしょうか。それでは、そのようにさせていただきます。
 それでは、議事4にまいります。「ヒト幹細胞臨床研究について」ですが、岡山大学病院
の申請については5月28日に厚生労働大臣より諮問され、6月4日に部会に付議されており
ます。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の申請は、6月3日に厚生労働大臣より諮問され、
6月7日に当部会に付議されております。事務局よりご説明をお願いします。
○研究開発振興課
 「ヒト幹細胞臨床研究について」、資料4を用いてご説明します。
 ヒト幹細胞臨床研究の指針に基づいて申請された「ヒト幹細胞臨床研究実施計画につい
て」、今回新たに諮問・付議が行われた申請2件についてご報告します。今回新たに申請さ
れた岡山大学については、1頁に諮問書、2頁に付議書があります。平成22年5月28日付
で諮問されております。3頁に申請書、4頁に本実施計画の概要があります。
 研究課題名ですが、「機能的単心室症に対する自己心臓内幹細胞移植療法の第?T相臨床試
験」です。対象疾患は、機能的単心室症由来の小児心不全となっております。心修復術を行
う症例が対象となるということです。外科手術時に心筋組織を採取し、細胞調製センターに
て心臓内幹細胞を精製、培養します。術後1カ月後に、心筋内幹細胞を心臓カテーテルによ
り冠動脈内に注入し、移植します。本研究計画は、対象症例数は7症例、主に安全性の評価
を主要エンドポイントとする第?T相試験です。
 5~6頁に要旨があります。機能的単心室症というのも馴染みのない言葉ですが、こちら
の解説があります。この疾患は、小児期に頻回な手術が必要とされ、長期予後が不良である
ということで、治療法の開発が望まれております。本臨床研究の申請内容としては、前臨床
試験として、ブタのモデルに心筋内の幹細胞を注入したという成果が別に述べられておりま
す。
 引き続き、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科からの申請、「末梢動脈疾患患者に対する
G-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験」です。16頁に諮問書、17
頁に付議書があります。平成22年6月3日付で諮問されております。18頁に申請書、19頁
に研究実施計画の概要があります。
 この研究の対象は、既存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患となっております。すでに、本臨
床研究は別の施設からのプロトコルが部会で了承されております。多施設の共同臨床研究の
追加の参加施設となっております。簡単に概要をご説明しますと、G-CSF皮下注射から4日
目に自己末梢血を採取し、アフェレシスにより単核球を採取、末梢動脈疾患患肢に筋肉内注
射し、末梢血管の再生効果を見るものです。先ほどの案件のときに宮田委員がご指摘された
ように、これは再生医療の一部と認識されております。
 本研究は、用いる幹細胞、対象疾患としての新規性はありませんが、計21施設が参加予
定の多施設臨床研究で、いままですでに14施設が本部会で了承され、臨床研究を開始して
おります。なお、参考として、参考資料3に、ヒト幹指針への適合性が承認され、我が国で
実施されているヒト幹細胞臨床研究の一覧があります。1頁には、同じプロトコルで行われ
ている臨床研究が記載されております。
 こちらの2件の申請は、すでに永井部会長の了承を得て、先般7月6日に開催された「第
12回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」にて先行審議されていることをご報告しま
す。今後、審査委員会の議論を基に臨床研究計画がヒト幹指針に適合するように修正し、臨
床研究を推進していく予定となっております。以上、ヒト幹細胞臨床研究実施計画について、
新たな申請2件についてご報告しました。
○永井部会長
 ありがとうございます。少し分かりにくいところもあろうかと思いますが、最初の岡山大
学の申請については、非常に重篤な単心室症、心臓移植でしか救命できないような症例を対
象に研究を行うということです。一つの問題は、この研究者が最近京都府立大学から岡山大
学に異動してこられ、京都府立大学でも、つい最近幹細胞を使った心不全に対する治療研究
を申請して、開始したばかりだろうと思います。そういう意味では、その研究者が異動して
きて、岡山大学で同じように細胞ができるのかとか、その細胞の安全性等についていくつか
疑義が出されております。また、この疾患のモデルがないことも、一つ問題とされていると
いうことで、現在岡山大学に問い合わせをしているところです。
 もう一つの長崎大学が申請してきた研究については、度々この部会でもご報告しておりま
すように、札幌北楡病院が中心となって行っている末梢動脈の血管新生療法ということで、
おおむね問題ないと判断しております。以上追加いたしましたが、委員の先生方から何かご
意見はございますか。
 よろしいでしょうか。もしご異議がなければ、審査委員会でさらに論点整理をしていただ
いて、結論が出ましたら、またこちらでご審議いただくことにしたいと思います。
 それでは、「平成22年度の政策評価について」、事務局よりご説明をお願いします。
○坂本研究企画官
 資料5をご覧ください。平成22年度の政策評価についてご説明します。本日ご審議をお
願いしますのは、資料5の表紙の目次の二つ目と三つ目、「国立試験研究機関の適切かつ効
果的な運営を確保すること」、「厚生労働科学研究事業の適正かつ効果的な実施を確保するこ
と」の二つの事項の政策評価についてです。
 1頁は、「政策評価の枠組みについて」の資料です。政策評価は、各行政機関が所掌する
政策について適時に政策効果を把握し、必要性・効率性・有効性等の観点から、自己評価を
行い、政策の企画立案、政策に基づく活動を的確に行うための重要な情報を提供するもので
す。政策評価をいわゆるPDCAサイクルの中に明確に組み込み、実施することによって、政
策の質の向上や職員の意識改革などが進み、効率的で質の高い成果重視の行政が実現される
とともに、国民に対する行政の説明責任の徹底につながるということで、1頁の下の方に記
載がありますように、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」に基づいて実施されるも
のです。
 2頁の上に記載されているように、厚生労働省では、行政評価法に基づいて施策ごとに評
価を行い、その結果を予算要求等に反映させる政策評価を実施することになっております。
(3)の「有識者による評価内容のチェック」が本日ご審議をお願いする内容になりますが、
こういったことで施策の改善に結び付けようというものです。
 3頁ですが、下の方に政策評価制度の目的として3点あります。?@国民に対する行政の説
明責任を果たすこと、?A国民本位の効率的で質の高い行政を実現すること、?B国民の視点に
立ち、成果重視の行政を実現すること。上の図にありますように、各部局が政策を実施する
Do段階で、担当部局による現状把握の徹底等を行い、改善できるものはすぐに改善すると
いう、そういった小さなPDCAサイクルを回し、その次のチェックの段階で各施策ごとに評
価書の作成にあたって、有識者による評価内容のチェックを行うということになります。
 4頁に、「厚生労働省の使命と基本目標」を載せております。この基本目標の下の方のXI
の「国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること」に関する二つの事項が、本日の審
議の対象です。
 5頁からが、「国立試験研究機関の適切かつ効果的な運営を確保すること」に関する資料
になっております。6頁に政策体系図があります。施策の中目標として、「国立試験研究機
関の適切かつ効果的な運営を確保すること」があります。7頁に、各機関に関する施策小目
標があります。国立医薬品食品衛生研究所、国立保健医療科学院、国立社会保障・人口問題
研究所、国立感染症研究所の4機関の適正かつ効果的な運営を確保することが目標というこ
とです。8頁に、各機関の目的、事業、その概要があります。
 9頁は現状分析ですが、10頁に指標・目標値があります。10頁の表の上の方に、3年間で
平均3.5点以上といった指標・目標値を示しております。この指標は各試験研究機関で行っ
た研究課題評価の結果になります。13頁に国立医薬品食品衛生研究所の評価と今後の方向
性等の記載があります。15頁は国立保健医療科学院で、「良好」である3点を下回った事業
については、見直しを図る等の改善を行っている等の記載があります。 17頁から国立社
会保障・人口問題研究所で、今回は評点による評価ではなかったわけですが、次回の評価か
ら評点による評価を導入し、より客観的な評価がなされるように取り組む等の方針が記載さ
れております。19頁からは国立感染症研究所の評価です。20頁の「評価結果の施策への反
映の方向性」ですが、予算については、見直しの上、現状維持、機構・定員については増員
といった記載があります。
 22頁からは細かい内容の資料で、こういうものをベースにして先ほどのものを作成して
いるということです。
 39頁から、「厚生労働科学研究事業の適正かつ効果的な実施を確保すること」に関する平
成21年度のモニタリング結果の報告書となっております。先ほどと同様に、40頁に政策の
体系図があります。41頁に施策の小目標があり、研究評価体制を整備することということ
です。
 42頁が「モニタリング結果」です。こちらでは研究評価委員会を毎年度1回以上開催す
るという目標があり、それは達成しているという評価になっております。
 このものは今回初めてお願いするものですが、今後もこういう政策評価を続けていくこ
とになりますので、行政側が実施した自己評価の結果について、今後もこの部会でご意見を
頂戴していくことになります。資料の説明は以上です。
○永井部会長
 ありがとうございました。ご質問、ご意見はございますか。
○廣橋部会長代理
 点数で、この点以上であるから評価できるとするのは、あまりにも割り切り過ぎ。むしろ
点数による評価がどういう基準で評価されたのか、本当に目的に沿った研究が行われている
のか、研究の成果が出ているのか。そういうものがあった上でこうなっているのだろうとは
思うのですが、それが分かるような資料にしていただきたいと思います。
○坂本研究企画官
 今回は全ての研究機関が点数化されていなかったこと等もあり、初めてということですが、
19頁などを見ると、これは他の研究機関にも共通していますが、3点以上が「良好」という
ことで点数付けをしております。今後の評価にあたっては、ご指摘のような点数の意味等の
分かりやすい整理を検討いたします。
○宮田委員
 一つ質問ですが、この3.8とか3.7の差が一体何なのかが、我々には分からないのです。
確認したいのは、この点数は誰が付けているのかというのと、もう一つはよくあることです
が、いろいろな審査会でいくと審査会の雰囲気によって甘い審査会と辛い審査会があって、
点数の分布が異なることがあるのですが、そういったものはどのように反映されているのか。
つまり、自己評価であるとすれば、自己評価の甘い研究機関は評価が高まってしまう可能性
がありますし、審査会における評価のばらつきみたいなものも、バイアスとしてここに反映
されてしまうのではないかと思うのです。どうやって点数を付けているのかを教えてくださ
い。
○坂本研究企画官
 後ろの方にはそれぞれの事業ごとに、例えば35頁には国立医薬品食品衛生研究所の評価
がありますが、こちらについては自己評価ということでそれぞれ評点を付けていただいて、
平均でこの点数を出されていたと思います。政策評価は、あくまでまず自己評価を行い、そ
れについて有識者のご意見をいただく場としてこの場があるということで、今回初めてこれ
を持ち込んだということになります。点数自体は、自己評価と言ってもその機関で外部委員
にお願いした点数となっております。
○永井部会長
 ほかにいかがですか。
○廣橋部会長代理
 先ほど言ったことに続けてですが、たぶん点数の評価だけではなくて、そういう外部評価
委員による評価委員会では、現状の分析をしてどういう課題があるのか、それをどのように
施設としてフォローアップしたのかといったことのまとめもあって、点数も付いて報告がさ
れているのだと思うのです。そこまで見せていただくと、少し分かるのではないかと思いま
す。
○坂本研究企画官
 これまでも、各研究機関については3年に1回程度こちらの部会にご報告しており、基本
的にはそういった蓄積を今回点数化のところとに反映して実施しておりますので、全体の流
れが分かりやすいように、次回以降少し工夫したいと思います。
○金澤委員
 これでかまわないと思うのですが、8頁に機関の名称が書いてあって、目的が書いてあっ
て、事業が書いてあるのですが、国立感染症研究所のことを考えると、これは目的というよ
り使命なのですね。でも、そういうニュアンスがどこに出ているのかなと考えていたのです。
目的は目的なのだろうけれど、私は使命というか、国がどうしてもやらなければいけないと
いう使命を持っているというものだと思うのです。他がそうでないとは言いませんが、研究
所によってそれぞれ違いがあるわけで、その辺りをどのように今後考えていくべきかなと思
ったのですが、何かコメントがあったらお願いします。
○坂本研究企画官
 直接のお答えにはなっていないと思うのですが、こちらはたしか定まった様式として、こ
の政策評価の中で実施することになっています。先生がおっしゃっているのは、使命等につ
いて、文章的な所をもう少し工夫ということであれば、法令等の記載との整合等の問題はあ
るかとは思うのですが、その辺のことは次回以降はできると思いますが。
○金澤委員
 これはこれで結構ですが、全く横並びでいいのかどうかは今後の問題ではないかと思って
受け取ったという意味です。
○三浦厚生科学課長
 この目的はそれぞれの設置法に書かれた内容で、ある意味、先生方からご覧になると法律
用語で無味乾燥なものに見えるかもしれませんが、これらを受けてそれぞれの研究所がどう
自分たちの研究所を運営していくのか、あるいは研究を進めていくのかという部分が、おそ
らく使命ということと関係してくるのではないかと思います。
 したがって、法律に書かれたことをやっていれば、それが使命であるというよりも、もう
少し高い次元の精神的な意気込みを、おそらく金澤委員は期待されているのではないかと思
いますし、それは私どもから見ても、それぞれの研究所に対する期待としては同じだと思い
ます。どうすればそれが表現できるか、少し考えてみたいと思います。
○宮田委員
 もう一つ質問させてください。「アフターサービス室」というのを初めて伺いましたが、
これは今回の評点の中でも、機能した結果この評点が出てきたということですか。
○坂本研究企画官
 これは今後設置予定ということになります。
○宮田委員
 ですから、これがうまく機能すると、3点などというのは出てこなくて、平均4点になる
とか、要するに政策は非常にうまく遂行したことを保証できるかどうかが、来年これで確か
められるということになるのですか。ここの有識者は、自己評価を最終的に評価して評点を
付ける有識者とは重なってないのですよね。そこら辺はどうなのですか。
○坂本研究企画官
 一応別の委員会にお願いしているという形になっています。
○永井部会長
 ほかにご意見はありますか。もしありませんでしたら、この件はご了承いただいたことに
してよろしいですか。
 それでは、そのように進めたいと思います。あとは報告事項ですが、戦略研究に関する状
況の報告を事務局よりお願いします。
○三浦厚生科学課長
 お手元の資料7-1と7-2、この二つです。戦略研究はこの部会でもすっかりお馴染みにな
っていますが、今日はその中間評価などについてご報告を申し上げます。7-2をお開きくだ
さい。7-2の1頁に「戦略研究に関する経緯とスケジュール」があります。平成17年度か
ら戦略研究は始められているわけですが、今般、平成22年度当初に、一番下の所、腎疾患
戦略研究と感覚器疾患戦略研究の二つについて3年目が終わり中間評価を行いましたので
その結果を今日ご説明申し上げるというものです。
 3頁、「戦略研究の実施体制」がありますが、この中でちょうど上3分の1ぐらいの所に
オレンジ色で囲まれている「戦略研究企画・調査専門検討会」、これは政策研究大学院大学
の黒川先生が座長をされている検討会ですが、ここが下にあります実際の研究を行う団体に
対する支援としてモニタリング、助言などの役割を担っています。この中間評価は、オレン
ジ色の戦略研究企画・調査専門検討会が行ったものです。
 4頁、「中間評価における総合評価指標について」ですが、A、B、Cというのがあります。
Aは十分な成果が上がっている、優先的に取り組むべき。Bは一定の成果が期待できる、継
続して取り組む。Cは見通しに問題があり、中止を含めた研究計画の見直しが必要だという
ものです。このA、B、Cを今回付けていただいたというものです。
 5頁の「感覚器疾患戦略研究」ですが、二つの課題があり、課題1は聴覚障害児の療育に
ついての介入研究、課題2は視覚障害を持つ方々に対する介入、この二つが今回の要点です。
感覚器疾患の戦略研究のうちの1番目の聴覚障害児の療育ですが、7頁の右上にポンチ絵が
あります。症例対照研究を行って、どのような介入方法が考えられるのか、ここを検討した
上で右側の介入研究に入っていくということです。今回、聴覚障害児の療育に関する戦略研
究では、今年度までをかけてプレ介入を行い、平成23年度に介入研究を行うことを予定し
ているものです。
 8頁がその中間評価の結果です。研究の見通しということでは当初の目的の研究を行うこ
とは困難な状況であったとされています。しかしながら、疫学の専門家を配置する、また現
実的な研究計画に書き直す、そのためのプレ介入研究を追加する。これらによって期間内で
実現可能な研究内容とスケジュールが見込まれるということで、今回は研究継続を行うこと
にしてはどうかというものです。総合評価Bの4行目です。研究リーダーから、プレ介入の
状況を年内に検討会にご報告いただいて、それに基づいて再度評価をしていくということで、
今回は暫定的に前に進むことを認めるというものです。
 9頁は感覚器疾患の中でも視覚障害です。10頁をご覧いただきますと右側の上の方に、観
察研究と臨床研究を行い、それぞれ危険因子の解明等を踏まえて研究に入っていくとされて
います。この研究については、疫学的な研究と眼底写真の定量化まで行った段階で研究が事
実上中断している状況です。11頁にありますように、今回はこれらの疫学研究で、喫煙に
よる、特に加齢横斑変性症の発症との関係が明らかになりました。また、片眼から両眼への
発症率への関係などが示唆される結果が得られたわけではありますが、不透明な部分が多い
状況です。例えば、実施体制の整備が遅れている、介入手順書の準備ができていないなど、
スケジュールの遅延を指摘されたことがあります。再検討を検討会では求めたわけですが、
介入研究の早期着手が見込まれる十分な回答が得られなかったということで、総合評価はC
ということです。疫学調査については一定の評価を行っているところですが、戦略研究とし
てさらに進めることについては、それに対して中止をすべきだということで評価をいただい
ています。なお、この成果については、関係学会などを通じて国民への普及を図っていくべ
きという評価です。
 12頁、「腎疾患重症化予防のための戦略研究」については、慢性腎臓病患者に対する介入
ということです。14頁ですが、同じく右上の方に介入のスキームが書いてあります。研究
対象群を二つに分けて、介入A群とB群に分けます。A群、B群ともにCKD(慢性腎疾患)の
診療ガイドラインに則った治療を行っていただきますが、B群については3カ月ごとに生
活・食事指導、1カ月ごとに受診勧奨を行っていくというものです。
 15頁が結論です。上から2行目で、介入効果に関する科学的な検証を行うことは可能。
ただし、3年間の介入に対する暫定的な結果を出すだけではなく、最後まで終わるように努
力していただきたいということです。介入を行ったB群については、受診継続率が低くなっ
たということがありまして、しっかり調査を実施し、正確な症例数および中止に至った理由
等を分析することが求められるということがあります。これについては、この研究グループ
の中で倫理委員会にこの検証の場を置きまして、結論としては、中断された方々について不
利益にならないようにしっかりフォローアップして欲しいという結果が出ていると聞いて
います。総合評価はBで研究進捗は順調だということですが、先ほどの介入中止群について
の調査など、フォローアップは必要というのが評価です。
 このように戦略研究はなかなか予定どおりに進まない部分があります。次に、資料7-1
をご覧ください。これからの戦略研究については、フィージビリティ・スタディをまず入れ
ていくことをこの部会でも何度かご説明したところですが、今般、乳幼児の事故と周産期医
療の質と安全の二つの課題についてフィージビリティ・スタディの応募を行ったところです。
合わせて3件の応募がありましたが、一つの応募については辞退されたということがありま
して、残りの2件を採択しました。それぞれ研究者がいま決まった段階で、私どもとしても、
これらの研究者を支援しながら戦略研究がつつがなく本番に入っていけるように整えてい
きたいということです。以上、ご報告です。
○永井部会長
 何かご質問、ご意見はありますか。
○金澤委員
 全体は今よく分かりましたが、12頁の「腎疾患重症化予防のための云々」の「背景と経
緯」で血液透析療法は年間3万人を超えて、新しく入る人たちのことでしょうね、「増加傾
向を維持して」、それはいいのです。その2行目に「血液透析にかかる医療費は国民医療費
の5%」と書いてあるのですが、これは本当ですか?もし私の記憶が確かであれば、2008
年のデータですけれども、総医療費は34兆円で、決して慢性の血液透析だけではありませ
んが、いわゆる国費でカバーしている難病などを全部含めて1.何兆円のはずだったと思う
のです。それで5%というのは大き過ぎませんか。これだけを見たら、血液透析はこれほど
経費がかかっているのと思ってしまうから、正確にした方がいいような気がします。
○三浦厚生科学課長
 確認してみます。
○宮田委員
 二つ質問があります。一つは、たぶんこれは、フィージビリティが十分でない仮説に基づ
いて、介入方法を探っていくというところで、すごく時間を使ったから次の課題からはフィ
ージビリティ・スタディをやろうと、ここで解消されてくるとは思うのです。
 もう一つは、前にエイズの件で戦略研究がうまくいかなかったときに、その間に挟まって
いる研究実施団体、研究リーダー、研究機関との間のコミュニケーションがすごく悪かった
ことがあるのですが、財団法人テクノエイド協会とか、あるいは腎臓研究では、何か腎臓財
団から研究リーダーに移っているということもあるのですが、こういった中間に挟まった研
究実施団体のあり方に問題はないのですか。
○三浦厚生科学課長
 今後の戦略研究については、見直していきたいと考えています。果たして、こういう団体
を置くことがいいのかどうかということもあろうかと思います。実質的に研究が進むように
考えていきたいと思っています。
○川越委員
 腎疾患の重症化の予防の研究についてですが、これは中間報告ということですが、当初の
目標で数値目標が出ていますよね、5年後に15%、予測されるものを減らすということが。
これが実際にいまどうなっているかというデータはありますか。
○三浦厚生科学課長
 これは臨床研究の性格上、中間では結果を評価しないということにしており、結果は全部
の集計が終わってからというように考えています。
○川越委員
 戦略研究は、私は最初から実は危惧していたところがあるのですが、現場の感触みたいな
ものは、例えば減ってきたとか、そういう声は反映されているのですか。
○三浦厚生科学課長
 参加されている先生方からはそのような評価をいただいていますが、ディジタルな数字と
して何パーセントかということには至っていないということです。
○永井部会長
 よろしいですか。それでは、この件はご了承いただいたということにします。最後にその
他の報告事項ですが、「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、事務局
よりご説明をお願いします。
○坂本研究企画官
 資料8についてご説明いたします。遺伝子治療臨床研究につきまして、報告が2件ありま
す。1頁をご覧ください。1件目は、京都府立医科大学附属病院からの変更報告です。3頁
に変更の内容があります。一つは総括責任者以外の研究者の追加ということ、もう一つが患
者の選択基準の変更です。変更理由のところにありますように、好発年齢の患者を対象とす
ることで、当初「40歳以上75歳未満」を患者選択基準としていましたが、40歳未満の患者
さんからの問い合わせがあったこと等から、年齢の下限を40歳から20歳に引き下げるとい
うものです。
 3頁の上の方、審査委員会の開催状況及び実施計画の変更を適当と認める理由という欄に、
施設の審査委員会、その審査委員長のコメントがありますが、これは軽微な変更と判断した
ということです。本件については、内容について作業委員会の先生方にすでにご確認してい
ただいています。
 2件目です。5頁からですが、名古屋大学医学部附属病院から遺伝子治療臨床研究の終了
報告書が出ております。研究の課題名は、「正電荷リポソーム包埋ヒトβ型インターフェロ
ン遺伝子による悪性グリオーマの遺伝子治療臨床研究」で、脳実質内に発生する悪性グリオ
ーマを対象とする遺伝子治療臨床研究です。9頁の研究結果の概要及び考察、そこの冒頭に
記載されていますが、この研究の目標症例数は25例ということでしたが、悪性グリオーマ
に対する標準的治療法が大きく変化したため、この臨床研究の患者選択基準及び除外基準に
合致する症例がほとんどいなくなったということです。そのため、この研究について、最後
の患者登録からしばらく期間が空いているわけですが、その間、対象患者の選択基準及び除
外基準の変更や、研究期間の延長等の計画の変更など、種々検討されたということですが、
すでに実施した5例の段階で終了することにしたということです。
 10頁から研究結果がありますが、こちらの(4)にありますように、安全性については、本
治療と直接関係が疑われた合併症として脳浮腫と髄液貯留が認められましたが、いずれも重
篤なものではなかったということです。有効性については、5例中1例は判定保留というこ
とですが、ほかの4症例はすべて有効と判定されたということです。治療開始後3カ月で2
例が不変、2例が有効という画像診断上の判定もあったということです。(8)にありますよ
うに、長期寛解が認められた2例では、1例が家庭内復帰、1例は職場復帰を果たしたとい
うことです。すでに全例お亡くなりになったということですが、治療後29カ月間生存され
た方もいらっしゃいました。剖検が行われた4例については、いずれも腫瘍死に至ったと診
断されたとのことです。
 11頁、最後にまとめ的な記載がありますが、「安全で、かつ一定の有効性を呈することが
わかった」という記載もされています。詳細な資料の提出も求めて、そちらについても作業
委員会の先生方に内容の確認等をお願いしているところです。2件の説明は以上です。
○永井部会長
 ご質問、ご意見はありますか。
 よろしいですか。よろしければご了承をいただいたということにしたいと思います。時間
がオーバーしましたが、本日の議事は以上です。事務局から連絡事項がありましたら、お願
いします。
○坂本研究企画官
 次回についてはすでに別途日程調整をしていますが、8月23日(月)15時から17時に開
催を予定しています。正式なご案内については、詳細が決まり次第送付いたしますので、ど
うぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○永井部会長
 本日はこれで終了します。どうもありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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