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2013年12月11日 第81回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成25年12月11日(水)14:00~15:30


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
井伊委員 今村委員 江藤委員 大澤委員
川越委員 菊池委員 桐野委員 塩見委員
玉腰委員 橋本委員 福井委員 松田委員
宮田委員 門田委員 山口委員 山田委員
渡邉委員

○議題

1 平成26年度厚生労働科学研究の公募について
2 ヒト幹細胞臨床研究について 
3 報告事項

○配布資料

資料1 厚生労働科学研究公募要項(案)
資料2 第3次対がん総合戦略研究事業の事後評価について
資料3 ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料4 戦略研究の追跡評価について
参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2 平成26年度厚生労働科学研究の全体イメージ
参考資料3 新たな医療分野の研究開発体制について
参考資料4-1 総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について
参考資料4-2 がん登録等の推進に関する法律
参考資料5 ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料

○議事

中山研究企画官 
 それでは定刻になりましたので、ただいまから、第81回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。本日は3名の委員から御欠席の連絡を頂いております。委員数21名のうち、出席委員は過半数を超えており、会議が成立することを御報告いたします。

 本日の会議資料の確認をお願いしたいと思います。まず、議事次第と座席表がありまして、その下に資料1「平成26年度厚生労働科学研究公募要項()」です。資料2「第3次対がん総合戦略研究事業の事後評価について」です。資料3「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」です。資料4「戦略研究の追跡評価について」です。さらに参考資料1から5までですが、44-14-2があります。資料の不足等がありましたらお申し出ください。

 それでは、永井部会長、議事の進行をお願いいたします。

永井部会長 
 それでは、平成26年度厚生労働科学研究委託費の公募について、御審議をお願いいたします。事務局より、資料の説明をお願いします。

中山研究企画官 
 議題1について御説明いたします。厚生労働科学研究の公募についての議題です。前回も厚労科研費の公募についてを議題とさせていただきましたが、その違いについて、まず説明させていただきます。

 これまでも何度か説明しましたとおり、今回の厚労科学研究費については、新たにできる新独法一元化対象経費と呼ばれるものと、それ以外のも のに分類することになっております。その違いは、前者が医療分野の研究開発を対象としているのに対して、それ以外のものは、いわば、行政施策に密接に関係 しているようなものということかと思います。前回の部会では、その行政施策に密接に関係しているような研究についての審議を行っていただきました。

 新独法の一元化対象経費による研究の部分については、これまで内閣官房の健康医療戦略室を事務局として、医療分野の研究開発に関する総合戦略と いうものが検討されており、その内容が前回の部会の段階では明らかになっていないという状況だったため、前回は公募においては議題とせず、見送っていたと いう状況です。

 総合戦略については、正式には年が明けてからできるという予定になっておりますが、それを待って部会審議、公募手続開始となると、非常に時 期が遅れてしまい、課題の採択の決定が大幅に遅れてしまう懸念がありますので、現時点で総合戦略のたたき台の内容というのが何度か議論され、骨子の部分と いうか、たたき台としてですが、明らかになってきており、この時点で厚労省の厚労科研費の公募開始の手続を開始したいという状況になったということです。

 この科学技術部会の御了承を頂ければですが、年明けにも公募を開始する予定で、一部の課題については、年内に前倒しして開始するということも目指しております。

 資料1が公募課題についてですが、これは個別に見ると数多くの課題になっていますので、参考資料の2を御覧ください。裏のほうから話をさせていただきます。今申し上げたとおり、厚生労働科学研究費の概算要求額は511億円です。医療分野の研究開発に関する研究費ということで、右上の部分ですが、新独法対象研究事業として、408億円になっております。今回は、ここの新独法対象事業の部分についての公募を開始をしたいということになっております。

 この研究経費全体を見ていただくと分かるとおり、これまでの厚労科研費と同様に、厚労省が進めている医療分野の施策全般と関係する、研究開発の部分の研究事業が網羅されています。

 厚労科研費については、おおむね3年計画で実施することになっており、今年で3年目を迎えるものについては来年度から新規に採択することになるので、資料1については、新独法対象研究事業のうち、今年3年目を迎えて来年新規に採択課題となるものを挙げていると考えていただければと思います。

 参考資料2と書いてある表を見ていただくと、これは前回にも説明いたしましたので復習になりますが、新独法一元化対象経費として、どのような規模になっているかということです。概算要求の段階ですが、新独法一元化対象経費は、文科、厚労、経産を合わせて1,382億円ということになっております。平成25年度が1,012億円ですので、いわゆる要望額と言われているものを上乗せした形の概算要求ということですが、1,382億円規模の要求になっています。これについては年末に、財務省からどの程度が付くかという決定がされます。

 その下のを御覧いただくと分かるとおり、上記の経費に加え、内閣府に計上される科学技術イノベーション創造推進費が約500億円ありますが、その一部をこの医療分野の研究開発関連予算として、調整費で活用するということになっております。

 来年度予算要求については、概算要求の段階から内閣の推進本部、事務局については内閣官房の健康医療戦略室ですが、一元的な予算要求配分を 調整したところが新しい取組になるかと思います。その中で、厚労省、経産省、文科省が連携して取り組むプロジェクトが置かれたことが新しい所だと思いま す。その主な取組の所で書いてあるのが、各省の連携のプロジェクトということです。

 来年は新独法はまだないので、再来年度からとなりますが、こうした各省連携プロジェクトについては、来年度から前倒して一体的に推進することになっています。

 今回、厚労省として公募するのは、こうした各省連携プロジェクトに含まれるものもありますが、その他にも、厚労省として重要な研究課題がありますので、そうしたものも当然含んでいることになります。

 資料1、次ページを御覧いただくと、本公募の対象研究事業が並んでいます。冒頭にも申し上げたとおり、厚労省施策の医療分野全般に係る研究開発事業が網羅されています。

 内容の一つ一つは時間がないので簡単に申し上げると、例えば、再生医療実用化研究事業では、各省連携プロジェクトである再生医療ハイウェイ 構想がありますが、その臨床研究部分を厚労省としては推進する研究を行っております。さらに創薬基盤、医療機器開発とか、あるいは医療技術実用化事業があ りますが、こういったものは医薬品とか、医療機器、更には医療技術の実用化に資するような非臨床試験や、臨床試験などを推進するための研究になります。

 この下の部分ですが、疾病・障害対策研究分野がありますが、これについては、厚生労働省が進める、疾患・障害対策別の施策全般にわたって推 進する課題が挙げられています。例えば、病態の解明に関する基礎的な研究や、さらには疾病の診断方法や予防方法、新たな標準治療法をつくるといった、治療 に関する医療技術開発に資する研究が挙げられています。がんや希少・難治性疾患などでは、新たな医療品などの実用化に関する研究も含まれている状況です。

 なお、今回の公募要項への記載が漏れてしまっておりますが、HTLV-1関連研究領域の再掲を毎年させていただいております。これについては平成22年にHTLV-1総合対策が取りまとめられたことを受けて、感染症、がん、難病、母子保健関係の研究事業から再掲を行うということについても、御了承いただきたいと思います。例えば感染症は99ページを御覧いただくと、HTLV-1関係があり、がんですと43ページの所にありますが、そういったものについては再掲という形でさせていただきたいと思います。

 付け加えまして、従来、厚労科研費については、指定型として行っていた研究もあるのですが、それについて指定型から公募に変えるものも出て くることが想定され、そういったものについては追って、先生方に公募要項にこういった課題を追加したいということで、御連絡を差し上げたく思っています。 以上です。

永井部会長 
 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。

宮田委員 
 では、質問がないので、新独法のやり方に変わって何か、良い点と、悪い点を事務局で思い当たっていらっしゃったら教えていただきたいのですが。要するに、予算額が要望の額も含めていると、結構膨らんだような感じがしますよね。そういったことはこの新独法という形で3省庁が横断的に議論した結果なのですか。そうではなくて。

中山研究企画官 
 予算の要求の段階から内閣官房の事務局を中心として、各省ともヒアリングを受けて、連携施策については各省でお互い調整し合って要求したと いうことになっていますから、一応、そういった意味での各省連携した予算要求の取組という意味では、意義があることではないかと思います。

宮田委員 
 今まで随分、そういうパイロットプロジェクトがあったのですが、これだけまとめて大規模にやると、全体的な絵が見えるだろうと思うので、是 非、それを予算執行した結果もフィードバックしていただいて、次年度の予算形成などに実質的な成果を上げるようなドライブができるようになるといいなと 思っています。

中山研究企画官 
 今年は予算要求の段階でばたばたやったというところがありますが、この体制はしっかり来年度も維持され、更に再来年からは新独法ができ、研 究の進捗の管理も含めてやる組織ができるということになりますので、一層、先生がおっしゃるような意義のあるものになっていくものと考えられます。

宮田委員 
 最後に確認ですが、新独法ではない経費というのは、どのような分け方のクライテリアで決まったのでしょうか。

中山研究企画官 
 繰り返しになりますが、医療分野の研究開発に該当するというタイプであれば、新独法に一元化していくという方向でまとめました。医療の分野 でも、ほかに研究しなければいけないことは当然あるのですが、行政施策的な色彩の強いものを厚労省に残しました。あるいは医療分野ではないもので食品衛生や化学物質対策というものもありますので、そういったものもこちらに残っているという整理です。

宮田委員 
 分かりました。ありがとうございます。

永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。

 新独法が発足以後は、またこの公募の仕方というのは変わってくるのですか。科学技術部会との関係ではどういうことになるのでしょうか。

中山研究企画官 
 現時点で独法ができた後、どのような公募手続を取るかということはまだ未定です。未定としか言えないかと思います。

松田委員 
 各省庁を越えて取り組んでいくという体制が、より充実してくるということは非常に好ましいことだと思いますが、私が今、関係しているほかの 省庁のプロジェクトではいろいろなデータベースを整備していく動きを強めていくという、つまり、今までもいろいろな医療に関わるデータがそれぞれ孤立化し ていることが話題になっておりましたが、それを新しいプロジェクトでコホート研究も含めて、いろいろな臨床のデータも統合し、そこをビッグデータ化して、 そこからまた、いろいろな結論を導き出していくことで、データベースを作る際に、そういった最終的に統合したようなものにしていく動きを非常に大きな柱に しているプロジェクトがあるのですが、今度の厚生労働科研費のいろいろな提案が出てきたときのデータを統合していこうということを、何か1つ大きな条件というか、そういう動きをサポートするようなことを何かお考えになっていることはないでしょうか。

中山研究企画官 
 現時点での公募の中では、直ちにそういったものに該当するものはないかもしれません。ただ、その重要性というのは十分認識しており、今後の研究課題の設定に当たり、十分検討していかなければいけないと考えております。

永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。もし、御意見がありませんでしたら、平成26年度厚生労働科学研究委託費の公募について、資料のとおり進めるということにいたします。

 なお、今後、一部公募課題が追加となる場合がありますので、その場合は事務局より連絡を頂き、了承を頂くことになっております。字句等の修 正については、事務局で行って私が確認した上で、内容を確定したいと思います。その点は、御了解いただきたいと思います。よろしいでしょうか。

 それでは、議事の2に移ります。第3次対がん総合戦略研究事業の事後評価について、御審議いただきます。事務局から説明をお願いします。

椎葉がん対策・健康増進課長(代理山下課長補佐)
 資料2を御確認ください。がん対策・健康増進課より、課長の椎葉が出席できませんので、代理で山下から説明いたします。参考1、政府におけるがん対策の主なあゆみのページを御確認ください。政府におけるがん対策としては、昭和56年にがんが死亡原因の第1位となって以降、青、緑、赤で記載をしたように、10か年の戦略を3つ重ねてきた経緯があります。そして、現在平成25年は、赤の第3次対がん10か年総合戦略の最終年度となっております。厚生労働省としては、この第3次対がん10か年総合戦略を受けて、この戦略に基づく研究事業として、第3次対がん総合戦略研究事業を、平成16年から進めてきた経緯があります。

1 ページ目に戻ります。第3次対がん総合戦略研究事業が、平成25年度で最終年度を迎えますので、その事後評価をどういった形で進めていくかについて、今日は審議いただければと思います。まず、研究事業の概要として、先ほど申し上げましたように、本研究事業は平成16年から10年間進めてまいりました。内容は、がんの本態解明を目指した研究や、その成果を幅広く応用するトランスレーショナルリサーチ、そしてがんに対する革新的な予防法、診断法及び治療法の開発を推進することを目的とした研究を実施してまいりました。

 予算額と課題数ですが、この10年で総額約505億円を使い、延べ1,256課題の研究を進めてまいりました。こちらの10か 年の研究の事後評価としては、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」に基づき、研究事業の所管課であるがん対策・健康増進課が外部評価により行う ことになります。そして、この外部評価の結果については、今後科学技術部会に諮ることとして、評価を進めさせていただきたいと考えておりますので、よろし くお願いできればと思います。また、本研究事業については、国家的に重要な研究開発として、総合科学技術会議において更に事後評価が行われる予定になって おります。

 もう1点、がん対策・健康増進課から報告をいたします。これは、資料の3枚目、参考2、がん登録等の推進に関する法律の概要を御確認ください。先日、126日に、がん登録等の推進に関する法律が成立いたしましたので、このことについて報告いたします。参考資料4-2に も、法律の条文本体を付けておりますので、共に確認していただければと思います。がん登録に関しては、これまでがん診療連携拠点病院に義務付けられている 院内がん登録と、都道府県が行う地域がん登録という形で進めてきたわけですが、これを全国がん登録という枠組みを設けて今後進めていくという内容です。そ して、基本理念になりますが、全国がん登録では広範な情報収集、罹患、診療、転帰等の状況をできる限り正確に把握する。そして、がん登録等の情報について は、調査研究に活用するなど、その成果をしっかりと国民に還元していく。その際には、個人に関する情報は厳格に保護する、といったところが、理念の骨子に なっているかと思います。

 今までの体制から大きく変わる点としては、青の全国がん登録の枠の中を確認いただければと思いますが、情報の収集・記録で、丸1、病院を対 象とする罹患情報の届け出が全ての病院を対象とすると。これまでは、がんの拠点病院が対象となっていたものですが、全ての病院に義務化をするところが大き く変わる点です。また、国(国立がん研究センター)と書いてある部分ですが、罹患情報、死亡情報の突合を国で一元管理していくところが、もう1つ 変わる点です。そして、先ほど基本理念にもありましたが、こういった情報をしっかり調査研究に活用することで、国民に還元していくと。しかし、その際に情 報の保護等には留意しながら、利用等の限度を設けて進めていく内容になっております。登録やデータの活用に関する個別の運用については、今後有識者の御意 見等を伺いながら検討を進めていくことになるかと考えております。以上です。

永井部会長 
 それでは、御質問、御意見をお願いします。

川越委員 
 最初に事後評価についてお伺いしたいのですが、実はこの評価についての重要性は、確か副委員長の福井先生が責任者になってまとめたときに、 これをもっと世界に報告してもいいのではないかということで、専門的にチームを作ってやったらどうかという提案をされたと思うのですが、それを受けている のでしょうか。今まで、このような3次の対がん戦略総合研究があったということで、こういう研究をされたのは今回が初めてなの ですか。それとも、このような振り返りが非常に大事だということは我々の共通の認識としてあると思うのですが、これが今までされてきたのでしょうか。ある いは、今回初めてやるようになったのでしょうか。その辺りを教えてください。

宮嵜厚生科学課長 
 がん助成金のときなども評価して、こちらの部会に掛けて議論をいただいていたと思いますが、今回は3次がんが今年度で終わるということで、改めて3次がんの評価をこれから進めて、その結果がまとまれば報告させていただきたいという趣旨です。

川越委員 
 1次、2次のときも、同じような作業をされたのでしょうか。

中山研究企画官 
 すみません、そこについては確認させてください。

川越委員 
 あとで教えてください。

永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。

山田委員 
3 次の事業の事後評価の仕方について、外部評価により行うとありますが、外部評価者あるいは外部評価機関は、どのように決まるのでしょうか。あるいは、決まっているのでしょうか。

椎葉がん対策・健康増進課長(代理山下課長補佐)
 評価をどのような体制で行うかですが、当がん対策課の科研費を活用して、現在評価のための研究班を設置し、情報の収集であったり、第1次の評価を行っていただいてはどうかと、今考えております。その際に、できれば科学技術部会の委員の先生にも御参画いただくこと等を、永井部会長とも相談をさせていただきながら、考えていきたいと思っております。

山田委員 
 分かりました。

宮田委員 
 厚労省か別の省か、今、記憶が定かではないのですが、やはりこのような10年ぐらいの大型のプロジェクトを評価するときに、たった1回 しか会合をやらないで評価したことがありました。折角これだけいいことをやりましたので、評価に関しては十分時間をかけてきちんと評価をしていただきたい と思います。それとともに、できれば次の計画にその評価がうまく反映されるように、時間的なスケジューリングをうまくやっていただきたいと思います。御座 なりの評価は、残念ながらもったいないので、500億円も投入した結果、やはり次の500億に近いようなプロジェクトに反映させないといけませんので、ここはしっかりやっていただきたいと思います。

 もう1つは、御手盛りと言われないために、COI(Conflict of Interest)も是非考慮していただき、外部委員などを選んでいただきたいと思います。かなり難しいと思います。これだけ大きなプロジェクトなので、がんを研究なさっている方は何らかの関与をしてしまうとは思うのですが、その辺りの配慮をする必要が、私はあると思っています。

永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。

川越委員 
 がん登録のことで教えてください。これは、やっと法律ができたということで、非常に嬉しく拝聴しました。実施上はいつからの予定になっているのでしょうか。

椎葉がん対策・健康増進課長(代理山下)
 確定したものではありませんが、平成28年の1月からを目指して検討を進めていく形になるかと思います。

川越委員 
 今後は病院全てが対象になるということで、これは非常にいいことだと思います。ただ、以前私ががん対策推進協議会の委員をやっていたときに 出ていた登録情報が、非常に細かい項目まである情報で、あれを普通の病院がやるとなると音をあげてしまうなという感じで、実用性が非常に少ないという印象 をもちました。ですので、全ての病院が登録できるような形を検討していただきたいと思います。それは、これからそういう委員会などを立ち上げて検討する予 定になっているのでしょうか。

椎葉がん対策・健康増進課長(代理山下課長補佐)
 今後、有識者の御意見をいただきながら、検討していくことになると思います。

永井部会長 
 よろしいでしょうか。

福井部会長代理 
 がん登録以外にも、随分日本からのきちんとした疫学的なデータが出ていない分野はたくさんあると思うのですね。私が知っている範囲でも、循 環器が驚くほどきちんとした国全体のデータがないのですが、ほかの疾患については何かこのような国を上げて登録したほうがいいとか、今後このようにアプ ローチしていくというような、厚生労働省としてのがん以外のビジョンはあるのでしょうか。

宮嵜厚生科学課長 
 すみません、ビジョンと言われるとなかなか難しいのですが、御指摘がありますように、疾病登録を進めていき、基礎データとしてそれを活用して研究を進めていくのは、すごく大事な考え方だと思っております。それは、厚労省でも政府でも議論されていて、マイナンバーや医療等IDな どの話も含めて出てくると思います。そういうものが大事だということで全体の話ばかりしていると、進むところが進まなくなってしまうので、特に今回がん登 録は議員立法でしたが、実質的にも事業でかなり進んでいる分野でしたので、特別に議員立法でこういう形が出てきたと思いますが、このような仕掛けが大事だ という考え方はもっていますし、進めていかなければいけないと思っています。

永井部会長 
 よろしいでしょうか。そうしましたら、評価委員会で評価を行った後に、当部会で更に報告いただくことにいたします。

 続いて、議事4、報告事項、戦略研究の追跡評価について、事務局より報告をお願いいたします。

宮嵜厚生科学課長 
 戦略研究の追跡評価について、報告申し上げます。お手元の資料4を準備いただければと思います。1ページが、戦略研究のこれまでの経緯とスケジュール、概要です。このうち、平成17年度から始まりました糖尿病予防と自殺対策のための戦略研究について、この度戦略研究の企画・調査専門検討会で追跡評価をいただきましたので、その概要を報告させていただければと思います。

3 ページの糖尿病予防のための戦略研究は、大きく3つの分野から構成されており、この表の一番左側が糖尿病発症予防のための介入研究(J-DOIT1)があります。真ん中は、かかりつけ医による2型糖尿病診療を支援するシステムの有効性、中断率を下げるというようなものに対する介入研究がJ-DOIT2です。それから、一番右側が2型糖尿病の血管合併症抑制のための介入研究、J-DOIT3と呼んでいますが、この3つが大きな柱で取り組んだ研究です。

4 ページが、研究デザインです。健診実施団体を分割して、クラスターを構成して、その支援群、自立群とをランダムに割り付け、 支援群にのみ到達目標を達成するための具体的な行動目標を設定するなど、目標を達成するための支援を主として、電話等を用いた非対面方式によって実施した ものです。

5 ページは、実際には13の健保組合及び4つの地域で実施し、本研究には2,840名の空腹時血糖異常者がリクルートをされております。6ページですが、実際に両群の対象者に運動習慣や体重管理、食事、飲酒についての到達目標を設定しているわけですが、支援群に対してのみ具体的な行動目標を設定し、目標を達成するための支援、電話等での支援を実施したものです。一番下に、例えば介入1年後の到達目標の成功率が表で出ておりますが、適正体重の維持や食物繊維摂取や、適正飲酒の成功率等で有意差が見られているというような結果が出ております。

7 ページは、糖尿病の発症率についてです。全体では、介入によって糖尿病発症が抑制されなかったというような結果になっておりますが、予防支援の委託会社別で見ますと、C社でのみ糖尿病発症が有意に抑制されたというようなデータグラフです。

8 ページですが、特にC社について電話回数や到達目標の成功率、それから電話支援の満足度が高いというような結果が出ております。9ページは、糖尿病予防に関するサブグループ別の解析では、肥満やメタボリックシンドロームの対象については、介入による効果は確認されなかったのですが、非アルコール性脂肪性肝疾患の対象では、介入により糖尿病の発症抑制に有意差が認められたという結果です。

 これらのJ-DOIT1について、10ページからはこのような研究論文や学会発表がされています。それから、臨床現場への波及効果、あるいはこの研究に参加した若手研究者がその後どのような活躍をされているのかというのが、1011ページにかけてです。

12 ページで、専門的、学際的な観点からの評価、それから行政的な観点からの評価を記載しております。12ペー ジの一番下が総合評価ですが、この研究で大規模なクラスター・ランダム化比較試験を用いた介入研究の実施により、ランダム化の手法や統計解析法などのノウ ハウが蓄積された点や、結果の解釈には留意が必要ですが、電話回数を多くして支援したグループについては、糖尿病発症が抑制されたこと。あるいは、非対面 型の電話支援による糖尿病予防のプログラム確立に向けて、一定のエビデンスを提供した点について、評価をいただいている状況です。

13 ページからは、2つ目の柱のJ-DOIT2の関係です。これは、4地区を対象にしたパイロット研究を実施しております。その概要は、1415ページにあります。実際に、診療支援群と通常診療群に分けておりますが、診療支援群にはこういう支援をしたという状況です。

16 ページは、結果です。通常群では、31%の抑制がみられましたが、年齢調整等による有意差は認められなかった数字となっております。また、17ページにありますが、このパイロット研究の中で特に20代から30代は、逆に介入により受診中断が増加傾向になっているような現象が認められたということで、その後の本体研究では、40代以上の被験者を対象とするというようなことで設計し直して、実際に次の研究に取り組んでおります。

18 ページからが、大規模研究です。19ページに、実際に参加いただいた11医師会が記載されております。20ページですが、ここで登録の被験者数や参加医師数等を記載しております。21ページも、先ほどと同じような形ですが、研究の実施内容、概要です。

22 ページからが、成果、結果の関係です。2つ目のにありますが、診療支援群のハザード比は0.367で、63.3%の抑制効果が診療支援群の受診中断の抑制で有意差が認められたことを、データグラフで記載しております。

23 ページは、実際に受診中断した理由を見ています。疾患の優先度に関する理解や受診の必要性に関する理解、あるいは経済的負担に関するものが多いというようなデータも出ています。24ページは、診療達成目標の遵守割合についてです。この表の中では、下のほうになりますが、通常診療群と比較して、診療支援群での診療達成目標遵守割合が、診療支援群のほうで有意に増加しているような結果が出ております。

25 ページからが、全体の追跡評価の関係ですが、研究論文などが出ていること、それから臨床現場への波及効果では、2つ目のにありますように、例えばこの時点での治験に基づいて、「糖尿病受診中断対策包括ガイド」などを、平成25年度中に作成する予定などとなっております。

26 ページは、この研究に参加した研究者が、今どのような活動をしているか。27ページは、専門的、学際的観点からの評価、行政的観点からの評価を記載しております。一番下が総合評価です。この研究により、2型 糖尿病患者に対する受診勧奨、療養指導及び当該患者を定期的に診療するかかりつけ医に対する診療支援を提供することで、受診中断率を減少させることが検証 されたこと。あるいは、本研究の成果を基に作成が進められているガイドラインが普及されれば、各地域において糖尿病患者のアウトカム改善に貢献するものと 考えられる、というような評価をいただいております。

28 ページからが、3つ目の柱のJ-DOIT3の関係です。研究デザインは、ここに記載があるとおりです。2型糖尿病患者を対象とし、強化療法群と従来治療群の2群に割り付けて、ランダム化の比較試験を実施したものです。一番下に、研究実施期間とありますが、イベント数が250に達するまで実施しているということで、若干研究期間が延びているというか、まだ現在進行中です。

29 ページが、研究の実施内容で、それぞれ全国の81の医療機関において、各群1,271名を対象に実施しております。30ページは、脱落率ですが、本年7月の段階では5.5%というような数字が出ており、ほかのスタディーとの比較もしております。3132ページの関係は、ヘモグロビンA1CあるいはLDLコレステロールのコントロールの状況です。33ページは、イベントの発生状況ですが、先ほども申し上げましたが、イベントの発生率が研究開始前の予想よりも低くなっていることもあり、必要なイベント数が得られるまで追跡期間を延長することを倫理委員会で承認を受けて、継続しているような状況です。

 現時点での評価ということで、34ページからですが、論文としてはこのようなものが出ているとか、臨床現場での波及効果としてはこのようなものが認められている、あるいは参加していた研究者の活動状況等を記載しております。35ページの一番下が、現時点での総合評価ですが、本試験において適切な薬剤選択や生活習慣介入により、安全なコントロールを実践することが可能であることが示されつつある点について、評価をいただいているものです。

36 ページからが、自殺対策の関係です。この戦略研究は、大きく2つの柱で取り組んだもので、左側がNOCOMIT-Jと研究課題の所に書いてあります。地域において複合的自殺予防対策プログラムを実施し、自殺企図の発生に対する効果があるかどうかを検証したものです。右側が、ACTION-Jと書いてありますが、救急施設に搬送された自殺未遂者に対するケースマネジメントの自殺企図再発防止効果を検証するものです。研究デザインは、37ページにあるとおりです。

38 ページは、17の地区において市町村を実施主体として、1次から3次予防のプログラムを実施しております。実際のプログラムの内容は、39ページを御覧いただければと思います。40ページは、本研究では自殺死亡率が長年にわたって高率な地域ということで、青森や秋田など、お手元の資料ではオレンジ色の所と、近年自殺死亡率が増加している都市部ということで、仙台、千葉、北九州など、ピンク色の所を対象として、実施しております。

41 ページからが、結果です。1つ目のにありますように、自殺死亡率が長年にわたって高率な地域の介入群でのプログラムの実施率は、対照群よりも高い状況でした。2つ目ので、当該地域では対象者全体で自殺企図発生頻度の有意な減少は、全体では認められなかったということですが、図を見ていただくと、男性に限ると約23%の減少効果が明確になっているというような予防効果が明らかになっております。

42 ページの1つ目のにありますが、自損行為による救急搬送の発生予防効果は、図を見ていただくと、男性と65歳以上の高齢者において、60%を超える強力なものであったことと、2つ目のにありますが、一方で自殺死亡発生率は有意な差がなく、致死率の高い状況で自殺未遂を図るというハイリスクグループの存在が示唆されるのではないかという結果です。43ページは、都市部の自殺企図の発生率については、有意な差は認められなかったということです。

 追跡評価の結果ですが、研究論文や学会発表の状況あるいは臨床現場への波及効果等については、4445ページに記載のとおりで、総合評価が45ページの一番下ですが、この研究は自殺対策における地域介入の大規模研究として、人口100万人規模の地域ネットワークの構築を行い、データの蓄積を行ったことは高く評価できる。あるいは、本研究で性別、年齢等により、効果に違いがみられたが、その要因については更に分析を進める必要があるというような評価をいただいております。

46 ページからが、2つ目の柱のACTION-Jの関係です。研究方法は46ページに記載のとおりです。47ページは、救急部と精神科が連携している全国の17の医療機関が参加施設として、ここに記載があるような実施内容で取り組んでおります。実際の状況ですが、登録期間中に参加施設に搬送された自殺企図者数は、6,123名ですが、そのうち説明できた方が1,267名、そのうち同意を得た914名について、対象として取り組んでおります。

49 ページですが、介入群と対照群の属性は同等で、両群で比較可能性が保てていることと、自殺企図の手段としては、過量服薬が最も多くなっていること等が分かっております。50ページは、介入群ではランダム化したあと6か月後の介入遵守率が87%になっている状況です。

51 ページは、対照群におけるイベント出現頻度の実測値は、研究開始時の推定値とほぼ同じ15%であったこと。2つ目のにありますが、自殺企図の再発発生率が、介入群ではランダム化6か月後に50%減少しており、強い予防効果が得られたことが明らかになったことが分かっております。

52 ページからが、研究論文や学会発表の状況、あるいは臨床現場への波及状況、それから研究に参加した研究者が今どのような状況であるかをまとめております。53ペー ジの一番下の総合評価では、本研究を通して、救急診療科及び精神科の連携の下に、自殺対策の臨床研究に対するネットワーク化、人材養成がなされ、救急医療 施設における自殺関連の大規模なデータが得られたことの意義は大きい。あるいは、救急医療施設を起点とした自殺未遂者支援についての施策に、更に反映され ることが期待される、というような評価をいただいているところです。長くなりましたが、以上です。

永井部会長 
 ありがとうございました。それでは、御質問、御意見をいただきたいと思います。ちなみに、研究費はどのくらいだったでしょうか。

事務局(厚生科学課)
 糖尿病予防の戦略研究につきましては戦略研究が5年間と、その後に研究を続けていまして、総額で約47億円ということです。研究は3つございますが、それを含めた額です。自殺対策のための戦略研究につきましても5年間の戦略研究と、その後に研究を実施していて、総額で約11億円という状況です。

永井部会長 
 いかがでしょうか。

川越委員 
 非常に興味ある内容で、十分理解できないまま質問するので恐縮ですが、自殺に関して、対象というのは要するに搬送された方ですよね、搬送中 に死亡されたということ。結構、検屍になった方もいると思いますが、その辺の割合みたいなものは何か基礎データとしてあるのでしょうか。もしあったら教え ていただきたい。後日でも結構です。

事務局(精神・障害保健課)

 救急の現場の検屍に関しては入っていません。

福井部会長代理 
 先ほど川越先生がおっしゃったこととも関わりますが、このような大規模な研究が行われて、例えば自殺企図再発が、この研究では50%減少したというのをこれから日本全国に敷衍した場合に、どれくらいの人が自殺企図再発を予防できるのか。そういう数とか、先ほどのJ-DOIT2でしたら受診中断が63.3%抑制される。これが日本全国で似たようなことを行えば、どれくらい糖尿病のケアの結果が良くなるのかという予測的な評価とともに、国民にとってこんなにすばらしい研究をしたというアピールをされるといいと思います。意見です。

宮嵜厚生科学課長 
 ありがとうございます。戦略研究は正にそういうところまで視野に入れて取り組んでいる研究です。ただ、どういうふうに予測していくかという のは、またちょっと難しいところがあるのですが、この研究の成果だけを出すのではなく、これが全国の臨床現場やいろいろな所に波及し、行政施策にも取り入 れて敷衍的に進んでいくところまで視野に入れて取り組んでいる研究ですから、当然、研究として中間や事後の評価だけでなく、正に追跡評価ということで、終 わってどのくらい経ったらどうなっているか。もちろん、参加された研究者が、今、どういうふうに活躍されているかも含めて、正に追跡評価ということで、今 回、させていただいたのを御報告しました。福井先生が言われるような視点で、今後もきちんとフォローしていかなければいけないと思っています。

大澤委員 
 大変興味深く拝見しました。41ページのところで自殺の率ですが、女性の場合は地域差が大きいというのは、どういう所が多いのですか。41ページの考察の上から2行目で「地域差の大きな女性と」と書いてあるのですが、女性はどのような地域差になっているのかお分かりですか。

国立精神・神経医療研究センター 山田部長
 国立精神神経センターの山田と申します。代わりましてお答えします。こちらの地域では地域差というのが、参加した地域の中で効果が大きく見えた所と、効果があまり見られなかった地域間のばらつきが非常に大きかった。大きい理由の1つは、イベントの頻度自身が10万人に対して20人、30人と非常に少ないものですので、たまたま1人が自殺未遂を多くすることが非常に大きな影響を与えます。そのためだと考えています。

永井部会長 
 そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。御質問がないようでしたら次にまいります。議事の3の審議事項です。失礼しました。どうぞ。

渡邉委員 
 自殺の研究は非常に興味があるというか、逆に言うと驚くべき事象かなと思います。これだけ効果があるとなると、実際にこの中でもう少し詳し く調査されているのだと思いますが、発生率で一番効果があったのは、例えば年齢、自殺未遂歴有り無しなどによって、だいぶ差が出てくるのでしょうか。

国立精神・神経医療研究センター 山田部長
51ページのスライドの下の考察部分を御覧いただくと、よろしいと思います。今回、数字ではこちらにお示ししていませんが、性別で申し上げると女性のほうが、年齢で申しますと40を境に分けていて、若年者のほうが、さらに自殺未遂者は過去に自殺未遂をしている方が多いですが、過去に自殺未遂歴のある者のほうが効果がより明確に示されたという結果が出ています。現在、論文として投稿中ですが、詳細はそちらのほうで公開させていただければと思います。

宮田委員 
 先ほど福井先生もおっしゃっていたのですが、これは戦略研究ですよね。ここに評価が出ていますけれども、例えば一部の所にはリクルートの数 が不足であって、グラフで見る限り有意差が、ひょっとしたら単純に増やせば付くのではないかと思うような研究成果も、ここに出ています。せっかくこれだけ のことをやったので、これから先をどうするのか。これが終わりの評価ではもったいない気がします。特に自殺みたいなものは有効性がある程度プレリミナリー ですけど、データとして出たので、それをもう1回検証して政策的なものに変えるための研究をフォローするとか、糖尿病に関して はもうちょっと症例数を増やせば、ひょっとしたら有意差が出るかもしれない。割ともったいない感じがして、これをこのまま研究が終わりました、はい、追跡 調査として終わりましたと蓋をして覆ってしまうのは、どうももったいない。今回はひょっとしたら珍しいのかもしれませんが、もったいない成果が出ているの で、これを今後どうするかみたいなことも、是非、皆さんのほうでお考えいただいて、具体的にこの戦略研究が国民の健康や安心に貢献した例として、これをう まく発展させることを少し議論していただきたいと思いました。

宮嵜厚生科学課長 
 大変重要な御指摘をいただき、ありがとうございます。おっしゃるとおりで、これがある面で出発点になってということだと思いますが、このま とまったものを受けて、先ほど福井先生からもありましたけれども、それぞれの担当部局がどういうふうに施策にいかしていくのか。あるいは追跡評価でもいた だいていますけれども、さらにこういう分析をしたほうがいいのではないかというのを受けて、そういう研究課題を設定して取り組むことになっていき、そうす るとまた、ここの部会に公募課題としてどうしたらいいかお諮りすることになりますから、正に科学技術部会の先生方からもいろいろ御意見をいただいて、それ ぞれ担当部局も知恵を出しながら、先生方のほうに御相談してという作業を進めさせていただければと思っていますので、引き続き御指導いただければと思いま す。

宮田委員 
 ありがとうございました。

北島精神・障害保健課長 
 自殺のほうを担当しています精神・障害保健課でございます。この研究につきましては、自殺自体が重要な課題でございますので、戦略研究としては一区切りですけれども、引き続き研究には力を入れていきたいと思っています。また、この2つの研究につきましては研究成果の途中から具体的には自治体向けのマニュアルをホームページにアップしてきたり、また救急施設に関するところでは診療報酬に精神科医の関与を評価したりということで、その都度、この研究の途中経過を施策に反映しているところです。

宮田委員 
 それはとてもすばらしいことなので、この追跡評価にそういうことも入れるべきではないかと思います。このままではあまりにも研究そのものと しての評価になっていますので、戦略研究というのは、もともと国民の幸せとか健康の施策に反映させるものですから、今言ったようなことがあれば是非、この 評価の中に少しとどめておく必要があるのではないかと思います。

宮嵜厚生科学課長 
 大変時間が短かったので説明を端折ってしまい、申し訳ありませんでした。ホームページの関係は、44ページの臨床現場への波及効果のところで厚労省のホームページという話を載せたり、診療報酬の関係では52ページの真ん中に、そういうようなことも書いていたのですが、私の説明が足りなかったので大変申し訳ありませんでした。

永井部会長 
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。議事3に戻ります。ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について、御審議いただきます。杏林大学と4機関からの申請については、1122日に厚生労働大臣より諮問され、1125日、当部会に付議されています。事務局より説明をお願いいたします。

堀再生医療研究推進室長 
 資料3に基づきまして説明させていただきます。表紙を見ていただくと、ただいま永井先生から御紹介いただきましたとおり、4件、新規の申請が出ていますので、1件ずつ御紹介させていただきます。1件目、3ペー ジを御覧ください。研究課題名は、脂肪組織由来間質細胞を用いた難治性肺動脈性肺高血圧症治療の安全性および有効性に対する研究、杏林大学の佐藤先生から いただいています。対象疾患は肺動脈性肺高血圧症、用いるヒト幹細胞については脂肪組織由来間質細胞、実施期間は大臣意見発出日から2年間、対象症例数は5症例ということです。

 治療研究の概要については、4ページに図が出ています。右下を御覧いただくと、局所麻酔若しくは腰椎麻酔下に腹部から脂肪を260320g摘出し、左側に分離装置がありますけれども、脂肪組織を分離する装置にかけて、この中から脂肪組織由来の間質細胞を採取し、右上ですが、内頸静脈から肺動脈に注入したカテーテルから細胞を投与する。これは約1時間かけて投与するといった技術です。

2 件目、20ページを御覧ください。研究課題名は、偽関節を対象とした自己骨髄培養細胞由来再生培 養骨と骨芽細胞シート複合体の有用性を検証する研究です。奈良県立医科大学の川手先生よりいただいています。対象疾患は遷延治癒骨折と偽関節、用いる細胞 については自己骨髄間葉系細胞、実施期間は大臣意見発出日から5年間、対象症例数は15例ということです。

 治療研究の概要ですが、対象として骨折後3か月以上の保存的若しくは外科的治療によっても治癒が得られないような遷延した骨折、若しくは骨折後6か月以上経過した偽関節を対象とするということです。

21 ページに技術の図がありますので御覧ください。手術の1か月前に手術室で局所麻酔下に骨盤から間葉系幹細胞を約15cc採取する。同時に、その培養に使用する血液を400cc採取する。この採取した細胞を2週間初期培養して増殖させます。真ん中の囲みを見ていただくと、2週間の培養後に右下のセラミックの人工骨、人工骨(ベータ -TCP)と書いてある所ですが、このセラミックの人工骨に一部の幹細胞を播種して更に2週間培養する。また残りの細胞については骨芽細胞シートを形成し、これは手術室で移植するという技術です。

3 件目、31ページを御覧ください。研究課題名は、新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞療法です。大阪市立大学の新宅先生よりいただいています。対象疾患は新生児低酸素性虚血性脳症、用いる細胞はヒト臍帯血幹細胞、実施期間は平成28630日まで、対象症例数は6例ということです。

 治療研究の概要ですが、新生児低酸素性虚血性脳症に対し、自己臍帯血を生後1-3日後に静脈内投与することによ り、脳性麻痺などの後遺症を減少・軽減させることを目的として、安全性・実施可能性を検証するということで、対象症例は一施設では多くないため、淀川キリ スト教病院、埼玉医科大学、名古屋大学、大阪市立総合医療センター、倉敷中央病院との多施設研究として実施するということです。

32 ページに図がありますが、今、申し上げたように低酸素性虚血性脳症の患者さんに対し、胎児の出生時にこの臍帯血を採取します。これを低温で保管し、調整した細胞液を生後1224時間、3648時間、6072時間の3回に分けて、点滴で静注するということです。

4 件目、59ページを御覧ください。研究課題名は、骨髄由来単核球細胞を用いた脊髄損傷(ASIA機能障害尺度A,B)に対する第II相試験です。北野病院の鈴木先生からいただいています。対象疾患は脊髄損傷、用いる細胞は自家骨髄単核球細胞、実施期間は大臣意見発出日から26か月、対象症例数は20症例ということです。

 治療研究の概要ですが、受傷後12週以内の脊髄損傷患者(ASIA機能障害尺度A,B)と いう重症の脊髄損傷の患者さんに対し、自家骨髄単核球移植によって脊髄再生治療の臨床的有用性及び安全性を評価するということで、第II相、シングルアー ムの試験ということです。骨髄単核球の単離、洗浄、調整は手術室内のクリーンベンチで行い、これを腰椎穿刺の手技を用いて髄液腔に注入するという技術で す。60ページに同じような説明があります。

4 件の新しい申請については、以上です。

永井部会長 
 ありがとうございます。いかがでしょうか。現在、審査委員会で審査を始めていますけれども、こういうのを見ますと、どれだけ科学性があるか とか、よく読むと必ずしも準備が十分でないのがあるのです。思い付き的な研究が明らかに含まれていると思います。ですから、これはきちっと審査していかな いといけないと思います。

桐野委員 
 一番最初のものですけれども、肺動脈に挿入するという研究では、右下の7ページにある臨床研究の目的・意義の上から15行目ぐらいに、「幹細胞移植治療が期待されつつある」とあります。私は専門でないので分からないですが、多分、難しい病気でこういう期待されつつあるのかなと思いますけれども、それにしては先行する研究が少ないですし、レファレンスがあまりないのでよく分からない。3ページに戻って、その他(外国での状況等)のところに、中国とカナダで行われていると書いてあるのですが、これは是非、参考文献を挙げていただかないと分からないと思います。

 それから、何で肺動脈なのでしょうか。その理由がよく分からない。肺動脈に直接入れてやったほうが、何となく直感的にいいという以上の理由がよく分からないので、それは書いていただかないとまずいのではないかと思いました。

永井部会長 
 私が申し上げたのはこのケースなのです。右下の11ページを見ていただくと、肺高血圧症モデルで基礎検討はされ ていないのです。肺高血圧症は重症な疾患で治療に抵抗性の場合には極めて予後が不良です。ちょっとしたことで状態が急変します。そういう方に対して今まで 幹細胞により心筋梗塞や末梢の動脈血行障害の方に有効という話がないわけではない。だから肺高血圧にもよいのではないかという論理になっています。これは よく研究者からもう一度聞かないと科学的合理性、準備が全く見えない。合理的理由があればよいのかもしれませんが、特に非常に重篤でわずかな行為で急変す る可能性がある方を対象とするとなれば、気を付けて審査しないといけないと思います。

 ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。そうしますと、これらの申請につきましては審査委員会で、今後、審査を行い、検討結果が報 告された時点で総合的に判断し御報告したいと思います。よろしいでしょうか。本日の議事は以上です。事務局から連絡事項等ございますか。

中山研究企画官 
 ありがとうございます。次回の日程につきましては、実は公募課題の審議の事情があり、幾つか仮に確保していただいている予定もあるのですが、速やかに次回日程を確定させ、場所とともに御連絡申し上げたいと思っています。事務局からは以上です。

永井部会長 
 では、これで本日は閉会といたします。ありがとうございました。


(了)

【問い合わせ先】
 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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