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2013年10月31日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

○日時

平成25年10月31日(木)16:00~


○場所

厚生労働省専用第22会議室


○出席者

出席委員(20名) 五十音順

○荒 井 保 明、  荒 川 義 弘、 石 井 明 子、 今 井 聡 美、
  梅 津 光 生、◎笠 貫    宏、 川 上 正 舒、 齋 藤 知 行、
  塩 川 芳 昭、  正 田 良 介、 鈴 木 邦 彦、 武 谷 雄 二、
  田 島 優 子、  中 谷 武 嗣、 新 見 伸 吾、 千 葉 敏 雄、
  濱 口    功、  菱 田 和 己、 村 上 輝 夫、 桃 井 保 子
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人2名

欠席委員(4名)五十音順

木 村   剛、 高 橋 好 文、 寺 崎 浩 子、 西 田 幸 二

行政機関出席者

成 田 昌 稔 (大臣官房審議官)
森 口    裕 (安全対策課長)
古 元 重 和 (医療機器審査管理室長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
中 野    惠 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

○議事

○医療機器審査管理室長 定刻になりましたので、これより「薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙のおり御出席いただきまして、改めましてありがとうございます。

本日は医療機器・体外診断薬部会委員24名のうち、現時点で19名の御出席をいただいていますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告申し上げます。

 続きまして、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて御説明させていただきます。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日の議題については、医療機器の承認審査に関する議題であり、企業情報に関する内容が含まれますため、非公開とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 以降の進行につきまして、笠貫部会長、よろしくお願い申し上げます。

○笠貫部会長 それでは、最初に事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

○医療機器審査管理室長 配布資料について簡単に説明させていただきます。机上の分厚い資料は、資料1、資料2です。そしてその下に資料3、資料4、参考資料1です。また、議事次第の下に配布資料一覧と座席図及び当日配布という形で、当日配布1、当日配布2、当日配布3、当日配布4という資料を用意しておりますので、御確認いただければと存じます。不足等ありましたら、会の途中でも結構ですので、お申し付けください。以上、資料の確認でした。

○笠貫部会長 資料の方はよろしいでしょうか。

 それでは、これより議題に入らせていただきます。本日の審議事項に関与されました委員と利益相反に関する申し出状況について事務局から御報告をお願いいたします。

○事務局 事務局より本日の審議事項に関する影響企業の調査について御報告いたします。資料4を御覧ください。これらの報告については、参考資料1、平成201219日付け薬事分科会で決定された薬事分科会審議参加規程に基づくものです。委員の皆様から毎回御報告いただいておりますので、概要は御存じかと思いますが、過去3年度にわたり、寄付金や契約金の額について競合企業と申請企業から御報告をいただいて、その結果に応じ、審議不参加、若しくは議決への不参加という形を、審議会規定として定めています。

 資料4の競合品目・競合企業リストを御覧ください。表紙になっておりますのが、議題1「医療機器『ウィングスパン ステント』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」です。申請者は、日本ストライカー株式会社となっております。こちらについては、競合品目の申告はございませんでした。

 裏面が議題2「医療機器『Jarvik2000植込み型補助人工心臓システム』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」です。申請者は、センチュリーメディカル株式会社です。競合品目として、株式会社サンメディカル技術研究所の植込み型補助人工心臓システムEVAHEART、テルモ株式会社のDuraHeart左室補助人工心臓システム及びニプロ株式会社の植込み型補助人工心臓HeartMateIIの3品目が選定されています。競合品目1及び2については、類別及び一般的名称が同一であるため、競合品目3については、類別及び一般的名称が同一であり、なおかつ機能区分及び定義が定常流・軸流型ポンプで、本品と同一であるとの理由です。

 本日の審議事項に関する企業影響について、委員の皆様から寄付金、契約金等の受け取り状況を伺いましたところ、薬事分科会審議参加規程第12条、審議不参加の基準又は第13条、議決不参加の基準に基づき、議題1について御退室いただく委員、議決に御参加いただけない委員はございません。議題2について御退室いただく委員は、中谷委員、議決に御参加いただけない委員は梅津委員となっております。以上御報告いたします。

○笠貫部会長 ただ今の事務局からの御説明につきまして、特段の御意見はありますでしょうか。

 よろしければ、御了解を得たものとして議題に入ります。議題1「医療機器『ウィングスパン ステント』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」審議を行います。本議題の審議に当たりましては、参考人として千葉県救急医療センター長の小林繁樹先生にお出でいただいております。よろしくお願いいたします。まず、審議品目の概要につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 議題1につきまして、事務局から御説明いたします。資料1を御覧ください。一般的名称は脳動脈ステント、販売名はウィングスパン ステント、申請者は、日本ストライカー株式会社です。

 5ページ、審議品目の概要を御覧ください。図1から図3に本品のステント、システムの外観写真及び全体図がございます。本品は頭蓋内動脈の狭窄部位に留置して、血管の開存を維持するナイチノール製のステントと、そのデリバリーシステムからなるステントシステムです。デリバリーシステムは、外筒及び内筒からなるデリバリーカテーテルと、回転式止血バルブから構成され、ステントはデリバリーカテーテルの遠位部内腔にあらかじめ装填されています。

 戻りまして3ページ下段に本品の使用目的が記載されています。また、4ページに3項目からなる承認条件が記載されております。なお、本品につきましては日本脳神経血管内治療学会から、医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会に要望がありました。そして、平成2010月に選定され、平成2410月に優先審査の指定を受けております。詳細につきましては、機構より御説明いたします。

○機構 審議事項議題1、資料1「医療機器『ウィングスパン ステント』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、機構より御説明いたします。

 まず、審査報告書に3点修正がありますのでお知らせいたします。当日配布資料2の正誤表にも記載してありますように、2点の漢字の誤りが合計4か所、及び脱字1点がありますので、修正をお願いいたします。本審査に当たり、当日配布資料1の専門委員一覧に記載しております、4名の専門委員の御意見を頂戴しております。

 本申請品目の概要について説明させていただきます。審査報告書5ページを御覧ください。ウィングスパン ステント、(以下、「本品」)、本品は図1に示すようなニッケル・チタニウム合金製の自己拡張型血管再建デバイスであり、図3に示すようにデリバリーカテーテル遠位部にあらかじめ装填されています。留置部位にて、アウターカテーテルを引き戻すことで、ステントが自己拡張し、留置されます。

 続きまして、本品の開発の経緯について御説明させていただきます。審査報告書6ページ中段を御覧ください。症候性の頭蓋内アテローム性動脈狭窄の治療として、ワルファリンやアスピリンを用いた薬物療法が行われています。しかし、海外で実施された臨床試験において、7090%の狭窄を有している患者のうち、25%が2年以内に同側領域における脳梗塞を発症することが示されており、症候性高度頭蓋内動脈狭窄に対する薬物治療の限界が示唆されています。

 一方で外科的手技として、バイパス術が実施されていますが、バイパス術は主として閉塞例を対象に実施されており、狭窄症に対するバイパス術の有用性は明確になっていません。また、病変部位によっては手技が難しく、合併症の発症率が比較的高いことも知られています。このような状況において、血管内治療の技術的な進歩とともに、経皮的血管形成術、以下PTAが1980年代に試みられるようになります。本邦においては、200110月に脳血管内での使用を適応に含む、バルーン拡張式血管形成術用カテーテルが承認され、臨床使用されてきました。PTA施行時には血管解離、急性閉塞又は切迫閉塞が一定の割合で生じることから、これらの発生時には冠動脈ステントを併用した治療が行われるようになり、その有効性が報告されるようになりました。しかしながら、冠動脈ステントはバルーン拡張型で、また脳動脈とは解剖学的形態も異なる冠動脈を対象に設計されているため、脳動脈に適応した場合に、血管損傷や急性・亜急性血栓閉塞などの重篤な合併症が報告されています。このような現状を踏まえ、本品は頭蓋内動脈狭窄部位に留置することで、血管の開存性を維持することを目的に、ニッケル・チタニウム合金製の自己拡張型ステントとして開発されました。

 なお、本品につきましては頭蓋内主幹動脈に症候性狭窄を有し、薬物治療では十分に治療し得ない患者に対する新たな治療選択となる可能性があるとして、200810月に開催された「第9回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」において、早期導入すべき医療機器に選定されるとともに、同検討結果を踏まえ、20121025日付けで、厚生労働省から優先審査の対象品目に指定されました。

 続きまして、審査報告書の7ページを御覧ください。外国における使用状況について御説明いたします。本品は米国で2005年8月にアメリカ食品医薬品局、以下FDAと言いますが、FDAから人道的医療機器の適用免除、以下HDE承認といいますが、HDE承認を取得し、欧州では200512月にCEマークを取得しております。2009年2月~2013年6月までに、海外の主要国において、□□□□□□が販売されています。なお、欧米における適応は後述するSAMMPRIS試験の結果を受け、2012年8月に審査報告書5ページに記載しております本邦申請時の適応と同様の適応から、7ページの下段に記載されている適応に変更がなされています。

 審査の概要について説明させていただきます。非臨床試験については、審査報告書8ページ~12ページに記載しておりますが、仕様の設定、安定性及び耐久性並びに性能に関する資料が提出され、審査の結果、特段の問題はないと判断いたしました。

 本品での臨床試験成績については、審査報告書13ページからになります。医師主導の国内臨床試験の成績が添付資料として提出され、そのほか米国HDE承認取得時の添付資料であるWingspan and Gateway Safety Studyの結果、本品の研究報告として、アメリカ国立衛生研究所、(以下、「NIH」)、NIHの支援による狭窄率70%以上の症候性頭蓋内動脈狭窄を有する患者を対象とした、NIH登録試験及びSAMMPRIS試験並びに市販後に行われましたUS Wingspan登録試験を中心に、文献調査により本品の有効性及び安全性についてまとめた考察が提出されました。

 国内臨床試験は、薬物治療に抵抗性を示し、本品が到達可能な狭窄度50%以上の頭蓋内動脈狭窄に起因する、一過性脳虚血発作、以下TIAと言います、又は脳卒中患者を対象として、国内2施設で単腕試験が行われました。本試験には20例が登録され、全例が安全性解析対象集団とされていましたが、うち1例は本品留置前のガイドワイヤー操作中に、内頸動脈を穿孔したため治験が中止されたことから、当該症例を除く19例に本品が留置され、19例が主要評価項目及び副次評価項目の主解析対象集団とされました。

 審査報告書16ページの表2に示すように、主要評価項目である手技6か月後までの同側脳卒中又は死亡は19例中2例、10.5%であり、内科治療抵抗性頭蓋内動脈狭窄の脳卒中又はTIAの事象発生率から設定した達成基準44.4%を満たしております。また、副次評価項目については、手技終了時の狭窄率が50%未満に改善と定義した技術的成功は19例中16例、84.2%であり、ステント留置に成功し、かつ3日以内に脳卒中又は死亡が認められないことと定義した、手技的成功は19例中14例、74.3%でした。安全性に関しては、手技が実施された20例のうち、19例に有害事象が認められました。

17ページ、表4に示すように、本品又は手技との因果関係が否定できない有害事象は12例認められましたが、いずれの事象も脳血管内治療において一般的に見られる有害事象であり、本品に特異的な有害事象は認められませんでした。

17ページの上段に記載しているように、重篤な有害事象は6件に認められ、内訳は脳梗塞3例3件、TIA、脳出血、脳卒中、血管穿孔、水頭症及び尿崩症がそれぞれ1例1件でしたが、脳卒中、血管穿孔、水頭症及び尿崩症は、内頸動脈を穿孔したため治験が中止された症例で見られた事象でした。

 続きまして審査報告書18ページを御覧ください。米国HDE承認取得時の添付資料である、Wingspan and Gateway Safety Studyでは、国内臨床試験と同様の患者45例を対象に単腕試験が実施されました。表6に示すように、ステント留置後に標的病層の狭窄率が50%未満に改善したステント留置の成功率は100%、ステント留置が成功し、退院時に脳梗塞や死亡が認められなかった手技成功率は97.7%、手技6か月時点での死亡又は同側脳卒中発症率は7.1%であり、国内臨床試験の成績と同様でした。また、重篤な有害事象についても特に注意すべき事象は認められませんでした。

 続きまして審査報告書20ページ下段を御覧ください。SAMMPRIS試験は、頭蓋内主幹動脈に70%以上の狭窄性病変を有し、TIA又は脳梗塞を30日以内に発症した患者を対象に、積極的内科的治療を行った群、以下内科群の成績と、積極的内科的治療に加え、PTA後に本品を用いたステント留置術を行った群、以下本品併用群の治療成績を比較することを目的として、NIHの支援により実施されました。本試験は当初、各群382例を組み入れる計画でしたが、内科群に比べて本品併用群で周術期の脳卒中及び死亡の割合が有意に高いことが判明したため、内科群227例及び本品併用群224例の451例が登録された時点で登録が中止されました。

 報告書22ページ表9を御覧ください。主要評価項目である30日以内の標的血管領域の脳卒中及び死亡率が内科群で5.8%、本品併用群で14.7%、副次評価項目である1年以内の標的血管領域の脳卒中及び死亡率が内科群で12.2%、本品併用群で20.2%と、いずれも本品併用群で有意に高く、本試験では内科群で本品併用群よりも優れた結果が得られております。

 これらの臨床試験成績を踏まえ、本品の審査における主要な論点について御説明申し上げます。報告書29ページ中段、総合評価を御覧ください。主要な論点の一つ目は、本品の臨床評価及び適応についてです。国内臨床試験の結果は、米国HDE承認時に添付されました、Wingspan and Gateway Safety Studyと同様の成績が得られており、本品は薬物治療に奏功しない患者にとっての治療選択肢になり得る可能性を示唆しております。しかし、国内臨床試験とは対象患者が異なるものの、米国において行われた内科群と本品併用群を直接比較したSAMMPRIS試験において、内科群に比べて、本品併用群で30日以内の標的血管領域の脳卒中及び死亡の発生率が高かったこと、及びその結果を受け、FDAが適応を変更したことは重視すべきと判断しました。

 FDAはSAMMPRIS試験の成績を独自に部分集団解析し、適応を変更しておりますが、本邦においては、詳細なデータが入手できないSAMMPRIS試験やその他提出された試験成績から、本品をどのような対象患者に用いれば、ベネフィットがリスクを上回るかを評価することは困難であり、米国における変更後の適応で承認することは困難であると判断いたしました。

 本邦におきましては、頭蓋内動脈狭窄症に対してPTAが実施されておりますが、血管形成術時に生じた血管解離、急性閉塞、又は切迫閉塞に対する治療や、血管形成術の効果が不十分と判断された場合の治療に用いる既承認の医療機器は本邦になく、冠動脈用治療ステントが適応外使用されております。血管解離急性閉塞又は切迫閉塞の治療において、機器に求められることは病変部位に到達可能であること及び留置が可能であることです。本品は国内臨床試験において、手技終了時の狭窄率が50%未満に改善した技術的成功は84.2%であり、手技中に血管解離を生じた2例においても、6か月までの同側脳卒中又は死亡は認められなかったことから、本品を血管解離、急性閉塞又は切迫閉塞が生じた際の治療に使用することは、臨床上許容可能であると判断いたしました。

 また、SAMMPRIS試験における1年以内の標的血管領域の脳卒中及び死亡は内科群で12.2%であるのに対し、本品併用群では20.2%であること、国内臨床試験における手技6か月後までの同側脳卒中又は死亡は、10.5%であることを踏まえますと、現時点で本品による治療を積極的内科的治療に先んじて実施するべきではないと考えます。しかし、積極的内科的治療によって有効性が認められず、他に有効な治療法がないと判断される、血管形成術後の再治療を否定するほどの有効性及び安全性に問題がある成績は得られていないと考えます。

 よって、総合機構は、本邦における本品の適応を、「本品は頭蓋内動脈狭窄症に対するバルーン拡張式血管形成術用カテーテルを用いた経皮的血管形成術において、以下の場合に使用する。血管形成術時に生じた血管解離、急性閉塞、又は切迫閉塞に対する緊急処置、他に有効な治療法がないと判断される血管形成術後の再治療」とすることが適切であると判断いたします。

 二つ目の論点は、本品の適正使用についてです。総合機構はまず、SAMMPRIS試験において、本品の有効性及び安全性が示されず、積極的な薬物療法を優先すべきとの結果が得られていること、次に本品の使用は、他に有効な治療法がないと判断される場合を除き行うべきではなく、PTAについても一定の割合で本品を使用する可能性がある治療法であることを考慮し実施するべきであること、最後に脳血管内での適応を取得しているバルーン拡張式血管形成術用カテーテルの使用に際して制限がかかっていない状況となっているという3点の理由から、本品の有効性及び安全性を担保するために、適正使用が重要であり、関連学会と連携の上、脳動脈狭窄症に関する血管内治療の妥当性に関して、ガイドライン等を策定する必要があると判断いたしました。また、承認条件として、審査報告書31ページ中段に記載のとおり、十分な知識及び経験を有する医師が、関連学会の作成した治療指針を遵守し実施するよう、必要な措置を講じること、並びに頭蓋内脳動脈に対する経皮的血管形成術による合併症を重症化させないために、脳血管内治療に伴う有害事象に対応可能な体制が整備された医療機関において使用することを付すことが妥当であると判断いたしました。

 以上を踏まえまして、使用目的を前述のように変更した上で本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は新性能医療機器であることから、3年と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えます。なお、薬事分科会では報告を予定しております。

 事前に委員の先生方から御質問を頂戴しておりますので、その内容について御報告申し上げます。まず笠貫部会長より、「SAMMPRIS試験が参考資料という扱いになっている点について、使用目的の変更に影響する資料であり、参考ではないのではないか」という御指摘を頂戴しております。適応の変更につきましては、当該試験の結果を受け、FDAが適応を変更した事実を重視し、本邦での適応を限定すべきと判断しております。また、当該試験を参考資料というようにしておりますが、参考資料という言葉につきましては、審査上の位置付けの重要度を表している言葉ではなく、信頼性調査の対象資料であるか否かということで、資料の呼び方を分けております。ですので、こちらは参考資料となっておりますが、SAMMPRIS試験につきましても、評価対象として取扱っております。ですが、今回の審査報告書では御指摘のとおり、参考資料という記載のみであると、重要性の低い位置付けとの誤解が生じかねないと考えますので、報告書13ページ等に記載している、参考資料という文言を削除させていただきたいと考えております。

 続きまして、鈴木委員より、頭蓋内動脈狭窄病変に対する冠動脈ステントの適応外使用に学会等で取りまとめた成績があるか否かについて、及び承認予定の適応が学会要望の適応と異なり限定的になっているが、この適応範囲でも学会は要望するか否かについて、2点御質問を頂いております。まず、1点目の冠動脈ステントを適応外使用した際の治療成績につきましては、審査報告書の24ページ下段に記載させていただいております。国内での実態調査におきまして、2年間で454例に対し、頭蓋内動脈狭窄症に対する血管内治療が実施されておりましたが、うち34%において緊急処置を含む冠動脈ステントの適応外使用がなされていたということが報告されています。なお、同報告における術後30日までの合併症は52例に認められており、そのうち出血性合併症が11例、虚血性合併症が28例、死亡4例ということが報告されています。

 2点目に、変更後の適応が要望学会に受け入れられるか否かについては、本件においては日本脳神経外科学会及び日本脳神経血管内治療学会からニーズの検討会に要望書が提出されておりましたが、今般、本品の承認に当たっては、当日配布資料3としてお配りしておりますように、要望があった2学会に日本脳卒中学会を加えた3学会合同の適正使用指針案が策定されております。本指針の適応に関しましては、承認を予定している適応と同一のものとなっており、この適応によっても学会のニーズはあるものと判断しております。総合機構からの報告は以上です。よろしくお願いいたします。

○笠貫部会長 ありがとうございます。ただ今の御説明に対して、参考人の小林先生から何かございますか。

○小林参考人 今、機構の方から御説明ありましたように、なかなか審議の方も大変だったのですが、もともとの対象となる患者たちがほかにほとんど治療法がないというような難しい患者たちであるということですので、このデバイスを必要とする患者がいらっしゃることは間違いないです。ただ、先ほど御報告がありましたように、SAMMPRISスタディという結果的にはこの治療法に対してネガティブな結果が出て、非常にインパクトのあるスタディの結果が発表されましたので、そのままの適応というわけにはやはりいかないのではないかということで、ただ、一方で、少なくともレスキューデバイスとしては、オンラベルで使えるものが必要であるし、頭蓋内用に設計されたものが必要であろうということです。まず、そこに適応を絞った形での承認という結論を出しました。

○笠貫部会長 本品について、各委員の先生方から御意見、御質問はありますか。初めに、この国内臨床試験が医師主導治験と、これは企業主導型ではなく、医師主導型だという理由は、どういうところにあるのでしょうか。

○事務局 当時、このデバイスを必要とする患者数が少ないこともあり、企業で少し開発を見合わせるような動きがあったところを、医師サイドでやはり必要なデバイスであるので、治験が必要であれば、医師主導であったとしても治験を行って開発を行いたいという経緯がありました。

○笠貫部会長 医師主導治験は、国からのファンドでやっているのでしょうか。

○機構 こちらの医師主導治験については、日本医師会から助成が出ていると聞いております。

○笠貫部会長 それが、またニーズの高い医療機器での選定が、平成24年、そしてこの5年を超えた理由としては、むしろ申請されるまでの時期が非常に長かったのでしょうか。

○機構 やはり、ニーズの検討会以降に、医師主導試験を実施しておりまして、その結果を待って、また申請時準備等にも時間を要しておりますので、そこに時間が掛かっているものと考えます。

○笠貫部会長 その間に、先ほど参考資料の話が出たのですが、そうした冠動脈ステントが実際に使われていて、臨床の現場としては代替品がないと、非常にニーズが高いのだという結果が出た場合に、先ほどの海外のWingspan and Gateway Safety Study、それからNIHファンデッドレジストリーとUS Wingspanの登録研究と、先ほどのSAMMPRISスタディがあったと。その文献からの申請等は考えられなかったのですか。どうしても、日本で先ほどの医師主導治験の20例が必要だったという判断で延びたのでしょうか。

○機構 これに関しては、そもそも米国の臨床試験がHDEという安全性を確認する試験であったことと、医師サイドもやはり脳動脈頭蓋内ステントということで、日本の中で治験において安全性を確認すべきという意識もあり、機構と開発を望む医師サイドとの協議の結果、治験をした方がこのものの有効性と安全性を評価し、なおかつ市販後に安全に導入できるだろうということで、このような形で進めさせていただきました。

○笠貫部会長 この代替品のない医療機器を、どう早期導入するかについては、先ほどの無作為試験のSAMMPRISスタディが終わった時期は、いつですか。アメリカでのHDEとして、三つのスタディが終わったのが2006年だとすると、既にその時点ではニーズの高い医療機器の検討会から選定されていることにはなるのですが、それだけでは欧米のUS Wingspan登録研究と、NIHファンデッドレジストリーでは、その資料としては足りない、国内で20例必要だという判断をした根拠をお話いただけたらと思います。

○機構 先ほど説明申し上げた通り、導入を希望される医師の協議の結果もありますし、こちらはニーズの高い医療機器の検討会でニーズ医療機器には選定されておりますが、そちらの報告書の中でもこの臨床試験の必要性に関して、米国で行われたWingspan and Gateway Safety Studyやそれらの臨床試験に加えて、国内で一定の臨床試験データを収集することが望ましいという報告も出ており、ニーズは高い医療機器で早期導入は必要であるが、国内での臨床成績も必要であろうというニーズの検討会結果も踏まえ、国内での臨床試験を実施しております。

○笠貫部会長 ということで、この早期導入に関する検討会でも、代替品はないが、欧米のデータだけでは駄目で、国内の20例が必要だと判断された機器だと理解していただけたらと思います。ほかに、質問はありますか。その結果、今、SAMMPRISスタディではむしろ実機の方が悪い結果だったと報告されたということで、FDAがその適応を変えたことについて、この審査報告の中でも日本での臨床治験の適応を変えたものとして、こちらに本日の適応症として上げられてきたということなのですが、そちらについての御意見はありますか。

○梅津委員 フレキシブルに次々に変えるやり方は、私は非常にいいと考えております。その理由は、やはり一番初めに決めて何もかもそれに従わなければいけないという、かつてやっていたようなやり方では、なかなか新しいものやいろいろなことに対応できないと思います。特に、アジア人のような、欧米人と異なることは、いろいろな場面で出てきます。例えば、オーストラリアで白人とアジア人を順番に手術していると、夜に再開胸が起こるのはほとんどアジア人なのですね。ですから、同じようなことが起こっています。そのようなことを加味して、日本はどうなのかというものをここで一つやったことは、私は意味があると考えております。

○笠貫部会長 ほかに御質問、御意見はありますか。

○塩川委員 私は、脳卒中の外科を専門にしております。本件の必要性や外国の検討でも、国内の検討でも、なかなかリスクも伴うけれども必要だという状況はよく理解しております。お尋ねしたいのは一つだけで、仮にこれが世の中に認められて出たとしたときに、添付文書が付くと思うのですが、今回の検討資料には添付文書案が付いていないようで、やはり決め方のところでいろいろと今説明されたような事情ですが、承認されたと。この添付文書案が付いていないのは、何か理由があるのでしょうか。

○事務局 添付文書案については、申請書の一番最後、お配りしている資料ですとオレンジ色の添付資料概要というタブがありますが、その直前に挟み込まれているものになりますが、落丁等はありますか。

○塩川委員 送っていただいたものには、それが入っていなかったです。

○事務局 申請書の別紙9-1というのが、オレンジ色のタブの直前に。

○塩川委員 失礼しました。そういうことであれば、よろしいです。今のいろいろな外国の論文の話の部分が十分記載されているかと思います。要するに、添付文書は世の中に一旦出た後はいろいろなことがあったときの文書が一人歩きするというか、判断材料に使われておりますので、すみません、見落としていたので、今斜め読みしております。今、正に話されているような、リスクはあるが必要であるということが十分記載されていればよろしいのですが、それは記載されているのでしょうか。

○事務局 こちらについては、別紙9-.に、臨床試験成績が載っております。こちらに、国内臨床試験と海外臨床試験と記載されております。こちらの海外臨床試験というのが、先ほどから議題に上っておりますSAMMPRIS試験の結果になっております。こちらについては、患者の登録が途中で打ち切られた旨や、積極的、内科的治療群と本品併用群で比較して、本品群で有意に悪い成績が得られていた結果は、記載されております。

 また、現状添付しております資料については、今後改訂作業を進めているところですが、このSAMMPRIS試験の結果を受けて、本品、積極的、内科的治療に先行して行うべきではない旨に関しては、警告欄に追記を予定しております。

○塩川委員 分かりました。これは次の案件でも、検討するときには重要な文書になるので、タブを付けていただくとよろしいかと思います。

○事務局 今後、抜けないようにいたします。

○笠貫部会長 ほかにはありますか。

○齋藤委員 このような血管内操作をして、短期合併症が増えるというのは、やはり血管内操作をすることに由来するものなのか、あるいはステント自体がそういう悪さをするのか、その辺りがこのデータからはよく分からないです。比較している群が内科的な治療ですので、そういった意味では短期の合併症のリスクは少ないわけですね。その辺りの原因は、どういうところにあるのでしょうか。

○小林参考人 いろいろな場合が考えられますので、一概な表現は難しいのですが、ただやはりこのステントをいきなり置くだけではなくて、その前に一旦バルーンで狭窄を広げておいて、それから置くという操作になるわけなのです。その広げたときに、解離が起こるなど、ほとんどはその段階で起こるので、ステントそのものの構造といった原因というよりは、やはりこの治療手技そのものの持っているリスクと考えた方がいいと思います。そもそも、広げなければならない血管そのものが、かなり末梢の方で、先ほど心臓のオフラベルでというお話がありましたが、あれでは見劣りする理由の一つが、あのステントでは目的の所まで達しない場合が多いのです。屈曲部を通れませんので、頭蓋内用のものが必要ということになります。やはり、多くの末梢の部分で、しかもとても脆弱な上に動脈硬化性の強い病変を操作するという本質的な治療法そのもののもつリスクが大きいということになると思います。デバイス独特の何か未完成さなどではないと思います。

○齋藤委員 本来、再狭窄をする頻度が高く、このようなデバイスが必要だということですし、内科的治療をやって開通しても再狭窄をする例が非常に高いので、このようなデバイスのニーズが高いということと思います。そういう意味では、今回はこういうデータで、海外の適応も少し変更があるようですので、もう少し整理されると、適応が拡大してくるのではないでしょうか。

○小林参考人 今回、SAMMPRISが非常にインパクトが強かったのですが、今後更にスタディが行われれば、また変わる可能性はないとは言えないと思います。ですから、このまま断ち切ってしまうデバイスではないと考えております。

○笠貫部会長 今の逆の質問になるのですが、これから適応が拡大されるかもしれないというのと逆に、これは最初に国内の臨床試験は50%~100%、欧米も50100%だったのが、このSAMMPRISスタディでこれは7099%になっています。ある意味で50%~70%の所を厳しくしているのですね。そこが、却って今のこのステントの適応、手技を含めて、まだ評価が十分されない時期に50100%はというのは、これはこのまま生きていることになると思うのですが、ここを数字でお示しにならない理由を教えてください。それから、使用目的の所での緊急処置と、血管形成術の適応ということで必要でないとしたのかどうかは、7099%とアメリカの適応を緩めた理由はどこにあるのでしょうか。

○機構 米国FDAが血管の狭窄率を50%以上~70%以上に変更した理由については、FDAのパネルの結果が公表されております。その根拠となったのが、先ほど説明の中でも少し述べましたが、ワルファリンやアスピリンを用いた薬物療法の臨床試験において、70%以上の狭窄を有している患者が2年以内に25%は同側の脳卒中を発生するというところで、再発率が非常に高いという過去の文献報告がありました。その結果を踏まえますと、狭窄率が高い所は本品のベネフィットが出やすいであろうというところで、そのようなリミテーションがかかっております。

 ですので、50%以上と70%以上で米国において明確な比較が行われた事実はありませんので、そのような文献考察から米国FDAは変更したと把握しております。本邦において、そこを規定するかしないかについては、やはり本邦においては50%以上のデータで治験が行われており、70%以上と比較した場合どうかというデータが本邦においては得られていない状況もあります。こちらに関しては、関連学会の適正使用指針の中にも、やはりそこのPTAをどの狭窄率からやるかに関しては、良いか悪いかを判断できる材料が国内にないというところで、今回の基準、学会の適正指針には盛り込めないと聞いておりますので、まだそこを明確にリミットを書けるというエビデンスが国内では蓄積されていないものと考えております。

 ですが、適正使用指針の中にありますように、血管拡張術、PTAは、一定の割合で本品を使わなければいけない手技である旨を明記していただいております。また、本品の手技については、先ほどから出ておりますように、SAMMPRIS試験で余り積極的、内科的治療と比べて好ましくない成績が得られているところも明記されておりますので、そのような点を踏まえ、先生方には他の血管内治療以外の内科の先生ですとかと相談の上で、本品を使うようにというような指針になっているかと考えております。ですので、そのような状況を踏まえた上で、慎重にリスク・アンド・ベネフィットバランスを考えて使っていただくことが、現状できる最善の措置ではないかと考えております。

○笠貫部会長 アメリカの場合には、70%以上は2年間で25%の脳梗塞が起こるという臨床疫学をもとにして、70%にしました。日本には、50%~70%のデータがありません。しかも、本品がSAMMPRISスタディでは、実機の方が結果としては脳卒中の頻度が高いということになりますと、日本で50%からという範囲を広げることについては、むしろリスクは高くないでしょうか。

○機構 先生のおっしゃることはごもっともだと思います。ただ、まだ70%狭窄時のものが25%の報告で、1報のみのところを根拠にして、FDAがそこを絞ったところもあります。ただ、そこに関して明確にデータとして、それは正しいかどうかも不明な部分もありますし、実際に今回薬物治療を行っても効果が得られない患者で、ほかに手がないというような患者に絞っておりますので、そういうところで今回適用を含めてやっていただき、今後当然PTAの患者に関しては、学会とも相談しながらどのように行っていくべきなのかは指針等を作れればいいと思っております。学会と、今後の市販後に関してデータを集めながら対応していきたいと考えている次第です。

○笠貫部会長 小林参考人にお聞きしますが、例えば50%からというのと70%からというときに、適応として実施する医師の受け方は随分違うと思うのですが、そのことによってこの実機が使われ過ぎるというか、まだこれだけリスクもありますという研究が出た段階で、そのリスクは臨床の現場としてはないのでしょうか。

○小林参考人 50%という数字が、そもそもどこから出てきたかというようなこともあると思うのですが、恐らく頸部の狭窄のときに無症候性で7080%、それから症候性の場合は50%という辺りで線を引いた経緯が、今回の治験のときにも影響したのかと思います。少し科学的なお答えではないのですが、現在SAMMPRISスタディの内容は我々にとって大きなもので、少なくとも50%の狭窄率で手を出すことはあり得ないと思います。そのことについては、学会からの指針でなるべくしないようにと言っているような指針にも読めるぐらいの厳しいものを書いておりますので、実際にはそう適応を簡単に広げる人はいないだろう、それが現実だろうとは考えております。ただ、非常に詭弁的なことを言えば、もしかすると5070%の狭窄のものに先にステントを入れてしまえば、低リスクでその後の脳卒中が長期に予防できるという結果が将来的に出ないとも限らないわけで、この辺りの全てを証明するのはなかなか難しいことだと思うのですが、現在までのスタディの流れからいくと、やはり70%以上は狭窄率としては必要な条件になると思います。

○機構 部会長、これはレスキューデバイスということで、こちらは承認を下ろさざるを得なかったといいますか、そのようなところで、必要な人には使用していただこうということで、そもそも術前の狭窄率を規定することがPTA、血管形成術に関しては、今そういったところを規定なく既承認品が出ている現状があります。そういったところに関しては、適正指針を見ながら医師が判断していただき、それでも解離が起こったり、十分な拡張が得られない場合にのみ使用していただくという意図で使用目的を書いておりますので、審査側としては米国より広げたという意識はないということを御理解いただければと思います。

○武谷委員 この種の治療法は、必ずしもエビデンスベースドではないですが、ほかに代わり得るものがないということで、チャレンジングな方法ではあるけれども、今後いろいろと検討を重ねて、臨床応用をすることに関しては理解するものです。ここで、必ずしも議論することではないかと思いますが、小林参考人という専門の方がおられますので、この種のデバイスが出てくると、当然学会として脳血管の狭窄に対する治療法の全体のガイドラインにも何らかの影響を及ぼすことになるわけですね。そうしますと、この適用に関して、脳血管拡張形成術のあとに、このようなシリアスなコンプリケーションが生じた際には、これを使ってもよいというのか、使いましょう、あるいは使わなくてはいけないというように、どう解釈するかによって、ガイドラインが変わってくるわけで、もしこの解釈の仕方によっては、血管形成術のあとにコンプリケーションが起こった場合、このようなレスキューデバイスに習熟していなければ、血管形成術は行ってはいけないというメッセージになるかもしれませんし、これはまだチャレンジングだからオプショナルなものであり、各病院で個別的に判断していいということにもなりますので、これを承認することによって、これが与えるインパクトをどのように考えるかということになります。

 我々としては、ただこれを承認するのであり、そんなことは関知しないのだから、これは専門家にお任せしたいということでもよろしいかと思います。ここに書いてある使用目的の解釈によっては、これがいろいろと波紋を呼ぶこともあるのではないかというような気もいたしますが、そこはどのように考えたらよろしいのでしょうか。

○小林参考人 大変重要な御指摘だと思います。今回の承認が先ほど機構からありましたように、基本的にレスキューデバイスになるわけです。その元になっている風船を使った血管形成術についての承認の段階では、強い縛りがなかったところで、順序が逆転してしまっているところが、一つ問題になっています。元の治療法が余り適応が厳しく決まっていないもののレスキューデバイスになりますから、あとから以前に承認されたものに対してどういう縛りを付けるかは、恐らく承認というプロセスでは難しいのではないかと思います。それに対しては、やはり学会が使用者として、そこの部分に対してステントを使う前の段階で血管形成術をやるべき症例に関して、きちんとしたメッセージを出すことがまず重要だと考えています。ただ、先ほど言いましたように、承認されているものに対して学会が制限を掛けていいのかという、次元の違う話と重なってしまうと思います。学会としては、このような適正指針という形で、そもそも血管形成術を慎重にやりなさいということをメッセージとして強く出す方針でやっております。

 もし何かが起こったときには、ステントを使うべきかどうかについては、最終的には術者の判断になりますし、ステントでレスキューできるものというのは、急激な再狭窄や、これから出血が予想されるような解離に対しては意味がありますが、例えばそれで血管が破けてしまったというような場合に、更にそこにステントで物理的な刺激を与えることがいいか悪いかの判断は、一概に言えるものではないと思います。その辺りのことについては、トレーニングコースなどでそのようなリスクについて教育するという対応しかないと思います。

○千葉委員 今までの話からしますと、このような理解でよろしいのでしょうか。最初に内科的治療を行い、不可能な場合には、バルーン拡張式カテーテルを使います。これは、冠動脈カテーテルでしょうか。それでも不可能な場合には、レスキューデバイスとして今回のステントを使うという基本的な流れが、これからはガイドラインに出るだろうという理解でよろしいのでしょうか。

○小林参考人 薬物治療、それからSAMMPRISでは、血圧等のコントロールまでかなり厳格にやっていますが、まずそれをやることは大前提になると思います。そのあとに、それでも脳梗塞を再発しそうな場合には、そのときに使う血管形成術のカテーテルは、頭蓋内用として承認されたもので、それは冠動脈用ではなく、既に2001年に承認されている頭蓋内用のものを使うと思います。それで何か起こった場合、急激な再狭窄や解離が起こった場合には、このステントでレスキューできる場合があるという順序になると思います。

 それから、PTAをして、当然薬物治療もそのまま続けたのだけれども、数か月後に再狭窄が起こった場合は、やはり広げてステントを置くというのも一つの適用としてはあり得るかと思います。

○千葉委員 第2段階のバルーン拡張式カテーテルというのは、これは飽くまで頭蓋内用専用のものであり、冠動脈用のものを適応外使用するものではないということで、よろしいですね。

○小林参考人 はい、それは承認されたものです。先ほど申し上げましたように、その承認の段階で適応については余り細かいディスカッションがなかったのが問題で、むしろレスキューデバイスの方でそこが出てきてしまったところが、順序として難しくなってしまった原因なのです。

○千葉委員 分かりました。

○笠貫部会長 そうしますと、今の頭蓋内の脳動脈狭窄症に対するバルーンカテーテルについての薬事法上の適応については、余り縛りがなかったことを含めて、今回のステントについてはかなり適正使用指針として厳しくお書きいただいているのだと思います。先ほどの、どういう手順でこれを普及していくかという先生のお考えはお聞きできたのですが、今お二人の委員の先生方から出たガイドラインですね。ガイドラインの場合は、必ずエビデンスのレベルの話と、リコメンデーションのレベルの話とを含めて、今回のステントも含めて、ガイドラインを作られている、あるいは準備をしているということはありますか。

○小林参考人 当日配布3と書いてあります適正使用指針案が、今3学会で出しているものになります。実際に、ガイドラインでどこまで縛っていいのかという問題が解決されていないのではないかと思います。ガイドラインは、飽くまで医学的な知見から、こうあるべきだということを示すものであり、承認や適応とは少し感覚が違うと思うのです。

○笠貫部会長 ここでできる範囲というのは、今日のような議論の範囲で、薬事法の中でしかできません。ここで学会にお願いしているのは、こういうことを踏まえて適正な使用ができるように、病気と治療法全体を見極めた上で、この機器をどのように位置付けして、どのように使っていくかというガイドラインづくりを併せてお願いしているものです。先生方で新しい今回のステントも含めたガイドラインづくりをしていただけるでしょうかというお願いです。

○小林参考人 私は、学会の中でガイドラインを作る直接の担当ではないので、私が簡単にお答えするわけにはいかないのですが、学会の理事会の中でそのような御要望が非常に強くあったということは伝えまして、なるべくそういう形にすることと、先ほど塩川先生からの質問に対するお答えにあったように、警告というような形での添付文書での表現と併せた形で、今議論のありましたような問題がいい方向で解決されるように努力いたします。

○機構 事務局から、今の点に対して補足いたします。本品は新医療機器ですので、市販後調査が始まってまいります。原則、本品を使ったものは全例を登録していく予定ですが、これに加えて関連団体と協力の上、本品を使う前のPTAバルーンでの拡張も含めて、何らかの形でデータを取っていくことができないかを、学会の先生方とも相談しておりますので、そのような形で本品を使う治療、及びその前の治療も含めて実態を調査し、エビデンスを蓄積していくことは、できるかどうかは別にして、今、検討している状況です。今後、そのような薬物治療からPTA、その後のレスキューも含めて、適正な指針等ができる可能性を見据えてデータを集めていくように、企業とも協力して行っていきたいと考えております。

○笠貫部会長 こういったリスクを伴う、しかし代替品のない新しい医療機器については、是非企業だけではなく、学会に協力を要請して、全症例登録、あるいはガイドライン作成をしていただくことを、この場で強く要望があったことをお伝えいただきたいと思います。それ以外には、特にありませんか。今言ったようなことは、少し薬事法から離れるかもしれませんが、条件付きでなるかどうかという事は分かりませんが、そういうことを強く求めたいと思います。

 それでは、特に御意見がないようでしたら、議決に入りたいと思います。医療機器ウィングスパン ステントについては、本部会として審査報告書にある条件を付した上で、承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は3年間とし、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということで、よろしいでしょうか。

 それでは、御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告することにいたします。

 議題1が終了いたしましたので、参考人の小林先生におかれましては、御退室いただいても結構です。どうもありがとうございました。

──  小林参考人退室  ──

○笠貫部会長 それでは、議題2に移ります。「医療機器『Jarvik2000植込み型補助人工心臓システム』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」審議を行います。中谷委員については、議題2の審議の間、別室で待機いただくことにいたします。

──  中谷委員退室  ──

○笠貫部会長 本議題の審議に当たっては、参考人として上尾中央病院心臓血管外科診療顧問の手取屋岳夫先生にお出でいただいております。よろしくお願いいたします。まず、審議品目の概要について、事務局から説明をお願いします。

○事務局 資料2に基づいて、議題2について事務局から御説明いたします。1枚目が諮問書です。具体的な品目の概要については、審査報告書1ページです。一般的名称は植込み型補助人工心臓システム、販売名は「Jarvik2000植込み型補助人工心臓システム」申請者は、センチュリーメディカル株式会社です。平成213月に希少疾病用医療機器として指定されております。

 審査報告書6ページ、7ページの審査品目の概要を御覧ください。図1に構成品、図2にシステム構成図、図3に血液ポンプ外観写真、図4に血液ポンプ断面図が示されております。本品は軸流式ポンプ、アウトフロー人工血管、コントローラーなどから構成される「植込み型補助人工心臓システム」です。左心室心尖部にポンプ本体を植え込み、左心室から脱血、人工血管を介して大動脈に送血します。胸骨正中切開法、又は左開胸法の2通りの方法で植え込むことができます。

 使用目的については3ページを御覧ください。一番下に記載されていますが、これまで承認された植込み型補助人工心臓システムと同じ使用目的となっております。また、4ページに実施施設、実施医基準を設けるなど、3項目からなる承認条件が記載されております。詳細については機構より御説明いたします。

○機構 審議事項議題2、資料2「医療機器『Jarvik2000植込み型補助人工心臓システム』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、機構より御説明いたします。本品目の概要について厚生労働省より説明がありましたが、再度御説明申し上げます。審査報告書6ページ~7ページを御覧ください。本品は、センチュリーメディカル株式会社により申請された、植込み型補助人工心臓で、図2にお示ししておりますように、体内に血液ポンプを植込み、体外にケーブルを通し、コントローラーに接続し、制御と電源供給を行います。本品は、ポンプ本体を左心室の心尖部に入れ込む構造であることが特徴です。

 従来の植込み型補助人工心臓は、胸部の中央を開く胸骨正中切開法で植え込むものですが、本品は左側を開く左開胸法でも植え込むことが可能であることが特徴の一つです。なお、本システムは医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において、早期承認対象品目に選定されております。また、希少疾病用医療機器に指定されております。

 次に開発の経緯を御説明いたします。審査報告書8ページから御覧ください。本システムは米国で開発されたもので、米国臨床試験中に、8ページの下の()から9ページの()までの大きく4点の変更が行われました。変更は、表面加工の追加、コントローラーの機能の追加、ケーブルの構造変更、軸受の構造変更です。本品の当初申請時には、旧型である軸受変更前のピンベアリングポンプが申請されました。

 続いて申請後の経緯を御説明いたします。審査報告書11ページの()から御覧ください。申請者は、申請後に本日御審議いただく新型のコーンベアリングポンプに変更することを要望しました。理由は、欧州市販後の成績が良好であったということです。総合機構としては、申請内容の大きな変更は、再度審査を行うことになることから、原則として認めておりませんが、当初申請品の旧型において、ポンプ交換を行う必要があるほどの有害事象が多い傾向にあったということ、希少疾病用医療機器であることなどを考慮し、患者の利益のため、迅速な審査を行う必要があることから、申請後に変更することはやむを得ないと判断し、コーンベアリングポンプに関する資料の追加を指示しました。臨床試験の取扱いについては後ほど御説明いたします。

 続いて、外国における使用状況について御説明いたします。審査報告書12ページを御覧ください。本システムは、旧型、新型、本邦未申請のモデルである耳介用ケーブル型ポンプを含め、EUで認証を取得されております。今年の8月末時点で□□台が出荷されております。米国では、10月現在未承認です。外国における不具合については、対策、リスク低減措置は受入れ可能と判断いたしました。

 次に、非臨床試験成績について御説明いたします。概略は審査報告書13ページから記載しております。申請中に、新型のコーンベアリングポンプに変更されたため、新型のコーンベアリングポンプに関する試験成績の追加提出を指示し、追加された資料を含めて審査しました。審査の結果、非臨床試験で確認できる範囲においては、植込み型補助人工心臓としての有効性及び安全性は確認できたと判断いたしました。

 続いて、臨床試験成績について御説明いたします。審査報告書19ページから御覧ください。まず20ページを御覧ください。まず、当初申請時においては、旧型のピンベアリングポンプの臨床試験成績が提出されました。その後、申請者は、先に御説明したとおり新型のコーンベアリングポンプに変更することを希望しました。総合機構は、新型のコーンベアリングポンプの症例数が、有効性及び安全性を一定程度評価可能な症例数に達した時点で報告書をまとめ、提出するよう指示しました。

 このとき機構は、国内治験が旧型のピンベアリングポンプを使用したものであることから、新型のコーンベアリングポンプを使用して国内治験を行う必要がないかを検討いたしました。この結果、旧型のピンベアリングポンプを使用した国内治験で、コントローラー等の体外機器を含むシステム全体が、本邦においても在宅使用を含めて適切に使用され、管理されることが可能であることは確認できると考えたことから、新型のコーンベアリングポンプの有効性及び安全性が米国ピボタル臨床試験により評価可能であれば、国内において新たに前向きに追加の臨床試験を行う必要はないと判断いたしました。ただし、後に述べますが、国内での使用例がないので、市販後に使用成績調査を行い、慎重に観察することは必要であると考えております。

 このため、申請者は、米国ピボタル臨床試験において、新型のコーンベアリングポンプの症例数が、「次世代型高機能人工心臓の臨床評価のための評価指標」でピボタルスタディにおいて必要とされている症例数、15例に達した時点で、試験成績を報告書にまとめて提出しました。しかしながら、米国ピボタル臨床試験において、被験者の同意取得に用いた説明文書に、米国FDA以外の機関が調査を行うことに関する記載がなかったことから、米国医療機関が機構のGCP実地調査を拒否しました。このため、米国ピボタル臨床試験のGCP省令への適合性の確認が困難となりました。

 申請者は、追加の同意説明文書により再同意の取得をすることとし、新型のコーンベアリングポンプ植込み24例中17例の再同意を取得しました。機構は、最終的に再同意が取得された17例を添付資料として審査することとし、その他に再同意が得られなかった症例を含む、新型のコーンベアリングポンプの症例24例のデータ及び旧型のピンベアリングポンプの症例のデータを審査いたしました。

 まず、米国ピボタル臨床試験の概要を御説明いたします。審査報告書21ページを御覧ください。本試験は、米国で行われた多施設共同非盲検非対照試験で、末期重症心不全で、心臓移植を待つ患者を対象に、心臓移植までのブリッジとしての有効性及び安全性を評価するために行われました。解析対象症例数は150例を目標として、脱落を考慮して160例の登録を目標として実施されました。主要評価項目は、植込み手術後180日間、又は移植に到達するまでの補助循環の成功率で65%を目標とされました。結果は表3に示すとおりとなりました。

22ページを御覧ください。GCP調査対象の17例の試験成績について御説明いたします。主要評価項目の成功率は100%でした。安全性については死亡例はなく、23ページの表4の有害事象が観察されました。また、17例には死亡例が含まれていないことから、GCP調査対象とならなかった症例を含む24例の成績も評価しました。その結果、成功率は91.7%でした。死亡例は2例で、1例は原因が特定されず、1例は多臓器不全等による死亡でした。重篤な有害事象は25ページの表6に示します。

 続いて、参考までに旧型のピンベアリングポンプの成績を御説明いたします。成功率は64.1%でした。死亡例は41例で、原因は26ページの表7のとおりでした。有害事象は表8及び表9に示します。旧型のピンベアリングポンプにおいては29ページに示すとおり、13例でポンプ交換を行いました。

 続いて国内治験において御説明いたします。30ページから御覧ください。本試験には6例が登録され、5例が180日後に補助を継続しており、180日間の成功率は83.3%でした。死亡例については、感染を起因とするものでした。安全性については31ページ~32ページに有害事象、不具合等をまとめております。また、国内治験の被験者のうち、180日間の観察期間終了後も補助を継続していた症例5例は、継続治験において観察を継続しており、5例全例が心臓移植を受けました。5例の補助期間の有害事象等については33ページを御覧ください。

 以上の非臨床試験及び臨床試験成績を踏まえ、本品の審査における主要な論点について御説明いたします。審査報告書51ページの総合評価を御覧ください。一つ目の論点は、本品の有効性です。米国ピボタル臨床試験においては本品が使用され、かつ本邦のGCP調査対応についての再同意が取得された17例の成功率は100%でした。再同意が取得されなかった患者を含む、本品が使用された24例の成功率は91.7%でした。国内治験については成功率が83.3%でした。有効性について、患者背景や試験を行った時期、国等に違いがあるため単純に比較を行うことは困難ではありますが、本品の植込み型補助人工心臓としての有効性が、既承認品と比較して大きく劣ることはないため、受入れ可能と判断いたしました。

 二つ目の論点は本品の安全性です。症例数は限られているのですが、安全性については死亡原因は他の植込み型補助人工心臓のデータと大きく変わらないことが示されました。有害事象についても、他の植込み型補助人工心臓で観察された有害事象の発生傾向と大きく変わらないことが示されました。ただし、アウトフロー人工血管のキンク、それから消化管出血について、審査報告書41ページと45ページに示すように、特に検討いたしましたが、キンクについては保護用の人工血管の併用を推奨すること、消化管出血については、医療機関に情報提供を行うことといたしました。以上を踏まえ、本品が腹部にポンプを留置するスペースが不要であるということ、重量及び容積が小さいこと、左開胸法で植え込むことが可能であることなどの特徴があることも踏まえ、本品を臨床現場に提供することは意義があると考えております。

 三つ目の論点は、市販後の安全対策です。既に国内で承認された植込み型補助人工心臓の使用成績も踏まえると、有害事象の発生は避けられないと考えておりますので、市販後に生じた不具合及び有害事象に対する適切な対応により、健康被害を最低限にとどめることが重要であると考えております。したがって、不具合に対する迅速な対応が図られることや、本品について十分に理解した医師により、実施体制の整った医療機関において使用されることが重要であると考えております。以上を踏まえて、本品について十分に理解した医師により実施体制の整った医療機関で使用されるよう必要な措置を講ずるべき旨を承認条件1として課すことが妥当であると判断いたしました。

 また、本品はバッテリーが外れることによって、ポンプ停止により患者死亡のリスクがあると考えます。このため、バッテリーが外れることが死亡に直結するということを、患者に対する定期的な講習を徹底するとともに、電源が停止するリスクの低減措置を更に検討し、必要に応じて仕様の変更を含めたリスク低減措置を行うことを指示することが妥当と判断いたしました。

 さらに、本品は医療機関外で使用が想定される医療機器であることから、在宅プログラムにおける医療従事者、患者及びその介護者に対する講習等を徹底し、十分な支援体制を取ることが必要である旨を承認条件3として課すことが妥当であると判断いたしました。

 四つ目の論点は、長期使用時の有効性及び安全性の確保です。日本の心臓移植に関する現状を踏まえると、本品による補助期間が長期化することが懸念されます。海外においては、本品の2年以上の長期の補助実績がありますが、長期の有効性及び安全性については十分な検討はされていないと考えております。また、国内においては本品の使用成績が得られていないことがありますから、本品を使用する症例全例の使用成績調査を行い、長期予後を慎重に観察していくことを承認条件2として課すことが妥当であると判断いたしました。

 以上の審査を踏まえ、総合機構は本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。希少疾病用医療機器であることから、再審査期間は7年とし、使用例全数について使用成績調査を行うことが適当と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しております。また、トラッキングの対象である特定医療機器に該当すると判断しております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。事前に委員の先生方から頂いた御意見はありません。総合機構からの報告は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○笠貫部会長 参考人の手取屋先生から何かありますか。

○手取屋参考人 今現在使われております様々なアシストデバイスの中でも、最も安全なものの一つとして認識しております。いろいろなことがありますけれども、当該患者、必要な患者というのは非常に重症ですので、様々な合併症を乗り越えての医療のサプライの一つということで、機構から説明のあったとおりです。

○笠貫部会長 委員の先生方から御質問、御意見がありましたらお願いいたします。

○齋藤委員 合併症、トラブルの中で約8%が体外機器で記載されています。先ほどお話がありましたが、電源の辺りの問題というのはいろいろ工夫されているようです。電源が止まったときに補助電源で動かすといった工夫というのは、その可能性のあるリスクに対して予防的に動かすような装置が組み込まれているものなのですか。

○機構 本品については、バッテリー一つを常にコントローラーに接続して、交換のときにはそのバッテリーが、電源が途絶えないように交換する仕組みはあります。しかし、その一つの電源が切れてしまうと、それを補助するようなバッテリーは搭載されておりません。これまで承認されております補助人工心臓でもそういう問題があって、これまでのものでは二つの電源を接続しておくものもありましたが、両方の電源が外れてしまうことによってポンプが停止することもありました。

 本品についてまず重要なことは、先ほど御指摘がありましたとおり、不具合に対する対応は既にリスク低減措置がされていて、一定程度の改善はされているということ、あとは、電源が途絶しないように、患者及び介護者に十分にトレーニングを行うことです。それで、本品の重要性といいますか、重篤な疾患であることなども考慮すると、そのバッテリーが途絶するリスクは否定できないのですが、本品を承認できないほどのものではないと判断しております。ただし、御指摘のとおり大変重要な問題だとは認識しておりますので、指示事項1として、更なるリスク低減措置を行うことを企業に課すというように考えております。

○齋藤委員 この機器の位置付けですが、海外ではテンポラリーなデバイスという認識なのでしょうか。日本では、比較的パーマネントな機器として考えられているのですか。その辺の位置付けについてお聞きします。

○機構 海外では、欧州で認証を取得して販売されておりますが、その場合の使用については、まず一つが日本と同じように心臓移植までのブリッジ使用ということで承認されております。もう一つの使用目的としては、パーマネントな、いわゆる永久使用といいますか、デスティネーションセラピーという言葉を使っておりますが、心臓移植に達するかどうかは別として、補助に使うということで欧州では使われております。

 ただし、日本においては臨床試験もそうでしたが、心臓移植までのブリッジとしての使用として申請者も考えていて、総合機構としても提出された資料からは心臓移植までのブリッジ使用とすることが適切であると考えています。テンポラリーな使用とおっしゃいますと、もっと短い期間ということでしょうか。

○齋藤委員 救急的な対応に使われることもあるのですか。

○機構 申請者から提出された資料に限ってですけれども、テンポラリーな救急の使用で使われたということの報告はされておりません。

○武谷委員 補助人工心臓というのは、これ以外にも先ほど紹介されたテルモとか、ニプロとか、サンメディカルとか幾つか出て、これが承認されるとなると四番目になるのでしょうか。小型化されたということもこれの特徴ということのようですが、これを何年も、あるいはパーマネントという話もありましたけれども、患者さんにとっては騒音とか振動とかQOLにかなり影響されるかと思います。その点に関して、従来の現存するものと比べて、はるかに進化したのか、あるいは考え方として4種類も5種類もこれからまた出てくるかもしれないけれども、施設とか、術者とか、患者にカスタマイズされて、それぞれに合うものを選べます。チョイスが増えることはいいということで、絶対的に現存のものとこれのクオリティ、性能ということを比較するものではないと考えてよろしいのですか。

○手取屋参考人 このような機械は世界にはまだ多くあります。基本的には拍動流といって、人間の生理的な心臓の動きに似たような、機械はかなり大きな音をしておりました。それから軸流の場合も、騒音はその患者さんの体形にもよるのですけれども、少なくとも腹部に直接当たっていた機械よりもかなり軽減している、いわゆるアノイングは少なくなっていると聞いております。

 このような機械に関して問題なのは、機械自体が何か大きなトラブルを起こして、製造がストップしたりということがこれから起こってくるのではないかと思います。一旦こういうアシストデバイスという、補助人工心臓という文化をこの国が受け入れたのだったら、ある程度のセーフティネットというか、ある機械が不可能なときに次に移行する、という処置も必要なのかもしれません。

 機械自体は次々に小さくなって更に入れやすくなって、そういうことで先生がおっしゃったように、パーマネントに向けて、いわゆる永久使用に向けて進んでくるとは思うのですけれども、その段階になると、おっしゃるようにいろいろな社会的要求も出てきますので、そう簡単にはいかないのが現状です。それを踏まえて、一つ一つ慎重に導入していただければと思います。

○村上委員 装置そのものに関することなのですが、旧型のピンベアリングタイプからコーンベアリングに変えたということですが、ピンだとピボットというタイプになりますので、そういうことで淀みができるところが問題だったと思うのです。それをコーンという円錐で支えるということで、基本的に解決されたということで、そちらの方で承認されるというのは非常に良い判断をされたと思います。

 そういう状態で、その軸受の所で浮いた状態であればいいのですが、今回は摩耗の測定をされていると思うのです。この場合の摩耗といいますか、一つは材料としてピンとスリーブがあるのですけれども、ピンの方が□□□□□で、スリーブの方が□□□□□□□□□でしょうか。そのどちらの方が摩耗しているかということが、今後の検討になるかと思うのです。

○機構 コーンが□□□□□□□□□になっています。御質問は、どちらが摩耗したかということですか。

○村上委員 そうです。摩耗量としては、半径方向で10ミクロンというオーダーで、少ないのは少ないのですけれども、そういう異物が血管内に出ていくということなので、それはもっと減らしてほしいわけです。

○手取屋参考人 本邦ではまだ使用例がありませんのでよく分からないのですけれども、摩耗物質が全身に飛んでしまうということで、体のいろいろな部分に不具合があるという危険はあるのではないかと思います。それが、現在の医学レベルで正確に差が出るというほどのものではないことは、今のデータでは出てこないということです。今後、もしかしたらそういうものがディテクトできるようなデータベースが出てくるかも分からないということだと思います。

 こういう機械の場合は、摩耗に準じて、どうしても機械の交換ということも出てくるのかも分かりません。ですので、どの時点で、どういうふうに交換するかということに対しても、日本の場合は確かに移植に対する時間が長いですので、そういうことも踏まえて、今後、臨床的なデータを取る必要があると思います。

○村上委員 少し気になるのは、チタン合金は金属の中では耐摩耗性が良い方ではないということで、いろいろな表面処理等で耐摩耗性を上げるということが他の分野ではされています。そういう方向でかなり解決できるのではないかと思いますので、検討していただければと思います。

○機構 御指摘ありがとうございます。今、こちらの手持ちのものではどうかということのお話は難しいです。今、手元にある資料では、どちらが削れたということは明確には書いてありませんが、コーンベアリングポンプのベアリングの表面の摩耗についてデータが示されておりますので、コーンベアリングのベアリングの方の摩耗としてこちらは計測されています。確かに摩耗については、少ないとはいいましても多少あるものではありますが、その摩耗による何か不具合等が起こっているという報告はありませんので、本品については今のところそのような問題としてのリスクは許容できる範囲内であろうと判断しております。ただ、御指摘のとおり今後はその辺りについても慎重に審査をしたいと考えております。

○千葉委員 このポンプは、在宅治療プログラムまで設けられていて在宅までを考えていることはここに書いてあるとおりと思います。在宅になった場合に、ありとあらゆることが環境の変化が起こり得るわけです。極端に言えば、電子レンジ、自動販売機、空港に行けばレーダーがあるとか、これは言えば切りがないわけですが、どの程度までそういうことの影響がないのか、これはあるのかということを検討しているかどうかがまず1点です。

 それから、BSAでは区別しません。体格が小さくてもこれはよいものとして、BSAで区別しないということですが、年齢ではどうなのでしょうか。これは、年齢でも当然区別はしないということでしょうか。つまり、15歳以下でもこれは使うことがあるのだという暗黙の話なのでしょうか。この2点について教えてください。

○機構 家庭等の環境における電磁場等の影響についての御質問かと理解いたしました。それについては、通常医療機器で行われている電気的な安全性、電磁両立性の試験はまず行われております。ただし、いろいろな状況が考えられます。例えば、家庭用のIHのコンロというものもありますので、その点については、これまでの植込み型機器で、ペースメーカー等もそういう懸念があると言われているのですが、全てのリスクについて大丈夫であるということまで検証することはできておりません。その点については、添付文書において、そういうリスクは考えられるということを情報提供した上で、慎重に使っていただくことになると思います。ただ、申請者からの回答では、本機器については複雑な回路等は使っていないこともあり、これまでにそういう電磁場からの影響を受けたという報告もないということの報告を受けています。

 体格については、これまでの補助人工心臓でもそうなのですが、一概にBSAだけで判断できるものではないと考えております。第1に必要なのが、お腹の中のスペースが十分に人工血管の取り回しということも含めて、スペースが確保できるかということなどが植込み可否の判断には重要であると聞いております。年齢については、特に今回はこの年齢であれば問題ないですといったところまでの評価は十分にできておりません。

○手取屋参考人 年齢に関しては、当該医療機器が移植だとか、エンドステージの心不全に対する治療の一部ですので、その治療のどの部分を受け持つかによって変わってくるのではないかと思います。現実的には、60歳以上の高齢者で、移植というターゲットがなければ適用になることは少ないと思いますし、若年者の場合も移植とか、次の治療が見えてこないときにはなかなか適用としては難しいのではないかと思います。

 体表面積に関しては、先ほど来お話がありましたように、この機器は比較的小さいスペースで植え込むことができますので、その点の制限はないのですけれども、むしろものすごくBSAが大きい方の場合は、そのポンプが負担する血流が多くなりますので、そういうことも加味しながら機器を選択していくことが現実的に行われております。

○千葉委員 体格はこれでいいのだという主治医、あるいは判断があれば小児、いわゆる15歳であるかないかとか、子供であるとか、成人であるとかという区別はなく、あくまで体格を見たケース・バイ・ケースの判断であるということでしょうか。

○手取屋参考人 機械が持っている性能としての植え込みの基準はそのようになると思いますが、今までに申し上げたように、治療の一部としてそれがアクセプトできるかというのは、その臨床医の判断になると思います。

○梅津委員 在宅で家へ帰ってからの話なのですけれども、ここには「電源が途絶したときの低減措置を検討し」と書いてあるのですけれども、具体的にどんなことをやればリスクが低減するのかというイメージはあるのでしょうか。

○機構 理想的には、先ほど委員より御意見を頂きましたように、バックアップのものがあればよろしいとは思っているのですが、仕様の変更を直ちに行うことは難しいと考えております。本品についてはバッテリーを一つ使ったままでいるということと、予備のバッテリーを常に持ち歩くことは行っております。家で使用する場合には、据え置き型の大きいバッテリーで12時間の補助はできるということもあります。そういう周辺のオプションで何とかできる限りのリスク低減はすることになると考えております。ただ、今後企業としてこの点については重要視して、改良等にできる限り努力するようにという意図を込めて指示をしております。

○梅津委員 私もそれでいいと思うのですが、承認条件のところで、ある程度具体的にイメージが分かるような書き方をしておかないと、単なる低減措置をとるというだけでは、余りに誰も理解できないのかという気がしました。

○機構 ありがとうございます。

○荒川委員 溶血のことでお伺いします。軸流型の宿命で溶血ということがあるのだと思うのです。従来のHeartMate2.4%、今回のものは症例は少ないですけれども、4%ぐらいです。あるいは、国内の試験では6例で16件起きて、中等度のものも4件ということです。小型化した分だけ溶血率が余計に高くなっているのだろうと思うのですが、溶血率が上がっていることに対する問題点、それから中等度の溶血が見られた患者さんに対してどういう処置が考えられるのか、その2点について教えてください。

○機構 1点御質問についてお伺いします。溶血が多いというのは、国内の臨床試験のデータでしょうか。

○荒川委員 はい。

○機構 国内のデータについては、旧型のピンベアリングポンプを使用しておりますので溶血は多いと認識しております。コーンベアリングポンプの溶血については、症例数は少ないのですけれども、審査報告書23ページを御覧いただきますと、17例中1例で1件発生しております。25ページでは、24例になっても溶血1例で1件です。症例数が少ないので正確に比較はできないのですが、多くはないものであろうという判断はしております。

○荒川委員 やはり、症例数が少ないのでなかなか比較は難しいと思います。これで、本当に軸受を変えたことで溶血が少なくなったのか、もともと回転数が非常に高いので、その辺がきちんと評価できているのかをお聞きします。

○機構 御指摘ありがとうございます。総合機構としても、溶血も含めてこの症例数で十分に発生率が評価できているとは言えないと思っております。その点については、市販後調査において十分に観察するように指示しようと考えております。

○荒川委員 中等度の溶血が起こってしまったときに、どんな対処が考えられるのですか。

○手取屋参考人 ポンプを換えるしかないです。

○梅津委員 機構の代わりに説明するというのもおかしな話なのですけれども、実はこのポンプは軸流型であって、同じ回転型でも遠心型と軸流型があります。遠心型だと回転数が臨床例でも1,8002,000回転です。これだと1万回転近くになることがあります。それによって、小さい分だけ周速度が少し上がることはあるのですけれども、一般的な考え方だと、この程度の溶血だったら多分乗り切れるだろうと、腎機能との関係もありますけれどもと考えて、今まで一般的には来ているように思います。

○笠貫部会長 最後に私の方から、平成19年のニーズの高い医療機器の指定に選定されています。これが今の時期になった申請ラグと審査ラグなのですけれども、その辺についての質問が一つです。もう一つはそれとも関係するのですが、アメリカでこれだけピボタルスタディが行われていて、なぜFDAでまだ認可されていないで、日本で先に承認をするのか、この2点について教えてください。

○機構 後者の米国の状況ですが、米国のピボタル臨床試験はこの1年以内に終了したものです。いまだ米国において申請していないと聞いております。国内においては、米国ピボタル臨床試験の実施中で、申請時が平成22年2月です。米国ピボタル臨床試験が実施中ではあったのですが、申請を行うセンチュリーメディカル株式会社が独自にデータを収集し、予定されていない中間解析を行った結果をもって申請する意思を示し、そのようないびつな形態なのですが、米国の臨床試験が終了しないままで申請してきたという事情があります。

 期間がこれだけかかってしまった理由というのは、平成19年にニーズの医療機器に指定はされていたのですが、今回の申請に用いるパッケージとしては、米国ピボタル臨床試験のフルの150例のデータをもって申請する予定ではあったということがあります。その登録を待っていたのですが、なかなか臨床試験が進まないこともあり、中間解析を行って申請したということです。それまでの期間がまず申請までにかかっております。

 その後、先ほど御説明いたしましたとおり、ピンベアリングポンプよりも新型のコーンベアリングポンプの成績が良いので変更したいという希望がありましたので、コーンベアリングポンプの試験成績も追加したこともあり、新たにそれから試験を指示して行ったものもありますので、その試験がそろうまでにまた時間がかかりました。

 その後、データが集まったということで審査を再開しようと考えていたのですが、また、これも先ほど御説明したとおり、GCP実地調査を行えない状況に陥り、そこからGCP調査を行えるようにするまでにまた1年余りかかっています。そういう様々な事情が加算されて、このような長期間の審査期間になってしまいました。

○笠貫部会長 調査・審査する側よりも、申請する側にいろいろ問題があるのかという感じが心配だったのです。いずれにしても、この機械もJ-MACSできちんとフォローをするということは変わらないわけですね。

○機構 はい。

○笠貫部会長 他に御意見がなければ議決に入ります。梅津委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて、議決への参加は御遠慮いただくことにいたします。医療機器「Jarvik2000植込み型補助人工心臓システム」については、本部会として審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は7年間とし、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。

御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については薬事分科会において報告することにいたします。

議題2が終了いたしました。ありがとうございます。

議題2が終了しましたので、参考人の手取屋先生におかれましては、ご退室いただいても構いません。

──  手取屋参考人退室、中谷委員入室  ──

○笠貫部会長 議題3に移ります。「優先審査品目について」事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 報告事項議題3、資料3「優先審査品目について」事務局より御説明いたします。3品目御報告させていただきます。販売名はFreezor MAX冷凍アブレーションカテーテル、Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル及びメドトロニック CryoConsoleです。いずれも、日本メドトロニック株式会社から平成25年4月に承認申請された品目で、不整脈の治療に使用する冷凍アブレーション用のカテーテルと、専用の冷凍手術装置となっております。

 これらの品目については、平成24年7月3日に行われた第19回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において御検討いただき、我が国において早期に導入すべき医療機器だという御判断を頂き、選定された品目です。疾病の重篤度は高く、医療用の有用性が高いものとして、優先審査品目として審査を進めさせていただいている状況です。以上簡単ではありますが、御報告とさせていただきます。

○笠貫部会長 本件について御意見、御質問はありますか。よろしいようでしたら、本日予定した議題はこれで終了いたしました。事務局から連絡事項はありますか。

○医療機器審査管理室長 次回の部会は、122()16時を予定しておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。連絡事項は以上です。これをもちまして、本日の医療機器体外診断薬部会を閉会させていただきます。ありがとうございました。


(了)

備考
この会議は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 安川(内線4226)

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