ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第78回厚生科学審議会科学技術部会 議事録(2013年7月12日)




2013年7月12日 第78回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成25年7月12日(金)15:00~17:30


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 井伊委員 今村委員 江藤委員
大澤委員 川越委員 菊池委員 桐野委員
塩見委員 玉腰委員 西島委員 野村委員
福井委員 松田委員 門田委員 山口委員
山田委員

○議題

1 平成24年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について
2 遺伝子治療臨床研究について
3 ヒト幹細胞臨床研究について
4 ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しについて
5 その他

○配布資料

資料1-1 厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成24年度報告書(案))
資料1-2 厚生労働科学研究費補助金の成果の概要(平成24年度)
資料1-2別紙 厚生労働科学研究費補助金の成果表(平成24年度)
資料1-3 厚生労働科学研究費補助金 研究事業の概要(平成24年度)
資料1-3別紙 平成24年度 採択課題一覧(案)
資料2 遺伝子治療臨床研究実施計画及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見について
資料3 遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見について
資料4-1 ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料4-2 ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料4-3 ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料5-1 「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の全部改正について
資料5-2 ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針改正案(新旧対照表)
資料6 遺伝子治療臨床研究実施計画に係る意見について
資料7 遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料8-1 科学技術イノベーション総合戦略
資料8-2 健康・医療戦略
資料8-3 日本再興戦略
参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2 遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料
参考資料3 ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料

○議事

○中山研究企画官 

それでは定刻になりましたので、ただいまから、第78回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。

 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりをいただきましてお礼を申し上げます。

 本日は3名の委員から御欠席の連絡をいただいています。欠席の委員は、橋本信夫委員、宮田満委員、渡邉治雄委員ですが、委員21名のうち、出席委員は過半数を超えていますので、会議が成立しますことを御報告します。

 次に事務局の人事異動がありましたので御紹介させていただきます。厚生科学課長に宮嵜雅則が、主任科学技術調整官に荒木裕人が、研究開発振興課長に一瀬篤が、再生医療研究推進室長に堀裕行が、そして私、厚生科学課の研究企画官に中山智紀が就任させていただいてます。どうぞよろしくお願いします。

 続いて、本日の会議の資料の確認をお願いします。配布資料は、資料1-1から資料8-3までです。参考資料が123とあります。資料1-1は、厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成24年度報告書)()です。資料1-2は、厚生労働科学研究費補助金の成果の概要、別紙で1-2です。厚生労働科学研究費補助金の成果表があります。更に、資料1-3は、厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要(平成24年度報告書)です。更に、資料1-3の別紙として、平成24年度採択課題一覧があります。

 次に資料2は、遺伝子治療臨床研究実施計画についてです。千葉大学医学部附属病院のものがあります。資料3は、同じく遺伝子治療臨床研究実施計画に係る意見についてで、東京大学医科学研究所附属病院のものがあります。資料4-1は、ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請についてです。次に、資料4-2は、ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見についてです。資料4-3は、ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告についてです。資料5-1は、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の全部改正についてです。資料5-2は、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針改正案(新旧対照表)です。資料6は、遺伝子治療臨床研究実施計画に係る意見についてで、これは資料3と関係しますが、東京大学医科学研究所附属病院のものです。

 更に資料7は、遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告についてです。資料8-18-3までは、政府がまとめた各種戦略、科学技術医療イノベーション総合戦略、健康・医療戦略、日本再興戦略の3種類があります。参考資料として、1 委員名簿、2 遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料です。参考資料3が、ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料です。以上が本日の資料です。資料の欠落などありましたら、お申出いただくようお願いします。報道関係者の方々においては、頭撮りについてはここまでとさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。それでは、永井部会長、議事の進行をよろしくお願いします。

○永井部会長 

最初に、平成24年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価についてです。事務局から資料の説明をお願いします。

○中山研究企画官 

それでは資料の説明をさせていただきます。資料1-11-21-2の別紙、資料1-31-3別紙とここまでは1セットとして説明させていただきたいと思います。

 平成24年度の厚生労働科学研究費の個別の採択課題などについては、資料1-3の別紙に採択課題の一覧が出ています。一番最後を見ると分かるとおり、1,462件の採択課題がありました。全般としての統計的なまとめが資料1-3です。

 資料1-345ページを見ると分かりますが、平成24年度の予算については、厚生科学研究費463億円です。先ほど申し上げたとおり、14研究事業で1,462件が行われました。14研究事業を大きくカテゴリー分けして、全般的な予算の割合がどのようになっているかは5ページ下の円グラフのような形で、御参考にしていただきたいと思います。1,462課題あったわけですが、それぞれについて事前評価、更には中間、事後の評価を実施しています。

 資料1-2については、中間・事後評価結果をいくつかの研究事業について、研究領域ごとに再分類して、どのような状況であったか、どのような評価が与えられるかというものを整理したものです。1-2の別紙は、個別の研究課題で平成24年度に終了したものについて、研究代表者から申告された成果などについてまとめているものです。

 資料1-2で、それぞれの研究結果を評価していただいているわけですが、その結果の概要をまとめたものが資料1-1です。厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価案で、平成24年度報告書ですが、今回は、これについて案をお示しすることにより、科学技術部会の御了承をいただきたいとのお願いです。

 資料1-1の中に、今回の全体の厚生労働科研費の評価のまとめが書かれているわけですが、概略を簡単に御説明申し上げます。御存じのとおり、厚生労働科研費とは、厚労施策の推進のために行う目的志向型の研究です。近年、政府全体として、科学技術イノベーション政策におけるPDCAサイクルの確立が求められていて、厚労科研費についても、厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針に基づいて、計画や実施状況の評価などと、それに基づく改善を実施しているところです。この評価の目的としては、行政施策との連携を保ちつつ、一層優れた研究開発成果を国民社会に還元することを目的としています。

 評価の視点、観点としては、必要性、効率性、有効性という点を上げていて、例えば必要性では、行政的意義、厚生労働省として実施する意義や緊急性といった点があるかどうかということを評価するという視点がありますし、効率性という意味では、臨床研究の計画や実施体制の妥当性があるかどうかということ。有効性という意味では、社会や経済への貢献、人材養成などといった観点で、有効性があったかどうかという点を評価の視点としているところかと思います。

 各研究事業の個別の説明はとてもできませんが、外部有識者による評価においては、各分野において、研究成果が行政施策の推進に活用されるガイドラインやマニュアルなどの作成に役立ったものや、あるいは、医師主導治験のようなもので、例えば、PMDAの薬事戦略相談を実施の上、治験計画が策定されるなど、実用化を見据えた効率的な研究の実施がされているという評価が全般的にされています。

 成果の例をかい摘んで、少々御紹介させていただきます。胆管がんの原因調査に関する研究で、罹患率などのデータが所管部局の検討会で有効に活用されたとこと。動物レベルにおいて、難治性神経疾患に対する再生医療の有効性が認められた研究。動脈硬化性疾患の早期診断に活用できる可能性のあるバイオマーカーの有用性に関する研究が行われたこと。がん患者の就労支援に関する研究の結果、支援マニュアルや事例集が作成された事例。更には、生後1週の新生児期から予防的にスキンケアを行うことで、アレルギー疾患全般の発症予防ができる可能性があることが分かったというような研究。そのほか、革新的医薬品の創出につながる可能性のある各種の医師主導治験の実施などが挙げられると思います。

 資料1-155ページ、「おわりに」の記載にあるとおり、平成24年度終了課題の集計では、9,000件以上の原著論文があるなど学術的な成果があるとともに、施策の反映については161件。どのようなことかと申し上げますと、前のページで、研究成果が全国的なスタンダードを提示した、あるいは審議会で議論された、新事業の契機となった、法律などの作成につながった、あるいはガイドラインを作成したなどの件数を研究代表者の方に登録していただいた件数ですが、それを集計したところで161件という形で行政課題の解決に資する成果があったとのことです。これも評価できることが言えることになっています。

 いずれも必要性、緊急性など予算的にも効率的な研究課題が採択され、研究が実施されていると考えられるという評価が案となってます。各評価委員会の評価委員が各分野の最新の知見に照らして評価を行って、その結果に基づいて研究費が配分され、中間評価では当初の計画どおり研究が進行しているか、到達度の評価を実施し、必要な場合には研究計画の変更、中止が決定されるとのことで効率性、妥当性という意味でも高いという評価を案ではされています。

 今後の課題としては、国民の健康・福祉の向上に一層資する研究がなされるよう的確な評価を実施することが一つ挙げられています。更に、検索機能の強化など、システム機能の向上など、このような研究成果を含め、研究成果が国民に分かりやすく伝わるような取組を拡充していくことが必要だということが課題として挙げられています。これにも今後、我々としては取り組んでいかなければならないところであると考えています。説明に関しては以上です。

○永井部会長 

ただいまの説明について、御質問、御意見をお願いいたします。施策への反映が161件とありますが、これは従来どのぐらいで推移してきたのでしょうか。

○中山研究企画官 

従来何件かというデータは手元にはありませんので、調べて後ほど御説明させていただきます。

○永井部会長 

施策以外に、ガイドラインへの反映、都道府県への通知、医療機関へのガイドライン、これは数が161と書いてあります。何か御意見はありますか。

○門田委員 

先ほどの説明でもありましたが、非常に成果が上がっているのです。このように反映された、こういうふうにこういうふうにと、非常に良いことは、良い結果がたくさん出てくるのです。先日、今後のがん研究のあり方の有識者会議でも話題になったのですが、ここに書いてありますように、PDCAサイクルの確立のためには、良いことは良いこととしていいと思うのですが、何が課題として残って、その次に何を反映させるのかというところが入っていかないことには、いわゆるPDCAというのは本当に確立とは言えないと思うのです。

 どちらかというと今回の報告書案を見ても、ポジティブの所は非常によく書けているのですが、そういう所をやっていかないと、なかなかこれから先につながらないのではないかと思うことが多いのです。実際にがん研究の方でもそういうことが話題になりました。これからは、そういう意味も含めて集計するというのか、まとめていく姿勢が必要なのではないかと思います。

○中山研究企画官 

ありがとうございます。研究の評価については、最後に結果の評価だけして、良かった、悪かったということだけではなく、中間評価を行った上で、改善すべき等は改善するという視点で臨んでおりますので、基本的に先生から御指摘のような、良い所だけを出すのではなく、悪かった所、今後改善をいかすべき所もしっかり明示していくことが大事である、ということは十分受け止めさせていただいて、今後につなげていきたいと考えます。

○相澤委員 

基本的な質問ですが、評価の記載は自己評価に対して、担当課でレビューしたという理解でよろしいですか。

○中山研究企画官 

これの評価については、それぞれの事業領域ごとに、専門家による評価委員会を設けて評価を行っています。

○今村委員 

この成果が法律につながったというお話がありましたけれども、どのような法律の制定になったのですか。

○中山研究企画官 

これは、成果の1つとして挙げるカテゴリーとして、例えば法律だけでなく、通知等の作成につながったというものであれば1件として数えていいということです。

○永井部会長 

施策の方向性につながったということですね。

○中山研究企画官 

はい。

○西島委員 

今のと関連するのですが、施策に反映されたことの事例161件ですが、これを全部見ると1,400ということで、なかなかすぐには見えてこないのですけれども、施策に反映された所については別途書き出してまとめていただいたら非常に理解しやすいかと思うのです。今後はそのようにしていただけますか。

○中山研究企画官 

はい、分かりました。法律等の作成という意味ですので、様々の意味での行政的な活用の仕方という意味で、いろいろな場合があり得ますので、そういう点についてはどのような形で役立ったか、ということは分かるようにしていきたいと思います。

○福井部会長代理 

55 ページの下から2つ目のパラグラフの「研究成果の報告を一般に公開するシステムが構築されている」についてですが、それに加えて研究についての研究といいますか、メタ研究といいますか、国がお金を出している研究の成果・進捗状況の評価を経時的に、厚生労働省では行っていないのでしょうか。

○宮嵜厚生科学課長 

研究として改めて設定して、この中に組み込んでいるような形ではなくて、正にこの審議会でどのような分野に重点を置いたらいいかから、更にどう公募をしたらいいかということで進めていただいて、最終的に取りまとめたものをここに掛けさせていただいて、また次にいかしていくという形で進められています。先生御指摘のように、研究を設定してメタ解析しているような形は取っていません。

○野村委員 

質問なのですが、「おわりに」の所で、「国民に分かりやすく伝えるための取組も課題」とあります。現実問題として、今回の評価自体が来年度以降のそれぞれの分野の科研費の額に影響を与えるものなのかどうか。良い評価を得たらお金をたくさんもらえるみたいなことに直結してしまうのかどうかを教えてください。

○宮嵜厚生科学課長 

この評価結果の中身ももちろんですし、社会的ないろいろな要素で、この分野が更に重要なので伸ばしたほうがいいという御意見も含め、今度の平成26年度に向けては9月頃にまた委員の皆様から御意見を頂いて、どのように公募課題を設定していくかというところも御議論いただいて、実際に公募に掛けていくという仕組みでこの審議会は動いています。正にこの評価とか、それ以外の先生方の御意見や社会的な状況も踏まえ、更に次年度に発展させていく形になるかと思います。

○塩見委員 

資料1-2の別紙をパラパラと見ていると、3年間の研究課題で、原著論文件数、和文、英文等が数字で出ています。ゼロというのもあるのですけれども、そういうのは委員がおっしゃったようなことも関係してくるかと思うのです。反対に100以上、200以上というのもかなりたくさんの件数があります。これは、本当にこの3年間の成果なのでしょうか。

○中山研究企画官 

これは、研究代表者からの登録ということです。当然のことながら、この研究事業に関連して提出された論文の成果ということで挙げられているものです。分担研究者もいろいろな方がおられるということも1つの要因になっているのではないかということです。

○塩見委員 

今後、これはWeb上で公表されていくということですか。

○中山研究企画官 

公表といいますと。

○塩見委員 

先ほどの55ページなのですが、「研究成果の報告をWeb上で一般公開する」とありますが、こういうものも公開されていくことになるのでしょうか。

○宮嵜厚生科学課長 

全てです。例えば、研究の内容、成果も当然出てきます。もちろんですけれども、この審議会も公開でこういう形で出させていただいて、審議会の資料としても厚生労働省のホームページを通じて公表されていきます。いろいろなツールというか、方法でしっかり公表していかなければいけないと思いますし、公表されていきます。

○今村委員 

「医師主導治験も活発に行われ」という御意見でしたが、その成果を受けて薬事承認を申請中のものも具体的にあるのですか。

○中山研究企画官 

例えば、医療機器開発研究事業において、脳虚血性疾患を診断するための医療機器の研究が行われた結果、O-15標識ガスの合成供給装置が作られて、医療機器としての承認がされた事例は1つあります。まだ薬事承認に至っていないものの、医師主導治験に入ったものはその他にも多くあるかと思います。

○今村委員 

まだ申請に至らないものなどを、継続して認めていこうということにも当然のことながらなるわけですね。

○中山研究企画官 

基本的にはどの段階まで研究費として支援するのかということはありますけれども、最終的には製品化につながることを目指して、臨床試験の前期の方といいますか、第I相とか第II相の前期といったレベルまでは、必要な研究であれば支援していく姿勢で臨むことになろうかと思います。

○宮嵜厚生科学課長 

先ほど御質問いただきました宿題の関係ですが、施策等への反映について、55ページの4行目の161件と平成24年度は御報告していますが、これに相当する数字として過去のものということで、平成23年度は223件、平成22年度は204件、平成21年度は265件という数字になっています。これは当然フルの年度になるのですが、お手元の資料の161件については、610日時点で拾っていますので、今後出てくれば若干は増えると考えております。

○永井部会長 

まだ御意見はおありかと思いますが、もしよろしければ残りの御意見は1週間後の719日までに事務局へメールあるいはファクスでお送りいただきたいと思います。御意見あるいはお気付きの点を御指摘いただければと思います。この評価については、本日頂いた御意見と、追加の御意見をまとめて科学技術部会としての最終版にしたいと思います。その際の作成作業は部会長に御一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし)

○永井部会長 

ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。議事2「遺伝子治療臨床研究」について、最初に千葉大学からの申請で、「生物多様性影響評価に係る意見」についてお願いいたします。

○松倉専門官 

遺伝子治療臨床研究については、この部会の下に設置されている遺伝子治療の審査委員会で審査を終了したものを御報告させていただき、御審議をお願いするものです。本日は2件あります。

1件目は資料2です。表紙にあるように、千葉大学医学部附属病院から申請のあった「切除不能悪性胸膜中皮腫を対象としたNK4遺伝子発現型アデノウイルスベクターによる臨床研究」という課題です。表紙をもう少し見ていただきますと、その下に「遺伝子治療臨床研究実施計画に係る意見について」という項目と、少し下に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)に基づき申請のあった第一種使用規程に係る意見について」ということで、大きく2つの観点で審査をしております。

 上のほうは、遺伝子治療臨床研究に関する指針を厚生労働省と文科省の共管で出しており、その指針に基づいて臨床研究の妥当性について審査をした結果です。下のほうのカルタヘナ法に基づく第一種使用規程に係る意見というのは、生物多様性への影響を防ぐ観点から、遺伝子組換え生物を使用する場合は国の承認を受ける必要があり、遺伝子治療臨床研究の場合は、遺伝子導入に使うウイルスベクター等が、遺伝子組換え生物に該当しますので、こちらの観点から別途審査をするものです。

 中身の御説明をいたします。2ページで1番の「遺伝子治療臨床研究実施計画の概要」です。研究課題名は先ほど申し上げたとおりです。申請年月日は平成231027日です。実施施設は千葉大学医学部附属病院です。総括責任者は呼吸器内科の巽教授です。対象疾患は悪性胸膜中皮腫で、導入遺伝子はNK4遺伝子です。NK4の役割については後ほど御説明いたします。ベクターとしては、アデノウイルスベクターを使用しております。用法・用量は、針を用いて被験者の胸腔内の腫瘍の近くの部位にウイルスベクターを含んだ調製液を生理食塩水100mLに混和したものを投与いたします。投与回数は1回です。投与量は低用量、中用量、高用量の3段階です。研究実施期間は、承認日から3年間、目標症例数は9例で、各群3例ずつとなっております。

 「研究の概略」です。本研究は、切除不能で、化学療法無効、あるいは化学療法拒否の悪性胸膜中皮腫の症例を対象としております。NK4遺伝子ですが、このNK4というのは、悪性胸膜中皮腫の進展に関与しているHGF/c-Metのシグナル伝達又は血管新生を阻害する働きを持っております。NK4遺伝子が体内で発現することにより、がんの増殖を抑制するメカニズムが考えられております。NK4遺伝子を搭載したアデノウイルスベクターを胸腔内に投与する遺伝子治療臨床研究であり、その安全性を検討することを主たる目的としております。

 「その他(外国での状況等)」です。国内外を含め、NK4遺伝子を治療に用いた臨床研究は例がありません。したがって、NK4遺伝子の臨床研究としてはfirst in humanという形になります。ただし、アデノウイルスベクターを胸腔内に投与するという臨床研究が米国では行われています。搭載している遺伝子が異なる他のアデノウイルスベクターなのですが、これを胸腔内投与する遺伝子治療が複数実施されております。既に結果が2005年から2011年にかけて論文等で報告されております。これらの試験においては、悪性胸膜中皮腫の症例は全部で61例含まれておりました。主な有害事象としては、悪性胸膜中皮腫以外のがんの症例も含むのですが、一部の被験者において、部分トロンボプラスチン時間の延長や、心タンポナーデ又はリンパ球減少などが報告されております。

2番の「遺伝子治療臨床研究に関する審査委員会における審議概要」です。委員会の開催前に、申請者と委員との間で幾つかの意見・照会事項などがありました。全てを御説明している時間はありませんので、かいつまんで御説明いたします。

 アですが、先ほど申し上げましたように、NK4遺伝子を治療に用いる臨床研究はこれまでにないということです。NK4タンパク質を投与する臨床研究の有無についても説明することということで、申請者からは、タンパク質を投与する臨床研究についても実施された経験はない。ただし、マウスでは実験をやっていて、このタンパク質の投与による特段の有害事象は見られていないという回答でした。

 イですが、今回使用するウイルスは増殖しないようになっているものですが、これに変異が起こって増殖性アデノウイルス(RCA)の発生が起こるかどうかという論点に関して、当初の計画書では発生が起こらないとされていたのですが、RCAが出現することが報告されていますので、記載を修正することという指摘があり、修正が行われております。

 ウですが、本研究に用いる製剤(ウイルス液)が、2006年から2007年頃に作成されているということで、少し作成から使用までに時間がかかっている状況がありました。これについては安定性の観点から、一部解凍したウイルスがベクターとして機能性を保持しているかを検討するようにという指摘があり、それに対して、申請者の方で解凍して試験を実施していただいた結果、ウイルスの力価は作成当時と大差ないことを確認していただいております。

 次のページのキですが、今回の臨床研究で、アデノウイルスベクターの投与は1回に限定されていますが、継続投与の可能性を残しておくべきではないかという指摘がありました。これに対しては申請者から、1回目のアデノウイルス投与後に抗体が生じる可能性があり、その場合に2回目以降の投与後の効果を妨げるおそれがあるので、まずは1回でやりたいという回答がありました。

 クですが、これも今の回答と関連します。除外基準としてアデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療歴がある場合を含めた理由を説明してくださいという質問に対し、回答としては先ほどと同じで、アデノウイルスベクターの投与を過去に受けている場合、その抗体が産生されている可能性がある。それに対して2回目を投与した場合、免疫応答が生じて研究結果の評価が困難になるということで除外しているという回答でした。

5ページの2)「審査委員会における審議」です。平成24327日に審査委員会を開催しました。この場で総括責任者等から説明を受け、審議が行われ、その後幾つかの照会事項などが出されております。それについては下にアから始まっておりますが、こちらもかいつまんで御説明いたします。

 イですが、今回NK4を遺伝子治療に使うという点が初めてということで、特に安全性と生体内分布に関して、委員会では慎重な審議を行いました。イでは、胸腔内の投与によるベクター及びNK4の生体内分布及び安全性を、前臨床研究の結果から整理をして考察してほしいという指摘がありました。申請者からは、論文等を調べていただいた結果、前臨床研究としては適当なものはなかったということで、申請者自らマウスでの実験を行っていただきました。

 その結果は6ページに記載があります。少し長くなるのですが、委員会で慎重な審議が行われたところですので、丁寧に御説明させていただきます。マウスの胸腔内又は静脈内に高用量(ヒト臨床投与量の380)でこのベクターを単回投与する実験を行いました。その結果ASTALTの上昇、肝臓における軽度の細胞の変性など肝障害の徴候が認められました。肝機能障害については、胸腔内投与では静脈内投与に比較して軽微であるものの、遷延化の可能性がある。具体的には投与後71日目、これは測定をした一番長いポイントだったのですが、そこでも一部のマウスで血清中ASTALTが正常値まで低下していないという状態が続いておりました。

 生体内分布については、胸腔内投与では、肺にアデノウイルスがより多く取り込まれるという結果が得られ、その一部が血行性にその他の臓器に移行することが想定されました。

 以上の結果から、臨床研究を実施するに当たっては、急性期の肝機能障害及び肝機能障害の遷延化の可能性に注意する必要がある。したがって、これらについては説明同意文書にきちんと記載するということで対応していただきました。

 ウですが、ヒトの胸腔内へアデノウイルスベクターを投与した試験、これは先ほど御説明した米国の試験ですけれども、これについては最新の論文が言及されておりませんでしたので、こちらについて安全性の観点から言及するよう指摘があり、実施計画書に追加記載していただきました。

 エですが、これは患者さんへの説明同意文書において、特に本研究がfirst in human試験であること、つまりヒトへの安全性はまだ確認されていない点を重視し、きちんと丁寧な説明をするようにという指摘があり、申請者からも説明同意文書を修正するなど対応していただきました。

 オですが、こちらも同じくfirst in humanであるという観点からの指摘です。有害事象が発生した場合の対応をなるべく詳細に、具体的に定めるようにという指摘があり、申請者に対応していただきました。

 このような審査を行った結果、7ページの3.「審査委員会の検討結果」として、本実施計画の内容は科学的に妥当であると判断されております。

121ページは、カルタヘナ法に基づく審査結果です。結論としては、妥当であるという判断ですが、具体的な中身については122ページです。122ページは審査結果をまとめたものです。(1)「生物多様性影響評価の結果について」ということで、丸1から丸4までの観点で評価されております。丸1「他の微生物を減少させる性質」ですが、その前提として、第一種使用規程に従って使用する限り、環境中への拡散というのは極力抑えられている。更に、拡散したとしてもその量は極めて微量である、ということが前提としてあります。

 その上でですが、このウイルスの感染性は野生型と同一であり、ヒトを含む一部の哺乳類及び鳥類には感染しますが、微生物に感染することはない。また、その有害物質の産生によって、他の微生物を減少させることもないと考えられております。したがって、この観点からの生物多様性影響は生じるおそれはないと判断されております。

 丸2「病原性」ですが、今申し上げたとおり、このウイルスは感染性については野生型と同一で、ヒトを含む一部の哺乳類と鳥類に感染する可能性があります。ただし、このウイルスは増殖能を失っておりますので、他の野生動物に対して病原性を呈するおそれはないと考えられております。仮に増殖能を持ったRCAが突然変異で発生しても、野生型のアデノウイルスは自然界にもともと存在しておりますので、それら自然界に広く分布しているアデノウイルスと比較して、特に高い病原性を持つものではないということです。このウイルスはNK4タンパク質を発現するようになっておりますが、そのNK4が一過性に発現したとしても、それによるヒトへの病原性は知られていない状況です。これらのことから、病原性に関しても、生物多様性影響は生ずるおそれはないであろうと判断されております。

 丸3「有害物質の産生性」ですが、このウイルスの有害物質の産生は知られていないということで、この点からも生物多様性影響が生ずるおそれはないと判断されました。

 丸4「核酸を水平伝達する性質」についても、先ほど申し上げたとおり一部の哺乳類や鳥類に感染しますが、増殖能を失っていることから、他の野生動物に対して核酸を水平伝達するおそれはないと考えられております。仮に増殖能を持ったRCAが生じたとしても、その核酸を水平伝達する性質は自然界に広く分布しているアデノウイルスと同様であると考えられており、この観点からも生物多様性影響が生ずるおそれはないと判断されました。

 以上の結果から、全体の結論として、第一種使用規程に従って使用していただく限り、生物多様性影響は生じることはないだろうという結論で評価されております。以上です。

○永井部会長 

ただいまの説明に対し、御質問、御意見をお願いいたします。よろしいでしょうか。山口先生、何か追加はありますか。

○山口委員 

特にありません。

○永井部会長 

よろしいでしょうか、もし御意見がないようでしたら、科学技術部会として本報告を了承し、厚生科学審議会へ報告させていただきます。ありがとうございました。

 次も同様に、遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見についての御審議です。東京大学医科学研究所附属病院からの申請となります。私は、このプロジェクトに関わっておりますので、部会長代理の福井委員に進行をお願いいたします。また、私と東京大学に所属している塩見委員は、本件の審議について発言を控えさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○福井部会長代理 

審査委員会の検討結果を、事務局から説明をお願いいたします。

○松倉専門官 

資料3と資料6を併せて御覧ください。資料3と資料62つに資料番号が分かれている事情を最初に申し上げます。先ほど、千葉大の審査のときに申し上げましたが、指針に基づく審査と、カルタヘナ法に基づく審査の2種類があります。ただし、指針に基づく審査については、臨床研究としての新規性がないと判断された場合は審議会には諮問をせず、事務的に回答する仕組みになっております。今回東大の医科研から申請された本研究については、有識者に意見を伺った結果新規性は無しという判断をされました。したがって、既に事務局から申請者に対しては、指針に基づく審査結果について回答済みです。それについては報告事項という形で説明をさせていただきますので、資料6ということで少し資料番号が飛んでいます。

 一方、カルタヘナ法に基づく審査については、そのような新規性の有無による審議の省略という仕組みがありませんので、こちらについては厚生科学審議会で審議していただくという形になっております。

 便宜上資料6から先に説明させていただきます。1ページで「厚生労働大臣の意見について」というタイトルです。文中に記載があるように、東大医科研から申請のあった下記の遺伝子治療臨床研究については、遺伝子治療臨床研究に関する指針に基づいて、複数の有識者に意見を伺った結果、新規性は無しと判断されました。この意見を踏まえ、厚生労働大臣の意見としては、実施して差し支えないと判断しております。

 遺伝子治療臨床研究の課題名については下記に記載しているとおりです。申請者は東京大学医科学研究所附属病院で、本年67日に申請が行われております。※の注釈に書いてあるように、今回新規性無しという判断に至った1つの経緯を御説明いたします。本研究で使用するウイルスはG47Δという腫瘍溶解性ウイルスなのですが、これを用いた遺伝子治療臨床研究については、既に以下のとおり承認がされています。

3件承認されていて、一番最初は平成215月に、同じ東大の医学部附属病院で、進行性膠芽腫を対象とした臨床研究が承認されました。これは、このウイルスを使う初めての臨床研究でしたので、審議会で審議を行っていただいた上で承認したものです。

 その後は平成248月に全く同じウイルスを使って、前立腺がんを対象とする臨床研究が申請されました。申請者は同じ東大医学部附属病院です。このときに議論をしていただき、新規性無しと判断されました。これは、ウイルス自体の新規性無しというのもそうなのですが、対象疾患の前立腺がんについても、遺伝子治療の対象としてはいろいろな遺伝子治療で実施されていることも加味して新規性無しという御判断をいただきました。

 平成253月に東大の医科研から、これは最初の申請と同じ進行性膠芽腫に対する臨床研究の申請がありました。これは施設が異なりますので申請があったものですが、プロトコールの内容としてはほとんど同じものでしたので、こちらも新規性無しと判断していただいた経緯があります。

2ページで1番「遺伝子治療臨床研究実施計画の概要」です。5番の「対象疾患」から順に説明いたします。対象疾患は進行性嗅神経芽細胞腫です。導入遺伝子・ベクターの種類ですが、制限増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)の一種であるG47Δというのが使用するウイルスです。用法・用量としては、麻酔下に生理食塩水で希釈したG47Δを、主として経鼻的に腫瘍内の1から数箇所に注入します。1回当たりの投与量はそちらに記載したとおりです。病勢進行と判定されず、投与が可能であれば4週間の間隔で投与を繰り返すという投与方法になっております。研究実施期間は、了承された日から5年間で、目標症例数は10例となっております。

 「研究の概略」は、本研究は初期放射線治療にもかかわらず、再増大又は進行する嗅神経芽細胞腫の患者に対し、G47Δの腫瘍内投与を行った場合の安全性の評価を主目的としております。また、副次的な目的として、その効果を評価するとされております。

 「その他」ですが、先ほど御説明したとおり、本研究で使用するウイルスは、既に国内で進行性膠芽腫及び前立腺がんを対象として臨床研究が実施されております。進行性膠芽腫に対する遺伝子治療臨床研究については、6月時点で10症例に対して既に実施済みです。10症例の内訳は、低用量3例、中用量7例となっております。今回申請のあった投与量はこの中用量に相当いたします。そして、進行性膠芽腫に対する10症例の結果では、これまでに重篤な有害事象は観察されていないという報告を受けております。

3ページの2番「有識者の意見」です。1)に示す先生方に御意見を伺いました。その結果が2)です。いずれの有識者からも新規性はなく、指針のいずれの項目にも該当しないという判断をいただいております。

 主な意見をその下に簡単にまとめております。本研究で使用するウイルスについては、既に承認されている遺伝子治療臨床研究で用いられているものであり新規性はない。対象疾患についても、既に承認されているがん、これは特に脳腫瘍、先ほど進行性膠芽腫と申し上げたものですが、こういうがんと病態としては近いということで、その範疇に含まれるとともに、このウイルスの作用機序である腫瘍内でのみ増殖し腫瘍細胞を溶解させる点に関しては同等の疾患とみなせるということで、新規性はないという御判断をいただいております。

 また、G47Δではないのですが、同じ腫瘍溶解性ウイルスであるHSV-1について、臨床研究として脳腫瘍内や頭頸部腫瘍への注入は既に他の研究で行われています。

 ウイルスの投与方法については、既に承認されている臨床研究とは経路や回数が異なることはありますが、特別な機器を用いる等の事情はなく、既に実施されている進行性膠芽腫患者に対する脳内投与と比較しても難易度は高くないということで、その他を含めて新たに個別審査を必要とするような事項はないという御判断でした。

4ページですが、以上の有識者の御意見を踏まえ、厚生労働大臣の判断としては新規性はなく、実施して差し支えないと判断させていただきました。

 資料3はカルタヘナ法に基づく審査の結果です。1ページの※で始まる注釈は、先ほどの臨床研究の場合と同様、本申請に係る遺伝子組換え生物等(G47Δ)を用いた遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程が以下のとおり承認済みということで、先ほどの臨床研究として承認された3件に対応するカルタヘナ法の承認も同じように承認を受けております。

2ページです。そのような経緯がありますので、ウイルスとしては全く同じものですので、それほど大きな審議の論点があったわけではありませんが、2ページのとおりまとめさせていただきました。丸1「他の微生物を減少させる性質」の欄ですが、前提として第一種使用規程に従って使用する限り、環境中への拡散は極力抑えられており、拡散したとしてもその量は微量と考えられる。また、ウイルスのモニタリングを適宜行うことにより、仮に腫瘍溶解性ウイルスのセカンドピークが出現した場合にも、適切な対応が可能と考えられる。このセカンドピークですが、このウイルスはヒトの体内で腫瘍細胞で増殖する性質を持っているので、投与直後にピークがあるとして、その後一旦減ったものが増殖し再び増えてくる可能性も理論的には否定できないということで、再び増えてくるセカンドピークを適切に検出できるようにということでモニタリングを適宜実施していただく、ということが委員会の意見としてありました。

 本文の続きを読みますと、G47Δは制限増殖型ですので、腫瘍細胞でのみウイルス複製が可能であり、自然界では伝搬・複製することはありません。したがって、第一種使用規程に従った使用を行う限り、G47Δは環境中に拡散しても比較的早期に消滅すると考えられております。

 その上で、G47Δが感染する動植物等の種類は、野生型HSV-1と同等で、微生物に感染するとの報告はありません。また、G47Δが競合や有害物質の産生により、他の微生物を減少させるという性質もないと考えられておりますので、この観点から生物多様性影響が生じるおそれはないと判断されております。

 丸2「病原性」ですが、G47Δは野生型HSV-1と同等で、ヒトを自然宿主としております。自然界で他の哺乳動物、植物及び微生物に感染するとの報告はありません。また、腫瘍細胞でのみウイルス複製が可能であるため、自然界では伝搬・複製し得ず、ヒト正常組織に対しても病原性はありません。

HSV-1については、欧米で臨床研究が幾つか行われておりますが、これまでも野生型のHSV-1を超える病原性を示した報告はありません。また、G47Δが感染した腫瘍細胞ではLacZ遺伝子が一過性に発現いたしますが、その生成物であるβ-ガラクトシダーゼが人体に対して毒性や病原性を有するという報告もありません。これらのことから、病原性の観点からも、生物多様性影響が生ずるおそれはないと判断されております。

 丸3「有害物質の産生性」についても、有害物質の産生性は知られておらず、この観点からも生物多様性影響が生ずるおそれはないと判断されております。

 丸4「核酸を水平伝達する性質」は先ほど申し上げたとおり、自然界で感染する対象はヒトのみです。正常細胞でのウイルス複製能を失っていますので、自然界では伝搬・複製することはありません。したがって第一種使用規程に従った使用を行う限り、ヒトからヒトへ腫瘍細胞を介して、直接水平伝達して複製することはほぼ不可能であろうと考えられております。これらのことから、核酸を水平伝達する性質に関しても、生物多様性影響が生ずるおそれはないと判断されております。

3ページでは、以上を踏まえた結論として、第一種使用規程に従って使用した場合に生物多様性影響が生ずるおそれはないと判断をいただきました。以上です。

○福井部会長代理 

ただいまの説明について、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。

○西島委員 

質問です。腫瘍細胞でのみ増殖することについて、全く素人なのでどういうメカニズムかを教えてください。

○松倉専門官 

山口先生、お分かりになればお願いいたします。

○山口委員 

これだけとは限らないのです。いろいろなメカニズムがあるのですが、ウイルスは細胞が増殖因子刺激に応じて動く細胞内増殖シグナルを利用して増幅します。しかも、細胞ががん化し異常な増殖をする場合にはその増殖シグナルも更新しております。そこで、正常細胞ではウイルスは増幅せず、増幅シグナルが亢進しているがん細胞でのみウイルスが増幅し、細胞を壊すというメカニズムです。

 ただそれだけではなくて、ある種の腫瘍溶解ウイルスではがん細胞にだけターゲッティングするように改変したものもあります。ですから、いろいろな工夫をして腫瘍だけ増殖、あるいは腫瘍だけにターゲッティングするようなメカニズムで腫瘍を壊すように設計されたものが腫瘍溶解性ウイルスです。もちろん正常細胞と、がん細胞パネルを対象として、正常細胞では増えずに、がん細胞だけで増えることを確認しております。

○西島委員 

がんはいろいろあるわけですけれども、この場合にはある種のがんということになるわけですか。

○山口委員 

そうです。ウイルスの増幅に必要な、例えばRas系が亢進しているがんであれば、そのRas系を使って増幅する腫瘍溶解性ウイルスを用いましてがん細胞を壊してしまうというようなメカニズムです。

○西島委員 

分かりました、ありがとうございます。

○野村委員 

これは安全性の評価の研究ですが、副次的に効果も見るということで、最初は平成21年にやられてから、平成24年、平成25年と相次いでいるということは、他のがんに関してかなり効果として期待できるからこそということでいいのでしょうか。他のがんに対してどのぐらいの可能性があるのですか。

○山口委員 

委員会の方には、どのぐらいの成果になっているかという報告はなかったと思うのです。それでよろしいですよね。ただ、学会等で藤堂先生が発表されているのを聞いている限り、ある特定の患者さんにはかなりの効果がでていると聞いております。初めは脳のがんですけれども、その他の前立腺がんのような生殖細胞がんに広げていったというのは、その効果が先生としては、あるいは東大としては十分認められたということで申請されてきているのだろうと思います。

○福井部会長代理 

よろしいでしょうか。作業委員会からの報告について、科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告いたします。ありがとうございました。

○永井部会長 

続いて、ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請についての御審議をいただきます。湘南鎌倉病院等からの6件の申請については523日、624日付けで厚生労働大臣より諮問され、527日及び626日付けで当部会に付議されております。事務局より説明をお願いいたします。

○堀再生医療研究推進室長 

資料4-1に基づいて御説明いたします。表紙を御覧ください。6機関より申請を頂いておりますが、2つ目の産業技術総合研究所、3つ目の朗源会ウェルフェアグループからの申請については、共同研究ということで同一研究です。

2ページから4ページは、部会長から御説明のありました付議の関係の書類です。4ページの2つ目の研究については変更計画の申請ですので、後ほど資料4-3に基づいて別途説明させていただきます。

5ページは最初の研究の概要です。研究課題名は、自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた乳がん術後変形に対する再建治療の検討ということで、湘南鎌倉総合病院の山下先生より頂いております。対象とする疾患は、乳がんに対する乳房の温存術後(術後1年以上経過した症例)の乳房変形。用いられるヒト幹細胞の種類は、ヒト皮下脂肪組織由来間質細胞です。実施期間は、登録期間が1年間、実施期間が2年間。対象症例数は5症例です。

 本研究では、乳房温存術後の陥凹変形に対し、自己皮下脂肪組織由来細胞移植による乳房再建術を行い、治療の安全性、乳房形態への効果、生活の質への効果を検討評価するものです。

7ページの図を用いて更に説明させていただきます。丸1局所又は全身麻酔下で、腹部又は大腿部から細い金属の管を挿入し脂肪を吸引する。吸引した脂肪の半分を分離装置で分離して幹細胞を取り出す。残りの半分については洗浄をする。取り出した幹細胞と、洗浄した脂肪を合わせて分離した脂肪を患部に注入するという研究です。

25ページです。重症末梢動脈疾患に対する自家間葉系幹細胞を用いた血管再生研究です。産業技術総合研究所、それから少し飛んで41ページの朗源会ウェルフェアグループから、同じ研究に対する申請が出ています。25ページに戻り、対象疾患は重症末梢動脈疾患。ヒト幹細胞の種類は自家骨髄由来の間葉系幹細胞。実施期間は2年間。対象症例は5症例です。病院で採取された約20mLの患者骨髄を研究所に搬送し、骨髄から間葉系幹細胞を培養増殖し、増殖した幹細胞を病院へ再度搬送し、患者の下肢虚血部位に筋肉内注射を行って移植します。新規性については、骨髄より培養された間葉系幹細胞を用いて血管再生を行う点に新規性があるということです。

35ページは、より平易な用語を用いて記載された要旨です。対象となる末梢動脈疾患の説明があります。2つ目のパラグラフに、骨髄の中に血管になり得る源の細胞が存在するということで、骨髄に含まれる間葉系幹細胞という細胞が血管の再生に必要な物質を産生することから、この間葉系幹細胞を移植することにより、新たな血管を誘導するという研究結果に基づき、本研究が行われるということです。

36ページの「実際の治療」の所ですが、局所麻酔下に約20mLの骨髄を採取し、研究所内のセルプロセッシングセンターに搬送し、約1か月間培養期間をおいて、間葉系幹細胞を増やします。この増えた幹細胞を再度医療機関に戻し、腰椎麻酔、あるいは全身麻酔を施し、下半身の虚血部位約40か所に0.5mLずつ筋肉内注射するということです。「追跡調査の方法」ですが、移植終了後5年間は定期的に、局所並びに全身状態を評価する。41ページ以降は、医療機関側から出ている同じ研究に対しての申請ですので割愛させていただきます。

57ページは、重症虚血肢患者に対する体外増幅自己赤芽球移植と、自己骨髄単核細胞移植による血管新生治療の比較試験です。新潟大学歯学総合病院の南野先生から頂いております。対象となる疾患は、既存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患・難治性血管炎です。用いられるヒト幹細胞の種類は、培養自己赤芽球、あるいは自己骨髄単核細胞です。実施期間は2018331日まで。対象症例数は、自己赤芽球を用いた移植については24症例、自己骨髄単核細胞移植を行う症例が24症例です。

 治療研究の概要ですが、これまで重症虚血肢に対する血管再生治療としては、骨髄単核球の細胞移植が広く行われてきておりますが、実施に際して全身麻酔下で500mLから1,000mLという、やや多めの骨髄液を採取するため、侵襲性が大きいという課題がありました。今回、この治療方法との比較対照として、より少ない量の骨髄、4060mLの骨髄を採取し、この中から赤芽球を培養増殖し、筋肉内注射するという治療法との比較を行うということです。

63ページは、採取した骨髄について、体外培養ということで約14日間培養をして戻すということです。主要な評価項目としては、患肢の皮膚灌流圧の改善度、副次評価項目としては下肢切断回避率をはじめとした、そこに挙げられているような項目を評価していただきます。

69ページは、鼻腔粘膜上皮細胞シートを応用した鼓室形成術ということで、東京慈恵会医科大学の小島先生より頂いております。対象となる疾患は中耳の真珠腫、癒着性中耳炎。ヒト幹細胞の種類としては、自己鼻腔粘膜上皮由来の上皮幹細胞。2年間で6症例を対象に行う。鼻内視鏡下に鼻腔粘膜を採取し、鼻腔粘膜上皮細胞シートを作製し、鼓室形成術時に病的粘膜を除去した中耳腔、乳突腔にシートを移植する。術後に聴力検査やCT撮影において経過を観察するものです。

76ページで、より平易な用語を用いた説明です。中耳の炎症性疾患の手術に際しては、炎症や真珠腫により病的になった粘膜を除去すると、骨面が露出し、傷の治りが悪くなったり、真珠腫がそこに再びできたりすることが高頻度に生ずる。鼓膜の癒着している部分を剥がした場合、そこに健康な粘膜が再度張らないと再癒着を起こす可能性が高くなるということで、今回作製する粘膜シートをここに移植し、これらの課題に対応する研究です。

79ページは、高密度スキャフォールドフリー脂肪由来幹細胞構造体を用いたモザイクプラスティ手術における骨軟骨柱ドナーサイトに対する骨軟骨組織再生の第I相探索的臨床研究ということで、九州大学病院の岡崎先生より頂いております。対象となる疾患は、離断性の骨軟骨炎、若しくは遊離期の骨軟骨骨折、膝関節特発性骨壊死患者。ヒト幹細胞の種類は、自己脂肪組織由来の幹細胞。実施期間は、実施許可通知から3年間。対象症例数は5症例を予定されております。

 研究の概要は、安全性の評価を 行う予定です 80ページで図を用いて説明させていただきます。左下の大きく欠損している部分ですが、体重が非常に大きく掛かる所で、軟骨組織が欠損した部分に対し、体重が掛からない部分からの軟骨組織を移植します。体重の掛からない部分から採取し、小さな欠損ができておりますが、その部分に対して今回作製をいただく細胞構造体を入れ、移植後の有害事象の発生件数、副次的にMRIなどの画像評価を行っていただく研究です。資料4-1については以上です。

○永井部会長 

ただいまの説明に対し、御質問、御意見をお願いいたします。

○今村委員 

1 例目の乳がん術後変形に対する再建治療ですが、これはざっと考えても非常にニーズが高い研究で、症例数が相当見込まれるものではないかと思われます。そして、ある程度の症例の検討がなされて、有効性、安全性がある程度証明されているという状況です。これは、診療報酬上は完全に自由診療で行われている状況なのですか。

○事務局 

現在のこの技術は、ヒト幹細胞の臨床研究として鳥取大学から出ているものがあります。それと、この臨床研究を除いては部分的に自由診療で行われているのではないかと思います。

○今村委員 

ここでは分からないかもしれませんけれども、当然のことながらこれは保険収載へ進めようという意図はあるのでしょうね。国民の立場からしても、当然そのような方向を目指していただきたいと思うのです。

○事務局 

ヒト幹の臨床研究として、鳥取大学、そして湘南大学と申請していただいておりますので、エビデンスを積み重ねていこうという意図を持って研究を進めていただいているものと思います。

○門田委員 

関連した質問です。これは自由診療でやるのですか、それとも研究費としてやるのですか、どちらかを明確にしていただけますか。

○事務局 

この研究については、臨床研究として行われるということです。

○門田委員 

そういうことですね。鳥取もそうですね。

○事務局 

はい。

○門田委員 

こういう形で出てくるものというのは全て、話によると既にそういうことが行われている所があるということを聞いたこともあります。それは研究ではない。研究はこういう形で、研究費として物事を進めるようにという指導ですね。そのように解釈していいのですか。

○事務局 

ヒト幹指針が出たのが平成18年で、それ以降にこういう研究計画を実施したいという場合は、研究として実施する場合にはこちらに申請を上げていただくことになっています。この案件の場合は、既に九州大学などでは、ヒト幹が始まる前から行われている所もあります。その件については、施設内の倫理審査委員会の審査を経て、臨床研究として実施されているという形で行われています。

○門田委員 

今でも継続して、早くから始まっているものは今でも同じやり方で継続しているということですか。

○事務局 

基本的に方法に大きな変更があるようでしたら、こちらに申請が来ているところであると思います。

○永井部会長 

研究は、これからは全部ここを通すわけですけれども、中には自由診療で行っているものもあります。それについては、これからはガイドライン、あるいはヒト幹指針を改定して、倫理委員会で審査するようにしようという話が進んでいます。

○門田委員 

分かりました。

○野村委員 

今の関連なのですが、自由診療で行われている所はどういう所なのですか。

○事務局 

それは美容系のクリニックではいろいろやられているようです。Web上でもそういった広告は見聞きするところです。先ほど部会長からもお話がありましたように、今継続審議となっている再生医療新法のほうでは、こういった自由診療についても今後対象としていくようになっています。

○永井部会長 

他に御意見がないようでしたら、こちらの申請については審査委員会で審査を行っていただき、結果が報告された時点で総合的に判断したいと思います。ありがとうございます。続いて、ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について御審議をいただきます。大阪大学医学部附属病院、理化学研究所、先端医療センター、湘南鎌倉総合病院、東京慈恵会医科大学の申請について、審査委員会の検討結果を事務局より説明していただきます。

○堀再生医療研究推進室長 

それでは資料4-2、表紙を御覧いただくと、5施設分の携載があります。2つ目の理化学研究所、3つ目の先端医療センターからのものは共同研究ということで同一研究です。最初の研究に関する審査委員会の検討結果は2ページです。まず案件は重症心筋症に対する骨格筋筋芽細胞シート移植による治療法の開発で、大阪大学医学部附属病院の澤先生より頂いていたものです。

 審査委員会における審査概要は、3ページ以降です。まず審査回数は昨年11月以降4回にわたり審査を頂いております。4回の審査の中で一番課題になったのは、プロトコールについてでして、当初提出を頂きました研究計画においては、シングルアームで行うことになっておりましたが、本審査委員会から有効性を評価することが目的であるため、コントロール群を置いて行って頂きたいということで、3ページ、4ページのプロトコールについてもコントロール群についての御指摘。5ページ、しっかりとしたプロトコールを組むためにも、循環器内科の研究分担者に加わって頂くようにという御指摘がありました。

 第3回の審議は6ページ、さらにこのプロトコールについて、無作為割付までは求めないものの、比較試験は実施していただきたいという御議論がありました。第4回審議はダブルアームで実施するということで7ページ、循環器内科のドクターについても研究協力者ではなく、研究分担者として御参加いただくようにということです。これらの指摘を踏まえて、研究計画に御修正を頂いたということで妥当であるとの御判断を頂いております。

2件目は49ページ、理化学研究所、先端医療センターからの共同研究です。研究課題名は滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究です。

50ページ以降ですが、理化学研究所部分についての審議概要の御説明をいたします。審査回数は今年3月、5月、6月の3回審査を頂いております。5059ページまで審議内容を網羅的に掲載しておりますが、幾つか審議頂いたものがグルーピングができます。1つは導入するプラスミドの安全性、その残存に関するようなもの。2つ目として、腫瘍の確認に関するもの。3つ目のグループとしては、ウイルスのコンタミネーションの確認に関するもの。4つ目として、導入するプラスミド断片が染色体に挿入されてしまった場合の確認に関するもの。大きくこの4つぐらいのカテゴリーに分けて議論頂いております。そのグループごとに紹介をします。

 導入するプラスミドの安全性、残存に関するもの、これは1回から3回まで毎回御議論を頂いております。1回目は51ページの最初の○ですが、組み込まれている配列についてはワイルドタイプなのかミュータントなのかという御質問を頂き、ワイルドタイプという御回答を頂いております。また51ページの4つ目の○、使われるEBVのベクターがヒトでの臨床研究にこれまで使われたことがあるかということで、これまで公式に認められた臨床研究としては国内ではないと。海外においても調べた範囲ではないということです。

52ページ、一番下の○、EBNA遺伝子は増殖遺伝子として知られているが、初期化の段階で使用することで、細胞に対する影響はどの程度あるのかということで、少なくともこのプラスミドによって樹立されたiPS細胞はES細胞と同等の形態、遺伝子発現を持っていることが確認されているということで、iPS細胞の導入には一過性の遺伝子発現ではなく、10日から2週間の持続的な発現が必要なため、この遺伝子を使う必要があるという御回答を頂いております。

 第3回は少し飛び57ページです。一番上の○、HBVでは一旦ウイルスを検出できなくなっても強い免疫抑制状態になると、再びウイルスが増殖することがあるということで、今回使用されるEBVプラスミドベクターにおいて、RPE細胞に分化誘導して培養している間に、再び増殖していないか確認してくれということで、このRPE細胞でプラスミド残存の検出試験を追加で行うという御回答を頂いています。

2つ目のグループとして、造腫瘍性の確認に関するものです。まず第1回目の審査会は52ページです。上から3つ目の○です。iPS細胞由来RPE細胞造腫瘍性評価では線維芽細胞の増殖もあるように見えますが、どのように評価していますかということですが、移植細胞の増殖・侵襲はほぼなく、隆起形成も反応性と判断しているという御回答を頂いております。

53ページの一番下、細胞の増殖スピードについての御指摘があります。次のページでこの増殖スピードが早すぎる場合に安全性の問題はないのかということで、対応としては細胞数の上限を規格値として設定するという御回答を頂いています。

 第2回は56ページの一番上の○、間質細胞様細胞についての御指摘も頂いておりまして、RPE細胞に分化した後、さらに幼若化することはないのか。もしあるのであればその性状の変化に対して対処する必要をどう考えているのかということで、間質細胞様細胞については追加でマウスで試験を頂いておりますが、造腫瘍性が認められていない。RPEシートの安全性・有効性に関しては、間質細胞様細胞のわずかな混入が及ぼす悪影響は許容できる程度に小さいと判断しているという御回答を頂いております。

3つ目のグループ、ウイルスのコンタミネーションの確認に関するもので、これは第1回から第3回まで議論いただいておりますが、特に第3回の57ページの一番下の○、ウイルスの検出についてはPCR法も優れているとは考えるけれども、広範なウイルスが検出可能かつ確立した検査方法であるインビトロウイルス試験、細胞を使った検査についてもやはり実施すべきではないかということで、次のページのように実施について前向きに検討するという御回答を頂いております。

 最後のグループ、導入するプラスミド断片が染色体に挿入されてしまった場合の確認に関する内容です。これは第1回から第3回まで御議論がありました。第1回は51ページの3番目の○、ベクターの残存をどのようにして調べるのか。プラスミド断片が染色体に挿入されてしまう可能性もチェックできるのかということで、これについてはPCR法で調べる。プライマー配列を含むベクター断片が染色体に挿入された場合には、検出が可能だという御回答を頂いております。53ページの上から3つ目、被験者から採取・樹立したiPS細胞でエクソーム解析、ゲノムコピー数解析を行うべきではないかということで、これについては行うという御回答を頂いております。

 第2回目は55ページの一番下の○、ホールゲノム検査でプラスミド断片が組み込まれているかどうか確認すべきではないかということで、これを行うという御回答を頂いております。

 第3回は57ページ、上から2番目、ホールゲノム検査を実施するのですが、実際に検査してどのような測定値であれば異常と判断するのか。現状で考えられる規格・対処方針を示してくれということですが、これについては実際にどのような測定値であれば不適合とするのかという規格・対処方針については、現時点では言えないということでして、最終産物の細胞の安全性から機能的に判断すべきであるとの御回答を頂いております。

57ページの4つ目の○、申請されているベクターでの臨床研究は可能と考えるが、現時点の科学レベルで可能な限りの検査を行って、プラスミドのゲノムへの挿入の有無につき確認を頂いた上で実施してくださいということで、この染色体内へのプラスミド断片の検出については、現段階で可能な最新の技術を用いて行うという御回答を頂いております。

58ページの一番最初の○、これら審査委員会から指摘を頂いたさまざまな追加の検査についてiPS細胞へのプラスミド断片への染色体への組み込みの結果については、施設の中の審査委員会及び厚生労働省のヒト幹審査委員会に報告を頂くということで、御回答を頂いております。これらの3回の審議を踏まえ、審議を行って頂いた結果、了承を頂いております。

 次は少し飛び80ページです。同じ研究に対して、こちらは医療機関側への疑義、確認事項です。大別して2つで、1つは研究のプロトコールについてのもの、80ページから81ページの真ん中まで。2つ目は患者の説明文書についてということで、第2回目、第3回目は患者の説明文書についての御議論を主に頂きました。

 まずプロトコールについては80ページの最初の○で、造腫瘍性のフォローアップのスケジュールについてどう考えているのかということで、移植後半年間は1か月に1回。その後の半年は2か月に1回。その後も長期に観察を続ける予定という御回答を頂いております。80ページの2つ目の○、もともと提出いただいておりましたプロトコールでは手術時に水晶体再建術を同時に施行する可能性もあるということでしたが、今回視力に対する有効性の評価の対象とするために、同時に行うことは避けて、水晶体再建術を行う場合には2週間以上前までに実施し、視力を評価した上で行うことに変更いただいております。

81ページ以降は患者の説明文書について、これは3月の科学技術部会でも御質問があった点かと思いますが、今回患者さんへの説明用の資料については103ページ以降に最終版を提出を頂いております。この中で例えば81ページでは、レトロウイルスについて腫瘍ができることがあるという説明を追記するべきではないか。レーザーで腫瘍を焼く場合に暗点ができるけれども、この暗点というものを患者さんがよりイメージしやすいような記載を追記するべきではないか。2回目では82ページ、「補償」という言葉を用いていないのがなぜなのか。保険加入しているというのみ記載していますが、これはどういう意味を持っているのか説明を付記すべきではないか。82ページの下、EBNA-1についての必要性・リスクについての説明をすべきではないか。83ページ、ホールゲノム検査を実施することについて、それ以外の目的については使用しないということを記載すべき。それから間質細胞様細胞についてのリスクを記載すべきという御指摘を頂きまして、基本的にはすべてを反映を頂いております。このような結果でして、審査の結果、妥当であるという御判断を頂いております。

 次は138ページです。先ほど資料4-1で御説明した湘南鎌倉総合病院から提出されている乳房に対する治療です。部会長と御相談して、先に審査委員会に諮らせていただいておりますので、結果を御報告します。139ページ、527日の1回の審査で了承を頂いております。主な指摘は、プロトコールについて2点で、1つ目は遠心分離機によって採取された細胞数の計測を行っているが、移植する際の基準などを定めるべきだということ。結果は移植後になるが、採取された細胞について解析を実施すべきということで、両方とも対応を頂きまして了承を頂いております。

 最後に177ページです。これも先ほど資料4-1で御説明した件ですが、本件についても部会長と御相談して、先に審査委員会にかけさせて頂いております。審査の結果は178ページで、これも5月の審査1回で了承頂いております。主な御指摘は、プロトコールについて予測される有害事象の詳しい説明を記載すること。それからセルプロセシングセンターについては、差圧管理について具体的に表記すること。それから洗浄度の作業時における実測値を提出してくれという御指摘を頂きまして、御対応頂いた結果、妥当であるという御判断を頂いています。資料4-2については以上です。

○永井部会長 

それでは御質問、御意見を頂きたいと思います。

○今村委員 

iPS 細胞等を用いる臨床研究は、まだ緒についたばかりということで、この審査に当たっては、中央における倫理審査委員会の検討を経ると理解しておりますが、将来中央における倫理審査委員会と現行のヒト幹の審査委員会との関係はどのようになるのですか。

○永井部会長 

これは事務局からお答えいただけますか。中央というのは今のヒト幹の審査委員会のようなイメージで私は理解していましたが、そういうことでよろしいでしょうか。

○今村委員 

そのまま移行するというようなイメージでよろしいのですか。

○事務局 

まずこの研究ですが、ヒト幹の指針ではまず、機関内の倫理審査委員会で審議を受けて、その上で審議を経たものが研究機関の長によって厚生労働省に文書が提出されることになっております。そうした場合にその研究に新規性があるということであれば、こういったヒト幹の審査委員会で審議されるということで、ヒト幹の審査委員会と科学技術部会でより技術的に、より大所高所からといった観点で検討がなされている状況であろうかと思います。

○永井部会長 

その中央というのは今のヒト幹審査委員会ですか。

○事務局 

新法が施行された後ですが、このiPS細胞研究については第1種になるであろうと現在想定しております。そうなった場合にはこの研究計画については特定の認定再生医療等委員会で検討されます。それはいわゆるIRBですが、機関内に限らないIRBになります。そこで検討された後に厚生労働省に出されるのですが、厚生労働省では第1種に関しては厚生科学審議会で確認するということをしております。それも期限を区切って確認をすることになっております。

○今村委員 

だとすると厚労大臣の下に置かれる倫理審査委員会は現行のものがほぼそのまま横すべりするという考えでよろしいのですね。

○事務局 

今後の厚生科学審議会の運営については、今議論がありますが、もちろんこれまでのヒト幹の審査委員会も何らかの形で関わっていくものではないかと現時点では考えております。

○荒木主任科学技術調整官 

前の担当の部分なので、少し分かりやすく申し上げます。厚生科学審議会の意見を聞いて、届出を頂いて90日間の間に大臣がそれに対して意見を言う形になります。大臣が意見が言う際には厚生科学審議会の意見を聞いてと法案上なっておりますので、今村委員が御指摘のように今のヒト幹審査委員会のような機能、それがヒト幹審査委員会であるのか、あるいは厚生科学審議会の下に置かれる新たな部会であるのかは別問題としても、その機能が移行されるという理解でよろしいかと思っております。

○永井部会長 

ほかにいかがでしょうか。今のiPS細胞臨床研究の審査に携わりましたが、議論のポイントが幾つかありました。1つは山中4因子を導入するときに、EBウイルスのプラスミドを使うのですが、それが必ずしも現在、最先端のプラスミドではなかったという点です。腫瘍性があるというわけではないのだけれども、最近は使われていない古いタイプのベクターということで、それをもう1回最新のものに作り変えて、かつGMP基準を満たすようなものを作って使うかどうかでかなり議論となりました。結局それはプラスミドが残存していないということが重要という意見になりまして、最新の濃縮トラップ法などのいろいろな新しい方法を使ってEBウイルスのプラスミドが残っていないことを確認して頂くということとしました。

 それからゲノムの安定性の問題もあります。iPS細胞ではいろいろ遺伝子が変わってしまう可能性があり、その辺りも全ゲノム・シークエンスあるいはエクソーム解析を行う、コピー数ナンバーを調べるなど、いろいろな角度から基礎データも追加していただこうということとしました。その経過をIRB、場合によってはヒト幹審査委員会に上げていただき、相談しながら進めていくようにしていただきます。またゲノム安定性についてはがん研究の専門家ともよく相談しながら研究を進めるようにしていただきたいことをお伝えしました。その辺りが比較的大きな議論になったところです。何か御質問、御意見はございますか。山口先生何か御意見ございますか。

○山口委員 

部会長のおっしゃるとおりですが、いま問題になったプラスミドの件はWPREというオンコジーンが基本骨格構造の中に入っていて、海外の遺伝子治療では使われていないという点です。もちろんこれが最後まで残るのであればリスクは非常に高いので、研究の実施は難しいとなるかと思うのですが、実際は導入してiPSを作った後、そのベクターが残っていないこと、断片も含めてきちんと見て頂くことで、最善ではないのだけれどもやむを得ないのではないかという結論になったかと思います。

○永井部会長 

それから万一腫瘍化したときには、レーザーで焼くことができるということでした。そうすると適用となる黄斑変性は既に中心暗点ができていて、そしてかつ網膜色素上皮細胞が傷んでいるような症例を選んで移植することになります。有効性が期待できる根拠としては、ラットの網膜色素上皮変性モデルを使ってiPSである程度治療ができるという動物実験があり、最初は安全性研究、副次的に有効性もわかるような患者さんを選んで臨床研究をしようとなりました。ですから今回の研究の進め方として今までと違うのは、今後基礎データがいろいろと出てきたときに、これをIRBなりヒト幹委員会に上げて、我々もそういうデータを見ながら調整をしていくという進め方になります。

○川越委員 

今のこの研究は非常に注目を浴びており、マスコミ等で既に報道されていますが、確認しておきたいことがあります。最終的なゴーサインはまだ出ていないのですね。

○永井部会長 

はい、ここでまず御承認頂いて、厚生科学審議会に上げることになります。

○川越委員 

マスコミの話ではいついつにやられるというニュアンスが読み取れたので、心配していたのですが、よく分かりました。

○松田委員 

本当にマスコミ等でも報じられているように、非常に国民の関心度が高い治験ですが、報道では条件付きで前回の委員会で認められたと。「条件付き」という表現を使っていたと思いますが、一般の方はその条件は何なのかと。丁寧に説明しておく必要があるのではないかと思いますので、今日の御説明でもずいぶんいろいろな質問が出て、ああしてほしい、こうしてほしいという意見もたくさん盛られていたと思います。どういう条件かの概略をきちんと分かりやすく説明しておく必要があるのではないかと思います。

○永井部会長 

事務局いかがですか。問合せをさらにして、メール等で確認の上、科学技術部会に上げるということで条件付き、そういう意味だったと思いますが、事務局、そういうことでよろしいですか。

○堀再生医療研究推進室長 

先ほど申し上げましたように、移植する細胞にがん化につながるような遺伝子が残っていないのかどうかの確認。それから遺伝子の変異がないのかの確認。培養時のウイルスの混入がないのかという確認。こういう確認を頂くという条件。それから同意文書等については審査委員会で御指摘があった部分については直していただく。こういう条件でした。

○永井部会長 

いかがでしょうか。

○桐野委員 

124 ページの説明で、「眼に腫瘍ができたときは早期に発見することができ、レーザーで云々」と書いてあり、それはそれでよく分かるのですが、それ以外に腫瘍ができた場合のことも一応述べてあるのですが、その場合はこの移植した細胞が原因かどうかは分からない場合があると書いてあり、確かにそうだろうとは思います。移植した細胞は自家細胞ですので、何かのマーカーが入っているのでしょうか。それとも増殖してしまえば自家細胞と全ゲノム解析をやっても分からないということでしょうか。それはテクニカルなことなのですが。

○事務局 

はい、御質問ありがとうございます。124ページで眼以外の場所に腫瘍が発生した場合という件の所についての御質問を頂きました。確かに自家皮膚細胞からiPS細胞を樹立、そしてRPEシートにして移植しており、そこに何らかのマーカーをあえて人為的に付けているかというと、付けておりません。ただそういう腫瘍が不幸にして発生した場合は、もちろんオリジンがどこにあるのか、移植したiPS細胞由来のものなのかどうかは、大いに議論になるところだと思います。現時点でこのiPS細胞についてもホールゲノム検査あるいはゲノムのコピー数ナンバー検査などさまざまな検査を受けた上で移植されることになっているので、移植した細胞についてのデータはかなり豊富に揃えていると思います。もし将来腫瘍が発生した場合については、そのような検査結果と突き合わせて検討する形になるかと思います。

○山口委員 

今、事務局から説明があったとおりだと思うのですが、承認のときの条件にしたように、入れるベクターの残存は確認しておりますので、そういうマーカーは全く入れない、自己の体細胞と同じものを入れられるという前提で投与しますので、マーカー的なものはないと考えていいと思います。

○永井部会長 

いかがでしょうか。

○塩見委員 

私はiPSがこのように臨床に使われていくのは個人的にはすごく期待しているのですが、92ページを見るとPOC試験における安全性の確認があり、ここではラットとサルが使われています。サルの所の記載を見ると、どういう理由があったのか分からないのですが、他家ですか、移植の3があって、これは拒絶が起きたと書いてあるのです。自分のだったら大丈夫だったと。それはそうかな、合理的かなと思います。例えばこれをiPSの作成のベクターもこの時点ではレトロウイルスを使っていますし、プラスミドでもやっていないですよね。なので例えばこういうのをもう少し数を増やしていくという安全性を確かめるというのはいかがですか。

○山口委員 

1 つ、安全性の考え方ですが、動物試験で例えば化学薬品では非齧歯類と齧歯類と2種、違うものを使うことが基本的にはされるのですが、こういう先端医薬品の場合は必ずしも適切な動物種があれば、齧歯類であってもいいし、非齧歯類でも構わないと考えております。それで十分な評価ができれば、複数の種を必ずしもやる必要はないだろうとです。特に例えば、サルで自己の場合に特に長期にわたる、あるいは腫瘍かということを見るときに、必ずしも不適切かという問題、腫瘍かにだけに限って言えば適切かどうかという問題があるので、むしろ調べたいのは患者さんの細胞を調べたいわけです。サルの細胞を調べても仕方ないので、最終的にやるのは免疫不全マウスを使うのは一番ポピュラーに行われている方法になります。ですから今、高等動物をやったからといって、腫瘍性についての情報が得られるわけではないと思っております。

 もう1つ、サルをやっている理由は、ヒトと同じように投与できるか、その投与機器を含めてきちんと投与できるか、投与の方法についての安全性を確認することにあります。有効性を含めててですが、そういう試験だと理解しております。

○事務局 

既に山口先生にすべて答えて頂いたところですが、基本的にサルでの検討ということで、4頭ということなのですが、御説明がありましたとおり、移植手技の検討をやはり霊長類でしておくという意味合いがあったと考えております。

○永井部会長 

ほかにいかがでしょうか。この件以外の申請案件でも結構です。よろしいでしょうか。

○野村委員 

この件ですが、患者さんへの同意文書を拝見して、健康に被害が出た場合には速やかに御連絡くださいとありますが、やはり世界で初めての研究ということで注目もされているということで、いろいろな不安が患者さんには生じると思いますが、日々の小さな不安についてお医者さんにはなかなか言いにくいみたいな形で、臨床試験は患者さんの皆さんはそうだとは思うのですが、注目されている研究ということで何か特別なフォロー体制というのはあるのでしょうか。

○事務局 

そちらにつきましては今回131ページにそのようなフォロー体制を書く欄があるのですが、移植をする先生の名前はもちろん明記されておりますし、ほかに臨床試験支援部として担当コーディネーターが付くことになっております。そういう体制で医師だけでなくコーディネーターも含めて説明をし、その後の相談も受ける体制を取っております。

○野村委員 

これは通常の臨床試験ではあまりないことという理解でいいのですか。

○事務局 

おっしゃる通り、通常の臨床研究ではあまりありませんが、先端医療では少なからず取られる手法であると考えております。

○永井部会長 

よろしいでしょうか。ほかに御意見ございませんでしょうか。ございませんでしたら、審査委員会からの報告について科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告させていただきます。ありがとうございます。続いてヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告です。鳥取大学医学部の報告については、624日付けで厚生労働大臣より諮問され、26日付けで当部会に付議されております。説明をお願いします。

○堀再生医療研究推進室長 

それでは、資料4-3に基づきまして御説明をさせていただきます。実施計画の変更に関する届出を鳥取大学よりいただいています。届出内容の変更点ですが、6ページ、7ページを御覧ください。技術ですが、自己皮下脂肪組織由来細胞移植による乳がん術後の乳房再建法の検討で、もともと5症例実施ということでしたが、10症例に増やす申請をいただいているものです。これに伴い研究期間の延長として平成277月末までの延長の申請をいただいています。また、研究に用いるヒト幹細胞、採取、調整、移植又は投与の方法で、止血効果、鎮痛効果を高めるために脂肪吸引時に用いられるチューメッセント液の成分の変更をいただいています。また自己血輸血について脂肪吸引後の貧血の程度を顕著に軽減できるとして、本プロトコールに追加するという変更申請をいただいています。以上です。

○永井部会長 

それでは、ただいまの御説明に御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。御意見、御異議ございませんでしたら、ただいまの報告につきましては厚生科学技術部会の確認及び結果を厚生科学審議会へ報告させていただきます。続きまして、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しにつきまして御審議いただきます。事務局から説明をお願いいたします。

○堀再生医療研究推進室長 

資料5-15-2に基づきまして説明させていただきます。資料5-1を御覧ください。ヒト幹細胞を用いる臨床研究の適切な実施の目的として、平成187月に「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」、ヒト幹指針が策定されています。その後の科学技術の進歩などに伴い、平成2211月に全部改正を行いましたが、平成22年の改正時に、ヒト胚性幹細胞を含むヒト幹細胞の樹立と分配については今後の検討に委ねられていたところです。このため、ヒトES細胞を含むヒト幹細胞の樹立と分配に関して、「科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」において、平成2310月から今年の5月まで15回にわたって御検討いただき、今回、指針の改正案の取りまとめをいただきました。

 改正案の主な変更点ですが、資料5-2に新旧対照表があります。右側が現行の指針、左側が改正案で比較していますので、主なところを御説明させていただきます。総則の指針の適用範囲ですが、資料5-211ページを御覧ください。第3の適用範囲ですが、これまで見直し前から規定されていた、人の体内にヒト幹細胞等を移植又は投与する臨床研究のみならず、今回、臨床研究における使用目的として、ヒト幹細胞等調製又は保管する研究も新たに対象としています。

 対象となるヒト幹細胞ですが、13ページ以降に対象となるヒト幹細胞についての記載があります。右側の現行の対象となるヒト幹細胞等においては細則があって、13ページ目から14ページ目に続けてありますように、「ヒト胚の臨床利用に関する基準が定めるまでは、ヒトES細胞を用いる臨床研究は実施しないこととする」となっていましたが、今回、この細則を削除し、一部のヒトES細胞を用いた臨床研究を可能とするとします。具体的には、新たな見直し後の細則に基づいて臨床研究が可能となるということで、資料5-1に具体的にどのようなものが該当するか書いています。丸1外国で樹立されたヒトES細胞で、文部科学省の「ヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針」と同等の基準に基づき樹立されたと認められるもの、丸2文部科学省の関連指針におけるヒトES細胞の臨床利用に関する考え方が示された後に、新規に樹立するヒトES細胞は臨床研究を可能とするという変更を行っています。

 資料5-214ページから15ページにかけて、インフォームド・コンセントに関する記載があります。これまでインフォームド・コンセントを受ける者については医師ということでしたが、今回の見直しで、研究責任者又は研究責任者の指示を受けた者で、職務上、守秘義務を負う者としています。また、説明者は、適切な教育及び研修を受けた者であって、実施しようとするヒト幹細胞臨床研究の内容を熟知した者でなければならない、とういう規定を新たに置いています。

 基本原則の追加ということで、ヒト幹細胞臨床研究に用いるヒト受精胚ですが、15ページを御覧ください。ヒト幹細胞臨床研究に用いるヒト受精胚は、生殖補助医療に用いる目的で作成されたヒト受精胚であって、当該目的に用いる予定がないもののうち、提供する者による当該ヒト受精胚を滅失させることについての意思が確認されている等、15ページの(1)(4)に挙げられた要件を満たすものが対象になることを規定しています。

 第2章の研究の体制等ですが、飛んで33ページを見ていただくと、研究機関の長の責務という規定があります。今回、この研究機関の長の責務として34ページを見ていただくと、倫理審査委員会の委員に対する教育及び研修の機会を設けなければならない、という規定が置かれています。一方、倫理審査委員会については、この規定に基づいて43ページを御覧いただくと、倫理審査委員会の委員は、研究機関の長が設ける適切な教育及び研修を受けなければならないという規定を置いています。

 ヒト幹細胞若しくはヒト分化細胞の採取、提供に関する規定ですが、45ページを見ていただくと、提供していただく方の人権保護の規定があります。ヒト幹細胞若しくはヒト分化細胞を採取する場合、これらの提供を受ける場合については、文書によるインフォームド・コンセントが必要になりますが、外国で樹立された既存のヒトES細胞に関しては一定の要件の下で倫理審査委員会の承認を得て、その使用を可能とするという細則を設けています。この「一定の要件」というのが46ページの細則に書いてあるような要件です。

 ヒト幹細胞、ヒト分化細胞又は受精胚の輸送に関する規定ですが、53ページを御覧ください。輸送に関して手順書及び記録を作成して保存しなければならない。また指針への適合性について文書により確認しなければならないという規定を新たに置いています。

 第5章の移植又は投与に関する規定ですが、61ページを御覧ください。安全対策等についての規定がありますが、第1に被験者及び提供者の保有する個人情報については、匿名化した上で取り扱うことが規定されているところですが、被験者の安全性を確保するため、匿名化する際は原則連結可能なこととする。つまり匿名化する場合には元に戻せるような形で行っていただくこととしています。ただし、外国で樹立された既存のヒトES細胞については、適切に品質管理され公共の福祉の追求の上で、特に重要であると倫理審査委員会の承認を得たものについては、連結不可能でもその使用を可能とするという細則を置いています。

 リスクの最小化ですが、62ページから63ページです。研究責任者は、ヒト幹細胞臨床研究が被験者へ与えるリスクを最小化して、研究計画を作成するものとするということです。

 これらの見直しの内容については、案の段階でパブリックコメントを行っています。資料5-13ページを御覧ください。418日から517日まで厚生労働省のホームページに案を掲載し、計21件の御意見をいただきました。内容ですが、文言の解釈に関する御質問、内容に関する御提言などをいただいていて、これらのほうも見直しに関する専門委員会の中でパブリックコメントの内容についても御議論いただき、一部反映できるものについては反映しています。

 反映したものとしては、12ページです。例えば試料の保存期間については20年保存するべきだという御意見がありました。20年ということではありませんけれども、改正案では「総括報告書を提出した日から10年以上の必要とされる期間」として、研究ごとの具体的な保存期間は個別に審査して適切に保存することを規定しています。また有害事象として腫瘍形成についても明記すべきという御指摘をいただき、これを直すなどの対応を行っています。資料5-15-2については以上です。

○永井部会長 

それでは、ただいまの説明に御質問、御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

○相澤委員 

ここまで検討された案について異議を唱えるわけではないのですが、検討の過程においては、医療先進国の基準がどうなっているかは参照されたのでしょうか。参照されたのであるとすれば、外国の基準と比べてこの基準はどうなのかについてコメントをいただければと思います。

○堀再生医療研究推進室長 

特にヒトES細胞の使用に関して、諸外国と比べてどうなのかという議論があったと聞いています。諸外国においてもヒトES細胞の使用についてはガイドライン等が整備されていて、例えばアメリカなどにおいては、人で使用できるES細胞については生殖補助医療で作成されたヒト受精胚からのヒトES細胞であること。研究目的で使用することについて、きちんとインフォームド・コンセントが取れているといった、今回のヒト幹指針の改正案と同等の手続が規定されていると承知しています。

○相澤委員 

現在、1つの政策として医療イノベーションということが言われています。国際的な基準と比べて厳しい基準であると、研究が空洞化するおそれがあり、その点について御配慮いただいているかどうか質問いたしました。

○堀再生医療研究推進室長 諸外国に比べて、極端に厳しい内容ではないと承知しています。

○永井部会長 

いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○川越委員 

研究機関の長が、倫理委員会の人に対しての教育、研修の機会を設けろという具合に変わったと伺っていますけれども、これは1つのガイドラインとか何かあるのですか。それとも個々の所で作りなさいという形の教育、研修ということでしょうか。

○事務局 

今回盛り込みました、この新しい倫理審査委員会に関する規定につきましては、臨床研究に関連する幾つかの指針を参照し、それと並びを取った形になっています。例えば今年の4月に施行されたヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針を参考に、こちらも今回新しくしています。

○川越委員 

ES 細胞という、ちょっと特殊な細胞を使うことになりますので、何かその辺の配慮が必要ではないかと思って質問させていただきました。

○事務局 

御指摘のとおり文部科学省のES細胞に関する指針においても、ヒト受精胚の提供機関、樹立機関のそれぞれに倫理審査委員会を設置することを規定していて、かつ、委員の要件についても定められています。今回、ES細胞を適用にするに伴って、それに関する規定を盛り込んだところです。

○永井部会長 

そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。もし御意見がございませんようでしたら、指針の改正案は科学技術部会として了承とさせていただきます。事務局は告示に向けての作業をお願いいたします。続きまして、報告事項にまいります。遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告につきまして、事務局より御報告をお願いいたします。

○松倉専門官 

資料7を御覧ください。資料7は「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」ということで、表紙に記載のある4件の報告が出てきています。上の2つ、九州大学と三重大学は重大事態についての報告です。下の2つ、これも同じく三重大学と九州大学ですが、研究計画の一部変更報告が挙がってきています。

1ページを御覧ください。九州大学からの重大事態報告です。具体的な内容については3ページを御覧ください。3ページの中ほどに重大事態等の発生時期という欄があります。本年331日が発生時期で、細菌性肺炎後に発症したうっ血性心不全による死亡という重大事態です。臨床研究薬を投与してから48か月ほど経っているということです。これについて学内の倫理審査委員会等で評価をしていただいた結果、特に臨床研究との因果関係を示唆するような所見はなく、これは自然経過によるものであろうという判断がなされています。

2件目ですが、7ページからです。三重大学からの重大事態ですけれども、具体的な内容につきましては10ページを御覧ください。10ページの下半分の欄で重大事態等の内容及びその原因という欄です。その1つ上の発生時期の欄を御覧いただくと、発生日は本年427日、内容としては被験者の死亡です。原因は、もともとこの遺伝子治療は食道がんの患者さんを対象とした遺伝子治療ですが、その食道がんの増悪によるもの、つまり原疾患の悪 化によるものと判断されています。この被験者に対して遺伝子導入を行った細胞を投与したのは昨年の4月ですので、約1年後の死亡ということになります。経過としては、もともとあった食道がんの増大が見られ、その後、脳転移などが見られました。放射線療法などが行われたのですが、なかなか改善せず最終的にはお亡くなりになったという経過です。学内の審査委員会の判断としては、遺伝子治療との因果関係はないと判断されています。次は3件目、ここからは変更報告になります。

 (資料7に落丁があったため、差し替えの間、本件に関する説明は一時中断した。)

○中山研究企画官 

今、資料7を準備させますので、資料8-18-28-3を先に報告させていただきます。今年の6月に、政府全体としての各種戦略が取りまとめられていて、それが科学技術イノベーション総合戦略、健康・医療戦略、日本再興戦略となっています。切り口という面で科学技術全般を切り口とするか、あるいは日本再興戦略というのは、毎年策定される成長戦略と言われているものを、どういう切り口でまとめるかという違いはありますが、健康・医療という意味の健康寿命の延伸、健康長寿社会の実現を目指し、それに伴って経済成長の寄与につながる施策を進めていく観点では共通です。それぞれまとまったところは違いますけれども、基本的に健康・医療という観点の中の施策については、当然のことながら政府全体として共通なものが、それぞれの戦略の中に盛り込まれているとお考えいただければと思います。

 健康・医療に関する施策について、その中で一番具体的に取りまとめられているのが健康・医療戦略というもので、資料8-2を御覧いただければと思います。1ページに健康・医療戦略の概要があります。大きな施策の1つとしては、真ん中より少し下にある新技術の創出です。これは、これまでもずっと取り組んできていますけれども、革新的な医薬品や医療機器、再生医療といったものの推進を行うことにより、新技術を創出していこうということ。その中で各省縦割りの予算を一元的に動かすために、これは話題となっていますけれども、日本版NIHという考え方で、医療関連研究開発予算の一元的な管理を目指していくことを、ここでまとめていることになります。

 さらに市場を創出していくという観点で、新しい技術ができれば、それでまた市場は広がっていく可能性がありますけれども、国内市場で言えば公的保険内に限らず、公的保険外で健康に関連するサービスを広げて事業化していくことも、この中で盛り込まれています。

 さらに国内にとどまらず、我が国には優れた医療があるので、そういった医療を海外にも展開していくことにより、そこに医療機器も付随して海外に展開していくことがセットになれば、なおさらいいのですが、そうした海外展開を進めることにより、我が国における市場拡大の期待感が好循環を生んで、新規参入や投資促進にもつながることを目指そうということで、健康・医療戦略がまとまっています。

 健康・医療戦略の主な施策については、科学技術イノベーション総合戦略にも盛り込まれ、614日に閣議決定された日本再興戦略の中にも、しっかり盛り込まれた形になっています。資料8-18-28-3については以上です。

○永井部会長 

ありがとうございます。何か御質問、御意見はありますか。これは科学技術基本計画第4期と、どういう関係になるのでしょうか。

○松倉専門官 

科学技術基本計画は、法律に基づいて5年ごとに定められています。今のは第4期で、これは平成23年度から27年度まで5か年計画としてあります。それは基本としてあった上で、今回のこの科学技術イノベーション総合戦略については、安倍総理から、科学技術イノベーションを進めていくに当たっての長期的なビジョンと、もう1つ短期的な行動計画、ロードマップのようなものですね、それを併せ持ったものを早急に作ってほしいという指示がございましてまとまったものです。内容としては、同時期にまとまっている日本再興戦略や産業競争力会議等での議論とも連携しながら、内容を作り上げたという経緯があります。

○永井部会長 

ほかに何か御意見はありますか。

○西島委員 

今、話が出た日本版NIHについて、こういうことができてしまうと基礎的な研究の資源が減ってしまうという懸念があって、いろいろな学会で心配しているところだと思います。これの現在の状況、今後の動きについて何か情報がありましたら教えていただきたい。

○中山研究企画官 

日本版NIHの検討については、現在、内閣官房の健康・医療戦略室を中心として検討が進められている状況です。具体的にどういった枠組みにするかについては、まだ明らかになっていない状況です。ただし、今、御懸念のある方々からのいろいろな御指摘などは当然届いていますので、そういったことも踏まえつつ検討されている状況と御理解いただければと思います。

○西島委員 

これは、今年度中にできるのでしょうか。

○中山研究企画官 

この日本版NIHについては、今年度にできるということではなくて、これからどういった整備をするかも含めて、まだ確定したものがないので何とも外には申し上げられないのですが、どういった段取りで、どういったものにしていくかを含め、今、検討中としか申し上げられません。

○松田委員 

おそらく日本版NIH構想の中で、基礎的な研究を軽視するなんていうことは、多分、おっしゃったことは一度もないと思いますけれども、私自身がNIHで基礎的な研究をやっていた経験がありますので、もっとアメリカのNIHはこうであるとか、もちろん同じものを作る意図はないと思いますが、決してそうでないということを十分説明していただかないと、何か少し議論が偏った方向にいってしまっているのではないか、そんな気がします。

○中山研究企画官 

確かにNIHという言葉だけを使うと、同床異夢と言いますか、いろいろな方がいろいろなことを思っておられる部分があります。だから、そこについては国としてきちっと、どういったものにしていくのか分かりやすく説明していく時が近くなければいけないと思っています。ただ、いまひとつ言えることは、今まで各省縦割りでの予算を持っていたところを一元化して、必要なところに必要な予算をきちっと付けられる仕組みを作っていくことがまずあって、それをどうしていくかについては、これから分かりやすく説明していくことになると思います。

○門田委員 

今の件に関して、NIHという構想の中で縦割りのものを全体的にというのは非常に耳障りのいい言葉だと思います。しかし、一方で出口戦略、成長戦略ということが表に立ってNIHが出てきていると感じるのです。少なくともメディアなどを見る限り、そういうふうに流れてきているのが、正直言って、基礎研究をやっている人間からすれば非常に不安を感じるところです。松田委員がおっしゃったように、アメリカのNIHはある程度理解されていると思いますが、今、我々が使っているNIHが本当は何かというのは見えていないわけです。見えていないけれども、どうも成長戦略の中のあれというふうに、思わせ振りなところが見え隠れしているところに不安を覚えるのです。そのあたりは、それ以上求めても難しいと思いますが、もう少し理解がフォローできる形を是非示していただきたいと思います。

○桐野委員 

必要な所に必要な研究費を届けるために、NIHを作るという言葉が出てきたのですが、我が国の研究費の最大の問題は総額が足りないということであって、その問題を無視してこれをやりますと、まさに今言ったようなことが、そのとおり起こると思います。つまり、ボトムアップ研究を取っ払ってトップダウン研究に付け替えていくということが起きますので、著しい逆効果になることは、この部会でも是非意見として出していただきたいと思います。

○中山研究企画官 

今、御指摘いただいた点は十分踏まえさせていただきたいと思いますが、この健康・医療戦略について、今、説明できる範囲でということで説明させていただくと、資料8-22ページですけれども、日本版NIHと言っているものについて、今、公になっている部分はこういったものであるということです。指令塔本部として内閣に総理・担当大臣・関係閣僚からなる推進本部を設置し、そこにおいて大きな方針決めをする。さらに、その下に一元的な研究管理の実務を行う中核組織を創設します。これは新独法ということになろうかと思いますが、スクラップ・アンド・ビルドの原則に基づいて行うことも注書きで書いてあります。3点目として、研究を臨床につなげるために、国際水準の質の高い臨床研究・治験が確実に実施される仕組みを構築していく。これは既に臨床研究中核病院や早期・探索的臨床試験拠点といったものがありますので、そういったものを引き続き生かしながら、国としての臨床研究拠点を整備していく。この三本柱をまとめて日本版NIHと言っているのが、現時点まで公になっている部分になろうかと思います。

○今村委員 

医療イノベーション計画については、当然のことながら賛意を示しますけれども、このことが語られるときに公的給付をそのままにしておいて、あとの医療・健康に関わる部分を、個人の責任でどうこうしようという意見がよく出てくるし、今もそのような発言であったように聞こえますが、これは厚労省として十分気を付けてもらわないといけないわけです。国民の健康を守るというのは中央省庁の中では厚労省が中心になるべきで、ほかの省庁が産業化に目を向けがちなときに、国民の健康は厚労省が守るということ。いろいろな科学技術の進展の恩恵は、なるべく国の責任において国民に還元する、公的給付の中に持ってくることを、厚労省はたびあるごとに言っていただきたいと思うので、あえて言わせていただきます。

○玉腰委員 

今の今村委員の発言に追加したいと思います。健康日本21の第2次でも健康格差を縮小しましょうという話になっているところに、この公的な話で民間のところにいろいろなものを投げていくと、どうしても差が広がる方向に行きますので、そこの部分については十分に配慮いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○永井部会長 

そのほか、いかがでしょうか。

○相澤委員 

研究開発の総額が大きくならなければ、医療イノベーションを実現しようとしても、なかなかうまくいかないと思います。制度を検討するときに、どうしたら投資額が増えるかについては十分御配慮いただきたいと思います。

○永井部会長 

ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしよろしければ先ほどの資料の飛んでいた部分について、もう一度、御説明いただけますか。

○松倉専門官 

資料7を御覧ください。先ほどは大変失礼いたしました。お配りし直した新しい資料に基づいて御覧いただければと思います。1つ目の九州大学からの重大事態報告につきましては、先ほど御説明した3ページに記載がありますように、臨床研究薬の投与から48か月後に細菌性肺炎を発症し、それに伴ってうっ血性心不全による死亡ということで、学内の審査委員会の判断としては、特に因果関係を示す所見はない、自然経過によるものであろうという判断でした。

2つ目、7ページからですが、三重大学からの重大事態報告です。具体的な中身は10ページを御覧ください。真ん中より少し上ほどに重大事態等の発生時期とあり、本年427日、その下、内容としては被験者の死亡、原因は食道がんの増悪です。こちらは、もともと食道がんを対象とした遺伝子治療臨床研究でしたので、被験者はもともと食道がんを抱えていました。それが悪化して脳転移や肝転移などがあり、放射線治療などを受けたのですが、最終的に食道がんによってお亡くなりになったという経過です。臨床研究薬の投与からは約1年経過していたということです。こちらも学内の審査委員会の判断としては、臨床研究との関連性はないという判断をしています。

12ページを御覧ください。12ページからは三重大学からの変更報告です。こちらの変更内容については15ページを御覧ください。15ページの真ん中より少し下に変更内容、変更理由という欄があります。先に変更理由を御覧いただくと、人事異動により、総括責任者以外の研究者の削除及び所属職名等を変更したということで、人事異動による研究体制の一部変更です。内容につきましては、別紙116ページから18ページにかけて付いていますので御覧いただければと思います。

 最後、19ページからを御覧ください。九州大学からの変更報告です。変更内容については22ページを御覧ください。22ページの中ほどに変更内容、変更理由があります。細かい変更が幾つかあるのですが、1つは、先ほどと同じように人事異動等による研究者の一部変更です。あとは、この厚生科学審議会の審査委員会での指摘等があり、それを反映させるための修正、その他誤記の修正等がありました。具体的な修正内容につきましては23ページ以降に新旧対照表があります。細かいので説明は省略させていただきますが、先ほど申し上げたような概略の修正がありました。

 これら4点の報告について、いずれも審査委員会の委員の先生方に見ていただき、特段異議はなしということでしたので御報告いたします。以上です。

○永井部会長 

何か御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。もしよろしければ了承とさせていただきます。以上で議事は終了です。事務局から連絡事項等お願いいたします。

○中山研究企画官 

本日、資料の一部について不手際があり大変申し訳ありませんでした。今後、ないようにしたいと思います。次回の日程につきましては、改めて日程、開催場所について委員の皆様に御連絡を申し上げたいと思います。事務局からは以上です。

○永井部会長 

これで本日、終了といたします。ありがとうございました。


(了)
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