あなたの事業所の職場環境づくりにお役立てください!
職員の方々が、長く、活き活きと働くことができる職場環境づくりを目指して。障害福祉関連事業所の職場環境改善への取り組みや、実際に働いている方々の声をご紹介します。

人材確保及び定着CASE 12社会福祉法人
大三島育徳会世田谷区立
玉川福祉
作業所
マンツーマンのエルダー制で新入職員の育成を図る

数値化、上司の声掛けにより
残業時間を短縮、有給を消化
大三島育徳会では2005年より、指定管理者として世田谷区立玉川福祉作業所・等々力分場の運営を行い、主に知的に障害のある利用者の日中活動を支援しています。企業からの受託作業のほかに自主生産品として利用者が制作したアクセサリー、手芸品、陶芸作品を「irodori」ブランドとして販売しています。
当所では残業の恒常化が課題になっていました。その原因を探ると利用者退所後の職員ミーティングにあることがわかりました。ミーティング終了時間を決めていなかったため、長時間に及ぶことがあったのです。そこで、そのつど終了時間を決め厳守することにしました。同時に個人の残業時間を数値で示し、一人ひとりが意識するようにもしました。その結果、2015年には月平均27時間の残業時間が2018年には月平均6.5時間、現在は月平均1時間にまで減らすことができています。ミーティングの終了時間を意識するだけで伝えるべきことを整理して簡潔にまとめる力や習慣も育まれました。
有給についても、消化率の悪い職員には上司が積極的に声掛けをし、消化を促した結果、2015年には60%でしたが2018年には76%まで上昇しました。

人材の定着にはエルダー制を導入
職員は仕事を学び直すきっかけに
人材が定着しにくいことも課題でした。新入職員は研修を受けて現場に出ても、実際の現場では利用者との対応に戸惑うことが多くあります。入職したては先輩職員との人間関係もさほど築かれていないため、なかなか相談しにくい状況で仕事に対する不安が離職の原因にもなっていたのです。当所では東京都が実施している「働きやすい福祉の職場宣言」に2019年10月から参加、認定を受けるべく取り組みを始めましたが、「新規採用者の育成ガイドライン」に従ってエルダー制度を導入。1年間、先輩社員がマンツーマンで新入職員を指導する体制を取ることにし、現在に至っています。
エルダーには新入職員と年齢の近い職員で職員本人の意向を確認したうえで指名しています。決して、施設長が一方的に指名することはありません。また、職員がエルダーを目指すことは目標管理の一項目として評価しています。
実際にエルダーとして指導するには仕事に対する考え方や利用者との対応を自身の経験に基づき、明快にしておく必要があります。制度の導入は職員が仕事を見直し、学びなおすきっかけにもなりました。新入職員からは気軽に相談できる安心感があるとの声が上がっています。その結果、2024年1月18日の「働きやすい福祉の職場宣言」取組状況では東京都福祉局から「新規採用者を育成する体制を整備している」との評価を受けています。

職員同士の親睦会から
有給の取りやすい雰囲気が生まれる
福祉の仕事では職員が連携して利用者のサポートにあたるため、職員同士のコミュニケーションも重要です。母体である大三島育徳会では日帰り旅行や食事会などさまざまなイベントを行い、所属する職員全員の交流を図ってきました。ところがコロナ禍では中止を余儀なくされてしまったのです。そこで福利厚生の一環としてスマホを利用したビンゴゲームを行いました。緊急連絡に備えて本部では一斉メールを配信するために全職員にメールアドレスを付与しています。これを活用し、施設長室でビンゴマシンを操作、そこから出た数字を全職員に送信するという方法で開催したのです。
エルダー制やイベント等を通じて職員同士の理解や信頼関係が深まると「おたがいさま」という感覚が育っていきます。これは産休や育休、また介護休暇、看護休暇の取得しやすさにつながっています。現在、産休、育休の取得率は100%です。
利用者は職員の精神状態にとても敏感です。ですから、職員自身がライフワークバランスが取れて精神的に安定していることが大切なのです。働く環境を整え、よりよいサービスを提供できるよう今後も改善すべきところは改善する努力を続けていきます。
職場環境の課題
- ●長時間のミーティングなどで残業が恒常化していた。
- ●利用者対応での戸惑いや職場での人間関係など、人材の定着に影響が出ていた。
- ●職員全員のコミュニケーションが取りにくい状態であった。

改善ポイントとその成果
- ① 残業時間の数値化
- 数値化により各自が残業を自覚。また残業の原因であったミーティングの時間を短縮したところ月平均1時間まで短縮。
- ② エルダー制を導入
- 新入職員の仕事に対する不安を払拭でき、ベテランとの信頼関係も築けた。
- ③ コロナ禍でもオンラインを利用し、全員参加のイベントを開催
- 他の施設で働く職員が同じゲームをすることで一体感が生まれ、コミュニケーションも円滑になった。


働く人の声

エルダーになって自分の行動を
客観的に判断できるようになりました
眞塩 恵さんエルダー制のエルダーを務めています。新入職員には何故、このサポートが必要なのか、あるいは不要なのか、自分が取った行動の理由を明確に伝え、指導しなければなりません。エルダーになる前には、その場の雰囲気で行動していたことが多かったような気がします。それが、行動する前に考えるようになり、客観的に判断できるようにもなりました。私は言葉で人に伝えるのが苦手だったのですが、エルダー制ではそうはいきません。うまく伝えられるよう話し方を工夫しています。この制度で自分自身も成長しているように感じます。福祉の仕事は新入職員もベテランもワンチームになって利用者さんを支えることが大切です。エルダー制を通し、新入社員と信頼関係を築くことはその第一歩だと思います。
私はirodoriの商品を開発し、SNSで発信していますが、それをご覧になった方が購入にいらしたときには本当に嬉しかったです。利用者さんと私の成長が実感でき、仕事に対するやりがいを感じました。
【事業所DATA】
- 事業所名/社会福祉法人大三島育徳会 世田谷区立玉川福祉作業所
- 代表者/田中雅英
- 所在地/東京都世田谷区玉川1-7-2
- 従業員数/22名(2024年2月現在)
- 事業内容/就労継続支援B型事業、就労移行支援事業、就労定着支援事業
- ホームページ/https://www.oomishima.jp/