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あさコラム vol.55
感染症エクスプレス@厚労省 2017年5月26日
ライラックの花
こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
山形県を中心に発生していた麻しんの流行も5月25日現在、ようやく治ま
りました。
関係者の皆様のご尽力に、深く感謝申し上げます。
とはいえ、世界の流行状況を踏まえますと、海外からの輸入麻しんを端緒
にした国内の感染拡大については、まだ予断は許せません。
今後とも麻しん予防につきまして、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、先日の5月18日(木)19日(金)、公益財団法人結核予防会総裁の
秋篠宮妃殿下紀子様のご臨席を賜り、第68回結核予防全国大会が北海道札幌
市で開催され、私も大会式典をはじめ、結核予防会支部長会議や研鑽集会、
特別講演、ビデオ上映などに参加してまいりました。
19日の大会式典の席上では、結核予防に大きな功績があった方々に「秩父
宮妃記念結核予防功労賞」が授与され、総裁から受賞者お一人づつに対して、
壇上にて表彰して頂きました。
前回の結核予防全国大会(神奈川県開催)で大変お世話になった横浜市保
健師・菅野美穂さんも受賞され、私も直接、お祝いの言葉を申し上げてまい
りました。
式典の前日(18日)に行われた研鑽集会では、大会開催地地元の北海道大
学大学院呼吸器内科学分野教授・西村正治先生からCOPD(慢性閉塞性肺疾患)
について、ご講演がございました。
スパイロメトリー検査の重要性や禁煙の有効性など、専門家の立場から
COPD対策について教えていただきました。
その後、行われたシンポジウムでは、座長の北海道保健福祉部技監の山本
長史先生、結核予防会結核研究所長の加藤誠也先生、そして西村教授のリー
ドのもと、パネリストの方々が各々の立場から発表されました。
パネリスト一番手の一般社団法人日本結核病学会理事の鎌田有珠先生から
は、感染と発病について、わかりやすくお話をいただきました。また、結核
におけるIGRA(イグラ)検査の有効性や感染段階での対策の取組、潜在性結
核のハイリスクグループの対応強化について、ご提言がございました。
次のパネリストの公益財団法人北海道結核予防会医長の奈良祐介先生から
は「北海道における各種検診事業の展開」ということで、北海道結核予防会
の活動についてご紹介いただきました。一年を通じて、道内各地で結核、肺
がん、さらにはCOPD検診や結核の接触者検診に地道に取り組まれており、頭
の下がる思いです。デンジャーグループや医療従事者の雇い入れ時のIGRA検
査や高齢者施設への対応など、活動を幅広く展開しているとのこと、今後も
大いに期待しているところです。
上川保健所健康推進課の深津恵美課長からは「北海道道北ブロックの結核
対策推進事業」の発表がございました。かつて「でっかいどう北海道」とい
うキャンペーンがございましたが、5県分に相当する広大な道北ブロックにお
いて、DOTSカンファレンスの取組や高齢化に伴う糖尿病など合併症の管理に
も目を配る統合的な結核対策の取り組みに、公衆衛生関係者の一人として感
銘を受けました。保健所は結核対策の中心機関です。今後とも、医療機関等
との連携を図りながら、地域の結核対策をリードして頂けたらと、切に願っ
ています。
札幌北訪問看護ステーションの正門まゆみ所長からは「訪問DOTSの現状」
についての発表がございました。厚生労働省も「結核に関する特定感染症予
防指針」を改正し、患者様中心のDOTSの推進をポイントとして取り上げたと
ころで、まさにタイムリーな取り組みです。札幌市北区において「薬カレン
ダー」の活用や連絡ノートによる情報共用など、きめの細やかな訪問DOTS事
例の紹介は大いに参考になりました。地域結核対策における医療と介護の連
携の重要性について、改めて感じた次第です。
北海道健康をまもる地域団体連合会の齋藤芳子会長からは、北海道におけ
る結核地域団体の活動として、婦人会活動の歴史を中心にお話がございまし
た。複十字シール募金活動をはじめ、昭和の時代から50年にも及ぶ様々な地
域活動の根底に流れているのは、まさに「アンビシャス精神」。歴史の重み
を感じるお話をされていた齋藤会長が、北海道開拓史を描いた映画「北の零
年」の吉永小百合さんのように段々と見えてきたのは私だけでしょうか。今
後も連合会のご活躍を期待しております。
以上がシンポジウムの概要ですが、結核対策は北海道日本ハムファイター
ズの大谷翔平選手のごとくです。
すなわち、(1)予防の普及啓発と(2)早期発見・早期治療の「二刀流」です。
北海道の人口10万対の結核り患率は9.9(2015年[平成27年])と、10.0を
切って低まん延化しているのは、この二刀流が十分機能しているからだと、
北海道で活躍されているパネリストの皆様のお話を聞いて感じました。
これから、ライラックのシーズンを迎える北海道。
このライラックの花のごとく、北の大地で結核対策の花が咲き、さらにそ
の花が全国に広がるように、結核対策の前線に立つ全国の関係者の皆様の取
り組みについて、結核予防会と連携して支援してまいります。
「結核は、ひとごとじゃない。」
2020年(平成32年)までにわが国が結核低まん延国となるために、皆様か
らのご協力を賜ります様、どうぞよろしくお願いいたします。
<結核(BCGワクチン)>
第68回結核予防全国大会会場にて
「結核は、ひとごとじゃない。」(協力:ACジャパン)
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