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2013年10月21日 第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び 厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会議事録

○日時

平成25年10月21日
9:45~11:45


○場所

航空会館 7階大ホール


○議題

(1)原因の究明及び医療の提供について
(2)その他

○議事

○結核感染症課課長補佐 ( 難波江 )  定刻になりましたので、ただいまより第 2 回風しんに関する小委員会を開催いたします。本日の委員の出席状況を御報告いたします。本日は委員 15 名中、 12 名の方に御出席をいただいております。渋谷委員、藤原委員、宮崎委員より御欠席との御連絡をいただいております。また、本日は参考人として、大妻女子大学井上名誉教授、川崎市健康安全研究所の岡部所長、風しんをなくそうの会、西村共同代表に御出席いただいております。また、本会議においては、国立感染症研究所感染症疫学センターも事務局に加わっているところですが、本日は感染症疫学センターの中島主任研究官が参加しております。

 続きまして、お手元の配布資料を確認いたします。資料 1 「風しん患者の医療に関する課題」、資料 2 「妊婦の風しん罹患及び先天性風しん症候群の発生抑制等胎児期の罹患予防に関する研究」、資料 3 、西村参考人提出資料の「 CRS/CRI 児と家族の支援等」、資料 4 20 から 30 代の風しん免疫状況、臨床検査データの解析」、資料 5 「風しんアウトブレイクの積極的疫学調査、事業所の集団発生から」、資料 6 「地方衛生研究所における風しんの検査について」、参考資料 1 から参考資料 5 までございます。不足がありましたらお申し付けください。

 申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。御協力をお願いします。

 引き続き審議参加に関する報告をいたします。お手元、参考資料 5 にあります、風しんに関する小委員会における審議への参加規定に基づき、各委員、参考人から風しん含有ワクチンの製造販売会社と、風しん抗体検査キット製造販売会社からの寄附金等の受取り、申請資料への関与について申告いただいております。本日の審議、又は議決に不参加となる委員、参考人はおられませんので、御報告申し上げます。なお、井上参考人におかれましては、民間検査会社の非常勤顧問をされておりますが、規定の企業に該当しないことを併せて御報告申し上げます。ここより、五十嵐委員長に進行をお願いいたします。

○五十嵐委員長 資料が足りない方はいらっしゃいませんね。それでは、議事に入ります。今日は原因の究明及び医療の提供について中心に御審議いただきます。初めに、資料 1 から 3 まで御説明をいただいて、まとめて御意見、御質問をいただきたいと思います。では、加藤委員から資料 1 の説明をしていただきたいと思います。お願いいたします。

○加藤 ( ) 委員 国立国際医療研究センターの加藤と申します。今回、内科の立場からこの風しん患者の医療に関する課題ということで御報告いたします。今日の内容は、私の勤務しております首都圏の感染症指定医療機関から見た、 2011 年から 2013 年にかけての風しんの流行と、特に成人に患者が集積していたということで、成人における臨床像を、麻しんとの類似ということでお話したいと思います。また、検査診断についても、幾つか課題があるように思いましたので、その点と、最後に医療機関の感染防止ということで、特に職員の風しんに対する免疫を維持するということに関しての課題を少し述べたいと思います。

2 ページです。 2011 年、ちょうど震災直後だったわけですが、 IDWR のほうに報告した症例を紹介します。 25 歳の男性で、東南アジアを 2 か月ぐらい旅行されて、帰国直前に発熱と皮しんが生じたということで来院されました。血液検査で白血球や血小板が低下をしているということで、東南アジアからの帰国ですと、私どもデング熱というヤブ蚊で媒介される熱性の疾患を疑ったわけですが、最終的にこの方は風しんの診断がついた事例です。

 前回の委員会でも竹田先生から、東南アジアの流行が今回の流行の背景にあったということで、当時、震災後、欧州でちょうど麻しんが流行った時期でして、風しんはこの時点では余り問題となっていなかったように思うのですが、これが流行の前触れであったのかなという気がいたします。

 その後、患者が増えてきました。これは当院を含めた首都圏の感染症指定医療機関 4 病院の診療状況のまとめです。これには臨床診断例は含まれておりませんで、全て検査で確定した症例のみです。 2012 1 月からの調査期間には少しずれがあり、 2013 年の 5 月頃である流行のピークに関しては川崎病院しか含まれていないわけですが、大体同じような傾向が見られました。男性患者が多く、またその年齢が 30 代ぐらいの方が多かったということです。感染症指定医療機関は、特に重症の患者を紹介されることが多いということで、入院の患者も 1 割から多い所は 3 割ぐらいおりました。多くは高熱で脱力が強いとか、少し補液が必要だというようなことで入院しているわけですが、墨東病院や当院におきましては、脳炎の患者が含まれていました。

3 ページ、今回の流行についてです。今回の流行の規模は、前回の流行は 2004 年にあり、私自身も 2005 年から 2010 年まで全く風しんの患者を診療する機会がありませんでした。ただ、内科という立場で見ますと、 2004 年の流行に比べると、随分多くの成人の患者が病院にいらしたという印象を持っております。脳炎が発生したということに関して、数は少ないといってもいいのかもしれませんが、合併率が一般的に言われている風しん 5,000 症例に 1 という発生率というように考えますと、全数報告として報告が上がっている患者数自体が少ないのではないかという可能性と、あるいは成人においてこれだけ集積して患者が発生するということは、これまでなかったことですので、脳炎の合併率は成人では高いのではないかということが指摘できると思います。これは麻しんでも同じようなことが言われているかと思います。

 流行の周期は、臨床の立場ということで余り知識は持ち合わせていませんが、ちょうど 1997 年、 2004 年、 2011 年から 2012 年ということで、 7 から 9 年ごとの流行周期を最近示しているのかなという印象を持ちました。次は 7 年後というと、東京オリンピックなども開催されますし、数理モデルなどを用いた流行予測ができないかということも考えております。

 臨床像に移りますが、麻しんとの類似ということが一言でまとめられるかと思います。皮しんに先行して発熱や倦怠感が数日続くということで、これは麻しんに比べますと咳嗽や鼻炎といったような症状は少ないわけですが、眼球結膜の充血であったり、口腔粘膜の発赤といった麻しんに一般的に多いと言われているような所見を成人ではよく見る機会がありました。

 皮しんの特徴として、一般に麻しんで強調される融合傾向も見られることがありましたし、色素沈着、皮しん以外に有熱期間、三日ばしかということで、 3 日程度と言われているわけですが、中には 5 日を超えて、 1 週間以上発熱が続くなどという患者もいらっしゃいました。また、流行の初期、 2007 年辺りの麻しんの診療経験というのが、まだ内科医の記憶にも残っていた時期、風しんの流行がまだそれほど察知されていない時期において、麻しんの IgM 抗体なども同時に測定するわけですが、偽陽性が 30 %前後と、 2 病院のデータですが、少なくなかったというような、検査データ上も麻しんと判断しかねるような状況がございました。

 続いて、融合傾向を示す、少し盛り上がった紅斑の写真です。麻しん・風しんの臨床像は、このようにピラミッドのように表わせるかと思うのですが、麻しん・風しんとも最重症になりますと、小児も含めて成人の患者は脳炎、あるいは麻しんでは肺炎があるかと思うのですが、風しんにおいては無症候性感染が初感染時にもかなりあると言われております。麻しんと同じように重症例では脳炎が起きてくるわけですが、例えば 2000 年とか 2007 年の麻しんの流行では、麻しん患者が都立病院などでも年間 70 例とか入院をするわけで、それに比べると風しんの患者は多くはなかったのですが、脳炎という事例が発生しているということは、流行の規模がかなり大きかったのかなというような印象を持っております。

 続いて検査診断に関する課題を御説明します。検査診断は、急性期に上がる IgM 抗体が陽性になることをもって、確定診断とする場合が多いわけですが、 IgM 抗体が発症の早期、特に皮しんが出現して 3 日以内、実は風しんの患者は、発しんが出て当日、 2 日目ぐらいにいらっしゃる患者も多くて、この時期ですと抗体が陽転化していないということなのですが、この時点での検査結果を誤った解釈をして、風しんではないというように判断されてしまうこともあり得るということです。

 血清診断ですと、回復されて 1 週間、 2 週間経ったところで採取して、抗体価を比較するわけですが、風しんの患者のほとんどは 3 日から 5 日ぐらいで回復をされて、職場復帰を急ぐなどを理由に、再診の外来にいらっしゃらない方も少なくなかったということで、検査によって診断をしっかり確定させるというのは、なかなか難しいことがあります。

 これはどれぐらい関係しているか、余り影響はないのかもしれませんが、 IgM IgG 抗体、両者の測定、診療報酬で同時に算定できないということで、診療の現場でどちらか一方にするということを習慣にしていて、 IgM だけを測定して、その後検査診断が確定できないとがあるのではないかとも考えております。回復期に来院されないために、検査診断が確定できないということが起きていた可能性はあるのではないかというように思っております。

 検査診断に関しても、流行のごく初期、非流行期と流行が始まった時期では随分やり方が変わってくるのかなと思いまして、流行期はもうかなり病気が広がっているようですと、リンパ節腫脹、発熱、皮しんといった臨床診断でかなり診断を確実にすることができるのですが、非流行期のような状況では、風しんと麻しんが先ほど申し上げたように、非常に成人では見分けがつかないということで、麻しんに似たような疾患ということで捉えられるのではないかと思います。麻しんウイルス以外にも風しん、あるいはパルボウイルス、エンテロウイルスといった様々な同様の症状を来す病原体が知られておりますので、こういったものの鑑別が必要となってくると思います。

 流行が始まる前、流行が始まった直後のような状態、まだ病気が広がっていない、有病率が低いというような状態ですと、 IgM 抗体が陽性でも、正しく風しんを診断する陽性的中率が低い。いわゆる偽陽性が多くなってしまうという問題があります。このような状況では、 PCR 法が有用と考えられますので、特に流行が始まる前、あるいは流行間期のような、流行が起きていないときに麻しんを調べる際には、同時に風しんも PCR で調べていただけると、診断に役立つ、あるいは流行の早期発見に役立つのではないかというように考えております。

 最後に、医療機関の感染防止という、医療従事者の免疫を維持することについての課題を少し述べたいと思います。医療機関という職域の特徴としては、まず 20 から 40 代という風しん感受性者が多いと言われている世代の職員が中心となって運営しているということ。また、風しん患者が来院するわけですので、患者と接触しやすいということで、この点では医療従事者の職業安全保健という立場、視点が重要になってくると思います。また、医療機関には様々な患者が来院されていますので、合併症を来しやすい妊婦や、あるいは予防接種が受けられない免疫不全者などに伝播が起こらないようにする必要があります。

 医療関係者の免疫を維持して、院内で伝播を防ぐというのが基本の対策になるわけですが、まず風しんということについて医療関係者の免疫確認の意義・必要性が全ての医療機関で周知されているのか疑問があります。全ての医療機関で風しんに対して免疫のチェックが行われている状況ではないのではないかと考えております。また、その免疫確認の手順が現在では予防接種の記録を追うことが難しい。小児期の母子手帳以外に学生時に予防接種を受けたりする機会があるわけですけれども、そういったような記録が統一されて保管されるような仕組みが余り整備されていないように思いますし、基本的には血清抗体価を調べて免疫を確認するなどの方法や基準については、まだ未統一の部分が多いように思います。

 また、医療機関では委託業者、検査部を外注するというようなことも行われるようになっており、いろいろな委託業者の方も一緒に働いております。また、学生や訪問者も多いわけで、こういった方についても免疫を確認するということになりますと、医療機関だけではなくて、例えば学校などとも手順を統一すると効率的ではないかというようなことを課題と考えています。

○五十嵐委員長 成人領域の麻しんの臨床あるいは検査についてお話をいただきました。

 続いて平原委員から資料 2 を御説明ください。お願いします。

○平原委員 資料 2 です。私はここに書いてありますように、現在国立感染症研究長感染症疫学センター長の大石先生の元で、標記のような分担研究班を担当している産婦人科医です。

 資料 2 に従って御説明申し上げますが、本日の参考資料 2 というのは、資料 2 の下のほうに書いてある「緊急提言」の本文です。いろいろ資料がありますので、これもかい摘まんで説明させていただきます。先ほど来お話がありましたように、 2004 年の流行がございましたときに、急遽妊婦の風しん罹患に関する対策班が研究班としてできました。当時、岡部信彦先生が国立感染症研究所の感染情報センター長でした。岡部先生の下に研究班が急遽立ち上がりました。

 次ページに 2004 年の緊急提言の骨子があります。参考資料 2 はたくさん書いてあるのですが、かい摘まんで骨子だけを述べますと、おおむねこの 4 つにまとめられるだろうと思います。 1 つは、とにかく予防接種を推進してほしいのだと。打っていない人たちが多かった。ちょうど、この前後に、今も話題になっている、その当時個別接種に移った世代が、ちょうど高校生、大学生ぐらいになったのですが、経過措置で予防接種を打ってくださいというキャンペーンを随分張ったのですが、打たないまま終わってしまうような状況で、極めて予防接種を打っていない人が多いというのが実態として分かってきておりました。感染していた人たちも、ちょうどそういう世代の人たちも少なからず交じり始めたということで、とにかく予防接種を打っていない人たちが多いので、打ってくださいということを接種推進の重要な骨子として掲げました。

2 つ目が妊婦への対応ということですが、実際に妊婦が風しんに罹患していた、あるいは罹患したかもしれないといったときに、なかなか適切に十分な情報提供ないしは検査、精査を進める対応の仕方が十分ではなかったというのも分かってきました。したがって、これに関して対策をし、 2 次相談施設を設けました。

3 番目は疫学的な話です。 CRS は当時も全例報告でしたが、風しんの全例把握をするべきだということが提言で述べられております。更には現在も実施されておりますが、 2 回接種でより強力な風しんの排除を目指そうというようなことが述べられています。

3 ページ目は、緊急提言で設けられた妊婦風しんの相談施設です。この当時は 15 施設を認定しましたが、現在は、国立横浜医療センターが加わって、 16 施設となっております。この施設のメンバーは、研究班が立ち上がったときも幾度も顔を合わせ、どういう対応をしようかということを協議しまして、同じような目線で同じように情報提供をしようという形で動いておりました。たまたま 2004 年の流行の後は、非流行期がずっと続いたわけですが、この間も多くの妊婦が IgM が陽性ということで、医療機関からこれらの施設に相談が持ちかけられて対応しておりました。ほとんどの場合は持続 IgM 陽性例ということで、フレッシュな感染とは違うということが診断されて、大きな問題はありませんでしたが、中には外国で感染して実際に発症したケースもありました。

4 ページです。これは風しんの緊急提言で、妊婦への対応の診療指針です。字が小さくて大変申し訳ありませんが、これは現在もそのまま生きております。ただ、 4 ページの上のほうの資料で、左の真ん中の枠の所に、抗体陰性又は 16 以下という所に書いてある中に「夫、子供及び同居家族へのワクチン接種の推奨」と書いてあるのですが、これは今や職場など、社会の中でワクチンを打つべきだということで、ここのところが少し状況が違うような感じがします。その右の辺りに、 256 以上の所で「再度血清 HI 及び風しん IgM を測定」と書いてありますが、先ほど加藤委員からもありましたが、同時に測定すると保険が通らないというような問題に直面しまして、現在に至るまで、各都道府県で個々に対応してもらっているというのが現状です。

 このようなフロー図の下で、 4 ページの下にも書いてありますように、疑いが出た場合は、更に 2 次カウンセリングを求めるべく 2 次窓口のほうへ行って相談をしてもらうということをこの提言では述べています。

5 ページですが、緊急提言で述べられたことに関しましては、参考資料の 18 ページに多勢の参画していただいた先生方のお名前が書いてあります。実に国立感染症研究所の先生方には多勢加わっていただきましたし、ウイルス学、あるいは小児科、ワクチンの専門家、産婦人科など、いろいろな先生方に入っていただきまして、今まで述べられていた概念が本当に良いのかというようなこともとことん議論していただきました。そこで出てきた結論は、 5 ページの上のほうに書いてありますように、 HI16 以下の妊婦若しくは妊娠を考えている女性は、陰性扱いにしましょうということで、これは今まで 8 倍あったのですが、それを 16 倍にいたしました。

 そこに幾つか書いてありますように、 CRS の発生頻度というのは、必ずしも高くはない。必ずしもそれまで述べられていたように非常に高いわけではなかったというようなことも判明しました。また、産科の医師もワクチンを妊娠する前に打っていればいいのですが、産褥期に抗体価が低い人たちは、お産が終わったらワクチンを打ってくださいということを強力に勧めましょうということもそこで述べております。その下に産科診療ガイドライン、これは日本産科婦人科学会より 2008 年に最初の版が出ているのですが、この緊急提言をほとんどそのまま盛り込んだ形でガイドラインができて、ガイドラインになりますと、さすがに現場の診療のレベルでは、こういう診療の進め方が浸透している状況です。

 次に 6 ページの上のほうに書いてあるのは、私どもの施設でやっていたワクチン実施状況です。お産の前に、妊娠中に風しんの抗体価が低い人、これは 16 倍以下ということで、 2 割ぐらいおられます。この方たちには、とにかく妊娠中に風しんにかからないように気をつけてくださいというような説明をするのですが、それと同時に、お産が終わったときに、とにかく入院している間に、ワクチンを打つというようなやり方をして、協力をいただくと、 8 割ぐらいの方が打っていただけたというような実態があります。

 下のほうですが、妊娠に気付かずにワクチンを打った方も少なからず御相談に来られていて、これに関しましては、いろいろな情報発信をしておりますが、現時点ではワクチンで実際には CRS が発症したという事例の報告はないというようなことで、心配を必要以上にしないようにという情報を提供させていただいています。

7 ページに移りますと、先ほどの 16 施設の相談の事例です。 2011 年ぐらいから、実際に顕性感染例の相談が急に出てきております。これは実際に濃厚に感染したということで、濃厚に相談に乗ったというようなケースですが、 2012 年に比べて今回の期間に関しては更に 4 倍近いケースが実際に相談を受けられて、羊水検査施行例も 4 倍ぐらいあったというようなことが分かっています。実際に今回の顕性感染例の中では、職域での感染例、 30 代、 40 代の男性などから、そういった方と働いている妊婦が移されるというような形が多く含まれているということが大きな問題になっております。

7 ページの下のほうです。羊水、胎児期での診断も、感染してすぐに羊水の検査をすると分かるわけではない、ある程度は週数経ってからでないと検査しても意味がないということも分かっております。また流産、死産もそこそこの頻度で起こっているということも、詳しいデータは取られておりませんが、報告がございます。また、胎児感染例としては、感染例のパーセントは高いです。更に CRS の発症例がどの程度の頻度で出るのかということに関しては、海外の文献等がいろいろありますが、必ずしも一定の見解ではないということで、全てが全て発症しているわけではないというようなことも報告がされております。

 まとめです。これは研究班でもずっと前から言っておりましたが、とにかく排除しない限り CRS は防げないということが共通の見解です。予防接種の啓発をどのようにすればいいのか。該当した世代の人たちの認識をどう高めればよいのか。あるいは妊婦を取り巻く生活圏、今までは家庭のことを中心にして考えていたのですが、職場、家庭、学校、とりわけ職場は先ほどもおっしゃいましたが、感染する感受性のある人たちの世代がかなり働き盛りの世代で職場におられるわけで、その人たちがとにかくワクチンを打ってくれない限り進まないのではないかというようなことを考えております。

8 ページの下は、集団免疫閾値が 80 85 %ということで、これ以上になっていくと風しんが比較的排除に近い状況になるということが言われているのですが、私たちのところのデータですが、 2004 年の流行のとき、 2004 年の流行ということは、つまり 2003 年が患者が多かったという形になるわけですが、このときが風しんの抗体価が 16 倍と、先ほど言いましたようにリスクのあるグループが 20 %を超えるというような状況で、その後、不思議と 2004 年、 2005 年とずっと下がっている状況で、これに合わせて流行がなかったわけですが、今回の 2010 年、 2011 年ぐらいの流行に合わせまして、また 25 %近いデータが出てきているというような状況で、妊婦は全員風しんの抗体の測定を妊娠のときにはルーチンとしてやっておりますので、そういうデータを見ていくと、予測が可能な状況も実際起こっているというようなことで、これと風しんの発症、流行とが一致しているというようなことも分かりました。私のほうからは以上です。

○五十嵐委員長 妊婦の風しん対策、あるいは医療体制について御説明をいただきましてありがとうございました。前回、緊急提言に対する対応につきましては、岡部参考人からも御意見をいただきました。事務局から補足説明はございますか。

○結核感染症課課長補佐 ( 氏家 ) 参考資料 2 の最後の 2 枚のページなのですが、緊急提言に関連して厚生労働省から発出しました課長通知を付記させていただいていますので、簡単に説明させていただきます。平成 15 11 18 日の課長通知ですが、同年の 9 30 日に 15 歳から 24 歳までを対象にした風しんワクチン未接種者に対する経過措置を終了したことを受けて、まだまだ抗体保有が十分でない方たちがいる中で、当該者をはじめとする風しんワクチン未接種者に対して、情報提供をお願いした通知です。

 平成 16 4 9 日の通知ですが、 2004 年の風疹の流行による CRS の発生報告を受けまして、先天性風しん症候群の発生防止について依頼したものです。

 平成 16 9 月の通知ですが、緊急提言が 8 月に出されまして、それを受けた形で風しん対策の強化ということで、当該地域の医師会と密接な連携の下に、適切な対策及び情報提供等にあたられるよう、要請を行ったものです。このほか、 2004 年の流行を受けて、先天性風しん症候群の発生届の基準見直しを行ったことや、 2006 年には定期接種として風疹ワクチンの 2 回接種を実現し、 2008 年から風しん症例の全数把握等も開始して対応を進めてきたところです。以上です。

○五十嵐委員長 次に、資料 3 について西村参考人から説明をお願いします。

○西村参考人 風しんをなくそうの会『 hand in hand 』共同代表の西村と申します。私は、 1 人目の子供の妊娠時に風しんの抗体価が低いことが分かっていました。しかし、出産の後、入院しているときに、抗体が低かったからワクチンを打っておきませんかと、病院側から言われることもなく、授乳中は打ってはいけないと思い込んでいたり、どこで打てばよいか分からず、医師に伺うこともできなかったりして、結局、接種しないまま 2 人目を妊娠、そのときに風しんにかかって産まれた娘がいます。職業は保育士です。しかし、今回このような状況になるまで、保育士として職業上感染症になりやすいリスク、自分が他の人に移すかもしれないリスク、妊娠中に風しんになる恐さをよく知らないまま来たという事実があります。このような思いをする女性や御家族を減らすために、同じような立場の人と始めた活動が『 hand in hand 』です。今日は、患者会の立場、そして保育士の立場で、提案したいことをお話させていただきます。

 資料 2 ページです。先天性風しん症候群 (CRS) 、先天性風しん感染 (CRI) とは。 CRI は、母子感染はしているが、赤ちゃんに症状のないことを言います。母親が不顕性感染で、子供が CRI であった場合、普通の妊娠・出産だと思うでしょう。だから、特別な感染予防はされません。でも、ウイルスは一定期間排出されます。

 資料 3 ページです。風しん流行の影響を受けた子供への対応の課題です。まず 1 点目は、今回の風しんの流行の中、妊娠した女性から産まれた、又はこれから産まれてくる赤ちゃんたちに適切なケアをしていただきたいということです。パターンは 3 つあると思います。まず、私のように妊娠中に風しんになったことが分かっていて、すぐにケアをしてもらえる赤ちゃん、それから、患者会にもいますが、お母さんが妊娠中に風しんウイルスに感染したことに気付かずに産まれてきた赤ちゃんてす。これは、途中で子供の体調不良をきっかけに気付いたケースで、保育園に通っていた赤ちゃんもいます。子供のコミュニケーションや学習の発達を妨げないよう、健診等で早期に診断されることを願っています。しかし、このように診断された赤ちゃんは、ウイルスを一定の期間出し続けるということで、周囲への感染予防のことを言われています。子供の発達の場である家庭や保育園などにおいて、どの程度の注意が必要なのかということには、皆さん情報がいろいろで困っています。

現在 保育園において、 Q&Aを参考に CRS でウイルスを排出しているお子さんをお預かりするとなると、別室で 1 1 の保育をすることになると思います。私がそのお子さんの担当になると考えたとき、自分が休んだときは誰が代替えをするのだろう、他に十分に抗体があると分かっていると分かっている保育士は誰だろうということ、 1 1 なので、子供や保護者とよい関係を築いて、その関係を継続できるだろうか、保護者と行き詰まってしまわないかということ、他児との関わりがない中、社会性を育てることはできるだろうかなどの不安材料があります。

 一方、症状はないけれど、一定期間ウイルスを出している CRI のお子さんも、今回の流行で一定数産まれていると思いますが、この人たちには特別な感染予防をしてもらうことはできません。大人でも 15 30 %が風しんウイルスに感染しても症状がないと言われていますが、このようなお子さんたちが一定数社会や集団に存在することも、風しんが大流行した地域では考える必要があると思います。このため、風しん対策の基本は、みんなでワクチンを打って、発症する人を減らそうということになっていると私は理解しています。

 資料 4 ページです。 CRS/CRI 児のケアに必要な感染対策。患者会でも、医療機関や保育園で困っている経験を聞いています。例えば、赤ちゃんが予防接種や乳児健診を断られてしまっているという事実があります。我が子の近医の受診は、ウイルスの排泄がなくなるまでは来ないでくれと断られました。問題なく受けさせてくださる所もあるので、病院や専門科によって考え方が違うのかなと思うのですが、小さい子を連れて遠い病院に行くことは簡単なことではありませんし、違う自治体に行くと無料では受けれず、自己負担になってしまいます。赤ちゃんを預けることができず、働けないでいる保護者にとっては、このような出費は大変負担となっています。実際にはウイルスを出していても、何の行動の制限もない CRI のケースがあることを考えると、分かった CRS の子と保護者だけにこのような厳しい制限が加わることを大変悲しく思います。

 資料 5 ページです。 0 歳児がお座りができるようになるのが 5 6 か月、はいはいをして動き回るようになるのが 8 か月前後と言われています。この頃までは、赤ちゃんが自ら他の赤ちゃんの所に行って接触したりすることはありませんので、免疫のある保育士が担当をし、通常されている手洗いをします。 CRS あるいは CRI と分かっている赤ちゃんは、生後 3 か月の後に陰性の検査結果を 2 回確認することが必要と言われていますので、それまでの間は免疫のない妊婦さんとの接触を避けるなど、必要な配慮を職場がする必要があると思います。

 しかし、問題は CRS CRI と分かっている赤ちゃん、また、そうとは気付かれずにウイルスが出ているかもしれない赤ちゃんをケアする保育士自身が、十分な知識や準備をできていないことにあるのではないかと考えます。私は、子供がウイルスを出していると分かっていて、大変周囲に気を遣う機会が増えました。同じように、知らずに他の人に移すかもと考えて不安になっている親御さんもいます。ウイルスの専門科の先生やドクターは、赤ちゃんから感染するようなことはないと言ってくださっていますが、周囲に免疫のない人がいたらどうしようということを保護者が心配しなくてもいいように、必要な制度を整えていただくことを望みます。

 資料 6 ページです。「保育・教育関係者自身の健康を守る」「子供や保護者の感染源とならないために」。現在の保育の現場の課題を説明します。保育士は、学校で学んで資格を取る人もいますが、試験だけでも取れる資格です。カリキュラムにおける感染予防の情報は十分とは言えません。また、保育の実習の場においても、医学部や看護学部のように事前に麻しん、風しん、おたふく風邪、水疱瘡、 B 型肝炎の免疫やワクチン接種歴の確認は徹底されていません。いつ集団生活の場に感染症が持ち込まれるか分からない、大変怖い状況があります。このような状況を改善するためには、養成課程の間にしっかり学べるようにすること、実習前には免疫や接種歴を確認すること、必要なことは義務化することが重要ではないかと考えます。

 資料 7 ページです。なぜ、現在できていないのか。なぜ、現在は学校や保育所によってばらばらなのかを考えてみました。幾つか問題点があると思います。まず、このような職員や保育の場における感染対策としてのワクチンについて、経営者等がよく理解していないのではないかと思います。職員の労働安全として必要なことでもあるので、採用時健診や定期健診の機会に抗体を調べてワクチン接種を勧めたりすることが経営者の責任であると、どこかに明記することが必要だと思います。費用は常にネックになりますが、検査やワクチンのお金が一時的にかかってしまうとしても、突然発症して欠勤されたり、子供や保護者、同僚に感染させるリスクを考えたら、私は高いとは思いません。

 学校によっては、そのようなことを義務化すると、受験者が減ってしまうことを心配することもあるかもしれません。これは、例えば定期接種の機会を逃した人のために、期間が過ぎても、 18 歳の高校卒業の時点で、接種し忘れたワクチンは無料で接種できるような仕組みにすれば改善されるのではないかと思います。自分が接種したことがあるかどうか分からない人もいますので、行政のデータベースが早く整うことも期待しています。

 資料 8 ページです。実は、既に厚生労働省からはすばらしいガイドラインが出ています。そこには、感染対策は、園児だけではなく、職員にとっても重要であると明記されています。風しんだけではなく、他の感染症のことも含まれており、大変すばらしい指針だと思います。問題は、ガイドラインがあるのに、できていないことです。今回、 CRS CRI の子供を受け入れるに当たって、保育所側の準備が不足しているからということにならないように、この状況を改善してほしいと願っています。そのためには、まず、なぜ実施できていないのか、全国ではどれぐらいの施設が対応できているのか、できない問題を国や自治体はどうサポートすればいいかを明らかにするために、実態調査をしていただきたいと思います。

 資料 9 ページです。風しん流行の影響を踏まえた新たな資料を作成する。今お話したことは、風しんに限ったことではありませんが、今日、私が提案したいことは、今回の風しんの流行を受けてしまった人たちを支援する体制づくりです。 CRS CRI の子供を抱えた保護者が困っていることの 1 つが、必要以上に行動制限を受けたり、心配して外出を控えたりすることです。このようなことがないようにしていただきたいです。受け入れる側も困っていると思いますので、受入れ施設向けの支援を国として行っていただけたらと思います。世の中には、 CRI に気付かずにいるケースもあるわけですし、大人でも不顕性感染の人たちがいます。日常生活においては、こことのバランスも考えていただけたらと思います。

 資料 10 ページです。ここからは参考資料です。 11 ページを御覧ください。先ほど 8 ページでも紹介しましたが、厚労省からは感染対策ガイドラインが出ています。先ほどのガイドラインを読み進めていくと、このページが出てきます。「 4 保育所職員も、ワクチン未接種で未罹患の場合は、必要回数の 2 回ワクチンを受けて、自分自身を守り、子供たちへの感染伝播を予防することが重要です。 5 予防接種歴・罹患歴記録の重要性、保育所での感染症対策を考える上で最も重要な点として、職員と子供たちの予防接種歴・罹患歴の把握と記録の保管があります」と書いてありますが、これが現場の保育士の間では当たり前にはなっていません。予防接種歴・罹患歴記録の重要性については、子供のための具体的な指示は明記されていますが、保育士に対しての指示は明記されていません。この点の改善と周知をすることが必要だと思います。

12 ページです。最後に、この資料は現場の保育関係者にヒアリングをしたり、小児科医、これまで予防接種対策の改善に取り組んできた人、現場の感染症関係者の助言を得て作りました。たくさんの意見を伺いましたが、保育関係者の免疫確認を徹底することと、入園する人たちに予防接種の理解を深めて接種してもらうこと、これは今回は風しんに特化しましたが、それ以外の予防接種においても必要だと、改めて感じました。人権に配慮し、必要な感染管理やワクチン接種勧奨を行うことによって、当事者の生活や権利を妨げないような配慮をお願いします、という通知を厚労省から出していただきたいと思います。以上です。

○五十嵐委員長 先天性風しん症候群、保育士の感染症教育、 CRI の乳幼児への支援ガイド等、いろいろな問題について御説明を頂きました。先天性風しん症候群に関しては、先月、感染症研究所から Q&A が公表されております。参考資料 3 に出ておりますが、大石委員から御説明をお願いします。

○大石委員 国立感染症研究所の大石です。先天性風しん症候群に関する Q&A は、 9 月末日に感染研のホームページにアップしております。これは国立感染研の感染症疫学センター、ウイルス 3 部、委員の平原先生、宮崎先生に大変御協力を頂き作成したものです。この Q&A は、先天性風しん症候群の赤ちゃんの保護者の皆様からの御相談を受ける市区町村、保健所等の担当者に利用していただくことを想定して作成したものです。

1 ページです。 Q1 「先天性風しん症候群とはどんな病気ですか」に対して答えております。 CRS の発症と妊婦の在胎週数と異常児の発生の頻度との関係を図で示し、妊娠早期に発症の確立が高いということを説明しております。また、発症早期では、特に妊娠 2 か月までには、目、心臓、耳の全てに症状を発現させることが多いということが書かれております。

2 ページです。先天性風しん症候群の届出に必要な要件、すなわち症状、病原体診断及び抗体検査ついてまとめています。 Q2 「先天性風しん症候群の診断のために、どんな検査が、いつ行われますか」ということで、ウイルス分離、 PCR 検査、抗体検査、特に抗体については、 CRS 児の IgM 抗体と IgG 抗体の動態についてまとめております。

4 ページです。 CRS 児の免疫動態が図示されています。 Q3 「妊娠中に風しんウイルスに感染した可能性がある妊婦のその後の受診場所やカウンセリングについて」ということで、相談体制についてまとめています。妊婦の症状が本当に風しんなのかどうかを確認する必要がある場合に産婦人科、あるいは産婦人科の先生から内科、皮膚科といったかかりつけの医師に紹介がされることになるということと、産婦人科の平原先生の研究班で指定されている各地区ブロック相談窓口が案内されています。

Q4 では、子供が先天性風しん症候群ではないかと不安な妊婦が発生した場合、妊婦の感染疑いについて、妊婦に風しんを疑わせる症状があった場合と、妊娠中に風しんの典型的な症状がない場合、いわゆる無症候感染の場合についてアドバイスがされています。

7 ページです。 Q5 では、実際に診断がされたときに、自治体、保健所等の担当者からの支援体制について詳細に記載されています。

8 ページです。 Q6 は、先天性風しん症候群の予後についてです。これは、かかりつけの先生に相談していただきたい旨を記載しております。

Q7 は、先天性風しん症候群の赤ちゃんから周囲に風しんウイルスを感染させる可能性について記載しています。実際、赤ちゃんからウイルス排泄があり得るために、周囲の人に感染させる可能性がありますので、医療機関での先天性風しん症候群児に対する対応等について記載しております。また、医療機関だけではなく、家庭でも兄弟等についても記載されています。

Q8 「周りの人への感染性はいつまでありますか」という質問ですが、これはかなり個体差があります。一般的には出生後 1 歳ぐらいまでは感染性があるのではないかと考えて対応したほうがいいとも書いていますが、実際は千差万別で、生後 1 か月で消える場合もあるし、 1 年以上ということもあり得ます。生後 3 か月以降で複数回検査ができる体制を、国立感染研及び地方衛生研究所等々で実施する体制について記載しております。

Q9 「自宅での生活で特別に注意することはありますか」ということ質問です。赤ちゃんからウイルスが排泄される可能性がありますがで、母親は免疫を持っているので母親への感染の心配はありませんが、父親や兄弟等への予防接種も含めた対応について記載されております。記載が質問ごとに重複している部分もありますが、 Q&A を利用する方がどこから読まれるか分からないので、かなり重複した記載になっていることを御了解いただきたいと思います。

Q10 「自宅でのおむつの処理はどうしたらよいですか」という質問で、これについても風しんに対する免疫を持っていれば特に心配はなくて、おむつ交換後は丁寧に手を洗うということが書かれています。

Q11 ですが、衣類の洗濯について、洗濯をすれば衣服に付着したものはきれいに洗い流されて、衣服の感染性はなくなるということを示しております。

Q12 「保育所に入所できますか」ということです。大変配慮は必要な部分であります。原則的にはウイルスが排泄されている以上注意が必要ですので、生後 3 か月以降の検査で、 1 か月以上の間隔を空けて連続して 2 回の検査で咽頭ぬぐい液、唾液、尿等からウイルスが検出されないことが確認できれば、周囲の人への感染性はないと考えられますので、保育所入所が可能であるということです。また、いろいろ問題が生じる場合には、市町村の担当課で判断がつかない場合があれば、厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課に御相談くださいということが記載されております。

Q13 「先天性風しん症候群の赤ちゃんに外出の制限はありますか」ということですが、これはまず主治医の先生と相談していただくことが大事であると。基本的に外出は可能ですが、幾つか注意点があるということです。

Q14 は、乳幼児健診や歯科健診、予防接種等、集団の場ではどのように対応すればいいか。これもウイルス排泄ということで、感染性が問題であり、周囲の妊婦等への配慮が重要であるということです。健診の場で CRS 児が最初から排除されることがないよう、そういう機関にはしっかりと通知を徹底していく必要があると思います。

Q15 は、先天性風しん症候群の赤ちゃんの自宅に訪問する保健師、訪問看護師などの感染防止はどうすればいいか。これは風しんに限ったことではありませんが、他のウイルスに対する免疫を保健師、看護師の方々に持っていただくことが原則であろうということです。こういった方々に CRS 児の対応をしていただく、その他の注意点も記載されております。

Q16 は、定期予防接種を受けてもよいか、また、 1 歳になったら MR ワクチンを接種すべきかについての質問です。原則的には問題はないということです。以上です。

○五十嵐委員長 大変具体的で、現場のことを考えた Q&A だと思います。

 それでは、参考資料 2 、参考資料 3 を含めて資料 1 から資料 3 まで御発表いただきましたので、まとめて御質問、御意見がありましたらお願いします。

○岡部参考人  Q&A でお尋ねします。非常によくまとめられているし、先ほどの西村さんからの質問にも随分答えられているのではないかと思いますが、 1 つは、私は衛生研究所にいて、調先生からもお話が出ると思いますが、検査する体制は整っています。私の所でも、要請があればできるようにはしています。ただし、衛生研究所は、そのための行政的な根拠がどうしても必要になるところがあって、引き受け兼ねるという所も中にはあると思うのです。今回の委員会に期待するわけですが、そういうものに対して根拠をきちんと示していただけると、本当にどこでもできるようになると思います。今の段階では、そこの研究所の理解によってボランティアレベルでやっているような段階にあるということです。

 もう 1 つは技術的なことですが、赤ちゃんから検査をしてウイルスが見つかればと言っていますが、これは PCR を示しているのか培養を示しているのか。私の所では、 PCR はかなり長く検知される可能性があって、技術的には難しいけれども、ウイルス分離をメインには出していますが、アメリカの教科書等では議論のあるところで、その辺りはどのようにお考えになっているのかを教えてください。

○大石委員 御質問は、 CRS 児に対するウイルス検査のプロセスがどうなっているのかということだと思います。今回、 Q&A を通して検査の必要性を示したわけですが、ウイルス検査については、国立感染研で承認されている CRS 児のサーベイランスの研究の中で実施できるものと考えています。この検査体制については、 2 つの厚生労働省研究班(大石班と竹田班)が基盤になって、地方衛生研究所と連携を取って、ウイルス検査体制ができていくものと理解しております。

2 点目の検査については、 PCR とウイルス分離と両方あり得ると思っておりますが、この辺りは竹田委員に聞いていただいたほうがいいのかもしれません。

○竹田委員 検査については、 PCR を想定して書かれているのだと思います。ウイルス分離はかなり時間もかかるし、技術もより高いものを要するので、地方衛生研究所で実施してもらうにしても、ウイルス分離は技術も環境も職員のマンパワーも要るので、検査自体は PCR を想定して、どういう判断基準を持っているかを考える必要があると思います。

○岡部参考人 技術的な部分は後で検討させていただければと思いますが、課題としては少し残っているのではないかと思います。

○小森委員  2 点教えていただきたいと思います。 1 点目は平原先生にお願いしたいのですが、先生の資料 2 5 ページには、「発生頻度は基本的には決して高くない。胎児感染率 20 ? 、これらのうち CRS 発症 30 ? 」と書いてあります。分母が違うのかもしれませんが、 7 ページには、羊水、胎児診断での報告、胎児感染 80 (8 週まで ) 50 (9 12 ) とあります。この数字が乖離しているのは、私が十分に説明をお聞きしなかったのかもしれませんが、その点をお願いします。

○平原委員 混乱をさせて申し訳ありません。こういうケースの海外からの文献報告自体が非常に少なくて、それぞれの文献によって状況が違うということもあります。 1 つは、恐らく古い文献ですと、確かに胎児感染率、あるいは CRS の発症率が低い数値というのは、 2004 年の緊急提言当時の議論がこのような議論でしたが、実際には検査の検出感度等を考えると、先ほど申し上げたように PCR 等いろいろな方法が出てきたといったことを考えると、新しい文献では CRI の感染率はもう少し高い。ただし、そこから発生してくるケースは半分以下ではないかということは、文献的には幾つか共通なところがあります。

 ただ、どの文献も非常に限られた症例数の中での議論なので、一定した見解がなかなかないのが現状ですので、このような書き方をしてしまいました。かつての議論であったのと最近の文献と、少し違った内容になっているところがあるので、このような資料にしてあります。

○小森委員 もう 1 点、先ほどの岡部委員の御質問にも関連しますが、西村参考人のお話を伺って、 CRS 児、あるいは CRI 児の母親たちが実際に差別を受けたということをお聞きすると、この問題が国民的な大きな課題に更になっていく過程で、周囲の母親たち、保育所の職員等が非常に不安になると思います。大石先生がお示しになった Q&A の中の Q8 「周りの人への感染性はいつまでありますか」の下に、このように検査ができますよという記載がありますが、この委員会で期待をしたいと思いますが、是非みんなの負担で、こういうことをすれば安心ですよ、是非受けてくださいという趣旨に、この委員会の議論を経てなっていくといいなと思いました。委員会の議論を踏まえて、 Q&A の改訂といったこともお考えいただきたいと感じました。

○五十嵐委員長 それと関係しますが、岡部先生が御質問された検査の根拠についてはどのようにお考えですか。

○結核感染症課課長補佐 ( 氏家 ) CRS については、感染症法の第 5 類の全数把握疾患になっているので、診断については感染症法に基づいて検査を行うことになるかと思います。また、その他の感染性の評価については、 Q&A でも記載をしていただいておりますが、資料 6 でも PCR 検査の必要性ということで議論があります。この委員会で指針の策定について審議する中で、適用と根拠についても併せて御議論いただければと考えております。

○五十嵐委員長 岡部先生、よろしいですか。

○岡部参考人 それはそれでいいのですが、はしかの Elimination のときも同じことを申し上げていますが、本当に数が少なくなってくると、こちらとしては 1 1 例を大切にして、はしかの Elimination に向けていきたいのですが、一方では地域でたった 1 人の方になってくると、非常にその方にプレッシャーがかかる可能性があるので、十分そのデリケートさを理解してやらなければいけないだろうと思います。 CRS も同じで、通常ならば普通の生活をしている人に対して、うまく周りが理解してあげないと、感染症はしばしば無要の差別のような状態に陥るので、その辺りはきちんとしたコミュニケーションを取ることも必要だろうと思います。

 それが検査に結び付く発言なのですが、 PCR に余り重きを置いてしまうと、 PCR が出ていることイコール感染性ではないと思うのです。ただ、判断の根拠が難しいから、そこは技術的に課題があるので、ここで議論しても収まらないのではないかと思います。そこは議論すべきものとして取っておいていただければと思います。

○五十嵐委員長 大変重要な御指摘だと思います。ほかにいかがですか。

○館林委員 素朴な質問ですが、 CRS CRI というものがあって、不顕性感染の方から CRI があると西村さんから御説明がありました。 CRS はその後の治療が必要ですからいいとして、 CRI の方の産まれた後の感染対策はどのようにフォローされているのかがよく分かりませんでした。

 もう 1 つは、せっかく西村さんがいらして、通える医療機関を探すのが大変だったとか、具体的なお話があったと思います。 CRS のご家族の方がうまく暮らせるようになるためにどうしたらいいのかということは、患者会の皆さんに聴取り調査をして、どのような情報提供をしたら良いかを考えていったらいいのではないかと思いました。

○大石委員  CRI の実態は、まだ十分に把握されていないのではないかと思います。実は、今回感染研で立ち上げている CRS 児のサーベイランス研究についても、当初は CRI を含むという申請をしたのです。しかし、 5 類全数の対象が CRS であって、 CRI の届け出のしくみがないために、 CRI を把握できないだろうという倫理審査委員会の判断があり、 CRI はサーベイランスの対象から削除されることになっています。今回の倫理申請は急いでいた部分もあるのですが、 CRI についての議論はまだ十分にされていないのが現状だろうと思いますので、是非この委員会の中で議論を深めていくべきではないかと思っております。

○五十嵐委員長 もう 1 つの御提案、患者がどういうことに困ったかについて、聴取り調査等をしていただきたいということですが、西村さん、何か追加はありますか。

○西村参考人  Q&A を出していただいて、これを使って行政の方が相談機関になるようにということでこの Q&A を作っていただいたと思いますが、これが出る前に私が行政に掛け合ったときに、そのときは子供を保育園に入れたいのだけれども、我が子は CRS で、ウイルスが出ているのだけれども、申込みができるかどうかという相談をしようと思って電話をしたら、担当の方が「 CRS って何ですか」という所だったのです。その後、是非勉強会をしていただきたいというお願いをしたのですが、こちらから言っても「こちらに医師がいるし、私たちと一緒に勉強をする必要はありません」と言われて、その後、行政の方がどのような勉強をされたのか、今どのような情報を持っておられるのかといったことは私は分からない状況にあります。 Q&A がいつまでに浸透して、いつから CRS 児を持つ親は行政と相談ができるようになるのか、目標を作っていただけたら有り難いと思います。

○北原委員 平成 16 年の提言のときに、厚生労働省から各都道府県にいろいろな通知が出されていて、仕組みが分かっていないのかもしれませんが、その先の各地域のアクションはどういうものがあったのか。また、そのときに、なぜワクチン接種までつながらなかったのかという反省の部分があると、今後につながるのかなと思ったので、もし知見があれば教えていただきたいと思います。これが 1 点です。

 もう 1 点は、西村さんの資料の中に「保育所における感染症対策ガイドライン」がありますが、これは誰から誰に対して出されているのか、このガイドラインを誰が読んで、どうアクションすればいいのかが分からなかったので、もし御存じであれば教えていただければと思います。

○雇用均等・児童家庭局保育課保育指導専門官 ( 馬場 ) 2012 年に、改訂版として「保育所における感染症対策ガイドライン」を作りました。これは、一般的には各保育所に向けて通知をしており、対策を取っていただくように、また、厚生労働省のホームページにも PDF の形でアップしているので、広く国民の方にも御覧いただけるような状況になっております。保育士養成校に関しても、このようなガイドラインがあることを保育士養成協議会を通じてお知らせしております。

○五十嵐委員長 保育園保健協議会として、ガイドブックとしても市販されていますね。参考資料 2 の最後に幾つか通達が出ていますが、それに対してどういうリアクションがあったかということはいかがですか。

○結核感染症課課長補佐 ( 氏家 )  本日御欠席の渋谷委員、宮崎委員からも、今回の議論について御意見を頂いており、その中でもそういったことについて触れられている部分がありますので御紹介します。

 委員限り配布資料として、渋谷委員の御意見です。第 2 回小委員会を欠席いたしますが、特定感染症予防指針の策定に当たり、若干の意見をお届けしたいと思います。いつまでに何をどこまで達成するのか、進行管理ができる短期・中期の目標が掲げられるとよいと考えます。

 原因の究明について。 5 類感染症ということで調査を控えてしまうことになりやすいので、麻しんに準ずるような感染源につながる情報まで、主治医の協力の下、患者本人への聴取り、検体採取等を行うよう努めることとしてはいかがでしょうか。風しんの性質上、周辺の接触者の調査については、麻しんに比べて次につながる効果的な調査には限界があり、限定的になると思います。予防接種の普及を図ることに重点を置きたいと考えます。

 発生予防、蔓延の防止について。風しん患者と確定していない場合 ( 疑いで抗体検査結果まで時間がある等 ) であっても、蔓延防止のためにできるだけ外出を控える指導をお願いすることを盛り込んではいかがでしょうか。診断届出の基準にもよりますが、まずは臨床の診断で何らかの対応を始めるのがよいと思います。必要な人に予防接種ができるよう、抗体検査の普及、産業保健分野での啓発を重視、また、ワクチンデーの創設、キャッチアップキャンペーンなど、風しんに限らないことですが、インパクトのある客体と広報媒体を活用し、啓発を進めることが必要な時期ではないでしょうか。以上よろしくお願いいたします。

 宮崎委員に関しては、公開可能ということでしたので、参考資料 4 としてお付けしています。

1) 今回の風しん流行について。国立感染研に作られたリスクアセスメントに詳しいので、追加する点は多くないが、風しん再流行と CRS 児の出生の要因について簡単に述べる。日本では、 MMR ワクチンを用いて英国方式から米国方式に切り替えたが、 MMR ワクチンの髄膜炎問題が起きてしまい、 MMR ワクチンの使用ができなくなり、麻しんワクチンと風しんワクチンを別々に接種しなければならなくなった。平成 6 年改正で、改めて風しんワクチンの幼児接種を定期接種化したが、麻しんワクチンに比べて風しんワクチンの接種率が 10 15 %は低く推移した。これは、国民における両疾患の認知度の違いだったと思われる。同時に、男女中学生に対する接種を経過措置として残したが、個別接種化したこと、男女ともに接種するということで、将来に妊婦を守るという視点が薄まったこと等から接種率が上がらなかった。国は、接種上限年齢を延長して接種率を上げようとしたが、国民の関心は薄かった。学校現場での勧奨も少なかったと思われる。 MMR ワクチン問題後は、予防接種に対する国の姿勢が後ろ向きになり、問題がなかったはずの麻しんワクチンと風しんワクチンの混合ワクチンの開発が遅れ、実際に MR ワクチンが使われ始めたのは平成 18 年からであった。ここから麻しんワクチン接種率と風しんワクチン接種率が同レベルになったのである。

 麻しん排除対策として、 MR ワクチンの 3 期、 4 期が定期接種化されたが、ともに期待値ほど接種率が上がらなかったのは御承知のとおりである。中学生女子のみに接種されていたときの接種率はほぼ 70 %であった。当時、中学生は既に 70 %の生徒が風しん感染を受けていたので、合計 140 %になり、全員が免疫を持つことになりそうであるが、実際には風しんにかかっていない生徒の中でワクチン接種をしなかった生徒が 5 %残っていた。風しんは、発熱、発しんの症状を出す前に、既にウイルス排泄しているので、流行を急に止めることが難しい反面、麻しんほどの伝染力がないため、風しん流行はその集団の 7 割以上が免疫を持つと、流行が一旦終息していく傾向がある。逆に言えば、ワクチンを接種しない限り、感染もしないまま成人する者が 20 30 %残るわけである。

 上記の複合要因によって、 20 歳代から 40 歳代の 10 30 %の成人男性に加え、免疫を持たない妊娠可能年齢の女性も残存したと思われる。 2004 年流行時に警告は出されたが、その後、流行が沈静化し、国・国民の関心も沈静化したのである。同時に、国内株の伝搬は一旦途絶えたと思われる。

2)CRS 児の診断と治療について。国立感染研が作られた Q&A にかなり詳しく対応が書かれているので、追加する点は多くないが、簡単に述べる。

 先天性風しん症候群児が多数出生した 1960 年代の沖縄奄美地方をはじめ、 1970 年代以降、本土でも風しんの大流行が約 5 年置きに繰り返された。その実態は、加藤による病院調査、門屋らによる聴覚障がい特別支援学校調査等で明らかになっている。今年の流行から約半年以上遅れて、 CRS 児の出生が懸念される。

CRS 児の症状、経過については、かつての国内外の大流行時のデータにより、ほぼ整理し尽くされているが、検査手技は現在のほうが格段に進んでいる。それはウイルス学的診断、新生児聴覚スクリーニング、心血管の超音波検査等である。要は、新生児、乳児を見たときに CRS を鑑別診断として上げるかどうかである。鑑別診断として上げることができれば、かつてよりは診断しやすくなっている。 CRS を疑う目があれば、実際の診療は小児科、眼科、耳鼻科などが連携して当たる。 CRS 児は、出生後しばらく風しんウイルスを排泄することが知られているが、個人差が大きい。彼らの社会的活動が不必要に制限されないような配慮が必要である。

 家族内では、普段の子育てが基本になる。家族内感染は、既に妊婦感染の時期に済んでいる可能性が高く、そうでなくてもワクチンを接種すればよい。 CRS 児のウイルス排泄に関して注意を喚起するのであれば、検査は国立感染研や地方の衛生研究所が責任を持っていただき、適切で節度のある指導を頂きたい。

 産婦人科をはじめ、病院受診時等では、感染研の Q&A などを参考にしながら、ハイリスクの方々への感染を防ぐべく感染症の標準的予防策を取る。新生児期の一過性症状で終わる児もあるが、永続的な影響 ( 白内障、小眼球症、末梢性肺動脈狭窄や動脈管開存を中心とした心臓血管系の異常、難聴、発達の遅れ ) が残るようであれば、医療機関と療育機関が連携を取りながら、子育てや発達を支援していただきたい。

1965 年頃、沖縄で多くの CRS 児が産まれた。九州大学名誉教授の植田浩司先生は、約 30 年以上にわたって聴覚障害のある彼らの健診を続けてこられた。そのお手伝いをする中で、成人されている方々にお会いすることもできた。 CRS の症状の種類と程度は様々なので、一般的に言うことは難しいが、医学的な治療、幼児期の療育、そして教育を通して、社会で活躍されておられる方が少なくないことを申し添えておきたいと思います。

2) 今後の風しん対策について。風しんの伝搬性、日本の血清疫学、諸外国の流行状況等が関連しながら次の流行の山を作るが、それを正確に予測することは難しい。言えることは、感受性者が多く存在する限り、流行のリスクは避けられないということである。そして、風しん流行は常に続くわけではないので、目標を明確にしておく必要がある。感染症指針の目標を「風しん排除、先天性風しん症候群ゼロ」に置く。対策の緊急性、対象の絞りやすさ、ワクチン供給費用等を考えると、まず妊娠可能年齢の女性とその周辺、妊婦とその周辺、出産後の褥婦が最も緊急的に対応するべきである。その間に、成人男性の大きなマスにどう対応するか検討する。

 妊婦に関しては、風しん抗体検査がほぼルーチン化されているので、妊娠中の対応と出産後の褥婦へのワクチン接種指導が比較的容易にできる。妊娠可能年齢の女性とその周辺に関してはキャンペーンが必要で、検査費用とワクチンの接種費用補助がその有力な手段となる。現在の流行が成人男性を主体としていること、職場内感染が多いこと等に鑑みて、企業単位、職域単位で健康診断時に風しん抗体検査を行う、ワクチン接種費用補助を企業が行う、患者が発生した場合の対応マニュアルを作る等の工夫があり得る。成人への接触は、キャンペーンによってモチベーションを高めないと接種率が上がらない。公私問わず検査費補助、接種費補助という金銭的なインセンティブは、そのアナウンスを行うこと自体キャンペーンになり、接種モチベーションを上げる。ワクチン接種に健康保険が使えないかも検討いただきたい。

 日本の風しん流行状況は、 WHO も米国 CDC も大きな関心を寄せている。日本は発展途上国で今後進んでいくであろう風しん対策の模範となる必要がある。今までの風しん対策を検証しながら、忘れずに、たゆまず歩み続けることが大切である。そうすれば、必ず風しん排除、 CRS ゼロが達成されるはずである。

 なお、本稿に書かせていただいたことは、下記文献に詳しく書いた。御参照ということで『小児科臨床 ふたたび、風しん流行』。以上です。

○五十嵐委員長 北原委員の先ほどの御質問はよろしいですか。

○北原委員 保育所の話ですが、このガイドラインは園長が御覧になって、園長の裁量でアクションを起こすことになるのでしょうか。公立の保育園の園長はそういうことをする裁量があるのでしょうか。

○雇用均等・児童家庭局保育課保育指導専門官 公立については、保育所の実施主体が市町村ですので、市町村の判断になる部分が多いかと思います。また、私立園では、それぞれの保育園の園長の裁量によって、どのような対応が取られるかが関係してくるかと考えています。

○五十嵐委員長 時間も押していますので、次にいきます。資料 4 を井上参考人から御説明ください。

○井上参考人 私はある検査会社の非常勤顧問をしております。その会社には、全国の産婦人科から妊娠女性の風しん HI 抗体測定依頼が多数集まります。妊婦は健康な人であり、その膨大な抗体データを集計解析すれば、風しんの疫学をある程度知ることができ、さらに CRS 防止対策に何らかの役に立つのではないかと考え、以前、その集計結果を論文にして発表しています。今回は、成人間で風しんの流行があった今年前半のデータを解析しましたので、その結果を報告させていただきます。

 目的は、最新の風しん免疫状況を知ること以外にも、 2008 年度から高校 3 年生へのワクチン接種(第 4 期接種)が始まりましたので、それが 20 代前半年齢層の抗体保有状況にどのような影響を与えたかも知りたいということです。

1 ページの下部に検体数が書いてあります。産婦人科からの血清検体では、 20 代前半の数が少ない。今年は、風しん流行のためか、診療科名が書かれていない検体が非常に増えました。この検体は、学校や職場での健常人の集団健診のものが多いと考えられ、さらに 20 代前半の検体の割合も、産婦人科のものよりも多いので、それも加えて集計しました。合計で 13 万検体です。

2 ページ上の図は、検体の年齢別の内訳です。 30 歳付近が多い。

2 ページ下の図は、年齢別の抗体保有率のグラフです。 23 歳に谷底があり、 22 歳で保有率が上昇しています。この 20 歳から 22 歳の保有率は高いのですが、 90 %を割っております。多分この年齢層の検体には偏りがあり、1)第 4 期接種を受けなかった人が産婦人科へ行って抗体検査を希望した、2)この年齢で妊娠する人では第 4 期接種を受けなかった人が多い、などのことがあるかもしれません。実際は 90 %を超えている、と私は考えております。

3 ページ上の図は、年齢別の平均抗体価のグラフです。抗体陽性者のみでの抗体価の幾何平均値をグラフにしたものです。 20 代前半で平均抗体価が低い。

3 ページ下の図は、抗体陰性率と患者発生数との関係を描いたものです。赤い曲線は、抗体陰性率(抗体価 8 未満)で風疹感受性者率を表します。棒グラフは、感染症発生動向調査による年齢別患者発生数です。抗体陰性率のピーク( 23 歳)と患者数のピークとが一致しています。

4 ページ上の表は、 2013 6 月末現在の年齢と第 4 期接種機会の有無との関係を表したものです。横軸に生まれ月、縦軸に暦月を取りました。赤い数字は年齢を表します。たとえば 1990 7 月生まれの列をずっと縦に見ていただきますと、この人は 2008 年度に高校 3 年生で第 4 期接種を受け、今年 6 月には 22 歳で、 7 月には 23 歳になります。今回の集計では、 22 歳の大部分は黄色の部分にあり、接種を受ける機会があったわけです。これに対して 23 歳の 9 割(濃い茶色部分)は接種を受ける機会がなく、 23 歳で抗体保有率が低い理由が分かります。

4 ページ下の図は、 2008 2012 年の年齢別風しん抗体保有率のグラフを作って、それを 2013 年前半のグラフに重ねたものです。毎年 1 年ずつ折れ線グラフが右にシフトしています。ただし、 2013 年のグラフと 2012 年のグラフとは重なっています。多分、今年の風しん流行で自然感染を受けた人がいた、またワクチン接種を受けた人がいたことで、抗体保有率が上がった可能性があると考えています。

5 ページの上の図からは考察になります。感染症発生動向調査によれば、調査開始以来、風しんの全国流行は 1982 年、 1987 年、 1992 年の 3 回、 5 年おきにありました。幼稚園・小学校での流行で、患者は 5 9 歳が多かった。そのとき、風しんワクチンは女子中学生のみに接種していたので、小学生での流行を抑えることができなかったわけです。 1995 年に、幼児への個別接種(標準接種年齢 1 3 歳)に移行し、全国流行はなくなりました。この 1995 年には、年長の幼児への接種率は低かったと思われます。

接種対象の年齢が変わったことで、対象外となる 1979 4 2 日~ 1987 10 1 日生れの人に期間限定の個別接種が行われましたが、その接種率は低かった。

5 ページ下の図は、先ほどの年齢別の抗体保有率と平均抗体価のグラフを重ね、それに過去の風しん自然感染およびワクチン接種を受けた年齢群を示した図です。

平均抗体価について述べますと、抗体陽性者集団の免疫の強さを表し、抗体保有率とは無関係です。保有率が高くても平均抗体価は低い場合や、逆に保有率は低くても平均抗体価が高い場合があるわけです。この図で見ていただくと分かるように、 26 歳以上で平均抗体価が高い(青線)。この年齢群は、過去に自然感染を受けた年代であるためと考えられます。自然感染では、体内で殖えるウイルスの量が多く、したがって免疫刺激も強く抗体価も高くなり、免疫も長期持続すると考えられます。

 一方、 25 歳以下はワクチン接種のみを受けた年代で、平均抗体価が低い。ワクチン接種では免疫刺激が弱いということです。とくに 23 25 歳は、幼児への接種が始まった 1995 年に 5 7 歳であって標準接種年齢を外れた人たちで、当時接種を受けなかった人が多いと考えられ、さらに高校 3 年生時にワクチン接種を受けていないので、抗体保有率が低いと考えられます。

 以上をまとめますと、今年前半で 23 25 歳の女性( 1987 10 2 日~ 1990 4 1 日生まれの出生コホート)は抗体保有率も平均抗体価も低く、風しん感染のリスクが高いグループと言えます。この出生コホートは現在若くて、これから子を産む人たちなので、このグループに将来 CRS が発生する可能性があります。各人の母子健康手帳を調べてもらい、風疹ワクチン未接種の人にはワクチン接種をしてもらうよう勧奨したら良いでしょう。

22 歳以下の人の保有率は 90 %を超えていると考えますが、これはワクチン免疫なので免疫力は弱い。今後、これら年齢群を含めて風しん免疫状況を定期的にモニターしていきたいと考えております。

○五十嵐委員長 大変詳細な説明でしたが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。続いて資料 5 、資料 6 を続けて御発表いただきたいと思います。まず、資料 5 を中島事務局員からお願いします。

○国立感染症研究所感染症疫学センター中島主任研究官 資料 5 です。私たち疫学センターは、自治体からの依頼がある場合に、保健所が行う積極的疫学調査を支援することがあります。今回は、鹿児島からの依頼によって、当センターの八幡を中心に行った調査結果について、簡単に御紹介いたします。

 資料 1 の下のスライドです。加藤委員からもお話がありましたように、風しんは 3 つの症状がそろう場合から、不顕性感染まで、かなりバリエーションがあります。 NESID 、感染症発生動向調査、サーベイランスの報告は、臨床症状に基づく診断の場合には、 3 つの主な症状、全身性の発しん、発熱、リンパ節腫脹がそろったときを、届出の条件としておりますが、それに加えて検査診断例の場合には、症状のうち 1 つ以上あれば、それに病原体診断が加われば報告可能となっております。そこにギャップがあるということになります。

2013 年の風しん流行の特徴をサーベイランスの結果から見たものが、次のスライドです。発生の中心は 20 代から 40 代の男性で、全体の 63 %です。感染の場としては、職場が一番多いということになっています。

 その下です。風しんの流行状況を人口 100 万人当たりで割算したものです。流行の中心が関東、関西の大都市だけでなく、例えば和歌山県、鹿児島県のような、比較的人口規模の小さな所でも、高い流行が認められていることがあります。こういう理由がありまして、鹿児島県では流行があったのはなぜかということが、大きな疑問だったわけです。

3 ページ目の上です。風しんの鹿児島県での流行は、川薩保健所管内のある特定の地域が、県全体の報告数の 85 %を占めるという地域流行でした。報告から見ますと、全国同様 20 代から 40 代の男性が 62 %を占めていまして、背景としては、今まで説明のあったような免疫ギャップがあると考えています。

 検査診断例を見た場合、検査診断例が全体の 169 例、 59 %でしたが、その症状を見ますと、 3 つの症状がそろったのが全体の 42 %ということで、仮にこの人たちが、検査が行われずに、臨床診断だけで届け出られていた場合には、全体の一部しか届け出られないということになります。

 もう少し詳しく見ていきます。 3 ページ目の下です。これが報告週、週別の患者発生数、届出数をグラフにしたものです。 276 例中、感染の場所が分かったものを左のグラフで示しています。全体の 79 人、 29 %が事業所で感染したと考えられています。一方、これまで感染の場として知られている学校、医療機関というのは、少ない報告になっています。多くは感染場所は不明ということで、 62 %はどこで感染したか分からないという状況です。

4 ページの上です。その中でも、最も患者が多く、流行期間の長かった B 事業所に関して、詳しく調査を行いました。具体的には、サーベイランスで報告されていない症例がどのぐらいいるのかということを、全職員を対象にしたアンケート調査を行いまして、 660 人中 99 %の回答を得ることができました。その中では、医療機関で診断された患者に加えて、何らかの症状があったもの、流行期間に症状があったものを疑い例として拾い上げています。

 下の図です。 B 事業所での症例全体像ですが、 660 人の職場の中で、流行期間に 46 例が風しんに感染したと疑われました。発症率は全体の 7 %です。そのうち、医療機関を受診したものが 45 例、風しんとして診断されたものが 35 例です。実際、発生動向調査に届出された患者数が 26 例ですので、 26 例の約倍の患者がいたのではないかと推察されています。

 一方、診断された症例が全員届け出られるかと言いますと、症状がそろわない場合には届出条件を満たさないわけですから、必ずしもそれは一致するわけではありません。

5 ページ目の上の図です。 B 事業所の中で、どのように広がっていったのかを、 4 階建ての建物でしたので、フロア別に色分けしたものが上のグラフです。発症した方が、何らかの会議、何らかのイベントに参加して、その後フロアを超えて感染が拡大したことが分かります。その後半では、同一フロアの中でも、席を飛ばして、複数の課にまだがる報告が見られるようになってきました。全体としては、 11 週間にわたる流行でしたので、早期に発見して早期に対応すれば、後半の患者は防げた可能性があると考えています。

1 例を紹介します。 5 ページ目の下です。医療機関で風しんと診断された患者が、ある会議に参加しました。その会議に参加した残り 4 人の方に感染させたと思われる事例です。実際、職場の中ではこのようなことが起こることにより、席が近い人の中での感染拡大に加えて、大きく広がっていくということが起こっていたと考えられています。

6 ページ目の上の図です。 B 事業所における対策としては、まず流行の感染拡大が広がったときから注意喚起を行い、それに加えて医療機関で診断されない、疑いの患者もいるということから、 B 事業所では、積極的に診断を受けなかったけれども風しんの感染が疑われた人に対しても、病休措置を行うことを加えています。それに加えて、抗体価測定の費用補助等を行っています。

 実際に、 B 事業所での発病から病休開始まで、どのような経過だったのかを示したものが、下のグラフです。このグラフは発病から病休開始までの間隔ごとに患者の数を積み上げたグラフです。

 積極的な対策が行われたと考えられる 4 月以降と、 3 月までで分けますと、まず、 3 月までのブルーのグラフは、かなり広い期間にまたがって、病休開始までの期間が分布しているのに対して、 4 月以降はそれが早まっている、特に発病当日に病休になるという方が増えております。医療機関で診断された中には、症状が 3 つそろう典型例と、そろわない人がいるわけですが、その両方とも病休までの期間が短縮する傾向にありました。

 続けて 7 ページ目の上のスライドです。まとめです。川薩保健所管内の風しん流行は、人口当たりの風しん報告数が高かったという特徴があります。全国同様の 20 代から 40 代の男性が 6 割でありました。報告数の 3 割が、事業所による発生で、この事業所の対策は重要であると思われます。初期に B 事業所での感染拡大が起こり、それにパラレルな形で地域流行が広がっています。 B 事業所の風しんアウトブレイクとしては、全体の 7 %が発病しておりまして、届出数の約倍の患者数がいたと思われます。流行期間は非常に長く、早期の対応によって感染拡大は抑えられた可能性が考えられます。発病者との接触によるフロア内の感染拡大や部局を超えた拡大が認められました。病休措置対象者を拡大することが行われています。

 積極的疫学調査、今回得られた成果としては、 1 つは風しんが診断されなかった例、未報告症例を、こういう積極的疫学調査を行うことによって把握できると考えられます。流行期間を特定することによって、流行期間はいつからいつまでということを明確にして、その中での対策が強化できると考えます。感染拡大のリスクを特定の会議による参加だとか、リスクを特定することができます。アウトブレイクの現状と、その情報還元の機会を与えるということであったり、調査自体が対策を推進することにもなります。もう 1 つ、この調査をすることによって初めて、アウトブレイクはいつ終わったかということが確認できます。

 以上、報告を終わらせていただきますが、その次のスライドに、多くの方々に今回の調査に協力していただきましたので、ここで併せて深謝いたします。ありがとうございました。

○五十嵐委員長 積極的疫学調査について御報告いただきました。続いて、調委員から資料 6 を御説明ください。

○調委員 地方衛生研究所における風しん検査について説明いたします。病原体サーベイランスの我が国における体制を図式的に示したものです。感染症サーベイランスというのは、患者サーベイランス、要するに病気の人は何人いるのかという患者サーベイランスと、病原体サーベイランスの 2 本立てになっていまして、全数把握か定点把握疾患かによりまして、全数の場合は、麻しん、風しんですが、全ての医療機関での把握となります。定数把握の場合は、定点医療機関を受診した患者の情報が保健所に集められ、そこでコンピュータに入力され、全国の情報が集約されます。それによって、いろいろな情報発信がなされることになっています。

 一方、病原体サーベイランスは赤い点々で示しています。実際に患者の咽頭ぬぐい液や血液、尿などの検体を保健所の職員が、地方衛生研究所に運び、地方衛生研究所でウイルス分離、遺伝子検査等を行っております。

 地方衛生研究所は、各都道府県、政令市、特別区にありますので、現在 79 か所設置されています。麻しんについては、原則として全数について、地方衛生研究所、また感染研において、遺伝子検査をする体制が構築されています。

 麻しんに関するこれまでの患者数と検査の推移についてです。御存じのように、 2008 年より、麻しん、風しんの患者は全数把握になっていまして、正確な患者数が把握できるようになりました。 2008 年には麻しんの患者数が 1 万人を超えていまして、この前年の暮に出された「麻しんに関する特定予防指針」においては、臨床診断及び検査診断に基づいて患者を報告するということになっていました。ただし書き、なお書きとして、患者数が一定数以下になった場合には、原則として検査診断に移行するという予防指針になっていました。

2008 年から 3 期、 4 期の予防接種が追加されたこともありまして、 5 年間ですが、翌年から患者数は激減し、 2011 年には 434 人、昨年は 293 人という麻しんの患者数になっています。

 その患者数の減少に伴って、いよいよ麻しんの排除が見えてきたわけです。そのためには、前回竹田先生から御報告がありましたように、排除基準を達成しなければいけません。そのためには、遺伝子検査が必要になってきます。それで、平成 22 11 月に、このような課長通知が結核感染症課から出されまして、地方衛生研究所及び保健所等が連携し、検体を可能な限り確保し、遺伝子検査を実施するということになっています。

 一方、現在風しんはどうであるかを、つい最近アンケート調査をいたしました。麻しんは説明しましたように、地方自治体で全数検査をすることが制度化されています。一方、風しんはサーベイランスで動いています。風しんの疑いで検査をしている自治体が 19 %、医師が風しんを疑っているのだけれども位置付けが自治体において必ずしも明確でないために、麻しん疑いという形で行政依頼検査がなされている自治体が 36.7 %、その両者が混在している場合が 35 %、検査をしていないのが 9 %です。検査をしていないのが 9 %あるのですが、都道府県の衛生研究所は全て検査をしておりますので、基本的に全ての都道府県で検査がなされていることが 1 つです。

 もう 1 つは、 8 割ぐらいの自治体において、風しんの疑いではなくて、麻しんの疑いということで検体が来て、検査を行っていると。この場合は、医師が風しんを強く疑っているのだけれども、麻しん疑いで検査依頼が来ていますので、まず麻しんの検査をして、それから風しんの検査をすることになります。

 検査の状況です。下に書いてありますように、「 2,483 件」とありますが、「 2,235 件」に訂正です。今年の 1 月から 8 月まで、患者数約 1 4,000 人のうち、 2,200 検体について、地方衛生研究所で PCR 検査が行われまして、その約半数の 1,104 件について、 PCR 陽性という結果となっています。そのうち約 6 割近くが、遺伝子型まで地方衛生研究所で決定されております。それから、先ほどウイルス分離の話が出ましたが、 602 の塩基配列、遺伝子型決定に対して、培養も 409 ということになっていますので、かなりの検体、かなりの自治体でウイルス分離もなされている状況になります。地域の数としては、大体 40 ぐらいの自治体で、風しんのウイルスを培養しておりますので、都道府県で考えると 8 割方の自治体で、ウイルス分離がなされていることになります。

 最後に、 CRS CRI に対する検査対応です。「 CRS CRI の検査実績あり」と答えたのが 15 地研、 19 %です。これは発生している自治体が限られていることを反映していると考えてます。今年の CRS 検査数が 26 例で、陽性数は 12 となっています。

 次に、風しんの遺伝子検査の意義を考えてみますと、診断的意義と、排除状態の科学的証明、これはサーベイランスということですが、この 2 つが考えられると思います。

 診断的意義については、先ほどから出ていますように、 CRS における遺伝子検査により、確定診断を行うことに大きな意味があると思いますし、 CRS の患者がウイルスを排泄しているかどうかを確認することも、非常に重要であると考えています。

 また、ここに書いておりませんが、風しんの初期、先ほど加藤先生から御紹介がありましたが、 IgM が上がる前の遺伝子検査による確定診断というのも、遺伝子検査の意義と考えられると思います。

 排除状態の科学的証明については、サーベイランスの定義というのは、その地域において土着株による感染が存在しないことが条件になっていますので、日本における流行株と外国における流行株を比較することにより、地域流行があるかどうかを把握するためには、遺伝子検査、遺伝子型の決定が必要だということになります。

 最後にまとめますが、全ての都道府県において地方衛生研究所、つまり自治体が遺伝子検査に対応していることが分かりました。多くの自治体で、医師が風しんを疑った患者について、麻しん疑いということで検査対応をせざるを得ない状況にあることが分かりました。遺伝子検査が全部できるかというと、恐らく今の患者数が 1 万人を超えていることから、全数遺伝子検査は困難であろうと考えられます。ちなみに、全国の地方衛生研究所で、インフルエンザについては毎年 5,000 検体ぐらいについて PCR とウイルス分離の両方がなされておりまして、パンデミックのときは、大体 2 万ぐらいの PCR が行われました。そういう意味で、もう少し患者数が減らないと、全数検査への移行は困難であろうと考えられます。

 そういう意味で、今の時点では自治体における風しん遺伝子検査の位置付けが必要だと思うのですが、恐らく必要に応じて遺伝子検査をするということが望まれるのではないかと思いますし、 CRS については、東京都、大阪府などの意見も聞きましたが、恐らく全数に対して、自治体の遺伝子検査は可能であろうと考えられます。その場合、どういう基準で検査をするかということが、はっきりこの委員会の中で議論されていくことを希望しています。

 患者数が減少した場合は、麻しんと同じように原則として全数遺伝子検査という体制に移行することは、風しん排除状態の科学的証明に重要ではないかと考えます。

○五十嵐委員長 資料 5 、資料 6 の説明を頂きましたが、 2 つの御説明に対して御質問はございますでしょうか。

○竹田委員 調先生に 1 点確認です。 602 例が PCR 陽性で、「 409 ウイルス分離が試みられた」とありますが、「分離された」のとどちらでしょうか。

○調委員 分離数が 400 です。試みられたのは、その倍ぐらいだったと思います。

○大石委員 私も調先生に質問があります。地研で CRS CRI の検査が実施されているわけですが、医療機関から上がってきた検査依頼が、行政検査という形で取り扱われたということなのですか。

○調委員 東京都にお聞きしたところ、保健所は関与していないということですので、これは調査研究ということで検査がされていると思います。東京都は、 1 年間にわたって 1 か月間隔で遺伝子検査をする計画をされていると伺っています。

○大石委員 了解しました。

○加藤 ( ) 委員 調委員にお聞きします。麻しん疑いで検査を出すことが多いということなのですが、麻しんが陰性だった場合には、風しんの検査もするという手順があるのか、それも現場の判断でしていることなのでしょうか。

○調委員 推測ですが、恐らくほとんどの地方衛生研究所で、例えば麻しんが陰性であれば風しんの検査、それ以外に伝染性紅斑のウイルスの検査、突発性発しんといったものも、約半数において、麻しん、風しん以外の発しん性疾患の検査もなされているので、かなりの部分が両方の検査を行っていると思います。

 実際、東京都、愛知県、大阪府では、今回風しんの流行が大きかったので、医師も風しんと考えて、風しんで検査依頼が来て、実は麻しんであったというケースもあったと伺っています。

○加藤 ( ) 委員 あと「遺伝子検査の意義」という所で、流行時に予防接種をする機会がありますと、発しんが出た場合にワクチンの副反応なのか、あるいは野性株で既に潜伏期の状態にあった方を臨床的に区別したいということがあります。このような場合には、地衛研ではどのような対応をされているのでしょうか。

○調委員 遺伝子配列を決めているところは 6 割ぐらいありますので、その場合はワクチン株であるか、あるいは野性株であるのかというのは、すぐに検査ができることになっています。塩基配列が決定できない所も一部であると思いますが、基本的には遺伝子配列によってそれが区別できるということになります。

○結核感染症課課長補佐 ( 難波江 ) 1 点確認させていただきたいのですが、麻しんについては、全例 PCR を指針で求めているのですが、その 1 つの大きな理由は、抗体検査で偽陽性がそれなりにあるということがあったかと思います。加藤先生の資料で、風しんでも偽陽性があるということが書かれていますが、実際にどの程度の偽陽性があって、そのために PCR が必要かどうかという御意見などをお聞かせいただければと思います。

○加藤 ( ) 委員 陽性的中率、検査陽性が確かに風しんを診断しているというのは、有病率に関係してきますので、本当に北米のような、 100 万人に 1 人も出ないような状況ですと、ほとんど偽陽性という可能性も生じると思います。やはり排除期に近いというような状況ですと、 PCR 検査は実施することになるのかなと、私の意見はそういうことです。

○竹田委員 偽陽性について確認したいのですが、麻しんの現在汎用されているキットは、確かに偽陽性の出る頻度が一般のキットよりも高いのですが、風しんのキットでは、そういう傾向は今のところ伺っていないのですが、その辺はどうなのでしょうか。

○加藤 ( ) 委員 陽性的中率というのは、有病率に相関してきますので先生のほうが御専門だと思うのですが、発生がほとんどない状況、先ほど申し上げたように北米のような状況になってきますと、偽陽性というのは検査の一般的な性格として、必ず生じてくるということなのですが、キットごとに、感度、特異度などもありますので、現在の日本で使われているもので、どれぐらい偽陽性が発生してくるかは検討されてもいいのかなと思います。

○岡部参考人 先ほどの「はしかの疑いで」という加藤先生の御質問ですが、実際は風しんのウイルスの鑑別診断を衛生研究所でやるというのは、全くボランティアレベルの話で、先ほども申し上げましたように根拠がないというところで、結局予算問題、業務問題に関わってきます。衛生研究所の中の、必要性からいえば当然やる、という方向にいきたい所は多いと思うのですが、実際に行政判断をやる本庁では、それはやる根拠がないということで否定的な見解を出す所があります。ですから、ほとんどの所がやっているというのは、衛生研究所のボランティアな気持ちでやっているというところを、 1 点申し上げておきたいと思います。調先生、それでよろしいですか。

○調委員 実は九州の政令市で、麻しん疑いで検査が来て、麻しん、風しんの両方の検査をして、麻しんは陰性だったので、風しんの検査は行政依頼検査ではなくて、衛研の判断でやっていますから、風しん陽性という結果が帰っていなかったという事例も伺っています。

○岡部参考人 麻しんの場合は通知が出ているので可能になったというのがあるのですが、風しんはまだそこまでは至っていない。それが先ほど申し上げた、この委員会に期待するところなのです。

 ただし、全数検査を今やってはかなわないという調先生の話は、本当にそうで、 2 万例は PCR は全部はできないと思うのですが、はしかで全例をというときの 1 つの考え方の基準にしたのは、腸管出血性大腸菌が年間に 2,000 から 4,000 例で、全数検査を求めています。そうなれば、衛生研究所の能力から言えば、数千例単位であれば可能ではないかということを、その頃にディスカッションしたことがあります。

 それから、風しんのワクチンの副反応との鑑別の問題ですが、つい先日、 MR ワクチン接種後に発しんが出てきて、はしかなのか風しんなのか、はしか・風しんワクチンの副反応なのかということで、我々の所でウイルス学的な鑑別診断をして、自然風しん感染であることが判明したものがありました。

 ただし、副反応例についても、きちんと衛生研究所でやるということも実は根拠がなくて、これも衛生研究所の判断でやったのと、先ほど、はしかの疑いがあるかもしれないということを一応の根拠にしたという複雑な背景があります。なるべくやったほうがいいと思うのですが、実際にはそういう障害があるということも申し添えておきます。

○五十嵐委員長 いろいろとありがとうございました。全体を通して、特に、中長期的な予防対策の観点で、どうしても御意見を述べたいという方はいらっしゃいますか。

○高橋委員 風しんは麻しんと同じで、潜伏期間が 2 週間から 3 週間と長い感染症なので、察知した時点で患者数が非常に多くなっていることが心配されます。診断される前に、既に感染力があり、人にうつしている可能性があるということ、速やかな初動体制がとても大切なのだというのが、先ほどの中島委員からの資料からわかりました。

1 点お伺いしたいのですが、 PCR の検査結果は、どのぐらいで出るのでしょうか。麻しんのとき、学校ではいつ検査結果が出てくるのか待っていました。子供たちに対しては学校保健安全法で、出席停止の指示を行い、休養を取らせるとともに、感染拡大の予防を行います。しかし、一般的には大人についての休養期間が具体的には示されているものがありません。具体的に示されたものも必要なのかなと、お話を聞きながら感じました。啓発をしていくのには様々な手段が取られてきたかと思いますが、 20 代から 40 代の方に分かっていただけるよう、例えば利用者が多いコンビニエンスストア等に協力いただきキャンペーンやチラシを配付したり、人気キャラクター等にも協力してもらったりして、あの手この手を考えながら、啓発を繰り返し行っていく必要があるのだなと感じました。検査のことについて教えていただければと思います。

○調委員  PCR 検査自体は、検体を受け取ってから 5 6 時間以内には結果をお返しできる体制になっていると思います。

○大石委員 平成 16 年の発生抑制に関する緊急提言についてですが、今度この委員会で提言を出すとするならば、「妊娠の希望とか可能性の高い女性を対象に」という書きぶりでは、年代で対象者も変わってきますし、可能性の高い女性といっても、期せずにして妊娠するというケースはあると思います。具体的に感受性者が残っている一定の年齢層に対象を絞って、どのようにしてワクチン接種を推進するかを明確にしていくことが、大事なのではないかと思います。

○五十嵐委員長 予防法については、次回に詳しく検討したいと思います。

○岡部参考人 大石センター長から、「この提言はほとんど功を奏していない」という御発言があったのですが、当時これを出したほうとしては、一定の成果があって、この提言の結果風しんを一定程度抑えたのと、無用の流産をなくすという大きな目的があって、それが産婦人科の先生方のご協力でで、風しんだと思いこんでの人工中絶をなくすシステムができたことは評価されるべきと思っています。

 ただ、反省すべき点は多々あるので、さらに風しん対策に結び付いていっていただければと思います。

○五十嵐委員長 ほかによろしいですか。

○吉山委員 各先生方から非常に貴重な御報告を頂きまして、大変勉強になっているところですが、簡単に意見を発言させていただきます。

 まず 1 点ですが、 Q&A について、非常に具体的な表現がされているということで、現場で周知徹底していきたいと思います。

2 点目が、先ほど抗体検査の話がありましたが、根拠です。今回、妊婦が風しんにかかっているおそれがあるので、抗体検査をしてほしいということがありましたが、麻しんの疑いであれば検査ができますといった現場でのやり取りが見られたようですので、風しんの検査については、きちんと今回のもので設定していただきたいと思います。

 もう 1 点は予防接種です。京都は感染発生届も少なく、時期がずれておりますが、予防接種の公費負担を 7 月から実施いたしました。発生届が非常に少なくなって、マスコミでも取り上げられなくなったということで、市民の関心が非常に低くなり, 7 月と 8 月の 1 か月間で、 1 か月目はたくさん接種していただいたのですが、 2 か月目は 3 分の 1 ということで、予防接種の PR をしていかなければいけないと思っていますが、公費負担のある間は PR もしますが、それがなくなってくると市民への周知の方法について、検討を重ねていかなければいけないと思います。

 それと、先ほど西村さんの御報告がありましたが、予防接の必要性を中小企業、ブライダル関係、大学に対しても PR を進めているわけですが、保育士等、医療機関など、リスクのある所への周知ももっと徹底して周知していかなければいけないと思ったところです。

○五十嵐委員長 よろしいでしょうか。予防につきましては次回やりたいと思います。時間も押していますので、本日いただきました議論、御提言については、事務局で指針の内容に反映するということにしていただきたいと思います。事務局から何かございますでしょうか。

○結核感染症課課長補佐 ( 難波江 )  次回は 11 19 日を予定しています。詳細は追ってお知らせさせていただきます。

○五十嵐委員長 これで第 2 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会を終了いたします。本日はありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

        第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会

         及び厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会

 

 

                                      日時 平成25年10月21日 ( )

                                            9:45~

                                      場所 航空会館7階大ホール

○結核感染症課課長補佐 ( 難波江 )  定刻になりましたので、ただいまより第 2 回風しんに関する小委員会を開催いたします。本日の委員の出席状況を御報告いたします。本日は委員 15 名中、 12 名の方に御出席をいただいております。渋谷委員、藤原委員、宮崎委員より御欠席との御連絡をいただいております。また、本日は参考人として、大妻女子大学井上名誉教授、川崎市健康安全研究所の岡部所長、風しんをなくそうの会、西村共同代表に御出席いただいております。また、本会議においては、国立感染症研究所感染症疫学センターも事務局に加わっているところですが、本日は感染症疫学センターの中島主任研究官が参加しております。

 続きまして、お手元の配布資料を確認いたします。資料 1 「風しん患者の医療に関する課題」、資料 2 「妊婦の風しん罹患及び先天性風しん症候群の発生抑制等胎児期の罹患予防に関する研究」、資料 3 、西村参考人提出資料の「 CRS/CRI 児と家族の支援等」、資料 4 20 から 30 代の風しん免疫状況、臨床検査データの解析」、資料 5 「風しんアウトブレイクの積極的疫学調査、事業所の集団発生から」、資料 6 「地方衛生研究所における風しんの検査について」、参考資料 1 から参考資料 5 までございます。不足がありましたらお申し付けください。

 申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。御協力をお願いします。

 引き続き審議参加に関する報告をいたします。お手元、参考資料 5 にあります、風しんに関する小委員会における審議への参加規定に基づき、各委員、参考人から風しん含有ワクチンの製造販売会社と、風しん抗体検査キット製造販売会社からの寄附金等の受取り、申請資料への関与について申告いただいております。本日の審議、又は議決に不参加となる委員、参考人はおられませんので、御報告申し上げます。なお、井上参考人におかれましては、民間検査会社の非常勤顧問をされておりますが、規定の企業に該当しないことを併せて御報告申し上げます。ここより、五十嵐委員長に進行をお願いいたします。

○五十嵐委員長 資料が足りない方はいらっしゃいませんね。それでは、議事に入ります。今日は原因の究明及び医療の提供について中心に御審議いただきます。初めに、資料 1 から 3 まで御説明をいただいて、まとめて御意見、御質問をいただきたいと思います。では、加藤委員から資料 1 の説明をしていただきたいと思います。お願いいたします。

○加藤 ( ) 委員 国立国際医療研究センターの加藤と申します。今回、内科の立場からこの風しん患者の医療に関する課題ということで御報告いたします。今日の内容は、私の勤務しております首都圏の感染症指定医療機関から見た、 2011 年から 2013 年にかけての風しんの流行と、特に成人に患者が集積していたということで、成人における臨床像を、麻しんとの類似ということでお話したいと思います。また、検査診断についても、幾つか課題があるように思いましたので、その点と、最後に医療機関の感染防止ということで、特に職員の風しんに対する免疫を維持するということに関しての課題を少し述べたいと思います。

2 ページです。 2011 年、ちょうど震災直後だったわけですが、 IDWR のほうに報告した症例を紹介します。 25 歳の男性で、東南アジアを 2 か月ぐらい旅行されて、帰国直前に発熱と皮しんが生じたということで来院されました。血液検査で白血球や血小板が低下をしているということで、東南アジアからの帰国ですと、私どもデング熱というヤブ蚊で媒介される熱性の疾患を疑ったわけですが、最終的にこの方は風しんの診断がついた事例です。

 前回の委員会でも竹田先生から、東南アジアの流行が今回の流行の背景にあったということで、当時、震災後、欧州でちょうど麻しんが流行った時期でして、風しんはこの時点では余り問題となっていなかったように思うのですが、これが流行の前触れであったのかなという気がいたします。

 その後、患者が増えてきました。これは当院を含めた首都圏の感染症指定医療機関 4 病院の診療状況のまとめです。これには臨床診断例は含まれておりませんで、全て検査で確定した症例のみです。 2012 1 月からの調査期間には少しずれがあり、 2013 年の 5 月頃である流行のピークに関しては川崎病院しか含まれていないわけですが、大体同じような傾向が見られました。男性患者が多く、またその年齢が 30 代ぐらいの方が多かったということです。感染症指定医療機関は、特に重症の患者を紹介されることが多いということで、入院の患者も 1 割から多い所は 3 割ぐらいおりました。多くは高熱で脱力が強いとか、少し補液が必要だというようなことで入院しているわけですが、墨東病院や当院におきましては、脳炎の患者が含まれていました。

3 ページ、今回の流行についてです。今回の流行の規模は、前回の流行は 2004 年にあり、私自身も 2005 年から 2010 年まで全く風しんの患者を診療する機会がありませんでした。ただ、内科という立場で見ますと、 2004 年の流行に比べると、随分多くの成人の患者が病院にいらしたという印象を持っております。脳炎が発生したということに関して、数は少ないといってもいいのかもしれませんが、合併率が一般的に言われている風しん 5,000 症例に 1 という発生率というように考えますと、全数報告として報告が上がっている患者数自体が少ないのではないかという可能性と、あるいは成人においてこれだけ集積して患者が発生するということは、これまでなかったことですので、脳炎の合併率は成人では高いのではないかということが指摘できると思います。これは麻しんでも同じようなことが言われているかと思います。

 流行の周期は、臨床の立場ということで余り知識は持ち合わせていませんが、ちょうど 1997 年、 2004 年、 2011 年から 2012 年ということで、 7 から 9 年ごとの流行周期を最近示しているのかなという印象を持ちました。次は 7 年後というと、東京オリンピックなども開催されますし、数理モデルなどを用いた流行予測ができないかということも考えております。

 臨床像に移りますが、麻しんとの類似ということが一言でまとめられるかと思います。皮しんに先行して発熱や倦怠感が数日続くということで、これは麻しんに比べますと咳嗽や鼻炎といったような症状は少ないわけですが、眼球結膜の充血であったり、口腔粘膜の発赤といった麻しんに一般的に多いと言われているような所見を成人ではよく見る機会がありました。

 皮しんの特徴として、一般に麻しんで強調される融合傾向も見られることがありましたし、色素沈着、皮しん以外に有熱期間、三日ばしかということで、 3 日程度と言われているわけですが、中には 5 日を超えて、 1 週間以上発熱が続くなどという患者もいらっしゃいました。また、流行の初期、 2007 年辺りの麻しんの診療経験というのが、まだ内科医の記憶にも残っていた時期、風しんの流行がまだそれほど察知されていない時期において、麻しんの IgM 抗体なども同時に測定するわけですが、偽陽性が 30 %前後と、 2 病院のデータですが、少なくなかったというような、検査データ上も麻しんと判断しかねるような状況がございました。

 続いて、融合傾向を示す、少し盛り上がった紅斑の写真です。麻しん・風しんの臨床像は、このようにピラミッドのように表わせるかと思うのですが、麻しん・風しんとも最重症になりますと、小児も含めて成人の患者は脳炎、あるいは麻しんでは肺炎があるかと思うのですが、風しんにおいては無症候性感染が初感染時にもかなりあると言われております。麻しんと同じように重症例では脳炎が起きてくるわけですが、例えば 2000 年とか 2007 年の麻しんの流行では、麻しん患者が都立病院などでも年間 70 例とか入院をするわけで、それに比べると風しんの患者は多くはなかったのですが、脳炎という事例が発生しているということは、流行の規模がかなり大きかったのかなというような印象を持っております。

 続いて検査診断に関する課題を御説明します。検査診断は、急性期に上がる IgM 抗体が陽性になることをもって、確定診断とする場合が多いわけですが、 IgM 抗体が発症の早期、特に皮しんが出現して 3 日以内、実は風しんの患者は、発しんが出て当日、 2 日目ぐらいにいらっしゃる患者も多くて、この時期ですと抗体が陽転化していないということなのですが、この時点での検査結果を誤った解釈をして、風しんではないというように判断されてしまうこともあり得るということです。

 血清診断ですと、回復されて 1 週間、 2 週間経ったところで採取して、抗体価を比較するわけですが、風しんの患者のほとんどは 3 日から 5 日ぐらいで回復をされて、職場復帰を急ぐなどを理由に、再診の外来にいらっしゃらない方も少なくなかったということで、検査によって診断をしっかり確定させるというのは、なかなか難しいことがあります。

 これはどれぐらい関係しているか、余り影響はないのかもしれませんが、 IgM IgG 抗体、両者の測定、診療報酬で同時に算定できないということで、診療の現場でどちらか一方にするということを習慣にしていて、 IgM だけを測定して、その後検査診断が確定できないとがあるのではないかとも考えております。回復期に来院されないために、検査診断が確定できないということが起きていた可能性はあるのではないかというように思っております。

 検査診断に関しても、流行のごく初期、非流行期と流行が始まった時期では随分やり方が変わってくるのかなと思いまして、流行期はもうかなり病気が広がっているようですと、リンパ節腫脹、発熱、皮しんといった臨床診断でかなり診断を確実にすることができるのですが、非流行期のような状況では、風しんと麻しんが先ほど申し上げたように、非常に成人では見分けがつかないということで、麻しんに似たような疾患ということで捉えられるのではないかと思います。麻しんウイルス以外にも風しん、あるいはパルボウイルス、エンテロウイルスといった様々な同様の症状を来す病原体が知られておりますので、こういったものの鑑別が必要となってくると思います。

 流行が始まる前、流行が始まった直後のような状態、まだ病気が広がっていない、有病率が低いというような状態ですと、 IgM 抗体が陽性でも、正しく風しんを診断する陽性的中率が低い。いわゆる偽陽性が多くなってしまうという問題があります。このような状況では、 PCR 法が有用と考えられますので、特に流行が始まる前、あるいは流行間期のような、流行が起きていないときに麻しんを調べる際には、同時に風しんも PCR で調べていただけると、診断に役立つ、あるいは流行の早期発見に役立つのではないかというように考えております。

 最後に、医療機関の感染防止という、医療従事者の免疫を維持することについての課題を少し述べたいと思います。医療機関という職域の特徴としては、まず 20 から 40 代という風しん感受性者が多いと言われている世代の職員が中心となって運営しているということ。また、風しん患者が来院するわけですので、患者と接触しやすいということで、この点では医療従事者の職業安全保健という立場、視点が重要になってくると思います。また、医療機関には様々な患者が来院されていますので、合併症を来しやすい妊婦や、あるいは予防接種が受けられない免疫不全者などに伝播が起こらないようにする必要があります。

 医療関係者の免疫を維持して、院内で伝播を防ぐというのが基本の対策になるわけですが、まず風しんということについて医療関係者の免疫確認の意義・必要性が全ての医療機関で周知されているのか疑問があります。全ての医療機関で風しんに対して免疫のチェックが行われている状況ではないのではないかと考えております。また、その免疫確認の手順が現在では予防接種の記録を追うことが難しい。小児期の母子手帳以外に学生時に予防接種を受けたりする機会があるわけですけれども、そういったような記録が統一されて保管されるような仕組みが余り整備されていないように思いますし、基本的には血清抗体価を調べて免疫を確認するなどの方法や基準については、まだ未統一の部分が多いように思います。

 また、医療機関では委託業者、検査部を外注するというようなことも行われるようになっており、いろいろな委託業者の方も一緒に働いております。また、学生や訪問者も多いわけで、こういった方についても免疫を確認するということになりますと、医療機関だけではなくて、例えば学校などとも手順を統一すると効率的ではないかというようなことを課題と考えています。

○五十嵐委員長 成人領域の麻しんの臨床あるいは検査についてお話をいただきました。

 続いて平原委員から資料 2 を御説明ください。お願いします。

○平原委員 資料 2 です。私はここに書いてありますように、現在国立感染症研究長感染症疫学センター長の大石先生の元で、標記のような分担研究班を担当している産婦人科医です。

 資料 2 に従って御説明申し上げますが、本日の参考資料 2 というのは、資料 2 の下のほうに書いてある「緊急提言」の本文です。いろいろ資料がありますので、これもかい摘まんで説明させていただきます。先ほど来お話がありましたように、 2004 年の流行がございましたときに、急遽妊婦の風しん罹患に関する対策班が研究班としてできました。当時、岡部信彦先生が国立感染症研究所の感染情報センター長でした。岡部先生の下に研究班が急遽立ち上がりました。

 次ページに 2004 年の緊急提言の骨子があります。参考資料 2 はたくさん書いてあるのですが、かい摘まんで骨子だけを述べますと、おおむねこの 4 つにまとめられるだろうと思います。 1 つは、とにかく予防接種を推進してほしいのだと。打っていない人たちが多かった。ちょうど、この前後に、今も話題になっている、その当時個別接種に移った世代が、ちょうど高校生、大学生ぐらいになったのですが、経過措置で予防接種を打ってくださいというキャンペーンを随分張ったのですが、打たないまま終わってしまうような状況で、極めて予防接種を打っていない人が多いというのが実態として分かってきておりました。感染していた人たちも、ちょうどそういう世代の人たちも少なからず交じり始めたということで、とにかく予防接種を打っていない人たちが多いので、打ってくださいということを接種推進の重要な骨子として掲げました。

2 つ目が妊婦への対応ということですが、実際に妊婦が風しんに罹患していた、あるいは罹患したかもしれないといったときに、なかなか適切に十分な情報提供ないしは検査、精査を進める対応の仕方が十分ではなかったというのも分かってきました。したがって、これに関して対策をし、 2 次相談施設を設けました。

3 番目は疫学的な話です。 CRS は当時も全例報告でしたが、風しんの全例把握をするべきだということが提言で述べられております。更には現在も実施されておりますが、 2 回接種でより強力な風しんの排除を目指そうというようなことが述べられています。

3 ページ目は、緊急提言で設けられた妊婦風しんの相談施設です。この当時は 15 施設を認定しましたが、現在は、国立横浜医療センターが加わって、 16 施設となっております。この施設のメンバーは、研究班が立ち上がったときも幾度も顔を合わせ、どういう対応をしようかということを協議しまして、同じような目線で同じように情報提供をしようという形で動いておりました。たまたま 2004 年の流行の後は、非流行期がずっと続いたわけですが、この間も多くの妊婦が IgM が陽性ということで、医療機関からこれらの施設に相談が持ちかけられて対応しておりました。ほとんどの場合は持続 IgM 陽性例ということで、フレッシュな感染とは違うということが診断されて、大きな問題はありませんでしたが、中には外国で感染して実際に発症したケースもありました。

4 ページです。これは風しんの緊急提言で、妊婦への対応の診療指針です。字が小さくて大変申し訳ありませんが、これは現在もそのまま生きております。ただ、 4 ページの上のほうの資料で、左の真ん中の枠の所に、抗体陰性又は 16 以下という所に書いてある中に「夫、子供及び同居家族へのワクチン接種の推奨」と書いてあるのですが、これは今や職場など、社会の中でワクチンを打つべきだということで、ここのところが少し状況が違うような感じがします。その右の辺りに、 256 以上の所で「再度血清 HI 及び風しん IgM を測定」と書いてありますが、先ほど加藤委員からもありましたが、同時に測定すると保険が通らないというような問題に直面しまして、現在に至るまで、各都道府県で個々に対応してもらっているというのが現状です。

 このようなフロー図の下で、 4 ページの下にも書いてありますように、疑いが出た場合は、更に 2 次カウンセリングを求めるべく 2 次窓口のほうへ行って相談をしてもらうということをこの提言では述べています。

5 ページですが、緊急提言で述べられたことに関しましては、参考資料の 18 ページに多勢の参画していただいた先生方のお名前が書いてあります。実に国立感染症研究所の先生方には多勢加わっていただきましたし、ウイルス学、あるいは小児科、ワクチンの専門家、産婦人科など、いろいろな先生方に入っていただきまして、今まで述べられていた概念が本当に良いのかというようなこともとことん議論していただきました。そこで出てきた結論は、 5 ページの上のほうに書いてありますように、 HI16 以下の妊婦若しくは妊娠を考えている女性は、陰性扱いにしましょうということで、これは今まで 8 倍あったのですが、それを 16 倍にいたしました。

 そこに幾つか書いてありますように、 CRS の発生頻度というのは、必ずしも高くはない。必ずしもそれまで述べられていたように非常に高いわけではなかったというようなことも判明しました。また、産科の医師もワクチンを妊娠する前に打っていればいいのですが、産褥期に抗体価が低い人たちは、お産が終わったらワクチンを打ってくださいということを強力に勧めましょうということもそこで述べております。その下に産科診療ガイドライン、これは日本産科婦人科学会より 2008 年に最初の版が出ているのですが、この緊急提言をほとんどそのまま盛り込んだ形でガイドラインができて、ガイドラインになりますと、さすがに現場の診療のレベルでは、こういう診療の進め方が浸透している状況です。

 次に 6 ページの上のほうに書いてあるのは、私どもの施設でやっていたワクチン実施状況です。お産の前に、妊娠中に風しんの抗体価が低い人、これは 16 倍以下ということで、 2 割ぐらいおられます。この方たちには、とにかく妊娠中に風しんにかからないように気をつけてくださいというような説明をするのですが、それと同時に、お産が終わったときに、とにかく入院している間に、ワクチンを打つというようなやり方をして、協力をいただくと、 8 割ぐらいの方が打っていただけたというような実態があります。

 下のほうですが、妊娠に気付かずにワクチンを打った方も少なからず御相談に来られていて、これに関しましては、いろいろな情報発信をしておりますが、現時点ではワクチンで実際には CRS が発症したという事例の報告はないというようなことで、心配を必要以上にしないようにという情報を提供させていただいています。

7 ページに移りますと、先ほどの 16 施設の相談の事例です。 2011 年ぐらいから、実際に顕性感染例の相談が急に出てきております。これは実際に濃厚に感染したということで、濃厚に相談に乗ったというようなケースですが、 2012 年に比べて今回の期間に関しては更に 4 倍近いケースが実際に相談を受けられて、羊水検査施行例も 4 倍ぐらいあったというようなことが分かっています。実際に今回の顕性感染例の中では、職域での感染例、 30 代、 40 代の男性などから、そういった方と働いている妊婦が移されるというような形が多く含まれているということが大きな問題になっております。

7 ページの下のほうです。羊水、胎児期での診断も、感染してすぐに羊水の検査をすると分かるわけではない、ある程度は週数経ってからでないと検査しても意味がないということも分かっております。また流産、死産もそこそこの頻度で起こっているということも、詳しいデータは取られておりませんが、報告がございます。また、胎児感染例としては、感染例のパーセントは高いです。更に CRS の発症例がどの程度の頻度で出るのかということに関しては、海外の文献等がいろいろありますが、必ずしも一定の見解ではないということで、全てが全て発症しているわけではないというようなことも報告がされております。

 まとめです。これは研究班でもずっと前から言っておりましたが、とにかく排除しない限り CRS は防げないということが共通の見解です。予防接種の啓発をどのようにすればいいのか。該当した世代の人たちの認識をどう高めればよいのか。あるいは妊婦を取り巻く生活圏、今までは家庭のことを中心にして考えていたのですが、職場、家庭、学校、とりわけ職場は先ほどもおっしゃいましたが、感染する感受性のある人たちの世代がかなり働き盛りの世代で職場におられるわけで、その人たちがとにかくワクチンを打ってくれない限り進まないのではないかというようなことを考えております。

8 ページの下は、集団免疫閾値が 80 85 %ということで、これ以上になっていくと風しんが比較的排除に近い状況になるということが言われているのですが、私たちのところのデータですが、 2004 年の流行のとき、 2004 年の流行ということは、つまり 2003 年が患者が多かったという形になるわけですが、このときが風しんの抗体価が 16 倍と、先ほど言いましたようにリスクのあるグループが 20 %を超えるというような状況で、その後、不思議と 2004 年、 2005 年とずっと下がっている状況で、これに合わせて流行がなかったわけですが、今回の 2010 年、 2011 年ぐらいの流行に合わせまして、また 25 %近いデータが出てきているというような状況で、妊婦は全員風しんの抗体の測定を妊娠のときにはルーチンとしてやっておりますので、そういうデータを見ていくと、予測が可能な状況も実際起こっているというようなことで、これと風しんの発症、流行とが一致しているというようなことも分かりました。私のほうからは以上です。

○五十嵐委員長 妊婦の風しん対策、あるいは医療体制について御説明をいただきましてありがとうございました。前回、緊急提言に対する対応につきましては、岡部参考人からも御意見をいただきました。事務局から補足説明はございますか。

○結核感染症課課長補佐 ( 氏家 ) 参考資料 2 の最後の 2 枚のページなのですが、緊急提言に関連して厚生労働省から発出しました課長通知を付記させていただいていますので、簡単に説明させていただきます。平成 15 11 18 日の課長通知ですが、同年の 9 30 日に 15 歳から 24 歳までを対象にした風しんワクチン未接種者に対する経過措置を終了したことを受けて、まだまだ抗体保有が十分でない方たちがいる中で、当該者をはじめとする風しんワクチン未接種者に対して、情報提供をお願いした通知です。

 平成 16 4 9 日の通知ですが、 2004 年の風疹の流行による CRS の発生報告を受けまして、先天性風しん症候群の発生防止について依頼したものです。

 平成 16 9 月の通知ですが、緊急提言が 8 月に出されまして、それを受けた形で風しん対策の強化ということで、当該地域の医師会と密接な連携の下に、適切な対策及び情報提供等にあたられるよう、要請を行ったものです。このほか、 2004 年の流行を受けて、先天性風しん症候群の発生届の基準見直しを行ったことや、 2006 年には定期接種として風疹ワクチンの 2 回接種を実現し、 2008 年から風しん症例の全数把握等も開始して対応を進めてきたところです。以上です。

○五十嵐委員長 次に、資料 3 について西村参考人から説明をお願いします。

○西村参考人 風しんをなくそうの会『 hand in hand 』共同代表の西村と申します。私は、 1 人目の子供の妊娠時に風しんの抗体価が低いことが分かっていました。しかし、出産の後、入院しているときに、抗体が低かったからワクチンを打っておきませんかと、病院側から言われることもなく、授乳中は打ってはいけないと思い込んでいたり、どこで打てばよいか分からず、医師に伺うこともできなかったりして、結局、接種しないまま 2 人目を妊娠、そのときに風しんにかかって産まれた娘がいます。職業は保育士です。しかし、今回このような状況になるまで、保育士として職業上感染症になりやすいリスク、自分が他の人に移すかもしれないリスク、妊娠中に風しんになる恐さをよく知らないまま来たという事実があります。このような思いをする女性や御家族を減らすために、同じような立場の人と始めた活動が『 hand in hand 』です。今日は、患者会の立場、そして保育士の立場で、提案したいことをお話させていただきます。

 資料 2 ページです。先天性風しん症候群 (CRS) 、先天性風しん感染 (CRI) とは。 CRI は、母子感染はしているが、赤ちゃんに症状のないことを言います。母親が不顕性感染で、子供が CRI であった場合、普通の妊娠・出産だと思うでしょう。だから、特別な感染予防はされません。でも、ウイルスは一定期間排出されます。

 資料 3 ページです。風しん流行の影響を受けた子供への対応の課題です。まず 1 点目は、今回の風しんの流行の中、妊娠した女性から産まれた、又はこれから産まれてくる赤ちゃんたちに適切なケアをしていただきたいということです。パターンは 3 つあると思います。まず、私のように妊娠中に風しんになったことが分かっていて、すぐにケアをしてもらえる赤ちゃん、それから、患者会にもいますが、お母さんが妊娠中に風しんウイルスに感染したことに気付かずに産まれてきた赤ちゃんてす。これは、途中で子供の体調不良をきっかけに気付いたケースで、保育園に通っていた赤ちゃんもいます。子供のコミュニケーションや学習の発達を妨げないよう、健診等で早期に診断されることを願っています。しかし、このように診断された赤ちゃんは、ウイルスを一定の期間出し続けるということで、周囲への感染予防のことを言われています。子供の発達の場である家庭や保育園などにおいて、どの程度の注意が必要なのかということには、皆さん情報がいろいろで困っています。

現在 保育園において、 Q&Aを参考に CRS でウイルスを排出しているお子さんをお預かりするとなると、別室で 1 1 の保育をすることになると思います。私がそのお子さんの担当になると考えたとき、自分が休んだときは誰が代替えをするのだろう、他に十分に抗体があると分かっていると分かっている保育士は誰だろうということ、 1 1 なので、子供や保護者とよい関係を築いて、その関係を継続できるだろうか、保護者と行き詰まってしまわないかということ、他児との関わりがない中、社会性を育てることはできるだろうかなどの不安材料があります。

 一方、症状はないけれど、一定期間ウイルスを出している CRI のお子さんも、今回の流行で一定数産まれていると思いますが、この人たちには特別な感染予防をしてもらうことはできません。大人でも 15 30 %が風しんウイルスに感染しても症状がないと言われていますが、このようなお子さんたちが一定数社会や集団に存在することも、風しんが大流行した地域では考える必要があると思います。このため、風しん対策の基本は、みんなでワクチンを打って、発症する人を減らそうということになっていると私は理解しています。

 資料 4 ページです。 CRS/CRI 児のケアに必要な感染対策。患者会でも、医療機関や保育園で困っている経験を聞いています。例えば、赤ちゃんが予防接種や乳児健診を断られてしまっているという事実があります。我が子の近医の受診は、ウイルスの排泄がなくなるまでは来ないでくれと断られました。問題なく受けさせてくださる所もあるので、病院や専門科によって考え方が違うのかなと思うのですが、小さい子を連れて遠い病院に行くことは簡単なことではありませんし、違う自治体に行くと無料では受けれず、自己負担になってしまいます。赤ちゃんを預けることができず、働けないでいる保護者にとっては、このような出費は大変負担となっています。実際にはウイルスを出していても、何の行動の制限もない CRI のケースがあることを考えると、分かった CRS の子と保護者だけにこのような厳しい制限が加わることを大変悲しく思います。

 資料 5 ページです。 0 歳児がお座りができるようになるのが 5 6 か月、はいはいをして動き回るようになるのが 8 か月前後と言われています。この頃までは、赤ちゃんが自ら他の赤ちゃんの所に行って接触したりすることはありませんので、免疫のある保育士が担当をし、通常されている手洗いをします。 CRS あるいは CRI と分かっている赤ちゃんは、生後 3 か月の後に陰性の検査結果を 2 回確認することが必要と言われていますので、それまでの間は免疫のない妊婦さんとの接触を避けるなど、必要な配慮を職場がする必要があると思います。

 しかし、問題は CRS CRI と分かっている赤ちゃん、また、そうとは気付かれずにウイルスが出ているかもしれない赤ちゃんをケアする保育士自身が、十分な知識や準備をできていないことにあるのではないかと考えます。私は、子供がウイルスを出していると分かっていて、大変周囲に気を遣う機会が増えました。同じように、知らずに他の人に移すかもと考えて不安になっている親御さんもいます。ウイルスの専門科の先生やドクターは、赤ちゃんから感染するようなことはないと言ってくださっていますが、周囲に免疫のない人がいたらどうしようということを保護者が心配しなくてもいいように、必要な制度を整えていただくことを望みます。

 資料 6 ページです。「保育・教育関係者自身の健康を守る」「子供や保護者の感染源とならないために」。現在の保育の現場の課題を説明します。保育士は、学校で学んで資格を取る人もいますが、試験だけでも取れる資格です。カリキュラムにおける感染予防の情報は十分とは言えません。また、保育の実習の場においても、医学部や看護学部のように事前に麻しん、風しん、おたふく風邪、水疱瘡、 B 型肝炎の免疫やワクチン接種歴の確認は徹底されていません。いつ集団生活の場に感染症が持ち込まれるか分からない、大変怖い状況があります。このような状況を改善するためには、養成課程の間にしっかり学べるようにすること、実習前には免疫や接種歴を確認すること、必要なことは義務化することが重要ではないかと考えます。

 資料 7 ページです。なぜ、現在できていないのか。なぜ、現在は学校や保育所によってばらばらなのかを考えてみました。幾つか問題点があると思います。まず、このような職員や保育の場における感染対策としてのワクチンについて、経営者等がよく理解していないのではないかと思います。職員の労働安全として必要なことでもあるので、採用時健診や定期健診の機会に抗体を調べてワクチン接種を勧めたりすることが経営者の責任であると、どこかに明記することが必要だと思います。費用は常にネックになりますが、検査やワクチンのお金が一時的にかかってしまうとしても、突然発症して欠勤されたり、子供や保護者、同僚に感染させるリスクを考えたら、私は高いとは思いません。

 学校によっては、そのようなことを義務化すると、受験者が減ってしまうことを心配することもあるかもしれません。これは、例えば定期接種の機会を逃した人のために、期間が過ぎても、 18 歳の高校卒業の時点で、接種し忘れたワクチンは無料で接種できるような仕組みにすれば改善されるのではないかと思います。自分が接種したことがあるかどうか分からない人もいますので、行政のデータベースが早く整うことも期待しています。

 資料 8 ページです。実は、既に厚生労働省からはすばらしいガイドラインが出ています。そこには、感染対策は、園児だけではなく、職員にとっても重要であると明記されています。風しんだけではなく、他の感染症のことも含まれており、大変すばらしい指針だと思います。問題は、ガイドラインがあるのに、できていないことです。今回、 CRS CRI の子供を受け入れるに当たって、保育所側の準備が不足しているからということにならないように、この状況を改善してほしいと願っています。そのためには、まず、なぜ実施できていないのか、全国ではどれぐらいの施設が対応できているのか、できない問題を国や自治体はどうサポートすればいいかを明らかにするために、実態調査をしていただきたいと思います。

 資料 9 ページです。風しん流行の影響を踏まえた新たな資料を作成する。今お話したことは、風しんに限ったことではありませんが、今日、私が提案したいことは、今回の風しんの流行を受けてしまった人たちを支援する体制づくりです。 CRS CRI の子供を抱えた保護者が困っていることの 1 つが、必要以上に行動制限を受けたり、心配して外出を控えたりすることです。このようなことがないようにしていただきたいです。受け入れる側も困っていると思いますので、受入れ施設向けの支援を国として行っていただけたらと思います。世の中には、 CRI に気付かずにいるケースもあるわけですし、大人でも不顕性感染の人たちがいます。日常生活においては、こことのバランスも考えていただけたらと思います。

 資料 10 ページです。ここからは参考資料です。 11 ページを御覧ください。先ほど 8 ページでも紹介しましたが、厚労省からは感染対策ガイドラインが出ています。先ほどのガイドラインを読み進めていくと、このページが出てきます。「 4 保育所職員も、ワクチン未接種で未罹患の場合は、必要回数の 2 回ワクチンを受けて、自分自身を守り、子供たちへの感染伝播を予防することが重要です。 5 予防接種歴・罹患歴記録の重要性、保育所での感染症対策を考える上で最も重要な点として、職員と子供たちの予防接種歴・罹患歴の把握と記録の保管があります」と書いてありますが、これが現場の保育士の間では当たり前にはなっていません。予防接種歴・罹患歴記録の重要性については、子供のための具体的な指示は明記されていますが、保育士に対しての指示は明記されていません。この点の改善と周知をすることが必要だと思います。

12 ページです。最後に、この資料は現場の保育関係者にヒアリングをしたり、小児科医、これまで予防接種対策の改善に取り組んできた人、現場の感染症関係者の助言を得て作りました。たくさんの意見を伺いましたが、保育関係者の免疫確認を徹底することと、入園する人たちに予防接種の理解を深めて接種してもらうこと、これは今回は風しんに特化しましたが、それ以外の予防接種においても必要だと、改めて感じました。人権に配慮し、必要な感染管理やワクチン接種勧奨を行うことによって、当事者の生活や権利を妨げないような配慮をお願いします、という通知を厚労省から出していただきたいと思います。以上です。

○五十嵐委員長 先天性風しん症候群、保育士の感染症教育、 CRI の乳幼児への支援ガイド等、いろいろな問題について御説明を頂きました。先天性風しん症候群に関しては、先月、感染症研究所から Q&A が公表されております。参考資料 3 に出ておりますが、大石委員から御説明をお願いします。

○大石委員 国立感染症研究所の大石です。先天性風しん症候群に関する Q&A は、 9 月末日に感染研のホームページにアップしております。これは国立感染研の感染症疫学センター、ウイルス 3 部、委員の平原先生、宮崎先生に大変御協力を頂き作成したものです。この Q&A は、先天性風しん症候群の赤ちゃんの保護者の皆様からの御相談を受ける市区町村、保健所等の担当者に利用していただくことを想定して作成したものです。

1 ページです。 Q1 「先天性風しん症候群とはどんな病気ですか」に対して答えております。 CRS の発症と妊婦の在胎週数と異常児の発生の頻度との関係を図で示し、妊娠早期に発症の確立が高いということを説明しております。また、発症早期では、特に妊娠 2 か月までには、目、心臓、耳の全てに症状を発現させることが多いということが書かれております。

2 ページです。先天性風しん症候群の届出に必要な要件、すなわち症状、病原体診断及び抗体検査ついてまとめています。 Q2 「先天性風しん症候群の診断のために、どんな検査が、いつ行われますか」ということで、ウイルス分離、 PCR 検査、抗体検査、特に抗体については、 CRS 児の IgM 抗体と IgG 抗体の動態についてまとめております。

4 ページです。 CRS 児の免疫動態が図示されています。 Q3 「妊娠中に風しんウイルスに感染した可能性がある妊婦のその後の受診場所やカウンセリングについて」ということで、相談体制についてまとめています。妊婦の症状が本当に風しんなのかどうかを確認する必要がある場合に産婦人科、あるいは産婦人科の先生から内科、皮膚科といったかかりつけの医師に紹介がされることになるということと、産婦人科の平原先生の研究班で指定されている各地区ブロック相談窓口が案内されています。

Q4 では、子供が先天性風しん症候群ではないかと不安な妊婦が発生した場合、妊婦の感染疑いについて、妊婦に風しんを疑わせる症状があった場合と、妊娠中に風しんの典型的な症状がない場合、いわゆる無症候感染の場合についてアドバイスがされています。

7 ページです。 Q5 では、実際に診断がされたときに、自治体、保健所等の担当者からの支援体制について詳細に記載されています。

8 ページです。 Q6 は、先天性風しん症候群の予後についてです。これは、かかりつけの先生に相談していただきたい旨を記載しております。

Q7 は、先天性風しん症候群の赤ちゃんから周囲に風しんウイルスを感染させる可能性について記載しています。実際、赤ちゃんからウイルス排泄があり得るために、周囲の人に感染させる可能性がありますので、医療機関での先天性風しん症候群児に対する対応等について記載しております。また、医療機関だけではなく、家庭でも兄弟等についても記載されています。

Q8 「周りの人への感染性はいつまでありますか」という質問ですが、これはかなり個体差があります。一般的には出生後 1 歳ぐらいまでは感染性があるのではないかと考えて対応したほうがいいとも書いていますが、実際は千差万別で、生後 1 か月で消える場合もあるし、 1 年以上ということもあり得ます。生後 3 か月以降で複数回検査ができる体制を、国立感染研及び地方衛生研究所等々で実施する体制について記載しております。

Q9 「自宅での生活で特別に注意することはありますか」ということ質問です。赤ちゃんからウイルスが排泄される可能性がありますがで、母親は免疫を持っているので母親への感染の心配はありませんが、父親や兄弟等への予防接種も含めた対応について記載されております。記載が質問ごとに重複している部分もありますが、 Q&A を利用する方がどこから読まれるか分からないので、かなり重複した記載になっていることを御了解いただきたいと思います。

Q10 「自宅でのおむつの処理はどうしたらよいですか」という質問で、これについても風しんに対する免疫を持っていれば特に心配はなくて、おむつ交換後は丁寧に手を洗うということが書かれています。

Q11 ですが、衣類の洗濯について、洗濯をすれば衣服に付着したものはきれいに洗い流されて、衣服の感染性はなくなるということを示しております。

Q12 「保育所に入所できますか」ということです。大変配慮は必要な部分であります。原則的にはウイルスが排泄されている以上注意が必要ですので、生後 3 か月以降の検査で、 1 か月以上の間隔を空けて連続して 2 回の検査で咽頭ぬぐい液、唾液、尿等からウイルスが検出されないことが確認できれば、周囲の人への感染性はないと考えられますので、保育所入所が可能であるということです。また、いろいろ問題が生じる場合には、市町村の担当課で判断がつかない場合があれば、厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課に御相談くださいということが記載されております。

Q13 「先天性風しん症候群の赤ちゃんに外出の制限はありますか」ということですが、これはまず主治医の先生と相談していただくことが大事であると。基本的に外出は可能ですが、幾つか注意点があるということです。

Q14 は、乳幼児健診や歯科健診、予防接種等、集団の場ではどのように対応すればいいか。これもウイルス排泄ということで、感染性が問題であり、周囲の妊婦等への配慮が重要であるということです。健診の場で CRS 児が最初から排除されることがないよう、そういう機関にはしっかりと通知を徹底していく必要があると思います。

Q15 は、先天性風しん症候群の赤ちゃんの自宅に訪問する保健師、訪問看護師などの感染防止はどうすればいいか。これは風しんに限ったことではありませんが、他のウイルスに対する免疫を保健師、看護師の方々に持っていただくことが原則であろうということです。こういった方々に CRS 児の対応をしていただく、その他の注意点も記載されております。

Q16 は、定期予防接種を受けてもよいか、また、 1 歳になったら MR ワクチンを接種すべきかについての質問です。原則的には問題はないということです。以上です。

○五十嵐委員長 大変具体的で、現場のことを考えた Q&A だと思います。

 それでは、参考資料 2 、参考資料 3 を含めて資料 1 から資料 3 まで御発表いただきましたので、まとめて御質問、御意見がありましたらお願いします。

○岡部参考人  Q&A でお尋ねします。非常によくまとめられているし、先ほどの西村さんからの質問にも随分答えられているのではないかと思いますが、 1 つは、私は衛生研究所にいて、調先生からもお話が出ると思いますが、検査する体制は整っています。私の所でも、要請があればできるようにはしています。ただし、衛生研究所は、そのための行政的な根拠がどうしても必要になるところがあって、引き受け兼ねるという所も中にはあると思うのです。今回の委員会に期待するわけですが、そういうものに対して根拠をきちんと示していただけると、本当にどこでもできるようになると思います。今の段階では、そこの研究所の理解によってボランティアレベルでやっているような段階にあるということです。

 もう 1 つは技術的なことですが、赤ちゃんから検査をしてウイルスが見つかればと言っていますが、これは PCR を示しているのか培養を示しているのか。私の所では、 PCR はかなり長く検知される可能性があって、技術的には難しいけれども、ウイルス分離をメインには出していますが、アメリカの教科書等では議論のあるところで、その辺りはどのようにお考えになっているのかを教えてください。

○大石委員 御質問は、 CRS 児に対するウイルス検査のプロセスがどうなっているのかということだと思います。今回、 Q&A を通して検査の必要性を示したわけですが、ウイルス検査については、国立感染研で承認されている CRS 児のサーベイランスの研究の中で実施できるものと考えています。この検査体制については、 2 つの厚生労働省研究班(大石班と竹田班)が基盤になって、地方衛生研究所と連携を取って、ウイルス検査体制ができていくものと理解しております。

2 点目の検査については、 PCR とウイルス分離と両方あり得ると思っておりますが、この辺りは竹田委員に聞いていただいたほうがいいのかもしれません。

○竹田委員 検査については、 PCR を想定して書かれているのだと思います。ウイルス分離はかなり時間もかかるし、技術もより高いものを要するので、地方衛生研究所で実施してもらうにしても、ウイルス分離は技術も環境も職員のマンパワーも要るので、検査自体は PCR を想定して、どういう判断基準を持っているかを考える必要があると思います。

○岡部参考人 技術的な部分は後で検討させていただければと思いますが、課題としては少し残っているのではないかと思います。

○小森委員  2 点教えていただきたいと思います。 1 点目は平原先生にお願いしたいのですが、先生の資料 2 5 ページには、「発生頻度は基本的には決して高くない。胎児感染率 20 ? 、これらのうち CRS 発症 30 ? 」と書いてあります。分母が違うのかもしれませんが、 7 ページには、羊水、胎児診断での報告、胎児感染 80 (8 週まで ) 50 (9 12 ) とあります。この数字が乖離しているのは、私が十分に説明をお聞きしなかったのかもしれませんが、その点をお願いします。

○平原委員 混乱をさせて申し訳ありません。こういうケースの海外からの文献報告自体が非常に少なくて、それぞれの文献によって状況が違うということもあります。 1 つは、恐らく古い文献ですと、確かに胎児感染率、あるいは CRS の発症率が低い数値というのは、 2004 年の緊急提言当時の議論がこのような議論でしたが、実際には検査の検出感度等を考えると、先ほど申し上げたように PCR 等いろいろな方法が出てきたといったことを考えると、新しい文献では CRI の感染率はもう少し高い。ただし、そこから発生してくるケースは半分以下ではないかということは、文献的には幾つか共通なところがあります。

 ただ、どの文献も非常に限られた症例数の中での議論なので、一定した見解がなかなかないのが現状ですので、このような書き方をしてしまいました。かつての議論であったのと最近の文献と、少し違った内容になっているところがあるので、このような資料にしてあります。

○小森委員 もう 1 点、先ほどの岡部委員の御質問にも関連しますが、西村参考人のお話を伺って、 CRS 児、あるいは CRI 児の母親たちが実際に差別を受けたということをお聞きすると、この問題が国民的な大きな課題に更になっていく過程で、周囲の母親たち、保育所の職員等が非常に不安になると思います。大石先生がお示しになった Q&A の中の Q8 「周りの人への感染性はいつまでありますか」の下に、このように検査ができますよという記載がありますが、この委員会で期待をしたいと思いますが、是非みんなの負担で、こういうことをすれば安心ですよ、是非受けてくださいという趣旨に、この委員会の議論を経てなっていくといいなと思いました。委員会の議論を踏まえて、 Q&A の改訂といったこともお考えいただきたいと感じました。

○五十嵐委員長 それと関係しますが、岡部先生が御質問された検査の根拠についてはどのようにお考えですか。

○結核感染症課課長補佐 ( 氏家 ) CRS については、感染症法の第 5 類の全数把握疾患になっているので、診断については感染症法に基づいて検査を行うことになるかと思います。また、その他の感染性の評価については、 Q&A でも記載をしていただいておりますが、資料 6 でも PCR 検査の必要性ということで議論があります。この委員会で指針の策定について審議する中で、適用と根拠についても併せて御議論いただければと考えております。

○五十嵐委員長 岡部先生、よろしいですか。

○岡部参考人 それはそれでいいのですが、はしかの Elimination のときも同じことを申し上げていますが、本当に数が少なくなってくると、こちらとしては 1 1 例を大切にして、はしかの Elimination に向けていきたいのですが、一方では地域でたった 1 人の方になってくると、非常にその方にプレッシャーがかかる可能性があるので、十分そのデリケートさを理解してやらなければいけないだろうと思います。 CRS も同じで、通常ならば普通の生活をしている人に対して、うまく周りが理解してあげないと、感染症はしばしば無要の差別のような状態に陥るので、その辺りはきちんとしたコミュニケーションを取ることも必要だろうと思います。

 それが検査に結び付く発言なのですが、 PCR に余り重きを置いてしまうと、 PCR が出ていることイコール感染性ではないと思うのです。ただ、判断の根拠が難しいから、そこは技術的に課題があるので、ここで議論しても収まらないのではないかと思います。そこは議論すべきものとして取っておいていただければと思います。

○五十嵐委員長 大変重要な御指摘だと思います。ほかにいかがですか。

○館林委員 素朴な質問ですが、 CRS CRI というものがあって、不顕性感染の方から CRI があると西村さんから御説明がありました。 CRS はその後の治療が必要ですからいいとして、 CRI の方の産まれた後の感染対策はどのようにフォローされているのかがよく分かりませんでした。

 もう 1 つは、せっかく西村さんがいらして、通える医療機関を探すのが大変だったとか、具体的なお話があったと思います。 CRS のご家族の方がうまく暮らせるようになるためにどうしたらいいのかということは、患者会の皆さんに聴取り調査をして、どのような情報提供をしたら良いかを考えていったらいいのではないかと思いました。

○大石委員  CRI の実態は、まだ十分に把握されていないのではないかと思います。実は、今回感染研で立ち上げている CRS 児のサーベイランス研究についても、当初は CRI を含むという申請をしたのです。しかし、 5 類全数の対象が CRS であって、 CRI の届け出のしくみがないために、 CRI を把握できないだろうという倫理審査委員会の判断があり、 CRI はサーベイランスの対象から削除されることになっています。今回の倫理申請は急いでいた部分もあるのですが、 CRI についての議論はまだ十分にされていないのが現状だろうと思いますので、是非この委員会の中で議論を深めていくべきではないかと思っております。

○五十嵐委員長 もう 1 つの御提案、患者がどういうことに困ったかについて、聴取り調査等をしていただきたいということですが、西村さん、何か追加はありますか。

○西村参考人  Q&A を出していただいて、これを使って行政の方が相談機関になるようにということでこの Q&A を作っていただいたと思いますが、これが出る前に私が行政に掛け合ったときに、そのときは子供を保育園に入れたいのだけれども、我が子は CRS で、ウイルスが出ているのだけれども、申込みができるかどうかという相談をしようと思って電話をしたら、担当の方が「 CRS って何ですか」という所だったのです。その後、是非勉強会をしていただきたいというお願いをしたのですが、こちらから言っても「こちらに医師がいるし、私たちと一緒に勉強をする必要はありません」と言われて、その後、行政の方がどのような勉強をされたのか、今どのような情報を持っておられるのかといったことは私は分からない状況にあります。 Q&A がいつまでに浸透して、いつから CRS 児を持つ親は行政と相談ができるようになるのか、目標を作っていただけたら有り難いと思います。

○北原委員 平成 16 年の提言のときに、厚生労働省から各都道府県にいろいろな通知が出されていて、仕組みが分かっていないのかもしれませんが、その先の各地域のアクションはどういうものがあったのか。また、そのときに、なぜワクチン接種までつながらなかったのかという反省の部分があると、今後につながるのかなと思ったので、もし知見があれば教えていただきたいと思います。これが 1 点です。

 もう 1 点は、西村さんの資料の中に「保育所における感染症対策ガイドライン」がありますが、これは誰から誰に対して出されているのか、このガイドラインを誰が読んで、どうアクションすればいいのかが分からなかったので、もし御存じであれば教えていただければと思います。

○雇用均等・児童家庭局保育課保育指導専門官 ( 馬場 ) 2012 年に、改訂版として「保育所における感染症対策ガイドライン」を作りました。これは、一般的には各保育所に向けて通知をしており、対策を取っていただくように、また、厚生労働省のホームページにも PDF の形でアップしているので、広く国民の方にも御覧いただけるような状況になっております。保育士養成校に関しても、このようなガイドラインがあることを保育士養成協議会を通じてお知らせしております。

○五十嵐委員長 保育園保健協議会として、ガイドブックとしても市販されていますね。参考資料 2 の最後に幾つか通達が出ていますが、それに対してどういうリアクションがあったかということはいかがですか。

○結核感染症課課長補佐 ( 氏家 )  本日御欠席の渋谷委員、宮崎委員からも、今回の議論について御意見を頂いており、その中でもそういったことについて触れられている部分がありますので御紹介します。

 委員限り配布資料として、渋谷委員の御意見です。第 2 回小委員会を欠席いたしますが、特定感染症予防指針の策定に当たり、若干の意見をお届けしたいと思います。いつまでに何をどこまで達成するのか、進行管理ができる短期・中期の目標が掲げられるとよいと考えます。

 原因の究明について。 5 類感染症ということで調査を控えてしまうことになりやすいので、麻しんに準ずるような感染源につながる情報まで、主治医の協力の下、患者本人への聴取り、検体採取等を行うよう努めることとしてはいかがでしょうか。風しんの性質上、周辺の接触者の調査については、麻しんに比べて次につながる効果的な調査には限界があり、限定的になると思います。予防接種の普及を図ることに重点を置きたいと考えます。

 発生予防、蔓延の防止について。風しん患者と確定していない場合 ( 疑いで抗体検査結果まで時間がある等 ) であっても、蔓延防止のためにできるだけ外出を控える指導をお願いすることを盛り込んではいかがでしょうか。診断届出の基準にもよりますが、まずは臨床の診断で何らかの対応を始めるのがよいと思います。必要な人に予防接種ができるよう、抗体検査の普及、産業保健分野での啓発を重視、また、ワクチンデーの創設、キャッチアップキャンペーンなど、風しんに限らないことですが、インパクトのある客体と広報媒体を活用し、啓発を進めることが必要な時期ではないでしょうか。以上よろしくお願いいたします。

 宮崎委員に関しては、公開可能ということでしたので、参考資料 4 としてお付けしています。

1) 今回の風しん流行について。国立感染研に作られたリスクアセスメントに詳しいので、追加する点は多くないが、風しん再流行と CRS 児の出生の要因について簡単に述べる。日本では、 MMR ワクチンを用いて英国方式から米国方式に切り替えたが、 MMR ワクチンの髄膜炎問題が起きてしまい、 MMR ワクチンの使用ができなくなり、麻しんワクチンと風しんワクチンを別々に接種しなければならなくなった。平成 6 年改正で、改めて風しんワクチンの幼児接種を定期接種化したが、麻しんワクチンに比べて風しんワクチンの接種率が 10 15 %は低く推移した。これは、国民における両疾患の認知度の違いだったと思われる。同時に、男女中学生に対する接種を経過措置として残したが、個別接種化したこと、男女ともに接種するということで、将来に妊婦を守るという視点が薄まったこと等から接種率が上がらなかった。国は、接種上限年齢を延長して接種率を上げようとしたが、国民の関心は薄かった。学校現場での勧奨も少なかったと思われる。 MMR ワクチン問題後は、予防接種に対する国の姿勢が後ろ向きになり、問題がなかったはずの麻しんワクチンと風しんワクチンの混合ワクチンの開発が遅れ、実際に MR ワクチンが使われ始めたのは平成 18 年からであった。ここから麻しんワクチン接種率と風しんワクチン接種率が同レベルになったのである。

 麻しん排除対策として、 MR ワクチンの 3 期、 4 期が定期接種化されたが、ともに期待値ほど接種率が上がらなかったのは御承知のとおりである。中学生女子のみに接種されていたときの接種率はほぼ 70 %であった。当時、中学生は既に 70 %の生徒が風しん感染を受けていたので、合計 140 %になり、全員が免疫を持つことになりそうであるが、実際には風しんにかかっていない生徒の中でワクチン接種をしなかった生徒が 5 %残っていた。風しんは、発熱、発しんの症状を出す前に、既にウイルス排泄しているので、流行を急に止めることが難しい反面、麻しんほどの伝染力がないため、風しん流行はその集団の 7 割以上が免疫を持つと、流行が一旦終息していく傾向がある。逆に言えば、ワクチンを接種しない限り、感染もしないまま成人する者が 20 30 %残るわけである。

 上記の複合要因によって、 20 歳代から 40 歳代の 10 30 %の成人男性に加え、免疫を持たない妊娠可能年齢の女性も残存したと思われる。 2004 年流行時に警告は出されたが、その後、流行が沈静化し、国・国民の関心も沈静化したのである。同時に、国内株の伝搬は一旦途絶えたと思われる。

2)CRS 児の診断と治療について。国立感染研が作られた Q&A にかなり詳しく対応が書かれているので、追加する点は多くないが、簡単に述べる。

 先天性風しん症候群児が多数出生した 1960 年代の沖縄奄美地方をはじめ、 1970 年代以降、本土でも風しんの大流行が約 5 年置きに繰り返された。その実態は、加藤による病院調査、門屋らによる聴覚障がい特別支援学校調査等で明らかになっている。今年の流行から約半年以上遅れて、 CRS 児の出生が懸念される。

CRS 児の症状、経過については、かつての国内外の大流行時のデータにより、ほぼ整理し尽くされているが、検査手技は現在のほうが格段に進んでいる。それはウイルス学的診断、新生児聴覚スクリーニング、心血管の超音波検査等である。要は、新生児、乳児を見たときに CRS を鑑別診断として上げるかどうかである。鑑別診断として上げることができれば、かつてよりは診断しやすくなっている。 CRS を疑う目があれば、実際の診療は小児科、眼科、耳鼻科などが連携して当たる。 CRS 児は、出生後しばらく風しんウイルスを排泄することが知られているが、個人差が大きい。彼らの社会的活動が不必要に制限されないような配慮が必要である。

 家族内では、普段の子育てが基本になる。家族内感染は、既に妊婦感染の時期に済んでいる可能性が高く、そうでなくてもワクチンを接種すればよい。 CRS 児のウイルス排泄に関して注意を喚起するのであれば、検査は国立感染研や地方の衛生研究所が責任を持っていただき、適切で節度のある指導を頂きたい。

 産婦人科をはじめ、病院受診時等では、感染研の Q&A などを参考にしながら、ハイリスクの方々への感染を防ぐべく感染症の標準的予防策を取る。新生児期の一過性症状で終わる児もあるが、永続的な影響 ( 白内障、小眼球症、末梢性肺動脈狭窄や動脈管開存を中心とした心臓血管系の異常、難聴、発達の遅れ ) が残るようであれば、医療機関と療育機関が連携を取りながら、子育てや発達を支援していただきたい。

1965 年頃、沖縄で多くの CRS 児が産まれた。九州大学名誉教授の植田浩司先生は、約 30 年以上にわたって聴覚障害のある彼らの健診を続けてこられた。そのお手伝いをする中で、成人されている方々にお会いすることもできた。 CRS の症状の種類と程度は様々なので、一般的に言うことは難しいが、医学的な治療、幼児期の療育、そして教育を通して、社会で活躍されておられる方が少なくないことを申し添えておきたいと思います。

2) 今後の風しん対策について。風しんの伝搬性、日本の血清疫学、諸外国の流行状況等が関連しながら次の流行の山を作るが、それを正確に予測することは難しい。言えることは、感受性者が多く存在する限り、流行のリスクは避けられないということである。そして、風しん流行は常に続くわけではないので、目標を明確にしておく必要がある。感染症指針の目標を「風しん排除、先天性風しん症候群ゼロ」に置く。対策の緊急性、対象の絞りやすさ、ワクチン供給費用等を考えると、まず妊娠可能年齢の女性とその周辺、妊婦とその周辺、出産後の褥婦が最も緊急的に対応するべきである。その間に、成人男性の大きなマスにどう対応するか検討する。

 妊婦に関しては、風しん抗体検査がほぼルーチン化されているので、妊娠中の対応と出産後の褥婦へのワクチン接種指導が比較的容易にできる。妊娠可能年齢の女性とその周辺に関してはキャンペーンが必要で、検査費用とワクチンの接種費用補助がその有力な手段となる。現在の流行が成人男性を主体としていること、職場内感染が多いこと等に鑑みて、企業単位、職域単位で健康診断時に風しん抗体検査を行う、ワクチン接種費用補助を企業が行う、患者が発生した場合の対応マニュアルを作る等の工夫があり得る。成人への接触は、キャンペーンによってモチベーションを高めないと接種率が上がらない。公私問わず検査費補助、接種費補助という金銭的なインセンティブは、そのアナウンスを行うこと自体キャンペーンになり、接種モチベーションを上げる。ワクチン接種に健康保険が使えないかも検討いただきたい。

 日本の風しん流行状況は、 WHO も米国 CDC も大きな関心を寄せている。日本は発展途上国で今後進んでいくであろう風しん対策の模範となる必要がある。今までの風しん対策を検証しながら、忘れずに、たゆまず歩み続けることが大切である。そうすれば、必ず風しん排除、 CRS ゼロが達成されるはずである。

 なお、本稿に書かせていただいたことは、下記文献に詳しく書いた。御参照ということで『小児科臨床 ふたたび、風しん流行』。以上です。

○五十嵐委員長 北原委員の先ほどの御質問はよろしいですか。

○北原委員 保育所の話ですが、このガイドラインは園長が御覧になって、園長の裁量でアクションを起こすことになるのでしょうか。公立の保育園の園長はそういうことをする裁量があるのでしょうか。

○雇用均等・児童家庭局保育課保育指導専門官 公立については、保育所の実施主体が市町村ですので、市町村の判断になる部分が多いかと思います。また、私立園では、それぞれの保育園の園長の裁量によって、どのような対応が取られるかが関係してくるかと考えています。

○五十嵐委員長 時間も押していますので、次にいきます。資料 4 を井上参考人から御説明ください。

○井上参考人 私はある検査会社の非常勤顧問をしております。その会社には、全国の産婦人科から妊娠女性の風しん HI 抗体測定依頼が多数集まります。妊婦は健康な人であり、その膨大な抗体データを集計解析すれば、風しんの疫学をある程度知ることができ、さらに CRS 防止対策に何らかの役に立つのではないかと考え、以前、その集計結果を論文にして発表しています。今回は、成人間で風しんの流行があった今年前半のデータを解析しましたので、その結果を報告させていただきます。

 目的は、最新の風しん免疫状況を知ること以外にも、 2008 年度から高校 3 年生へのワクチン接種(第 4 期接種)が始まりましたので、それが 20 代前半年齢層の抗体保有状況にどのような影響を与えたかも知りたいということです。

1 ページの下部に検体数が書いてあります。産婦人科からの血清検体では、 20 代前半の数が少ない。今年は、風しん流行のためか、診療科名が書かれていない検体が非常に増えました。この検体は、学校や職場での健常人の集団健診のものが多いと考えられ、さらに 20 代前半の検体の割合も、産婦人科のものよりも多いので、それも加えて集計しました。合計で 13 万検体です。

2 ページ上の図は、検体の年齢別の内訳です。 30 歳付近が多い。

2 ページ下の図は、年齢別の抗体保有率のグラフです。 23 歳に谷底があり、 22 歳で保有率が上昇しています。この 20 歳から 22 歳の保有率は高いのですが、 90 %を割っております。多分この年齢層の検体には偏りがあり、1)第 4 期接種を受けなかった人が産婦人科へ行って抗体検査を希望した、2)この年齢で妊娠する人では第 4 期接種を受けなかった人が多い、などのことがあるかもしれません。実際は 90 %を超えている、と私は考えております。

3 ページ上の図は、年齢別の平均抗体価のグラフです。抗体陽性者のみでの抗体価の幾何平均値をグラフにしたものです。 20 代前半で平均抗体価が低い。

3 ページ下の図は、抗体陰性率と患者発生数との関係を描いたものです。赤い曲線は、抗体陰性率(抗体価 8 未満)で風疹感受性者率を表します。棒グラフは、感染症発生動向調査による年齢別患者発生数です。抗体陰性率のピーク( 23 歳)と患者数のピークとが一致しています。

4 ページ上の表は、 2013 6 月末現在の年齢と第 4 期接種機会の有無との関係を表したものです。横軸に生まれ月、縦軸に暦月を取りました。赤い数字は年齢を表します。たとえば 1990 7 月生まれの列をずっと縦に見ていただきますと、この人は 2008 年度に高校 3 年生で第 4 期接種を受け、今年 6 月には 22 歳で、 7 月には 23 歳になります。今回の集計では、 22 歳の大部分は黄色の部分にあり、接種を受ける機会があったわけです。これに対して 23 歳の 9 割(濃い茶色部分)は接種を受ける機会がなく、 23 歳で抗体保有率が低い理由が分かります。

4 ページ下の図は、 2008 2012 年の年齢別風しん抗体保有率のグラフを作って、それを 2013 年前半のグラフに重ねたものです。毎年 1 年ずつ折れ線グラフが右にシフトしています。ただし、 2013 年のグラフと 2012 年のグラフとは重なっています。多分、今年の風しん流行で自然感染を受けた人がいた、またワクチン接種を受けた人がいたことで、抗体保有率が上がった可能性があると考えています。

5 ページの上の図からは考察になります。感染症発生動向調査によれば、調査開始以来、風しんの全国流行は 1982 年、 1987 年、 1992 年の 3 回、 5 年おきにありました。幼稚園・小学校での流行で、患者は 5 9 歳が多かった。そのとき、風しんワクチンは女子中学生のみに接種していたので、小学生での流行を抑えることができなかったわけです。 1995 年に、幼児への個別接種(標準接種年齢 1 3 歳)に移行し、全国流行はなくなりました。この 1995 年には、年長の幼児への接種率は低かったと思われます。

接種対象の年齢が変わったことで、対象外となる 1979 4 2 日~ 1987 10 1 日生れの人に期間限定の個別接種が行われましたが、その接種率は低かった。

5 ページ下の図は、先ほどの年齢別の抗体保有率と平均抗体価のグラフを重ね、それに過去の風しん自然感染およびワクチン接種を受けた年齢群を示した図です。

平均抗体価について述べますと、抗体陽性者集団の免疫の強さを表し、抗体保有率とは無関係です。保有率が高くても平均抗体価は低い場合や、逆に保有率は低くても平均抗体価が高い場合があるわけです。この図で見ていただくと分かるように、 26 歳以上で平均抗体価が高い(青線)。この年齢群は、過去に自然感染を受けた年代であるためと考えられます。自然感染では、体内で殖えるウイルスの量が多く、したがって免疫刺激も強く抗体価も高くなり、免疫も長期持続すると考えられます。

 一方、 25 歳以下はワクチン接種のみを受けた年代で、平均抗体価が低い。ワクチン接種では免疫刺激が弱いということです。とくに 23 25 歳は、幼児への接種が始まった 1995 年に 5 7 歳であって標準接種年齢を外れた人たちで、当時接種を受けなかった人が多いと考えられ、さらに高校 3 年生時にワクチン接種を受けていないので、抗体保有率が低いと考えられます。

 以上をまとめますと、今年前半で 23 25 歳の女性( 1987 10 2 日~ 1990 4 1 日生まれの出生コホート)は抗体保有率も平均抗体価も低く、風しん感染のリスクが高いグループと言えます。この出生コホートは現在若くて、これから子を産む人たちなので、このグループに将来 CRS が発生する可能性があります。各人の母子健康手帳を調べてもらい、風疹ワクチン未接種の人にはワクチン接種をしてもらうよう勧奨したら良いでしょう。

22 歳以下の人の保有率は 90 %を超えていると考えますが、これはワクチン免疫なので免疫力は弱い。今後、これら年齢群を含めて風しん免疫状況を定期的にモニターしていきたいと考えております。

○五十嵐委員長 大変詳細な説明でしたが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。続いて資料 5 、資料 6 を続けて御発表いただきたいと思います。まず、資料 5 を中島事務局員からお願いします。

○国立感染症研究所感染症疫学センター中島主任研究官 資料 5 です。私たち疫学センターは、自治体からの依頼がある場合に、保健所が行う積極的疫学調査を支援することがあります。今回は、鹿児島からの依頼によって、当センターの八幡を中心に行った調査結果について、簡単に御紹介いたします。

 資料 1 の下のスライドです。加藤委員からもお話がありましたように、風しんは 3 つの症状がそろう場合から、不顕性感染まで、かなりバリエーションがあります。 NESID 、感染症発生動向調査、サーベイランスの報告は、臨床症状に基づく診断の場合には、 3 つの主な症状、全身性の発しん、発熱、リンパ節腫脹がそろったときを、届出の条件としておりますが、それに加えて検査診断例の場合には、症状のうち 1 つ以上あれば、それに病原体診断が加われば報告可能となっております。そこにギャップがあるということになります。

2013 年の風しん流行の特徴をサーベイランスの結果から見たものが、次のスライドです。発生の中心は 20 代から 40 代の男性で、全体の 63 %です。感染の場としては、職場が一番多いということになっています。

 その下です。風しんの流行状況を人口 100 万人当たりで割算したものです。流行の中心が関東、関西の大都市だけでなく、例えば和歌山県、鹿児島県のような、比較的人口規模の小さな所でも、高い流行が認められていることがあります。こういう理由がありまして、鹿児島県では流行があったのはなぜかということが、大きな疑問だったわけです。

3 ページ目の上です。風しんの鹿児島県での流行は、川薩保健所管内のある特定の地域が、県全体の報告数の 85 %を占めるという地域流行でした。報告から見ますと、全国同様 20 代から 40 代の男性が 62 %を占めていまして、背景としては、今まで説明のあったような免疫ギャップがあると考えています。

 検査診断例を見た場合、検査診断例が全体の 169 例、 59 %でしたが、その症状を見ますと、 3 つの症状がそろったのが全体の 42 %ということで、仮にこの人たちが、検査が行われずに、臨床診断だけで届け出られていた場合には、全体の一部しか届け出られないということになります。

 もう少し詳しく見ていきます。 3 ページ目の下です。これが報告週、週別の患者発生数、届出数をグラフにしたものです。 276 例中、感染の場所が分かったものを左のグラフで示しています。全体の 79 人、 29 %が事業所で感染したと考えられています。一方、これまで感染の場として知られている学校、医療機関というのは、少ない報告になっています。多くは感染場所は不明ということで、 62 %はどこで感染したか分からないという状況です。

4 ページの上です。その中でも、最も患者が多く、流行期間の長かった B 事業所に関して、詳しく調査を行いました。具体的には、サーベイランスで報告されていない症例がどのぐらいいるのかということを、全職員を対象にしたアンケート調査を行いまして、 660 人中 99 %の回答を得ることができました。その中では、医療機関で診断された患者に加えて、何らかの症状があったもの、流行期間に症状があったものを疑い例として拾い上げています。

 下の図です。 B 事業所での症例全体像ですが、 660 人の職場の中で、流行期間に 46 例が風しんに感染したと疑われました。発症率は全体の 7 %です。そのうち、医療機関を受診したものが 45 例、風しんとして診断されたものが 35 例です。実際、発生動向調査に届出された患者数が 26 例ですので、 26 例の約倍の患者がいたのではないかと推察されています。

 一方、診断された症例が全員届け出られるかと言いますと、症状がそろわない場合には届出条件を満たさないわけですから、必ずしもそれは一致するわけではありません。

5 ページ目の上の図です。 B 事業所の中で、どのように広がっていったのかを、 4 階建ての建物でしたので、フロア別に色分けしたものが上のグラフです。発症した方が、何らかの会議、何らかのイベントに参加して、その後フロアを超えて感染が拡大したことが分かります。その後半では、同一フロアの中でも、席を飛ばして、複数の課にまだがる報告が見られるようになってきました。全体としては、 11 週間にわたる流行でしたので、早期に発見して早期に対応すれば、後半の患者は防げた可能性があると考えています。

1 例を紹介します。 5 ページ目の下です。医療機関で風しんと診断された患者が、ある会議に参加しました。その会議に参加した残り 4 人の方に感染させたと思われる事例です。実際、職場の中ではこのようなことが起こることにより、席が近い人の中での感染拡大に加えて、大きく広がっていくということが起こっていたと考えられています。

6 ページ目の上の図です。 B 事業所における対策としては、まず流行の感染拡大が広がったときから注意喚起を行い、それに加えて医療機関で診断されない、疑いの患者もいるということから、 B 事業所では、積極的に診断を受けなかったけれども風しんの感染が疑われた人に対しても、病休措置を行うことを加えています。それに加えて、抗体価測定の費用補助等を行っています。

 実際に、 B 事業所での発病から病休開始まで、どのような経過だったのかを示したものが、下のグラフです。このグラフは発病から病休開始までの間隔ごとに患者の数を積み上げたグラフです。

 積極的な対策が行われたと考えられる 4 月以降と、 3 月までで分けますと、まず、 3 月までのブルーのグラフは、かなり広い期間にまたがって、病休開始までの期間が分布しているのに対して、 4 月以降はそれが早まっている、特に発病当日に病休になるという方が増えております。医療機関で診断された中には、症状が 3 つそろう典型例と、そろわない人がいるわけですが、その両方とも病休までの期間が短縮する傾向にありました。

 続けて 7 ページ目の上のスライドです。まとめです。川薩保健所管内の風しん流行は、人口当たりの風しん報告数が高かったという特徴があります。全国同様の 20 代から 40 代の男性が 6 割でありました。報告数の 3 割が、事業所による発生で、この事業所の対策は重要であると思われます。初期に B 事業所での感染拡大が起こり、それにパラレルな形で地域流行が広がっています。 B 事業所の風しんアウトブレイクとしては、全体の 7 %が発病しておりまして、届出数の約倍の患者数がいたと思われます。流行期間は非常に長く、早期の対応によって感染拡大は抑えられた可能性が考えられます。発病者との接触によるフロア内の感染拡大や部局を超えた拡大が認められました。病休措置対象者を拡大することが行われています。

 積極的疫学調査、今回得られた成果としては、 1 つは風しんが診断されなかった例、未報告症例を、こういう積極的疫学調査を行うことによって把握できると考えられます。流行期間を特定することによって、流行期間はいつからいつまでということを明確にして、その中での対策が強化できると考えます。感染拡大のリスクを特定の会議による参加だとか、リスクを特定することができます。アウトブレイクの現状と、その情報還元の機会を与えるということであったり、調査自体が対策を推進することにもなります。もう 1 つ、この調査をすることによって初めて、アウトブレイクはいつ終わったかということが確認できます。

 以上、報告を終わらせていただきますが、その次のスライドに、多くの方々に今回の調査に協力していただきましたので、ここで併せて深謝いたします。ありがとうございました。

○五十嵐委員長 積極的疫学調査について御報告いただきました。続いて、調委員から資料 6 を御説明ください。

○調委員 地方衛生研究所における風しん検査について説明いたします。病原体サーベイランスの我が国における体制を図式的に示したものです。感染症サーベイランスというのは、患者サーベイランス、要するに病気の人は何人いるのかという患者サーベイランスと、病原体サーベイランスの 2 本立てになっていまして、全数把握か定点把握疾患かによりまして、全数の場合は、麻しん、風しんですが、全ての医療機関での把握となります。定数把握の場合は、定点医療機関を受診した患者の情報が保健所に集められ、そこでコンピュータに入力され、全国の情報が集約されます。それによって、いろいろな情報発信がなされることになっています。

 一方、病原体サーベイランスは赤い点々で示しています。実際に患者の咽頭ぬぐい液や血液、尿などの検体を保健所の職員が、地方衛生研究所に運び、地方衛生研究所でウイルス分離、遺伝子検査等を行っております。

 地方衛生研究所は、各都道府県、政令市、特別区にありますので、現在 79 か所設置されています。麻しんについては、原則として全数について、地方衛生研究所、また感染研において、遺伝子検査をする体制が構築されています。

 麻しんに関するこれまでの患者数と検査の推移についてです。御存じのように、 2008 年より、麻しん、風しんの患者は全数把握になっていまして、正確な患者数が把握できるようになりました。 2008 年には麻しんの患者数が 1 万人を超えていまして、この前年の暮に出された「麻しんに関する特定予防指針」においては、臨床診断及び検査診断に基づいて患者を報告するということになっていました。ただし書き、なお書きとして、患者数が一定数以下になった場合には、原則として検査診断に移行するという予防指針になっていました。

2008 年から 3 期、 4 期の予防接種が追加されたこともありまして、 5 年間ですが、翌年から患者数は激減し、 2011 年には 434 人、昨年は 293 人という麻しんの患者数になっています。

 その患者数の減少に伴って、いよいよ麻しんの排除が見えてきたわけです。そのためには、前回竹田先生から御報告がありましたように、排除基準を達成しなければいけません。そのためには、遺伝子検査が必要になってきます。それで、平成 22 11 月に、このような課長通知が結核感染症課から出されまして、地方衛生研究所及び保健所等が連携し、検体を可能な限り確保し、遺伝子検査を実施するということになっています。

 一方、現在風しんはどうであるかを、つい最近アンケート調査をいたしました。麻しんは説明しましたように、地方自治体で全数検査をすることが制度化されています。一方、風しんはサーベイランスで動いています。風しんの疑いで検査をしている自治体が 19 %、医師が風しんを疑っているのだけれども位置付けが自治体において必ずしも明確でないために、麻しん疑いという形で行政依頼検査がなされている自治体が 36.7 %、その両者が混在している場合が 35 %、検査をしていないのが 9 %です。検査をしていないのが 9 %あるのですが、都道府県の衛生研究所は全て検査をしておりますので、基本的に全ての都道府県で検査がなされていることが 1 つです。

 もう 1 つは、 8 割ぐらいの自治体において、風しんの疑いではなくて、麻しんの疑いということで検体が来て、検査を行っていると。この場合は、医師が風しんを強く疑っているのだけれども、麻しん疑いで検査依頼が来ていますので、まず麻しんの検査をして、それから風しんの検査をすることになります。

 検査の状況です。下に書いてありますように、「 2,483 件」とありますが、「 2,235 件」に訂正です。今年の 1 月から 8 月まで、患者数約 1 4,000 人のうち、 2,200 検体について、地方衛生研究所で PCR 検査が行われまして、その約半数の 1,104 件について、 PCR 陽性という結果となっています。そのうち約 6 割近くが、遺伝子型まで地方衛生研究所で決定されております。それから、先ほどウイルス分離の話が出ましたが、 602 の塩基配列、遺伝子型決定に対して、培養も 409 ということになっていますので、かなりの検体、かなりの自治体でウイルス分離もなされている状況になります。地域の数としては、大体 40 ぐらいの自治体で、風しんのウイルスを培養しておりますので、都道府県で考えると 8 割方の自治体で、ウイルス分離がなされていることになります。

 最後に、 CRS CRI に対する検査対応です。「 CRS CRI の検査実績あり」と答えたのが 15 地研、 19 %です。これは発生している自治体が限られていることを反映していると考えてます。今年の CRS 検査数が 26 例で、陽性数は 12 となっています。

 次に、風しんの遺伝子検査の意義を考えてみますと、診断的意義と、排除状態の科学的証明、これはサーベイランスということですが、この 2 つが考えられると思います。

 診断的意義については、先ほどから出ていますように、 CRS における遺伝子検査により、確定診断を行うことに大きな意味があると思いますし、 CRS の患者がウイルスを排泄しているかどうかを確認することも、非常に重要であると考えています。

 また、ここに書いておりませんが、風しんの初期、先ほど加藤先生から御紹介がありましたが、 IgM が上がる前の遺伝子検査による確定診断というのも、遺伝子検査の意義と考えられると思います。

 排除状態の科学的証明については、サーベイランスの定義というのは、その地域において土着株による感染が存在しないことが条件になっていますので、日本における流行株と外国における流行株を比較することにより、地域流行があるかどうかを把握するためには、遺伝子検査、遺伝子型の決定が必要だということになります。

 最後にまとめますが、全ての都道府県において地方衛生研究所、つまり自治体が遺伝子検査に対応していることが分かりました。多くの自治体で、医師が風しんを疑った患者について、麻しん疑いということで検査対応をせざるを得ない状況にあることが分かりました。遺伝子検査が全部できるかというと、恐らく今の患者数が 1 万人を超えていることから、全数遺伝子検査は困難であろうと考えられます。ちなみに、全国の地方衛生研究所で、インフルエンザについては毎年 5,000 検体ぐらいについて PCR とウイルス分離の両方がなされておりまして、パンデミックのときは、大体 2 万ぐらいの PCR が行われました。そういう意味で、もう少し患者数が減らないと、全数検査への移行は困難であろうと考えられます。

 そういう意味で、今の時点では自治体における風しん遺伝子検査の位置付けが必要だと思うのですが、恐らく必要に応じて遺伝子検査をするということが望まれるのではないかと思いますし、 CRS については、東京都、大阪府などの意見も聞きましたが、恐らく全数に対して、自治体の遺伝子検査は可能であろうと考えられます。その場合、どういう基準で検査をするかということが、はっきりこの委員会の中で議論されていくことを希望しています。

 患者数が減少した場合は、麻しんと同じように原則として全数遺伝子検査という体制に移行することは、風しん排除状態の科学的証明に重要ではないかと考えます。

○五十嵐委員長 資料 5 、資料 6 の説明を頂きましたが、 2 つの御説明に対して御質問はございますでしょうか。

○竹田委員 調先生に 1 点確認です。 602 例が PCR 陽性で、「 409 ウイルス分離が試みられた」とありますが、「分離された」のとどちらでしょうか。

○調委員 分離数が 400 です。試みられたのは、その倍ぐらいだったと思います。

○大石委員 私も調先生に質問があります。地研で CRS CRI の検査が実施されているわけですが、医療機関から上がってきた検査依頼が、行政検査という形で取り扱われたということなのですか。

○調委員 東京都にお聞きしたところ、保健所は関与していないということですので、これは調査研究ということで検査がされていると思います。東京都は、 1 年間にわたって 1 か月間隔で遺伝子検査をする計画をされていると伺っています。

○大石委員 了解しました。

○加藤 ( ) 委員 調委員にお聞きします。麻しん疑いで検査を出すことが多いということなのですが、麻しんが陰性だった場合には、風しんの検査もするという手順があるのか、それも現場の判断でしていることなのでしょうか。

○調委員 推測ですが、恐らくほとんどの地方衛生研究所で、例えば麻しんが陰性であれば風しんの検査、それ以外に伝染性紅斑のウイルスの検査、突発性発しんといったものも、約半数において、麻しん、風しん以外の発しん性疾患の検査もなされているので、かなりの部分が両方の検査を行っていると思います。

 実際、東京都、愛知県、大阪府では、今回風しんの流行が大きかったので、医師も風しんと考えて、風しんで検査依頼が来て、実は麻しんであったというケースもあったと伺っています。

○加藤 ( ) 委員 あと「遺伝子検査の意義」という所で、流行時に予防接種をする機会がありますと、発しんが出た場合にワクチンの副反応なのか、あるいは野性株で既に潜伏期の状態にあった方を臨床的に区別したいということがあります。このような場合には、地衛研ではどのような対応をされているのでしょうか。

○調委員 遺伝子配列を決めているところは 6 割ぐらいありますので、その場合はワクチン株であるか、あるいは野性株であるのかというのは、すぐに検査ができることになっています。塩基配列が決定できない所も一部であると思いますが、基本的には遺伝子配列によってそれが区別できるということになります。

○結核感染症課課長補佐 ( 難波江 ) 1 点確認させていただきたいのですが、麻しんについては、全例 PCR を指針で求めているのですが、その 1 つの大きな理由は、抗体検査で偽陽性がそれなりにあるということがあったかと思います。加藤先生の資料で、風しんでも偽陽性があるということが書かれていますが、実際にどの程度の偽陽性があって、そのために PCR が必要かどうかという御意見などをお聞かせいただければと思います。

○加藤 ( ) 委員 陽性的中率、検査陽性が確かに風しんを診断しているというのは、有病率に関係してきますので、本当に北米のような、 100 万人に 1 人も出ないような状況ですと、ほとんど偽陽性という可能性も生じると思います。やはり排除期に近いというような状況ですと、 PCR 検査は実施することになるのかなと、私の意見はそういうことです。

○竹田委員 偽陽性について確認したいのですが、麻しんの現在汎用されているキットは、確かに偽陽性の出る頻度が一般のキットよりも高いのですが、風しんのキットでは、そういう傾向は今のところ伺っていないのですが、その辺はどうなのでしょうか。

○加藤 ( ) 委員 陽性的中率というのは、有病率に相関してきますので先生のほうが御専門だと思うのですが、発生がほとんどない状況、先ほど申し上げたように北米のような状況になってきますと、偽陽性というのは検査の一般的な性格として、必ず生じてくるということなのですが、キットごとに、感度、特異度などもありますので、現在の日本で使われているもので、どれぐらい偽陽性が発生してくるかは検討されてもいいのかなと思います。

○岡部参考人 先ほどの「はしかの疑いで」という加藤先生の御質問ですが、実際は風しんのウイルスの鑑別診断を衛生研究所でやるというのは、全くボランティアレベルの話で、先ほども申し上げましたように根拠がないというところで、結局予算問題、業務問題に関わってきます。衛生研究所の中の、必要性からいえば当然やる、という方向にいきたい所は多いと思うのですが、実際に行政判断をやる本庁では、それはやる根拠がないということで否定的な見解を出す所があります。ですから、ほとんどの所がやっているというのは、衛生研究所のボランティアな気持ちでやっているというところを、 1 点申し上げておきたいと思います。調先生、それでよろしいですか。

○調委員 実は九州の政令市で、麻しん疑いで検査が来て、麻しん、風しんの両方の検査をして、麻しんは陰性だったので、風しんの検査は行政依頼検査ではなくて、衛研の判断でやっていますから、風しん陽性という結果が帰っていなかったという事例も伺っています。

○岡部参考人 麻しんの場合は通知が出ているので可能になったというのがあるのですが、風しんはまだそこまでは至っていない。それが先ほど申し上げた、この委員会に期待するところなのです。

 ただし、全数検査を今やってはかなわないという調先生の話は、本当にそうで、 2 万例は PCR は全部はできないと思うのですが、はしかで全例をというときの 1 つの考え方の基準にしたのは、腸管出血性大腸菌が年間に 2,000 から 4,000 例で、全数検査を求めています。そうなれば、衛生研究所の能力から言えば、数千例単位であれば可能ではないかということを、その頃にディスカッションしたことがあります。

 それから、風しんのワクチンの副反応との鑑別の問題ですが、つい先日、 MR ワクチン接種後に発しんが出てきて、はしかなのか風しんなのか、はしか・風しんワクチンの副反応なのかということで、我々の所でウイルス学的な鑑別診断をして、自然風しん感染であることが判明したものがありました。

 ただし、副反応例についても、きちんと衛生研究所でやるということも実は根拠がなくて、これも衛生研究所の判断でやったのと、先ほど、はしかの疑いがあるかもしれないということを一応の根拠にしたという複雑な背景があります。なるべくやったほうがいいと思うのですが、実際にはそういう障害があるということも申し添えておきます。

○五十嵐委員長 いろいろとありがとうございました。全体を通して、特に、中長期的な予防対策の観点で、どうしても御意見を述べたいという方はいらっしゃいますか。

○高橋委員 風しんは麻しんと同じで、潜伏期間が 2 週間から 3 週間と長い感染症なので、察知した時点で患者数が非常に多くなっていることが心配されます。診断される前に、既に感染力があり、人にうつしている可能性があるということ、速やかな初動体制がとても大切なのだというのが、先ほどの中島委員からの資料からわかりました。

1 点お伺いしたいのですが、 PCR の検査結果は、どのぐらいで出るのでしょうか。麻しんのとき、学校ではいつ検査結果が出てくるのか待っていました。子供たちに対しては学校保健安全法で、出席停止の指示を行い、休養を取らせるとともに、感染拡大の予防を行います。しかし、一般的には大人についての休養期間が具体的には示されているものがありません。具体的に示されたものも必要なのかなと、お話を聞きながら感じました。啓発をしていくのには様々な手段が取られてきたかと思いますが、 20 代から 40 代の方に分かっていただけるよう、例えば利用者が多いコンビニエンスストア等に協力いただきキャンペーンやチラシを配付したり、人気キャラクター等にも協力してもらったりして、あの手この手を考えながら、啓発を繰り返し行っていく必要があるのだなと感じました。検査のことについて教えていただければと思います。

○調委員  PCR 検査自体は、検体を受け取ってから 5 6 時間以内には結果をお返しできる体制になっていると思います。

○大石委員 平成 16 年の発生抑制に関する緊急提言についてですが、今度この委員会で提言を出すとするならば、「妊娠の希望とか可能性の高い女性を対象に」という書きぶりでは、年代で対象者も変わってきますし、可能性の高い女性といっても、期せずにして妊娠するというケースはあると思います。具体的に感受性者が残っている一定の年齢層に対象を絞って、どのようにしてワクチン接種を推進するかを明確にしていくことが、大事なのではないかと思います。

○五十嵐委員長 予防法については、次回に詳しく検討したいと思います。

○岡部参考人 大石センター長から、「この提言はほとんど功を奏していない」という御発言があったのですが、当時これを出したほうとしては、一定の成果があって、この提言の結果風しんを一定程度抑えたのと、無用の流産をなくすという大きな目的があって、それが産婦人科の先生方のご協力でで、風しんだと思いこんでの人工中絶をなくすシステムができたことは評価されるべきと思っています。

 ただ、反省すべき点は多々あるので、さらに風しん対策に結び付いていっていただければと思います。

○五十嵐委員長 ほかによろしいですか。

○吉山委員 各先生方から非常に貴重な御報告を頂きまして、大変勉強になっているところですが、簡単に意見を発言させていただきます。

 まず 1 点ですが、 Q&A について、非常に具体的な表現がされているということで、現場で周知徹底していきたいと思います。

2 点目が、先ほど抗体検査の話がありましたが、根拠です。今回、妊婦が風しんにかかっているおそれがあるので、抗体検査をしてほしいということがありましたが、麻しんの疑いであれば検査ができますといった現場でのやり取りが見られたようですので、風しんの検査については、きちんと今回のもので設定していただきたいと思います。

 もう 1 点は予防接種です。京都は感染発生届も少なく、時期がずれておりますが、予防接種の公費負担を 7 月から実施いたしました。発生届が非常に少なくなって、マスコミでも取り上げられなくなったということで、市民の関心が非常に低くなり, 7 月と 8 月の 1 か月間で、 1 か月目はたくさん接種していただいたのですが、 2 か月目は 3 分の 1 ということで、予防接種の PR をしていかなければいけないと思っていますが、公費負担のある間は PR もしますが、それがなくなってくると市民への周知の方法について、検討を重ねていかなければいけないと思います。

 それと、先ほど西村さんの御報告がありましたが、予防接の必要性を中小企業、ブライダル関係、大学に対しても PR を進めているわけですが、保育士等、医療機関など、リスクのある所への周知ももっと徹底して周知していかなければいけないと思ったところです。

○五十嵐委員長 よろしいでしょうか。予防につきましては次回やりたいと思います。時間も押していますので、本日いただきました議論、御提言については、事務局で指針の内容に反映するということにしていただきたいと思います。事務局から何かございますでしょうか。

○結核感染症課課長補佐 ( 難波江 )  次回は 11 19 日を予定しています。詳細は追ってお知らせさせていただきます。

○五十嵐委員長 これで第 2 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会を終了いたします。本日はありがとうございました。



(注)

小森委員の任期が、平成25 10 18日に満了していましたが、再任命の手続をとらないまま、同委員出席の上、審議会を開催しました。

議事の定足数については、当該委員を除いても、委員及び臨時委員の過半数が出席していたため議事は成立しています。なお、今回の会議においては、議決を行っておりません。

また、今回の会議においては、当該委員は、参考人として取り扱われます。

詳細については、以下のリンク先を御覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000040328.html




(了)

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