平成30年度第1回安全技術調査会

医薬・生活衛生局血液対策課
○日時  平成 30年 7月 18日(水)15:00~19:00
○場所  新橋会議室 8階 8会議室
○出席者 
    出席委員:(6名)50音順、敬称略、◎委員長
      内田 恵理子   大戸 斉   岡田 義昭   熊川 みどり   白坂 琢磨
      長村 登紀子   ◎濱口 功   溝上 雅史   山口 照英     横田 恭子   脇田 隆字
          事務局:
                 一瀬 篤 (血液対策課長)    山本 匠(血液対策 課長補佐)


○議題:
   ・感染症安全対策整備事業について
   ・NATコントロールサーベイ事業について
   ・輸血用血液製剤のHEV 安全対策について
   ・血小板製剤に対する感染性因子低減化技術の導入の検討について
   ・日本赤十字社におけるヘモビジランスについて
   ・血漿分画製剤のE型肝炎ウイルスの安全対策について(非公開)
   ・その他
 

○山本()血液対策課長補佐 定刻となりましたので平成30年度第1回血液事業部会安全技術調査会を開催いたします。なお、本日の会議は議題6の一部のみを非公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。

 本日の出席状況ですが、安全技術調査会委員11名中10名の出席を頂いております。なお、長村委員より遅れて出席される旨を御連絡いただいております。本日は、日本赤十字社血液事業本部より佐竹正博血液事業経営会議委員、宮作麻子技術部次長、平力造技術部安全管理課長の3名に参加いただいております。よろしくお願いいたします。また、参考人として、国立感染症研究所血液・安全性研究部より松岡佐保子室長、倉光球主任研究官に参加いただいております。

 続いて、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。カメラの頭撮りはここまででお願いいたします。以降の進行を濵口委員長にお願いいたします。

○濵口委員長 皆さん、こんにちは。暑い日が続いておりますが、今日も暑い日となりました。御参集いただきましてありがとうございます。それでは、事務局より本日の議題に関する資料の確認をお願いいたします。

○山本()血液対策課長補佐 事務局から資料を確認いたします。まず、1枚目に議事次第があります。続いて座席表、委員名簿と続きます。続いて、安全技術調査会の設置要綱です。次に、資料1、資料2-1、資料2-2が続きます。資料3、資料4-1、資料4-2、資料4-3、資料4-4となります。続いて資料5と資料6が1枚ずつあります。資料の確認は以上です。不足がございましたら、事務局までお知らせください。

○濵口委員長 それでは、議題1「感染症安全対策体制整備事業」につきまして、倉光先生より報告をよろしくお願いいたします。

○国立感染症研究所(倉光) 感染症安全対策体制整備事業の実績報告をいたします。1.事業の目的です。最後の4行目の所にいっていただきまして、平成25年度より上記を含む新たな病原体、これは海外で問題になっている病原体、例えばデングウイルスやチクングニアウイルスやジカウイルス等を示しています。それらが国内へ侵入した場合に備えて、実効性の高い対策として厚生労働省血液対策課、日本赤十字社との連携の下、感染症リスク管理体制の整備を行ってきました。平成29年度は以下を実施しました。

 2.実施内容。()()()とありますが、順に説明いたします。()チクングニアウイルス・ジカウイルスの高感度マルチプレックス核酸検査法の開発。これまで本事業においてチクングニアウイルス・ジカウイルスの高感度核酸検査法を開発してきましたが、本年度はこれらの2つのウイルスをワンチューブで同時検出可能なマルチプレックス系の確立を目指しました。

 検討内容は図1に示しておりますが、これまでチクングニアはプライマー・プローブを2セット、ジカは3セット同定いたしましたけれども、これらの組合せを作って最も優れた検査系を検討しました。結果としては、チクングニアの117とジカの177のプライマー・プローブセットが最も優れているという結論になりました。

 そこで、この2セットをマルチプレックス化して、非特異反応をまず調べました。表1を御覧ください。デングウイルス、ウエストナイル、黄熱、日脳及びヒトのDNA/RNAを鋳型として非特異の反応が出るかを確認したところ、非特異反応は認められませんでした。さらに表2を御覧ください。既知の濃度の検体を用いて検出感度を確認しました。チクングニア100copies/mL、ジカウイルス100IU/mLのところで、n=8で全て100%検出できたことから、このマルチプレックスの検出系は優れた感度があるということを確認しました。

 ()献血で検査落ちとなった血液検体におけるデングウイルス、チクングニアウイルス及びジカウイルス核酸検査の実施。日本赤十字社の協力のもと、平成29年度に検査落ちとなった血漿の20人プール、100検体、合計2,000人分について、これまでに開発したデングウイルス、チクングニアウイルス・ジカウイルスの核酸検査を実施いたしました。その結果は図2を御覧ください。陽性コントロール以外、検体では全て「検出せず」と判定されました。また、チクングニアとジカのマルチプレックスについては、日本赤十字社にも測定をお願いしたところ、全て陰性で、同じ結果となりました。

 ()海外における血液安全に関する情報の収集及び交換。WHOの血液安全に関するカンファレンスに定期的に参加するとともに、各国の血液行政に携わるネットワーク会議に加盟し、活動することにより、感染症リスクの早期察知及び評価に基づく安全対策の検討を行いました。3.考察と課題は省略いたします。

 4.結論です。昨年度はこれまでに本事業で開発したチクングニアウイルス及びジカウイルスの高感度核酸検査系を組み合せ、同時検査系を確立いたしました。今後の血液製剤の安全性確保につながることが期待されます。

 5.本年度の予定です。南米やアフリカのアンゴラ等でアウトブレイクが報告されている黄熱ウイルスに対して高感度核酸検査法の開発を進めていきたいと考えています。以上です。

○濵口委員長 委員の皆様方から御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

○大戸委員 3ページの「結論」の所で、「献血血液などのスクリーニングに適していると考えられる。本検査系は今後の血液製剤の安全性確保につながる」とありますが、具体的にはどこまで意味しているのか、具体像を見せてもらえると有り難いです。

○国立感染症研究所(倉光) 国内への移入が発覚した場合に、核酸検査法があるということは非常に強い武器になると言いますか、何か起きたときに速やかに対応できるというところで準備しているということです。

○濵口委員長 私からよろしいですか。これはあくまでも国内に今はないけれども、今後入ってきた場合に、こういうPCR系を動かせるような状況を、感染研としては開発しておく。そして、実際に使うのは、多分感染研ということよりも日本赤十字社ということになろうかと思いますので、先ほど説明がありましたように、感染研、厚生労働省、日本赤十字社と協力をしながら、こういう技術を開発して、万が一のときのために対応しておくところです。ですので、まだ具体的にこれをどう活用しているかという例はございません。ほかにいかがでしょうか。

○岡田委員 この事業は国内で小規模で起こったときに、ローカルで対応できるということが1つの目的でもあるし、あとはデングウイルスのときに、代々木公園の感染が問題になる1年前に既に代々木公園でデングウイルスの感染は起こっていたのです。そういうのも、この系を使って、表面上は起こっていないことになっていても、献血血で、特に海外からの人が多く集まる東京の血液を調べていることによって、ある程度サーベイのようなものの役に立って、たまたま陽性になれば、ごく僅かでも日本に入ってきているというのが早期に分かるので、そういう面では、日本中に広がってしまっては困るのですが、その前の小規模な流行のときに、この系は非常に役に立つと思いますので、今後もいろいろなウイルスが国内に入ってくるかもしれませんので、それをこつこつと。全て陰性であることが一番いいのですが、発生に備えて準備しておくということで、この事業は非常にいいと思います。

○濵口委員長 ほかにいかがでしょうか。それでは、ただいまの御意見も参考に、今年度の事業の実施もお願いしたいと思います。それでは、議題2「NATコントロールサーベイ事業」について、松岡先生から御報告をよろしくお願いします。

○国立感染症研究所(松岡) 2017年度のNATコントロールサーベイ事業の実績を報告いたします。1.事業の目的の2段落目から御覧ください。2017年度は新しいマルチプレックス法におけるHIV-1 NATの特異性の実情把握を目的として、WHO HIV-1のサブタイプパネルを用いた第9回NATコントロールサーベイを輸血用血液のNATスクリーニング試験とHIV-1確認試験を対象として実施しました。

 実施内容ですが、参加施設は資料2-2の表1に示したように、輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設の日本赤十字社のBBCです。オブザーバーとして試薬メーカー1施設と研究施設1施設が参加しました。パネルの調製内容については表2に示していますように、材料として第2次HIV-1サブタイプのWHO国際参照パネル、第3次HIV-1 RNA WHO国際標準品、第1次HIV-2 RNA WHO国際標準品、及び第1次HIV RNA国内標準品を使用し、希釈には献血血液由来の陰性血漿を用いました。NATガイドラインにおける輸血用血液製剤のHIV-1 NATの目標感度の1倍濃度に当たる200IU/mLに検体を希釈し、陰性検体、また更に国際標準品と国内標準品目標感度の0.5倍濃度に当たる100IU/mL0.25倍濃度に当たる50IU/mLの検体を作製し、これらの検体からなるパネルを調製し、ブラインド化して参加者に送付いたしました。

 測定ですが、輸血用血液製剤のNAT実施施設と研究施設は、ノバルティスファーマ株式会社の機器試薬を用いて測定しております。この試験法は個別検体のスクリーニング試験とスクリーニング陽性検体のウイルスを識別するための識別試験からなっています。参加施設はスクリーニング試験とHIV-1識別試験の両方の試験法を用いて検体ナンバー01から検体ナンバー18について、日を変えて2回測定しました。ただし、ナンバー06とナンバー18は原料に用いた検体の力価が低かったために、1回のみの測定となりました。試薬メーカー施設はコバスTaqScreen MPXを用いて測定しています。この試験法は3ウイルスを検出すると同時に、種類を同定します。同様の測定方法を行いました。

 結果は表3、表4にお示ししますように、日本赤十字社ブロック血液センター全8施設において、改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、スクリーニング試験法とHIV-1確認試験法の両方において、HIV-1に関する精度管理が適切に実施され、全施設においてHIV-1サブタイプA、B、C、D、AE、F、G、AG-GH、N、及びOのHIV-1を検出できることを確認いたしました。陰性対象は全て陰性と判定されました。また、国際標準品及び国内標準品を用いて作製した200IU/mL検体、100IU/mL検体、50IU/mL検体全て検出できることを確認いたしました。また、HIV-2検体も検出を確認しました。研究施設及び試薬メーカーのNATも同様の判定が正しく判定されていることを確認いたしました。

3.考察です。今回のNATサーベイにて、日本赤十字社ブロック血液センターにおいて、マルチプレックス法を更新後も、全施設においてHIV-1に関する精度管理が適切に実施され、HIV-1サブタイプA、B、C、D、AE、F、G、AG-GH、N、及びOを検出できることを確認いたしました。また、国際標準品及び国内標準品を用いて作製した低濃度検体の検出も可能でした。機器の性能を鑑み、現在のNATガイドラインで定められている輸血用血液製剤のHIV-1 NATの目標感度(200IU/mL)を原料血漿プールのHIV-1 NATの目標感度(100IU/mL)と同等に変更することについて、今後検討していくことが可能と考えられました。

 2018年度の実施計画ですが、同様にHIV-1 NATの特異性の実情把握を目的として、サブタイプパネルを用いた第9回NATコントロールサーベイを原料血漿プールのNATを対象として実施します。また、2019年以降は、HCV NATの特異性の実情把握を目的としてHCVの遺伝子型パネルを用いた第10回NATコントロールサーベイの実施を計画しています。しかしながら、現在HCV遺伝子型パネルがWHOで制定されていないため、国立感染症研究所で国内献血血液のHCV陽性検体を譲渡していただき、HCVの遺伝子型パネルを作製し、多施設共同研究にて国際標準品に基づいた力価を策定し、パネルを精製する予定としています。

 また、6番ですが、NATコントロールサーベイの実施手順書の作成についてです。今回WHOのサブタイプパネルを用いたサーベイを実施するに当たり、検体作製時に希釈前のパネルのRNA定量検査を実施したところ、表示力価と定量結果に乖離が認められ、表示力価よりも定量結果が大きく低値であった検体については、表6に示すように、検体のばらつきが大きく、希釈目標値の200IU/mLを下回る検体が散見されました。サーベイ用検体のウイルス濃度のばらつきが大きい理由としては、低力価に希釈調製する場合、希釈検体のウイルス濃度のばらつきが大きくなることやNATがサイクル単位の検査である以上、数倍の誤差はやむを得ないことなどが考えられましたが、NAT試験法の改良に伴い、NATの目標感度は低濃度に制定されているため、1倍濃度以下の検体では希釈調製の結果ばらつきが大きくなり、サーベイにおける検出の判定に影響を及ぼす場合があるため、国立感染症研究所、日本赤十字社、厚生労働省が協議した結果、低濃度の検体をサーベイに用いたときの判定や再検査の手順等について文書化しておくことが望ましいと考えられましたので、これを機に国立感染症研究所がNATコントロールサーベイの実施手順書を作成いたしました。以上です。

○濵口委員長 ただいまの御報告に関しまして、委員の先生方から御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。

○山口委員 ナンバー2でしたか、希釈によって定量値がばらつくと。目標値は200IU/mLに設定したのだけれども、実際に測定してみるとかなり定量値がばらついているという理解でよろしいですよね。

○国立感染症研究所(松岡) はい。

○山口委員 もともと、こういう低濃度を作るときには希釈の誤差は非常に出るのと、このように特定のものだけに出る可能性があるときというのは、ひょっとしたら凝集体があったりして、採取によってそういう違いが出てくるということがあると思うので、恐らく今後やられるときも、サーベイに用いられるものの、そういうばらつきのあるものについては、100IU/mLを目標に次年度やられると思うのですが、そのときも必ずしも実際に100IU/mLを分取できているかというのはかなり微妙なところにはなってくるとは思うので、ある意味コントロールサーベイでも、実際に100IU/mLをクリアしているかどうかが問題ではなくて、大体の実態を把握するところにこのコントロールサーベイの目的があると思うので、そういう意味では、こういうものだということは重要な情報ですし、そういう点で今後もそのようにサーベイをしていただければと思うのですが。

○国立感染症研究所(松岡) ありがとうございます。

○濵口委員長 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、ただいまの御意見を参考に、今年度のNATコントロールサーベイの実施もよろしくお願いいたします。

 それでは、議題3「輸血用血液製剤のHEV安全対策について」、日本赤十字社より御報告をお願いいたします。

○日本赤十字社() 資料3に基づいて御説明いたします。輸血用血液製剤のHEV安全対策についてです。まず、輸血用血液製剤のHEV安全対策については、昨年度の第1回安全技術調査会、第2回運営委員会の指示を受けまして、試行的にHEV-NATを実施している北海道で製造した血液を、その適応となる臓器移植患者に限定して全国に供給すること、また、HBV・HCV・HIVに加えHEVも同時に検出する開発試薬(4価NAT試薬)による全数検査を実施することについて、検討を進めてきたところです。今般、現時点で考え得る安全対策と課題を、HEVのスクリーニングという観点からと、献血者及び医療機関の対応というものに分けて以下のとおりにまとめましたので、その検討結果について報告いたします。

 2番目の課題です。こちらはスクリーニングという観点でまとめております。めくっていただいて別表を御覧ください。HEVの安全対策に関して、まず検査方法です。献血いただいた血液を全て検査するという全数検査と、適応のある患者、臓器移植患者で前回報告している年間6,000本程度、それと免疫抑制状態の全ての患者に該当すると年間150万本から200万本というところに分けて、NATの試薬の在り方ごとに、課題等について、今、日赤が使用しているシステムの改修であったり、検査機器や設置場所がどうなるのか、それと導入の準備の期間をまとめましたので、御報告します。

 まず、全数検査をした場合で4価NAT、いわゆる新しく開発をする試薬ですが、こちらを全施設でやるとした場合、システムについては改修が若干必要になりますが、検査機器、設置場所、いわゆるハード面のところで機器の追加は必要がないということになります。そういうことですので、設置場所についても拡張の必要はないということです。現在、こちらに関しては試薬メーカーと3月末に試薬の開発契約を結び、進めていっているところです。そういう中で導入準備期間として2年程度の時間は要するのではないかと考えています。こちらの中で検討事項としては、4価NAT試薬の開発と評価、それと試薬の変更に伴うシステムの改修ということです。

 一方、全数調査を今北海道で現在実施しているHEV NATと別にやった場合にどういうことが起こるかというと、これに関しては今北海道でシステムが構築されていますので、システムの改修は不要ですが、検査機器は、検査を2つやるので台数が倍要ります。今、全国で49台の機器が稼働しておりますので、あと49台を購入ということになります。それと、こちらも検査機器を設置するためのスペースの問題等で施設の拡張が必要な所も出てきます。こういうことを考えると、なかなか導入の期間に関しては、すぐにいけるというものではないというのが現状です。

 続いて、選択的検査、まずは臓器移植ということで特定して年間6,000本ということで見た場合です。いわゆる北海道で実施しているものを有効活用するということになると思います。こちらについては、当然のことながら検査結果の判定をするシステムの改修が必要になってきます。こちらに関しては、北海道でやっているものを有効活用しますので、機器などの設置場所の必要はありませんが、こちらもシステムの改修等を踏まえますと、2年程度の時間がかかると考えています。また、血小板製剤が必要となった場合に有効期間が短いということで、対応困難な可能性がかなり残っているとともに、適応患者を特定することに対する医療機関の理解と協力がなかなか厳しいということと、配送ルートの問題があります。北海道から物を送るに当たって、ハブのような所があるわけですので、なかなかそこも困難ということです。あと、HEVの未検査の製剤があるので、そういう意味では供給の過誤防止をするためのシステムに時間がかかるというところです。

 続いて、選択的検査の中で適応となる患者を免疫抑制状態の患者ということで拡大した場合、年間150万本から200万本という数になってしまいます。この中で検討しても、検査数が増えますので、検査機器が増加する必要があるということと、それに伴う設置場所の拡張が必要になってきます。それとともに、システムについても改修が必要ということになりますので、導入準備期間も早急には難しいということが検討結果として挙がっています。

 戻っていただいて、こちらをまとめますと、現在、4価NATの試薬開発については2年程度かかることを見込んでいます。HEVスクリーニングのため4価NATを導入する場合、検査機器や試薬の保管設備の増設は不要で、試薬代もHEV単独の試薬を導入するよりもはるかに少額となる可能性が高いということが分かっています。なお、4価NAT試薬の開発においては、B、C、Iの検出感度に影響することなく、HEVの検出系を追加する必要があり、今の初期段階ではありますが、データを見せていただいている限りにおいては、情報を得て、我々としては可能であると判断しているところです。

 次に、HEVスクリーニングを導入するとして、現行NATと別にHEV NATを行う場合には、先ほどお話したとおり、機器も倍ということ、今の試薬の費用を充当することして、試薬代だけでも年間40億円という額が必要になるという点と機器の問題等があって、なかなか困難な状況という認識をしております。

 続いて、北海道で製造したHEV検査済みの輸血用血液製剤を、対象患者を限定し全国へ供給するためには、適応患者を特定することについて、医療機関の理解と協力が必要であること。あとは、こちらの過誤防止が難しいということで、システムの改修が必要だと認識しております。

 続いて、献血者と医療機関対応というところで見させていただきますと、これまで問診で肝炎ウイルス感染のおそれのある献血者を排除するため、献血者本人の健康状態や家族等の肝炎の有無について確認してきましたが、肝炎にE型肝炎が含まれること、それと加熱不十分な豚肉等によりE型肝炎ウイルスに感染する可能性があること、このような肝炎ウイルスは献血者本人に症状がなくても輸血を受ける患者に影響する可能性があることなどは献血者には認識されておりません。そういう中で、3月からはこういうHEVの感染、豚肉の生食問題などをポスターなどで献血者には周知していく活動を進めております。

 これらのことから、検討結果としては、輸血用血液製剤によるHEV感染の抜本的な再発防止対策は、全ての献血血液に対するHEVスクリーニングの導入であり、4価NATの導入が最も適切だということで考えております。こういう中で開発を進めているという状況下にあります。4価NATの導入までの期間は、献血者に対するHEVの経口感染リスクの注意喚起による自主的な献血辞退を促す対策を導入することとし、献血会場におけるポスター掲示等により、加熱不十分な豚肉、猪肉、鹿肉、ジビエ等の喫食によるHEV感染リスク及び献血血液、輸血を受けられる患者への影響についての周知というものを、本年3月より開始しております。併せて献血者には、体調や肝炎にかかる問診を徹底することの対応をしております。また、医療機関等に対しては、改めて輸血後にE型肝炎が発生することがあること、また感染が疑われた場合は適切な対応が必要であることを輸血情報媒体を使って周知している状況下にあります。私からの報告は以上です。

○濵口委員長 それでは、委員の皆様からの御意見を賜りたいと思います。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。山口委員、何かありますか。

○山口委員 4価NATを導入していただけるという方向で考えていただいているということで、それは非常に結構だと思っています。

 追加でお聞きしておきたいのは、多分、国内献血を使って製造している血漿分画製剤のことにも関与してくると思うので、その導入時期にその辺の対応を是非、今コアランチと言うか、保管されているものの検査とか、そういうのは自主生産されてくるケース、そういうものに対する影響を考えておいていただければと思っております。

○濵口委員長 よろしいでしょうか。

○岡田委員 今、E型肝炎は届出になっているので、感染者数の中に輸血関連というのがごく少なくて、ほとんどが経口なのです。ですので、いくら血液をきれいにしても食べ物から感染するほうがはるかに多いのです。

 ですので、例えば免疫抑制状態の人がこういう生の肉を食べたり、調理法が不十分なものを食べると、そちらのほうで感染して持続感染する可能性もあるということで、ちょっと場違いかもしれませんが、例えば病院に厚労省から、そういう免疫抑制状態にある患者には、経口でE型肝炎に感染するリスクがあるから、食べ物に注意するようなことを促すというようなことも必要ではないかと思います。

○濵口委員長 これは血液対策というよりも、どちらかと言うと食品とか、そういったところに関連することかなと思うのですが、血液対策課としても、お考えはどのようになっていますでしょうか。

○一瀬血液対策課長 食品衛生対策につきましては、病院に限らず広く国民一般に対して充分に加熱したものを食べてくださいということを周知しております。

○日本赤十字社(佐竹) 関係の研究班に出ておりまして、そこでE型肝炎等のセッションでは、そこでの臓器移植の先生の所では、入院中の患者に対しては感染源となるようなものは食べないようにという周知をされているとなっていますので、血液内科のほうは分かりませんが、そこに出席されていた臓器移植関係の先生方については、非常に周知がされているかと思います。

○濵口委員長 よろしいでしょうか。先ほど少しありましたように、輸血後のE型肝炎の可能性ということについても、今年の1月か2月だったと思いますが、血液対策課から臨床医に向けての連絡が行っていると思っております。ますますそれぞれの所で対策を強化していただければと考えております。ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、ただいまの議論を参考に安全対策の検討を日赤では更にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは、議題4「血小板製剤に対する感染性因子低減化技術の導入の検討について」ということで、日本赤十字社よりお願いいたします。

○日本赤十字社(宮作) 資料4について説明します。まず「はじめに」です。2016年8月に開催された本調査会におきまして、感染性因子低減化技術導入の目的や受血者の利益等について、改めて検討することとされました。一方、2006年に現行の細菌対策、これは問診、穿刺部位の選択、消毒の徹底、初流血除去、白血球除去、外観確認等ですが、以来、血小板製剤による細菌感染症例は年1例程度で推移してきました。しかし2017年に3件の感染症例の報告があり、このうち1件は、これらの安全対策導入後、初めての細菌感染(疑い)死亡事例となりました。これについては別紙1、資料4-2に一覧表があるので御覧ください。今般、こうした状況等、最近報告された臨床試験の論文等を踏まえまして、低減化技術導入の目的等について再整理しましたので、報告いたします。

 2番目、低減化技術導入の目的です。現時点における低減化技術導入の主目的は、以下の理由により、血小板製剤の細菌混入対策と考えています。血小板製剤は室温で保存するため、冷所保存の製剤に比べて細菌が増殖しやすいこと。輸血細菌感染症の報告はまれであるが、発生した場合は重篤となること。血小板製剤に細菌が混入する経路は遮断できない場合が多いこと。これはドナーの菌血症等です。また、細菌のNATや血液培養検査では偽陰性があり、十分に対応できないこと。なお、細菌混入汚染対策として、低減化技術を導入することにより、感受性のあるウイルスに対しては感染予防効果が期待でき、既にスクリーニングしているウイルスのウィンドウ期のリスクをなくすこともできます。

 デング熱等の新興・再興感染症のウイルスに対しては、基本的には以下のような対策を考えています。輸入感染症に対しては、現在も実施している帰国後4週間の献血延期で対応すること。国内での感染に関しては、赤血球製剤や血漿製剤にも対応するために、献血者への問診の強化、特定された発生地域における献血制限及び検査法の開発等が必要であること。

 次のページです。3番目としまして、低減化技術導入により予想される影響についてです。別紙2、資料4-3に詳細が記載してあります。血小板製剤に対する感染性因子の低減化技術の比較をまとめています。これを基に、低減化技術導入により予想される影響を、下表にまとめました。また、最新の臨床試験報告及びヘモビジランス報告がありますので、これらの報告における低減化技術の評価の概要も下に示しています。まず、低減化技術導入により予想される影響です。メリットといたしまして、患者・医療機関に対しましては、細菌及び新興・再興感染症伝播リスクの減少。血液事業に関しましては、X線照射、CMV抗体検査の省略の可能性があります。デメリットといたしましては、患者・医療機関にとっては、血小板品質の低下、これは活性化、代謝の亢進、凝集能の低下等です。補正血小板増加数(CCI)の低下、輸血回数の増加、医療費の増加等が懸念されます。血液事業に関しましては、採血単位数、供給本数、業務量、コスト等の増加が懸念されています。

 1)は、臨床試験における低減化技術の評価の報告です。幾つか報告がまとまってきております。1つ目はマル1コクランレビュー、これはミラソルとインターセプト、両方が含まれているメタアナリシスです。評価の概要といたしましては、低減化処理群と非処理群の血小板輸血を比較するとき、WHO基準グレード2以上の出血症例の発生率に差はありませんでした。これはmoderate-quality evidenceです。低減化処理群の患者は、血小板の輸血量が多く(high-quality evidence)、輸血間隔も短い傾向が見られました(moderate-quality evidence)。低減化処理群のCCIの24時間値は、未処理群より小さくなりました。これもhigh-quality evidenceとなっています。

 2つ目のマル2です。これはPREPAReS study対象はミラソルです。試験の実施国としましては、オランダ、ノルウェー、カナダです。評価の概要としましては、同じくWHO基準グレード2以上の出血患者の割合を主要評価項目として、低減化処理した血漿浮遊血小板と、未処理の血漿浮遊血小板を比較したところ、ITT解析では非劣性が示されました。なお、per-protocol解析では、非劣性は示されませんでした。低減化処理群のCCIは未処理群より50%低くなりました。

 マル3はEFFIPAP study、対象はインターセプト、実施国はフランスです。

概要としては、主要評価項目は同じくWHOの基準グレード2ですが、低減化処理したPAS浮遊血小板と、未処理のPAS浮遊血小板を比較した場合、非劣性が示されました。低減化処理PAS浮遊血小板と、未処理血漿浮遊血小板を比較した場合は、非劣性は示されませんでした。

 マル4はIPTAS studyと申しまして、これはイタリアです。対象はミラソルとインターセプトの両方です。両技術とも、低減化処理PAS浮遊血小板では、未処理PAS浮遊血小板と比較して、CCIの低下、赤血球、血小板の輸血量の増加、輸血間隔の短縮が示されました。ただし、このstudyにつきましては、当初計画の被験者数に達する前に試験が中止となったために、非劣性に関する評価には至っておりません。

 2)としまして、ヘモビジランス等における低減化技術の評価です。臨床試験においては、上述しましたとおりCCIの低下、輸血回数の増加等も示されています。しかし、実際の輸血医療をより反映すると考えられるヘモビジランスにおきまして、オーストリアの報告では、インターセプト導入後の赤血球、血小板の輸血量は、必ずしも増えてはおりません。ただし、これは10単位製剤が大多数の本邦で同様の結果となるかは不明です。また、2014年、インターセプト処理血漿製剤によるHEVの感染例の報告がされております。

 4番目としまして、低減化技術導入の検討に係る状況の変化を説明します。検討開始当初、インターセプトに関しては以下のような課題がありましたので、日本の血液事業への適合性の高いミラソルを選択しておりました。マル1としては光増感剤、低減化剤の安全性のことです。新規物質としてアモトサレンが用いられていたこと。マル2としまして、10単位製剤を処理することができないこと。マル3100%血漿浮遊の血小板製剤を処理できないこと。マル4紫外線照射後にアモトサレンの除去に長時間を要すること。まる53回のバッグの移し替え、これは採血バッグからUV照射バッグに移し替えて、アモトサレンの除去バッグに移し替えて、そして最終バッグということで、移し替え行為が3回ありますので、回収率が低下すること。このような課題がありました。

 しかしながら、現在では課題マル1~マル3は以下のとおり解決されつつあります。まずまる1のアモトサレンの件ですが、欧米諸国で臨床使用経験が蓄積されてきていまして、アモトサレンに起因する有害事象の報告は今のところありません。マル2の10単位製剤の件ですが、現在、日赤では高単位血小板採血・分割製造ということを進めておりますので、インターセプト処理した10単位製剤の製造が可能となりました。ただし、工程中の血小板ロスのために、更に高単位の血小板を採取する必要が生じると考えられます。マル3の100%血漿浮遊の血小板製剤の件につきましては、インターセプトでこの処理が可能になったと聞いております。また、日本赤十字社におきましては、現在、PAS血小板を開発中です。

 4ページ目です。5番目、主要国の導入状況です。詳細については資料4-4、別紙3を御覧ください。前回報告した海外の導入状況について、情報を更新しています。概要として、主な点だけこちらに記載してあります。フランスは細菌やウイルスに対する安全対策として、全ての血小板製剤にインターセプトを導入することを、2017年に決定しています。アメリカではFDAのガイダンスに、細菌やジカウイルス感染の予防策の1つとして、インターセプトの使用が掲載され、2018年1月現在、40の血液センターがインターセプトのルーチン使用の契約をメーカーと交わしたと聞いております。ミラソルにつきましては、フランス、スイスで承認申請中、また、ドイツ、カナダで申請を予定しているとお聞きしています。以上です。

○濵口委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの報告につきまして、委員の皆様から御意見を賜りたいと思います。いかがでしょうか。では、私から今の報告について質問したいと思います。これまで日本赤十字社ではミラソルを中心に検討なされてきたところですが、インターセプトに対しての検討も可能であるというお話だったのかなと思いますが、今後はどのような形で、この検討を進めていくお考えでしょうか。

○日本赤十字社(佐竹)  こういう条件になりましたので、やはり両者を見ていく必要があるかなと考えています。

○濵口委員長 その上で、今回はメリットとデメリットというのを非常にクリアに出していただいて、デメリットの部分もいろいろな知見が溜まってきていることがよく分かったのですが、このデメリットに関連してstudyの中では、例えばCCIが低下するというような話がある一方で、余り使用量が増えていないようです。CCIが下がれば、それだけ必要な血液が出てくるのでしょうけれど、そこの部分が増えていないというようなところは、日赤としてはどのようにお考えでしょうか。

○日本赤十字社(佐竹)  CCIが減ることは確実です。ですから、血小板輸血の適応を決めるときに、何をもって決めるか、そこが非常に問題になってくるかと思います。ですので、本当にCCIだけを頼りにしますと、やはり輸血数が多くなりますし、こちらで採血しなければならない数も増えてくると思います。実際に有意差はなかったと、コクランレビュー等では使用量に有意差はないとは言っているのですが、実際には5~10%ぐらいの数が、どこの調査でも増えているのです。ですので、そのぐらい増えることは確実にあるだろうなと考えています。

○濵口委員長 ほかはいかがでしょうか。

○大戸委員 コクランレビューは10%ぐらい、血小板の使用量が増えたというレビューだったと思うのですが、それが1つです。あともう1つ、この導入の検討についての中で、経費計算が全く示されていないので、血小板全体に低減化技術を入れたときに掛かるコストはどのぐらいになるかを、メリット、デメリットを考えるときに試算が必要だと思います。製品価格に反映されることになれば、やはり国民への負担がそれだけ大きくなると思うのです。

○日本赤十字社(佐竹)  我々製造者側としましては、額ははっきりしたことは分からないのですが、聞いている話ですと、全面的にすれば相当の数十億という単位になりますので、いろいろな調査会、安全技術調査会も含めて、委員の先生方にもコストのことを考えた上での討議というものを、我々としてはお願いしたいと思っています。

○濵口委員長 ほかはいかがですか。では、私からもう1つ。最後にPAS血小板の開発をというお話だったのですが、これは今、血小板で一番課題として上げられている細菌感染に関しては、ある程度の有効性というのが期待できるのでしょうか。

○日本赤十字社(佐竹)  一般の話ですが、一般的には血漿、大体6070%ぐらいを人工晶質液であるPASに置換しますと、グラム陽性菌は増殖を結構抑えられます。これは、恐らく栄養要求性の高い菌に関しましては、栄養が少なくなるために、増殖が少なくなると考えられると思います。

 グラム陰性菌に関しましては、もともと血漿の中に含まれている補体とかいろいろな自然免疫系統のものの濃度が低くなるために、グラム陰性菌のほうはかえって増殖が促進されるというのが、一般的なこれまでの知見です。我々の内部の検討でも、そういう傾向は大体一貫して見えます。

 ですので、グラム陽性菌はリスクが減るけれど、陰性菌のほうはリスクが高くなるかもしれないということがあります。ただ、それに対する反論の発表も、最近あったと聞いています。

○濵口委員長 ほかはいかがでしょうか。

○岡田委員 インターセプトに関して、スイスでは血小板ですから、もう大分、全面的に導入してから時間がたっていますが、これを見ると4ページの5で「主要国の導入状況」というので、ミラソルについて、フランスとスイスで承認申請中ということで、これは要するにインターセプトからミラソルに、場合によっては変更するということなのでしょうか。

○日本赤十字社(佐竹)  これは全く情報がありません、分かりません。現在、国として全部入れているのは、フランス、スイス、ベルギーの3か国です。

○岡田委員 あと、輸血用血液の不活化というと必ず出てくるのが、赤血球製剤のほうの不活化というのは、今はどの程度、治験をやっているのか、それとも治験まで至っていないのか、そういう情報はどうでしょうか。

○日本赤十字社(佐竹)  赤血球についてはミラソルのほうで、ガーナで実際の治験が行われました。かなりいい成績が出ています。これは「Lancet」か何かに出たかと思いますが、そこでは輸血された患者でのマラリアの感染が、実際に低く抑えることができた等の成績が出ています。赤血球のほうはやはり難しい、まだまだ発展途上かと思います。

○濵口委員長 ほかはいかがですか。よろしいでしょうか。

○山本()血液対策課長補佐 事務局です。長村委員は遅れて来られるということですが、御意見だけ頂いていますので、紹介させていただきます。長村委員からは血小板製剤に対する細菌対策ということで、低減化技術だけではなくて、細菌検査等についても考えてもいいのではないかという御意見を頂いたのと、事務局としては4のマル2の所にある、工程中の血小板のロスということがありますので、安定供給に関しては、技術導入の際には御注意いただければということを、お伝えしたいと思います。以上です。

○濵口委員長 ただいまの委員からの意見、それから両者、メリットとデメリットというのが明らかになってきたところですが、技術導入に関していろいろな検討、それから情報の収集ということで、更に進めていただきたいと考えています。よろしくお願いします。

 それでは、議題の5に移りたいと思います。「日本赤十字社におけるヘモビジランスについて」、日本赤十字社より御報告をお願いします。

○日本赤十字社() 私から資料5に基づいて御説明します。まず、副作用・感染症報告の推移です。2017年は合計1,584件の報告を頂きました。そのうち1,479件、93.4%が非溶血性副作用の報告でした。こちらの報告は2008年から、数は増加したり減ることもなく1,500件程度が継続して報告されてきております。一方、感染症については、2014年の個別NAT導入の辺りから報告数自体が減少傾向にあるということです。

 非溶血性副作用について御説明します。4ページ、医療機関から報告された非溶血性副作用(2017)です。まず症状別を見ますと、やはりアレルギー性と考えられる蕁麻疹等、アナフィラキシーショック、アナフィラキシーというものが大多数を占めている状況です。その中で呼吸困難が195件で13.2%です。製剤別に見ますと、赤血球製剤で577件、血小板製剤が561件、血漿製剤が224件、複数の輸血用血液製剤を使われていたものが117件で7.9%です。

 続きまして、製剤別・副作用症状別の報告件数です。左から2つ目が発熱です。赤血球製剤で発熱が22.2%、128件ということで少し多い傾向が出ております。血小板製剤、血漿製剤に関しては、一番左のカラムですが、アレルギー反応、蕁麻疹、41.8%、44.2%。発熱の次のアナフィラキシーを含めて、このような製剤は、アレルギー性の反応が多い傾向でした。こちらの傾向に関しても、前年と比較してもそう変わらないような状況でした。

 TRALI/TACOの症例の評価結果です。まずはTRALIの疑いの症例については、TRALI評価自身は呼吸困難、アナフィラキシーショック、アナフィラキシー、これらの症例のうちで、担当の医師がTRALIを疑った症例及びこの報告を頂いた際に私どもで症状から評価が必要と判断した症例について評価を行っております。昨年度は127件の評価を行っております。こちらについては、担当医が記載する副作用感染症記録、呼吸困難調査票、胸部X線写真等でTRALIの評価をやっております。その結果、TRALIと診断されたものが5件、p-TRALIと診断されたのが4件でした。TRALIではないと考えられる118件について、心原性肺水腫がなかったものが42件です。この42件のうち39件はそもそも診断から除外されるようなものであったということです。残りの3例はデータ不足です。ここで心原性肺水腫とされた76件と、最初からTACOと疑われて報告された13件、こちらの89件の調査を行ったところ、TACOと評価されたものが47件でした。その他については42件という評価でしたが、このうちどうしても除外項目があるものが含まれており、心不全がもともとあったとか、そういうものが含まれるものが結構多い傾向にありましたが、2017年はこのような結果でした。

 次のページは、TRALI・TACOの評価状況を示しております。一番下のカラムがTRALI、その上がp-TRALIです。その上の四角で囲まれているのがTACO、その上が心原性肺水腫です。見てみますと、昨年、合計9件のTRALI評価がされたものがありました。TACOも報告するとか、これは少しずつ私どもの情報提供を医療機関にさせていただいておりますので、評価数自体は減ってきている状況です。

 次は、照射洗浄血小板製剤の副作用を少しピックアップいたしました。洗浄血小板製剤については、副作用として報告されたものが8件です。このうち重篤症例が1件で、こちらはアナフィラキシーということで報告をされております。それ以外については、蕁麻疹等の皮膚症状や発熱で7件の報告がされておりました。アナフィラキシーの報告は、血圧低下は起こっておりませんでしたが、この患者さん自体は、通常の血小板製剤を使っていたときの副作用より、照射洗浄血小板製剤を使ったことでかなり副作用は軽減されていますが、アナフィラキシー様反応があったので報告した1例です。そういうところで見ますと、供給本数、血小板製剤全体では2017年は824,201本供給をしておりますが、このうち血小板製剤単独での非溶血性輸血副作用の報告件数は560件、頻度は1/1,500件で、これは一般の製剤の頻度です。照射洗浄血小板製剤も、昨年は1万956本を供給して8件の副作用報告ということで、これを単純に割ると、報告頻度は変わらないということになりますが、そもそもこの患者さんたちは、この下に記載してある適応患者で、通常製剤によるアナフィラキシーショック等の重篤な副作用が1度でもあったとか、そういう方を対象にしておりますので、このように変わらないように見えますが、実際はかなり効果があることは、私どもも医療機関の先生からお話を聞いております。こちらまでが非溶血性副作用です。

 次に輸血後感染症に移ります。10ページ、病原体別の報告件数の推移です。こちらも下のカラムから、HBVが20件、HCVが21件、細菌が21件、その他が12件という報告がされております。

 次のページです。保管検体等を用いて解析をした結果、HBVが輸血による感染ということで特定されたものが1件、細菌症例については3件特定されて、うち1例が死亡した症例でした。HEVについては5件報告をされて、そのうち4件が輸血が原因でした。このうち1例の方は死亡されましたが、この患者自体は複合的な要因での死亡、HEVが直接の死因ではないということで評価を頂いている事例です。そういう意味で、特定されたものが74件中8件でした。一方、最初から対象外となるもの、輸血前から陽性であるものや、輸血前後でも陰性だった、感染はしていなかったものもいまだに報告されているような現状にあります。

 次のページは、採血年別の輸血後感染症、いわゆる輸血が確定したものの推移です。2017年はB、C、Iで見ますと、2017年はHBVの1件ということです。

 次のページ、こちらはHBV感染症例の献血者の検査結果です。こちらについては、献血者のスクリーニングNAT陽転に伴う遡及調査により判明した症例です。表の中の陽転マル1は、2017年6月10日に献血に御協力を頂いて検査をしたら、個別NATのみが単独で陽性になりました。そこで遡及調査の前回を遡って見ますと、その21日前の5月21日に献血をされておりました。このときの結果は個別NATをやっている中で個別NATがマイナス、セルオロジーがマイナスというものでした。こちらについて医療機関へ情報提供させていただいたところ、下が受血者で70代の男性の血液腫瘍の方ですが、この方に5月23日に輸血をされておりました。その後、検査を実施したところ、HBV-DNAが陽性で、Genotype CのSubtype ayrの感染が確認された事例です。こちらも個別NATの陰性の血液による感染で、今の検査の検出感度からいくと、かなり少ない頻度ですが、こういうものがあることは御理解いただきたいと思います。この患者さんについては、バラクルードを投与されて、肝炎等は発症していなかったと認識しております。ただ原疾患で、その後に亡くなられたという症例でした。

 14ページです。HBVの各検査システム別の1年間当たりの輸血後の感染症例数をまとめました。個別NAT導入後2件の個別NAT陰性による感染事例を経験して、導入後3年5か月経過しておりますので、それで割ると年間0.6件ぐらいの感染となり、安全性は極めて高くなってきていることが見てとれます。

 15ページ、HEVについては2017年に4件の輸血による感染事例が経験されております。このうち3件は自発報告、1例は遡及調査でした。次の表にその転帰を記載しておりますが、先ほどお話をした死亡例に関しては、自発報告からの死亡例でした。この事例を受けて、昨年度運営委員会が開かれて、献血者には、左側の「お願い」というポスターを採血現場に掲示して、E型肝炎の理解、こういう方の献血は御遠慮いただくとともに、右側は「E型肝炎ウイルス(HEV)感染について」ということで、医療機関の先生方に情報提供をさせていただいております。今、私どもが情報提供している数は、過去2年間に1回でも輸血した医療機関を対象に情報提供をしております。このように、大体1万2,000医療機関に情報提供をしている現状で、こういうこともやらせていただいております。

 次が輸血後細菌感染の事例です。こちらは3例を経験しております。Lactococcus garvieaeと、残念ながら死亡されたE.coliの事例と、Klebsiella pneumoniaeの事例の経験をしております。こちらもこの死亡事例を受けて、医療機関への情報提供ということで、このような輸血情報、血小板製剤による細菌感染の注意、日赤が行っている安全対策や血小板製剤の外観確認の重要性、このようなことの情報提供をやらせていただいております。こちらについては、1万2,000件程度の医療機関に情報提供をしております。

 こちらをまとめますと、TRALIについては、評価対象のうち、TRALI又はp-TRALIと評価した症例は9件でした。照射洗浄血小板製剤による非溶血性副作用は年間8件報告されましたが、重篤の1件がアナフィラキシーでした。HBc抗体判定基準の厳格化、個別NATの導入後、個別NAT陰性の血液を輸血された受血者2名にHBV感染が認められております。そういう意味では年間0.6件という数になっております。輸血後E型肝炎は4件確認され、こちらについては国の通知に基づき、献血者への対応、医療機関への説明をしております。血小板製剤によるものについては3件確認され、1名の受血者は初流血除去等の安全対策導入後初めての死亡症例でした。そのため、国の通知に基づき、医療機関には当該症例並びに添付文書にある「使用上の注意」等の周知を実施し、また、日赤では細菌混入防止対策の徹底を進めております。私からは以上です。

○濵口委員長 ありがとうございました。それでは、委員の皆様から御意見をお願いいたします。

○岡田委員 11ページの病原体別の解析結果ということで、HCVに関して輸血前後が陰性というのが3例ありますが、これはどういう理由で報告が上がってきてしまうのですか。要するに、医療機関では陽性だけれども、日本赤十字社で再検したら陰性だったということですか。

○日本赤十字社() 当然、検査後には一定の非特異反応はあるかと思いますが、コア抗原のぎりぎりのcutoffの所であったりとか、そういうところで先生がすぐ報告されてくるというものがあったということです。

○岡田委員 もう1つは、13ページの個別NATになって2件目の感染症例で、6月10日にID-NAT陽性が判明しているので、その情報が7月2日には活かせていなかったというか、例えば、ドナーの立場からすれば、陽性が分かっていれば、その時点でもう採血自体しなくても済んだのかなということですが、これはどうなのでしょうか。

○日本赤十字社() この事例について詳細は確認しておりませんが、今、献血者へ陽性通知が行きますから、そこでどのような回答をされていたかは1つ気になるところですが、そういうこともあるのかなと思います。

○岡田委員 あと陽性になったという情報は、例えば採血するときには、これは献血ルームだと思いますが、そういう情報は今のところ分からないのですか。

○日本赤十字社() システムの中では見えているのですが、結局、通知されたかどうかということで見ているところがありまして、そういうところから通知のタイミングであったりとか、そういうこともあるのかなという感じもしないではないです。

○岡田委員 この供血者は発症したのですか。それとも、もうこのままで消えてしまったのですか。

○日本赤十字社() この方については、情報は入っていない状態です。

○濵口委員長 ほかはいかがですか。

○溝上委員 これらは配列も全部確認されているわけですか?。つまり、外国から食べ物で入ってきたのか?それとも外国でうつってきたとか、そういうことはないのかということでお聞きしております。

○日本赤十字社() まれな株とか、そういう情報は入っていないので、日本の一般的な株ではないかとは思っておりますが、調べてまた報告させてください。

○溝上委員 何が言いたいかというと、海外からの食べ物とか、海外で食べたものでということがあるかどうかをお聞きした次第です。

○日本赤十字社() 確認させていただきます。ありがとうございます。

○大戸委員 18ページの輸血後の細菌感染症例についてコメントを申し上げます。輸血細胞治療学会では認定臨床輸血看護師制度を推進しております。今、全国で1,200名ぐらいいます。輸血患者さんの中での2番と3番の予後の差です。2番目の方は、輸血後20分で1回は輸血をやめたのですが、また再開して、最終的には亡くなってしまった。3番目の方は、ルート内に浮遊物があって輸血を中止した。その後、症状が出たのですが、最終的には命を失うことはなかった。輸血細胞治療学会としては、もしかしたら、この認定輸血看護師がいて、2番目の症例を、ここでもう輸血はやめましょうと、この血液は使うのをやめましょうと言ってくれればよかったのになと思うのです。こういう場面で、臨床輸血看護師がクリティカルな役割を果たすのではないかと思っているのですが。

○濵口委員長 多分、日本赤十字社の努力に加えて、臨床の現場でも未然に防ぐ必要があります。特に血小板の細菌感染に関しては、相互の力が非常に大きな効力を発揮するのかなと思われますので、学会を通して皆様に更なる周知をお願いしたいと思います。ほかはいかがですか。

○山口委員 2点あります。1点は溝上先生の質問に関連して、確か感染症定期報告の中で、イギリスからの報告だと思いますが、やはり輸入感染症的な、要するに、食べ物から入ってくるのではないかという論文があったかと思います。その辺に関連して、輸入感染症と言われるほど、E型肝炎のゲノム解析の疫学がどこまで分かっているのか、多分、今、答えは出ないと思いますが、そういうのが分かりましたら教えていただければとは思います。

 もう1つは、11ページのC型肝炎もそうですが、B型肝炎も輸血前から陽性となっている。この2つは前後でちゃんと見たり、制度をきちんと見ておいていただければ、その報告にならなかったと思いますが、こういう情報は医療機関でどのようにフィードバックされて、そうであれば、医療機関で多分繰り返してそういう報告はなくなってくると思いますが、そういう対応については、医療機関への情報提供はどうされているのですか。

○日本赤十字社() 一応、当該医療機関に関しては、検体を頂いておりますので、その結果についてお返しをして、医療機関のほうで御検討いただきたい。それ以上はなかなか私どもも踏み込むことができませんので、そういう結果をお返ししております。あと、このようなことは学会等で、こういうような事例があったということをお話をしております。

○山口委員 多分、輸血前から陽性の場合は、輸血前後でやってくださいと言っていただいたほうがいいのではないかという気がしました。

○溝上委員 今の山口先生の御質問に関連することですが、現在、年間2,000万人が海外に出て行くわけです。しかも、オリンピックのときには4,000万人海外から人が来る。食べ物についても自給率が何パーセントという状況ですから、やはり、いくら生ものを食べるなと言っても、そういうものが入ってくる可能性は非常に高いと思います。肝炎ウイルスデータベースを利用するとそういうことは簡単にわかります。そういうものをうまく使うと、外国で感染したのか国内で感染したのかがわかりますので、献血者の方たちにフィードバックできればよろしいのではないかと思います。

○濵口委員長 それでは、ただいまの委員からの御意見を参考に、引き続き情報の収集と対策の強化に努めていただきたいと思います。よろしくお願いします。議題6の「血漿分画製剤のE型肝炎ウイルスの安全対策について」です。まずは事務局より資料6について説明をお願いします。

○山本()血液対策課長補佐 資料6で、議題6の背景と経緯について説明いたします。輸血用血液製剤のE型肝炎ウイルスに対する安全性確保については、血液事業部会運営委員会等において検討が行われております。昨年、平成29年度の安全技術調査会においては、委員より、血漿分画製剤のE型肝炎に関する安全性についても検討するという御意見を頂きまして、各企業より情報を頂いた上で、安全技術調査会で議論されております。その議論の中において、特に高濃度のE型肝炎ウイルスが原料血漿に混入した場合の血漿分画製剤の安全性について、国内の血漿分画製剤の製造販売業者よりのヒアリングを行うべきという意見を頂いておりまして、今回、ヒアリングの場を持たせていただいております。

 資料の内容に関しては、企業の非公開の情報になりますので、この議題に関しては非公開で行わせていただければと思います。この非公開の議題の結果については、議論の内容を議事要旨という形でまとめて、後日、webサイトで公開することを考えております。これから非公開の準備をさせていただきますので、傍聴の皆様においては、ここで一旦退席をお願いしたいと思います。それでは、委員の皆様におかれましては、議題6の非公開の準備が整いますまでお待ちいただければと思います。

  

(議題6は非公開で行われた。)
議題6 血漿分画製剤のE型肝炎ウイルスの安全対策について(非公開)

 

○山本()血液対策課長補佐 非公開はここまでです。最後に、次回の安全技術調査会の日程は、別途、御連絡差し上げます。本日は大変長時間にわたり、委員の皆様、本当にありがとうございました。これにて、薬事・食品衛生審議会平成30年度第1回血液事業部会安全技術調査会を終了させていただきます。

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