ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)> 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録(2013年5月22日)




2013年5月22日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

○日時

平成25年5月22日(水)
10:00~


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

出席委員(18名) 五十音順

○荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、 石 井 明 子、 今 井 聡 美、
◎笠 貫    宏、 川 上 正 舒、 木 村    剛、 正 田 良 介、
  鈴 木 邦 彦、 武 谷 雄 二、 田 島 優 子、 寺 崎 浩 子、
  中 谷 武 嗣、 新 見 伸 吾、 西 田 幸 二、 濱 口    功、
  菱 田 和 己、 桃 井 保 子
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人3名

欠席委員(6名) 五十音順

  梅 津 光 生、 齋 藤 知 行、 塩 川 芳 昭、 高 橋 好 文、
  千 葉 敏 雄、 村 上 輝 夫

行政機関出席者

平 山  佳 伸 (大臣官房審議官)
俵 木 登美子 (安全対策課長)
浅 沼  一 成 (医療機器審査管理室長)
矢 守  隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
佐久間 一 郎 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)
山 本    弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

○議事

○医療機器審査管理室長 定刻になりましたので、ただ今より「医療機器・体外診断薬部会」を開会いたします。委員の先生方におかれましては、御多忙の中を御出席いただき、誠にありがとうございます。

 本日は医療機器・体外診断薬部会委員24名のうち、18名の御出席を頂いておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告いたします。

 初めに、部会委員の異動がありましたので、御報告させていただきます。4月1日付けで国立医薬品食品衛生研究所医療機器部長が松岡先生から新見先生に代わりました。本日から新見先生に委員をお願いしております。どうぞよろしくお願いいたします。

○新見委員 新見です、よろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理室長 続きまして、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、議題1と2につきましては会議を公開で行い、議題3以降につきましては医療機器の承認審査に関する議題であり、企業情報に関する内容等が含まれるため、非公開といたします。

 これより議事に入りますので、傍聴の方によるカメラ撮りはここまでといたします。御協力のほど、よろしくお願いいたします。以後の進行につきまして、笠貫部会長、どうぞよろしくお願いいたします。

○笠貫部会長 初めに、事務局から配付資料についての御確認をお願いいたします。

○医療機器審査管理室長 まず、公開案件分の配付資料の確認をさせていただきます。資料1-1「医療機器の認証基準案について」、資料1-2「医療機器の認証基準案に係る基本要件チェックリスト案について」、資料2-1「次世代医療機器評価指標について」、資料2-2「自己iPS細胞由来網膜色素上皮細胞に関する評価指標案」、資料2-3「活動機能回復装置に関する評価指標案」、資料2-4「重症下肢虚血疾患治療用医療機器の臨床評価に関する評価指標案」、参考資料1-1「医療機器の認証基準に関する基本的な考え方について」、参考資料1-2「認証基準において引用するJIS」、以上でございます。不足はございませんでしょうか。

○笠貫部会長 資料の方はよろしいでしょうか。よろしければ、議題1の方に入ります。事務局から御説明をお願いします。

○事務局 報告事項議題1、資料1-1、資料1-2、参考資料1-1、参考資料1-2「医療機器の認証基準案について」、事務局より説明いたします。

 初めに参考資料1-1について御説明します。認証基準につきましては、平成17年の「改正薬事法」の施行により、第三者認証の制度を導入させていただいております。現在、我が国には第三者認証機関が13機関ございます。厚生労働大臣が基準を定めて指定する指定管理医療機器につきましては、第三者認証機関がその基準に基づいて適合性の評価を行い認証する形を取っています。現在までに管理医療機器の一般的名称1,797品目のうち1,365品目、基準数で言いますと824基準が制定され、平成24年度では新規申請のありました管理医療機器全体の約96%を第三者認証機関がカバーする状況にございます。裏面に医療機器のクラス分類について記載されておりますので、御参考になさってください。

 続きまして資料1-1を御覧ください。本日、先生方に御報告させていただく認証基準案につきましては、資料の表紙にございます「1.関節鏡用液体拡張装置等認証基準(制定案)」ほか、改正8基準の計9基準でございます。

 次に資料1-2を御覧ください。こちらは「基本要件適合性チェックリスト」でして、先ほど御説明いたしました認証基準案9件に対応するものです。

 最後に参考資料1-2を御覧ください。こちらは今回、御報告させていただく認証基準において引用するJIS規格です。本日、御報告させていただく基準のうち、新規に制定される関節鏡用液体拡張装置等認証基準に関しましては、パブリックコメントを終えた後、告示でお示しする予定です。

 これらの内容につきましては、医薬品医療機器総合機構から御説明いただきます。

○機構 資料1-1を御覧ください。先生方に今回御報告いたします認証基準案は新規制定案が1件、日本工業規格の改正に伴います改正案が8件でございます。「1.関節鏡用液体拡張装置等認証基準案」が新規制定案です。

 1ページの上段を御覧ください。関節鏡用液体拡張装置等認証基準案が対象とする一般的名称は関節鏡用液体拡張装置及び子宮鏡用液体拡張装置で、基準の日本工業規格は医療機器安全の通則規格であるJIST0601-1として使用目的、効能又は効果は「内視鏡使用下で関節又は子宮観察又は処置時に処置部又は処置部周囲の組織の拡張又は洗浄に用いること」としております。

 資料1-1の「目次」を御覧ください。2~9までが日本工業規格の改正に伴います改正案です。そのうち、2~5までが2012年6月1日にIEC60601-1edition3.02005年版に対応し、JIST0601-1が第2版から第3版として改正されたことに伴い、この通則規格を引用する個別規格の改正に伴う基準の改正でございます。6~9までが歯科材料関連のISO改正に伴い、日本工業規格を改正したことによる基準改正です。

 また、今回の改正で一般的名称の定義に変更を行うものは、5で記載いたしました3名称です。11ページの下段を御覧ください。当該認証基準に含まれる一般的名称3名称につきましては、一部コンポーネントが外耳部に内蔵される補聴器が存在するといったことがありますので、基準改正時に現状の使用実態に合わせて一般的名称の定義を記載のとおり、現行から改正案へ整備することとしております。

 資料1-2を御覧ください。資料1-2は基本要件適合性チェックリスト案です。新規制定1件、JIS改正に伴う改正8件、合計9件となっています。これにつきましては適宜、日本工業規格改正に伴う文言の見直し、基本要件への適用・不適用、特定文章の確認の記載項目等の見直しを行いました。御説明は以上です。

○笠貫部会長 どうもありがとうございました。委員の先生方、御意見や御質問はございませんでしょうか。一つの制定案と八つの改正案について、皆様、既に御覧になっているかと思いますが、特に御意見はございませんでしょうか。

 特にございませんようでしたら、これで議題1は終了とさせていただきます。

 議題2に移ります。事務局より御説明をお願いいたします。

○事務局 報告事項議題2、資料2-12-4「次世代医療機器評価指標について」、御報告させていただきます。

 それでは、資料2-1に基づき説明いたします。平成17年度より医療ニーズが高く実用可能性のある次世代、今後出てくるであろう医療機器の審査の迅速化、それから製品開発の円滑化を目的として検討分野を選定、その評価に当たってのポイントをまとめた評価指標を作るということで次世代医療機器評価指標作成事業という事業を行っております。今般、自己iPS細胞由来網膜色素上皮細胞、活動機能回復装置、重症下肢虚血治療用医療機器の臨床評価に関する評価指標の検討が終了しましたので、御報告させていただきます。

 自己iPS細胞由来網膜色素上皮細胞については資料2-2、活動機能回復装置につきましては資料2-3、重症下肢虚血治療用医療機器については資料2-4でございます。これらは昨年度、平成24年度に専門家の作業グループにおいて作成頂いた原案を基にパブリックコメント、任意の意見募集を実施し、寄せられたコメントを踏まえて一部修正した最終案となっており、今後速やかに通知として公表していく予定としております。

 資料2-1に戻りまして、2の「評価指標の内容・位置付け」です。いわゆる次世代の医療機器につきましては、個別に試験が行われて審査が行われるという点は通常の医療機器と変わらないわけですが、評価に当たって着目すべき事項やポイントをまとめた評価指標をあらかじめ作成、お示しすることで、その機器の開発段階における申請資料の収集、更に審査の段階が迅速化できないかと考えて、このような評価指標の作成を行っております。これらは承認基準という位置付けではなく、あくまでも技術開発の著しい次世代医療機器を対象として現時点で考えられる評価のポイントを示した、評価に当たっての道標というようなものでして、法令的な基準とは位置付けが異なるものとなっております。

 これまでに次世代型人工心臓や角膜上皮細胞シートなど、合計16の評価指標を公表しまして審査や薬事戦略相談などの開発段階でも活用されてきているということで、これに新たに今回三つの評価指標を加えることを報告させていただきます。以上です。

○笠貫部会長 委員の先生方から御質問、御意見ございますか。非常に重要な三つの次世代医療機器の評価指標といいますか、道標をお作り頂いたと思います。評価指標は開発ガイドラインとの関係はどのように位置付けて進められているのでしょうか。

○事務局 当事業につきましては、経済産業省において実施しております開発ガイドライン作成事業と、厚生労働省と国立医薬品食品衛生研究所で連携して実施しております次世代医療評価指標との間で、検討する分野に関して相談し、可能な限り同じ医療機器分野を対象として検討を行っております。というのも、こちらの評価指標の方では可能な範囲で、品質・有効性・安全性確保の観点から承認に必要となってくる評価項目というものを中心に示しており、余り具体的な方法で試験をするかといった所までは詳しく示していません。そちらの細かい試験方法については、いろいろな方法があると思います。それらの詳細な部分につきましては、より柔軟性の高い形で、開発段階でこのような試験を実施したらいいのではないかという工学的な評価基準を、経済産業省が産業技術総合研究所など様々な開発企業や大学と連携して、開発ガイドラインという形で検討しています。そういった連携を取りながら、いろいろな医療機器の製品実用化が速やかに進むと。その際には、品質・有効性・安全性について十分に確認ができるという形で進めてきております。

○笠貫部会長 新見先生から何かございますか。

○新見委員 特にありません。

○笠貫部会長 経済産業省の方の「開発ガイドライン」はむしろ具体的な試験方法に踏み込んでいて、ここでの評価指標は、品質・有効性・安全性を見越して、ラフな形で道標を作っていくという捉え方でよろしいでしょうか。

○事務局 次世代の医療機器ですので、次々に科学技術が発展していくという中で、厚生労働省の方で余りはっきりと、こういうやり方をしなさいということを示し過ぎると技術開発を阻害することもありますので、そこまでは決めておりません。その一方、経済産業省で実施しております「開発ガイドライン」の方は拘束性がないもの、審査で使うという前提というよりは開発の際にこういうものを考慮できるだろうという形で、いろいろ具体的な方法を示しているという分担になっております。

○笠貫部会長 委員の先生方も御理解頂いたでしょうか。

○荒川委員 1点だけ発言します。資料2-2「自己iPS細胞由来網膜色素上皮細胞に関する評価指標案」ですが、最終的には評価指標として解剖学的評価と視機能検査評価があります。現時点でどちらが優先、あるいは解剖学的評価だけでいいのかとか、そういった議論はあるのでしょうか。

○事務局 特にどちらがということまでは、まだ決めておりません。個別には製品ごとに薬事戦略相談、承認審査の段階に向けて、どちらか良いものを相談して決めていくことになるかと思います。

○荒川委員 臨床学的位置付けとして、解剖学的にはそれなりの効果が得られているようだけれども、視機能に関してはなかなかという所かと思います。あるいは、1年後にまた同じことを繰り返してしまうような、より長期的な評価の議論はいかがですか。

○事務局 これから実施していく段階ということで、なかなか1年後にということまでは、議論はされていなかったと思います。

○笠貫部会長 先ほど御説明がありましたように、こうした非常に注目される次世代医療機器については今回、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞についても入っています。この開発ガイドラインと評価指標、これがよく連携を取りながら、より良いものを有効に、安全に開発をしていくということで進めていただけたらと思います。

 それ以外には御質問、御意見はございませんでしょうか。特にございませんでしたら、これで議題2を終了させていただきますがよろしいですか。それでは、公開で行います議題は以上になります。

○医療機器審査管理室長 ありがとうございました。以後の議題につきましては非公開とさせていただきますので、傍聴の皆様は御退席のほどよろしくお願いいたします。非公開の審議につきまして、準備の関係で10:25からとさせていただきます。

○医療機器審査管理室長 準備が整いましたので、医療機器体外診断薬部会を再開いたします。まず、非公開の議題に係る配布資料の確認をします。

 資料3「医療機器『サピエンXT』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料4「医療機器『磁気刺激装置TMU-1100』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料5「医療機器『エンボスフィア』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料6「医療機器『ヘパスフィア』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料7「新たに追加する医療機器の一般名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(患者適合型単回使用骨手術用器械)(諮問書)」、資料8-1「医療機器『エキシマレーザー角膜手術装置EC-5000』の再審査報告について」、資料8-2「医療機器『エキシマレーザー角膜手術装置EC-5000CXIII』の再審査報告について」、資料8-3「医療機器『VISXエキシマレーザーシステム』の再審査報告について」、資料8-4「医療機器『エキシマレーザーシステムMEL80』の再審査報告について」、資料9「医療機器・体外診断薬部会報告品目」、資料10「競合品目・競合企業リスト」、参考資料2「薬事分科会審議参加規定」、参考資料3「クラス分類ルール(平成16年7月20日付薬食発第0720022号厚生労働省医薬食品局長通知)」、また当日配布資料として、当日配布資料1~3が机上に配られていると思います。不足等ありましたら、お申出いただければと思います。

○笠貫部会長 資料はおそろいですか。よろしければ、非公開で行う議題に入ります。まず、本日の審議事項に関与された委員と利益相反に関する申出状況について、事務局から御説明をお願いします。

○事務局 資料10「競合品目・競合企業リスト」、参考資料2「薬事分科会審議参加規定」に基づき、事務局から報告させていただきます。こちらの報告は、平成201219日付け薬事分科会で決定された、薬事分科会の審議参加規定に基づくものです。委員の皆様方から毎回御報告を頂いておりますので、概要は御存じかと思います。寄付金、契約金等について競合企業と申請企業から御申告いただきまして、その結果に応じて審議不参加又は議決への不参加ということを決めさせていただいております。

 資料10「競合品目・競合企業リスト」を御覧ください。本日御議論いただく審議品目4品目について、それぞれ申請者から競合品目とその品目を選定した理由について報告を頂いております。本日、薬事分科会審議会規定に基づいて、御退室いただく委員、議決に御参加いただけない委員は次のとおりです。

 議題3、議題4について御退室頂く委員、議決に御参加頂けない委員はございません。議題5、議題6について御退室頂く委員は荒井委員、議決に御参加頂けない委員は木村委員となっております。以上、御報告いたします。

○笠貫部会長 ただ今の事務局の御説明について、特に御意見はありませんか。よろしければ御了解の下にということで、審議事項議題3「医療機器『サピエンXT』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」に入ります。

 本議題の審議に当たりましては、参考人として日本医科大学大学院医学研究科心臓血管外科教授の落雅美先生に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。まず、審議品目の概要について事務局から御説明をお願いします。

○事務局 審議事項議題3「医療機器『サピエンXT』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」につきまして、資料3に基づいて御説明いたします。1枚目が諮問書です。審査報告書というタグをお引きください。1ページ、販売名はサピエンXT、申請者はエドワーズライフサイエンス株式会社です。一般的名称については、既存の一般的名称のいずれにも該当しないことから、経カテーテルウシ心のう膜弁を新設したいと考えております。本品は、外科的な大動脈弁置換術を行うことが困難な症候性重度大動脈弁狭窄症の患者に対して、カテーテルを用いた経皮的アプローチによって人工弁の留置を行う人工心臓弁システムです。

 審査報告書の5ページを御覧ください。図1に弁尖にウシ心のう膜弁を用いたバルーン拡張ステント型生体弁の外観が、図2及び図3に、経皮的に人工弁を留置するためのデリバリーシステムの外観図が示されております。本品の使用目的については、審査報告書3ページの中ほどに記載されております。また、その下に承認条件3項目が記載されております。詳細については、機構より御報告いたします。

○機構 審議事項議題3、資料3「医療機器『サピエンXT』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。

 まず、当日配布資料1を御覧ください。本審査に当たり、記載している6名の専門委員の御意見を頂きました。また、当日配布資料2の本品の正誤表を御覧ください。こちらを追記修正しております。当日配布資料3として、本品の資料成績等調査実施計画書を提出しています。

 本品の概要について説明します。審査報告書4~5ページを御覧ください。本品は、外科的な大動脈弁置換術、以降はAVRとしますが、AVRの施行が困難な症候性重度大動脈弁狭窄症の患者に対して、経カテーテル的に弁留置を行う人工弁システムです。図1にお示しするようなバルーン拡張型生体弁と、図2と図3にお示しする2種類のデリバリーシステムから構成されています。

 本品を用いた治療について、動画を用いて簡単に御説明いたします。まず、経大腿アプローチ法について説明します。このように、高度に石灰化した大動脈弁尖と病変部位に、大腿動脈又は腸骨動脈よりガイドワイヤーを通します。その後、前拡張用のバルーンを大動脈弁狭窄部位に進めます。石灰化し、硬くなった大動脈弁組織をラピッドペイシングしながら、バルーンで拡張します。その後、手術室内で生体弁をデリバリーカテーテルにマウントさせたものを先ほどのガイドワイヤーに沿って、下行大動脈まで運びます。ここで、先端に付いているバルーンをこのマウントされた生体弁に移し、生体弁をバルーン上に生体内でマウントさせます。その後、先ほどの前拡張した狭窄部位に持っていき、バルーンで生体弁を拡張させます。このときもラピッドペイシングを行います。これにより、留置が完了します。このような形になります。

 次に、この大腿アプローチを施行することができない患者に対して用いられる、経心尖アプローチについて御説明いたします。こちらは、肋間を小切開した上で左心室の心尖部から心室を通し、先ほどと同じ原理で前拡張した上で、その後生体弁を留置するシステムになっております。その他の原理は先ほどの大腿アプローチと同様ですので、ここからは割愛させていただきます。

 審査報告書に戻ります。本品の外国における使用状況について、審査報告書6ページにお示ししているとおり、欧州では2010年にCEマークを取得しておりますが、米国においては現在臨床試験を実施しているところになります。現時点で56か国での市販がされており、約□□□□□個の販売実績があります。本品の非臨床試験については、審査報告書の9~16ページにお示しするような資料が提出され、特段問題は認められませんでした。

 次に、本品に使用される生物由来原材料の安全性について御説明いたします。審査報告書の16ページ、製造方法に関する資料の項を御覧ください。本品の生体弁の弁尖部に使用されている米国産ウシ由来の心のう膜は、動物細胞組織製品原料基準に適合します。また、心のう膜は米国産であるため、反芻動物由来原料基準に適合しませんが、平成1310月2日付け医薬発第1069号に示されているBSE発生国を原産とするウシ由来原材料をやむを得ず使用する場合の要件を満たしていることから、本品の品質及び安全性は確保されていると判断いたしました。

 続いて、本品の臨床試験について御説明します。

 審査報告書18ページから御覧ください。本品の臨床試験資料として、本品の前モデルであるサピエンを用いた米国臨床試験成績と、本品を用いた国内臨床試験成績が提出されました。

 審査報告書23ページを御覧ください。米国臨床試験は、症候性の重度大動脈弁狭窄を有する患者を外科手術のリスクに応じて、二つのCohortに分け実施されました。23ページの脚注にお示しするように、外科手術リスクが15%以上と推測された患者を外科手術ハイリスク群CohortAとして、これを大きく超えるリスクを有する患者を外科手術適応外群CohortBとした上で、対象群をそれぞれCohortAではAVR、CohortBでは内科的治療として無作為化比較試験が実施されました。

 審査報告書の25ページを御覧ください。米国臨床試験の結果、表10、図4にお示しするように、外科手術ハイリスク患者を対象としたCohortAでは、術1年後の生存率は試験群で75.8%、AVR群で73.2%と、AVR群に対して非劣性を示しました。安全性については図4の下から記載するとおり、脳卒中又は一過性脳虚血発作、重度血管合併症、動脈血管への介入が試験群で有意に高いことが示されました。

 審査報告書28ページを御覧ください。外科手術適応外群を対象としたCohortBでは、表13、図5にお示ししますように、術1年後の生存率は試験群で69.3%、内科的治療群で49.3%と、試験群は内科的治療群に対して優越性を示しました。安全性については、審査報告書29ページ、図6の下から記載するとおり、内科的治療群よりも試験群で発現率が高かった主な事象は、神経学的事象、出血、出血又は血管事象、胃腸合併症でした。

 次に、国内臨床試験の成績について御説明します。審査報告書19ページを御覧ください。国内臨床試験も、外科手術ハイリスクの症候性重度大動脈弁狭窄症の患者を対象として、経大腿アプローチと経心尖アプローチの2群に分けた非無作為化単群試験が実施されました。主要有効性評価項目は、手技施行後6か月における大動脈弁口面積及びNYHA心機能分類の改善とされましたが、報告書の20ページ中段に記載するとおり、主要評価項目に事前に設定された達成基準を満たすことはできませんでした。

 安全性については、22ページの中段以降を御覧ください。経大腿アプローチにおける術後6か月時点での死亡は、バルサルバ洞の破裂による心タンポナーデと心肺停止の2例でした。術後6か月以内に発現した本品及び手技との因果関係が否定できない有害事象は、次のページの表7にお示ししたとおりです。このうち、完全房室ブロックの2例と洞不全症候群の1例にはペースメーカーが埋め込まれました。一方、経心尖アプローチの術後6か月での死亡は5例で、心不全、敗血症、腎機能不全、急性腎不全によるものでした。本品及び手技との因果関係が否定できない有害事象は、表8にお示しするとおりです。このうち、心房細動、完全房室ブロックが発現した4例にペースメーカーが埋め込まれております。

 本品の審査における主な論点について御説明します。審査報告書の46ページ、総合評価の項を御覧ください。一つ目の論点として、本品を用いた治療の有効性と安全性について、米国臨床試験の結果からCohortBの対象患者である、ほかに有効な治療法がない重篤な患者において、試験群の生存率が内科的治療群に比べて大幅に改善していることから、内科的治療群に対する試験群の優越性は検証されており、本品はこれらの患者の予後を有意に改善できる有用な治療法となり得ると考えました。一方、CohortAの対象患者である外科手術ハイリスク群患者においては、1年時生存率で本品はAVRと比較して非劣性が示されているものの、脳卒中や血管合併症などの術後合併症の発現率が有意に高く、予後に影響を及ぼすと考えられている大動脈弁逆流や弁周囲逆流も高率で見られることから、長期成績の確立したAVRほどの有用性は提出された臨床試験成績からは示されていないと判断しました。

 二つ目の論点として、本品の国内医療環境への適合性について、本品を用いた治療の新規性は高く、手技的難易度も高いため、国内臨床試験の成績から国内医療環境への適合性の確認を行いました。その結果、本品の技術的成功の指標となるデバイス成功率や手技的成功率は、米国臨床試験成績と比べても大差なく、術後1年時の生存率やMACCE発生率も良好な成績を示していることから、国内臨床試験時と同様の術者及び施設トレーニングを行うことで、米国臨床試験成績に大きく劣ることなく、本品を用いた治療を国内に導入することは可能と判断しました。

 三つ目の論点として、国内における本品の有用性と臨床的位置付けについては、本品の国内における臨床的有用性と位置付けを確認するために、本品の対象患者が既存治療として受けている内科的治療成績との比較を試みましたが、本邦の症候性重度大動脈弁狭窄症患者に対する内科的治療成績に関する論文は一報のみであったため、国内の内科的治療成績に対する本品の有用性を明確にすることは困難と考えました。内科的治療との臨床的位置付けを明確にすることはできないものの、国内外の治療ガイドラインにおいて心不全症状などを有する症候性重度大動脈弁狭窄症患者の予後は不良であり、AVRが推奨されていることから、AVRを施行することができない患者に対する治療選択肢として本品の臨床的意義はあると判断しました。

 ただし、本品を用いた治療は周術期の死亡も含め、一定頻度で重篤な合併症を発生し、1年後の死亡率は2030%にも及ぶ上、対象患者も80歳以上の高齢者が多いことを踏まえると、本品の適応を判断する際には内科的治療の継続も踏まえ、関連する心臓外科医や循環器内科医を含む医療チームにより慎重に検討した上で、患者にとって最善の選択をすることが最も重要と考えました。したがいまして、本品の対象患者については使用目的、効能又は効果の欄において、外科手術を施行することができず、本品による治療が当該患者にとって最善であるとされた患者とする必要があると判断しました。また、本品の適応の可否については慎重に検討し、患者へも本品のリスクに関する情報を十分に提供した上で、同意を得る旨を添付文書で注意喚起することが妥当と考えました。また、本品を適応するリスクが高いと考えられる透析患者については、本品の臨床使用実績が乏しく、その有効性と安全性を確認することができなかったため、慢性透析患者については本品の使用目的、効能又は効果から除くことが妥当と判断しました。

 次の論点として、市販後の安全対策についてです。本品を用いた治療に伴う合併症は重篤であり、そのデリバリー及び留置に失敗した場合には緊急開胸手術による対応も必要となることから、外科手術ハイリスク症例に対してでも緊急時には迅速に、外科的及び内科的対応ができる体制が整った医療機関において使用されることが必要となると考え、承認条件1を付すことが妥当と判断しました。また、本品を適切に使用するためには、本品及び対象疾患に対する治療法について十分な医学的知識を有し、本品に関するトレーニングが適切に行われていることが重要と考えられることから、承認条件2を付すことが必要と判断しました。加えて、本品を国内へより安全に導入するためにはトレーニングとプロクタリングが重要であり、定期的に使用成績を確認しながら段階的に実施施設数を拡大するとした申請者の市販後導入計画についても妥当と判断しました。使用成績調査については、本品を用いた新しい治療が国内に安全に普及すること、及び本品の長期的成績を確認することを目的として調査・分析を行い、その成績に応じて注意喚起の追加やトレーニングプログラムなどの安全対策を見直す必要があることから、承認条件3を付すことが必要と判断しました。以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。

 本品は新構造医療機器であることから、再審査期間は4年と判断しております。また、本品にはウシ心のう膜が使用されているため、生物由来製品に該当すると考えます。なお、新見委員から添付資料概要等に関する記載整備の御指摘を頂いておりますので、今後適宜修正したいと考えております。機構からの報告は以上です。御審議のほどよろしくお願いします。

○笠貫部会長 参考人の落先生から、加えることがありましたらお願いします。何かありますか。

○落参考人 今の時点ではありません。

○笠貫部会長 本件について、委員の先生方から御意見、御質問を受けたいと思いますが、いかがでしょうか。サピエンXTについてはEUで単群、前向き、非無作為化多施設検証試験が終わっていますね。これについては、どこかでまとめたものはありますか。

○機構 EUの試験に関しては参考資料として提出されましたが、実際に評価された項目は30日の手技的成功及びデバイス成功のみが評価されておりますので、長期的成績を確認することができませんでしたので、参考資料として提出していただいて本品と前世代モデルサピエンの同等性を確認する参考資料として評価しました。

○笠貫部会長 30日でも周術期の死亡という重篤な合併症は非常に大きな問題なので、それはどこに載っていますか。

○機構 審査報告書には記載しておりませんが、添付資料概要と書かれた青いタグの1,022ページを御覧ください。これがPREVAIL EU、経大腿アプローチに関する試験成績になります。先生から御指摘頂いた死亡に関しては、1,029ページの中程の表に報告があります。30日で19症例、90.5%の生存率。遠隔期は30日以上と見られておりますが、それで81.2%という報告がされております。

○笠貫部会長 ほかにはありませんか。80歳の患者さんの非常に重篤な大動脈弁狭窄症に対して使う新しい機械で重篤な周術期の合併症と1年生存率が2030%という特異的なものだと思いますが、中谷先生どうぞ。

○中谷委員 今言われましたように、成績に関してどう考えるかかなり慎重に審査されていると思います。そのために施設基準や実施基準等を作って進めていくことは理解できます。そこで確認したいのですが、例えば、植込型補助人工心臓においては、関連学会協議会で施設基準や実施基準を作って、それを基に関連学会協議会で実施施設、実施医の認定をするということをしたのですが、本品に関しては同じような形で臨もうとしているのですか。植込型補助人工心臓では、認定された実施医がいる認定施設でないと、健康保険に基づく使用はできない形を取ったのですが、本品はどのような形で臨もうとされているのですか。

○機構 本品に関しては、TAVIの関連学会4学会において、これの基準を作られた学会が基本的には事前に施設要件を満たしているかを査察した上で、それと心臓外科医と循環器内科医、若しくは麻酔科医などの必要な臨床医がそろっているかを確認して、施設認定をした上で実施されると聞いております。

○中谷委員 もう一つお聞きします。45ページに第三者の判定委員会がありますが、この実態がよく分からなかったのですが、どういう形ですか。例えば関連学会で作るならそれで構わないと思いますが、どのようにするのかが明確ではありません。どのような形なのでしょうか。

○機構 これに関しては、企業が設定する実施基準の一つとなっていて、本品に関しては適応を判断する所がTAVIや本品の性質を分かっていないと難しいことから、基本的には海外でプロクターの免許、教育者としての免許を持っている心臓外科医と循環器内科医を複数集めた上で、そこで対象患者が本品の適応としてリスクが高すぎないか、若しくはリスクが低すぎないかということをチェックするような機能になっていると聞いております。

○中谷委員 システムは今言われたことで理解できました。現時点では日本でまだ症例数が少ないということで、特に導入のときに、免許を持っている海外の人にも入ってもらうことを想定しているのですか。

○機構 最初のころは、基本的にプロクターの免許を持っている方に搾られます。今プロクターの免許を持っている日本人は1人しかおりませんので、最初の導入時は海外の方が主なメンバーになるかと思います。

○中谷委員 今回示されているものでは、導入当初日本人のプロクターが少ないと想定されるのに、どのようにするのかよく分かりません。ある程度想定していることとか、当初は海外からのプロクターにより、日本人のプロクターを育ててやっていくとか、もう少し参考資料等でも道筋が書かれてあった方が、より疑問点が残りにくいと思います。当初から経験症例数の少ない日本だけでやるのではなく、積極的に欧米の経験者の意見もきちんと取り入れながら始めて、日本人のプロクターを育てていくというソフトランディングをさせるような形を取る構想であるなら、そのことも明らかにする方が良いと思います。

○機構 先生のおっしゃる点はそのとおりだと思いますので、その点が分かりやすくなるように参考資料等も整備した上で、追記する方向で考えたいと思います。

○笠貫部会長 先ほどの日本の症例で国内医療環境適応性は認められたといっても、まだ1人しかいないですね。日本の中で、これだけリスクの高い新規性の高い機器を健全に普及させることについて、具体的にどういうプランニングを学会としてお持ちになっているか。企業の話とは離れるかと思いますが、中谷先生の御質問は大事かと思います。いかがですか。

○落参考人 私も、心臓血管外科学会の理事として学会内でも討論されていることですので、分かる限りでお話申し上げますが、このTAVRの施設基準に関しては日本心臓血管外科学会、日本循環器科学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本胸部外科学会の4学会からそれぞれ代表者が出て、そこで経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会を構成して、今日いらっしゃっている木村先生もそのメンバーで、インターベンション治療学会の理事長でいらっしゃいますが、そこで年余にわたって検討されてまいりました。その結果はこういう小冊子になって、私たちにも報告書として配布されておりますが、この中ではどういう施設を最初に選ぶかの議論ももちろんありました。しかしながら、そこからフォローアップすることが非常に大事な点であることと、海外のランダマイズスタディの結果をどう捉えるかと、国内の治療成績の検討を詳細に行った結果だと思いますが、私たち心臓血管系の外科学会では、ほとんど100%データベース化されていて、JACVSDというデータベースに全て登録することと、その登録を最低3年ないし4年くらいの期間で全例登録して、そこでさらに有害事象があるかどうかも含めて検討するとなっております。

 現在、どうフォローアップするか、評価するかですが、確かに正式に認められたプロクターの先生は今はお一人ですが、実際には海外で研修を受けた先生、もうおやりになっている先生も含めて、複数の先生方と企業との連携によりまして、1例1例指導していくことから始めることになろうかと思います。

○笠貫部会長 内科とのハートチームといったコンセプトも出ましたが、木村委員、何か加えることはありますか。

○木村委員 4学会、協議会のお話に関して、少し補足させていただきます。4学会で協議して、施設基準を決めております。それで、実際にTAVRの開始前に査察を行って、施設基準を満たすかどうかを評価して認定するという手続を踏むと。企業は、その認定された施設の中で治療を開始する。実際には、商品を導入する流れになっております。治療成績の評価ですが、PMDAから要求されるPMSとは別個に、落先生がおっしゃったように全症例、これは循環器内科に入院される患者も心臓血管外科に入院される患者も全てJACVSDに登録して、長期成績までフォローする絵になっております。

○笠貫部会長 中谷先生よろしいですか。木村委員どうぞ。

○木村委員 3ページの使用目的に、「ただし、慢性透析患者は除く」とあります。心血管系の医療器具の中で透析患者さんに使用した場合には、有効性・安全性が劣るというのは、ほとんど全ての医療機器がそうだと思いますが、使用目的の中に透析患者さんであるからといって除外することは極めて異例だと思います。透析患者さんの中で手術のできないような大動脈弁狭窄症患者さんはかなり多いので、これを透析患者さんの入口で撥ねてしまうと、その治療の権利を奪ってしまうことになります。現場は患者さんとのやり取りで混乱することが予想されますから、添付文書の作成に当たっては、そのあたりを考慮していただければありがたいかと思っております。

○笠貫部会長 学会では透析の患者さんを除くということは、協議会では合意事項ですか。

○落参考人 これは全く木村先生のおっしゃったとおりであると思います。私たち心臓外科医の立場から申し上げると、長期透析をしている患者の大動脈弁狭窄というのは多くて、実際問題としてそれによって透析が維持できないケースがかなりあります。しかしながら、それでは大動脈弁置換術をやってほしいと言われても、今度は上行大動脈自体が強く石灰化して、ハサミもメスも歯が立たないケースがあります。こういう方にどのような治療をするかで大変外科医も頭を悩ませているのが現状ですので、このTAVRが実際応用できるようになった暁には、そのベネフィットというのは透析患者には大きいのではないかと思います。全身状態の決して良好でない患者も透析患者には多いので、木村先生がおっしゃるように入口で透析患者は除外するということで、それは私たちにとってみても、もったいないと感じます。

○機構 事務局よりお答えします。審査報告書の41ページを御覧ください。木村委員がおっしゃることは重要な御指摘だと思いまして、私どもも専門協議、この点を議論させていただきました。なぜ使用目的に書いたかに関して、まず透析患者に本品を適応した場合に、その有効性について長期成績も含めてほとんど情報がない状況で、果たして非透析患者と同じような生存率が得られるのかとか、そういった所が不明である点と、もう一つ大きな点は安全性の面で、石灰化が強い患者に対して本品のような前拡張をして用いる本品、例えば周術期の合併症果たして本当に許容できるのかという点についてデータが全くない状況で、透析患者が多い日本でのリスクとベネフィットのバランスの評価が困難だったという事情があります。先生がおっしゃるように、非常に困っておられる患者はいらっしゃると思いますが、今回は慢性透析患者においては別途きちんと評価が必要ということで、使用目的からは外させていただきました。

○笠貫部会長 今の問題はお二人の臨床の先生から御指摘があったように、欧米では透析患者は除いていますか。

○機構 欧米でも、透析患者には使われていません。あと、臨床試験も全て透析患者は除外されておりまして、こちらとしてもレジストリーも含めて透析患者に使った症例を申請者に照会して調べたのですが、10数例しかないという事実と、実際に今まで透析患者に対しては代謝系が異常ということで、機械弁が用いられてきたという現実を踏まえて、現時点では評価する資料がなかったので、今回については使用目的から除外することにしました。当初、申請者からは原則禁忌にするというお話を頂いたのですが、原則禁忌にするほどの安全性に危険だという明確なエビデンスもありませんでしたので、今回はこのような対処をさせていただきました。

○笠貫部会長 そういう状況ですと、基本的には分かるように書いておくというのもやむを得ないことかと思います。この重篤な薬物療法あるいは機械弁を含めて治療法が非常に難しい方に、慎重に適応と高度な技術と、全症例登録してその安全性を確認する意味では大事な機器だと思います。先ほどのお話では4学会の協議会での十分な適応だけではなくて、施設の監査の話も出たと思いますが、そういうことと内科医を含めたハートチームでこれを管理する。全症例を学会でデータベースとして登録して、その危険性、安全性・有効性について評価をするというお話だったと思います。そういう意味では、インフォームドコンセントが大事なお話になると思いますが、この機器について特にほかに御質問はありませんか。

○石井委員 本品の品目仕様について教えていただきたいことがあります。留置後に適切に機能するために、物理的要求事項が満たされていることが必要だと思いますが、申請書別紙4の1で流体力学的試験及び加速耐久性の判定基準が、本品は既存品と同等以上であることとなっています。この際の既存品の選定の基準や、実際にはどういう既存品が選ばれているのかを教えていただけますか。

○機構 事務局よりお答えいたします。既存品に関しては、今まで複数のサージカルのAVRに使用されているエドワーズ社のウシ心のう膜弁が使用されております。それの臨床実績から、20年間の臨床実績を踏まえたときに、これらの流体力学試験で本品が少なくとも明らかに劣るような成績を示していないことをもって、このような規格とさせていただいております。

○笠貫部会長 よろしいですか。議決に入ります。このサピエンXTについては、本部会として審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は4年間とし、高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への指定は不要として、また生物由来製品に指定し、特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいですか。

 御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告することにします。議題3が終了しましたので、参考人の落先生におかれましては御退室いただいても結構です。どうもありがとうございました。

── 落参考人退室 ──

○笠貫部会長 審議事項議題4「医療機器『磁気刺激装置TMU-1100』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、審議を行います。本議題の審議に当たりまして、参考人として社会福祉法人三井記念病院婦人科医長の中田真木先生に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。まず審議品目の概要について、事務局から御説明をお願いします。

○事務局 資料4「医療機器『磁気刺激装置TMU-1100』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」です。1枚目が諮問書です。灰色のタグをおめくりいただくと、「高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について」という用紙がございます。こちらの品目に関しましては、尿失禁治療用磁気刺激装置として一般的名称を新設し、管理医療機器(クラス2)及び特定保守管理医療機器として、指定することを考えています。

 具体的な概要については、緑の審査報告書のタグをおめくりいただきまして、3ページです。販売名は、「磁気刺激装置TMU-1100」、申請者は日本光電工業株式会社です。本品は、海外類似品目がニーズ医療機器として選定されていましたが、こちらの類似機器の本邦での開発が中止されたため、本品に関して早期承認に関する要望書が、日本泌尿器科学会より提出されています。

 品目の概要は4ページです。外観図が示されています。椅子の座面に磁気刺激用のコイルが内蔵されております。使用目的は3ページに記載がありますが、詳細については機構より御説明させていただきます。

○機構 審議議題4、資料4「医療機器『磁気刺激装置TMU-1100』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。

 当日配布資料1の2ページ目を御覧ください。本審査に当たりましては、専門委員の一覧に記載しております2名の専門委員の先生の御意見を頂いております。

 本品目の概要について説明いたします。審査報告書の4ページを御覧ください。本品は、尿失禁を伴う過活動膀胱の寛解や治癒を目的として、主に骨盤底領域の神経刺激を行う磁気刺激装置です。図1に示すような、椅子の形をした刺激ユニットの座面上部に、磁気エネルギーが出力され、その変動磁場によって、刺激ユニットに腰掛けた患者の生体内に渦電流が発生し、骨盤底領域の神経が刺激されます。

 審査報告書5~6ページで、本品の開発の経緯について説明いたします。過活動膀胱とは、尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、疫学調査によると、40歳以上の日本人において過活動膀胱の患者は約810万人、そのうち週1回以上の切迫性尿失禁を伴うものが約420万人と推定されています。過活動膀胱の治療としては、行動療法、理学療法、薬物療法などの、保存療法の組合せでの治療が試みられております。中でも、薬物療法は標準的な治療とされておりますが、効果が十分でない症例や、副作用や禁忌等により薬物療法ができない患者が存在しています。

 これらの患者に対する2次治療として、海外では電気刺激療法や磁気刺激療法などのニューロモデュレーション治療が行われております。本邦では、1973年に電気刺激装置が承認されましたが、刺激痛や火傷を伴う場合もある等、実用的にも問題がありまして、現在では販売されておりません。

 その後、1994年には、干渉低周波療法装置が承認されております。本品は、本邦では初めての磁気刺激療法を行う装置として開発をされました。磁気刺激療法は電極不要で、衣服の上から刺激可能なことなどが、電気刺激療法に対する利点として挙げられます。

 審査報告書7ページの外国における使用状況についてです。本品は、海外における承認、販売、使用実績はありません。「Neo Control」という、類似の尿失禁治療用磁気刺激装置が、1998年に米国にて510(k)1999年にCEマークを取得し、海外にて販売されています。

 審査の概要について説明いたします。非臨床試験については、審査報告書の7ページから12ページに記載しております。電気的安全性、電磁両立性試験、性能を裏付ける試験等が提出されました。非臨床試験における主な論点としては、本品から発生する磁場による生体等への影響について、審査を行いました。金属類の発熱やペースメーカー等への影響に関する試験結果を踏まえ、金属インプラントやペースメーカー等を有する患者の禁忌の範囲や、患者の身に付ける金属類、周辺の磁気記録媒体や電子機器に関する注意喚起がなされており、機構はこれらの注意喚起を妥当と判断しました。また、動物実験では、特段の問題は見られていないものの、妊娠中の刺激に関する安全性は不明であること、ヒトの性機能や妊娠能への影響は不明であることを踏まえ、妊婦又は妊娠している可能性のある患者は禁忌にするとともに、将来的に妊娠を希望する患者に対しては、本品の安全性は確認されていない旨を注意喚起し、慎重適用とすることが妥当と考えました。

 次に、臨床試験について説明いたします。審査報告書12ページからを御覧ください。国内13施設で実施された、多施設共同無作為化比較試験の結果が提出されました。尿失禁治療薬が奏効しない、あるいは副作用禁忌等により尿失禁薬が使用できない成人女性の過活動膀胱患者を対象に、Active刺激を行う被験機器群と、Sham刺激を行う対照機器群による比較を行いました。Sham刺激は、最大刺激量がActive刺激の約20%、繰り返し周波数が10分の1など刺激感を感じる程度の、より小さな刺激量が設定されております。治療は1回25分、週2回で、合計12回、6週間行われました。有効性の主要評価項目は、排尿日誌による尿失禁回数とし、治療前後での1週間当たりの平均尿失禁回数の変化量を算出し、被験機器群間差の有無を検討しました。

 副次評価項目としては、1日当たりの平均排尿回数、1回平均排尿量、1回最大排尿量、1日当たりの平均尿意切迫感、過活動膀胱症状スコア、QOLスコア、患者印象による効果判定が評価されました。安全性については、有害事象の発生状況が収集されました。本試験には151例が登録され、被験機器群101例、対照機器群50例に無作為に割り付けられました。

 試験結果について説明いたします。審査報告書15ページの表3に、主要評価項目の結果をお示ししています。被験機器群は、対照機器群に比べ、有意に1週間当たりの平均尿失禁回数が減少しました。副次評価項目については、審査報告書15ページの表4に結果をお示ししておりますが、尿意切迫感やQOLスコアの変化において、有意に改善が見られております。

 安全性の評価については、登録された151例中、91例に何らかの有害事象が発現し、重篤な有害事象は被験機器群に2例発現しましたが、被験機器との因果関係は否定されております。また、本品との因果関係が否定できないと判断された有害事象は、被験機器群16(15.8)、対照機器群3例(6%)に発現しましたが、被験機器群と対照機器群の比較で有意差は認められませんでした。審査報告書の16ページの表5に内訳を示しています。主な事象は、下痢、便秘、筋肉痛、傾眠で、いずれも重篤なものではなく、一時的であり、回復しております。以上の臨床試験成績を踏まえ、本品の審査における主な論点について説明いたします。

 審査報告書23ページからの総合評価を御覧ください。一つ目の論点は、本品の臨床的位置付け及び対象患者についてです。臨床的位置付けについては、臨床試験結果も踏まえ、尿失禁治療薬が奏効しない、あるいは尿失禁治療薬が使用できない患者を対象とした2次治療とすることは妥当と判断しております。

 対象患者については、尿失禁を伴う過活動膀胱は女性に多い傾向があること、海外での類似医療機器の使用状況から、成人女性患者を対象として臨床試験が実施されていること、男性に対する臨床上の有効性、安全性は確認されていないことから、現時点では成人女性を対象とすることは妥当と考えました。

 また、対象患者の診断に当たっては、類似の症状を示す場合がある他の疾患を除外する必要がありますので、十分な問診や専門的検査を行った上で、これらの疾患を除外するよう、注意喚起することが妥当と判断いたしました。

 二つ目の論点は、有効性評価結果についてです。主要評価項目である1週間当たりの平均尿失禁回数の変化量について、被験機器群で有意な改善が認められたことに加えて患者個々の改善の程度が大きい傾向が示されました。また、副次評価項目である尿意切迫感やQOLスコアの改善が示されたことも踏まえると、尿失禁治療薬が奏効しない、あるいは尿失禁治療薬が使用できない患者に対して、一定の割合で症状を改善できる本品を治療の選択肢の一つとして医療現場に導入することは意義があるものと判断いたしました。

 なお、対照機器群において、被験機器群より程度は少ないものの一定の効果が認められていることについては、プラセボ効果なのかSham刺激による効果なのかは不明ですが、本品の有用性を否定するものではないと判断しております。

 三つ目の論点は、安全性についてです。本品との因果関係が否定できないと考えられる有害事象について重篤なものはなく、かつ一時的な事象であり、回復していることから、本品のリスクは、臨床上許容できる範囲であると判断いたしました。

 四つ目の論点は、治療効果の持続性及び長期的な使用についてです。治療効果の持続性については、臨床試験における刺激終了後の追跡調査期6週までの結果や、類似医療機器に関する報告を踏まえ、本品の治療効果は永続的なものではないと考えております。治療効果が薄れた場合の本品での再治療の可否については、長期的に磁気刺激を行うことについて、現時点で重大な問題は報告されておらず、再治療を否定するものではないと判断いたしました。

 ただし、長期使用の有効性、安全性は確認されていない旨、治験と同じ12回刺激を推奨方法とし、その後は一旦中断して、様子を見ながら再治療を行う旨、効果が見られない場合には漫然と継続使用しない旨を添付文書にて注意喚起するとともに、市販後の使用成績調査において、実臨床における使用実態及びその場合の有効性、安全性について調査することが必要であると判断いたしました。

 以上の審査を踏まえ、機構は、審査報告書24ページの使用目的で本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は3年と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えております。

 最後に、事前に高橋委員から御質問を頂いておりますので、紹介させていただきます。「適応対象患者について、脳出血や脳梗塞による神経障害により後遺症として尿失禁を伴う過活動膀胱が考えられると思いますが、これらの人々は適応対象に含まれると考えていいのでしょうか。また、機器使用による効果は健常者と比較して、どうなのでしょうか」との御質問です。

 こちらについて、御指摘のありました脳出血や脳梗塞による神経障害により、後遺症として尿失禁を伴う過活動膀胱というのも、適応対象に含まれております。本品の作用機序は、陰部神経刺激による骨盤神経及び下腹神経を介した膀胱収縮抑制であり、脳を介さない神経回路への作用と考えられているため、脳出血や脳梗塞の患者に対しても効果が期待できると考えられます。

 実際、国内臨床試験においては、脳出血の患者はおりませんでしたが、被験機器群に小脳梗塞の患者が1例含まれておりました。1例のみですので、健常者との効果の比較は一概にはいえませんが、この小脳梗塞の患者の1例については、1週間当たりの尿失禁回数が、治療前には30回であったのが、治療後、また追跡調査3週、6週時には、全て0回となっており、改善効果が見られております。また、本品との因果関係が否定できない有害事象は発現しておりませんでした。機構からは以上です。よろしくお願いいたします。

○笠貫部会長 参考人の中田先生から、何かございますか。

○中田参考人 補足させていただきます。まず、過活動膀胱は症状症候群であるという説明がありましたが、泌尿器科側から出てきた実用上の概念で、明らかな病気が見つかっておらずに、尿意切迫ないしは、プラス頻尿や尿失禁を伴うものという考え方です。したがいまして、脳卒中後の下部尿路障害とか、私ども婦人科サイドでは、子宮筋腫に伴う下部尿路障害などは、本来は過活動膀胱に含めないという考えがございます。ただし、泌尿器科の中から出てきた実用的な概念ということで、それらの病気の中で、診断されずに泌尿器診療の現場に出てくるものは、結局過活動膀胱として扱われてしまう所から、そこの所の定義が少し曖昧になっているというがあるという実情があります。

 この本品についての現場のニーズとしては、まず、過活動膀胱の治療薬があることで、最近はかなり働けるようになってきているわけですが、それが効かない方が、2割、3割はいらっしゃる場合の治療のmodalityが、現場では求められています。

 そうしたニーズがあるのですが、今まで海外で使われてきた磁気刺激装置は、電気刺激装置の続きで、骨盤底筋を刺激する、どちらかというと腹圧性尿失禁を治療するタイプのものです。腹圧性尿失禁の治療は、第1が予防防止、周産期の予防防止等です。産婦人科診療場面での予防防止策です。それから、理学療法としての骨盤底トレーニングです。それが不十分な場合には、外科治療に進むという陣構えを取っています。一方、本品は過活動膀胱に対する治療に特化したものになっています。

 過活動膀胱に関しては、神経を刺激する装置ということになりますので、原理的には、もう少し脊髄に近い所で刺激した方が効率がよいわけなのですが、臨床上は、患者のロケーション、刺激の場所を確認して、問題なく刺激するということですと、座らせて骨盤底の方角から刺激するというのが、安全性管理上の簡便性、確実性といった面から、非常に有利なので、背中側ではなく、下側から刺激するという製品のスペックとなったものと思われます。

○笠貫部会長 委員の先生方から、御質問、御意見はございますか。

○武谷委員 17ページですが、この治療を受けた人とSham Controlとの間で、改善率等は不変、差があると言えばあるけれども、はっきりした差がない。20ページの投与終了後のフォローアップで、被験群の86%が改善して、Shamでも83%は改善です。これも差が全くないです。これだけShamが有効ということは、過活動膀胱の病態の本体というのは、一体何なのか。その辺に疑念を持たざるを得ないのです。Shamとの差がこれほどmarginalだとしたら、この機械が効果の治療機序としてうたっている、副交感神経の抑制と交感神経の興奮というのは、misleadingではないかという気がいたします。

 さらに、使用目的です。過活動膀胱の寛解までは譲歩してもいいけれども、治癒となると、たかだかこのぐらいのフォローアップ期間で治癒を目的とするというのは、過剰な表現かという気がします。その辺について、御回答を頂ければと思います。

○機構 最初の御質問のSham効果との差については、確かに専門協議の際にも、審査側でも論点としてきた所もあります。まず、Sham刺激をどのレベルで設定するのかという所で、非常に難しい部分があります。効果がないと分かる刺激というのが、なかなか判定しづらく、今回はプラセボの刺激を患者が刺激を感じる程度のより小さな刺激という所に設定しており、多少効果が出てしまった可能性があるとこちらで認識しております。

 さらに、治験の結果を見ますと、全体的には確かに差がわずかな部分もあるのですが、個別の事例を見ますと、被験機器群では30回が0回になっている患者も見られていますし、対照機器群では悪化の事例が何件か見られているのに対し、被験機器群では見られていないという所もありましたので、そうした部分について、一定の効果は示せていると考えているところです。

○武谷委員 個別の症例で議論するつもりはないのですが、余りにもspeculativeな話であって、Shamで本当に刺激がないのだったら、もう少し刺激の程度との関連性があるとか、多少なりともそういうデータがあればいいので、Shamでも弱い電流を流しているから効いたというと、本当に副交感神経、交感神経を謳い文句のとおりに、活動性に対して影響を与えているかどうかも疑わしいかと思います。やや触込みが過剰だという気がします。科学的に保証する基礎データということには、今の説明では納得がいかないような気がいたします。

○機構 分かりました。作用機序の記載の方法については、申請者から詳細をお聞きした上で、確実な情報を基に、適切に検討させていただきたいと思います。

○笠貫部会長 それと、今の寛解、治癒をどうするかも、併せて御検討いただくということで。

○機構 寛解、治癒の所についても、検討させていただきます。

○笠貫部会長 基準がないということで、クラス2になっていると思いますが、過大評価をすると、そういう意味で記載より広く使われすぎてしまうということもありますので、十分に御検討をし直していただきたいと思います。

 それから、これはもともとニーズの高い医療機器が早期導入から出たということでしたが、先ほどの中田先生からのお話では、アメリカのNeo Controlとは少し違う所があるのですね。そこの辺の所も、分かりやすく書いて、審査報告書の中に含んでいただかないと、ニーズの高いNeo Controlが日本で作られて、それを早期承認したという誤解を生じてしまうので、そこも気を付けていただきたいと思います。そのほかにはございますか。

○鈴木委員 座っているだけで病気が治るみたいな感じなので、本当にそれでいいのかという気もするのです。外国でも使われているということですが、例えば社会保険制度の国で保険適用になっているとか、公営医療の国で承認されているとか、そういう状況はどうなのでしょうか。どのぐらい使われているのか、保険診療として使われているのか、そういう実態も教えていただけますでしょうか。

○機構 海外の保険適用の状況までは情報を把握しておりませんので、この場でお答えできません。

 先ほど申しましたように、Neo Control自体は米国ではある程度使われているということなのですが、申請者とは別の他社品の情報なので、実際の販売台数などの情報は得ておりません。情報不足で申し訳ありません。

○中田参考人 Neo Controlは腹圧性尿失禁の治療機器として、米国ではFDAの認可も取れており、保険のカバーはなされていると思いますが、何回まで使われているかについて、小職は存じておりません。

 過活動膀胱治療に関しては、磁気刺激治療が形になっているのは、これしかないと思いますので、海外での実例はないと思われます。

 先ほど、「座っていれば治るというような話で」という御指摘を受けたのですが、どちらかというと、それはやや意地悪な表現です。診療所があって、小さな病院なり、泌尿器科の診療所なり、患者が出向いて来て、週に1回か2回、そこに座ってセッションを受ける。そして、そのリハビリを済ませて家に帰っていくことを6週間~12週間続けることで、改善を味わうという形の医療になります。場合によっては、そこに来ることなどが難しいかもしれません。

 過活動膀胱には、ほかのいろいろなやり方がありまして、介護を必要とする尿失禁との狭間でいろいろなmodalityがあります。例えば排尿誘導と書いてあるのは簡単なのですが、周りに人がいて誘導しないといけないので、大変なのです。そういう方を、外出させて、治療所へ来させて、座らせて、こういうセッションをするというのは、治療の形としては、いろいろな説明をしたり、交流も得られますし、activityとしては健全なものだと思うのです。

 問題は、どうしても尿失禁の治療というのはプラセボ効果が大きく出るため、有効性の所が捕まえにくいです。やっている間はいろいろなFringe Benefitがあるので本人は得るものが多数あるのですが、リハビリの常として、それをいつまで、どこまで公費で面倒を見られるかという問題があります。

○鈴木委員 先々保険適用の話も出てくると思うので、更にデータを出していただければと思います。

 診療所や病院などで治療をしないで、家で椅子に座っていればよくなるというようなデータはあるのですか。座っているだけなら、別に家でもいいような気がするのですが、そういうデータはあるのでしょうか。

○中田参考人 Neo Controlの場合は買ってしまった人もあるのですが、非常に大きな音を発生する装置で、集合住宅などでは全く使えないということです。

○笠貫部会長 このケースは科学的な根拠はどこにあるのかという非常に根本的な問題があります。先ほどのSham刺激との違いをどう評価するかです。

 それから、先ほどの中田先生の御指摘ですが、Neo Controlと今回のものとは違う所があるということでした。ニーズの高いNeo Controlを日本に早く入れたいという検討会からの要望があって、それが日本には輸入されないので、日本で開発されたというイメージがあるのですが、そこが違うとなると、根本的な所を御検討いただかないといけないかという感じもするのですが、そこは大丈夫なのですね。

○機構 Neo Controlと全く同じ装置かというと、先ほど先生がおっしゃったように、周波数の部分で、Neo Controlは1~50Hzという幅広い範囲での周波数を想定していまして、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁の両方をカバーする形で開発されています。それに対して今回の装置は、10Hzで、神経に対する刺激を狙ってというものです。こちらとしては、Neo Controlの性能の一部を特化した製品ということで認識しております。

○笠貫部会長 そうすると、効果はどうなのでしょうかというお話がありましたが、中田先生、専門家から見ていかがですか。

○中田参考人 過活動膀胱の尿意切迫等に対する刺激、電気刺激が最初にあるわけですが、それ自体は確立されているものですので、それに学問的根拠がないわけではないです。

 もし本品に問題点があるとしたら、その磁気刺激を座面から行うタイプの運用が可能かということです。電気刺激で、膣内から膀胱、陰部神経の根本に近付いていって、刺激して効果が出るということは、学問的根拠ははっきりしています。それに相応する刺激を磁気刺激として行う、後ろ側から腰の所に当てて刺激することも可能である。ここまでは間違いないです。

 ただ、その形では、一般の診療施設で、安全で安定した形で、同じ箇所を刺激することはできないと思われるので、臨床機器として販売するには、こういう形しかないかもしれないという所があります。

 私ども専門医が気にしたことは、腹圧性尿失禁は、どちらかというと出産に絡んで起きてくる、40代、50代で問題になることが多いです。それが社会的にも生産力を下げるし、本人も活動力が下がってしまう。これを治療するための軸は別の所にあって、磁気刺激や電気刺激にはないので、先ほども言いましたように、予防防止策と、骨盤底トレーニング、手術となります。それが、いくら楽である、簡単であるからといって、こちらの方向に流れることはどうかと思いましたので、腹圧性尿失禁に関する用途に関しては、余り支持できなかったという部分はありますし、実際にそれに関してもデータは出されていないという関係にあります。

○笠貫部会長 武谷委員の先ほどの御指摘の17ページと20ページについて、科学的に根拠として、この機器が有効かということ、あるいはどこまでの表現が可能かということを十分に御検討いただいて、また武谷委員にも御相談させていただいて、鈴木委員にもお答えができるような形で、検討をしていただけたらと思います。大変な条件が付きましたが、よろしければ議決に入ります。

 医療機器「磁気刺激装置TMU-1100」については、本部会として承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は3年間とし、管理医療機器及び特定保守管理医療機器として指定し、また生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということで、よろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会に報告させていただきます。議題4が終了いたしましたので、参考人の中田先生には御退室いただいても結構でございます。ありがとうございました。

── 中田参考人退室 ──

○笠貫部会長 審議事項議題5「医療機器『エンボスフィア』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、審議を行います。荒井委員は、議題5、議題6の間は別室にて御待機いただくことといたします。

── 荒井委員退室 ──

○笠貫部会長 本議題の審議に当たりまして、参考人として信州大学医学部形成再建外科講座の准教授である杠俊介先生においでいただいています。よろしくお願いします。まず、審議品目の概要について、事務局より説明をお願いします。

○事務局 資料5「医療機器『エンボスフィア』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」です。1枚目が諮問書です。具体的な品目の概要については、審査結果報告書の1ページです。一般的名称は「中心循環系血管内塞栓促進用補綴材」、販売名は「エンボスフィア」です。こちらの申請者は日本化薬株式会社です。

 品目の概要は審査報告書の4ページです。本品は、アクリル系共重合体にブタ由来ゼラチンを含浸及びコーティングした血管内塞栓材で、親水性、非吸収性などを有した球状の粒子です。生理食塩水中に、分散された状態で注射筒に充填されており、図1、図2のような外観図になっています。塞栓される血管径に適した大きさの製品を選択し、カテーテルを経由して血管内の目的の位置に注入するといったものです。

 使用目的、効能・効果については、3ページです。多血性腫瘍又は動静脈奇形を有する患者に対する、動脈塞栓療法となっています。承認条件については、下に記載があるとおり、それぞれ必要な措置を講ずることとなっています。詳細については、機構より御説明いたします。

○機構 審議事項議題5、資料5「医療機器『エンボスフィア』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。

 まず、当日資料1の本品の専門委員一覧です。本審査では、御覧の4名の専門委員の御意見を頂きました。また、当日配布資料2の本品の正誤表を御覧ください。こちらを追記訂正させていただいています。

 本品の概要について、審査報告書4ページを御覧ください。図1に示しますように、本品は多血性腫瘍又は動静脈奇形を有する患者に対して、動脈塞栓療法を行う際に用いる、非吸収性の血管塞栓用のビーズです。塞栓させる血管径に合わせて、本品の粒子径を選択できるように、図2に示すように五つのサイズがあります。凝集しにくい特徴を有しているため、カテーテル内での目詰まりを低減し、深部まで到達させることができるとされています。動脈塞栓療法は、動脈内に塞栓物質を詰めることで、血流を止める又は弱める治療法です。多血性腫瘍は、発達した動脈血管を介して栄養を供給されているため、血管を塞栓し動脈血を遮断することにより、腫瘍が壊死、縮小することが知られております。

 国内既承認の血管内塞栓材としては、肝細胞癌についてはジェルパート、ディーシービーズ、転移性肝癌に対してはスフェレックスがあるものの、その他の多血性腫瘍に対しては、既承認の血管内塞栓材が存在しないのが現状です。

 動静脈奇形(以降AVM)は、網細血管を経ずに、ナイダスを介して動脈から静脈に血流が短絡する血管奇形の一つです。この短絡により、血液循環動態に異常を来すため、機能障害や発育障害等が惹起されるとされています。

 AVMに対する基本的治療法は外科的切除ですが、存在部位の機能や外見を温存するために、完全切除が難しい場合が多く、再発も高頻度に認められるとされています。AVMに対しては、金属コイル等による血流遮断が行われておりますが、粒子径が選択できる本品のような血管塞栓材も有用であると考えられています。このような国内状況から、本品は医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において、早期導入すべき医療機器に指定されております。

 審査報告書の6ページです。外国における使用状況については、欧州では1997年に、「子宮筋腫・髄膜腫を含む多血性腫瘍、AVM及び止血」を適応として、CEマークを取得しています。米国では2000年に、AVM及び多血性腫瘍、2002年に症候性子宮筋腫を適応として510(k)認可を受けています。本年4月現在で、本品は米国及びEUを含む70か国で市販されており、総販売数は□□□本を超えています。本品の非臨床試験については、審査報告書の6ページ~16ページにお示しする資料が提出され、特段の問題は認められませんでした。

 続いて、本申請に添付された臨床試験成績についてです。本品の臨床評価資料として、多血性腫瘍とAVMを対象とした国内臨床試験成績と、子宮筋腫を対象とした米国臨床試験成績が提出されました。まず、国内臨床試験について御説明いたします。

 審査報告書の24ページです。国内臨床試験は、多血性腫瘍又はAVMの患者のうち、動脈塞栓療法の適応となる患者を対象として本品の有効性と安全性を検討することを目的に、多施設共同オープン試験が実施されました。審査報告書の25ページ、表11にお示ししますように、25例に本品が注入され、症例の内訳は表11のとおりでした。

 審査報告書の27ページ、上から6行目からです。主要評価項目である技術的成功は、症例ごとでは96.0%、対象血管ごとでも98.2%でした。不成功と判定された1症例は、標的血管の腫瘍濃染の消失が80%程度であったため、不成功と判定されました。

 副次評価項目であった標的結節治療効果度による評価では、術後29日目で、多血性腫瘍の46.7%の病変に50%以上の腫瘍壊死効果が認められました。

 安全性については、25例中23例に、合計92件の有害事象が発生し、そのうち機器との因果関係が否定できない事象は18例、53件でした。2例以上で発現した自他覚症状に関する有害事象と不具合を、次のページの表14にお示ししました。

 本臨床試験では、2件の重篤な有害事象が認められましたが、本品との因果関係は否定されており、フォローアップ期間中の1例の死亡例も、原疾患の進行によるものでした。

 審査報告書の18ページからを御覧ください。本品を用いた子宮動脈塞栓術の有効性と安全性を評価することを目的に実施された米国試験について、御説明いたします。本試験は子宮筋腫に対する根治術である子宮摘出術を対照群とした多施設共同非無作為化比較対象試験です。主要評価項目は月経出血、子宮筋腫関連の症状、QOLとされました。

 審査報告書の21ページ、表7にお示ししますように、術後6か月時点での月経出血の50%以上の低下が認められた患者の割合は、68.9%でした。症状についても、中等度以上の改善が認められた患者の割合は表8のとおりで、子宮摘出術と同程度でした。

 安全性については、報告書の22ページの中段です。重篤な有害事象は、本品で1例(0.8%)、子宮摘出術で3例(6%)認められました。表9、表10にお示しするような、本品又は子宮摘出術に関連する有害事象が発現しております。このうち追加治療を必要とした有害事象は、本品群で3.8%、子宮摘出群で12.0%でした。

 本品の審査における論点について御説明します。審査報告書の45ページ、総合評価の欄です。まず、一つ目の論点、対象疾患における本品の有用性についてです。子宮筋腫を除く多血性腫瘍における本品の有効性については、症例数は限られているものの、国内臨床試験において、本品の技術的成功率は95%にも及ぶこと、術後29日時点で46.7%の病変に50%以上の腫瘍壊死効果が認められていること、動脈塞栓術との有効性に関する海外文献報告等もあることを踏まえ、多血性腫瘍に対して本品の有効性は認められると判断いたしました。

 また、安全性については、本品特有と考えられる有害事象は発現しておらず、既存の動脈塞栓術と比べても、有害事象が著しく多く発生している傾向も認められないことから、本品を用いた塞栓療法のリスクは許容範囲内であると判断いたしました。以上から、子宮筋腫を除く多血性腫瘍に対して、本品の有用性はあると判断いたしました。

 次に、本品のAVMにおける有用性については、国内臨床試験でAVMに本品を使用した症例は2例のみで、全例塞栓に成功しているものの、動脈と静脈がナイダスを介して短絡しているAVMには、本品が静脈に流入することによる遠位塞栓リスクがあると考えます。この遠位塞栓リスクに関しては、術前に動静脈の短絡のリスクについて十分に評価すること、本品がナイダスを通過する恐れのない症例を選択すること、心臓又は肺に動静脈短絡を有する心奇形の患者は除外すること、そして、術中に大流量の動静脈短絡が認められた場合には治療を中止すること、これらを厳守することにより、遠位塞栓リスクは低減化できると考えました。

 AVMは重篤で難治性の疾患であり、手術単独での摘出が困難な患者に本品が用いられていることを踏まえ、本品の治療上のベネフィットは安全性上のリスクを上回ると判断いたしました。

 子宮筋腫における本品の有用性については、米国臨床試験に設定された成功基準は達成されていないものの、子宮摘出術と同程度の症状の緩和効果が認められており、重篤な有害事象も1件(0.8%)と、子宮摘出術と比べても低いことから、子宮動脈塞栓術に使用できる既承認品がない本邦において、本品の有用性はあると判断いたしました。

 ただし、塞栓術が認容性に及ぼす影響については不明な点が多いことから、妊娠を希望する患者に対しては、他の治療を推奨する旨を添付文書にて注意喚起することといたしました。

 続いて、二つ目の論点、本品のリスク低減化措置についてです。本品を用いた動脈塞栓療法を安全に実施するためには、対象疾患の病態や解剖学特性を踏まえた動脈塞栓術と、他の既存治療法を十分に理解し、習熟していることが必要と考えられるため、承認条件1を付すことが妥当と判断いたしました。加えて、本品をAVMや子宮筋腫に用いる場合には、適応を判断する医師と、手技を行う医師の専門領域が異なることが想定されることから、本品を用いた治療には、対象疾患の病態や治療に精通する医師と、動脈塞栓術の経験が豊富な医師を含む医療チームの連携が重要であり、学会の協力の下に適正使用を遵守する必要があることから、承認条件2を付すことが妥当と判断いたしました。

 以上の論点を踏まえ、本品を審査報告書46ページの使用目的で承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は3年と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えます。

 最後に、新見委員より添付資料概要に関する記載整備の御指摘を頂いておりましたので、今後適宜修正させていただきたいと考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○笠貫部会長 参考人の杠先生から、何かございますか。

○杠参考人 信州大学形成外科の杠と申します。AVMという聞き慣れない疾患が出てきましたので、それについて補足させていただきます。私自身は、こういう血管内治療をする専門家ではありません。ただ、AVMの治療をする場合に、その患者とずっと付き合っていくのは私で、血管内治療をする先生に、ここを詰めてくれ、あそこを詰めてくれと、血管造影室で注文を付ける側として、この審査に関わらせていただいたと考えておりますので、AVMについて御説明させていただきます。先ほども出てきたと思いますが、AVMというのは、正常な血管というのは、動脈、毛細血管、静脈と流れていくのですが、毛細血管を介さないで動脈から静脈に直接太い血管、いろいろな細い血管の場合もありますが、流れ込んでしまう病気を言います。つまり、高流量の動脈血が静脈にそのまま流れて、心臓の方に帰っていくという病態です。その異常な血管のことをナイダスと呼びます。

 この速い血管がナイダスに流れていると、ナイダスが次々に膨らんできまして、拡張、蛇行し、腫瘤化し、破綻して皮膚が破れ、出血して救急外来にかかるということを起こす病気です。

 これはInternational Society for the Study of Vascular Anomaliesという、国際的な血管奇形を研究する学会がありまして、その中で遅い血管奇形と、速い流れの血管奇形と分かれています。それぞれ、静脈奇形、毛細血管奇形、いわゆる赤アザのことです。速い血管の中でAVMです。これが、治療としては一番難しい治療法です。ただし、どの疾患も必ずしも治癒できているものではなくて、患者には、とにかくコントロールしながら付き合っていただいているというのが現状としてあります。

 AVMがどのように進行していくかです。実際には、子どものときからありまして、ただ赤く見えるだけで、赤アザです。それがだんだん拍動するようになって、思春期を過ぎたぐらいで、これを感じます。もう少し大人になってくると、皮膚が破綻して破ける、出血する、痛みを感じるとなります。最終的に、動脈血から静脈血に帰ってしまうと心不全にまでなってしまうという、非常に問題のある病気です。つまり、この第3期にさせないということが、治療の中心になってきます。

 AVMの治療としてはいろいろあります。圧迫できる所であれば弾性ストッキングです。対症療法としては、痛み止めを使います。先ほどから、切除するとありましたが、後ほど患者の写真を一部出させていただきますが、切除できないものもあります。主役になってくるのは、今回のビーズを含めた、コイル、ゼラチンスポンジ、市販のアクリル、バルーンが塞栓に使われるものです。それ以外に硬化療法として、アルコールを流して血管を潰してしまう方法があります。明るい白の所は、現在日本で使われている治療ですが、グレーの所は日本では認められていない治療です。

 治療の目的として、治癒は非常に困難です。患者さんの社会生活を維持するために、病変が先ほどの3期、4期にならないように、いかにそれを遅らせるかのコントロールが、今の常識になっています。

 AVMの場合は、異常血管吻合、ナイダスの血流を落とすことが、治療の目的となります。この患者さんは、ここにAVMがあって、70代になって多くなり、ここから破裂したということでやってきました。

 CTで見ますと、このように瘤の中に異常な血管が多数増殖して、何が何だか分からない。これを全部取ってしまうと、この方の顔はほとんどなくなってしまいます。これは取れないので、今はとにかく出血している瘤を何とかしようということになります。そのまま取りにいくと、太い血管を破って大出血しますので、造影ですが、このように豊富な血流が中に入り込んできます。このようにコイルで詰めて、瘤に行く血流をなくしてから、これを切除するということです。取りあえず瘤をなくして、このようにすっきり切除できます。これはまだ完全治癒ではありませんが、コントロールという意味では、できている方です。

 これは17歳の男性ですが、ここに大きな瘤がありまして、もう心臓に負荷が掛かってきましたので、治療を急いでやらなければならない状態です。これを切除しにいくのですが、いろいろと詰め物をします。

 例えばここに詰め物をしたときに、血管に飛んで行かないように、下大静脈にフィルターを設けます。血流を落とすために、静脈側に風船を入れて、ここに血を止めておきます。その上で、今、認められているコイルであったり、NBCAは市販のアクリル糊ですが、基本的には日本では血管内には投与は禁止と言われていますが、現場の医師の判断の下に使われることがあります。それで、やっと血流を落とすことができて、切除できる状態になるのです。

 ここで造影をして、このようになると、これで切除しましょうということになるので、血管の中を詰めるという治療は、AVMを治療する上では、必須の治療になります。

 この方は20歳の女性でしたが、この手のAVM、ここに隆々と血管の塊があるわけです。こちらは動脈から入って、動脈から流すと、そのまますぐに静脈に帰ってきます。この先には血流が行かないので、この先が非常に冷えて、痛くなってきているという状態です。もう少しすると、ここの皮膚が破綻して出血するという状態なので、治療をします。この方には、エタノールによる硬化療法というものを行いました。術前は、このように隆々と血管が見えていたのが、エタノールを流して硬化してあげると、このようにナイダスがなくなりました。ただ、残念ながらエタノールというのは液体ですので、ここにだけ流すことができなくて、どうしても先の方に流れて行ってしまいます。非常にコントロールが難しいのです。それなので、この方はナイダスもなくなりましたが、指を失うことになってしまいました。液体のエタノールコントロールをして、標的に当てるのは難しいという現状があります。

 さらに、この方は頸なのですが、ここに喉頭があります。カラオケをしていて、嗄声になって、治らなくなって、そのまま治らなかったということです。そうしましたら、ちょうど声帯の所に動静脈奇形がある。ずっと見ていきますと、声帯の所にあります。

 これを切除でやろうとすると、喉頭を取ってしまうことになります。喉頭を取るということは、この方はかすれ声でしゃべれていますが、声を失うことになりますので、切除できません。かといって、ここにエタノールを流すとどうなるかというと、先ほどの指のように、変な所に流れてしまうと、窒息して命を失ってしまう可能性があります。そういうリスクのあることはできませんので、より選択的にこういう血管を潰す、血管の太さごとに潰す材料というのが、より求められるということになります。

 つまり、動静脈奇形のいろいろなタイピングは配布資料にもありましたが、こういうものは直接穿刺して、硬化なり、塞栓するのがしやすいと言われてきました。ただし、このように細くなってしまっているもの、ここは針を当てるのはほとんど不可能です。そういうものに関して、カテーテルでこちらにアプローチして、そういう粒子状のビーズを詰めていって、ナイダスを潰すというのは、選択的な治療をする上で、今後求められる治療ではないかと思います。先ほどの声帯にある方も含めて、現在ではそういう方は、ただフォローアップして付き合っているという状態で、そのまま現状を見ているというのがあります。

 今回のビーズ、エンボスフィア、ヘパスフィアは、標的に合わせた治療、直接穿刺が困難な病態への治療という、治療選択肢を増やす上では、非常に求められるものではないかと感じています。以上です。

○笠貫部会長 詳細に病態、機器の必要性についてお話をしていただきました。この機器は、医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会からも、申請されていた機器です。特に何か御質問はございますか。

 最後の市販後の使用成績調査実施計画書は、予定されているということでよろしいですか。

○機構 お配りした資料の参考資料一覧の前に、使用成績調査の実施計画書を付けています。現在、ここで実施期間と症例数の記載については、記載のない状況です。今のところ本品に関しては、今までこのような非吸収性の血管塞栓用のビーズが、多血性腫瘍、動静脈奇形、子宮筋腫という新しい適応を取得するということを踏まえて、AVM、多血性腫瘍、子宮筋腫それぞれの疾患に合わせて、使用成績調査を行いたいと考えております。

 現時点では、今まで国内になかった適応に対して、初めてビーズを用いることになりますので、ある程度一般的な有害事象、1%程度の有害事象を精度よく追えるような症例数をもって、子宮筋腫と多血性腫瘍については調査をした上で、必要であればトレーニングプログラムや注意喚起などの追加を検討する予定になっています。

 AVMに関しては、先ほども杠先生から御発言がありましたように、基本的には外科医の先生と塞栓する先生が一緒にやらなければならないという現状と、本疾患の症例が少ないという理由もありますので、可能な限り、一定期間全例を対象として、調査を行いたいと考えております。

○笠貫部会長 そうしますと、動静脈奇形については全例、ほかのものについては、数%の安全性を確認するということで、今までは大体300例ぐらいという一つの目安で検討を進めていただくということで、よろしいですか。

○機構 今のところ、そういう方針で、企業と交渉を行っているところです。

○笠貫部会長 日本では25例ということですので、市販後の試験をきちんと進めていただくということになると思います。ほかには御質問、御意見はございますか。

○武谷委員 子宮動脈の塞栓に関しては、内外でかなりいろいろやられておりまして、限局的ではあるけれども、標準的な治療法にはなっていると思うのです。従来は、スポンゼル、ゼラチンといった、biodegradableな、吸収されるようなものを使っていたのですが、本品を用いることによって、従来使われたものと比べて、どれだけ有効性、安全性が増すか、そういう論理的な根拠はあるのでしょうか。あるいは、データとして従来行われていたものと本品との治療成績を比較したものとか、そういうデータはあるのでしょうか。

○機構 ゼラチンスポンジを使う子宮動脈塞栓術は、欧米ではほとんど行われておりませんので、直接比較した試験はないと思います。ただし、ゼラチンスポンジを使いますと、2、3週間後に動脈が再開通しますので、治療効果としては落ちると考えられます。これは、永久塞栓物質とされていますが、完全に動脈血流を遮断して壊死に陥らせるわけではなく、子宮及び子宮筋腫は、動脈血を多方向から受けておりますので、collateralが残りまして、治療効果が現れると考えております。

 安全性に関しては、手技によるものです。漏れた場合にNon Target Embolizationが起きてしまうということは、本品の性能とは直接は関係ないものですので、その点については、本品がゼラチンスポンジに対して劣るということはないと考えます。

○武谷委員 理論上は有用性が勝るのではないかというお話ですが、データとしても、これまでのゼラチンスポンゼル等を使ったデータは山ほどあるので、今回のデータと比較して、こちらが勝るとか、勝らなかったということは調べてはいないのですか。

○機構 Meta-analysis等の文献もあるのですが、子宮動脈を詰めるという手技の評価はされているのですが、詰める物質での違いの臨床的な文献上の評価というのは、今のところはございません。

○武谷委員 これを実際にやっている方々にとっては、このコストが問題になります。治療効果、安全性が同等ならば、これが出ることによって従来のものは使ってはいけないということは考えていないのですね。

 使うのは御自由ですということになると、そこはきちんと示さないと、恐らく自由診療になると思います。現場としては使いづらいと思います。これはここで議論する話ではないのですが、そこはもう少しセールスポイントを言わないと、現場はそういう疑問は持つかと思います。

○機構 補足します。審査報告書の35ページを御覧ください。「本品の有効性及び安全性」の1)です。多血性腫瘍における文献比較を行った結果ですが、海外文献が2本ありまして、多血性腫瘍に対する腫瘍の壊死効果を文献値と比べたところ、本品群では50%の壊死効果が5割ぐらいで得られているのですが、海外の文献報告等ですと、多血性腫瘍においては塞栓後3か月以内に、やはり半分ぐらいの腫瘍壊死効果が得られているということで、腫瘍壊死効果については、ほぼ同等であろうということは確認しております。

○笠貫部会長 保険についてのお答えはありますか。これは2009年のニーズの高い医療機器の早期導入に対する検討会で選定されたもので、それがようやく今回上がってきたという意味で、これは審査ラグではなく、申請ラグですね。

○医療機器審査管理室長 まず、今回薬事承認されるかがポイントなので、診療報酬上どのような対処をするかというのは、その後、企業が医政局を通じて診療報酬上の手当を要求していくことになります。

 先ほど武谷先生から「自由診療で」という話が出ていましたが、必ずしもそうなるかは分からないです。もちろん企業とすれば、診療報酬上の手当を求めていくことになると思います。

○武谷委員 先々の話で、ここで結論は出ないでしょうけれども、いろいろ問題点はあるのですが、これが保険診療になった場合、従来のものを使ったら保険診療として認めないで、本品を使ったら保険診療だということもあり得るのですか。

○医療機器審査管理室長 それは私どもで判断する話ではなくて、中医協まで話がいって、判断されることだと思います。

○笠貫部会長 ここでは、臨床の現場から申請があったものを、ようやくここで薬事承認として検討されているということで、ある意味では前向きに捉えられていいのではないかと思います。いずれにしても2009年からで、申請までが3、4年かかって、審査は短いのですか。

○医療機器審査管理室長 申請は2ページにお示ししているとおりで、平成24年2月29日です。今日、部会に掛けているということで、1年と少しです。

○笠貫部会長 臨床現場で、よりニーズの高いものをより早く臨床現場に、ここで検討した上で使えるようにするということになると思います。

 それでは特に御意見がありませんでしたら、議決に入ります。木村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加は御遠慮いただきます。

 「医療機器エンボスフィア」については、本部会として承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は3年間とし、また、生物由来製品及び特定生物由来製品の指定は不要ということでよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告することといたします。

 議題6に移ります。「医療機器『ヘパスフィア』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、審議を行います。本議題の審議に当たりましては、引き続き参考人の信州大学医学部形成再建外科講座の准教授である杠俊介先生に御出席をお願いしております。まず、審議品目の概要について、事務局から御説明をお願いいたします。

○事務局 資料6「医療機器『ヘパスフィア』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」です。1枚目が諮問書です。具体的な品目の概要については審査報告書の1ページになります。先ほどの品目と同様、一般的名称に関しては中心循環系血管内塞栓促進用補綴材、販売名はヘパスフィアと呼ばれるものです。申請者は日本化薬株式会社になります。本品目の概要は審査報告書の4ページを御覧ください。本品はビニルアルコール・アクリル酸ナトウム共重合体からなる血管内塞栓材で、親水性、膨潤性、圧縮性、変形性などを有した球状の粒子で、図1、図2のような外観になっています。塞栓血管径に適した大きさの製品を選択し、カテーテルを経由して血管内の目的の位置に注入するといったようなものになります。使用目的、効能・効果については3ページ目に記載しております。多血性腫瘍(子宮筋腫を除く)又は動静脈奇形を有する患者に対する動脈塞栓療法となっています。

 承認条件はその下に記載の通り、それぞれ必要な措置を講ずることとなっています。詳細については機構より御説明いたします。よろしくお願いいたします。

○機構 審議事項議題6、資料6「医療機器『ヘパスフィア』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、医薬品医療機器総合機構より説明いたします。まず、当日配付資料1の本品目の専門委員の一覧を御覧ください。本審査では4名の専門委員の先生方に御意見を頂きました。また、当日配付資料2の本品目の正誤表を御覧ください。こちらを追記、訂正させていただきます。

 それでは本品の概要から説明させていただきます。審査報告書の4ページ以降を御覧ください。本品はビニルアルコール・アクリル酸ナトウム共重合体からなる血管内塞栓材であり、生体適合性、親水性、生体非吸収性、膨潤性、圧縮性及び変形性を有する球状の粒子をバイアルに充填し、打栓後、ピロー包装された状態でγ線滅菌されている製品です。

 本品は塞栓させる血管径に合わせて選択できるように、3規格の粒子径を有しており、非イオン性水溶性造影剤/生理食塩水1対1の混合液に15分間膨潤させた後の粒子径は、乾燥時の約4~5倍になります。術者は、造影剤に分散させた本品粒子がカテーテルを経由して、血管内の目的の位置に留置することにより、物理的に塞栓を形成させ、血流を遮断若しくは血流速度を調節します。本品は親水性で柔軟かつ滑らかな球状に設計され、凝集し難い特徴を有しているため、カテーテル内での目詰まりが抑制され、深部まで到達させることが可能となります。

 本品の起原又は発見の経緯については、先ほど御報告させていただきましたエンボスフィアと同様ですので、ここでは割愛させていただきます。なお、本品はエンボスフィアと同じく、多血性腫瘍又は動静脈奇形を有する患者に対する動脈塞栓療法を適応として、2012年6月に、日本化薬株式会社から申請されました。

 それでは審査報告書6ページを御覧ください。外国における使用状況については、欧州では200410月に、肝細胞癌の塞栓術、転移性肝癌の塞栓術の治療、あるいは術前処置を目的とした血管塞栓術での使用を、200712月には肝細胞癌の塞栓術、転移性肝癌の塞栓術の治療あるいは術前処置を目的としたドキソルビシン塩酸塩の併用、あるいは併用のない血管塞栓術での使用で、CEマークを取得しており、米国では200611月に多血性腫瘍と末梢動静脈奇形の塞栓術を適応として510(k)認可を受けています。

2013年4月現在、本品は米国及びEUを含む54か国で市販されており、2012年の年間販売数は□□□本、総販売数は□□□□□本となっております。

 それでは非臨床試験成績について説明します。審査報告書7ページ以降を御覧ください。仕様の設定に関する資料、安定性及び耐久性に関する資料については特段の問題は認められませんでした。また、審査報告書1016ページにお示しする各試験の資料が提出され、申請者から適切な回答も示されたことから特段の問題はないと判断しました。

 続いて本申請に添付された臨床試験成績について御説明します。審査報告書は17ページからになります。多血性腫瘍又はAVM患者のうち、動脈塞栓療法の適応となる患者を対象に、本品を用いた動脈塞栓術を行い、動脈塞栓材としての本品の有効性及び安全性について検討した多施設共同オープン試験が、本邦6施設で実施されました。登録された29例のうち、3例が本品の注入開始までに医療機関において中止基準に該当することが判明したことから除外されました。審査報告書18ページ表4にお示しするように、本品使用症例は26例であり、その内訳は肝細胞癌4例、AVM2例、そのほかの疾患が20例で、子宮筋腫は登録されませんでした。

 審査報告書20ページ、2段落目を御覧ください。主要評価項目である技術的成功、標的血管の塞栓あるいは著名な血流低下が認められたのは26例中25例でした。不成功と判定された1症例は、骨盤のAVMの症例であり、本品による塞栓を予定していた2本の内腸骨動脈のうち、片方の血管より塞栓を行った標的病変は塞栓効果が得られておらず、不成功と判断されました。副次評価項目であった標的結節治療効果度による評価では、術後29日目で多血性腫瘍の24.1%に50%以上の腫瘍壊死効果が認められました。安全性については安全性解析集団26例のうち、自他覚症状に関する不具合(本品と因果関係が否定できない有害事象)が発生した症例数は24例であり、発現した不具合の総件数は59件でした。2例以上で発現した自他覚症状に関する有害事象及び不具合を表7にお示ししておりますが、そのうち10%に発現した有害事象は発熱、高血圧、腹痛、背部痛、便秘、悪心、食欲減退、嘔吐、筋骨格痛でした。

 また、治療試験期間のうち、フォローアップ期間中に報告された死亡例は2例でしたが、全ての死亡に関して本品との因果関係は否定されました。評価期間中の死亡例はなく、いずれもフォローアップ期間中の原疾患の悪化が原因でした。

 続いて審査における論点について説明します。審査報告書の35ページ、総合評価を御覧ください。一つ目の論点、各対象疾患における本品の有用性についてですが、子宮筋腫を除く多血性腫瘍における本品の有用性については、国内臨床試験において症例数は24例と限られているものの、子宮筋腫を除く多血性腫瘍の患者における本品を用いた動脈塞栓療法の技術的成功率は100%であり、術後29日目の標的結節治療効果度において、50%以上の腫瘍壊死効果が認められたのは13病変24.1%、何らかの腫瘍壊死効果が認められた割合は98.1%に及んでいることから、海外文献報告等も踏まえ、子宮筋腫を除く多血性腫瘍について本品の有用性は認められると判断しました。

 また、安全性評価について本品特有と考えられる有害事象は発現しておらず、通常の動脈塞栓療法と比べて有害事象が著しく多く発生している傾向も認められていないことから、リスクは許容範囲であると判断いたしました。

 本品のAVMにおける有用性については、国内臨床試験においてAVMに本品を使用した症例は2例のみでした。また、別途先ほど御報告したように、類似医療機器であるエンボスフィアを用いた国内臨床試験では、2例のAVMに使用されています。つまり、国内臨床試験においてAVMに血管塞栓用ビーズを使用した症例は計4例のみとなりますが、そのうち3例、本品で1例、エンボスフィアで2例において、塞栓に成功しています。

 本品を用いた国内臨床試験において2例中1例に有害事象として標的外動脈塞栓(肺塞栓)になりますが、それが認められていますが、AVMに対する動脈塞栓術には動静脈シャントを介した遠位塞栓リスクを伴う懸念があります。海外の文献報告などを踏まえると、一定の技術を有した医師が、本品の特徴を理解し、事前に動静脈シャントのリスクについて十分に評価すること、そして、塞栓材粒子がナイダスを通過する恐れのない症例を選択すること、心臓又は肺に動静脈シャントを有する心奇形の患者を除外すること、最後に大流量動静脈シャントが認められた場合治療を中止することなどのリスク低減措置を遵守して使用するのであれば、本品がAVMに対して手術摘出が困難な患者に用いられるものであることを踏まえ、治療上のベネフィットは安全性のリスクを上回るものと判断しました。

 子宮筋腫については子宮筋腫の流入血管径は500μm以上であるのに対し、正常筋層や卵巣を吻合する血管径は500μm以下であるため、従来子宮筋腫の標的とした動脈塞栓術には500μm以上の粒子径の使用が推奨されています。本品は類似の塞栓材であるエンボスフィアと異なり、柔軟で変形しやすく、非臨床試験において本品は血管内で変形し、膨潤後の粒子径が同サイズのエンボスフィアよりも末梢血管へ移動したことから、本品が正常組織を塞栓するリスクは、エンボスフィアよりも高くなると考えます。

 良性腫瘍である子宮筋腫は患者の生命予後には影響せず、逆に正常組織への意図しない塞栓の副作用は、その後の患者のQOLを低下させる可能性が考えられることから、本品の有効性及び安全性については、適切に臨床評価を行う必要があると考えます。

 本品を子宮筋腫に使用した臨床試験成績は得られていないこと、海外においても本品の子宮筋腫に対する臨床使用実績が非常に限られていること、主に子宮筋腫に使用されているエンボスフィアとは特性が異なり、エンボスフィアの子宮筋腫を対象とした臨床試験成績の利用が困難であることから、本品の臨床上の有効性及び安全性が確認できず、子宮筋腫に関しては、本品の適応から除くことが適切であると判断しました。

 続いて二つ目の論点の本品のリスク低減化措置についてです。本品を用いた動脈塞栓療法を安全に実施するためには、対象疾患の病態や解剖学的特性を踏まえた本品を用いた動脈塞栓術と、ほかの既存療法を十分に理解し、習熟していることが必要と考えられるため、承認条件1を付すことが妥当と判断しました。また、AVMに本品を用いる場合において、適応を判断する医師と手技を行う医師の専門領域が異なることが想定されることから、本品を用いた治療には対象疾患の病態や治療に精通する医師と、動静脈塞栓術の経験が豊富な医師を含む医療チームの連携が重要であり、学会の協力の下に適正使用を遵守する必要があることから、承認条件2を付すことが妥当と判断しました。

 以上の論点を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。再審査期間は3年と判断しています。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えます。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○笠貫部会長 ありがとうございました。杠先生から何かありますか。

○杠参考人 特に追加はありません。

○笠貫部会長 ありがとうございます。それでは、本件について委員の先生方から特に御意見はございますか。子宮筋腫を除くということ以外は、先ほどと余り大きな違いはないと思いますが。

○荒川委員 先ほどのエンボスフィアと両方がAVMに対して適応ということなのですが、遠位塞栓リスクに関してその2品を比べたときに、臨床的位置付けはどういうことになるのでしょうか。要は遠位塞栓リスクに関して後者のヘパスフィアの方がよりリスクが高いということであれば、エンボスフィアだけでもいいのではないかという気もするのですが、その辺の所を教えていただきたいのです。

○機構 機構からお答えいたします。実際には塞栓術を行う前に、ビーズが遠位側に流れないかどうかをテストしてみます。そのときにヘパスフィアは造影剤を吸い込むのですが、エンボスフィアは吸わないのです。それで造影剤と混ぜた状態で使うことにテストしてみることになります。ただし、すぐに数秒で沈殿してしまいますので、エンボスフィアの場合は実際には見ているのは造影剤の流れであって、エンボスフィアの動きではないのです。ヘパスフィアの場合はより正確にこのパーティクルがどこへ行っているか、遠位側に流れているかということは判断できます。これは限られた例数ですので、一見ヘパスフィアの方が多いように見えますが、実際に臨床で使われるときにはヘパスフィアで造影剤を吸って、遠位側に流れないかどうかを確実にテストして、ヘパスフィアを使う機会の方がおそらく多くなると思います。理由は粒子径が変化しますので、パッキング性能を奥から順番に詰めていく性能が非常に高い。エンボスフィアの場合は500μ、700μと粒子径が決まっていますので、その大きさの血管の所に行って詰まるという形になりますが、こちらは好きな場所へ行って、大きさの順に詰まっていきますので、実際にAVMで使われる機会は、ヘパスフィアの方がはるかに多くなると予想しています。

○笠貫部会長 これについては学会での使い分けのガイドラインなどお作りになるとか、あるいはこれから進められているということはございますでしょうか。それぞれの利点、欠点といいますか、今の御説明のようなことはいかがでしょうか。

○機構 先ほど説明させていただいた点については、臨床試験上での理論的にはそこが考えられるという所で、それを完全にこうしなさいという所まではなかなか難しい所で、専門の先生で判断される所の部分が、多分に出てきてしまうというのがあるかと思っております。

○笠貫部会長 もし学会関係でこういう二つの機器が出たときに、それぞれの特性と病態に応じた使い方というものを、学会レベルでまた検討していただけたらよろしいかと思いますので、先生の方で御検討いただけたらと思います。ほかにはございませんでしょうか。

○武谷委員 前の審査、資料5も共通ですが、この塞栓の治療対象が多血性腫瘍となっていますが、それに子宮筋腫も多血性腫瘍と言われているのですが、これも実際専門家では子宮筋腫を多血性腫瘍とは、ほとんど繊維性のものもあるので必ずしも考えていない。ですから、多血性腫瘍というのは単に肝細胞癌とか腎細胞癌等を括る意味でこういう名前を仮に付けたのか、本当に医学的に定義されていて、誰が多血性腫瘍であるか、これは多血性腫瘍でないかとか、そこまで厳密に要求するのか、多分にフィーリングで多血性腫瘍としたような気がするのですが、その辺は専門家の間でこの判定は一時的になされることが可能なのですか。

○機構 機構よりお答えします。多血性hyper vascular tumorか造血性腫瘍かというのは、CTで造影したときの染まりで使っている概念でして、当然造影剤が動脈層のタイミングで入っていって、正常組織よりも濃く染まります。これは誰が見てもほぼ明らかにこれが多血性腫瘍、こっちは染まっている、染まっていないというのは見たら分かりますので、そこで議論になることはほぼないと思われます。

 どうして子宮筋腫だけ除いたかというと、子宮筋腫は良性腫瘍で、フィーリングアーテリーの動脈径がほぼ分かっているわけです。500μ、700μと先ほどから何度かおっしゃっていますが、ただ、悪性腫瘍で今回用いたgiants cell tumorとか、carcinoidとか、そうすると、そういう腫瘍はフィーリングアーテリーの径が一定しておらずかなりまちまちなものですから、それで分けて子宮筋腫だけ分けて言っています。ただ、おっしゃるとおり普通に多血性腫瘍といった場合には、余り厳密に考えていくと子宮筋腫は入るかもしれませんが、多血性腫瘍といった場合には、子宮筋腫は思い浮かばないというか、別と考えるのが普通ではないかと思います。

○笠貫部会長 ニーズの高い医療機器、早期導入の機器が学会から要望があります。その学会を中心にして、この多血性腫瘍を含めて先ほどの二つの使い分けも、前回のもあったと思うのですが、その辺の所を一度学会と詰めていただいて、誤解のないように分かりやすいようにお使いになって、オープンにしていただくことでお願いしてよろしいでしょうか。

○機構 分かりました。その方向で対応させていただきます。

○笠貫部会長 時間も大分過ぎていますので、議決に入ります。それでは木村委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加は御遠慮いただくこととします。医療機器ヘパスフィアについては、本部会として承認を与えて差し支えないものとし、再審査機間は3年間とし、また生物由来製品及び特定生物由来製品の指定は不要ということでよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については次回の薬事分科会に報告することといたします。

 議題6が終了しましたので、杠先生におかれましては御退室いただいて結構です。ありがとうございました。荒井委員に入っていただいて下さい。

── 杠参考人退室、荒井委員入室 ──

○笠貫部会長 それでは議題7に移ります。「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定補修管理医療機器等の規定について」、事務局より説明をお願いします。

○事務局 審議事項議題7、資料7「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について」、御説明いたします。医療機器に関しては一般的名称と呼ばれる区分がないものに関して、高度管理医療機器なのか、管理医療機器なのか、一般医療機器なのかについて審議会の御意見を伺った上で定めることになっています。資料7「新たに追加する医療機器の一般名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(患者適合型単回使用骨手術用器械)(諮問書)」の1枚目を御覧ください。諮問書です。今回の議題となっているのは次の1ページ目に記載している患者適合型単回使用骨手術用器械ということで、クラス分類は管理医療機器である2、特定保守管理医療機器としては非該当ということで考えています。

 2ページ目です。類似の一般的名称とその定義として、下に三つほど記載していますが、いずれにも該当しないということで、今回は新しく患者適合型の単回使用骨手術用器械ということを審議させていただくことと考えています。

 最終3ページ目に予定される品目の概要ということで簡単に記載させていただいています。簡単ではありますが以上説明になります。

○笠貫部会長 どうもありがとうございます。それでは本件について委員の先生方から御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。特段に御意見がなければ議決に入ります。患者適応型単回使用骨手術用器械について、本部会として管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器の指定は不要ということでよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告することといたします。

 それでは次の議題8「医療機器の再審査結果について」、に移ります。医療機器の再審査結果について、事務局から御説明をお願いいたします。

○事務局 報告事項議題8、資料8-18-4「医療機器の再審査結果について」、御報告いたします。再審査は薬事法14条の4に基づき、原則新しい医療機器などについて、再審査期間を定め、承認後の使用成績などの調査を行わせ、その資料に基づき有効性、安全性などの再確認を行うことを目的とした制度になっております。

 今回お配りしている4品目については、事前に委員の先生方にお送りさせていただいておりますので、一つ一つの品目の説明は割愛させていただきますが、これら4品目については安全性、有効性について特段の問題はないと判断されています。以上のことより、薬事法第14条第2項各号のいずれにも該当しないこと、すなわち再審査結果の区分を効能・効果などの承認事項についての変更の必要がないカテゴリー1と判断しています。以上、御報告いたします。

○笠貫部会長 ありがとうございました。特段変更のないカテゴリー1ということですので、先生方には特段の御意見はございませんでしょうか。

 それでは御意見がございませんでしたら、次に議題9に移ります。議題9「部会報告品目について」、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 報告事項議題9、資料9「部会報告品目について」、事務局より御説明いたします。平成25年1月1日~3月31日までの3か月間に承認された品目のうち、本部会への報告対象となっている品目について、資料9でまとめています。1~19ページが医療機器となっており、1~3ページの14品目、4~19ページの品目があります。医療機器は全部で87品目あります。また、20ページ、21ページが体外診断用医薬品となっており、8品目の御報告をさせていただきます。こちらの資料については事前に委員の先生方にお送りさせていただいておりますので、この場で一つ一つの品目の説明は割愛させていただきます。以上、御報告いたします。

○笠貫部会長 どうもありがとうございます。各先生方にも事前に確認していただいているとのことで特に御意見はございませんでしょうか。

 よろしければ、これで本日予定された議題は全て終了とさせていただきます。それでは事務局からそのほか、何かございましたらよろしくお願いいたします。

○医療機器審査管理室長 本日は長時間にわたり、御審議をありがとうございました。次回の部会については、6月21()の開催を予定しております。連絡事項は以上です。これをもちまして、本日の医療機器体外診断薬部会を閉会させていただきます。ありがとうございました。


(了)

備考
 この会議は、企業の知的財産保護の観点等から一部非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 安川(内線4226)

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