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2013年12月18日 平成25年度第5回血液事業部会運営委員会

医薬食品局血液対策課

○日時

平成25年12月18日(水) 17:00~19:00


○場所

全国町村会館 ホールB
(東京都千代田区永田町1-11-35)


○出席者

委員:(6名)五十音順、敬称略、◎委員長

大平 勝美 岡田 義昭 田崎 哲典 花井 十伍
◎牧野 茂義 山口 照英

日本赤十字社:

田所 憲治 碓井 達夫 日野 学 五十嵐 滋

事務局:

浅沼 一成 (血液対策課長) 野村 由美子 (血液対策企画官)
上田 恵子 (血液対策課長補佐) 山本 あや (疾病対策課長補佐)

○議題

・議事要旨の確認
・HIV陽性血液を投与された患者の遡及調査結果について
・感染症定期報告について
・血液製剤に関する報告事項について
・その他

○議事

○血液対策課課長補佐 ただいまより「平成 25 年度第 5 回血液事業部会運営委員会」を開催いたします。なお、本日は公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、本日の出欠状況ですが、本日は全員に御出席いただいていることを御報告いたします。

 また、本日は日本赤十字社血液事業本部より、 4 名の方に御参加いただいています。順に御紹介いたします。田所経営会議委員、碓井総括副本部長、日野副本部長、五十嵐安全管理課長です。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に事務局の御紹介として、本日は疾病対策課より山本あや課長補佐に御出席いただいています。よろしくお願いいたします。

 カメラの頭撮りはここまででお願いいたします。

 以降の進行を牧野委員長にお願いいたします。

○牧野委員長 はじめに、事務局より資料の説明をお願いします。

○血液対策課課長補佐 まず、資料の確認をしたいと思います。資料 1-1 「平成 25 年度第 3 回血液事業部会運営委員会議事要旨 ( ) 」。資料 1-2 は同じく「第 4 回血液事業部会運営委員会議事録要旨 ( ) 」です。資料 2-1 HIV 陽性血液を投与された患者の遡及調査の結果について」。資料 2-2 「今般の HIV 陽性者献血の事案を受けた検討項目」。資料 3-1 、感染症定期報告の「研究報告 ( 概要一覧表及び個別症例報告概要 ) 」。資料 3-2 、感染症定期報告の「研究報告 ( 詳細版 ) 」。資料 4-1 「供血者からの遡及調査の進捗状況について」。資料 4-2 「血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例等について」。資料 4-3 「献血件数及び HIV 抗体・核酸増幅検査陽性件数について」。最後に資料 5-1 「フィブリノゲン製剤納入先医療機関の追加調査について」。資料 5-2 「薬事分科会血液事業部会運営委員会規程 ( 改正案 ) 」です。御確認いただき、不足等ありましたら事務局までお知らせください。資料の確認は以上です。

○牧野委員長 それでは、議題に沿って進めていきたいと思います。まず議題 1 「議事要旨の確認」ですが、資料 1-1 と資料 1-2 に議事要旨 ( ) がありますので、御意見があれば事務局まで御連絡いただきたいと思います。

 議題 2 HIV 陽性血液を投与された患者の遡及調査結果について」に移ります。事務局から資料の説明をお願いします。

○血液対策課課長補佐 資料 2-1 を御覧ください。本日は、先月 26 日に開催されました、第 4 回運営委員会で御報告いたしました「 HIV 陽性血液を投与された患者の遡及調査の結果」の続報、それを受けての対策の検討状況を御報告したいと思います。

 まず、遡及調査続報ですが、資料 2-1 1 「概要」です。概要については、前回も御報告いたしましたので省略させていただきます。資料 2-1 の概要と、裏ページのポンチ絵のほうで御確認ください。

 資料 2-1 2 「遡及調査の結果」から御報告いたします。遡及調査の結果ですが、 2 名の HIV 陽性血液を投与された患者様のうち、調査中でした受血者 1 80 歳代女性の方の HIV 抗体及び個別 NAT の結果、陰性が判明いたしました。この件につきましては 11 29 日、牧野委員長に同席いただき、記者発表等を終えております。また、委員の皆様方にも御連絡させていただいたところです。本日はこの結果を受け、また、先日の運営委員会の検討事項等を踏まえ、今後の方針を確認したいと思います。

 資料 2-2 を御覧ください。項目の列挙となっておりますが、少し補足して説明いたします。事務局からまず説明した後、日赤のほうから補足をお願していただきます。その後、委員の皆様方で議論ということでお願いいたします。

 まず、 1 「問診等の見直しの検討」です。これは主に検査目的の献血や問診における虚偽申告の防止を目的として、現在、日赤のほうで使っておりますパンフレット等の資材に手を加える形で作業を進めております。また、前回の運営委員会で効果的な問診の方法、問診専門家等の意見もありました。これらを併せて、作業の進行状況、検討状況につきまして、後ほど日赤のほうから具体的に説明を頂きたいと思います。

 次に 2 「海外調査の検討」です。今後の献血血液の HIV 対策への参考として、海外の献血血液に対する HIV 対策の現状、これには問診の方法や検査の現状が含まれますが、さらに、検査目的献血や虚偽申告に対して用いている抑止力の種類等、各国の HIV 疾患対策や社会状況を踏まえた上で状況収集をして、我々の対策にいかそうというものです。詳細については、更なる検討が必要ですが、具体的には、文献等による情報収集に加え、実際に海外に訪問し、特に虚偽申告等に対して刑罰を導入している国、そうでない国、双方の視察を今年度から来年度にかけて実施する予定を考えております。

3 4 は技術的な面ということでまとめてお話いたします。 3 の個別 NAT 4 の輸血用製剤の不活化技術ですが、こうした技術的・具体的対策については、安全技術調査会で定期的に日赤から報告いただいております。このうち、具体的に来年度の導入を予定している個別 NAT 、いまだ検討を進めている血小板製剤の不活化技術というものがあります。ほかの技術的検討事項も含めて、検討状況を日赤のほうから後ほど御報告いただきます。

 最後に 5 「遡及調査等のリマインド」です。遡及調査等のリマインドとありますが、これは医療現場への働きかけ全てを含んでおります。今回の事例を受け、医療現場の協力も血液安全に対して非常に重要であることが再認識されたと思います。そこで血液対策課では、遡及調査のガイドラインの再確認、調査への協力依頼を呼び掛ける通知を 1 つ、そして輸血療法のガイドラインにのっとって、患者説明の在り方、適正使用の在り方、輸血後検査や保管献体、こういったものに対して今一度、意識向上を促す通知を用意しています。今年中に発行を予定しております。

 事務局からの検討状況は以上です。先日の運営委員会で頂いた意見に全て対応しているという状況ではありませんが、優先順位や実施可能性等を考えつつ、現在はこれらの対応を進めています。この問題は、今後とも継続的に運営会等で報告予定ですが、本日、こうした対策へのコメント又は新たな意見等を頂けると幸いです。

 最後、 HIV 対策については、血液のみならず疾患全体としても対策必須であることを踏まえ、本日御同席いただいております疾病対策課とも情報交換を行っていく予定です。事務局説明は以上です。

○牧野委員長 それでは、問診等の見直し、検査法の今後の改善点につきまして、日赤のほうから説明をお願いします。

○日本赤十字社日野副本部長 日赤から、 1 の「問診等の見直しの検討」について、準備状況を少しお話したいと思います。

 補佐から今お話がありましたが、日赤では幾つかのパンフレットがございます。その中で「お願い」というパンフレットが 1 つあります。それは献血前に見ていただくパンフレットで、前回の運営委員会でもお話がありましたけれども、一人一人のドナーに責任ある献血を持っていただくことから、まず、問診の回答を正しくしていただくことが 1 つあります。検査目的で HIV の献血をするということに関しては、控えていただくことを明記したいと思っています。その上で、万が一、正しく回答がされない場合には、輸血を受けられた患者に非常に深刻な状況を及ぼす可能性もありますということも加え、具体的なメッセージをしていきたいと思っています。

 もう 1 つは、 HIV の陽性通知についてですけれども、こちらに関しては、 HIV 陽性の連絡はしないということを明記する形で、今準備をしているところです。幾つかのメッセージがありましたが、例えば、ホームページにはもう既に掲載されておりますし、今後、問診票のタッチパネルについても、そういったメッセージを付け加えていきたいと思っています。今、各採血サイトで紙ベースの問診票はあると思いますが、あちらは非常にスペースが狭いということもありますので、紙ベースでの修正というのは、今回は見送る方針でおります。それが 1 つです。

 もう 1 つは技術的な 3 4 番です。「 NAT 個別化の導入の検討」ということにつきましては、現在、 20 プールの NAT スクリーニングをやっております。こちらに関しては、もう既に次の世代の NAT 技術評価をし終わっていますので、前回もお話しましたけれども、 20 プールから個別の NAT に移行していくということであります。現在、日赤の NAT 施設は 4 か所で NAT を実施しておりますけれども、個別 NAT に切り替えるとなると、検査本数が 20 倍になるということもありますので、 4 か所から 8 か所への変更ということです。今準備しておりますが、遅くとも来年の 8 月までには、個別 NAT を導入していきたいと思っています。

4 番の不活化の技術に関しては、本委員会でも報告させていただいておりますが、日赤としてまだ少し、ウイルスに対しての不活化の問題や細菌に対しての問題が幾つかありましたので、それは今年中にデータ取りを終える予定です。血小板の品質に関しても、大体データ取りは終わっていますので、次回の安全技術調査会で御報告させていただければと思っています。簡単ですが以上です。

○牧野委員長 ありがとうございます。今の事務局及び日赤の御報告に対し、委員の先生方から御意見や御質問がございましたらどうぞお願いいたします。

○田崎委員 また献血者の関わりの件で申し訳ないのですが、前回献血された方、男性の方に、日赤としてはどういう対応をされたかを、もう一回、簡単で結構ですので教えていただけないでしょうか。連絡でもいいし、こういうことが起こったという事実を伝えたとかでも良いです。差し支えない範囲で教えていただければと思います。

○日本赤十字社田所経営会議委員 基本的に、検査結果そのものは通知しないということです。ただ、今後更に献血をされて、同じようなことが起きても困るということもあるし、二次感染があっても困るということがあります。そういうことをしなければいけない、医師という立場で考える方は接触を取る場合もあるかもしれません。

○田崎委員 結局、この方は、自分の血液で患者さんに感染したということは御存じなのでしょうか。

○日本赤十字社田所経営会議委員 感染した原因となった可能性がある時に、再検査のためにもう一度来てくださいというお話はしていますけれども、あなたの血液が感染しましたという話は、 B 型肝炎及び C 型肝炎についても、させていただいてはいません。

○田崎委員 ありがとうございます。

○日本赤十字社田所経営会議委員 ただ、その方が陽性であるということについては、その方の治療のために、 B 型肝炎及び C 型肝炎等についてはお話させていただいています。

○田崎委員 要するに、検査目的の献血はしないでほしいということかと思いますが、実際、検査目的の献血だったのかということは、確認はされていないのですか。検査目的というのはセンター側の推測でお話されているということでよろしいですか。

○日本赤十字社田所経営会議委員 動機の確認というのはなかなか、いずれの場合でも難しいことであって、現状、我々が言えることは、検査結果で言うと、ウイルス量は非常に微量で、なおかつ抗体もまだ出ていない時期だということであれば、献血したのは感染した時期から大変近い可能性がある。空気感染するわけではないので、はっきり覚えがないということもなかなか難しいかもしれないという範囲の中では、そういう恐れを感じていたかもしれないだろうということは推測できますが、ここは一応推測という具合に考えていただいたほうがいいと思います。

○牧野委員長 事務局、どうぞ。

○血液対策課長 事務局です。今回のケースというのは、 9 年ぶりのすり抜けということもあって、一体どうしてこういうことが起こるのか。問診に正しく答えていれば、こういう話はないのではないか。あるいは、もしかしたら正しく答えていたけれども、何か事情があって、感染後自分では自覚できなかったのかもしれないと、いろいろなことを考えました。多分、日赤も同じことを考えていたということで、原則は知らせませんが、今回のケースは、そこでドナーの方に確認した。それで、前回の運営委員会でも日赤からお話があったとおり、男性同士の性的接触が平成 25 2 月、前回献血の前にあったことを確認したということなのです。

 ですから、田崎委員へのお答えとすれば、原則は答えない、日赤から検査結果は伝えない。ただ、今回のような本当に特殊な話の時は、原因を究明しなければ我々も対策を立てられませんから、一体どういうことが起こったのかを確認するために、ドナーと接触してもらったということになります。

○田崎委員 対策を立てるということなのですが、対策の 1 つである、保健所で無料、匿名でやっていただけるという事実は、今回の男性の方は認識はなかったのでしょうか。事実が分かれば教えてください。

○血液対策課長 私から答えます。先ほど日赤からも説明を頂いていますが、「 HIV 検査を目的としていませんか」という問診は 19 番にありますし、その時点で、日赤が今配布している献血者の方へのいろいろなパンフレットについても、検査が必要な場合は保健所に行くようにということも明記されています。ですから通常、献血をする方が読める情報としては、正しく理解していればそれを読めば自ずから、 HIV の検査は献血ではなくて保健所等でやるということは理解できると思います。

○花井委員 今回のケースは、今のお話を総合すると、結果として、問診票には必ずしも真実が記述されなかったという結果が出たということは事実だと思います。もちろん、問診は任意・善意の献血者が書くものなので、全ての問診票は極めて正確に、間違いなく書かれていないということは、普通考えても多少はあるということで、いわゆる面接の問診ということが重要になってくるかと思います。前回のお話で、必ずしもどうかなという話だったのですが、結局、採血所というのは、言わば診療所のような、現行法では医師がいて採血という医療行為を行うという、どちらかと言うと、通常の医療行為を前提とした法律に基づいてあるという部分もあるかと思います。その中で、問診医の先生がインタビューをして、問診票を見ながら、どうもこれ、事実と異なる記載が疑われた場合にうまく聞き出すことが、スキルとして、問診医に必ずしもそういうことを求めてもいない。何らかの形で、人としての問診の強化ということが、今後課題として検討されるべきではないかと思います。

 現行の法律との兼ね合いも多少ありますが、現行の法律の中でも、できる範囲はあろうかと思います。その辺の検討というのは、今後する予定はあるのでしょうか。

○日本赤十字社田所経営会議委員 問診の技術という点で、どれほど防げるかという問題は多少あって、本当に不安に思っている人がいて、HIV検査を目的として来られた場合には、なかなか問診だけでは難しい場合もあろうかとは思います。しかし、きちんとその問題について触れて、聞いて、言っていただく機会を作るという意味では、もう少し問診できちんとできたほうがいいということはあります。

 問診医・検診医をやっていただくには、研修を受けていただいた後で行っていますが、やはりもっと専門的に、上手に聞き出すということはあるかもしれません。そのため、一部では、部屋を個室として設けて予備問診を行っているセンターもあります。そういう所の結果を見ながら、今後考えていくことになると思います。ただ、全てにそれを置くとすると、かなりの人数が要ることも事実です。毎日、約 300 の採血場所があるわけですので、各所にそれだけの人数を配置しなければいけないという問題もあります。その辺を勘案しながら、先駆的にやっている所の結果を見ながら考えていきたいと思っています。

○花井委員 是非お願いしたいと思います。今の話、ちょっと抽象的だったので、もう少し踏み込んで言うと、血液の安全性を確保するために、ある種、ウイルス感染のリスク・グループをなるべく来ないで欲しいという設計になっている。リスク・グループというのは当然、感染症法の中で個別施策層という形で、ハイリスク・グループを特定して施策をしているという法律上の整理もある。「若者」というカテゴリーもありますが、若者を排除したら献血は成り立たないと思いますが。

 そういったときに、そのグループの行動の有り様というか、どういうことを考え、どうしているかについては、疾病対策課が詳しい。そこにはそれなりのいろいろな知見もあるので、そういったことをうまく採血所の問診にいかせるようなことも検討いただければ。もちろん、あくまで問診ですから、いわゆる検査とか、クリアカットな予防策にはならないかもしれませんが、問診の強化ということには寄与するのではないかと思います。その辺もまた御検討ください。以上です。

○日本赤十字社日野副本部長 最終的に問診の場で正直にお答えできなかった場合、日赤ではコールバック・システム ( 自己申告制 ) がありますので、そこで特に御本人の名前を言わなくてもいいわけで、採血番号と生年月日をコールバックしていただければ、その血液は使わないというシステムがあります。そういったことも今後周知していければいいかと思っています。

○岡田委員 現状を把握するために質問します。今、問診で適合していて、なおかつ、問診医がインタビューして、この人は一応適正のほうに○を付けているけれども、実際、検査目的ではないかと疑って、献血をお断りする例というのは、現実的に、日赤にはそういう報告は何例か上がってきているのでしょうか。

○牧野委員長 どうでしょうか。

○日本赤十字社日野副本部長 今、岡田先生がおっしゃられたような数字というのはなかなか難しいと思います。日赤では問診票の 19 番に直接問診事項がありますので、その数字というのは把握できます。

○岡田委員 つまり、問診票では問題ないけれども、問診医が、この供血者はおかしいのではないかということで、献血をお断りする例が実際にあるかどうかということです。これはかなり厳しいというか。

○日本赤十字社田所経営会議委員 個人的な経験でしかなくて、そういうものを数値として出すのは大変難しいとは思うのですが、言われてみると、比較的若い方の中で、最近何らかの接触がありましたと言っていただける方はいます。ですから、その時点で御辞退いただく。最初は特に書いていなかったけど、という方は中にはおられます。そういう方はどちらかというと比較的若くて、十分、献血等についても分かっていなかった方が多いかもしれません。あと、もし、先ほど言われたことについてもうちょっと踏み込めば、自己申告で言ってくる方というのは、我々の所で、問診時点では言えなかったかもしれないけれども、本当はちょっと不安があったという数だろうとは思います。今、その数は正確にはお伝えできませんが。

○山口委員 最初に、幾つかの関連事項で質問させていただきたいと思います。個別 NAT の導入を来年度予定されていて、高感度化がされると思います。今回のケースは非常に低濃度で、多分、個別 NAT でも検出できないようなケースだったのではないかという推定だと思います。そういうことを含めると、特に「海外調査の検討」の所で、もし今回のケースの場合に、自己申告がきちんとされていない場合の刑罰の適用とか、その辺についても調査をしていただけるということでよろしいでしょうか。

 特に今回のケース、片一方は赤血球製剤では感染しなくて、血漿のほうだけ感染しているという。恐らく血漿のほうはウイルス体価が高い。そうすると、実は積極的に貯留保管を海外で導入していないか、そういう点についても、調査の対象に加えていただけるといいのかなと思ったのですが。

○血液対策課課長補佐 事務局からお答えします。海外の調査については、これから項目等を詰めていこうと思っております。今の件についても、かなり我々も興味を持って調べてみようかと思っております。また、ほかにも、これは見ておいたほうがいいという項目がありましたら、どんどん意見を頂いて、調査に行くまでに固めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○牧野委員長 大平委員、どうぞ。

○大平委員 ドナーになっていただける方に対しての働き掛けというのが、ここの議論の中では少し抜けているのではないかと思います。問診と検査をして対策を立てていっても、結局、輸血用血液製剤としては、かなりリスクとしては残るところがあるわけで、それを減らす努力としての 1 つの方策ということで、一番ドナーをいろいろ募集するための形として、提案ですが、輸血用血液、生血のような形のものを輸血する場合には、かなり安全性の高い血液を供給する形で、今、日赤のほうでも、献血クラブとか、そういうことを一生懸命やっていますが、献血クラブのもう少し集合として、かなりメンバー要素が、きちんとした人たちについての血液というところから、輸血用血液として使うという方法も、大変手間の掛かる問題かもしれませんが、リスク排除としては少しは有効ではないかとは思います。

 また、問診についても、もう少しデータをきちんとしっかり集めて、その限界とか、いろいろな形のものを検討する何か材料が必要ではないかと思います。現在は事例ごとにいろいろ検討していますが、リスク排除はどういうふうにできるのかというところが、本当に不特定多数の方たちに御協力を願っているところでは、やはり、問診は重要ではないかと思いますが、その限界がどういうところにあるのかというのは、きちんと集めたほうがいいのではないかと思いました。以上です。

○牧野委員長 私のほうから 2 つあります。問診医の先生方には研修を受けるとあったのですが、この研修というのは、一人一人の研修ですか。例えば、問診医の方をある程度集めて、そこの場で特殊な問診のスキルを講義してもらうような、講演の形での研修を受けることがあるのかどうか、ちょっと思ったのですが。そういうことは今まではプログラムには入っていないのですか。

○日本赤十字社田所経営会議委員 初めて検診を行う場合には、研修を受けていただきます。応募された方には基本的に個別で対応します。多くは、所長が対応していると思います。午前中 2 時間ぐらい講義をして、現場も一緒に行っていただくということを、私のときは行っていました。多分、現状でもそうだと思います。あと、定期的に年 2 回ぐらい、問診の中で問題になった点をピックアップして、それをどう考えたらいいかということ等についての研修を行っております。

○牧野委員長 先ほど花井委員からも出ておりましたが、そういう問診のスキルを持った方の研修とか講義を取り入れていくことも 1 つかと、少し思ったものですから。もう 1 つは、問診時のタッチパネルを一部変更する、分かりやすいメッセージとして出していくということですが、このタッチパネルの変更というのは、具体的に、いつぐらいから変わっていくのか大体分かっていますか。

○日本赤十字社日野副本部長 それとは別に、日赤の統一システムという大きなシステムがあるのですが、こちらの改修を考えています。それについて、日赤として確認すべきことが、まだ若干残っておりまして、それが確認できた時点で、いつかというのが分かると思います。そういう意味では、次の統一システムと抱き合わせで考えております。

○大平委員 言い忘れましたが、先ほどの原因究明に協力するという、最終的に何かあった場合に、それに対しての献血者の協力が、もう少し明確に問診票などに書かれていたほうがいいのではないかと思います。

 それは、こうした輸血による被害、問題が起きることについて、 1 つの大きな社会的な責任みたいなものがありますので、そういった点での原因究明に協力することをきちんと明記する形をとらないと、 HIV だけではなく、遡及調査の中でも残っている課題として、なかなか献血に来られないと、結局はそれが原因究明に 100 %当たらないということで、不明確なまま常に終わるということで、そこは輸血の安全性をこれからも訴えていく中では、少し落ちるところではないかと思います。

○日本赤十字社日野副本部長 「お願い」というパンフレットがありまして、本委員会でも出たのですが、今、大平委員がおっしゃられたようなことが必要だということがあって、輸血の副作用・感染症に関しては、その後に再採血のお願いをすることもありますということは、既にインフォメーションとして載っております。

○牧野委員長 岡田委員、どうぞ。

○岡田委員  3 番に書いてある NAT の個別化ですが、これは検体数が単純に言えば 20 倍になるということで、血小板の供給のほうに影響が出ないかどうか心配しているのですが、現状では、セロロジカルの検査で、陰性のものを NAT にかけていますが、個別になった場合には、同時並行でするということで。そうすると、血小板の供給には影響はないと理解してよろしいのですか。

○日本赤十字社日野副本部長 ないと考えております。

○岡田委員 分かりました。

○花井委員  5 つ検討項目を上げているのですが、もう 1 つあって、いわゆる検査のために献血に来るということは、本来、検査をすべき場所ではなく、あえて来るということになっています。検査はもちろん医療機関でも、医師が必要と認めればできるという体制になっていて、本来、そちらで検査をするのが望ましいということです。今日は疾病対策課にも来ていただいているのですが、 2 つの考え方があります。つまり、疾病対策課は、医薬品の安全とは別の文脈ですから、要は、感染の拡大と医療につなげるという、この 2 つの観点から検査をしている。そのために検査リソースを最大限いかすためには、なるべくハイリスクの人が来てほしい。つまり、余り広げてしまうと、陰性結果だけが積み上がって、検査体制がパンクしてしまうわけです、保健所が。そうすると、本当に検査を必要とする人が来ないのだから、なるべく必要とする人が来るような検査にしましょうと。ある意味、ハイリスクの人たちが来ることを特化した検査を進めてきた経緯があるわけです。

 このことは、もう 1 つの考え方として、そういう所に寄りつかずに、一般に紛れたいという人たちもたくさんおります。そうすると、そういう人たちが献血ということは考えられるのではないかと。ただし、予算として広い検査をするということは、無限の陰性結果を出すということになるので、そういう観点から、今まで予算的にもそうですし、疾病対策課としても難しい面があったと思います。この辺の連携ということを考えないと、保健所で検査をやっていることは、恐らく正論としては分かっていても献血に行く方はおられると思うのです。それは、今言った事情もあるのではないかということを示唆する研究結果もありますので、ある程度日本における全体の検査体制の中で、ユーザー側から見て献血がどのセグメントにあるのかということを検討することも大事なので、 6 番目に、他課との連携になるのか分かりませんが、そういった別の検査体制との連携を入れておいていただければと思います。以上です。もし、疾病対策課から何かコメントがありましたらお願いします。

○疾病対策課課長補佐 私どもの課として課題だと思っていることは、今おっしゃったような、一般に紛れたいと思う方の心理をよく考えて、私どもとしては、匿名ですし、夜間も受けられますし、非常に利便性に配慮して頑張ってきたつもりだったのですが、それでもなお、一般に紛れたいと思われたい方の心理をよく考えないといけないと思っています。考えた後、どの程度のことが、私たちにもう 1 歩踏み込めるのかというところを、血液対策課と一緒に連携していかなければならないと思っております。

○牧野委員長 ほかにありますか。

○田崎委員 医療機関も、また国側もそうでしょうが、今回のケースでインフォームド・コンセントが非常に重要だということを再認識したと思います。私のところでは早速、院内に診療連絡報というのを出して、輸血に際し幾つか先生方にやってほしいことを上げました。その中にインフォームド・コンセントのことも書きました。

 インフォームド・コンセントというのは、少し形骸化しているのではないかという話もあるのですが、もし、こういうケースで、仮の話を聞いてもしょうがないのかもしれませんが、インフォームド・コンセントが不十分で、あるいは全くやらなかった場合でも、救済制度の対象になるのでしょうか。どこかで患者さんをサポートをしなければいけないわけですから、場合によってはインフォームド・コンセントが不十分だった、あるいはやっていないということで、医療機関にその責務を負うようにするのか。

○血液対策課長 医薬局というか、血液関係のお話には関連するので、私のほうからお答えしますと、多分、今の委員の御質問は、医療そのものの話だと思います。医療法の中には、医療というのは、医師だけでやるわけではなくて、もちろんコメディカルの方々の協力ですが、医師と患者の信頼関係の中で成り立つと。要するに、患者さんの理解を得ながら医師はそれをやることで医療は形成されると、法律でも、医療法でも定められております。従前はさておき、現在の医療では、インフォームド・コンセントなくして医療は語れないというか、行えない。例えば、救急でどうしても患者さんがコミュニケーションがとれない状態だとか、小さいお子さんの場合は、保護者の方が代理という形はありますが、原則は、今申し上げたようなことだと思います。ですから、今度法律の名前が変わりましたが、いわゆる薬事のほうからも添付文書等で情報をきちんと提供していますので、それを患者さんにお伝えしていただきながら、医療を進めていただくというのが原則論だと思います。特に血液製剤関係については、ゼロリスクを我々も、日赤も、その他メーカーも目指していますが、どうしてもなかなかゼロにできない科学的な理由がありますので、それについてのリスクは必ず伝えていきたいと思っております。

 今回の事例を踏まえて、実は日本輸血・細胞治療学会のほうにも、まずはお願いをして、特に輸血 3 か月後の検査の徹底や、あるいは使用の際に、今、先生から御指摘があったようなインフォームド・コンセントの徹底というのは、何かの形でお願いしていこうかと思っております。先ほど事務局からも話がありましたし、通知という形で私たちも臨んでいこうと思っております。

○血液対策企画官 今、先生から問合せを頂いた直接のお答えですが、一応、薬事法に付随する制度として、生物由来製品感染等被害救済制度というものがあります。血液製剤なども含めて、生物に由来する医薬品・医療機器については、もちろん最新の知見をもって、ウイルスのクリアランスであるとか、今もドナーのスクリーニングということはしているのですが、やはり不可避なものとして、感染症が伝播する恐れというのは完全に否定できないという趣旨のもとで、拠出金を各企業から頂いて、それを救済に当てるという制度があります。

 恐らく御質問としては、その中で不適正な使用に対しては、やはり医師の責任というところかと思いますが、その同意をどういうふうにしているのかは、関係室のほうに確認をしてからお答えさせていただきます。実運用として、どうなっているかという辺りになるかと思います。

○田崎委員 なぜその様なことを質問したかというと、今回、輸血を受けた方は原疾患そのもので、非常に大きな不安を抱えていると思うのです。そのようなときに、輸血をする前に輸血のリスクの話を聞いて納得したのか、先ほど形骸化という話がありましたが、そこまで自分は余り聞かなかったけれどもサインをしてしまった、みたいなこともあるかもしれません。実際、現実にこのような問題が起こりますと、患者さんには精神的にも更に大きなダメージがありますから、具体的に、現場でそういうことが起こった場合どう対応するのかを、お聞きしたかったということです。

 それと、先ほど先生が 3 か月後の輸血検査の徹底を述べられてましたが、私も今回の事例を踏まえ、学内に、インフォームド・コンセントと、輸血 3 か月後の検査をしてくださいとの速報を出しました。皆さん、御存じかと思いますが、輸血の前というのは、手術前の検査や入院のときの検査も含めてですが、 HBV HCV と梅毒の検査はほとんどの病院でやっているのです。しかし、 HIV に関しては、輸血学会のアンケートによると、輸血の前の検査として行っているのは大体半分ぐらいでしょうか。つまり HIV に関しては実施率が低いのです。輸血後はどうかというと、基本的には医療機関で患者さんをセレクトしてというか、この患者さんには輸血後検査が必要だろうという形で、検査をしているところが多いのです。もちろんきちんと説明すれば、 3 か月後に保険診療の中で検査できるということは知っているわけですが、実際には、輸血後 HIV 感染症の実施率は低いわけです。

 なぜ低いのかというと、幾つか私も考えたのですが、 1 つは血液の安全性が非常に高いということ。つまり、輸血後検査をしても、陽性になることは多分ないだろうということかもしれません。もう 1 つは、インフォームド・コンセントを得なければいけないこと。そしてフォローアップが必要だということです。つまり保険請求ができるのは、 3 か月後という縛りがあることです。 6 か月後、あるいは 1 年後に検査していいのかというと、それは全部削られてしまうみたいなのです。

○血液対策課長 それは診療報酬ですか。

○田崎委員 そうです。ちょっと場所が違うのでやめてもいいのですが。要するに、輸血後感染症の検査をしない理由に、 3 か月後を過ぎてしまうと、やっても保険で認められない。それが、輸血をした後の感染症の検査が進まない理由の一つなのではないかという気がするのです。

 輸血をした後、全部認められるかというと、どうも都道府県によって認められる所と、そうでない所とあるようです。特に 3 ヶ月を過ぎると、もう認められないようです。肝炎に関しては、例えば輸血 1 2 か月後に急性症状が出るということで、或いは肝機能値異常があれば先生方は肝炎の検査をしましょうということで、行うことも多いかもしれません。しかし HIV の場合には、感染しても、いわゆるインフルエンザ様の症状というか、あるいは全く症状が出ないこともあるわけです。熱とか倦怠感とか、それらは原疾患由来のものであるかもしれません。そういう中で HIV を疑い輸血後検査をするということは、多分、先生方、なかなか頭に浮かばないのではないかと思うのです。

 そうすると、肝炎に比べると、 HIV に関しては 3 か月後に検査をしてくださいという縛りをなくして、例えば、輸血後 1 回だけ、いつ行ってもいいように、例えば、 2 か月、 3 か月、あるいは半年後に行ってもいいように、保険で認められれば、輸血後感染症の検査の実施率ももう少しアップするのではないかという感じを今回得たのですが、どうでしょうか。

○血液対策課長 御意見のほうは預らさせていただきまして、私どもも担当部局と少し調整させていただきたいと思います。また、次回の運営委員会でお答えできるように準備しておきます。

○血液対策企画官 恐らく、この場も含めて、輸血療法のガイドラインや遡及調査のガイドラインを議論するときに、 3 か月の妥当性について一定の議論があって、そのときのいろいろな考えのもとで 3 か月ということが決まっております。保険担当のほうも、そのガイドラインをそのまま引いてくるような形でいっているとすると、関係部局に話をするとともに、こちらのガイドラインの考え方みたいなものも、今の同意の御研究も頂いておりますし、その辺も含めて、場合によってはもう一回御検討いただいて、実施する側からのガイドラインでの不都合な点、科学的に許容のある範囲で、何かやりやすい改定があるとすれば、一度リマインドはしつつも、そういったことも先々は、御意見を頂きながら考えていったほうがよいかと思います。

○田崎委員 ありがとうございます。

○牧野委員長 あと、輸血のアンケート調査の中で、保険で削られたとか、そういう意見も一部出ていますので、まずどういう地域でそういうものがあるか。保険の査定ですので、地域差があるのかもしれませんので、その辺りも解析して、もし偏ったところでそういうものがあれば検討していくことになるかと思います。

 先ほどインフォームド・コンセントの話が出ましたが、輸血・細胞治療学会として、輸血に関する説明書を学会として作りました。と言いますのが、日本で輸血を実施している施設は 1 1,000 ぐらいありまして、その 90 %が 300 床未満、 0 床とか 100 床未満の施設が全体の 70 %ぐらいあります。各施設で十分な説明、たとえば輸血後感染症がどれぐらいの頻度で起こるとか、あるいは輸血後感染症の検査をする必要性とか、内容に関して落ちているところがあるのではないかと考えて、先週末から今週にかけて、全国 1,700 の希望した施設において、このような説明書を 25 万部配布しているところです。こういうことで、インフォームド・コンセントが多くの施設で十分にできるような環境を、輸血・細胞治療学会としても進めていこうということでやっております。

○岡田委員  3 か月というのは、生物製剤の救済制度ができるときに、輸血前後に検査をしていないと、本当に輸血で感染したのかどうか分からないということで、救済制度が始まるときに作ったものです。

 輸血後に 3 つのウイルスを同時に検出できる時期で、なおかつ、感染が分かった場合に早期に治療に移れるということで、 3 か月と提案させていただきました。そのときに HBV がなかなか増えが遅いので検出できないということで、 B に関しては NAT をやるということで、 3 か月で一応検査が終わるということで 3 か月になっています。

○牧野委員長 ほかにありますか。いろいろ意見が出ましたので、事務局はこの意見を十分念頭に置きつつ、引き続き、献血血液における HIV 陽性者に対する対策をお願いしたいと思います。

 また、日赤におきましても、事務局と共に引き続き、本日の検討課題、 NAT 検査の導入や不活化の問題もありますが、そういう検討課題について、安全技術調査会及び血液事業部会や運営委員会に御報告をお願いしたいと思います。

 次の議題 3 に移ります。議題 3 は「感染症定期報告について」です。まず、事務局からお願いしたいと思います。本日の報告は結構多いので、血液製剤と輸血の安全性に関する報告が 10 ありますので、まずここを一気にお願いします。その他の報告が 11 31 ありますが、これは 11 21 でひと区切りして、そこで質問やコメントを頂きたいと思います。

 最初に「血液製剤、輸血の安全性に関する報告」について、事務局からお願いします。

○血液対策課課長補佐 それでは文献 1 から説明いたします。文献 1 2 は、 HBV 、コア抗体陽性血液と HBV 感染についての文献になります。

 文献 1 は日赤からの報告で、輸血感染が疑われた検体のうち、 HBs 抗体が 200 以下、コア抗体が 1 から 20 の保管検体に個別 NAT を行い、 1.94 %がウイルス血症であったことが見つかったということです。またコア抗体価とウイルス血症は相関していなかったと報告されております。これを受けて、日赤では昨年より、コア抗体基準以上の血液を廃棄するという安全対策を導入しています。

 続いて文献 2 です。同様にコア抗体陽性の血液の感染率の検討です。これは欧州からの報告です。オカルト期の血液を受血した受血・供血者のペア 105 組のうち、 42 %に当たる 45 組で HBc 抗体、つまりコア抗体が陽性だったということです。供血者の抗体保有率等を勘案すると、感染率は 28 %にも上るということも書かれております。また、感染率は製剤の血漿含有量に関係していること、オカルト期の DNA ID50 1049 コピーであることなどが書かれております。

 文献 3 は、 E 型肝炎ウイルスの国内症例の報告になります。症例は急性前骨髄性白血病の寛解導入後の免疫抑制状態の患者様です。輸血後 6 か月で肝機能が上昇し、患者様と投与された FFP から E 型肝炎ウイルスが検出されたということで、輸血肝炎とされました。通常、潜伏期は 2 9 週と言われていますが、免疫抑制状態であり、遅発的に症状の重い肝炎が発症されたのではないかとされております。

 文献 4 は、ドイツからサイトメガロウイルスに関する報告です。これは直前の抗体検査で陰性が確認されたドナーから、 35 日以内に、サイトメガロウイルスの抗体が陽転化した方 93 人を調べて、更に二次抗体検査や Western blot でセロコンバージョンがあったと確認された 12 例について解析しております。このうち 10 人は初回抗体陽性となった検体で、 DNA も陽性だったと。更に 3 例では、直前の抗体陰性時にも DNA が陽性であった。つまりウインドウ期であったということが確認されたということです。初回抗体陽性の検体は、ウインドウ期よりも DNA が高濃度であったということで、 DNA の量が最大になる初回抗体陽性時の血液を避けることが、輸血感染防止に有効であるという考察がなされております。

 文献 5 ですが、韓国からパルボウイルスに関する報告がありました。韓国で 2008 年のある 3 か月間に、血漿分画製剤の原料となったドナーの方約 1 万人を調査したところ、 0.1 %に当たる 10 人で DNA が陽性でした。そのうち 9 人が抗体も陽性でした。更に無作為抽出で 900 人ほどのドナーを調べております。このうち 60 %で抗体が陽性だったということです。抗原陽性率は低く、抗体陽性率が高かったということで、韓国のほうではスクリーニングは必要ないという結論になったことが書かれております。

 文献 6 、これは新興感染症の流行時の輸血感染の評価型モデルに関する報告です。 EUFRAT と呼ばれておりますが、これは 5 段階のモデルで、マル1供血者の感染率、マル2感染供血者の献血率、マル3血液製剤が出荷される率、マル4最終的にウイルスが製剤中に存在する率、マル5受血者に感染が伝播するリスク、これらで構成され、アウトブレイク初期段階でリスクを定量化できるということで、安全対策に貢献するものと期待されているそうです。

7 番と 8 番については、まとめて御説明します。異型クロイツフェルト・ヤコブ病の報告です。文献 7 については、フランスで弧発性の CJD 疑いで回収されたアルブミン製剤の報告がありました。

 文献 8 は、本年度の国際獣疫事務局報告によりますと、 BSE のリスクについて、日本は「無視できる BSE 感染リスク」国であると認定されたという報告です。

 文献 9 10 は、アメリカ・トリパノソーマ症と書いておりますが、シャーガス病関連の報告です。文献 9 については、カナダからの報告で、献血に対し、選択的検査導入に関する報告です。カナダでは、従来、供血者に中南米出身及び母方祖母の出生地がこうした地域であることを問診で同定し、リスクがある方の血小板製剤製造を中止しているという対策をとっておりましたが、 2010 年からこうした対象への抗体検査を導入したということです。これまでの結果では、ハイリスクの方は 7,255 人。これは供血者の 1.72 %に当たります。このうち 13 人で抗体が陽性だったということ。また、受血者では抗体陽性は確認されなかったことが報告されています。

 文献 10 は血液感染ではありませんが、シャーガス病ということでまとめております。ベネズエラにおいて、これは経口でシャーガス病が流行したという報告がありました。 2009 年に 85 例、 2010 年には 33 例の集団発生ということで、同地域で汚染食品が原因となったのではないかと書かれております。前半は以上です。

○牧野委員長 ここまでで委員の先生方から何かありますか。

○山口委員 免疫抑制状態に関することに関連して、文献 3 E 型肝炎のことです。このジェノタイプがもし日赤で分かっていたら教えていただきたいのですが。

○日本赤十字社五十嵐安全管理課長 ジェノタイプは 3 です。

○山口委員 分かりました。そうすると、今までの考え方というか、北海道でやっているのは、肝炎が重症化しやすいジェノタイプ 4 だからやるという話が 1 つの理由だったような気がするのですが、免疫抑制状態であると、ひょっとしたらジェノタイプ 3 でも重篤になる可能性はあると考えてよろしいですか。

○日本赤十字社五十嵐安全管理課長 この医療機関からは、我々のほうは非重篤ということで報告を頂いております。

○山口委員 分かりました。ありがとうございます。そうすると、今までのコンセプトそのものを変える必要はないと考えてよろしいのですか、いわゆる、北海道だけで今やっている理由になっている。本州ではジェノタイプ 4 が見つかっていないので、ジェノタイプ 3 だけだとすると、スクリーニングは必要ないだろうという判断だと思うのですが。

○日本赤十字社日野副本部長 北海道で疫学調査をやっておりますが、全ての症例についてドナーさんのフォローアップができたわけではないのですが、フォローアップできた症例でデータを解析しますと、確かにジェノタイプ 3 4 で、 4 のほうが激症化はしやすいかと思うのですが、実際にドナーさんが ALT 値がどのぐらい上がったかということを見ますと、必ずしもジェノタイプ 4 ALT が高い値のものばかりかというと、そうでもないと。ただし、平均値で見ますと、 3 4 では 4 倍近く ALT の値が高いということがあります。そういう観点からすると、重症になりやすいタイプだと思います。

○山口委員 ありがとうございます。もう 1 点別件です。文献 8 、これは新聞報道でもされていますが、 OIE で日本とアメリカも正常国になったということで、今後多分、こういうことを受けて、生物由来原料基準等も見直していく必要はあるのかと思いました。

○血液対策企画官 この点は審査管理課のほうになりますが、聞いている話としては、生物原料基準について、今、改正をするための研究班を立てて、専門家の先生と議論が始まると伺っておりますので、今後この辺り、アメリカとか日本などの取扱いについては、反映をさせていくようになるかと思います。

○岡田委員 文献 3 E 型肝炎について、この文献ではないのですが、日本における E 型肝炎が発症した患者さんの臨床的な解析を、三代先生たちが数年前に行っており、全国集計で数百例だと思うのですが、その論文を読みますと、ジェノタイプ 3 よりもジェノタイプ 4 のほうが重症化する率が高いと。肝機能等も差があるという報告です。これは飽くまでも発症した患者さんの解析ですので、発症すると、確かにジェノタイプ 4 のほうが肝炎としては重症化するという傾向です。

 文献 3 のジェノタイプ 3 ですが、ヨーロッパにおいて、英国で HIV 感染のベースがある人がやはり E 型肝炎になる。それも全部ジェノタイプ 3 ですが、やはり肝機能が悪くなる。オランダからの報告でも、臓器移植を受けて、免疫抑制剤を投与されている方も、これもジェノタイプ 3 ですが、感染すると肝機能が悪くなるという報告があります。やはり、何らかの免疫抑制状態があると、ジェノタイプ 3 でも、重症とまでは言いませんが、肝機能の異常が出るという報告は出ています。

○牧野委員長 ほかはよろしいですか。文献 1 は日赤の検討ですが、ここに関して何か追加の報告はありませんか。 1 年ぐらいやったみたいですが。

○日本赤十字社田所経営会議委員  B 型肝炎についてはコア抗体の基準を変えましたが、そのことによって既往感染の方の血液による感染は起きていません。

○牧野委員長 この 1 年。

○日本赤十字社田所経営会議委員 はい。

○岡田委員 この文献があったので、日本赤十字社の NAT の結果を見させていただいたのですが、 20 NAT B が陽性になる率が、この抗体の基準を変えたことによって頻度が減っているというのが結果として出ていますので、この方法は有効ではないかと思います。

○山口委員  1 点、免疫抑制状態の話で、これは確認ですが、サイトメガロウイルスなどの免疫抑制状態では、多分発症しやすいという話だと思うのですが、こういう方にサイトメガロウイルスがネガティブの輸血、血液製剤の提供というのは、日赤でやられていると聞いているのですが、その理解でよろしいのですか。

○日本赤十字社田所経営会議委員 移植の場合は、移植を受けられる方も移植する方もCMV抗体が陰性という条件があれば、CMV抗体陰性血を注文してくださいと勧めています。今、すべての血液は白血球を除去しており、白血球除去血はCMV感染についてもCMV抗体陰性血と同等の予防効果はあると言われているのですが、念のため、追加の基準として場合によってはCMV陰性血を使用したほうがいいのではないかというガイドラインが出ています。ただ、それがどれほど効果があるのかについては、まだ世界的にもエビデンスが十分に出ていない状況であると認識しています。

○牧野委員長 ほかによろしいでしょうか。それでは、その他の報告、 11 から 21 までお願いします。

○血液対策課課長補佐 研究報告の概要の 3 ページ、文献 11 から、要点のみ申し上げます。文献 11 は、ヨーロッパ各地の A 型肝炎ウイルスの集団発生の報告です。 1 3 月に 352 例が報告され、前年比で 70 %増となっています。共通している食品は冷凍ミックスベリーで、サーベイランス等を強めていこうという話が載っています。

 文献 12 は、ブラジルから HIV の報告です。針刺し事故の後、曝露後の予防措置をしたにもかかわらず HIV に感染してしまったという症例報告がありました。これは、医療従事者 (40 代の准看護師 ) の針刺し事故があり、その後ガイドラインに沿って、洗浄とともに 3 剤の抗ウイルス剤を内服しました。予防措置は 28 日間継続されましたが、 8 か月後の検査で HIV が陽性になったという報告です。もともとの患者は、 CD4 が非常に低かったこと、また、この事故から数週間後に患者のほうは死亡したことから、ウイルス量が高かったのではないかということが考察として書かれています。

 文献 13 14 です。台湾の H6N1 感染の報告です。これは同様文献ですが、報告元が違うため、別扱いとして 13 14 と分けています。 H6N1 インフルエンザは鳥由来のインフルエンザと考えられておりまして、家畜感染としては持続していたものですが、今回初めてヒトで感染が報告されました。症例は 20 歳女性。肺炎、呼吸困難等を呈し、抗ウイルス薬 ( タミフル ) の投与で回復したということです。患者に接触した方は 36 人いましたが、ウイルスは分離されなかったということです。

 文献 15 16 17 18 は同様文献で、 H7N9 のインフルエンザの報告です。これは中国からの報告で、まとめて説明いたします。文献 15 16 は時点ごとの報告です。文献 15 7 月時点での報告で、発症数が 133 例。文献 16 8 月時点で、発症数 135 件です。文献 17 には、感染確定例 82 例に詳細調査を行った結果が載っています。これによりますと、 73 %が男性。 84 %が都市の生活者。 17 例が死亡しており、感染から死亡までの中央値は 11 日であったことが述べられています。家族内でヒト - ヒト感染が 2 件ほどあった可能性もあるということです。文献 18 は、 H7N9 のウイルスがヒト型受容体にも結合を示したという報告です。ヒトの気管支や肺の組織で増殖を認めたことから、感染性の高さが示されたことが報告されています。なお、このインフルエンザについては、 WHO の最新の報告では、 12 3 日時点で発症が 141 例、死亡が 47 例でした。

 文献 19 は、ウエストナイルウイルスの報告です。 2012 年、アメリカにおいてはウエストナイルウイルスの報告が 5,674 例あり、 2003 年以降最大の数が報告されました。このうち 51 %に当たる 2,873 例が脳炎、髄膜炎、急性弛緩性麻痺などの神経侵襲性疾患等を呈していたということです。死亡は 5 %に当たる 286 例でした。

 文献 20 は、インドにおける無症候性マラリアの報告です。インドの西ベンガル州プルリア県住民を調査したところ、 1,000 人中 8.4 %に当たる方々で、無症候性であるものの原虫が陽性であったという結果を得ました。陽性者は、ここにあるとおり、アルテミシニンをベースとした治療をされ、有効率は 97 %だったということです。また、シークエンスでは、スルファドキシン - ピリメタミン耐性の変異も示唆されているということです。

 このセクションの最後になります。文献 21 は、インドからの狂犬病の症例報告です。 6 歳男児が狂犬病の犬に襲われ 3 日後に発症しました。 6 か月後に死亡するまでに、家族 5 人を噛んだということで、家族全員が狂犬病様症状を呈しているとのことです。

○牧野委員長 今の 10 題の報告に対して、委員の先生から御質問、追加はございませんでしょうか。文献 12 は、曝露後 2 時間以内に治療を開始しても、結局、抗体は陽性になったということです。かなりウイルス量が多かったということですね。

○花井委員 文献 12 について、本文を見ると、このウイルス自体が薬剤耐性を持っているということですが、耐性を持っているのは、感染予防措置に使っている薬剤とは違う機序のものです。耐性ができているのは NNRTI( 非核酸系逆転写酵素阻害剤 ) の耐性で、予防には PI (プロテアーゼ阻害剤)を使っているということで、関係ないようなのですが、考えてみると、結局のところ、耐性物質に関しては、予防措置について、もし PI 耐性であれば、このようなレジメンでは予防効果がないことになるのではないかと思います。直接関係ないかもしれませんが、そういったことも今後は予防ということで見直していくことが必要かもしれないと思いました。今回は多分それでも無理だったということなので、かなり高ウイルスであったことが原因ではないかと思います。

○牧野委員長 よろしいでしょうか。それでは、文献 22 から最後までをお願いします。

○血液対策課課長補佐 文献 22 及び 23 は、新型コロナウイルスによる中東呼吸器感染症 (MERS) の報告です。文献 23 では、 8 月現在 94 症例が確定し、 46 例死亡と述べられています。同論文では、発症前にヒトコブラクダやヤギとの接触歴があったということで、また、ラクダの特異的抗体も示唆されていることが報告されています。最新情報としては、 12 2 日現在、 163 例が確定、 70 例が死亡しているということです。発症国にクウェートとスペインが新たに報告されましたので、中東ヨーロッパ、アフリカ等の合わせて 12 か国から報告があったとなっています。

 文献 24 です。これは、オーストラリアから、バーマフォレストウイルス感染の報告です。 2012 年は 94 例の報告がありましたが、雨量が平常の 2 倍であったブリスベン地域を含む地域一帯では、今年 1 3 月に既に 41 件報告されたということです。このウイルスは雨の量とともに増加し、蚊が媒介すると言われており、地域では水溜まり除去等の対策を取っている等が書かれています。

 文献 25 26 は、両方とも新規 cyclovirus の報告です。文献 25 はマラウイからの報告です。 2010 年から 2011 年に報告された原因不明の対麻痺患者 58 例のうち、血清で 15 %、脳脊髄液で 10 %に、このウイルスが検出されたということです。

 文献 26 では、同様ウイルスがベトナムからも報告されています。原因不明の急性中枢神経系感染症の脳脊髄液の 4 %から、このウイルスが検出されたということです。また、同地域のニワトリやブタにも、このウイルスを有しているものがあったことが書かれています。

 文献 27 28 です。文献 28 は同じ文献なので、先ほどと同様の扱いをしています。これは中国から、非 A 、非 B 、非 C 、非 D 、非 E 型肝炎の患者から分離されたパルボウイルス様新規ウイルスに関する報告です。 1999 年から 2007 年に、中国の一地方、重慶で収集された血清 92 検体のうち 70 %から、コウモリのサーコウイルスやブタのパルボウイルスに類似した新規ウイルスが分離されたということです。詳細は検討されていませんが、今後、評価すべきものであると報告されています。

 文献 29 は、国内感染研からボレリア感染症の報告です。感染研では、過去にライム病が疑われた 800 検体を後ろ向き疫学調査したところ、 2 検体から、これはどちらも北海道の検体ですが、 Borrelia miyamotoi という回帰熱の原因となるボレリアを確認しました。この検体に相当する患者は、実際はライム病との同時感染か回帰熱であった可能性が示唆されています。回帰熱は四類感染症ですが、感染症法施行後初の報告となります。厚生労働省では、回帰熱・ライム病を疑う症例では、両方の検査を進めてくださるよう依頼しています。

 文献 30 は、リーシュマニア症の報告です。従来、リーシュマニア症は熱帯病とされてきましたが、南ヨーロッパでの発症、また、北欧でも輸入感染症としての発症があり、欧州では 9 か国で年間約 400 600 人の発症が言われています。内臓リーシュマニアは重症ですが、軽症である皮膚リーシュマニア等は過小評価されている可能性もあるということで、サーベイランス体制の整備等が議論されています。

 最後に、文献 31 は、英国からウシ結核の報告です。これは、 53 歳の食肉処理業者にウシ結核が感染したということで、この方は死亡されています。既感染のウシの排泄物やエアロゾルを介した感染もあるので注意が必要だと書かれています。

○牧野委員長 ただいまの報告に対して、委員の先生方から御意見、御質問がありましたらお願いします。

○岡田委員 文献 27 についてです。今はウイルスの遺伝子を検出する技術が非常に進歩しまして、病原性が分からないウイルスまでたくさん検出されてきますので、恐らく、これからもこういう報告が出てくると思います。昔は、病気があって、その病気の原因のウイルスを探したのですが、今はウイルスが先に見付かって、そのウイルスが起こす病気を探すという逆の構造になっていますので、今後もこういう報告があった場合に、判断が難しいということが出てくると思います。

○牧野委員長 ほかにございませんでしょうか。それでは、事務局は今の御意見を十分念頭に置きつつ、引き続き、感染症定期報告の収集等をお願いします。

 次に、議題 4 「血液製剤に関する報告事項について」に移ります。遡及調査の進捗状況や副作用感染症報告の状況、これまで報告された事例のその後の対応状況等について報告いただきたいと思います。事務局から説明してください。

○血液対策課課長補佐 資料 4-1 4-2 4-3 を続けて説明いたします。まず、資料 4-1 を御覧ください。 4 ページの「供血者から始まる遡及調査実施状況」についてです。一番右の平成 25 4 1 日~ 9 30 日の欄が最新の情報です。 (1) の遡及調査実施内容の中の、マル1個別 NAT 実施件数は 4,593 。下の (2) 個別 NAT 関連情報のうち、マル1遡及調査実施対象のうち、個別 NAT 陽性となった件数は 48 。これには 1 件の HCV を含んでいます。マル3の 1) 患者陽転が確認されたものは、 HB 1 件、 HC 1 件です。この HC は、前回報告がありました 2008 年以来初のすり抜け例ということで、前回も御議論いただいたものですが、集計の関係で今回は詳細情報が上がってきているものです。

 次に、資料 4-2 「血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例等について」です。今回は死亡例として報告されたものが 2 件ありましたので、報告いたします。 1 ページを御覧ください。死亡例として報告されたものは、医療機関からの報告です。担当医師が、輸血副作用を否定できないと判断したものが報告されたものです。

1 例目は、輸血によるサイトメガロウイルス感染が疑われた 1 例です。事例は、妊娠 24 週で出生された超低出生体重児の生後 29 日目の患児です。生後すぐより赤血球の輸血を実施し、その後、間質性肺炎により人工呼吸管理等を行いましたが、全身状態が悪化し、輸血後 1 か月で亡くなったということです。検査として、サイトメガロウイルスの抗体、尿中 DNA が陽性で、サイトメガロウイルス感染だと主治医は考えていました。また、母親でも検査をしまして、サイトメガロウイルスの出産前の抗体は、 IgG 抗体が陽性。出産後 2 か月の抗体は、 IgG IgM 共に陽性という結果を得ています。

3 は精査の状況ですが、担当医は「本剤との関連性は不明」としていますが、保管検体で精査したところ、サイトメガロウイルスは陰性ということで、結果的には輸血感染は否定的ではないかという結論です。既に、同一採血番号の血液等の新たな使用は停止しています。

2 ページに、もう 1 例あります。輸血による細菌感染症が疑われた事例で、 1 歳男児の症例です。原疾患は神経芽細胞腫。化学療法後の骨髄抑制について血小板を使用しました。全身状態が不良で、人工呼吸管理や人工透析、ステロイドパルス等を行いましたが、輸血後 4 日目に敗血症を合併、 6 日目に死亡されたということです。

3 の状況です。当初、患者からは Staphylococcus epidermidis が検出されており、主治医の見解として、輸血感染が否定できないのではないかということで報告を受けました。精査の中で、投与中止製剤では培養が陰性、エンドトキシン感度以下で、輸血感染は否定的であるという結果を得ています。その後、今週になりまして、主治医からも、関連性はないとして取り消す見解が上がってきています。

 結果的に、両例とも輸血感染としては否定的と考えますが、医療機関では他の原因究明を含めて精査を進めていると聞いています。新規の死亡例は以上です。

3 ページは、経過をフォローしている輸血用血液製剤で感染が疑われる事例についての新たな情報です。今回は、過去に報告された死亡例、劇症肝炎例について、新たな情報はありませんでした。

5 ページを御覧ください。「感染症報告事例のまとめについて」として、平成 25 8 10 月の報告分です。 HBV 感染報告事例は 13 件ですが、 2 の「 HBV 感染報告事例」の中の (2) 、個別 NAT 陽性例は 2 件でした。 HCV 感染報告事例については 1 (2) 10 件とありますが、 3 の「 HCV 感染報告事例」の (2) では、個別 NAT 陽性例は 1 例です。これは、前回御議論いただいたすり抜けの 1 例です。 HIV 感染報告事例は 0 例で、今回の例は日程的にまだこちらにはカウントされていません。その他の感染症報告として 11 件あり、そのうち 9 件は細菌感染、 2 件はサイトメガロウイルス感染でしたが、 5 「その他の感染症報告事例」の中の (2) に、保管検体の無菌試験結果があり、陽性になったものは 0 件という結果を得ています。

 次のページからのエクセル表は、個別症例の表です。最初が、「輸血による HBV 感染報告例 ( 疑い例を含む。 ) 」で、 NAT が陽性のものが 2 例あります。 10 ページは、 HCV NAT 陽性例、すり抜けの例です。詳細の説明は省略いたします。その他、気になる症例等がありましたら、御意見、御質問等で頂きたいと思います。

15 ページを御覧ください。これも定期的に運営委員会で報告していますが、 HEV20 プール NAT 実施状況について、今回の情報の更新があります。平成 25 1 9 月では、陽性率が 0.009 %、 Genotype については、 G3 G4 の比は現在 19:0 で、まだ経過観察をしているところで、例年と比べて大きな変化はないのではないかと考えています。

 最後に、資料 4-3 は、 11 月に行われたエイズ動向委員会においても発表した資料です。 1 ページの一番下を御覧ください。献血件数及び HIV 抗体・核酸増幅検査陽性件数について、 2013 1 9 月の献血では、 55 件の陽性がありました。 10 万件当たり 1.4 で、例年と大きな変化はありません。

2 ページ以降の、国別・性別・都道府県別・ブロック別・年齢別においても、日本人男性 30 代、 40 代に多く、大都市に多いという傾向については、これまでと大きな変化はありませんでした。

6 ページに経過グラフがあります。この最終データは 6 月までのもので集計されています。昨年度が非常に低い陽性率でしたので、少し上昇しているように見えるものの、前々年度と比較して、さほど変化があると言えず、経過を見ている状況です。

○牧野委員長 今の報告に対して、御意見、御質問ございましたらどうぞ。最後の、 HIV について、都道府県別で見ますと福岡は少し多いのですか。

○血液対策課課長補佐 そうですね。まだ何とも言えませんが、 5 件ということで、例年に比べて少し増えているかなと。経過を見ようと思います。特に新しい情報が入っていることはありません。

○牧野委員長 ないのですね。

○血液対策課課長補佐 はい。

○山口委員 質問です。来年から個別 NAT をやるときに、 HEV の検査も個別になるのですか。

○日本赤十字社日野副本部長 現在、 20 プールでやっていますので、当然、 BCI も個別でやることになります。それと同じ検体を使うことになるので、個別と考えています。

○山口委員 プールすることはないのですね、個別になるということですね。

○日本赤十字社日野副本部長 はい。

○山口委員 分かりました。

○牧野委員長 ほかに、ございませんでしょうか。

○田崎委員 確か、 8 月に、血液センターから「未熟児周産期医療機関へ」ということで、低出生体重児の子供への CMV 陰性の血液を提供するというようなパンフレットが配布されたと思います。その後の反響というか、あれで、そういうオーダーが急激に増えたなどということはありませんでしたでしょうか。

○日本赤十字社五十嵐安全管理課長 オーダーが急に増えたという情報は私の所には入っていません。ただ、副作用の疑いの症例は随分上がってきています。そういう状況です。陰性血の需要はそれほど増えていないと思っています。

○日本赤十字社日野副本部長 今の件に関連して、資料 4-2 1 ページの、 CMV 感染が疑われた症例の 2 「事例」を御覧ください。母体の CMV 関連検査で、もともとこのお母さんは IgT 陽性で、 9 12 日の時点では IgM が陽転していましたので、日赤の保管検体の結果も併せて、この感染は母子感染の可能性もあるだろうという主治医のコメントは頂いています。

○牧野委員長 そのほか、よろしいでしょうか。それでは、事務局と日赤におきましては、今の御意見を念頭に置きつつ、血液製剤の安全性に関する情報を引き続き収集していただきたいと思います。

 議題 5 「その他」に移ります。事務局から説明してください。

○血液対策課課長補佐 資料 5-1 5-2 を説明いたします。まず、資料 5-1 「フィブリノゲン製剤納入先医療機関の追加調査について」です。運営委員会で毎回報告していますが、これも前回と大きな変更はありません。現在、医療機関の協力の下、平成 25 年度の書面調査を実施しています。これは、平成 24 年度まで実施されていた訪問調査で得た知見を基に、医療機関に再度、フィブリノゲン製剤投与事実の確認をお願いしているものです。回答率はいまだ 40 %前後ですので、是非、関連施設への御協力の呼び掛けをお願いいたします。

 続いて資料 5-2 、運営委員会の規程の変更のお知らせです。本委員会に毎会御出席され、様々なデータを説明していただいています日本赤十字社につきまして、参考人とは別であることを明確にする点から、今回、第 7 条の「委員会の運営」にその旨を追記いたしました。新旧表でも御確認ください。事務局からは以上です。

○牧野委員長 今の報告に対して委員の先生方から御質問、御追加、ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

 次に、前々回、 10 2 日の第 3 回運営委員会において日本赤十字社から報告された「平成 24 年度の取組」に関して、当時なされた委員からの質問に対して、日本赤十字社から説明があるということです。お願いいたします。

○日本赤十字社碓井総括副本部長 前々回、 10 2 日の血液事業運営委員会において、先生方から御質問がありました件について回答いたします。順番にいきたいと思います。

 まず、広域事業運営体制の実施による効果についてです。御存じのとおり、平成 24 4 月から広域事業運営体制を導入しています。全国を 7 つのブロックに分けて、ブロックセンターの新設として、建築工事を含め、これは均一した製品の製造ということで、今までは狭隘な部分もあったセンターもありますが、これを集約して 7 つのブロックで製造を開始しています。 GMP の適合に合った施設を造ったことにより大きな効果が出ています。

 それから、広域需給体制ということで、需給管理においては、ブロック単位で血液の供給を完結するという前提に立ち、今までは血小板等を採りにくいような地域もありましたが、それは採れる所で採るというように、各センターのメリット、デメリットをいかした採血を行って、需要に見合った過不足のない採血をするという効果が出ています。

 同時に、供給についても、周産期の母子医療センター (NICU) 等、地域の中核医療機関に対して迅速な供給を行うということを大前提にしています。これは各地域に供給施設を増設しています。このメリットも出ておりまして、 1 時間以内で医療機関に供給ができることを前提にして広域基地を作っています。医療機関への迅速な供給、サービスも含めて、そういったものが充実されてきていると考えています。

 供給については、もう 1 点、供給エリアの変更もかけています。これまでは都道府県単位で供給エリアを決めていまして、同一都道府県内の医療機関はどんなに遠い医療機関でも、その同一都道府県内の血液センターから供給していました。これを、県境を越えて供給を開始しました。こちらについても、以前より短縮した時間で血液製剤をお届けできるというメリットがあります。また、今までは注文を寄越さなかったような小さな病院も、迅速に供給ができるような体制を取っていますので、今まで血小板を余り使わなかったような病院が、少しずつ注文を入れてきております。

 このように、事業面においてはいろいろな対策を取って、広域事業に対して、医療機関等の需要に見合ったものを作っていきたいと思っています。平成 24 年度は、こういった設備投資をしていますので、財政的に少し厳しい部分がありますが、財政面も含めて、広域事業を作ったメリットをいかにいかしていくかが今後の課題ですので、事業評価を含めて検討に入っています。

2 点目に、血漿分画事業を切り離した後の状況について御質問を頂いています。こちらについては、昨年 10 月に分画事業を日本血液製剤機構に移譲した経緯があります。これは、国内需給を達成するという目的で JBPO を設立しました。現在は、千歳の分画工場で作っていた旧日赤製品については、日赤の MR が病院に交渉しながらその販売を行っているという状況が続いています。分画事業を切り離していますので、若干ではありますが、経費等の節減もできています。しかしながら、旧日赤製品を販売していますので、その販売に関わる仕入れのコストとしてまだ費用が入ってきていますので、一概に大きな改善ができているということではありません。今後も国内受給に向けて、我々日赤としては引き続き協力、また、努力していく所存ですので、よろしくお願いしたいと思います。

3 点目は、研究所における研究内容について御質問ですが、これは田所から申し上げます。

○日本赤十字社田所経営会議委員 中央血液研究所をはじめとする日本赤十字社の研究については、 5 本ぐらいの柱で行っています。

 第 1 は、血液型です。血液型については、輸血の不適合、免疫学的副作用、移植の拒絶などに関係して、ほかではもうなかなか研究ができないという状況にありますので、日赤でこれを行っています。

 日赤の研究というのは、何らかの新しいものを見いだすのと同時に、血液事業の業務の中で生起する諸問題を解析する、それを 1 つずつ分析するという、 2 つの作業があり、その中から新しいものを見いだしていくということがあります。血液型では全国のレファレンス・ラボラトリーとして、医療機関では同定できないようなものについて、それを受けて検討しています。年間 3,000 件ぐらいは、そうしたものを受けています。そういうことを通じて、血液型では、日本人に合った遺伝子タイピング法を開発するとか、 HLA 型の新しいアリルを検討する。日本人の HLA 型では、約 2 年間で 60 例ぐらいの新しい型を見いだして、それを世界に報告して登録していただいています。それ以外に、それぞれの血液型の検査法、 HLA 型の適合検査や、赤血球のモノクローナル抗体を作って全国に配布するというような開発・研究も行っています。

 非溶血性副作用の研究というのが第 2 の柱です。 TRALI TACO 、アナフィラキシーなどの輸血副作用についての研究を行っています。これについては、先ほど言いましたように、実際に副作用として上がってくるものを解析するということで、これも約 2,000 例の解析を行っています。同時に、副作用の原因となる物質について、かなり網羅的な検討をしています。

 それから、血液製剤の開発・改良については、最近では赤血球のうちの二次製剤と言われる合成血や解凍赤血球などの改良、血小板の保存液を開発して、洗浄血小板についての製造承認のためのデータ取得、病原因子、不活化 ( 低減化 ) 法の評価とともに我々独自の方法の開発も目指しています。 iPS 細胞由来の赤血球の作製ということも、新たに技術員、技術を併せて導入して実施しています。

 第 4 の柱は、感染症の解析です。これも、先ほどのような感染症報告の解析や遡及調査における調査を並行して行っています。感染症のスクリーニング検査が陽性になったものについて、どういうものが陽性になっているのかというような解析を約 500 例検討しています。また、輸血感染症の疑い症例や、遡及調査では数 1,000 例のうち個別 NAT が陽性になったものについて更に解析することを行っています。それ以外に、新興感染症の解析法の開発として、トリパノソーマ、デング、チクングニア、ウエストナイル等の解析法を評価、あるいは、独自に開発しています。

 それから、日赤がこれだけ膨大な疫学データを持っていますので、その疫学的なデータから日本の感染動向を明らかにするため、例えば HTLV-1 HEV がどのような感染動向になっているのか、水平感染がどれぐらい起きているかということについても報告しています。

 最後の柱は、採血副作用の予防と献血者の安全性の向上です。これは研究所が直接というよりは、献血現場で、各ブロックセンターの中で、 VVR( 迷走神経反射 ) の予防や神経損傷の予防ということで、具体的に将来の導入を目指すための検討を行っています。例えば、足を組んで力を入れると VVR が起きにくくなるとか、水分を取ると起きづらくなるなど、それを具体的にどのように導入したらいいかなどの検討を行っています。

 もう 1 点、 iPS についても御質問があったと思います。これについては、 3 つの方面で研究を行っています。 1 つは、京大が行っている iPS 細胞ストックの構築への協力です。 HLA ホモの方の iPS 細胞を採っておいて将来の移植に用いようという研究がありますが、これに対して、 HLA 適合血小板で HLA が判明している方のうち、 HLA ホモの方に呼び掛けを行って協力していただくように働き掛けるということが 1 つです。 2 つ目は、 iPS 細胞研究所が行っている iPS 細胞由来血小板の作製について、近畿のブロックセンターが協力しています。 3 つ目が、中央血液研究所で iPS 細胞由来の赤血球の作製及びそれを用いた赤血球型の抗原の発現の機序、あるいは、検査用の血球試薬を作るというようなことを想定した検討を行っています。研究等については以上です。

○日本赤十字社日野副本部長 最後に、さい帯血バンク事業における検査業務について、御質問の趣旨は、日赤が輸血用血液として検査している検査は、もちろん薬事法の範疇の中でやっていますが、さい帯血バンクの検査業務はそれに関わらない検査で、バンク事業の中では検査のバラ付きがあり、統一する方向ではないかという話も存じ上げていますので、そういった場合にどうするかということだったと思います。輸血用血液の検査は別の部屋で検査するというのは難しいことだと思いますので、もし、バンクから検査をやってほしいという話があった場合には、例えば時間をずらすなどの形で、現在の輸血用血液の検査と混同しないような工夫をしていくことが一番重要ではないかと思っています。もちろん、こういったことに関しては、厚生労働省など関係機関と一緒に今後検討していく必要があると思います。

○牧野委員長 今の日本赤十字社からの説明に対して、何かこの場で聞いておきたいことはございますか。

○山口委員 いろいろなさい帯血バンクは、日赤に統一して検査してもらうことを期待しているのだろうと理解しています。質問の趣旨は、薬事法の掛かる事業と掛からない事業をどのように区別して運用するのかを、今後きちんと検討してくださいということでしたので、それは関係部局と検討していただければいいと思います。

○牧野委員長 ほかにございませんか。

 特になければ、本日の議題はこれで全て終了しました。次回の日程等については、後日、事務局から連絡をしてください。

 本日は御多忙のところ、ありがとうございました。


(了)

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