ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(風しんに関する小委員会)> 第3回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び 厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会議事録(2013年11月19日)
2013年11月19日 第3回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び 厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会議事録
○日時
平成25年11月19日
10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎5号館17階厚生労働省専用第18・19・20会議室
○議題
(1)予防とまん延の防止について
(2)その他
○議事
○難波江結核感染症課課長補佐 ただいまより、第 3 回風しんに関する小委員会を開催いたします。議事に先立ちまして、委員の出席状況を御報告いたします。本日は委員 15 名中 14 名の方に出席いただいております。渋谷委員からは御欠席との御連絡を受けております。また、本日は川崎市健康安全研究所の岡部所長、一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部の明石主幹に御参考人として御出席いただいております。
続きまして、事務局より、配布資料の確認をさせていただきます。お手元の資料のクリップ止めを見ていただきまして、1枚目議事次第、配布資料一覧、委員名簿、資料 1 「麻しん・風しん予防の取組」、資料 2 「学校における感染症予防の取組」、資料 3 「医療関係者及び海外渡航における風しんの予防」、資料 4 「全米保健機関によるアメリカ大陸での風しん排除の取組」、資料 5 「発生の予防とまん延の防止について」、参考資料 1 「集団免疫による流行の抑制について」、参考資料 2 「職域の予防対策・婚姻届け時の普及啓発リーフレット」となります。不足がございましたら、申し付けください。よろしいでしょうか。申し訳ございませんが、放送のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、プレスの方におかれましては、御協力の程お願いいたします。
引き続き、審議参加に関する報告をいたします。風しんに関する小委員会参加規定に基づき、本委員会議に出席される委員及び参考人から風しん含有ワクチンの製造販売会社と風しん抗体検査キット製造販売会社からの寄附金等の受け取り状況、申請資料への関与について申告いただいております。本日の審議に不参加となる委員、参考人及び議決に参加できない委員はおられませんので、御報告申し上げます。ここからは五十嵐委員長にお願いたします。
○五十嵐委員長 ありがとうございます。皆さんおはようございます。早速、議題に入りたいと思います。初めに、資料 1 から御説明を頂きまして、質疑応答をしたいと思います。次回以降の委員会で議論が必要となる論点、御意見については、最後にまとめて御発言をしていただきたいと考えております。資料 1 から御説明をお願いいたします。
○氏家結核感染症課課長補佐 お手元の資料 1 を御覧ください。 1 枚紙ですが、「麻しん・風しん予防の取組」ということで、現状におきまして、風しんに関する取組についてまとめたものです。風しんの予防対策の根幹となる対策の一つとして、定期接種があります。 MR ワクチン、麻しん・風しんの混合ワクチンが 1 歳に1期、そして就学前の 1 年間で2期という形で 2 回接種が行われています。これを補完する形で確認の機会が麻しんの予防指針を中心に規定がありまして、幼稚園の入園時及び入園後、そして就学前の検診。小学校に上がりまして、小学校、中学校、高等学校、大学・その他、入学時及び在籍時、そしてまた就職時、これは特に指針等で規定はありませんが、現状におきましては、医療関係者、そして児童福祉施設等の職員、学校等の職員等で確認の機会が設けられております。
成人、社会人になりまして、確認の機会が就職後、特に同様に医療関係者、児童福祉施設等の職員、学校等の職員におかれましては、引き続き確認の機会があります。そのほか、妊娠をしますと、妊婦健診の中で風しんの抗体検査を図る機会があります。こういったところでも、抗体保有状況を確認していただけます。それ以外に関しては、厚生労働省ホームページ等で確認の呼び掛けを行っています。主な対象者としては、妊婦の夫、子ども及びその他の同居家族、 10 代後半から 40 代の女性、特に妊娠希望者又は妊娠する可能性の高い者、またこれは最後は検疫所が中心になりますが、海外渡航者等にも風しんの予防対策について呼び掛けを行っています。資料 1 に関しては以上です。
○五十嵐委員長 ありがとうございました。麻しん・風しん予防の取組の現状ですが、これについて御説明いただきました。何か御質問、御意見がありますでしょうか。
○大石委員 ただいまの御説明で乳幼児の 1 歳、1期の定期接種、確認の機会ですが、保育所と幼稚園ということです。保育所を加えていただければと思います。
また、就学前の検診も就学時の検診ということで、保育所やはり、幼稚園ということだと理解いたします。
○氏家結核感染症課課長補佐 御指摘ありがとうございます。ここの確認事項に関しては、既に指針が作成されています。麻しんの指針において記載があるものをここに引用している形です。指針の中で、保育所と幼稚園というのが所管の違いもありまして、保育所については厚生労働省、そして幼稚園については文科省が所管です。その文言がこういう形で記載されていたということです。風しんの指針の策定においては、頂いた御意見等を参考に、また策定のほうを御相談させていただきたいと思います。
また、就学前検診と書いてありますのは、就学前に、つまり2期の定期接種対象者に対して、確認の機会を設けたものです。ここで就学前に確認をすることで、もしまだそのときに、予防接種を2期受けていない方については、勧奨を行うことで2期接種を受けていただける機会があるというようなものです。就学後についても、麻しんの指針に記載がありますように、毎年予防接種歴の確認を行う機会があります。そういった意味では就学の前後とも確認の機会は、麻しん対策の観点から、風しんにおいても既に設けられているという現状かと思います。
○大石委員 成人の対策ですが、麻しん・風しん予防の取組ということで書かれています。ここは抗体検査をした後に、予防接種を検討ということで、これまでも接種を進めてきたことが事実としてあると思います。ここの部分は記述されないのですか。
○氏家結核感染症課課長補佐 呼び掛けの中に任意接種で接種を受けていただくという背景があります。もちろん、必要性という観点においてはしっかりと注意喚起していくことが重要であると理解しておりますが、接種を受ける方、個人個人がその必要性とそのリスクを両面から理解していただいた上で、適応を判断し、接種を受けて頂くという意味で記載をさせていただいています。
○小森委員 委員長、今回この資料に対する質問が主で、全体的な意見はまた別ということですか。
○五十嵐委員長 最後にまとめてお願いします。
○小森委員 分かりましまた。それでは、質問させていただきます。今後、喫緊の対策としては、やはり年齢が、感受性者が大人に多いということです。当面、大学や就職時等の確認が重要であろうと思います。ちょっとお聞きしたい点は、法的な意味で、 50 人以上の事業場であれば、産業医の配置義務があります。また、それぞれ大学等において、いわゆる学校医的な存在、小中高等においては、配置をされております。大学等について、いわゆる大学職員の産業医的な存在はいらっしゃるのですが、大人ということで、学生全体の健康の把握は必ずしも十分ではないような感じもしております。 1 点確認したいのは、いわゆる大学設置法など、そういった法的な観点で就職時や大学での入学時等にこういった確認を保証できるといいますか、そういうようになっているのかどうか。あるいは、御本人の希望、意思によってそれに答えると。そういう体制になっているのか。どうなのでしょうか。
○氏家結核感染症課課長補佐 お答えします。現状、把握している限りにおきましては、法的に拘束力を持って、これの確認を行うということを定めた法律はないと理解しております。ただし、現在策定を計画しております風しんの指針と同様に、麻しんの指針の中で、こういったことを行うことを勧めております。そういった中で、現在の予防対策が行われています。そのほか、学会等による推奨というものがあると思いますし、そういった法的な規定がないものも併せて、現状の対策は行われていると理解しております。
○小森委員 ありがとうございました。今後、そういった対策が必要であると理解しております。ちょっと確認をさせていただきました。
○岡部参考人 先ほど、大石委員の御質問に対する厚労省側の答えで、任意接種だから今のところは指針案の中に入れてないのだというようなものだったと思うのです。推奨の部分です。麻しんに関する特定感染症予防指針の場合には、「予防接種法に基づかない予防接種の推奨」という項目が 1 項目入っていると思います。ですから、そういったような工夫をすれば、書き込めるのではないかと思います。
○宮崎委員 細かいことですが、これは特定感染症予防指針にということで、書いてあるのだろうと思いますが、実際は例えば幼児の1期の確認は、 1 歳 6 か月健診や 3 歳時健診でかなり強くやられているところです。指針に拘らずに書かれていいのではないかと、私は思います。
○五十嵐委員長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは、資料 2 の御説明を高橋委員からお願いしたいと思います。
○高橋委員 それでは、「学校における感染症予防の取組」について説明いたします。なお、学校教育法に表記されている学校の種類を資料に上げましたので、参考までに御覧ください。まず、 1 ページの下の部分です。学校は、幼児や児童、生徒、学生が集団生活を営む場となっています。したがって、感染症が発生した場合は拡大しやすい環境にあります。幼児や児童、生徒、学生及び職員に関わる保健・安全管理については、学校保健安全法及び同法施行令、同法施行規則等に規定されているところです。また、麻しんや風しん、インフルエンザ等の感染症予防に対する様々な措置等についても示されています。職員については労働安全衛生法も併せて適応されます。
2 ページ目上の段ですが、学校における感染症予防の取組ポイントを 3 つの K でまとめてみました。まず、 1 つ目のKは「確認」です。入学時など、既往症や予防接種歴を確認をしたり、子どもたちの様々な実態を把握したりして、保健管理に関する対応を行っています。
2 つ目のKは「共有」です。感染症の発生状況を初発時から流行状況などを収集し、共有化を図ります。また、地域の学校や保健所、教育委員会などと協力して取り組みます。
3 つ目の K は「啓発」です。保護者や家庭等に正しい情報を提供し、啓発するとともに、幼児や児童、生徒、学生及び職員への保健指導等を行います。右側の丸が連鎖されている図ですが、 1 つの家庭において、子どもたちが幼稚園や保育園、小学校など複数の学校等に通う場合もあります。麻しんや新型インフルエンザの流行などを通して、地域全体で連携しながら取り組む重要性を今までの経験を通して、認識しています。
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ページの下ですが、小学校の入学前に市町村教育委員会が就学時健康診断を行います。その際、麻しん・風しん等の予防接種歴を確認し、指導を適切に行うことになっています。事例として、入学説明会などの機会を活用しながら、保護者に啓発をすることもあります。入学後、小学校や中学校、高等学校などでは、児童や生徒、学生の健康管理として保健調査票などを活用し、予防接種歴の確認をしたり、定期健康診断や保健指導、健康相談などを行ったりしています。感染症対策としては、平常時における対応と感染症発生時及び流行時の対応について職員が共通理解を図りながら取組を行います。特に、効率的に感染症情報を収集し、共有することや、地域の発生状況を把握をすることは、とても重要な対策の一つになっています。
3 ページ目は、取組の事例を紹介します。出典は、群馬県太田保健福祉事務所がまとめました「管内における風しん流行報告書」の中からまとめたものです。
概要ですが、平成 15 年第 47 週に成人男性の発症報告をスタートに、第 50 週には小中学生、第 51 週から幼児の発症報告が始まりました。平成 16 年の第 5 週には報告数が急増し、幼児から成人までの各世代から報告されたという内容です。報告の始まりから急増まで 10 週間あったと伺っています。この取組の一つとして、患者発生の多少にかかわらず、市内全ての小中学校及び管内のほかの町の全ての小中学校において、風しんワクチンの未接種者のうち、希望者に対して予防接種が実施されました。小中学校の予防接種開始後、 2 週間後くらいから急激に患者数が減ってきたそうです。
このほかの取組としては、小中学校への調査のほか、医療機関緊急調査が行われました。また、風しん関係者対策会議等を受け、風しん等対策委員会が開催され、取組が進められました。平成 16 年 431 名という患者数で、群馬県の報告者数の約 80 %が占められたと伺っております。
3 ページ目の下の所は大変細かくて恐縮ですが、考察の一部を抜粋したものを掲載いたしましたので、御覧ください。その中で、特に「流行拡大の防止」では、風しんは潜伏期間中も感染力があり、また、軽症のため、感染者が登校したり、出勤したりして、感染が広がりやすいことを指摘し、また、 5 「流行の終息」では、管内の小児科定点は初期に発生を把握できていたことや感受性のある、しかも行動半径の広い成人男性の発生が早期にあるという傾向は今後多くの地域でも見られるのではないかとの懸念などについて、整理されています。 8 の「風しん等対策委員会」では効果的な感染症の情報提供について、早期に地方紙、地方版等で大きく報じられることも効果があったということも明記されています。
引き続きまして、4ページです。「大学における麻しん等の対応」の取組事例ですが、出典は公益財団法人全国学校保健管理協会の機関誌「 CAMPUS HEALTH 」 50 号から引用させていただいたものです。 2009 年に発生した麻しんの流行で多くの大学が休校になりました。また、 2011 年から風しんが地域流行し、 2013 年 3 月には全国的に拡大したことがあります。報告される患者の 9 割が成人で、大学生に相当する年齢の人が多かったようです。
事例 1 については、麻しん流行の発生を受け、取り組んだ大学の事例ですが、行政機関と連携し、感染拡大を阻止した取組事例です。大学、保健所、医療関係者等の相互理解と協力で、早期介入を図り、全ての大学職員、学生を対象として、大学の体育館を会場とした予防接種が実施されました。これにより、感染拡大を阻止することができたそうです。
事例 2 については、実習やサークル活動を意識した学内感染対策の取組です。入学時から罹患状況、それから予防接種状況の調査、血液検査、予防接種の勧奨等を行っているそうです。また、感染症対策状況報告書には、入学時の調査結果や抗体検査の結果、予防接種情報などが記載され、発行されるそうです。実習先にはこれを提示すると書かれておりました。
事例 3 については、これは保健管理センターにより、感染症の総合的な管理の取組の事例です。一貫教育法を中心に重点的な対策を行い、小学 1 年生、中学 1 年生入学時、それから高等部を持つ学校の 1 年生に風しんなどの抗体検査を実施しているそうです。第 3 期・第 4 期麻しん・風しん定期予防接種の該当者、保護者に対して、接種の確認や勧奨を行いました。それから、医学系学生の臨床実習対象者には入学時に抗体検査を実施しているそうです。
事例 4 は、平常時からの感染症管理の取組事例です。大学入学手続案内の中に、問診票をとじ込み、入学手続関係書類と一緒に提出をさせるのだそうです。提出されたデータは学務情報システムに入力され、メール等で予防接種の勧奨が行われるそうです。学校感染症第 2 種の医療情報システムを構築し、感染症の新規発症例の全数把握や感染者の出席停止期間の確認などを行い、保健指導に役立てているそうです。以上の事例がありましたので、ここに参考に挙げさせていただきました。
5 ページは「うつさない うつらないために」ということでまとめました。麻しん・風しんの発生に伴う事例から、職員の健康管理がとても重要だというのが伺えます。学校には様々な職員がおり、幼児や児童、生徒、学生と身近かに接する機会もたくさんあります。職員は自分の既往歴や予防接種歴を確認しておくことがとても大切なことになります。特に、記憶ではなく、記録が大切だということは、麻しんの流行時に認識されました。また、職員については研修会などを活用しながら、感染症や予防接種について正しく理解することが自分の健康管理だけでなく、幼児や児童、生徒、学生、職員層に感染症をうつさないという行為にもつながっていくと思います。特に、平常風しんによる感染拡大を防ぐためにも、今後も自分の予防接種歴などを再度確認したり、早期に産業医やかかりつけの医師に相談したりしながら、自分と周囲のことも考えるよう指導や啓発も大切です。安全衛生委員会なども活用しながら、取り組むことが望まれます。
うつさない、うつらないために、学校として取り組むポイントを 3 つの G で整理をしてみました。まず、 1 つ目のGは「実態の把握」、罹患歴、予防接種歴の確認です。 2 つ目のGは「情報の共有」、効果的な情報の収集と活用、それから地域関係機関との情報連携、保護者や地域への情報提供及び啓発です。そして、 3 つ目の G は「迅速な対応」、未接種者等への予防接種の勧奨や推奨です。関係機関と連携した感染拡大の防止ということが考えられます。今までの取組を参考にしながら、これからの取組に必要なことの共通理解を図り、進めていくことが必要だと考えております。
最後のページの所は参考として文部科学省から作成、提示されているものを載せておきました。以上です。
○五十嵐委員長 ありがとうございました。学校での感染症予防の取組について、具体的に御説明を頂きました。これについて御質問、御意見がありますでしょうか。
○宮崎委員 若い世代の抗体検査に関しては、大学あるいは専門学校も非常に大事だと思うのです。私たちは福祉施設を運営してまして、保育実習や本格的な教育実習でなくても、福祉体験というのが今、義務付けられています。必ず 1 週間来るということです。結構、学生の出入りが多いのです。保育実習のときなどは、例えば胸の写真と検便の結果が大体皆さん付けて来られます。はしか、風しん、水疱瘡といった感染症に関してはまだそういうものを提出してくるところは、極めて限られています。受け手としてはそろそろ MR も 2 回やっているはずの世代なので、ほぼ義務付けようかと思っているのです。送り出す大学側として、そういう意識がそもそもあるのかどうかというのは、どうなのでしようか。
○氏家結核感染症課課長補佐 事務局から現状を把握していることをお伝え申し上げます。大学の取組に関しては、国公立私立の大学の保健管理施設団体である全国大学保健管理協会等による取組があります。こうした団体を中心に、定期的に会合や研究会等を行って、必要な対策と現状の把握という観点で話合いがされているとのことです。先ほど、高橋委員から御発表があったように、やはり医療系の大学については、ほかの学部と比較しても取組としては、一段階進んでいるというような現状かと思います。病院実習に限らず、保育実習等で乳幼児と接するような機会のある方々に対しての対応についても、本審議会等で併せて、今後の対策を検討していくべき事項かと認識しております。以上です。
○小森委員 今の御質問に関連するのですが、 2007 年のときに各地で多くの大学で流行がありました。当時、私は石川県におりました。石川県の大学等、私立の大学については学校を守る経営的な問題もあって、学校の側が負担をして、学生さんに呼び掛けて予防接種をしたというようなこともありました。また、そういうときに、ワクチンの確保が大変難しくてというようなこともお聞きをしています。今日は文科省の方はいらっしゃらないようですが、そういった意味で今後の対策として、現状でそのときの総括として、 2007 年のときの様々な大学等における発生状況と対策の一覧といいますか、総括というか、そういうものをどれくらい把握しておられるのか。また、今後の発生状況については未発生の予防、今日は発生の予防という観点ですが、そういうことを踏まえて、あのときは麻しんの話でしたが、風しん等についても、反省材料としながら、やはり考えていく必要があると思うのです。今日はすぐお答えできる環境になければ、また次回でいいと思いますが、そのようなことも重要な観点と思いました。
○難波江結核感染症課課長補佐 2007 年の流行を受けて、麻しんの指針が 2007 年 12 月 28 日に出ております。その前文に大学での流行などの言及があるので、今、事務局に当時のメンバーがおりませんので、すぐにはお答えできないのですが、当時どういった議論があったのかは、ちょっと調べて、また御報告をしたいと思います。
○小森委員 公表された議論はきちんと出ています。そういうことを踏まえて、情報でまだ足りない点等については、今回の風しんの予防接種指針等にやはり生かすということが重要だと思います。また、見返していただいて、足らざる点等については、私たちも確認をしてまいります。
○五十嵐委員長 それでは、よろしくお願いします。
○北原委員 高橋先生、もし御存知であれば教えていただきたいのです。平成 16 年のときの太田保健福祉事務所の取組の中で、風しんの対策委員会というのが医師会主導で設けられたのですが、この連携先の中に、多分太田だと大きな自動車メーカーなどがあるのではないかと思います。職域のほうに情報提供するような取組がこのときにあったかどうかというのは、何か御存知でしょうか。
○高橋委員 具体的に大きな自動車会社はありますが、地域全体で取り組んだと伺っております。太田保健福祉事務所だけではなく、群馬県感染症研究所も関わりながら、取り組んだことが報告の中にまとめられています。
○北原委員 関係機関との連携先の中では、太田労働基準監督署や太田新田歯科医師会、薬剤師会、様々な理容師組合等々に対しても、そういうチラシや配布を行ったというのが記載されています。連携はされていたと思います。
○宮崎委員 関連ですが、高橋委員、分かりましたら教えてください。小中学校の未接種者のうち、希望者に対して、予防接種を実施したと書かれておられましたが、これは公的な補助が出たのでしょうか。分かりましたら、教えてください。
○高橋委員 確認をして、お伝えしたいと思います。よろしいでしょうか。
○五十嵐委員長 ありがとうございました。ほかにないようですので、では資料 3 を加藤委員から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○加藤 ( 康 ) 委員 私から「医療関係者及び海外渡航者における風しんの予防」ということで、説明をさせていただきます。 1 ページの下にありますように、医療機関は、風しんの集団発生がしばしば報告される職域です。米国では既に排除を達成しているわけですが、ちょうど予防接種が導入された 10 年後ぐらいになるかと思うのですが、ボストンの病院で集団発生が見られたという報告です。 47 例の風しん患者が職員から発生して、うち 38 例は 20 ~ 39 歳であったということで、当時、この年齢に感受性者が多数残っていたことが報告されています。
二次感染例でこの集団発生に気がついたわけですが、発端はどうも調理・配膳を担当していた職員が考えられまして、配膳の担当ということで、いろいろな病棟に行っていたということで、二次感染及び三次感染については、看護師、事務職員、清掃を担当する職員など、様々な職種から患者が発生しています。
一方で、入院患者からの発生はなかったということで、これは内科・外科の病院でして、産科等がなくて、患者の年齢が高く、感受性者が少なかったからだろうと考察されています。
集団発生時の血液検査で、 12 %の女性職員が風しん感受性有りということで、これは女性職員を調べているのは、妊娠をするかもしれないということもあって、男性よりも徹底的に調べた経緯があるようです。
当時の風しんの既往や予防接種歴との実際のウイルス抗体価の保有条況との関連ですが、予防接種歴や既往があっても、 10 %が抗体を保有していなかったり、あるいは既往・予防接種歴がないと答えた職員でも実際に感受性と判断される方は 13 %であったということで、そういう既往・予防接種歴、これも記録で確認していたかどうかは、はっきりしていませんが、こういった情報は、必ずしも信頼できないことがこの事例で示唆されることではないかと思います。
次のページですが、前回委員会の医療状況の所で少しお話させていただいたことと同じですが、医療機関という職域の特徴は、現在、職員の中心が感受性者の多い世代であること、ほかの職域と比べて患者と接しますので、職員の健康を守るという職業安全保健の視点が必要だろうということです。それと、罹患した場合に、ハイリスクと考えられる妊婦や免疫不全者が入院あるいは通院をしていますので、医療機関での風しんの伝播を防ぐ必要があります。
こういったことで国内でも、下にありますように、風しんの職員の感受性調査がこれまで行われてきています。論文となっているものだけを拾っているわけですが、大学病院が主なものです。全て自主的にこういったものを行っていると考えていいかと思うのですが、実施年が 2001 年からで、当センターのものも含めて 10 年間ぐらいの幅がありますが、大体の傾向としましては、抗体陰性者、風しんに感受性のある職員は、大体 1 割程度いるということです。
この表には示していませんが、これまでの国民における血清疫学調査と同様の傾向で、男性に感受性者が多いとか、麻しんなどと比べると、比較的年齢の高い 40 代ぐらいまでに感受性者が見られるという共通の傾向が認められています。
次のページになりますが、現在、こういったことは恐らく比較的大きな病院で自主的に行われているのが現状ではないかと思うのですが、諸外国の国レベルにおける指針はどのようになっているのかをまとめたものが、次のものです。排除を達成している米国ですと、 1956 年以前に出生した者を除いた方については、以下の 3 つ、少なくとも 1 回の風しん含有ワクチン接種歴があること、ウイルス抗体が陽性であること、臨床診断ではなくて検査診断によって風しんと診断されたもの、というどれかを満たすことを求めています。
また、欧州における予防接種の推奨状況では、フィンランドで予防接種を義務化しています。また、 11 か国においては予防接種を推奨ということで、 3 か国、ドイツなどにおいては特定の職域、現時点で小児科のみということだと間違った対応になるのかもしれませんが、あるいは産科のみをリスクの高い職域として、ほかの職域に比べて医療機関の中でも対策を高めてとることを推奨している地域もあります。フランスなどは指針がないということです。この予防接種の推奨に関しては、接種前にスクリーニングをしているかどうかは論文に書かれていなかったので不明ですが、欧米での現在の状況はこのようなことかと思います。
次に、当センターにおいて、どのような対応をとっているかを説明したいと思います。当センターは、新宿区にあります急性期の患者を主な対象としている総合病院です。産科も診療しています。病院に勤務する医師・看護師は入職時に麻しん・風しん、水痘、ムンプスについて、抗体検査を提出することが義務付けということで、 2004 年から体系的に始まっています。
2011 年、これは震災直後であったのですが、麻しんの患者を輸入例ということで診療していた経緯があるわけですが、 6 月に看護師と事務職員から、残念なことに麻しん患者が発生してしまったということです。この看護師については、これまで使っていた基準、罹患前、入職時の抗体価は陽性ということで基準値を超えていたわけですが、抗体価が低目であったということで、 4.0 を基準にしていたわけですが、それを若干超えて 6.2 で軽症の修飾麻しんを発症してしまった事例があります。
また、事務職員で、これも人事の指揮系統が違う派遣職員ということで、この職員に関しては麻しんの免疫確認が行われていなかったことを聞いています。この状況を重く見まして、職員の定期健診時に臨時抗体検査というのを実施しまして、翌年から抗体の陽性基準の変更と全職員に関する免疫確認の義務付けを行っています。
次のページが、そのときの検査結果の抗体価です。感受性がありそうな抗体が低目の方をまとめたものです。赤字で示したのが、当時、参考にしています環境感染学会のガイドラインでの基準です。これを使いますと、麻しんに関しては大体職員の 3 分の 1 が追加予防接種の対象者になるということで、当センター内でもいろいろ議論がありまして、現時点では抗体価 8.0 、人数としては全体の 8.0 %になるわけですが、こちらを採用しています。風しんに関しましても、学会のガイドラインですと対象人数が多いということで、まず、それより低い基準値、現実的な値として採用しています。ただ、産科に勤務するような職員に関しては、高いレベルで接種することも妨げないことでやっています。
現在の新採用時の手順は、下のような流れとなっています。まず、内定者に人事係がお知らせを流して、内定者が入職前に健康診断書と一緒に抗体価あるいは予防接種の記録を提出することにしています。書類確認・感受性者の把握を感染制御チームと労務管理室で行って、対象者に予防接種をしています。対応としては、環境感染学会のガイドラインにほぼ基づいて、ワクチン接種を 2 回優先というのでしょうか、その記録をしっかり残すことを基本にした対応をしています。
その後、特に感染制御チームの指定した専門職員が、データベースにデータ入力をしています。そのデータについては、自分で電子カルテを通じて確認ができるようになっていまして、必要時には印刷することもできます。抗体が完全に陰性であった、 EIA 価で 2.0 未満の方については、病院の費用で抗体価の再検まで行っています。このように手順としては、中途採用者もいますし、病院は職員の回転もかなり早いので、これを徹底してやることはかなり大変な作業であると考えています。
次の資料で、まとめますと、医療機関における課題としまして、これも前回お示ししていますが、現在の自主的なレベルで行われている免疫の確認を、全ての医療機関で意義、必要性が認識していただけるように、指針において予防接種法以外の予防接種の推奨というのでしょうか、そういったことで扱うべきではないかと考えます。免疫確認の手順といったものも、先ほどの表にありますように、いろいろ抗体の検査法の基準等も未統一の部分がありますので、そういったものを統一していくとよいと思います。
予防接種歴の確認が、今後、 MR を 2 回受けた方が医療機関等に就職してくるということで、世代も変わってきていますので、予防接種歴を 2 回記録で確認していく方法が最も経済的ではないかと考えています。
あと、先ほどもお示ししたように、病院は、派遣職員とか、訪問する方、一時滞在して研修を受ける方等、いろいろいますので、学校あるいは派遣会社等との手順を統一すると効率的であろうと思います。
その下にお示ししたのが、現在の我が国の病院の現状を示す一例ではないかと思うのですが、今年 1 月に当センターの国際医療協力局の和田医師が行ったアンケート調査です。関東地方で病院機能評価の認定を受けている病院ですが、 553 病院中 166 病院から回答を頂いていて、こういったウイルスの既往調査・抗体検査をしていると答えたのは 166 のうち 96 で、風しんを含んでいると答えた所が、全体の 51 施設にとどまっていたのが現状です。ということで、医療機関における免疫確認の意義を強調していく必要があるだろうと思います。
最後に、医療機関とはまた話題が変わりまして、海外渡航者のことをお話したいと思います。当センターのトラベルクリニックなどがありまして、これから海外に行かれる方の相談に乗ったりする機会も多いわけですが、お示ししましたように在留邦人数は 125 万人ということで、前年より増加しています。増加率の多い国は、東南アジアやインドが多いです。こういった国は我が国よりも更に風しんの流行状況も当面まだ続くと予想されますので、こういった土地に出掛ける方の風しんに対する予防は、重要になってくるのではないかと思います。
出国する日本人数を見ましても、 1,800 万人を超えて、増加率の多い国はやはり東南アジアです。ミャンマーを筆頭に非常に東南アジアへの旅行者が増えていると思います。こういった地域ですと、 A 型肝炎や狂犬病といった予防接種が強調されるわけですが、定期接種で漏れているような、特に 20 ~ 40 代でビジネスで出掛ける方については、風しんの予防接種をこのような機会に勧めることは、大変意義があることではないかと思います。
最後にありますように、海外渡航者の予防接種はいろいろな側面がありまして、もちろん渡航者の健康を守ることが重要なわけですが、帰国後に家族や同僚への感染を防ぐとか、あるいは、これは忘れがちですが、渡航先で日本から病気を持っていくことも防ぐことができるわけですし、今後、我が国も排除に向かう中で、我が国が集団免疫を高めるということにも貢献するはずですので、是非このような機会を通じてキャッチアップを行っていくべきではないかということを、最後に提案させていただきます。
○五十嵐委員長 ただいまの御説明について、何か御意見、御質問はありますか。
○館林委員 大変勉強になり、ありがとうございました。素人なのでよく分からないのですが、抗体検査に HI と EIA があって、一般的には HI が 8 というところで陽転が決まるという理解でいたのですが、どういう検査でどれぐらいの値があればどの程度感染しないとかということは科学的に言えるのでしょうか。あと、外国の例があったのですが、外国ではどういう基準になっているのでしょうか。
○加藤 ( 康 ) 委員 そのあたりが、竹田先生とかが御専門かもしれませんが、中和抗体法が、病気を予防するのに一番確実なレベルを決める方法ではないかと思うのですが、もう少し簡易な検査ということで、いろいろな方法があると認識をしています。それぞれ感染症ごとに HI 価が中和とどれぐらい相関するというのでしょうか、参考にできるかということに差がありまして、風しんに関しては、発症を予防する免疫を確認するレベルを参照できる方法として、 HI 価が広く使われているかと思います。
ただ一方で、麻しんとか水痘、ムンプスですね、麻しんについても HI 価で十分参考にできるかと思うのですが、そのほかについてはまた別の方法ということで、現在では検査としても実施しやすい EIA 価といったものを参考にする機会が特に医療機関では多いのかと考えています。
ここも前回、資料であったかもしれないのですが、最近、感染研で HI 価のレベルと EIA 価のレベルで、どれぐらいの値だとこのぐらいの値ですよと、そういう相関する値を示している表がありますので、そういったものを参考にしていることになります。
医療機関では、結局、様々な方法が使われているのが現状で、こういったものも、例えばコストなど、いろいろな要素を基に決めているかと思います。 HI が EIA を調べるより安価なことが多いので、実際は HI を使っていることが多いかと思うのですが、ほかのウイルスを含めて全て EIA で測ったほうがシンプルでスムーズにできるということで、我々の病院ではこの 4 つを調べるときに、迅速性なども考慮して、全て EIA でやるという選択をしています。
○五十嵐委員長 よろしいですか。御理解いただけましたか。
○館林委員 要は HI で 8 より上だったら感染しないとか、そうでない場合、 90 %感染しないとか、何かそういうことが素人に分かりやすく教えていただければ、有り難いと思いました。
○加藤 ( 康 ) 委員 では、次にまた。
○館林委員 はい。
○五十嵐委員長 そうですね。
○加藤 ( 康 ) 委員 事務局の話で。
○氏家結核感染症課課長補佐 事務局の資料 5 に抗体価レベルでの意義という所を記載させていただきますので、後ほどまた議論していただきたいと思います。
○大石委員 最後に海外渡航者における予防接種の意義ということでお話になりましたが、確かにこういう対策はすごく重要です。麻しん、風しんに対する予防接種を渡航する人に対してアドバイスし、接種まで至っている頻度はどのぐらいになるのですか。
○加藤 ( 康 ) 委員 そこら辺が、 1 つは、例えば、具体的に何パーセントというのは私も持っていないのですが、恐らく仕事で出張する場合には、勤務先が費用を負担するかどうかがかなり大きくなってくるのかと。 A 型肝炎は会社側が持ちますが、麻しん・風しんは渡航とは関係ないのではないかという議論で、費用を負担してもらえない場合ですと受けないことにつながるのかという印象は持っています。
○大石委員 このような海外渡航者に対する対策は大事なので、是非、日本渡航医学会等々でもこういった活動を進めていただければと思います。
○竹田委員 1 ページの下の米国の報告だけ 1 点確認したいのですが、下から丸ポチの 2 つですが、既往や予防接種歴があっても 10 %抗体を持っていない。一方、既往、予防接種がない人でも 13 %、余り差がないのですが、これは恐らく風しんの既往の記憶や予防接種歴の記憶が正確ではないことを言いたいことだと思うので、そのことの確認です。というのは、予防接種が余り効かないのかという誤解を受けるといけないと思いますので、確認をさせてください。
○加藤 ( 康 ) 委員 少し説明が足りなかったかもしれませんが、予防接種歴というのが、恐らく論文を見ましても記憶に頼っている状況ではないかと思うのです。 1979 年当時ですと、 10 年前に予防接種が始まっていますので、この集団は小児期に接種を受けたはずはないと思われますが、確かに記録を持った方が多数含まれていた状況でないのは確かだと思います。風しんについては不顕性感染などもありますので、既往があるとすれば小児期にかかっていたのかもしれませんが、大分前のことなので記憶していなかったということで、このような結果になっているのかと思いました。
○平原委員 これは感想ですが、皮肉なことですが、これは今回は海外渡航者にと、日本からということですが、これは座標軸を変えますと、今回の流行に関しては、海外の人たちは日本へ行くなと。妊婦みたいな若い女性は日本に行くなと言われて、我々は随分恥ずかしい思いをしました。結局、座標軸をどこに置くかによって違うのです。結局、これは日本が排除できていれば海外に行くなということになりますが、排除できている国の人たちは流行地に行くなということなのですよね。ですから、その相対的な位置関係でこれは今はキャッチボールをしながらやっている状況なので、日本も排除しなくてはいけないし、東南アジアは東南アジアも排除してもらわなくては困るけれども、逆に排除できた国は、要するに流行地に行くと、どのような抗体を持っているか、持っていないか、排除できている国はそこまで徹底していないので危ないというリスクがあると、そういう非常に皮肉な話の 1 つの局面かと思いました。
○宮崎委員 1 つは、風しんに罹かったかどうかという既往歴で判断すると非常に当てにならない。昔大流行が起こっていた頃に、小学生たちに調査してもそうでしたので、既往歴は本当に当てにならないです。予防接種歴がきちんとしていれば、 1 回接種でもかなりの効果があるだろうと私も思います。
質問ですが、職員検査の基準の所、結局、今はどれを採用していらっしゃるかが 4 ページの上のグラフで確認をしたいのですが、今、センターで使われている接種対象の基準としてどの値を使われているか、図の読み方がよくわかりませんでした。
○加藤 ( 康 ) 委員 色が分かりにくかったかもしれませんが、デンカ生研のキットで EIA 価が 4 未満であると。
○宮崎委員 風しんが 4 ですね。
○加藤 ( 康 ) 委員 風しんが 4 です。麻しんが 8.0 。
○宮崎委員 水痘が 2 ですね。
○加藤 ( 康 ) 委員 水痘が 4.0 です。
○加藤 ( 康 ) 委員 ムンプスが 4.0 です。
○小森委員 質問ですが、本当にセンターは大変素晴らしい対応をされたのだと思うのですが、質問は予防接種記録で最も確実なのは、母子手帳と。その活用等についていろいろな部会でも議論されていますが、予防接種記録の提出をされたということ、求めたということですが、ここには母子手帳のコピーの添付、あるいは母子手帳で確認して記入することを求められたのか、正に御自身の記憶で記載を求められたのか、どうなのですか。
○加藤 ( 康 ) 委員 これは記録を重視するという立場で、母子手帳については母子手帳のコピーを提出することです。あるいは、そのコピーを添付した医師の証明がある証明書であれば、それも可としています。
○小森委員 そうしますと、 100 %母子手帳等の添付、あるいはそれに類した書類が添付されたと、そういう認識ですか。
○加藤 ( 康 ) 委員 これはほとんど回収できないというか、入職前、あるいは、今ですと看護大学・看護学校ですとか、医学部で抗体検査を実施している機会が多くて、その結果をコピーして提出してくるのがほとんどではないかと思います。
○岡部参考人 4 ページの上のほうに医療センターで行われた後、職員の検査結果の所に、環境感染学会のガイドラインの基準のことを参照していただいているのですが、私と事務局のほうに座っている多屋先生とが環境感染のガイドラインの基準づくりに携わっていたので、少し申し上げておこうと思います。今、環境感染学会でのガイドラインはリバイスをかけているところですが、基本的には全ての職員に抗体検査をやろうということではなく、また行った場合にそれを基準にして接種する、しないというところを強調しているのではなくて、基本的には 2 回の接種歴の既往が大切であると。基本的には 2 回接種してくださいということが根本にあります。
ただ、それも先ほどから出ているような記憶ではなくて、記録のある 2 回接種であって、いずれにせよ、検査をしても、 2 回以上接種しても、どうしても抗体が上がっていないとか、そういう方はおられるのですが、徹底的にこの基準値を守ろうとすると、ずっと何回も何回もやらなくてはいけないことが出てきてしまったりするので、そこは便宜上のこともありますが、しかし一方では、ほとんどの場合は 2 回接種によって実際の感染は防げるということから、基準としては余り抗体価のみにウエイトを置いているわけではないということです。
環境感染学会のガイドラインの抗体の読み方が、一般に出てきたときに非常にきついではないかということもあるのですが、これは飽くまで医療機関における基準であって、一般の方とは、そこの部分は本人のリスクと患者に与えるリスクということで、もし抗体価を読むのなら、一般の方の場合よりも高めにと置いてあります。できるだけ年度内のうちにリバイスをしようとはしていますが、基本的な考え方としては変わっていませんので、一言参考までに。
○加藤 ( 康 ) 委員 岡部先生の御意見というか、私どもも予防接種は 2 回が基本であるというガイドラインのエッセンスは理解しているつもりでして、予防接種の 2 回記録を残すことを一番重要視しています。
抗体価に関しては、医療機関全員とするか、あるいは医療機関の中でも、例えば産科病棟については更にリスク分けをしていくというようなことを当センターの中では議論して、余り接種対象者が多くなってしまうので、医療機関の中でもリスク分けをするのがいいだろうということで、今やっています。
抗体価に関しては、医療機関全員とするか、あるいは医療機関の中でも、例えば産科病棟については更にリスク分けをしていくというような、そういった考え方もあるのかということを当センターの中では議論して、余り対象者が多くなってしまうので、そこら辺で少し医療機関の中でもリスク分けをしているのがいいのかということで、今やっています。
○岡部参考人 加えてですが、検査をやっていただいたほうが、もちろん科学的により明らかにはなってくるのですが、当然全ての病院が医療センターのような医療機関ではないので、多くの医療機関にとって応用ができる形で全てに検査をしてくださいというふうに言っている意味ではないわけです。
先ほど館林委員の御質問にもあったように、相当数の部分は検査によって解決がつきますが、非常に細かい議論に入っていくと、ちょっとした差でこれがあるのかないのかというところであったり、実際上は陰性に見えたようでも感染する可能性がないわけではないけれども、ほとんどの場合にリスクが排除される形で検査結果を読んでいるというふうになります。
○北原委員 海外渡航者のお話があったと思うのですが、企業側が海外へ渡航させる人に予防接種のお金を出す、出さないという基準を考えるときに、外務省の海外安全情報センターというページに感染症の情報があって、渡航時に推奨する予防接種のリストがあるのです。弊社の場合、そこに書き込まれてある予防接種についてはお金を出しましょうという基準を設けているのです。そこでアジア地域のところに風しんがあったかどうか、記憶が定かではないのですが、それがもしあるようでしたら、比較的企業側としては推奨しましょうということになりやすいかとは思います。
○五十嵐委員長 よろしいですか。次の資料 4 を事務局から御説明いただきたいと思います。
○氏家結核感染症課課長補佐 お手元の資料 4 です。「全米保健機関によるアメリカ大陸での風しん排除の取組」という観点で発表させていただきます。
この件については、第 1 回の委員会で小森委員から御指摘いただきまして、アメリカでの予防対策ということで、簡単に事務局でまとめさせていただきました。
これまでのアメリカ大陸における風しんと先天性風しん症候群の排除に対する取組ですが、 1994 年に、 2000 年までの麻しん排除目標を採択しております。その後、麻しんの対策の取組が始まった後も、 1998 年にはまだ、 13 万 5,947 例の風しんの報告がありましたが、その後、対策が進み、 2002 年には麻しんの排除目標が達成されました。
その翌年の 2003 年に、 2010 年までの風しん排除目標を採択し、取組の結果、 2006 年には 3,005 例の風しん報告まで減少しました。
ただし、翌年には、それまで女性のみを対象に予防接種を行っていた国を中心として、再流行を認めており、 2008 年から 2009 年にかけて、アルゼンチンやブラジル等を中心に、 27 例の先天性風しん症候群が報告されております。
これらの再流行に対しては、調査の強化と、成人 / 思春期の方に対する予防接種が実施されております。
次ページの上段です。南アメリカを中心に 2007 年から 2008 年にかけて各国において、成人や思春期層に対して、予防接種のスピードアップキャンペーンというものが実施されております。そのうちの幾つかの取組を下の表で示しております。
ブラジル、アルゼンチン、ボリビアについて記載したものですが、我が国と比べて異なる点としては、風しんの含有ワクチンが導入された年は、 1997 年から 2000 年と比較的、最近のことでして、 2007 年及び 2008 年においては、まだまだそういったワクチンを受ける機会がなかった方々が、たくさん残されていたという点で違いがあるかと思います。
キャンペーンの内容ですが、 15 歳、 思春期以降の方から、大体 30 代ぐらいの方を対象に、ワクチン接種のキャンペーンを行っており、接種率の所を見ていただくと、軒並み 90 %以上ということで、かなり高い接種率が記録されています。
関係機関の方に直接お話をお聞きしたところ等によると、この数字はキャンペーンの日にちをある程度決めて、とにかく人が集まるような場所、ショッピングセンターや駅、教会、イベント会場など、こういった所にモバイルクリニック等を設置し、対象となる年齢の方にワクチンを接種していくというような方法を取られたとお聞きしております。
一方で、ブラジル等では、ワクチンが接種禁忌となる妊婦にも接種を実施したケースが 20,000 例以上あって、それでも特に、先天性風しん症候群等の合併症を生じなかったということが論文となっているぐらい、かなり強いテンションで接種を行ったというような状況だと理解しております。
3 ページ目の上ですが、こういった取組の中で、 1993 年から 2008 年にかけて、接種数としては、 1 億 4,000 万人の方に 15 歳未満の小児にキャッチアップ接種、 6,000 万人の方に就学前の幼児に対しての追加接種、そして、 2 億 5,000 万人の方に思春期と成人の男女を対象に促進キャンペーンとしての補助的な接種を実施して、合計約 4 億 5,000 万ドース等のワクチンを接種したというような経緯があります。
こういった対策が奏効し、 2009 年を最後に、その後の風しんの流行と、先天性風しん症候群の報告はなく、 2009 年以降には輸入症例のみとなり、年間に 7 例から 15 例程度の報告が続いている状況です。
下はここまでお話した内容のものをグラフにしたものですが、 Speed-up campaigns と書かれているものが、成人を対象に行った予防接種のことで、このような取組によって、かなりの費用対効果も見られたというようなことが記載されています。
4 ページ目です。費用面についてですが、 2003 年からの 2010 年にかけて、トータルの費用として、ここに記載があるものは 20 億 US ドルの金額でして、南米全体で、すいません。 2 億 US ドルです。大体、日本円にして 200 億円程度かと思いますが、こういった費用総額となった背景として、聞くところによると、ワクチンの費用が、大体 1 本、 75 セントでキャッチアップ・キャンペーンを行ったとお聞きしており、日本の価格と比べて、かなりワクチンの費用が安い状況があります。こういった取組の経験を踏まえて、全米アメリカ保健機構では、排除に向け推奨される活動として、以下の内容を推奨しております。予防接種率が 95 %に満たない地域での予防接種の徹底と、質の高い追加接種キャンペーンの実施。リスクの高い集団に重点を置いた、感受性者層を特定するためのモニタリングの実施。サーベイランス制度の迅速な評価の実施と先天性異常の調査の強化。非流行地域における積極的調査の実施と調査の妥当性の検討。大人数が集まるイベントに対する注意喚起。私立の検査機関も含めた、検査ネットワークの確立。疫学と検査情報の統合と、遺伝子型検査の実施です。
最後、スライドで参考として、各国における風しんの定期接種開始年及び流行状況を表で示しています。上から順に、定期接種を男女ともに導入した年が早い順に、米国から記載してあります。
流行状況については、昨年 (2012 年 ) の WHO に報告された数を記載していますが、下の注意書きにもある通り、流行状況は各国の調査体制がそれぞれですので、一概に比較することができないというものでして、御注意ください。
一番上の米国を見ていただくと、 1969 年から男女ともに接種を導入しており、日本が 1995 年に接種を導入したことと比較すると、かなり早い段階から流行対策が開始されており、こういった違いも現状に影響を与えているものだろうと理解しております。
ただし、米国以外の国においては、男女ともに予防接種を導入した年は、大体、 1980 年代の後半からというのが一般的であり、日本以外にも、 1990 年代以降に、男女ともに定期接種を導入した国が多数あります。実際の流行状況についても、やはりヨーロッパの国々でも、麻しんや風しんの発生報告が続いているという状況です。
もう一つ、日本の流行と関連する事項として、日本が所属する西太平洋事務局においては、まだまだ予防接種自体を導入していない国や、流行自体が続いているという地域が多数残されていて、そういった国への渡航者の増加等も、今年の流行との関連性があると考えております。事務局からの発表は以上でございます。
○五十嵐委員長 それでは、ただいまの説明に対して、御質問、御意見はいかがでしょうか。
○館林委員 ありがとうございました。日本でも、 20 代から 40 代の男性が流行の中心だったのですが、そういう方に同じような対策というか、皆さんにワクチンを打つとすると、アメリカでは 200 億円でできたという話でしたが、どれぐらいの予算が必要になるのでしょうか。
また、ワクチンの値段は外国では、日本に比べてなぜこんなに安いのでしょうか。
○氏家結核感染症課課長補佐 御質問、ありがとうございます。日本の今年の流行の中心とされている 20 代から 40 代の成人の男女ともというと、人口としては、 4,800 万人の対象者に対して、 MR ワクチンを任意接種とする値段はそれぞれですが、平均的に 1 万円程度で接種が行われているという過程に基づくと、単純計算で 4,800 億円がの費用がかかると計算されます。
ワクチンの価格の違いについては、様々な要素が含まれていると思いますが、人件費や求められる品質の違いという側面もあるかもしれません。その価格の違いというのは具体的にどこからくるのかにつきましては、一概にはここで説明することは難しいと考えております。
○小森委員 ワクチンの価格については、構造的に幾つかの問題があります。ただ、今回の 1 本 1 ドルを切ってきている値段を付けているというのは、発展途上国に対する、特別なプログラムをメーカー等も各国と協力をしたということだと思います。
MR ワクチンの実際の値段というのは、納入価として、おおよそ 6,000 円ぐらいなのですね。そうすると、先ほどの委員の御質問に私が答える立場ではないかもしれませんが、 60 倍違うという現実があります。したがって、この部会とはまた別の基本方針部会等についても、ワクチンの適正な製品としての価格等については、国家としても、したがって、ワクチンは基本的に保険診療ではありませんので、保険診療に関する様々な医薬品等については、我が国は、様々な歴史的な変遷がありますが、公的な議論を経た上で、それが決定されているということから、おおよそ 10 年程度たつと、当初売り出された医薬品の値段は、 10 年から 15 年たつとかなり違ってきて、 2 分の 1 程度に下がってきます。
つまり、そういった力が予防接種の世界にはない、というようなこともあって、高止まりになっていることについての問題点、その費用の在り方についても基本方針部会で議論していますが、今、そのほかの様々な発展途上国に対する製品のクオリティ、製品そのもののトレーサビリティだとか、クオリティがどの程度保たれているかということについては、今、事務局が言われるように、私どももいろいろ調査をしますが、まだまだちょっと不十分なところは確かにあると思います。実に 60 倍違うという、現実のプログラムで、特別に採用されたのだと思いますが、そういうことになりますので、それをそのまま我が国で採用すると、今、 4 千数百億というお話ですが、いずれにしてもそういった額のプログラムになるということだと思います。
○五十嵐委員長 ありがとうございました。
○岡部参考人 すみません、参考人ですが、必ずしも今の現状を追認しているわけではないのですが、例えば、集団接種でするので、日本のような 1 本 1 本のバイアルではなくて、マルチバイアルを使っているとか、それから、 WHO がもともとワクチン 1 ドースにつき 1 ドル以下のものでやるというようなポリシーで、途上国向けに価格を設定しているということがあるので、一概に比較で何十倍という言い方が、なかなか難しいと思うのですね。それから、ドクターフィーの考え方や何かも違うので、そこに入ってくると思いますが、プログラム自体はその特別なキャンペーンのための価格で多分、設定だろうと考えられると思います。
○宮崎委員 PAHO の取組ですが、風しん単独ワクチンが使われたかどうかという確認と、 WPRO で風しんに関して本格的な議論が始まっていると思いますので、良い機会ですので、 WPRO としての方向性も聞かせていただければと思います。
○氏家結核感染症課課長補佐 南米の取組については、麻しんの対策が先行しており、その後、風しんの対策に取り組んだという背景もありまして、 MR 、麻しん・風しんの混合ワクチンが使用されていたと認識しております。
WHO 、そして、 WPRO( 西太平洋事務局 ) に対する取組については、まだまだ風しんのワクチン導入であるとか、混合ワクチンの導入が済んでいないような国も残されておりますので、そういった状況等を踏まえて、現在、どういった排除に向けた目標設定になるのかと、目標達成へのアプローチが具体的にどうなるのかということが議論されている段階であると理解しております。
○宮崎委員 そういう議論の中で、日本はリードできそうですか。
○氏家結核感染症課課長補佐 前回、宮崎委員から御指摘いただいたように、こういった日本での現状は、今後、周辺諸国でも起こり得る問題として、 1 つのモデルになり得ると理解しておりますので、こういった委員会を通じて、適切な対応ができるよう取り組んでいきたいと考えております。
○岡部参考人 先般、ポリオの会議にも出てきて、ポリオだけではなくて、一緒にほかの EPI 、つまり、麻しんや風しんも含むようなことも話題になるのですが、諸外国に比べてと一律に言っても、アジアの中では、わが国の風しんに対する対策が決して遅れは取っていないと思います。麻しんのときよりも、更に風しんは一歩進んではいますが、アメリカのような国から見ると、日本の風しんは何をやっているのだということになって、なかなかその比較が難しいと思うのですね。
WPRO( 西太平洋地域事務局 ) 全体では、とにかく麻しんの取組が優先事項なのですが、風しんに対しても、似たようなストラテジーで風しんの対策が取れてくるので、 MR 又は MMR をできるだけ導入をして、それで風しん対策を始めるようにとしています。やはり人口の多い所で問題になっているベトナムや中国などで、順次導入を始めているということで動きは出ています。
それから、風しんに対してエリミネーションということを掲げようとはしながらも、なかなかやはり、途上国における予算問題や、そこに対するドネーションというところから実施ができませんが、今の動きとしては、数年のうちにある程度の目標年を設定しようではないかという議論が起きています。
○五十嵐委員長 ありがとうございました。それでは、時間も押してきましたので、次にいきたいと思います。
資料 5 と、参考資料 1 と 2 を事務局から説明をお願いします。
○難波江結核感染症課課長補佐 まず、お手元の参考資料 1 を御覧ください。第 1 回の会議で、風しんの流行に関する数理モデルのようなものを出せないだろうかという御意見を頂いたことを踏まえまして、東京大学の西浦先生に、風しんの流行を抑制するためにどのぐらいのワクチンの接種が必要かを数理モデルで推計していただきました。本日は御都合により、参考人として御出席いただくことはできませんでしたが、この資料を御提出いただきましたので、事務局から読み上げさせていただきます。
1 番目の「目的」です。昨年から今年にかけて、日本国内に流行を起こした風しんの感染性を定量化すること。それにより、実効再生産数を人為的に閾値よりも下回らせることによって、集団免疫を達成することで、大規模流行を予防するために最低限必要な人口中のワクチン免疫者割合を推定すること。特に、年齢別・性別の割合の状況を分析すること、としています。下に、※の注意書きで、本報告書は数値的参考のために作成した暫定版であり、以下にあるように、風しんの基本再生産数値を文献値から引用して計算した結果である。また、本報告書は本年 6 月 20 日時点での流行状況を基に、流行を収束させるために必要なワクチン接種者数を推計したものであり、流行がない状況において、今後流行を起こさせないために必要な接種者数を推計したものではないことに留意いただきたい。このような注意点が記載されています。
2 番目に、用いたデータが記載されています。風しんの流行データ、流行予測調査、人口の推計値。それから、文献値で、基本再生産数は日本のデータから推定することが理想であるが、現時点では達成できておらず、英国で示されている 6.1 、基本再生産数 (R0) 、 R nought 、これに 6 を用いて、感度分析で 4 と 8 も検討しています。
3 番目の「方法」はかなり技術的なので割愛させていただきます。
4 番目は「結果」です。 3 ページの表 2 に、実効再生産数 R が 1 未満、これを下回ると流行が抑制されるとされており、これを達成するために必要な最少ワクチン接種割合を示しています。縦軸が基本再生産数 (R0) の場合分けです。 6 が文献的に言われている数値ですが、 6 とした場合に、ランダムの全人口の接種率が 38 %程度、男性のみであれば 43 %程度、女性のみでは制御不可能。成人男性の 20 ~ 40 代であれば 83 %、成人男女 20 ~ 40 代の均等接種であれば 70 %程度の接種率が必要となる。 R0=5 であれば、もう少し下であり、成人男性の 20 ~ 40 代で 51 %、男女 20 ~ 40 代で 46 %程度の接種率が必要という結果となっています。
4 ページの真ん中の表 3 に、これを人口数で示したものが記載されています。 R0=6 として、成人の男成 20 ~ 40 代のみであれば 2,000 万人程度、成人男女 20 ~ 40 代であれば 3,400 万人程度。 R0=5 とした場合には、 1,200 ~ 2,200 万人の接種者数が必要という推計になります。
「考察」です。本稿では、必要再生産数の参考資料として暫定版の計算結果を提示した。以下の 3 点を強調しつつ議論しておきたい。 1 点目。やみくもな接種よりも接種対象を限定したほうが効率的な予防が可能である。特に、ワクチン総数が限られている環境下で、集団免疫の達成を目標に据えるならば、その接種対象は全人口あるいは全成人などではなく、免疫保持者が目立って少なかったり、接種によって効果的な集団免疫の達成が期待できるような性・年齢群に集中したほうが能率的である。
2 点目。本稿の理論は集団免疫の逮成を第一の目的としており、本研究結果は 2013 年 6 月までの流行動態を反映した観察データに基づく分析結果であり、それは風しんの流行が上昇中の時点でのデータ分析結果である。流行が下火となる、例えば東京都内で流行が減少に転じたことが明らかな場合、当該土地においては、既に集団免疫を自然に達成したこと又は季節性の変動の影響によって流行が下火になっていることで、その後のワクチン接種の実施による流行抑制・阻止効果は、流行上昇中と比較して限られたものにとどまる。特に、風しんは CRS の発生が問題とされており、集団免疫及び個別予防のどちらの観点から考えても、出産可能年齢の女性の接種が重要となる。特に集団免疫効果が十分でない場合には、個別予防の重要性の重みが増す。集団免疫の達成を第一の目的としない場合又は集団免疫を十分に達成することができない場合などの一定の条件下では、 CRS の最小化などの他の命題の下で接種戦略の最適化を図るべきである。
3 点目。集団免疫の意味。集団免疫を達成し、実効再生産数が 1 を下回ることは「大規模流行が起こらない」ことを科学的に保証する。しかし、それは小規模流行を防ぐものではなく、常に地理的な感受性ポケットが集中する場所など、一定の条件下で小規模集団発生は起こり得る。また、冒頭の留意事項の再掲となるが、本報告書は本年 6 月 20 日時点での流行状況を基に、流行を収束させるために必要なワクチンの接種者数を推定したものであることに注意を要する。
なお、本稿においては産科ガイドラインに基づき、妊婦に求める HI 抗体が 1:32 を免疫保持者としたが、実際の発症予防や伝播予防には、これより低い抗体価で集団免疫が達成できると考えられる。その場合、流行の制御に求められる接種者数は更に上乗せとなることに留意が必要である。
また、教科書的には、風しん流行抑制の集団免疫は 85 %程度であることが言われているが、これは 既感染者や既免疫保持者・人口密度、人口の流動性等を考慮せず、全人口が免疫を持たない状況で R0=6 であることを前提に、小児を対象とする定期接種を念頭に計算されたものである。流行途中に緊急的接種を実施する場合や成人に対する接種を行う場合は、流行動態の状況に基づいて接種計画を練る必要がある。以上です。
○氏家結核感染症課課長補佐 続いて、資料 5 について説明いたします。お手元に御準備ください。「発生の予防とまん延の防止について」です。
まず、日本で使用されている風しんワクチンの有効性に関するデータです。国内のワクチンは 3 種類あり、ウイルス株も Takahashi 株、 Matsuura 株、 TO-336 株 ( タケダ ) の 3 種類が使われています。海外でのデータ等を見ますと、 TO-336 については、海外で一般的に使用されている RA27/3 よりも僅かに高い抗体産生能を示したとする報告があります。また、予防接種後の長期の抗体保有が報告されています。予防接種により獲得された液性免疫は次第に漸減するものですが、風しんは潜伏期が 2 ~ 3 週間と比較的長い疾患なので、細胞性免疫の働きが期待できるため、 2 回目の予防接種は不要であるかもしれないといった議論があります。ただし、麻しん対策の観点からは、就学前に 2 回の接種が望ましいという報告もあります。
2 ページを御覧ください。抗体保有率を感染症流行予測調査の報告書に基づいて作成したものです。黒い太字の所が HI 抗体価 8 倍以上を保有している方の割合ですが、 1 回の接種を受けた方では、約 95 %程度の方が免疫を保有している状態です。 2 回接種した方については、 HI 抗体価 8 倍以上の割合が更に高まることが見て取れまして、約 99 %の方が抗体を保有できるということです。実際の感染者報告の中でも、風しんを発症した方の予防接種歴を見てみますと、男性であれば、 1 回接種歴がある方が大体 4 %、 2 回接種歴がある方が 1 %で、ワクチンを受けても一定の割合で抗体が十分に保有できないこと等により風疹を発症される方がいらっしゃるということですが、 1 回よりも 2 回の接種で高い確率で抗体が保有できると考えています。
3 ページの上段を御覧ください。これは、 2010 年の流行予測調査の結果と人口動態統計から、単純に人口を感受性者の割合で掛けて足したものです。 0 ~ 50 歳未満の方の中での推定の感受性者数ということで、免疫をまだ保有していない方は全国で 650 万人以上いらっしゃるだろうと推定できる状況です。
3 ページの下の所は、特に予防対策が必要な方々についてです。 CRS 予防の観点から、妊娠を希望する女性、それから、十分な抗体を保有していない妊婦に接する機会が多い方々。例としては、その家族、児童福祉施設等の職員、学校等の職員等が考えられると思います。また、別の観点として、風しんに罹患すると重篤な合併症を引き起こす、体力の弱い方々等と接する機会の多い方々。例としては、医療関係者等が考えられると思います。また、先ほど加藤 ( 康 ) 委員から御指摘があったように、風しんウイルスの流入・流出に関連する方々として、海外渡航者等が考えられ、こういった方々には特に予防対策が必要であると考えられるため、より確実に免疫を保有していることが望ましいと考えています。いかがでしょうか。
続いて、 4 ページです。先ほど館林委員から御質問がありましたが、抗体価の一般的な解釈を記載しています。抗体 HI 法に関しては、 8 、 16 、 32 、 64 と、倍々で上がっていく、希釈していくものですが、 8 倍未満の定義としては免疫を保有していない状態です。これが 8 倍以上、特に 8 倍、 16 倍等に関しては、過去にウイルス感染若しくはワクチン接種によりばく露を受けて免疫を産生している状況でして、ウイルスに感染しても自分の持っている免疫反応により風しんの発症を予防又は軽症化できると考えられています。これが、更に高い 32 倍以上になりますと、同様に、過去のばく露によってウイルスを保有しているのですが、その免疫の濃度が高いことで、即座の免疫反応が期待でき、感染による影響を最小限度にとどめることができると考えられています。これが免疫保有の濃度から見た観点ですが、実際の臨床においては、どれぐらいの量のウイルスをばく露したのかや、実際に免疫を持っている方の基礎疾患など、発症のリスクと一口に言っても、軽症から重症までありますので、どのレベルの発症なのか、こういった定義によって発症頻度は様々になるというのが現状だと思います。
最後に、予防接種の接種基準について、事務局から提案させていただきたい事項です。一般に、風しん含有ワクチンの接種歴、若しくは風しんの確実な既往歴がない方々、又は、検査の結果、風しんに対する免疫を保有しないことの判明した方々が、予防接種により免疫を獲得することが最重要であると考えられますが、いかがでしょうか。また、免疫保有者のうち、妊娠を希望する女性など感染の影響を最小限度にとどめる必要性がある方々については、より高い免疫 ( 例としては HI 法 32 倍以上等 ) を獲得することが望ましいと考えられますが、いかがでしょうか。
参考資料 2 は、第 1 回の委員会でも提出した資料です。厚生労働省が今回の流行について、特にリスクの高い方々、対策が必要な方々に対象を絞って、従業員、職域での予防対策のためのリーフレット。それから、婚姻届を出されるような方々、結婚をされた方々に対する情報提供のリーフレットを作成しています。
特に、職域の『事業者の皆様へ』として、検討をお願いした事項は次の 4 点です。 1 、従業員が予防接種のために医療機関などの受診を希望した場合には、御配慮ください。 2 、入社時などに予防接種の記録の確認を本人に呼び掛けるようにしてください。 3 、職場での感染予防のため、風しんに罹かった人の休暇について御配慮ください。 4 、従業員に対する風しん抗体検査の機会を設けるよう御配慮ください。こういった資料についても今後の議論の参考にしていただきたいと考えています。事務局からは以上です。
○五十嵐委員長 特に、予防接種対策が必要な方々など予防接種の接種基準についての提案、また、『従業員の皆様等へ』で企業へのいろいろな案内等についても厚生労働省の事務局から提案を頂きました。これから社会全体で取り組むべき風しん対策の在り方について御議論いただきたいと思いますが、その前に、企業側から、どういう対策を取っているのか、藤原委員と加藤 ( 篤 ) 委員から御紹介いただきます。その後、事務局の提案また企業の対策も含めてディスカッションしたいと思います。よろしくお願いします。
○藤原委員 まず、事業者の労働安全衛生法上の原則のようなことをお話して、それから、今の取組についてお話したいと思います。事業者においては、労働安全衛生法上、快適な職場を提供するとともに、職場における労働者の健康を確保することが求められています。その一方で、労働者個々人の健康管理については労働者自身が主体的に行うことが基本として据えられています。つまり、企業側と従業員側の双方が健康管理について責任を持ちながら取り組んでいくというのが原則です。
そういう原則に基づいて、風しんに関する対策がどのように取られているか、どのように考えているかを説明いたします。先ほどの参考資料 2 のようなパンフレットなどを使いながら、罹患した場合には休暇を取得しなさいとか、ワクチンの接種を勧奨するということは各職場でかなり行われています。少なくとも私どもが普段からお付き合いしているような大企業においては、確実に行われていることは分かっています。ただ、現在の法体系の中では、風しんは数ある 5 類感染症の 1 つであり、それは結局、私病傷の範疇であるので、事業者としては、職域での蔓延防止のために、先ほど申し上げた労働安全衛生法に基づき、罹患した労働者に対して就業禁止を求めているという状況です。ただ、 5 類感染症の一時的な流行に対して、中小・零細企業まで含めて一律にそれ以上の特別な対応を課するというのは余り現実的ではないのではないかと考えています。
また、労働安全衛生法上、事業者には労働者に対して健康診断を受診させることが義務付けられています。その目的は、経年的に健康状態を把握して、就業の可否、適正配置を実施することにあり、風しんの抗体検査等を行うことについては本来の目的からは乖離していることになると考えています。ただし、先ほども説明がありましたが、雇入れ時に健康診断をするときに本人への記録の確認を促すことは十分に可能なのではないかと思っています。
事業者の対策としては、職域での拡大防止、また、予防のための周知啓発活動が非常に重要だと思っています。先ほどの参考資料 1 、西浦先生の資料の 4 ページの「考察」の 1 点目にありますように、接種対象を限定した効率的な予防が重要なのではないかと思います。職場での啓発活動でも、漫然と全社員に対して風しん対策が必要だと説くよりは、ターゲットを絞った啓発活動をすることによって、対象となる社員の意識もかなり高まるのではないかと思っています。つきましては、参考資料 2 と先ほど説明のありました職場での配布用のパンフレットは、これはこれで有り難いことですし、基礎的な情報を得る上でも大切ですが、むしろもう少し接種対象を限定した働き掛けができるような工夫をしていただいて、併せて産業医の皆様等への周知もしていただくと、事業所での啓発活動がより効果的になるのではないかと考えています。
○五十嵐委員長 続いて、加藤 ( 篤 ) 委員からお願いします。
○加藤 ( 篤 ) 委員 中小企業関係を代表しています中央会です。藤原委員のお話は、企業の流れとして、中小企業を範疇としている組織としても基本的に同様に考えています。いかんせん、規模の問題、また、全国の末端事業者までいきますと、なかなか私どもから情報が流れていかない部分が多いのです。労働安全衛生法の関係等で産業医がいる 50 人以上の規模の所は対応していくことが当然だろうと思いますが、それ以下の事業者は全国にまだまだ小規模事業者は数百万あります。例えば、数人でやっていらっしゃる商店や町工場などで、必要に応じて臨時の従業員を雇用される所もあろうと思いますが、そういう所に対して、いかに周知徹底を図っていくかが大きな課題だと思っています。
私どもの組織としては、業種・職域別に、地域ごとに協同組合組織等を作っていただいていますが、これらを通じた経営指導等の中で職員・従業員の方々の健康に関する指導・支援をしていきたいと考えています。ただ、風しんのワクチンは、どうしても経費の問題、また、検査をするだけでもそれなりに手間や、従業員に休暇を与える等の問題等を考えますと、何らかの支援をお考えいただく必要があるのではないかと思っています。参考資料 2 のような情報を、私どもや県レベルの指導団体等で更にブレークダウンして、告知・啓発普及につなげたいと思っていますが、より分かりやすい形で末端まで届くような工夫をお願いしたいと感じています。
○五十嵐委員長 企業での対策の実態が簡単ではないというお話を頂きましたが、それも含めまして、先ほど事務局から提案された、予防対策が必要な方々のリストや予防接種の接種基準を中心に議論していただきたいと思います。御意見いかがでしょうか。
○大石委員 私ども感染研でも、職域における風しん対策の手引を準備しているところです。参考資料 2 に基本的なことが記載されていて分かりやすいのですが、手引の中では、一般の人でも風しんや麻しんがどういう病気なのか、成人の風しんの写真などを載せた上でよく説明したいと思っています。先ほど藤原委員が言及されました、接種対象者を絞り込めるような説明ができるようにと思っています。
もう 1 点は、加藤 ( 篤 ) 委員がおっしゃったように、従業員が 50 人以下の産業医がいない事業所が一番難しい問題ではないかと認識しています。そういった事業所にも、風しん対策の手引を作成すれば、これを利用していただくことは可能だと思います。できれば、ホームページ等でお示しして、ダウンロードして利用できるものにしたいと考えています。また、手引の作成に関しましては、産業医の北川委員、加藤 ( 篤 ) 委員、藤原委員など、いろいろと御協力いただきたいと存じております。
○小森委員 この小委員会に、藤原委員、加藤 ( 篤 ) 委員が御参加されているのは大変意義があることだと思っています。特に CRS のお子さんを 0 にしていくために、そういった方々の年齢層が社会の一員としてそれぞれの事業場等で活動されている実態を踏まえますと、事業場において抗体検査あるいは予防接種の実施に積極的に関わっていただくことは、風しんのエリミネーションにおいて極めて重要だと思っています。抗体検査と予防接種などの費用については公費で賄うべきだということを日本医師会として常々主張しています。今のお二人のお立場は十分に理解できますので、今日は当面の課題を言われましたが、次回でも結構ですが、ここまではできるというか、そういう前向きな御意見も是非お聞かせいただきたいと思っています。パンフレットの配布だけでは、これは 0 にならないことは明らかです。産業医を配置している大きな事業場等については、事業場等における抗体検査、また、接種を積極的に考えていただくきっかけとして、我々も協力してまいりたいと思います。小さな事業場になりますと、その事業場での抗体検査、予防接種はなかなか難しい問題だと思いますし、それぞれ零細な経営環境の中で大変厳しいことは理解できますが、少なくとも休日・休暇、そのことに対する社内の雰囲気と言いますか、トップが「是非行ってこい」と言うのと、「えー、行くのか」というのでは、従業員の方は弱い立場ですから行きにくいので、そういった雰囲気づくり、そのことに対して、パンフレットを我々も協力して配りますという以上の御意見を次回には是非、また、御検討いただいて、いろいろなアイディアを現場から出していただきたいと思います。
○平原委員 とりわけ、今回の流行は職域でうつられた方が多かったというのが特徴だったと思います。全職域、日本中の全職場でするという、全国民に向けてのワクチンができればもちろんいいのですが、最少限のエネルギーで最大効果を生むようグラデーションを掛けていくと、恐らく、妊娠世代の女性のいる職場がまず優先なのです。そこの人たちにワクチンを打ってくださいというのが第 1 優先順位だと思います。その次が、男性だけの職場にしても、家に帰ると奥さんが妊娠するような世代がいるような人たちというのが、グラデーションが掛かってくると思います。現時点で、国民全体に向けてのエリミネーションができるというのは、それは膨大な予算が掛かるというのは分かりますので、職域の中でも、産業医の方たちを中心にして、そういった優先順位をある程度掛けていただきながら、より効率の良い施策をしていただくような方策がいいのではないかと思います。
一方で、産婦人科学会、医会とも、産科医の動員を掛けてでも、まだまだ受けていない妊婦さんたちが多いので、夫婦への啓発の努力をしていく。それも是非国からも後押ししていただきたいと思います。
○館林委員 少し話が逸れますが、素朴な疑問です。先日の生殖医学会で、不妊治療の施設が妊娠前の女性にワクチンを打って、その後の抗体を検査した結果、日本産科婦人科学会の指針にあるような 32 倍以上になった人が余り多くなかったという発表がありました。 32 倍以上で切ると後で現場が混乱するような気がするのですが、先ほど岡部先生が、 2 回打つことが大切だとおっしゃっていましたが、これを一般の人に分かりやすいように、妊娠前の女性が、打った後に抗体検査をして 32 倍以上とするのか、付かなければもう 1 回打てばよいなど、科学的な線引きをしていただけると有り難いと思います。
それから、私も働いている労働者ですが、会社を休んで抗体検査や予防接種に行くのはつらいものがあります。可能であれば、健康診断のときに予防接種が打てるように、強制ではなく個人の判断でいいのですが、お金もありますが、時間も節約して、スムーズに打てるような仕組みがあるといいと思います。巡回診療などといって、自治体によってはそれは許可されないようですが、その辺はどうなのかと思いました。
○五十嵐委員長 御要望ですね。ほかに、どうぞ。
○調委員 抗体価を調べて、抗体価に基づいてワクチン接種をしていくことがやはり前提になると思いますが、その際に、一般の人、妊娠可能な年齢の女性、それから、医療機関の方々、こういう方々について、それぞれはっきりした基準をこの指針の中に数値として入れ込むことになるのでしょうか。
○五十嵐委員長 質問ですか。
○調委員 それが良いと思うのですが。
○五十嵐委員長 明記してくださいということですね。
○調委員 はい、そうです。
○加藤 ( 康 ) 委員 抗体価の議論ですが、 32 倍、感染を予防するレベルというのは、ウイルスが増殖しない高いレベルで、 8 倍、 16 倍というのは、発病を予防できる。 2 つのレベルを見ていると思いますが、これを議論する前提として、国際的な基準があるのかないのか、私自身は知りたいと思っています。中和抗体法というゴールドスタンダードとされる方法で、レベルがある程度もう出されているのかどうかを確認しておく必要があると思います。
○五十嵐委員長 これはいかがですか、竹田委員は御存じですか。
○竹田委員 ちょっと把握していません。
○宮崎委員 よろしいでしょうか。
○五十嵐委員長 どうぞ。
○宮崎委員 風しんの中和抗体価は非常に面倒な測定法、干渉法という方法でしか測れないので、世界的にも余り中和法は基準にはなっていないと思います。それから、やはりマスで考えると、抗体検査を丁寧にやっていくというのは、実を言いますと例えばアメリカでもやっていません。それも手間ですので。ですから、基本はワクチンをきちんと打っていくということが大事です。今回、先ほどグラデーションの話が出ていましたが、重点、ハイリスクというのがはっきりしているのですから、そこに集中してやっていくときに、抗体検査もうまく組み合わせていくというのは賢いやり方だろうと思います。余り抗体だけでものを考え過ぎると止まってしまうところがありますので、抗体検査をうまく利用しながら、結局はワクチンを接種しないと感受性者は減らないという原則を踏まえておく必要があると思います。それは、まず CRS を 0 にしていく。そして、風しんの排除ということをそのすぐ向こうに見据えて、できるところからとにかくやっていくということだと思います。グラデーションを付けていけば、比較的少ない費用で CRS を実質的に 0 に近付けることは可能です。
ただ、それだけでは今年ぐらいの規模の流行は相変わらず起こる可能性があります。例えば、感受性者の推計は 600 万人を超えていますが、今年の流行でたかだか 1 万 5,000 人しか罹かっていないわけで、あとの 600 数十万人の感受性者がまだ残っている。そういうものが風しん流行です。やはり、ここは腰を入れて排除に向かっていくという基本的な国のスタンスがないと企業も動いてくれないだろうと思うのです。
先ほどの経団連のお話で、記録の確認は可能であると。また、定期健診に抗体検査を入れるのは趣旨に合わないとおっしゃいましたが、例えばその抗体検査の費用の手当てが公的にできれば企業としては何のプラスαの費用負担は要らないのです。その辺の、抗体検査の費用あるいはワクチン接種費用も、全額なのかどうかは別として、何か補助が出るというのは、それは自治体がやろうが企業がやろうが、極めて大きなアナウンス効果が出てきます。そういうところに一歩踏み込む。やはり、一般的な接種勧奨だけでは風しんはなかなか終わらないというのが、この何十年かの私の経験です。
○竹田委員 短期的には、集団免疫を完全にするのは難しいということだと思いますが、余り触れられなかったので、長期的には、今の 1 期、 2 期の MR ワクチンの接種率を維持することで集団免疫が完全になりますので、是非、風しん指針でもそこを強調していただきたいと思っています。
○五十嵐委員長 それは大前提だと思います。
○北原委員 職域で抗体検査なりワクチンなりという議論は非常に理解しやすいのですが、では、産業医がいる所ならばできるのかと考えると、それは、産業医の気持ちだけではいけない。実際に抗体検査をしましたと言っても、その後の事後措置がなければ、効を成さないわけです。職域であれば何でもできる、そこに集団があるから何でもできるということではないと思います。先ほども言いましたが、地域で感染している、その中に職域があるので、事業主がやるべきことかどうかについては若干疑問がある問題ではないかと思います。ただ、職種に限って、そこは各事業主が考えるべきではないかと思いますので、一律に事業主がやるべき、職域がやるべきだという問題ではないのではないかと思います。
○宮崎委員 事務局に質問です。西浦先生の、参考資料 1 の 5 ページの最後から 2 番目のパラグラフに、「 1:32 以上を免疫保持者としたが、実際の発症予防や伝播予防にはこれより低い抗体価で集団免疫が達成できると考えられる」とあり、私もそう思っています。その次なのですが、「その場合、流行の制御に求められる接種数は更に上乗せになることに留意が必要」と書いてありますが、これが分からないのです。
○難波江結核感染症課課長補佐 これは恐らく、今の流行のデータと流行予測調査の抗体保有率を基に、今の流行が 32 倍以下の人で起きているということを前提に数理モデルを作ったので、実は今起きている流行はもう少し低い抗体価の保有状況でも起きているかもしれない、全員が 32 倍持っていない状況においても起きているかもしれない。そうすると、 32 倍で見ると 80 %とか 70 %の接種率が必要だけれども、実際はもっと高い抗体価だけれど今の流行が起きているとすると、更に高い抗体価を得るためには接種者数が上乗せになる、という意味で出しているものだと思います。
○宮崎委員 理論は分かりましたが、逆に言えば、少し低くても流行が抑えられれば、対象者が絞り込めるという考え方も、なくはないですね。
○難波江結核感染症課課長補佐 絞り込みという意味ではそうですね。ランダムに打つ場合には、ということです。
○宮崎委員 分かりました。
○竹田委員 先ほど抗体価の質問がありましたが、私も、婦人科で何度打っても 32 倍に到達しない、そういう人はどうしたらいいのかという質問を受けます。私は、何回かしっかり打っていれば HI 価が 32 になっていなくてもきっとプロテクトされると思っています。その辺は平原先生の所で何らかのガイドを出していただけるのではなかろうかと思っています。
○宮崎委員 ワクチンを打って抗体価が高く上がる方と、それほどでもない方がいるのです。低い抗体価の方は年数がたつと下がりやすくて、時には陰性になる方もいます。そういうときに、追加を接種しますと 1 週間でポンと抗体価が上がりますので、やはり免疫は残っている。ただ、その抗体価もまた落ちやすくなるのです。ですから、なかなか抗体価だけで議論するのは難しいということがあります。私も竹田先生の御意見には基本的にはそうではないかと、つまり、 2 回以上打っていれば大丈夫ではないかと思っている 1 人ですが、証明のしようがないのでなかなか難しい。もちろん、これは CRS に限ったことで、集団の大きな免疫のときには余りこういうことは問題にならないのではないかと思います。
○氏家結核感染症課課長補佐 指針の策定に当たって、事務局からの提案について確認させていただきます。宮崎委員からも御指摘がありましたように、抗体価だけでの議論をすることは難しいところですが、抗体価も含めた対策が必要になってくると理解していますので、事務局から提案させていただいたような、まず感受性者をできるだけ少なくしていくことが第 1 優先事項であるという点。それから、妊娠を希望する女性等の感染による影響を最小限にとどめる必要がある方々につきましては、更に高いレベルでの免疫を保有することが望ましいという点につきまして、この案の内容に問題がないかどうかを確認させていただきたいと思います。
○五十嵐委員長 資料 5 の 4 ページの下の段の所ですね。これについて、特に御意見ございますか。
○平原委員 先ほどから出ていましたが、ワクチンを打って、また下がってくるというのは、我々の所でも妊婦さんがお産の後にワクチンを打つと、次の妊娠のときに下がってくるという方がかなりいらっしゃいます。ですから、 32 倍が望ましいとここに出ていますが、確かにそのとおりで、下がってくることもあるということを踏まえて考えないと、みな 32 倍ないといけないことになりますと、なかなか難しいところがあろうと思います。
○宮崎委員 この最後の所は読みようによってはまだ幅があると思いますが、先ほど言いましたように、抗体価が判明した人だけに限定するのかどうか。それを確認しようとすると、 4,000 万人全部を測るのかという話も出てきてしまう。抗体がない人に埋めていくという、基本はそのとおりだと思いますが、手法的にはいろいろな組合せが必要だろうと思っています。
○氏家結核感染症課課長補佐 御指摘いただきました点について、資料の前段にもワクチン接種歴がある方の予防効果を示していますが、加藤 ( 康 ) 委員からも御指摘があったように、接種歴が確認できること自体をもって、ある程度高い確率で抗体を保有していることが考えられます。免疫を持っているという点については、免疫を保有している割合という観点と、濃度という観点の 2 つの観点があると理解していますので、感受性者を減らしていく方法としましては、予防接種歴も 1 つの考え方として組み合わせながら検討していく必要がある事項だろうと認識しています。
○五十嵐委員長 大体議論が出尽くしたようですので、これまで委員から御指摘いただきました様々な御意見については、事務局で指針内容に反映していただくことにしたいと思います。必要に応じて、次回以降の委員会でもこの点については再度取り上げる所存です。
これで時間がきましたので終わりにしたいと思いますが、全体に、何か追加したい御発言がある方はいらっしゃいますか。
○宮崎委員 海外渡航の話がありましたので、外務省なり厚生労働省のホームページをもう一度確認してください。年末は人間がたくさん出て行きますので、風しんに限らず、日本脳炎なども、国はホームページで、積極的に打ちましょうという書き方をなかなかしていません。ワクチンがあることは書いてありますけれども。法律ではありませんから積極的勧奨とは言えないかもしれませんが、海外渡航前について、もう少し踏み込んだ書き方をしてもいいのではないかと思っていますので、一度見ていただきたいと思います。
○五十嵐委員長 よろしいですか。少し時間が超過してしまいましたが、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
○難波江結核感染症課課長補佐 次回の開催の案内です。次回は 12 月 19 日 ( 木 )10 時からを予定しています。正式な開催通知は後日お送りいたします。ありがとうございました。
※ (注)
小森委員の任期が、平成25 年10 月18日に満了していましたが、再任命の手続をとらないまま、同委員出席の上、審議会を開催しました。
議事の定足数については、当該委員を除いても、委員及び臨時委員の過半数が出席していたため議事は成立しています。なお、今回の会議においては、議決を行っておりません。
また、今回の会議においては、当該委員は、参考人として取り扱われます。
詳細については、以下のリンク先を御覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000040328.html
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(風しんに関する小委員会)> 第3回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び 厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会議事録(2013年11月19日)