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2014年7月9日 第57回労災保険部会議事録

労働基準局労災補償部労災管理課

○日時

平成26年7月9日(水)10:00~


○場所

中央労働委員会 講堂(7階)


○出席者

委員

岩村 正彦 (東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
大前 和幸 (慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 教授)
中窪 裕也 (一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授)
永峰 好美 (読売新聞東京本社編集委員)
黒田 正和 (日本化学エネルギー産業労働組合連合会 事務局長)
齊藤 惠子 (UAゼンセン政策・労働条件局 部長)
新谷 信幸 (日本労働組合総連合会 総合労働局長)
田口 正俊 (全国建設労働組合総連合 書記次長)
立川 博行 (全日本海員組合 中央執行委員 国際・国内政策局長)
吉村 健吾 (日本基幹産業労働組合連合会 中央執行委員)
明石 祐二 (社団法人日本経済団体連合会労働法制本部 主幹)
桐明 公男 (一般社団法人日本造船工業 常務理事)
小島 政章 (株式会社竹中工務店 生産本部技師長)
佐藤 一郎 (新日鐵住金株式会社 人事労政部 部長)
新居 康昭 (日本通運株式会社 取締役 常務執行役員)

○議題

(1)社会復帰促進等事業に係る平成25年度成果目標の実績評価及び平成26年度成果目標について
(2)労災診療費の改定について(報告)

○議事

○岩村部会長 定刻となりましたので、ただいまから第 57 回労災保険部会を始めます。本日は、公益委員の荒木委員と小畑委員、使用者側の田中委員が御欠席です。労側の田口委員が遅れております。初めに、前回の部会以降、委員の交代があったようですので、事務局から紹介をお願いします。

○労災管理課長 御紹介いたします。使用者側委員として、山中委員に代わり新日鐵住金株式会社人事労政部部長の佐藤委員に御就任いただきました。同じく使用者側委員として、齋藤委員に代わり日本通運株式会社取締役常務執行役員の新居委員に御就任いただきました。

○岩村部会長 どうぞ、よろしくお願いいたします。本日の議事に入ります。議事次第に沿って進めてまいります。 1 番目の議題は「社会復帰促進等事業に係る平成 25 年度成果目標の実績評価及び平成 26 年度成績目標について」です。まず、事務局から資料の説明をお願いします。

○労災管理課長補佐 ( 企画 )  本議題については、資料 1-1 から資料 1-7 、参考 1-1 から参考 1-4 まであります。まず参考 1-1 「社会復帰促進等事業に係る目標管理に関する基本方針」の 3 枚目のポンチ絵を御覧ください。社会復帰促進等事業については、平成 17 年度から目標管理を実施していて、着実に予算の削減に取り組んできました。目標管理の基本方針においては、基本的な考え方として、全ての事業を目標管理の対象とし、目標はアウトカム指標とアウトプット指標を用いて設定いたします。また、執行実績が相対的に低い事業とか、社会復帰促進等事業として実施する必要性が相対的に低い事業など、参考 1-2 にあるような、社会復帰促進等事業の評価の考え方に基づき、当部会で議論していただき、各事業について PDCA サイクルによる不断の見直しを行うこととしております。

 資料 1-1 「社会復帰促進等事業に関する平成 25 年度成果目標の実績評価及び平成 26 年度成果目標 ( ) 」を御覧ください。平成 25 年度成果目標の実績評価について、評価類型ごとにまとめたものです。平成 25 年度の目標管理対象の事業数は 85 あります。そのうちアウトプット指標が未達成である B 評価の事業が 3 事業、アウトカム指標が未達成である C 評価の事業が 5 事業となっています。なお、実績を集計中である事業、また独法評価委員会において評価を行うため、社会復帰促進等事業としての評価は、今後行うこととしている事業が 15 事業ありますので、これらについては次回の部会に回すこととしております。本日は、平成 25 年度成果目標が B 及び C 評価の目標未達成の事業、また平成 26 年度の新規事業 7 事業を中心に御議論いただければと思います。

 資料 1-3 と資料 1-4 において、 B 及び C 評価の事業、また平成 26 年度新規事業をまとめておりますので、順に御説明いたします。資料 1-3 は、平成 25 年度の成果目標が B C 評価の事業について、目標未達成の原因と改善措置等をまとめたものです。まず、アウトプット指標が未達成だった B 評価の事業についてです。 1 ページの事業番号 29-2 「職業病予防対策の推進」です。これは線量管理指導事業、すなわち避難区域等で除染や復旧作業を実施する中小零細事業者の連合体等に対し、線量管理を指導する者を派遣し、適切な放射線管理の実施の指導等を行う事業です。こちらは、アウトプット指標を線量管理の指導回数、受益者数としていたところ、いずれも目標に届きませんでした。未達成の原因としては、「理由」にあるように、暫定予算により事業開始時期が遅延したことで、事業実施期間が不足し、対象事業者団体の繁忙期と重なってしまったことや、法令による特別教育との違いが不明瞭であったため、受講の意義が分からず、受講を希望しない者が見られたことなどが挙げられます。

 これを受けて平成 26 年度においては、「改善事項」にあるように、調達時期を早め、 4 1 日から事業を開始し、繁忙期に重ならないように、研修時期の調整を早めに実施することや、厚労省のガイドライン等で、本事業の教育の位置付けを明確に事業者団体に伝達するなど、改善策を講じております。平成 26 年度のアウトプット指標は平成 25 年度と同様、指導を 150 回以上、受益者数を約 1 万人と設定することとし、改善事項等を通じ、目標を達成したいと考えております。

2 ページの事業番号 60 「第三次産業労働災害防止対策支援事業」です。これは、労働災害全体の約 4 割を占める第三次産業のうち、上位 3 業種に入る小売業、社会福祉施設を対象とし、事業場内の危険マップを作成するためのツールや、周知・啓発用のリーフレットを作成・公表することにより、危険箇所の「見える化」を推進するとともに、専門家による事業場への個別コンサルティングを行う事業です。こちらのアウトプット指標は、個別コンサルティングの実施回数としていたところ、目標に届かなかったところです。未達成の原因としては、個別コンサルティングの実施について、行政関係者をかたっての営業と勘違いされるなど、指導実施の打診を効果的に実施できなかったことや、特に小売業について、記憶に新しいところでは表示偽装問題への対応等、個別コンサルティングを受ける体制が整っていない事業場が多かったことが挙げられます。

 これを受けて平成 26 年度においては、事業場に対する委託事業への参加依頼文書に、国による委託事業であることをはっきりと示すなどの改善策を講じております。平成 26 年度のアウトプット指標では、平成 26 年度予算額を見直し、削減したことに伴い、小売業で 400 事業場、飲食店で 300 事業場の計 700 事業場としております。

3 ページの事業番号 71-2 「労働時間等の設定改善の促進等を通じた仕事と生活の調和対策の推進」です。このうち事業概要の1テレワークセミナーですが、テレワーク実施時の労務管理の留意点や、成功事例の紹介等を行うことによるセミナーの開催です。このセミナーについてはアウトプット指標を集客数としていたところ、目標に届きませんでした。こちらの未達成の原因としては、本セミナーは平成 25 年度は東京と大阪で 1 回ずつ、計 2 回開催いたしましたが、大阪会場のセミナー開催日が 2 14 日だったのですが、記録的な大雪の日で、交通機関が大きく乱れたことから、遠隔地からの参加者の欠席が相次いだことなどが挙げられます。なお、下に書いてあるように、セミナー参加の申込者数自体は 347 人と目標を上回っていました。

 こういうことを受け、気候面等から参加率が低下してしまう 2 月にセミナー開催を設定したことが、目標未達成の一因だったことを踏まえ、平成 26 年度においては開催時期を工夫するとともに、総務省と連携し、セミナーの内容の充実を図ることとしております。平成 26 年度のアウトプット指標は、平成 25 年度と同様、集客数 300 名以上を設定することとし、改善事項等を通じ、目標を達成したいと考えております。

4 ページ以降は、アウトカム指標が未達成だった C 評価の事業についてです。事業番号 16 「長期家族介護者に対する援護経費」です。こちらは、要介護状態の重度被災労働者が、業務外の事由で死亡した場合に、長期にわたり介護に当たってきた遺族の方々に対し、生活転換援護金として一時金 100 万円を支給する事業です。こちらについてアウトカム指標を、申請から支給決定までに要する期間は 1 か月以内とし、その期間内に支給決定した割合を 80 %としていたところ、目標に届きませんでした。未達成の原因としては、添付書類の不備について、申請者に確認したところ、長期間連絡が取れなかったことや、再提出を申請者に求めたところ長期間要したことなどが挙げられます。

 こういうことを受け、平成 26 年度においては、申請から支給決定までに要する期間を 1 か月以内とすることを改めて都道府県労働局等に通知し、迅速・適正な処理の徹底を図ること、また処理の遅れがやむを得ない場合であっても、申請から決定までに 1 か月以上期間を要する場合、申請者に連絡した上で、迅速・適正な処理に努めるといった改善策を講じております。本事業については、重度被災労働者の遺族の生活を援護するため、必要のある事業だと考えております。引き続き事業を継続していくこととし、平成 26 年度のアウトカム指標は平成 25 年度と同様 80 %以上と設定し、改善事項を通じ、目標を達成していきたいと考えております。

5 ページの事業番号 17 「労災特別介護施設設置費」です。こちらについては、労災特別介護施設について、開所以来長期間が経過していることから、施設の特別修繕を行うものです。アウトカム指標を緊急性の高い労災特別介護施設の修繕を実施としていたところ、入札不調により、予定していた修繕が実施できず、目標が達成できませんでした。未達成の原因としては、技能労働者の不足等の理由により、入札不調となったことが挙げられますが、昨年は公共工事全体的に建材高騰、人員不足により、全国的に入札不調が急増しており、昨年の公共工事のうち、入札不調は約 8 %と例年の 2 3 倍でした。

 こういうことを受け、平成 26 年度においては、適切な水準の予算を確保するとともに、更に十分な工期を確保した上で入札を行うこととしております。なお、平成 25 年度に予定していたこういう特別修繕等については、経費を平成 26 年度に繰り越した上で再入札して業者を決定し、工事を実施することとしております。愛知の外壁改修工事については既に落札業者が決定しています。本事業については、重度の被災労働者に対する専門的な施設介護サービスを提供するために必要な事業ですので、引き続き継続していくこととし、平成 26 年度のアウトカム指標は、十分な工期の確保等、入札方法の工夫などを行うことを盛り込み、改善事項を通じ、目標を達成していきたいと考えております。

6 ページの事業番号 28 「安全衛生分野における国際化への的確な対応のための経費」です。こちらは、国際会議等に職員を出張させるとともに、日本企業の進出数が急増する中国において、中国政府と協力し、労働安全衛生シンポジウムを開催するものです。アウトカム指標を、シンポジウムの参加者数としていたところ、目標に届きませんでした。未達成の原因としては、中国側から開催規模を限定的にしたいとの要望があり、規模を縮小しての開催となったことが挙げられます。

 中国側からは、平成 25 年度の状況・結果を踏まえ、積極的な意見・要望も出されていることから平成 26 年度においては、中国側と調整しながら、より良いシンポジウムの開催を目指すこととしております。本事業については、国際的な動向を十分に踏まえ、安全衛生対策を立案するために必要な事業であると考えておりますので、引き続き継続していくこととして、平成 26 年度のアウトカム指標は平成 25 年度と同様、参加者 100 人以上と設定し、改善事項を通じ、目標を達成していきたいと考えております。

7 ページの事業番号 71-1 「労働時間等の設定改善の促進等を通じた仕事と生活の調和対策の推進」です。このうち事業概要の 1 番目の「労働時間等設定改善推進助成金」は、中小企業事業主団体等が、その傘下の事業主に対し、労働時間設定改善の相談・指導等を行った場合に支給する助成金です。この助成金に関するアウトカム指標の 1 つとして、アンケート調査で 80 %以上の団体から、当該制度が労働時間等の設定の改善に役立った旨の評価を得る、という目標にしていたところ、目標に届きませんでした。未達成の原因としては、「理由」の所で、ほとんどの企業において、団体の取組は有益であるとしているものの、平成 25 年度から新たに設けた団体傘下の個別企業へのコンサルティングが活用されなかったことにより、個別企業における設定改善までたどり着かなかったことが考えられます。

8 ページの「改善事項」です。これを受け、平成 26 年度においては、労働時間等設定改善推進助成金について、従前行っていたパンフレット等の作成・配布に加え、年度当初からこれまで以上に、積極的に各種業界団体に対して周知を行うこととしております。また、助成金の取組終了後に、希望する団体の傘下事業場に対し、労働局に配置された働き方・休み方改善コンサルタントによる指導を行うこととしております。平成 26 年度のアウトカム指標ですが、アンケート調査について、平成 25 年度と同様の数字を設定いたしました。また、アウトプット指標の所ですが、平成 26 年度予算額を見直し、削減したことに伴い、労働時間等設定改善推進助成金の支給決定件数が、平成 25 年度目標は 10 件としたところ 7 件と設定しております。

9 ページの事業番号 72 「中小企業退職金共済事業経費」です。こちらのアウトカム指標を、制度の普及割合としていたところ、前年度を下回り、目標を達成できませんでした。未達成の原因としては、積極的な加入促進に努めた結果、被共済者数は増加したものの、景気の回復に伴い、中小企業における雇用者数の増加割合が上回ったことが挙げられます。

 これを受け、平成 26 年度においては全国で定員が 55 名となっている普及推進員を活用した、企業訪問をはじめとする、全国的な加入促進の一層の取組とか、医療福祉分野・サービス業等、雇用者数に対し加入が進んでいない分野の業種について、業界団体へダイレクトメールの送付を行うとともに、食品小売・スーパーマーケット業界等に協力依頼を行ったものの、加入の進んでいない業界へのフォローアップを行うなどの改善策を講じております。本事業については、中小企業の退職金制度を確立するため必要な事業であると考えておりますので、引き続き継続することとした上で、平成 26 年度のアウトカム指標を、割合から実数に変更し、在籍被共済者数を目標にするとともに、平成 25 年度のアウトプット指標である被共済者数と類似の目標とならないよう、平成 26 年度のアウトプット指標の所ですが、普及推進員の訪問件数を設定いたしました。以上が、 B 評価、 C 評価の事業です。

 資料 1-4 「平成 26 年度新規事業」について御説明いたします。 1 ページの事業番号 9 「労災疾病臨床研究補助金事業」です。こちらについては、多くの労働現場で発生している疾病等に関し、早期の職場復帰の促進、労災認定の迅速・適正化などに寄与する研究について、広く研究者を募り、補助を行うものです。本事業については、評価委員会において、研究ごとにその成果についての評価を受けるスキームを構築中です。この評価をアウトカム指標に活用する予定です。本事業の開始は、本年 10 月を予定しておりますが、目標設定は次回部会に回させていただきます。

 事業番号 24 「安全衛生に関する優良企業を評価・公表する制度の推進」です。こちらについては、企業等の安全衛生水準を評価するための基準について検討会を開催し、検討を行う。企業等が自社の安全衛生水準を自己診断できるようにするためのコンテンツを作成し、 Web サイトで公開する。また、各労働局において企業等からの申請を受け付け、評価基準に基づく安全衛生水準の評価を行い、基準を満たす企業等を優良企業等として認定し、公表するというものです。アウトカム指標としては、自己診断サイトへのアクセス数、アウトプット指標はポスター・パンフレットの配布数としております。

2 ページの事業番号 25 「労働災害減少のための安全装置等の開発に関する調査研究」です。これは、業界団体等の中に「専門検討委員会」を設け、小売業等における労働災害の防止に有効な安全装置等に関するニーズの収集や、安全装置等の開発について報告書をまとめるものです。アウトカム指標としては、報告書に「転倒災害」等の類型に対応した安全装置、保護具に関する内容を盛り込むこと。また、アウトプット指標については、専門検討委員会の実施回数としています。

 事業番号 29-3 「職業病予防対策の推進」です。こちらは、作業者の放射線被ばく状況や、その対策に対する報道発表、ガイドライン等を英訳し、厚生労働省の英語版ホームページに掲載するほか、国際機関への情報発信等を実施していくものです。こちらのアウトカム指標については、国際機関等からの依頼に応じた情報提供の実施回数。アウトプット指標については、平成 26 年度中に作成された報道発表資料やガイドライン等を英訳し、ホームページに掲載することとしております。

3 ページの事業番号 38 「産業保健活動総合支援事業」です。これは、メンタルヘルスを含む労働者の健康確保のため、事業場の産業保健スタッフ等に対する研修の開催、小規模事業場等に対する訪問指導、窓口相談等の実施等を行うものです。アウトカム指標については、研修が有益であった旨の評価を、利用者から 80 %以上確保すること。アウトプット指標については、産保センターにおける事業者等からの相談件数としております。

 事業番号 40 「若者の『使い捨て』が疑われる企業等への対応強化」です。こちらについては三本柱で、夜間・休日に労働基準法等に関して相談を受け付ける「労働条件相談ダイヤル」の設置、労働基準法等の基礎知識・相談窓口をまとめた「労働条件ポータルサイト」の設置、大学生等を対象とした労働条件セミナーの開催です。こちらについては、事業ごとに、それぞれアウトカム指標はアンケート調査によるもの、アウトプット指標については相談受付件数、ポータルサイトへのアクセス件数、セミナー開催数としております。

4 ページの事業番号 77 「雇用労働相談センター設置経費」です。これは、国家戦略特別区域法に基づき、新規開業直後の企業や、グローバル企業等が日本の雇用ルールを理解し、予見可能性を高めることで、紛争を生じることなく事業展開できるよう、「雇用労働相談センター」を設置するものです。本事業の指標については、特区法に基づく特別区域会議の設置、特別区域計画の作成の状況等を踏まえ、今後設定することとしたいと考えております。長くなりましたが、議題 1 の説明は以上です。

○岩村部会長 ただいま説明のありました資料 1 の関係について、御意見あるいは御質問がありましたらお願いいたします。

○齊藤委員 資料 1-3 3 ページの事業番号 71-2 「労働時間等の設定改善の促進等を通じた仕事と生活の調和対策の推進」の中のテレワーク普及促進等対策について、要望を 1 点述べさせていただきます。テレワークについては、先般改訂された政府の成長戦略でも、「推進に向け、新たなモデルの構築、導入ノウハウの提供等に取り組む」と記載されるなど、その導入・拡大に向けた動きが強まっているところではありますが、前回の職場意識改善助成金におけるテレワークコースの新設が議題となった際に、労働側委員がテレワークに関する懸念を数点指摘させていただきました。

 具体的には、在宅勤務では労働時間管理や労働安全衛生に関する労務管理が行き届きにくくなり、それらの責任の所在が曖昧になるおそれがあること。また、過重なノルマや成果を課されたり、賃金が出来高払いになったりすれば、長時間労働や深夜労働を助長しかねないことなどといった問題です。

 テレワークが企業の単なるコスト削減策として用いられることのないよう、制度の導入にあたっては、目的や対象の業務、労働者の範囲、労働時間管理の方法等について、労使で十分に協議を行う必要があります。

 また、テレワークを行うかどうかについては、本人の意思が尊重されるべきであり、テレワークで働く労働者の個人情報等が漏えいしたりすることのないよう、情報通信におけるセキュリティ対策や危険性の周知を徹底していくことも不可欠であります。

 社会復帰促進等事業では、 2014 年度も引き続き、テレワークの普及・促進に向けた事業が実施されることになりますが、セミナーやコンサルタント等の事業を実施するにあたっては、こうした課題に十分対応しつつ進めていただくよう要望いたします。以上です。

○事務局 御指摘ありがとうございます。テレワークについては、子育てや育児との両立に資する働き方ということで、政府全体で積極的にこれを促進する取組を実施していることは御承知のとおりです。ただ、委員御指摘のとおり、適切な労働条件下におけるテレワークを普及しないと、やはり長時間労働の危険性があると我々も思っております。したがって、特に中小企業に対してテレワークを普及するために、労使双方の方にも御協力を頂きながら、中小企業でのテレワーク導入モデルの検討会を実施しております。その中では、適切な労働時間の管理や、御指摘のありましたセキュリティの問題といったものも十分勘案しながら、適切な条件下でのテレワークを推進していきたいと考えております。

○岩村部会長 齊藤委員、よろしいですか。

○齊藤委員 はい。

○立川委員 お願いと質問事項が 1 点ずつあります。資料 1-3 7 8 ページにある「労働時間等の設定改善の促進等を通じた仕事と生活の調和対策の推進」についてです。事業内容である労働時間等設定改善推進助成金については、 8 ページのアウトカム指標の3で、「中小企業事業主団体に対してアンケート調査を実施し、 80 %以上の団体から当該助成金制度を利用することによって、団体が取り組む傘下事業場における労働時間等の設定の改善に役立った旨の評価が得られるようにすること」という目標を掲げています。

 当該助成金の目的である労働時間等の設定の改善については、労働者の過重労働の解消や、仕事と生活の調和の実現に向けた働き方・休み方の見直しに真に資するものであるべきものであって、言うまでもありませんけれども、労働者側よりも、会社側に都合の良い相談や指導、その他援助の取組を行って「役に立った」というような評価を得ているようでは、制度の趣旨に反するのではないかと考えております。

つきましては、アウトカム指標の達成度を評価する上では、支援を行った中小企業事業主の団体に対するアンケートで、主観的に役立ったか否かを問うだけにとどまらず、本当に過剰労働の解消や仕事と生活の調和の実現に向けた働き方・休み方に資するものになったか否か。例えば、基本的にこの事業自体 3 階建てのような形になっていると思います。事業団体から事業主、それから労働者に行くわけです。個々の段階での、本当に役に立ったかという評価が必要ではないか。そのようなモニタリングの考え方が必要ではないかと思いますが、いかがですか。

それについては、関係する職場意識改善助成金についても同様のことが言えるのではないかと思っております。このような検証を行うことを、今後検討していただければというのが 1 つ目です。

 それから、数字が分かりませんので、もし分かりましたら教えていただきたい所があります。この中小企業団体というのは、基本的に何団体ぐらいあるのでしょうか。私は全く数字が分かりませんので、もし分かりましたら教えてください。以上です。

○事務局 まず目標について御説明いたします。大変恐縮ですが、資料 1-3 7 ページを御覧ください。今回のアウトカム指標で「役に立った」と回答した割合が 71 %ということで、ここは委員に御指摘いただいたとおりです。それ以外にも注釈の所にあるように、年次有給休暇の取得日数の増加や、月間の平均所定外労働時間数 1 時間以上の削減についても併せて聞いております。ここは、単なる事業主の意見だけではなく、実態としてどの程度貢献できたかも併せて指標として設定しております。ちなみに年次有給休暇の取得や、所定外労働時間の削減という目標については達成できています。

 この助成金を使っていただいた後、今改善していただいているかも重要だと思っており、働き方・休み方改善コンサルタントによるフォローアップについても、今年度から力を入れて実施しています。そういう中で、どのようにこの事業が実際に活用されていくかも注視していきたいと考えております。

 中小企業団体がどのぐらいあるかについては、大変申し訳ありませんが、当方としても把握できてないのが現状です。ただ、平成 18 年からこの団体の助成金を進めていて、平成 25 年度までには延べ 278 団体に助成させていただいたことを付け加えさせていただきます。

○立川委員  7 ページにアウトカム指標の結果として、 1 日有休の増とか、労働時間の減少の結果が出ています。これは、ピラミッドの中で積み上げられてきた結果として、事業主団体が出した数字ということでしょうか。それとも、各傘下にある事業主団体が、自分の企業の中で、実際にこう減りましたというのが個別資料としてあって、出てきた数字なのでしょうか。

 もう 1 つ私が言いたかったのは、労働者自体が実感として、有休が増えるようになった、取れるようになった、労働時間が減ったという実感を持つこと、これは重要な政策ではないかと思うのです。そういう実感があったということの評価をどこかで得ることも重要ではないか、そういう確認をすることが重要ではないか。そのためにはモニタリングも必要ではないでしょうかということを申し上げたかったということです。

○事務局  1 点目の御質問ですが、これは各傘下団体において、各事業場のデータを積み上げて作っているものです。 2 点目の、労働者における実感ということですが、これについては現在把握するスキームがありませんので、先ほど申し上げましたコンサルティング等を活用し、労働者からの意見等が聞けないか検討させていたただきたいと考えております。

○岩村部会長 立川委員、よろしいでしょうか。

○立川委員 分かりました。よろしくお願いいたします。

○黒田委員  9 ページの事業番号 72 の中退共の事業経費について要望を 1 点述べます。 2014 年度の目標は、在籍被共済者数の前年比をアウトカム指標とされています。これは 2012 年度のアウトカム指標と同じだと承知しております。

2013 年度に中小企業退職金助成制度の普及割合をアウトカム指標としていたのを、 2014 年度の指標を、在籍被共済者の実数に戻したのは、中小企業の雇用者数のように、本事業の取組の域を超えて、景気変動などの影響を受ける数値を指標として設定するのはちょっと難しいというか、不適切との認識によるものと理解しています。

 そうした考え方も一定程度理解はできるのですけれども、同一事業の達成度を評価する場合に、ある程度合理的な指標を一旦立てた場合は、継続的に達成度の推移を比較できるようにすることが望ましいのではないかと考えます。これは、中退共の経費のみにかかわらず、社復の事業全てに共通する問題点でもあろうかと思います。次回の目標値の設定からは、そういう点にも留意していただくように要望いたします。以上です。

○岩村部会長 御要望ということにさせていただきます。

○吉村委員 資料 1-4 3 ページです。「若者の『使い捨て』が疑われる企業等への対応強化」について質問します。労働条件相談ダイヤル事業の 2014 年度の成果目標は、「相談ダイヤルの利用者に対して満足度を聴取し、 70 %以上から満足であった旨の回答を得る」ということで、アウトカム指標は設定されています。どのタイミングで利用者から満足度を聞くのかをお伺いします。

 また、相談ダイヤルの回答の適否は、相談後の改善状況を踏まえないと判断できませんが、事後的に追跡調査をするのか、また相談を受けた者が利用者から満足を聞き取って書類に記入するだけなら、「不満」と回答されても、「満足」と記載するなどの虚偽の記載が生ずるおそれもあるのではないかということも考えられます。

 事業全体に言えることですが、成果目標の数値の設定根拠を示していただかないと、適否が判断しづらいと思います。次回以降は、その辺を是非留意していただきたいと思います。以上です。

○岩村部会長 これも、そういう御要望があったということで受け止めさせていただきます。

○新谷委員 何点か質問させていただきます。吉村委員が質問した、「若者の『使い捨て』が疑われる企業への対応強化」ということで、今年度は新規で労働条件の相談ダイヤル事業が始まるということです。これは安全衛生分科会でも論議させてもらったと思うのです。民間に委託をすると聞いております。これはどこの団体に委託しているのかを教えてください。

 それはなぜかというと、公正中立に相談をしていただける能力を持った団体が受託しているのかということ。また気になるのが、ここに書いてあるような労働基準法違反といったような、監督行政とのつなぎをどうするのかというところが気になっております。相談を受けたものの、監督署へのつなぎの取り方を、どのようにその受託団体との関係でされているのかを教えていただきたいのが 1 点です。

2 点目は、福島第一原発の取組について海外に発信するというのが出ております。これは社復の事業で、労災の防止ということで出ているわけです。私ども連合としても、第一原発廃炉に向けての作業については、やはり国民的というか、国としての課題という認識で捉えています。今後 30 年も 40 年も長期に渡って取組をしなければいけない事業だと思っいます。毎日 3,000 4,000 人の方々が廃炉に向けて取り組んでいるわけです。先月、私どもの局長が第一原発へ行き、現地の労働組合の役員とも意見交換をさせていただきました。

 やはり、夏場へ向けて熱中症の対策が重要になってきている。日中の暑いときには昼間は作業をせずに、夜に作業をするというようなことも聞いております。もちろん労災防止対策は、本来事業者が取り組むべき課題ということは認識しておりますが、申し上げましたように国家的な課題として取組が必要となっているわけです。

 お聞きしたいのは社復の事業です。正しく労災防止の点で、第一原発廃炉に向けての作業に対し、国としてどういう対策を考えていて、社復の中で何か対策を打っているものがあるのか。今の取組状況については、英文のホームページを作って海外に発信するのも大事なことではありますけれども、直接的な対策はどのようにされているのかをお聞きします。

3 点目は、参考資料 1-3 が付けられていて、社復の事業の一覧があります。今回は評価がされなかったもので、 8 ページの評価番号 56 が入っていて、評価は次回やるということでした。「技能実習生に対する事故・疾病防止対策等の実施のための経費」が盛り込まれています。これは先月まとまった、政府の成長戦略の日本再興戦略の改訂 2014 の中にも、技能実習制度の活用拡大ということが、政府の方針として盛り込まれているわけです。実は、法務省の入国管理政策の審議会の中で、いろいろな団体のヒアリングが行われたときに、日弁連から、技能実習生の死亡者のデータが示されました。過去 20 年近くに渡って技能実習生を受け入れてきた中で、累積の死亡者の数が出ていて気になったのは、そこでの脳・心臓疾患での死亡者の数が非常に多いということです。御承知のように、技能実習生というのは非常に元気のいい、若い方が中心に来られますので、そういう元気な若い方が脳・心臓疾患で日本においてお亡くなりになるわけですが、非常に率が高いことに対し、日弁連として警鐘を発していました。

 これが社復で盛り込まれて対策を行うということですけれども、そういう基礎的なデータなり、分析といったところが、今はどのように技能実習生についてなされているのかを分かる範囲で教えてください。以上です。

○岩村部会長 御質問が 3 つありましたので、それぞれ担当課からお願いします。

○事務局 若者使い捨ての関係の御説明をさせていただきます。この事業をどこが実施するかということです。落札したのは株式会社エヌ・ティ・ティマーケティングアクトです。前にも委員から御指摘があって、きちんと相談対応ができるように、中立公正にしなければいけないという御指摘がありました。私どものほうからも、受託事業者に対しては、その点については十分注意するようにということでお話をしています。

 それを受けて、業者のほうでは実際に相談対応する方に対する研修や受け答えについてマニュアルを作成するということで、今準備を進めています。実際のマニュアルの作成や、どういう受け答えをするかということについては、そのマニュアルを全国労働基準協会団体連合会のほうに再検討して準備を進めているということです。実際にどのような方が中立公正に対応するかということについては、これから委託先のほうで相談員を公募をして、適切な方を選定し、中立公正に相談対応できるような方に、この相談員として入ってもらい、更に研修をきちんと実施していくということで今準備を進めているという説明を聞いております。

 寄せられた相談を、どのように監督署につないでいくかということについては、現在厚生労働省監督課で検討しているところです。寄せられた相談についてもきちんと対応できるように準備していきたいと思っております。

○事務局 御質問いただきました福島第一原発の関係の社復事業にはどのようなものがあるかということですが、参考 1-3 4 ページを御覧ください。横表になっている社復の一覧表になっています。 4 ページの 29-1 から 29-3 がいわゆるこの事故関係です。 29-1 は、福島第一原発緊急作業従事者の被ばく管理対策等です。第一原発の作業の被ばく管理などを徹底するために、作業届などについて確認するとともに、立入調査等の適切な指導等を実施することに関して、行政経費がまず積まれています。

 それから、緊急作業従事者の作業内容、被ばく線量等に関するデータベースの運用を行っています。緊急作業に従事された方の健康相談と保健指導の実施経費、それから、一定の被ばく線量を超えた方々のうち、離職をされた方々に対する健康診断の実施、こういう経費を予算要求しております。

○労災管理課長 技能実習生に対する事故・疾病防止対策等の実施のための経費の関連で、技能実習生の状況についてどう分析しているのかという御質問でした。これは事務局のほうの対応不十分ということかもしれませんが、今回、この技能実習生関係の事業の集計はまだですので、次回に評価・検討をお願いするということで、担当をこの場に呼んでおりません。誠に申し訳ないのですが、差し支えなければ次回この事業について検討する際に、併せて技能実習生の状況の分析も含めて御説明させていただきたいと存じます。

○岩村部会長 新谷委員、いかがでしょうか。

○新谷委員 分かりました。技能実習生の件は後ほど結果を教えてください。 1 点目の、若者の使い捨てが疑われる企業の対応強化の点で、今の受託状況をお聞きしての率直な感想です。ややもすれば泥縄式で、マニュアルを更に外部に委託しないといけないというような状況のようです。具体的な相談対応者については公募していくということのようです。受託した団体が全て完結するわけではなくて、何か手配師のような感じもしております。本当にこの相談ダイヤル事業が実効性を持ってうまく回っていくのかが非常に注目されるわけです。これは、厚生労働省のブラック企業対策の目玉として打ち上げた事業だと思いますので、是非成功するように、管理指導をきちっと対応していただきたいということをお願いしておきます。

○永峰委員  3 つ挙げさせていただきます。新規事業の 2 ページで、除染関係の対策を国際発信していくという話でした。積極的に発信していくのは非常に良いことだと思いますし、海外からの注目度も高いでしょう。ただし、厚生労働省のホームページで終わってしまわずに、官邸のホームページなどと相互リンクを張って、積極的に情報を発信していくことが求められていますこれが 1 点目です。

2 点目は議題に上ったテレワークのセミナーの話で例を挙げさせていただきます。厚生労働省はセミナーをものすごく一生懸命やっていますし、それが有効に使われているとも聞いております。ただ、例えばテレワークの場合、特に中小企業事業者が対象になると、東京都など自治体レベルでもかなりやり始めています。助成金の出し方も、各自治体によって違います。自治体レベルでしっかりしたセミナーを企画すると、結構人数も集まるようです厚生労働省と自治体とで、例えばセミナーについても棲み分けといいますか、その辺をもう一度検討していただいたらどうだろうかというのが 2 点目です。

3 点目は、小売業・サービス業の労働災害対策支援に関する問題についてです。今までの実績値で言えば、 2 ページの「第三次産業労働災害防止対策支援事業」、新規で言えば、やはり 2 ページの事業番号 25 の「労働災害減少のための安全装置等の開発に関する調査研究」があります。小売業・サービス業は、特にアジアの人たちを中心に、外国人労働者が増えている業界だと思います。私も実は小売関連の役員で入った経験があります。その時の経験から申し上げますと、彼らはしばしばこちらの予測を超える、思いがけないことをやることもあるわけです。それは、慣習とか、仕事の仕方とか、教えても覚えないとか、言葉が分からなかったとか、いろいろな理由があるのでしょう。

労働災害対策支援では、こうした状況に合わせて、多言語化を意識した研究が必要だと考えます。何かすごく分かりやすい図のようなもので注意喚起のポイントを表すなどでしょうか。中国語、韓国語、どの辺の言語までカバーすればよいのか分かりませんが、多言語化、ユニバーサルな図式に関しても研究を進めていただければいいのではないかという提案です。以上です。

○岩村部会長 御質問も入っていたと思うので、担当課からお願いいたします。

○事務局 労働衛生課です。作業者の被ばく線量関係情報の国際発信の件です。リンクを張るべきではないかという御指摘でした。これについて、日本語のホームページについては官邸のホームページとか、環境省のホームページにいろいろリンクして、相互リンクという形でやっています。また、 IAEA に、外務省を通じ、日本政府一体として情報提供を定期的に行っています。その中に、こういう情報も入れていただくようにしております。それは、 IAEA のホームページに載っていて、そこには我々厚生労働省のホームページがリンクされているということで対応しています。

○事務局 労働条件政策課です。テレワークについて回答させていただきます。地方自治体でも同じようなセミナーを開催しているのではないかという御指摘でした。少なくとも北海道とか福岡県はかなり熱心にやっていると承知しております。日本テレワーク協会等に確認したところ、網羅的に把握しているわけではありませんが、まだまだ積極的に取り組んでいる自治体は少ないという回答を頂いております。都道府県が実施するセミナーと、我々のセミナーの一番の違いについて申し上げますと、我々のほうは先ほど委員からも御指摘がありました、長時間労働につながるおそれがあるとか、そういう観点で労務管理を中心としたセミナーを開催しております。そこについては北海道、福岡県のセミナーとは少し違った内容にさせていただいています。もちろん、これから北海道や他の自治体等で拡充していけば、これは調整が必要だと思っておりますが、しばらくの間は厚生労働省としても適切な労働条件下のテレワークのためのセミナーは必要ではないかと考えています。

○岩村部会長 永峰委員、よろしいでしょうか。

○永峰委員 はい、分かりました。

○岩村部会長 他にはいかがでしょうか。本議題については以上でよろしいですか。それでは、議題の 1 番目については以上とさせていただきます。 2 番目の議題は「労災診療費の改定について ( 報告 ) 」です。事務局から説明をお願いします。

○補償課長 補償課です。資料 2 「平成 26 年度労災診療費の改定について」について、御説明いたします。 1 の概要として、昨年 12 20 日に健康保険の診療報酬改定率が、全体としてプラス 0.1 %とされました。それを受けて、労災診療費の影響分がありますので、追加で約 15 億円ほど予算要求しました。

 中身は 2 つに分かれ、労災診療費の算定については、健康保険の診療報酬点数に原則準拠しておりますので、今回の健康保険の改定に伴い、労災診療費の健保準拠に対応する部分に連動する改定が約 10 7,000 万円です。労災医療の特殊性を考慮して設定する労災独自の項目、いわゆる労災特掲項目については、傷病労働者の早期職場復帰の促進等の観点から 5 点ほど見直しを行いましたが、それが約 4 4,000 万円です。

2 の労災特掲項目の改定内容について、以下 5 点について御説明いたします。

1 点目は、初診料、再診料の引上げです。今回の健保改定においては、消費税の引上げに伴い、健保そのものが初診料を 12 (120 ) 、再診料を 3 (30 ) の引上げを実施しましたので、それに伴い労災保険における初診料も 120 円引き上げて 3,760 円としました。再診料についても、健保の 3 点の 30 円プラスして 1,390 円としました。これが 1 点目です。

2 点目は、疾患別リハビリテーション料の引上げです。今回の健保改定において、疾患別リハビリテーションの評価の充実を図る観点で 5 点引き上げられましたので、それを踏まえて労災における疾患別リハビリテーションの 3 疾患 ( 心大血管疾患・運動器・呼吸器 ) について、それぞれ病院の施設基準に基づく1、2、3について 4 点ほど改定しました。ここに書いてある1とか2というのは、病院の施設基準です。専任・常勤医師等の数に基づいて定まっています。

 裏面の (3) 「職場復帰支援・療養指導料」の新設です。従前特掲にあった「再就労療養指導管理料」を廃止し、こちらを新設しました。この背景として、近年の精神障害の労災認定の増加ということ等を踏まえ、傷病労働者の早期職場復帰を図るため、新たに 2 点ほど評価しました。 1 点目は、傷病労働者の再就労に向けた医師による事業主に対する指導。新たに対象者に事業主も含めたのが 1 点。 2 点目は、主治医の指示の下に、精神保健・福祉等のソーシャルワーカー等が傷病労働者又は事業主に対する指導をした場合に、新たに評価するというものです。点数は精神障害の 560 点、その他の疾病の 420 点は変更ありません。

4 点目は、「術中透視装置使用加算」の拡充です。骨折時の手術にX線による透視装置を用いている場合は、切開部が非常に小さくて済むことから、早期回復、早期職場復帰の効果があるというもので、前回の改定により、腕、足、踵の骨を対象にしてきたわけですが、労災事故での墜落・転落等による骨折の多い部位にも拡充しようという観点で 2 か所増やしました。 1 つは「舟状骨」という骨です。従前は上にあるように、「上腕骨」「前腕骨」という腕だけでしたが、今回は手首の骨の骨折が多いということでこれを加えました。それから「脊椎」、要するに背骨ですが、背骨については墜落によって圧迫骨折をするケースが多いということで、この 2 つを新たに拡充しました。

 対象手術として非常に聞き慣れない手術が 2 つ書いてあります。舟状骨という、手首の骨がたくさんで形成されている関節部については、一般に鋼線、針金のようなものを刺して、それで骨を固定するというような手術が一般的なので、舟状骨を加えたことで、「骨折経皮的鋼線刺入固定術」というものも手術の対象として加えました。それから脊椎ですが、従前の保存療法、コルセットを巻くというのは非常に時間がかかり、治るまで痛みも続くということで、この場合は脊椎の潰れて圧迫骨折した箇所に骨セメントを注入するという形で手術が行えることから、「経皮的椎体形成術」を行うという手法を手術として加えたものです。

5 点目は、「労災電子化加算」の引上げです。本年 1 月から、労災レセプト電算処理システムが全国稼働し、オンライン化したことを踏まえ、その普及促進を図る観点から、従来労災電子化加算は 3 点だったものを 5 点に引き上げたものです。

 改定内容は以上で、 4 月から適用している状況です。 2 枚目は基本的な仕組みですので、説明は省略させていただきます。以上です。

○岩村部会長 ただいま説明のありました、労災診療費の改定について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。特にないでしょうか。ありがとうございます。他にこの際ということで御意見はありますか、よろしいでしょうか。それでは、以上をもって本日の部会は終了いたします。最後に議事録署名委員として、労働者代表は黒田委員に、使用者代表については佐藤委員にそれぞれお願いいたします。本日はお忙しい中をどうもありがとうございました。


(了)

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