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2013年12月11日 平成25年度第6回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成25年12月11日(水) 18:30~


○場所

厚生労働省22階専用第14会議室


○議題

化粧品のリスク評価について

○議事

○事務局 平成25年度第6回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全 開催します。本日御出席の委員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御出席いただきまして、ありがとうございます。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。

 本日の委員の出欠状況は、安全対策調査会委員5名全員の出席をいただいていますので、薬事・食品衛生審議会の規定により、本日の会議は成立したことを申し上げます。また、本日は参考人として、一般財団法人残留農薬研究所業務執行理事毒性部長の青山先生、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部の小川先生、城西大学薬学部の杉林先生、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長の西川先生、東京医科歯科大学皮膚科の横関先生に御出席いただいております。また、参考人をお願いしていた昭和大学藤が丘病院の中田先生、公益財団法人食品農医薬品安全性評価センター理事の納屋先生からは御欠席の連絡を受けております。

 ここからは議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。以降の進行は五十嵐座長にお願いいたします。

○五十嵐座長 事務局から審議参加に関する遵守事項について、御報告をお願いします。

○事務局 本日出席いただいた委員及び参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金、契約金などの受取状況を報告いたします。いずれの先生も、関連企業からの寄附金、契約金などの受取はないという御回答でしたので、全ての委員、参考人が審議及び議決に加わることができます。

○五十嵐座長 ただ今の御説明について、御意見、御質問はございますか。特にないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて、御了解いただいたものとさせていただきます。

 次に、事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。

○事務局 配布資料一覧がありますので、それと合わせて御確認ください。資料1「化粧品の安全性に係る調査結果報告書(システアミン)」、資料2「化粧品の洗い流すヘアセット料におけるシステアミンのリスク評価について」です。以下は参考資料です。参考資料1は、1998年に報告されたAssadiらのシステアミンの文献です。参考資料2は、1998年に報告されたBeckmanらのシステアミンの文献です。参考資料3は「洗い流すヘアセット料に関する自主基準」です。参考資料4は「チオール基を有する成分を配合した洗い流すヘアセット料の安全性の確認に関する留意事項」です。参考資料5「美容技術理論」です。参考資料6として、EUSCCSが作成した化粧品成分の安全性評価ガイドラインです。参考資料7は、「美容室での化粧品ヘアセット料の施術工程における薬剤の頭皮への接触に関する研究報告書」です。参考資料8An-eXが作成したシステアミンの人の皮膚への吸収量の報告書です。参考資料9はオーストラリアが行ったシステアミンの報告書です。参考資料10は「システアミンの経皮吸収性と安全性予測法」です。

○五十嵐座長 議題に入ります。事務局から資料の説明をお願いします。

○事務局 本日の議題「化粧品のリスク評価について」御説明いたします。本日取り上げるのは、国内で化粧品として製造販売されている洗い流すヘアセット料に配合されているシステアミン塩酸塩の生殖発生毒性に関するリスク評価についてです。

 資料1は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」)が作成した調査報告書です。システアミン塩酸塩は化粧品の洗い流すヘアセット料(以降「化粧品パーマ液」)の成分として用いられており、日本パーマネントウェーブ液工業組合が行ったアンケート調査によると、国内では少なくとも220品目以上のシステアミン塩酸塩を配合した化粧品パーマ液が販売されています。

 この組合の自主基準では、チオール基を有する成分の総量はチオグリコール酸換算で7%が上限とされておりまして、国内の化粧品パーマ液で確認されているシステアミン塩酸塩の最大濃度は、この自主基準の上限に相当する8.5%、システアミンとしては5.8%となっております。この度、関係業者より「システアミンの生殖発生毒性について懸念がある」という相談を受けたことから、化粧品パーマ液に含まれるシステアミンのリスク評価を行い、安全対策の必要性について検討を行っております。

 なお、資料1の機構の調査報告書では、主にシステアミンの毒性評価を行っており、後ほど御説明しますが、資料2では、暴露評価と暴露マージンの推計を行っています。

 まず、「1.国内外の状況」です。国内ではシステアミン塩酸塩は化粧品への配合禁止物質にはなっておらず、配合量の制限もされておりません。

2ページの「(2)海外における化粧品の成分規制及び化粧品としての販売実態」です。米国及び欧州においても化粧品への配合禁止、配合量の制限等はなされておらず、システアミンを配合したパーマ剤が販売されていることが確認されております。

 「(3)関連する医薬品の添付文書の記載状況」です。米国及び欧州において、システアミン酒石酸水素塩の経口剤、システアミン塩酸塩の点眼剤が、腎性シスチン症の治療薬として承認されておりまして、現在でも販売されております。本邦においても、1030日付けで、腎性シスチン症を予定効能として承認申請がされています。

 海外の添付文書においては、動物実験において催奇形性が認められていること、妊娠中に使用する場合にはその有用性が胎児に対するリスクを上回る場合に限ること等について、注意喚起がなされております。表1、表2に詳細をお示ししておりますので、御確認ください。

3ページの下から2行目以降「2.文献等の調査」です。今般、関係業者よりシステアミンの生殖発生毒性に関する文献が2報提出されております。参考資料1及び参考資料2としてお配りしていますので、併せて御覧いただければと思います。

 まず、1報目は、システアミンの生殖能力や初期胚発生への影響を検討するため、雌ラットを用い、ホスホシステアミンを交配前から交配期間中及び交配後にかけて、強制経口投与した結果、交配までの日数は150mg/kg/day群で有意に延長したが、妊娠数では有意な差は認められなかったという内容のものです。

2報目は、妊娠ラット及び胚・胎児発生への影響を検討するため、雌のラットを用い、ホスホシステアミンを器官形成期に強制経口投与した結果、150mg/kg/day群では、母体の平均体重・摂餌量の減少、生存胎児数の減少、出生前死亡数の増加が有意に認められ、更に100及び150mg/kg/day群では、胎児体重の減少及び胎児の奇形(主に口蓋裂、脊柱後弯)の発現頻度の上昇が有意に認められたという内容のものです。

 なお、機構ではこれら以外に、ヒトにおけるシステアミンの生殖発生毒性、催奇形性に関する文献について調査しておりますが、確認できておりません。

 次に、「4.毒性評価」です。先ほど御説明した2報の文献のうち、参考資料2の文献において、100mg/kg/day以上の群で、胎児の奇形(主に口蓋裂、脊柱後弯)が認められていることを踏まえ、見かけのNOAEL75mg/kg/dayであると述べられているところです。また、システアミン酒石酸水素塩(経口剤)の欧州の添付文書においても、ラットに対し器官形成期以降にシステアミン100mg/kg/dayを投与した場合に、催奇形性が認められたという記述があります。さらに、オーストラリアのシステアミンに関する評価書においても、根拠論文は明示されていないものの、発生毒性の点からNOAEL75mg/kg/dayとされております。

 一方、先ほどの2報目の参考資料2の文献において、全ての用量群で胎治の鼻骨の変形が認められたとされており、機構はこの点を考慮し、試験に用いられた最低投与量の37.5mg/kg/dayを最小毒性量としまして、これに不確実係数を10とし、暫定的なNOAEL3.75mg/kg/dayと評価しています。

 以上を踏まえ、機構はヒトでの催奇形性の文献等は報告されていないものの、動物実験等の情報を基に評価した結果、経口投与によるシステアミンの発生毒性のリスクが示されており、暴露量によっては健康上の問題が起こる可能性を否定できないとしています。

 機構では、この後専門家の方々に御意見を聞いておりまして、専門協議において専門委員より、「胎児の鼻骨の変形を考慮してNOAEL3.75mg/kg/dayとした機構の意見を支持する」「鼻骨の変形については帝王切開時及び内臓検査時には認められず、骨格検査のみで認められており、用量相関性も明らかではないことから、毒性影響ではないと考えられる一方、口蓋裂と脊柱後弯については75mg/kg/day群で増加が認められ、NOAEL37.5mg/kg/dayとするのが妥当」「経皮投与による催奇形性試験で確認することが望ましい」「胚・胎児への影響については、発生段階の狭い時期における有害要因の侵襲により発現し得るので、単回暴露のみで有害影響が発生する可能性を考慮する必要がある」「皮膚からの吸収のデータがほしい」などの御意見が出されております。

 毒性評価については、「NOAEL3.75mg/kg/dayとするべき」との意見と「37.5mg/kg/dayとするべき」との意見がありましたが、機構としては、安全性を重視する観点から、NOAEL3.75mg/kg/dayとすることが妥当と判断しております。

6ページの「IV総合評価」です。以上を踏まえて、「システアミンは海外において化粧品用途における配合禁止物質になっておらず、配合量の制限もされていない。また、現在のところヒトでの奇形の報告も確認されていない。しかしながら、ラットでの発生毒性についてのNOAELを推計すると3.75mg/kg/dayとなり、暴露量によっては健康上の問題が起こる可能性を否定できないと考えられる。ヒトでの安全性を評価するためには、暴露量について評価を行う必要があるが、機構では暴露に関する十分なデータを入手していない。したがって、このような危惧を払拭するための速やかな暴露評価の実施と、安全対策の必要性の検討が適切に実施されるべきである」ということで、結論付けられております。資料1については以上です。

 続いて、資料2「化粧品の洗い流すヘアセット料におけるシステアミンのリスク評価について」です。資料2では、機構によるシステアミンの毒性評価を受け、事務局で暴露評価を行い、暴露マージンの推計を行っております。

 まず、「1.リスク評価の対象製品」についてです。先ほど資料1でも御説明したとおり、日本パーマネントウェーブ液工業組合のアンケート調査によると、国内では少なくとも220品目以上のシステアミン塩酸塩を配合した化粧品パーマ液が販売されておりますが、パーマの施術上の問題や臭いがあることから、美容院で使用される業務用の製品のみであり、家庭用の製品は確認されておりません。また、同組合の自主基準では、化粧品パーマ液中のチオール基を有する成分の総量は、チオグリコール酸換算で7%が上限とされており、国内の化粧品パーマ液で確認されているシステアミン塩酸塩の最大濃度は、この自主基準の上限に相当する8.5%、システアミンとしては5.86%となっています。

 なお、化粧品パーマ液は毛髪のシスチン結合を切る1剤と、シスチン結合を再結合する働きの2剤からなっていまして、システアミンは1剤に還元剤として用いられているところです。

 続いて、「2.リスク評価の方法」です。化粧品パーマ液は頭髪に使用する製剤で、主な暴露経路は経皮的吸収によるものと推定されます。そこで、化粧品パーマ液の実際の使用方法を踏まえ、頭皮への暴露時間、暴露面積を見積った上で、経皮吸収量を推計し、無毒性量との比較により、暴露マージンを算出してリスク評価を行っております。

2ページの「(1)化粧品パーマ液の使用方法」についてです。参考資料5「美容技術理論」、これは美容師の教科書のようなものですが、こちらのパーマネントウェーブ技術の項によると、次のようにされています。

 まず、参考資料557ページを御覧ください。ワインディングの下準備として、ブロッキングを行います。これは毛髪を巻くロッドの長さに合わせて、毛髪を幾つかのブロックにまとめる作業です。

 次に、813ページのワインディングです。先ほど各ブロックに分けた毛髪を少しずつ取りまして、ロッドに巻き付けていきます。1314ページですが、ワインディング終了後、1剤を塗布します。まず、フェイスラインに保護用クリームを塗った後、軽くウォータースプレーを行い、毛髪全体を均一なウェットの状態にします。その後、14ページの写真にあるように、1剤をアプリケーターと呼ばれる容器に入れ、毛髪を巻いたロッド11本に塗布します。塗布が終了したら、ターバンをして薬剤が流れないようにします。

 続いて、放置タイムです。1剤を毛髪に作用させるため、キャップをかぶせて一定時間放置します。時間は、製品や髪質によって多少前後しますが、大体10分前後が目安で、かかりやすい髪質で5分、かかりにくい髪質だと15分程度とされています。

 続いて、テストカールです。希望どおりにウェーブがかかっているかを見るために、幾つかロッドを外し、チェックを行う作業です。

15ページですが中間リンスです。1剤をぬるま湯で完全に洗い流すという作業になります。1剤の使用としてはここまでですが、パーマの施術としては、その後2剤を塗布し、同様に一定時間放置し、その後ロッドアウトということでロッドを外し、リンスで2剤を洗い流し、適切な後処理をし、パーマネントウェーブの施術は終了となります。

 資料2に戻ります。2ページの中段以降です。システアミンを含有する化粧品パーマ液は水溶性であることから、2(丸2)の1剤塗布の段階で地肌に付いた場合であっても、5(丸5)の中間リンスの段階で洗い流されると考えられます。よって、3(丸3)の放置時間を、かかりにくい髪質であるとして、最大15分と見積った場合でも、暴露時間は前後を含めて18分程度であろうと考えられます。

 使用量については、パーマを行う範囲や毛髪の量により異なりますが、1剤の塗布に使用するアプリケーターの詰め替え量は、大部分が80mLとされていると聞いています。

 続いて、「(2)1剤の頭皮への付着量、付着面積」です。パーマ液は頭髪に作用させるもので、先ほど説明したとおり、アプリケーターを用いてロッドに丁寧に塗布することとされておりますが、余分な液が頭皮に付着することは避けられないところです。EUの染毛剤等、毛髪に使用する製剤の暴露評価では、暴露面積として580cm2 を用いていますが、これは髪の毛が生えている部分全体の面積ということで、実際の暴露面積としては過大であると考えられます。

 そこで、日本パーマネントウェーブ液工業組合が公益社団法人日本毛髪科学協会に委託して、実際の使用方法下における頭皮への付着試験を実施しています。その報告書として、参考資料7「美容院での化粧品ヘアセット料の施術工程における薬剤の頭皮への接触に関する研究報告書」が提出されています。参考資料7を御覧ください。

1ページの「I.目的」に記載があるとおり、本試験は標準的な化粧品ヘアセット料を用いて、標準的な美容師による1回の施術における頭皮への接触について検討したものです。

2ページです。標準的な試験試料として、粘性のない液状の製品を選定しており、これに着色剤を混ぜて、頭皮への接触面積を観察しています。

4ページです。本試験では、頭皮への付着状況を確認するためには、ヒトを用いた試験はなかなか難しいということで、人毛を植毛した美容師の練習用のウイッグを用いて試験しています。試験については、美容師3人が、標準的な方法で施術を行っています。

6ページです。毛髪を刈り取った後、画像解析プログラムを用い、液が付着した面積を求めています。

 結果は6ページの表4から表6に示しています。付着面積は、それぞれ頭皮面積の6.8%、4.9%、10.1%という結果でした。

 資料23ページです。これらの結果を踏まえ、事務局では、施術者による誤差が大きいことから個人差を考慮し、本試験の最大暴露面積、実際に10.1%がマックスでしたが、これの約2倍に当たる頭皮面積の20%、116cm2 を、通常の使用方法による最大暴露面積と仮定しています。

 続いて、「(3)経皮吸収量の推計」です。「1Potts & Guyの皮膚透過係数予測式に基づく推計」については、本日御出席の経皮吸収量の推計が御専門の城西大学薬学部の杉林先生に相談させていただき、先生の御指導も踏まえて推計を行っているものです。概要は事務局から資料に沿って説明させていただきますが、補足等がありましたら、後ほど杉林先生からお願いしたいと思います。

 まず、システアミンのオクタノール/水分配係数ですが、ここでは計算値である-0.2518を利用しています。これと分子量77.15を用い、Potts & Guyの予測式から皮膚透過係数Pを算出すると、P1.12×10-7(cm/s)となります。

 次に、Fickの拡散第1法則に基づき、先ほど求めた皮膚透過係数のPと最大暴露濃度の58.6mg/cm3 から、単位面積当たりの皮膚透過量を算出すると、dQ/dt6.56×10-6(mg/s/cm2)になります。

 通常の経皮吸収においては、定常状態になるまで一定の時間を要するところですが、安全側に立ち、最初から定常状態であると仮定し、さらに(1)(2)で見積ったとおり、最大暴露時間を18分、最大暴露面積を116cm2 とし、皮膚透過量を推計すると、0.82mgとなり、体重50kgのヒトの場合は体重当たりの暴露量は0.016mg/kgとなります。

 続いて、「2ヒト表皮組織を用いた試験結果に基づく推計」です。こちらは日本パーマネントウェーブ液工業組合が、イギリスの試験機関に依頼してシステアミンのヒト皮膚透過試験を実施していまして、その試験結果に基づいて暴露量を推計しています。試験結果の報告書は参考資料8です。

 ヒト表皮組織を用いた試験の結果、システアミン塩酸塩の皮膚透過係数は2.06×10-4(cm/h)、単位換算すると5.72×10-8(cm/s)で、先ほどの「1Potts & Guyの皮膚透過係数予測式に基づく推計」と同様に、暴露時間を18分、暴露面積を最大116cm2 として推計すると、暴露量は0.42mgとなり、体重50kgの人の場合体重当たりの暴露量は0.0084mg/kgとなります。

4ページです。以上、実際の使用方法を踏まえ、最大の暴露時間、暴露面積を見積り、オクタノール/水分配係数と分子量を用いた予測式から、皮膚透過係数を求める方法と、vitro試験の結果から皮膚透過係数を求める方法で経皮吸収量を推計したわけですが、これらはいずれも被施術者、つまり、お客様への暴露量の推計です。

 一方、施術者、美容師への暴露についても考慮する必要があるところですが、これについては、まず1剤の塗布はアプリケーターを用いて行うため、素手で行うわけではないので、パーマ液が施術者の皮膚に付着する可能性があるのは、2ページの(1)「4テストカール」時のみです。これは、ウェーブがきちんとかかっているか数本のロッドを外してみる作業で、付着範囲は手の指の先に限られ、付着した場合でもすぐに洗い落とされると考えられること、また、業界に伺ったところ、1日の施術回数は最大でも4回程度であるということを踏まえると、美容師の1日の暴露量が客よりも多くなることは考えにくいと判断しています。

 続いて、「3.暴露マージンの算定」です。業界団体のアンケート調査では、パーマをかける頻度は平均4か月に1回程度で、頻回に行われる状況にはありませんが、機構の専門協議でも指摘されているとおり、発生毒性については、単回の暴露であっても影響が出る可能性を考慮する必要があることから、化粧品パーマ液を用いて1回施術を受けた場合の経皮吸収量と、NOAELとの比較により、暴露マージンを算定し、リスク評価を行うこととしています。

 先ほど資料1で説明したとおり、機構の毒性評価では、1998年のBeckmanらの論文において、システアミン群の全ての用量で胎児の鼻の奇形が認められたことから、試験に用いた最低用量の37.5mg/kg/dayを最小毒性量とし、不確実係数を10と見積もりまして、暫定的なNOAEL3.75mg/kg/dayとしています。

 一方、資料22.では、標準的な使用方法下での経皮吸収量を2つの方法で推計しておりまして、それぞれ0.0084mg/kg0.016mg/kgとしております。これらの比を取ることで、暴露マージンを出していまして、暴露マージンは234447程度であろうと推定しています。

 なお、参考情報ですが、化粧品用途におけるシステアミンのリスク評価は、米国及び欧州ではなされていません。オーストラリアでは生殖発生毒性からNOAEL75mg/kg/dayとしており、経皮吸収による全身暴露量を、最大0.12mg/kg/dayとした場合、暴露マージンは625になるため、リスクは低いと評価されています。

 また、米国及び欧州においては、システアミンの経口剤が腎性シスチン症の治療薬として承認されておりますが、推奨される維持投与量は、12歳未満の小児で1.3g/m2/day12歳以上、体重50kg以上の患者で2g/dayです。最大投与量は、1.95g/ m2/dayとれされており、これと比較すると、化粧品パーマ液の使用による暴露量というのは、かなり少ないと考えられますが、医薬品の添付文書では、妊娠中の使用はその有用性が胎児に対するリスクを上回る場合に限るべきであるとされているところです。説明者を交代します。

○事務局 5ページです。最後に「4.追加的な対策」について説明いたします。化粧品パーマ液におけるシステアミンの暴露マージンは、234447と推計され、一般的な不確実係数の100を上回っているということから、通常の使用方法においては利用者の安全性は確保されると考えています。

 一方、1.暴露量を最小化することが望ましいこと、2.リスク評価に用いた製品中のシステアミンの最大濃度は日本パーマネントウェーブ液工業組合の自主基準に基づくものであり、確認されていないものの業界自主基準の上限を上回る製品が販売されることも否定できないこと、3.施術者に対する注意喚起も行う必要があることから、システアミンを含有する化粧品パーマ液について、次の対応を行うことが妥当であると考えています。

 まず1点目として、日本パーマネントウェーブ液工業組合のシステアミン配合上限の自主基準を周知し、遵守されるよう厚生労働省より指導すること。具体的には、通知等を発出し、業界団体に所属していない製造販売業者にも周知し、徹底を図りたいと考えています。

2点目として、使用上の注意にこちらに示した文言を記載し、被施術者及び施術者の両方に対して、不必要な暴露を避けるよう注意喚起を行うこととしたいと考えています。資料1及び資料2について、事務局からの説明は以上です。

○五十嵐座長 続きまして、杉林参考人から、暴露評価について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○杉林参考人 参考資料の10です。今、御説明があったことと同じなのですが、「システアミンの経皮吸収性と安全性予測法」です。1枚めくって、システアミンの経皮吸収量の推定法ですが、ここにPotts & Guy先生の皮膚透過係数予測式とあります。実は同じような形の予測式が出されており、私たちも1990年前に同じような予測式を出しております。これでやってもほとんど同じ値になったので、手前味噌になってはいけないということで、Potts & Guyの式を持ってまいりました。この式の中でPと書いてあるのは皮膚透過係数なのですが、単位はこの式上ではcm/sです。これが分子量とKo/w(オクタノールと水の分配係数)、疎水性の指標、水溶性の指標になるのですが、それでほぼ予測できるということです。これは通常の皮膚に関するところで、計算して求めると、Pの値が1×10-7 ぐらいになるということです。1992年にPotts & Guyの論文がありますので、この式が出ております。

 次ページですが、このpermeability(P)が求められると、皮膚に暴露される濃度が分かれば皮膚透過速度dQ/dtが分かるということです。先ほど御説明があったように、同じように暴露濃度が58.6 mg / cm 3 としますと、皮膚透過速度が6.56×10-6 mg /s/cm 2 になり、これに18分だからこの数字に18×60を掛けて、116 cm 2 暴露ですから116を掛けると0.82 mg、すなわち18分間で116 cm 2 から0.8 mg入るという計算になるわけです。

 この計算で一番の問題は、このPの値が確かかどうかということなのです。その後、調べていただいて、参考資料8、これはCardiffにあるAn-eXという施設、この分野では大変有名な研究者がいらっしゃる所です。ここの論文の中に、ページ18Page 18 of 26」と書いてある所の上から8行目に、Kp、これは我々が使っているPと同じ意味なのですが、2.06×10-4 cm /hとなります。これをcm /sに直すと5.7×10-8 という数字になって、これは先ほど御説明がありましたが、我々がPotts & Guyの方法で計算したのと2倍しか違わないというか、2倍違うと考えてもいいかもしれませんが、2倍程度違っていると。

 ただ、皮膚透過に関して、これはログスケールで書いているので、我々は2倍ぐらいは十分あり得ると考えているので、このPotts & Guyによるpermeabilityの計算方法はそんなに大きな問題点はないだろうということですし、比較的、水溶性の物質で分子量500以下ですと、10-7 cm /sぐらいになるというのは、我々の分野では常識となっている数字ですので、この値が何も変ではないと思っています。問題点とすれば、このPotts & Guyの予測式に用いたデータは、ヒトの頭皮ではありません。お腹の皮膚等なので、頭皮になれば、毛嚢経由で吸収がもう少し上がる可能性はあるかもしれません。その問題が1つ残っているかと思うのです。

 もう1つの問題とすると、我々が用いたのはKo/wの実測値ではなくて、ClogPという計算値を用いているので、全く同じかということは言えないので、そこでまた誤差が出てくる可能性があるのです。出てきた数字が大変少なくて0.016mg/kgで最小無毒性量の数字がその何倍ですか、大変大きな数字でしたので、このぐらいだと少なくとも経皮吸収量は毒性が出る量よりもはるかに少ないかなと考えました。以上です。

○五十嵐座長 ただ今事務局と杉林先生から御説明いただいたわけですが、御質問、御意見はありますでしょうか。

○望月委員 そもそもをお聞きしたいのですが、「このたび厚生労働省安全対策課に関係企業から、このシステアミン塩酸塩の安全性に関して生殖発生毒性についての懸念がある旨の相談を受けた」となっているのですが、この「懸念」というのは、何をもって懸念を持たれたのか。いつの時点でそう持たれて相談に来られたのか。

○事務局 懸念というのは、この2つの文献について。

○望月委員 かなり古い文献ですが、どうして急にまたそのように思われたのでしょうか。

○事務局 経緯を会社から聞いたところ、その会社は自社でいろいろな製品を考えていましたが、その中で、洗い流すシステアミンを配合したパーマ液を作ることも考えたのですが、文献を調査したら、この2つの文献を見つけたと。そのため、この2つの文献が問題になるようなものなのかどうかを御相談に来たという経緯です。

○柿崎委員 システアミンを含有しないパーマ液もあるわけですか。

○事務局 いろいろな還元剤を用いたパーマ液がありまして、こちらは化粧品分類のパーマ液ですが、医薬部外品分類のパーマ液もありますので、いろいろな種類はありますが、いろいろな特徴があって使われているというのが現状です。

○柿崎委員 仮になのですが、このシステアミンを含有するパーマ液を使わなくなった場合は、この業界にはかなり影響が大きいのでしょうか。

○事務局 この洗い流すタイプの化粧品分類のパーマ液に含まれている還元剤としては、システアミンはメジャーな感じの成分だと聞いておりますので、珍しいものではないという状況です。

○望月委員 私は化粧品の承認の仕組みをよく分かっていないものですから、化粧品の場合、こういう毒性などについて申請時点で御検討されるようなことはあるのでしょうか。

○事務局 化粧品については、入れてはいけない成分が化粧品基準で決められていまして、使う上限とか、使ってはいけないものとか、そういうものは化粧品基準で定められておりますが、それ以外の成分については製造販売業者が自己責任というか、自分で安全性について確認して配合するという取扱いになっております。

○望月委員 そうしますと、安全性が確認されて、一定の基準に入っているものは安全性が確認されていると。全く新しい成分を配合する場合には、こうした毒性のデータを企業が申請してくるときに提出するのですか。

○事務局 化粧品については、確か平成12年か13年でしたか、制度がちょっと変わっておりまして、昔は承認制という形をとっていたのですが、そもそも作用が緩和なものということもありまして、過去にそんなに何か健康被害があったということもなかったかと思います。規制の見直しというものの中で、全成分については表示をするということで、あとは配合する成分については各社で安全性を確認するという位置付けになっております。ただ、全成分を開示したくないという場合には、承認申請をして承認を得るという方法もありますが、全成分表示という形で表示する場合には承認不要ということで、届出をしていただくような仕組みになっております。

○望月委員 ちょっとよく分からないのですが、最近、石鹸とか、美白の化粧品とか、いろいろなもので結構、健康被害が発生していて、今回新しい製品を作るためにということで相談をされて、こういうことになっていると思うのですが、化粧品の承認というのか、私はよく分からないのですが、その辺りの仕組みの上で何かもう少し安全を確認できる仕組みがあったほうがいいのかなというのを、今回、審査をしながらすごく感じました。

 それはここでの議論とは違いますので、置かせていただいたとして、もう1点確認をしたいのが、経口剤と点眼剤が腎性シスチン症の治療薬として売られているということなのですが、経口剤の場合は投与量などを先ほど米国の例を使って御説明いただいたのですが、点眼でも腎性シスチン症に治療薬として使っているとすると、粘膜からはかなり吸収されるのでしょうか。そこがよく分からず、点眼薬の濃度と、点眼で吸収を期待して治療薬として使っているのかのところを教えていただけますか。

○事務局 点眼剤でどのぐらい吸収されるかは、ちょっとデータは持っておりませんが、特に妊婦の話では、一般的に投与経路が違っても同じ記載をするというのはこの製剤に限らず、ほかでも見られますので、経口剤と同じような記載をしたというのが理由かと思います。

○望月委員 経口剤と同様に、吸収量として期待するものがあって、それがあるから治療薬として使えているのかどうかというところをお聞きしたかったのですけれども。

○五十嵐座長 確かシスチンの角膜への蓄積を予防するための点眼薬ですよね。

○望月委員 目的がこれとは全然違うのですね。先ほどの説明で、そこがよく分からなかったので。

○事務局 目的が違うと。眼への蓄積。

○望月委員 眼の治療なのですね。

○五十嵐座長 そうです。全身性のシスチン蓄積症、シスチノーシスの大きな合併症として、眼への蓄積と、腎臓への蓄積によるファンコニ症候群を起こします。欧米ではファンコニ症候群の原因が分かっている病気の中、シスチン蓄積症が頻度的に一番多いのです。ですから、欧米ではよく使われている薬ですね。

○望月委員 眼の局所の治療目的ということですね。

○五十嵐座長 そうです。

○望月委員 分かりました。それだったら納得します。ありがとうございます。

○五十嵐座長 ほかはいかがでしょうか。

○遠藤委員 海外でも同様の化粧品が製造されているということなのですが、海外では特に化粧品に関しての対応などはとられてはいないのでしょうか。

○事務局 欧米については、特に対応はとられていないということです。また、オーストラリアについても、日本の濃度よりは上ですが、その上限であれば問題ないということで、特に妊婦の表示などをするという対応をとっている国は確認されておりません。

○遠藤委員 先ほどの資料の最後のこんな対応という話は、もしかしたら世界で初めて対応することになるのですか。

○事務局 資料25ページ目の対応ですが、こちらは暴露量を最小限にとどめるということから、例えば本品が付かないように、タオルとか保護クリームで保護するとか、また必要に応じて作業中に手袋をするとか、一般的な暴露を低減させるための措置ですので、世界初というよりかは一般的な暴露を避けるための措置です。

○遠藤委員 現状では、このような対応も海外では特に行っていないということですね。

○事務局 特にこの製品について、システアミンについてこうしろというものはありません。

○遠藤委員 ありがとうございます。

○大野委員 毒性的な面でちょっとお聞きしたいのですが、欧米ではこの物のNOAEL75 mg / kg/dayとしている。一方、日本では最低用量以下であるという判断が、機構の評価文書に書かれてあるのですが、どうしてそういう差が出たのか、ちょっと分からなかったのです。鼻の骨の変形が、欧米ではヒトでは普通バックグラウンドでも出るという報告を見たことがあるのですが、動物ではこの研究報告だと出生発生率が0になっていますね。そういうものなのでしょうか。たまたまこの実験だけそうなったのか、それとも一般的な生殖毒性試験をやっていると、結構バックグラウンドとしても出てくるものなのでしょうか。

○青山参考人 残留農薬研究所の青山と申します。私どもは主として農薬を使っておりますが、私個人はラットのこの種の催奇形性試験は、恐らく50本以上100本未満ぐらいの数やっております。常に見ておりますが、まずここで取られたネーザル・ミスシェープンというのは、私が今、副理事長を務めております日本先天異常学会というものがあります。American Teratology SocietyEuropeam Teratology SocietyJapan Teratology Societyで用語の統一を図りまして、かつてはかなり専門的な言葉を使っておりましたが、今は客観性といいますか、あるがまま誰でも書けるようにしようというので、形が正常の範囲を超えて少し違っていると思ったら、もうミスシェープンと付ける、位置が違ったらマルポジションと記載するというような記載にしております。この当時の記述でいきますと、この論文の方法を見る限り、胎児の骨格をアリザリンレッドとアルシャンブルーで二重染色しておりまして、鼻骨の部分は、通常ですとまだ骨化がまだ進んでおりませんで、ここは頭頂骨だけが膜性骨化といいまして、発生学的にはいきなり硬骨ができます。その他の部分は、軟骨が一旦できて、そこが徐々に徐々に骨化していくということです。

 そうすると、鼻骨は赤い部分がセンターにあって、周辺がブルーに、アルシャンブルーで染まるのですが、私の推測では、恐らくそのときに赤い部分が通常ですと卵型に見えて、その周辺が同じような輪郭で青く見えているのに対して、赤く見えている部分が少し歪んだように見えたという程度の所見ではないかと推測いたしますが、細かいことが書いていないものですから、何とも申し上げにくいところです。

 その程度の変化は、観察者によって、細かく取る人であれば、ちょっとでも違えばミスシェープンを取っていきまして、通常は試験責任者が最終的に、これはいわゆる奇形として捉えるべきものなのか、単に骨化の進行度が若干違うことによる個体差として、骨格変異であるとか骨格奇形として捉えたという判断をするはずなのですが、大変失礼ながら、この論文ではそのステップが抜けているように思われます。ですから、技術員が取った所見をそのまま並べたら、たまたまこうなった可能性が極めて高いのではないかというのが率直な印象です。私でしたら、この所見について取り上げることなく、75が無毒性量という意見に半分賛成いたします。ただし、別の所で口蓋裂奇形が出ているという点で、75を無毒性量と判断するのは私は賛成できませんので、その下の37.5 mg / kgが無毒性量というのが私の率直なデータの読みです。長くなりましたが、以上です。

○大野委員 ありがとうございます。この報告書の中では、もう1つ、鼻骨の変形については用量相関性が明らかでないと書いてあるのですが、数値的に見ると、完全に用量相関性ありますよね。

○青山参考人 もしこれが事実であれば、あります。

○大野委員 この表現も、アレッと思ったのですけれども。

○青山参考人 実はこの論文は余り出来がよろしくありませんで、申し訳ございません。私が査読すれば、もう1回リバイスしていただきたいところですが、例えば母親に対する影響で、最高用量の150 mg / kgまで影響はないと、はっきり結論しておられますが、我々の経験ですと、親動物の体重が、対照群で妊娠20日、20.5日に360g前後というと、妊娠子宮重量が大体70g前後です。この場合、最高用量群では生存胎児数が2ないし3程度まで落ちたということになると、恐らく妊娠子宮重量の実質的な差は50g程度。それなのに体重が100gも離れているということは、母親の体重も明らかに低下していると読むべきと思うのですが、彼らの考察は150 mg/ kg群で母親の体重が低いのは、生存胎児数が少ないせいであると言っておりまして、ここの読みも私は余り気に入りません。

 こういった不十分な箇所がそこここに出ておりますので、今、大野先生が御指摘くださったところも、おっしゃるとおり対照群が0で、高用量群に数字が出ていれば、明らかに用量・反応関係があると言わざるを得なくて、どんな検定をやっても単調増加傾向と出るはずだと思います。

○大野委員 ありがとうございます。

○五十嵐座長 ほかにいかがですか。事務局としては、このシステアミンを含有する化粧品パーマ液については、安全性においては重大な懸念は認められないということで、資料25ページにありますように、システアミンの配合上限を周知して、遵守されるように業界を通じて指導していただくということと、皮膚に付いた場合、あるいは手に付いた場合には、すぐに洗い落とすようなことをしてくださいという使用上の注意を追加するという御提案を頂いているわけですが、注意喚起はこの程度でとどめておくということで、よろしいでしょうか。

(了承)

○五十嵐座長 ありがとうございます。事務局案でお認めすることにしたいと思います。この件について、委員の先生方からほかに何か御意見はありますか。事務局から何かありますでしょうか。

○事務局 特にありません。

○五十嵐座長 活発な御議論をいただきまして、結論を出すことができました。どうもありがとうございました。それでは、今日の会議はこれで終了したいと思います。


(了)

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