研究課題 実施期間 合計金額
(千円)
主任研究者所属施設 氏名
(1)  専門的・学術的観点
 このテーマで、すでに分かっていること
 本研究で加えられたこと
 本研究成果の専門的・学術的意義
(2)  行政的観点(※1)
 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。
(3) その他の社会的インパクトなど(予定を含む) 発表状況 特許 施策 (4) 普及・啓発活動件数 研究事業名
原著論文(件)※2 その他論文(件) 口頭発表等(件) 特許の出願及び取得状況 反映件数※3
産業中毒の予防と診断のための生体試料中有害物質及びその代謝物・付加体の超微量分析手法の開発研究 平成14-16年度 19,860 東京労災病院 産業中毒センター 坂井 公(14-15年度)、森田陽子(16年度) 主要なものは(1)職業性感作性物質であるイソシアネート類(TDI、MDI)について(ア)TDIとMDIの代謝物はそれぞれTDA(トルエンジアミン)およびMDA(メチレンジアニリン)である。(イ)尿中TDAの簡便・鋭敏な測定法を開発し個人曝露濃度との相関を検討し、TDIの管理濃度に相当する尿中TDA濃度を明らかにした。血清中MDAの簡便・鋭敏な測定法を開発し、MDI曝露の疑いのある作業者の血清中MDAを経時的に測定し、半減期を求めた。(ウ)これらの成果はInt Arch Occup Environ Health誌への掲載や国内外の学会で発表され、多くの反響がある。(2)除草剤メコプロップ(MCPP)中毒について(ア)MCPP中毒では尿中にMCPPが排泄される。(イ)MCPP単剤中毒の治療で尿のアルカリ化が行われた患者について尿・血清中MCPP濃度を測定した。(ウ)学会発表を行い、論文投稿中である。(3)有機リン系農薬について(ア)有機リン系農薬の代謝物はアルキルリン酸である。(イ)尿中の4種のアルキルリン酸の一斉分析を行った。(ウ)学会発表を行い、論文作成中である。(4)ヒ素系化学兵器について(ア)トリクロロアルシンなどの尿中代謝物は無機ヒ素およびジフェニルアルシン酸(DPAA)である。(イ)尿中無機ヒ素およびDPAAの一斉分析を行った。(ウ)産業衛生学会などに発表し、反響があった。(5)新築医療機関での揮発性有機化合物(VOC)濃度について(ア)厚生労働省は複数のVOCについて室内空気汚染の指針値を示している。(イ)当病院の新築棟について主要なVOCの測定を行った。(ウ)当院のVOCは基準値未満に保たれており、特にシックハウス関連施設は極低濃度に保たれていた。学会発表と論文掲載を行っている。 ・現在のTDI取り扱い作業者の健康診断項目には、曝露の程度を明確に知る指標がない。よって、曝露濃度に対応する代謝物濃度を明確にした本研究は、TDI作業者の健診や健康障害発生時の診断・治療に役立つものである。TDIの管理濃度に対応する尿中TDA濃度を明らかにしたことにより、作業環境の改善にも利用できる。・MDI曝露(疑い)から1週間後の血清中にも高濃度のMDAを検出し、経時的な減少を明らかにしたことは、労災認定の際の参考資料となった。血清中MDAの半減期は長く、過去の曝露の推定に役立つ。・MCPPを扱う作業者の曝露評価のために、尿中または血清MCPPの測定を利用できる。・有機リン系農薬、ヒ素系化学兵器(の処理)を扱う作業者の曝露評価のために、それぞれの尿中代謝物の測定を利用できる。 以上の成果の一部を2004年3月22日の第3回シックハウス研究班会議、特別講演において報告した。 イソシアネート類代謝物の測定が可能な機関は国内では当センターのみであり、国内外からの測定依頼や共同研究に応えている。尿中MCPP、有機リン代謝物、無機ヒ素、DPAAについても測定依頼がある。これらの成果は論文・学会のみでなく、産業医研修会、産業衛生関連の啓蒙誌などによる発表も行っている。中毒センターへの問い合わせに答える際にも、これらの成果を利用している。 17 33 45 0 4 5(HPはhttp://www.opc.tokyoh.rofuku.go.jp/) *産業中毒に関する相談(電話、メール、来所、受診、検査など)も受付けている。 労働安全衛生総合研究
職域における健康診断と精度管理のあり方に関する研究 平成14-16年度 28,019 中央労働災害防止協会 労働衛生調査分析センター 櫻井治彦 ア 職域においてはすでに広く各種の健康診断が行われ、精度管理についても多くの実際的な成果が得られてきた。しかし、健康な労働者を対象とし、有害環境による健康障害や生活習慣病をできる限り早期に発見し、予防につなげるためには、測定値の精度管理および測定データの評価と利用方法において改善の余地があることが推測されている。しかし研究に基づく明確な現状認識と問題点の指摘は行われていない。 地域・職域を通した生涯にわたる健康管理を有効に行うには、健康診断データの精度管理が一定以上のレベルに維持されることが必須の条件である。本研究により、現状において、国際的に見ても高いレベルの外部・内部精度管理事業が実施され、緊急の改善措置を必要とするような事態が見出されなかったこと、及びより高い精度を維持するために必要な改善点が明示されたことは、今後の行政対応の選択に確かな拠り所を提供したと評価できる。 特になし 0 1 2 0 0 0 労働安全衛生総合研究
          イ (1)一般健康診断、特殊健康診断の両者に付いて、精度管理の現状と問題点を明らかにした。いずれについても、国際的に見て高いレベルの外部精度管理事業が実施され、測定の偶然誤差はかなり良好に管理されており、緊急の改善措置を必要とするような事態は見出されなかった。ただし、一般定期健康診断の法定検査項目について全国の健康診断・検診機関約330機関のうち約60%は総合評価点が高いが、約30%は検査技術向上の余地があり、約10%はさらなる精度管理の向上が必要であると推測された。現状より高いレベルの精度を維持するためには、比例系統誤差の削減を目標とし、高位の標準物質を用いて年1,2回のトレーサビリティの確認と校正を行うことが望ましいことが指摘された。外部精度管理については、現行の年1回の非常に高度な外部精度評価に加え、内容と評点を簡略化した外部精度評価を同一の団体または連合体によって新たに年2回程度行うことが望ましいと提案された。エックス線による画像診断については、新しい方法が導入されつつあることから問題が多く、外部精度評価の現状を更に改善するために、胸部X線診断のCR法への転換については内容を理解した適正な運用の必要性、胸部X線写真の画質確保の更なる必要性が指摘され、肺癌検診にCT検診を導入するにあたっては、医師の養成のための能力客観的評価の必要性が指摘された。(2)測定データの効率的な利用方法については、労働者集団を対象に行った研究により、個人の経年的変化を評価し、異常性を早期に予見する方法を提案した。また循環器疾患の健診において従来適切に利用されなかった問診情報等を心電図検査と併用することにより、職域健診受診者の循環器疾患のリスク層別化と高リスク受診者の抽出が効率的に行える可能性を示した。                 労働安全衛生総合研究
          ウ 健康診断を業とする専門団体が長期間、一定の方法で行ってきた精度管理事業を過去にさかのぼり調査することにより、方法とそれによる精度改善の関係を定量的に示したこと、現状においた残された問題点を明確にし、改善の方法を明示したことは、臨床検査、労働衛生検査の精度管理に関する学術的成果として高く評価できる。また、検診データの効率的な利用に関して、個人データの時系列解析が有用であることはしばしば指摘されてきたが、その具体的方法を疫学的根拠に基づいて提案し得たことは大きな成果であったと考えられる。                 労働安全衛生総合研究
負荷履歴の影響を考慮した経年圧力設備の高信頼度弾塑性破壊評価手法の開発 平成14-16年度 170,450 独立行政法人産業安全研究所 機械システム安全研究グループ 佐々木哲也 (ア)経年圧力設備の寿命延伸を目的とした維持基準の作成のために、J-R解析やR6法などの簡易弾塑性破壊評価手法の妥当性検証に関する研究が行われているが、負荷履歴等の影響は考慮されていなかった。(イ)軸力と曲げの負荷順序を変えたオーステナイトステンレス鋼製切欠き付き平板と切欠き付き配管を用いた弾塑性破壊実験を行い、従来の理論崩壊曲線が軸力と曲げの組み合わせとは関係なく、安全側の評価を与えることを明らかにした。(ウ)負荷履歴が弾塑性破壊強度に及ぼす影響を明らかにしたのは本研究が初めてであり、その成果は国際的にも注目されている。 ・圧力設備の維持基準策定における基礎データの提供。
・経年圧力設備の破損事故が発生した場合の原因調査における基礎データの提供。
軸力と曲げの複合荷重下における弾塑性破壊強度評価に関して、我が国をリードする形で発展している。 4 4 8 0 0 0 労働安全衛生総合研究
職場環境等の改善等によるメンタルヘルス対策に関する研究 平成
14−16年
22,868 東京医科大学
衛生学公衆衛生学
下光輝一 (ア)職場におけるメンタルヘルス対策では、その効果がより長期的であることから職場環境に対するアプローチが重要であること。しかし、職場環境改善のための具体的対策は世界的にも方策については知見が少なく、職場環境改善の導入や推進のためのツールや具体的なマニュアルが求められていること。
(イ)(1)職場環境等の改善対策の導入・展開マニュアル、(2)職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスの現状把握のためのマニュアル、(3)ホワイトカラー職種における客観的なワーク・ストレスと技能活用測定のための職務分析ツール、(4)職場環境改善のためのヒント集、職場環境等の改善マニュアル、職場環境改善ファシリテータの手引き、(5)職場環境等改善のための努力−報酬不均衡モデル職業性ストレス調査票活用マニュアル、(6)職場のメンタルヘルス対策のためのメンタリング・プログラムを開発した。
(ウ)労働者のメンタルヘルス対策に必要とされている具体的、実用的マニュアルを作成し、介入研究により効果を検証することにより完成させた。
メンタルヘルス対策のための職場環境改善の技術を開発し、全国的な普及・推進の方策を提示した。
各種マニュアルを作成し研究成果を事業場に技術移転可とした。
職場環境改善のマニュアルは、中央労働災害防止協会から厚生労働省あてに提出された職場におけるメンタルヘルス対策支援委員会、ストレス対処作成部会の成果である報告書「事業場におけるストレス対策の手引きー労働者の心の健康づくりのために」に盛り込まれた。
本研究で提示した対策法が全国の事業場に普及することにより、労働者の心身の健康増進、職業生活の質の向上及び職業性ストレスによる医療費の増加を含む事業場および国の経済的損失の軽減の一助となる。 4 7 21 0 0 http://www.tokyo-med.ac.jp/ph/ts

http://eisei.med.okayama-u.ac.jp/jstress/ACL/index.htm
労働安全衛生総合研究
うつ病を中心としたこころの健康障害をもつ労働者の職場復帰および職場適応支援方策に関する研究 ( H14−労働―14 ) 平成14-16年度 17,600 東京経済大学経営学部 島 悟 (ア)従前こころの健康障害をもつ労働者の復職に関しては少数例研究しかないが、転記が不良な例の少なくないことが知られている。(イ)3年間の研究により、こころの健康障害をもつ労働者の実態、当事者・産業保健スタッフ・主治医等の意識が明らかになった。また復職後の転帰に関する研究により、リスク要因の抽出が行われた。こうした知見を得て、復職支援のプログラム開発を行い、同時にマニュアルを作成した。(ウ)従来こころの健康障害を有する労働者の大規模研究による実態報告はなく、本研究成果は労働衛生関連施策立案にも活用されている。また復職支援プログラムおよびマニュアルは産業保健スタッフを中心に反響を呼んでいる。 平成16年10月に厚生労働省より心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きが出されたが、本研究成果物は、手引きを補完し、有効に活用する上で有用性が高い。また各種実態調査の結果は政策の立案に寄与するところが大である。 復職支援プログラムおよびマニュアルの開発を行ったが、今後、事業場において活用されることが期待される。 5 4 12 0 0 9 労働安全衛生総合研究
リサイクル品・廃棄物処理工場での粉塵爆発災害の防止に関する研究 平成14-16度 32,476 (独)産業技術総合研究所 爆発安全研究センター 荷福正治 (ァ)リサイクル工場や廃棄物処理工場等でその処理作業中に粉じんやガス爆発が発生することは知られている。主に、金属粉、ポリエチレン(PE),メタクリル樹脂(PMMA)など代表的なプラスチックの粉じんなどが発生し、衝撃火花などにより、爆発災害が発生するという現象はよく知られているが、その詳細は不明なところが多い。また、災害原因の一つとして静電気放電による着火があること、特に、接地導体板上の絶縁体からの沿面放電により着火性放電が発生すること、非帯電防止型集じんろ布からの放電着火などが知られているが、詳細は不明であった。
(イ)破砕現場における粉じん、特にポリウレタン粉じんの爆発しやすさ、ポリウレタン粉じんとシクロペンタンガス、その他の粉じんとプロパンガスの共存など粉じん・ガス混合気の爆発しやすさ、爆発強度、爆発に関与する着火要因(放電の形態、放電と着火性など)、板状でなく繊維状の導体であっても着火性放電を発生すること、接地体の形状によって着火しやすい粉体が異なること、帯電防止型集じんろ布によっても金属回収により大量の静電気発生と放電が発生し着火に至ることがあるなど、静電気の発生特性と着火の関係、温度制御による物体帯電の抑制方法(エステル、エポキシ・エステル、プチラールなどの約80℃への加熱による電荷消滅)、サイクル品・廃棄物を粉砕するシステム、粉砕片などのハンドリングにおいて、使用するシステムの材質とリサイクル品・廃棄物のイオン化ポテンシアルをなるべく近づけると発生電荷量が少なくなるので、システムに適当な表面処理を施すと静電気の発生を抑制できることなどを明らかにした。
(ウ)リサイクル工場や廃棄物処理工場における発生粉じんの爆発性、特に粉じん・ガス共存状態における爆発しやすさ、爆発強度、放電形態に基づく着火特性、帯電性の評価手法、電荷発生の抑制等の研究成果は、国際会議、国内学会、Jounal of Loss Prevention in the Process IndustriesやJournal of Electrostatics、静電気学会誌、安全工学会誌などで発表され、高い評価を受けた。
産業現場における労働者の安全確保、リサイクルや廃棄物の処理工程における安全の確保とスムーズな操業の推進等に貢献し、厚生労働行政や経済産業行政に寄与した。特に、家電製品リサイクル工場における粉じん爆発災害対策に協力したほか、多くの企業の技術指導要請・技術相談などに応じ、現場の安全確保に貢献した。さらに、本研究成果は、安全ガイド「圧縮空気駆動式小型研磨器の静電気対策」(NIIS-SG-NO.2 (2004))、爆発災害を軽減するための圧力放散設備基準作成に反映された。 破砕や粉砕、研磨、粉じんの輸送等を行う産業現場では、浮遊粉じん、静電気、衝撃火花、摩擦熱など発生するので、本研究成果はこれらの産業における安全確保のため、重要な資料となり、リサイクル工場や廃棄物処理施設のみならず、種々の産業や工場の安全確保に貢献した。その例として、帯電防止用品(フレキシブルコンテナ)の国際規格の制定時に参考とされたこと、関係業界において帯電防止型フィルタに対する見直しの動きが起こりつつあること、関係業界において帯電防止型研磨器が製造され,普及したことなどがある。 6 13 22 0 2 7 労働安全衛生総合研究
今後の産業保健のあり方に関する研究 平成14-16度 32,618 産業医科大学産業生態科学研究所 東敏昭 (ア)国際的な産業保健業サービスの提供内容およびマネジメントシステムへの対応状況の進展とこれに合わせた高次専門家育成の仕組みの変化が知られている。
(イ)産業保健サービスの新たな範囲の定義、労働者個人単位での必要なサービス量と内容、中小零細企業へのサービス提供の仕組みを提起した。
(ウ)産業保健サービス実態分析と必要な内容・方法についての広範な調査結果は、国内およびアジア諸国からの関心をい集めた。
本研究は産業保健サービス業務の内容、各内容の重み、中小規模事業所へのサービス提供の在り方、必要な人材、人材育成の課題について整理したもので、今後の行政が行うサービス提供や内容についての指針やガイドラインの公布の材料を提供している。 産業保健専門職教育・修練内容への反映、人材育成目標の設定、地域の産業保健サービス機関の育成のロードマップの一つになることが期待される。 7 5 2 0 2 2 労働安全衛生総合研究
臭素化ダイオキシン類の毒性評価に関する研究(H14-労働-26) 平成14-16年度 118,379 日本バイオアッセイ研究センター 副所長 山本 静護 ア.行政施策に利用できるダイオキシン類の毒性データは、塩素化ダイオキシン類(TCDD)に限られている。
イ.臭素化ダイオキシン類(TBDD)について以下の毒性が明らかとなった。
(1) 単回経口投与による遅延性毒性および体内負荷量(血液凝固能への影響:死因、 胸腺・肝臓・骨髄への毒性およびTBDDの脂肪蓄積)
(2) 生殖発生毒性および体内負荷量(胎児:奇形や変異、出生児:早熟化、血液学的パラメーターの低下、甲状腺ホルモンへの影響、肝臓中の誘導酵素群の増加、肝組織変化、前立腺重量の低下等およびTBDDの胎盤と乳汁への移行
(3) 経気道投与による毒性および体内負荷量(経口投与による生体影響および体内負荷量の挙動と類似)
ウ.臭素化ダイオキシン類(TBDD)についての毒性が明らかとなった本成果は、関係学術雑誌への投稿を予定しており、国内外からの大きな反響が予想される。
ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年7月16日、法律第105号)、附則の第2条において、臭素系ダイオキシンにつき、人の健康に対する影響の程度等に関する調査研究を推進し、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとされており、本研究結果はそれに資するものである。 TBDDが非意図的に生産される労働現場における労働者の衛生管理に貢献することが期待される。 2 0 2 0 0 0 労働安全衛生総合研究
水素ガス漏洩爆発作業者安全基準策定のための被害評価方法の確立−次世代燃料利用技術開発に伴う災害防止への対応 平成14-16年度 45,146 名古屋大学大学院工学研究科 吉川典彦 (ア)水素−空気混合気爆発の基本特性(層流火炎燃焼速度,火炎伝播濃度範囲等)(イ)異なるサイズの混合気で組織的に実験を行い,水素−空気爆燃の基本特性を明らかにし,スケール則が成り立つ事を明らかにした.(ウ)燃料電池自動車用水素ステーションの安全性に関連するため,学会誌発表と共に,専門誌からの依頼も受けて,最新の研究成果を発表し,注目を集めた. 労働安全の立場から,水素ステーション安全基準策定のための基礎データを収集した.又,爆発危険性評価の実験方法とシミュレーション手法の基盤を確立できた. 従来当該分野の国内研究は遅れていたが,水素−空気爆燃の野外実験を初めて行い,爆発被害評価の研究手法が確立できた意義は大きい.今後,他の爆発性燃料についても,同様の研究手法を適用できる. 1 2 6 0 0 1(「水素ステーション爆発危険性に評価に関する講演討論会」,2003年12月16日,産業安全研究所) 労働安全衛生総合研究
健康増進効果の高い保健指導の方法等に関する研究 平成13-15年度 19,844 聖マリアンナ医科大学医学部 吉田勝美 (ア)健康診断後の適切な事後指導を行うことで健康増進活動を促進できる。
(イ)情報機器を使用することで、時間空間環境の制限無く経時的な事後指導が提供可能であること。健診の経年的データを活用することで、個人基準値の応用により早期の健康異常の検出が可能であること。糖尿病支援システムの構築要素として、継続的情報共有の有用性を明らかにしたこと。(ウ)情報機器を使用した保健指導システム上の評価基準を検討したことにより、システムの客観的評価を可能にした点。糖尿病支援システムの開発要件を明らかにし、知識ベースシステムにより標準化された保健指導を提供でききる点。
糖尿病は国民病として効率的な保健指導が必要であり、本研究が効率的な糖尿病システムの開発に基礎的情報を提供できる点。 保健指導にIT技術を応用することで、時間空間環境の制限を除いて、受診者毎の適切な保健指導が可能になる点。 2 2 4 0 0   労働安全衛生総合研究
数種の食用油に含まれる微量有害因子に関する研究 平成14-16年度 48,100 名古屋市立大学薬学研究科
(現 金城学院大学薬学部)
奥山治美 (ア)数種の食用油は大豆油、シソ油に比べて脳卒中ラットの寿命を異常に短縮し、その活性は脂肪酸組成、植物ステロール含量では説明できない。
(イ)分画により、脳卒中ラットで寿命短縮活性を示さない画分が得られた。血小板減少に関わる組織病変が認められ、食環境に近い量で内分泌かく乱作用を示すことが明らかとなった。動物性脂肪、n-3系油脂が比較的安全であることが明らかとされた。
(ウ)主要な食用油に安全性の問題があり、脂質栄養指針を見直す必要性が明確となった。植物ステロール以外の有害因子が重要であり、微量因子の探索を進めるきっかけが得られた。
○戦後の“バターよりマーガリン”の栄養指導は180度の方向転換が求められている。「日本人の食事摂取基準2005」では、新方向が一部採択されたが、まだ不十分である。
○行政は産学の間にあり、食用油脂の安全性の問題を避けてきたようにみえるが、次世代に影響を及ぼす可能性のあるこの問題に直面することが求められている。本研究ではその必要性を示すことができた。
食品の油脂を、現在の主要植物油、植物硬化油から動物性油脂、n-3系油脂の方向へ転換させる必要があり、日本脂質栄養学会を中心に広報活動を進めている。 10 10 3 2 1 15
(http://www.phar.nagoya-cu.ac.jp/hp/syk/labo.introduction/soc.html)
食品の安全性高度化推進研究
プリオン検出技術の高度化及び牛海綿状脳症の感染・発症機構に関する研究 平成14-16年度 270,000 国立感染症研究所感染病理部 佐多徹太郎 (ア)BSEプリオンの検出法、経口感染したプリオンが延髄かんぬき部に最初に貯留し、中枢神経系その他へ分布すること
(イ)BSEプリオンの迅速・高感度検出法および新規検出法の開発、抗プリオン抗体の開発、非定型BSEの発見、牛プリオン遺伝子改変マウスの開発と脳内接種による伝幡実験、種の壁に関与するプリオン遺伝子の領域の同定、BSE脳病変形成へのサイトカインの役割、牛プリオン遺伝子多型、プリオン不活化機構、食肉への中枢神経組織汚染評価法の開発と評価。ほかについては現在も進行中。
(ウ)BSEプリオンの検出は現在ではもっとも優れたものである。非定型BSEの摘発は世界に影響を与えた。ほかについては今後に予定される成果の前段階が終了したものと考えられる。
BSE確認検査法の樹立(マニュアル作製)とその実施、と畜時の汚染評価法の開発とこの方法による評価、わが国のBSE牛の背根神経節、回腸、末梢神経からのプリオン検出、若令牛および非定型BSEの発見などにより、わが国のBSE対策の科学的根拠を示した。
めん山羊の伝達性海綿状脳症のサーベイランスを実施した。
研究成果が日本発のBSE迅速検査キット“FRELISA BSE Kit(富士レビオ株式会社)”に応用された。
食品安全委員会の中間報告および食品影響評価に研究成果が引用された。
42 5 74 9 4 35 食品の安全性高度化推進研究
食品企業における健康危機管理に関する研究 平成14-16年度 72,000 社団法人 日本食品衛生協会 玉木 武 (ア)近年、食生活の多様化による輸入食品、加工・冷凍食品の増加等に伴い、食品の製造、流通形態が大きく変化している。また、最近では新興感染症病因物質等による食中毒のみならず食品企業に内包される多くの諸問題により、食品事故事例が多発しており、国としても生命、健康の安全を脅かすこれらの事態に迅速・的確に対応することが求められている。
(イ)従来、日本の危機管理は主として、金融分野のシステムが対象とされ、食品企業における危機管理についてはほとんど検討されなかった。そこで本研究班では食品企業における健康危機管理の新しい手法について調査・検討を行い、国民の健康保護に必要な食品安全システムの確立を図るものである。
 この新しい視点からの食品安全対策研究は次に大別される。(1)疫学的手法による食品安全対策の見直し、(2)微生物検出の信頼性確保、(3)流通・販売における安全管理対策、(4)危機管理手法の導入、(5)HACCPシステムの中小企業への導入、(6)新しい問題としての米国の行政・食品企業における食品テロ対策の評価と導入からなる。
(ウ)(1)総合衛生管理製造過程でHACCPプログラムの意味付けを強固なものにするためには、それを補完するシステムとして経済性を考慮したリスクマネジメントプログラムの確立が必要である。また食品衛生法改正による食品営業事業者の責務の必要性は増したが、いまだ各種記録が保存されていない施設が明確になった。そこで食品営業事業者の責務・努力義務に関する実施マニュアル作成を行い普及啓発が必要である。また作業中の記録取りに関しては、人間工学の考え方の導入に関しては、生産性、安全性および快適性の3側面からアプローチを行い、考案した。
(2)自家製管理試料等を用いて,生菌数測定に関わる試験を行い,微生物検査のIQC手法についての方法の組み合わせによる手法を検討したところ、これらの手法は一連の操作と培養系を確認するIQC手法として応用できると考えられた。
(3)精度管理については、それぞれの試験所が実施している検査内容に応じて,適切な技能評価を実施することが望ましいと考えられた。また,いずれの方法においても,継続的に各検査員の技能を評価することが重要と考えられた。
(4)食中毒関連情報のうち、平成14年・15年における全国の食中毒発生事例データベースから「大規模発生事例」を抽出し、「衛生管理手技・システム」「衛生管理知識」の視点の重要性が指摘された。
(5)また食品のバイオテロは、予測不可能な問題が多く、業界団体を中心に食品事業者の責務として対策を講じるには中小企業等においては経営資源的に実行困難な問題を多々抱えているので行政及び団体が特段の支援措置を講じている。このため、IT,バイオセンサー応用等の先端技術、意欲的な企業を巻き込み積極的にテロ対策意識を普及する必要があることが示唆された。
(6)教育機関へのアプローチに関しては、食中毒疫学研修会の教材を作成した。各種教材を利用し、食品衛生教育の充実をはかることができた。
(1)これまでに実施したHACCPに関するアンケートの結果をふまえ、工場や食品の製造現場からリスク連鎖を解明でき効果的な対応が提案できる。
(2)トレーサビリティー(プロダクトトレーシング)の現状を企業の協力を得て行い、企業での適応状況が明らかになり、行政としての対応策が提案される。また、企業の協力を得てICチップによる温度管理の導入の可能性が検討できた。
(3)施設設備関係、製造環境に食品の安全性に関する評価実験を行っていき各工程の詳細な作業内容を記録し精査し、これら作業内容を再確認しながらタスク分析を実施して、効果的な対策が提案できる。
(4)食中毒に関する聞き取り調査等で宿主要因や環境要因に関するデ−タを収集したものについて考察した。
(5)厚生労働省食品安全部監視安全課が公開する食中毒関連情報のうち、平成14年・15年における全国の食中毒発生事例データベースから「大規模発生事例」を抽出する。抽出事例の所管保健所食品衛生担当管理者に対して、質問紙調査を実施し大規模食中毒事例の発生原因となった背景要因について「衛生管理手技・システム」「衛生管理知識」を中心に調査する。必要に応じてインタビュー調査をあわせ原因を具体化・明確化し、厚生労働行政での有益な資料となる。
(6)米国における食のバイオテロ対策が国の諸機関のみならず地方公共団体レベルとも連帯し、情報ネット整備とも並行して行われてきていることに鑑み、地方公共団体レベルにおける研究・行政・保健衛生等の職員等への危機管理体制づくりへの指導・教育・人材養成の方策について考察した。
(7)原因食品と病因物質の異なり、食中毒アウトブレイクの際の調査方法について、また臨床医や医学教育における食中毒診断と届け出義務の周知徹底などに関して、米国疾病管理予防センターや実地疫学のテキスト類を参考に、教材やパンフレットを作成した。
食品営業事業者の責務に関する実施マニュアルを作成し普及させる。 30 9 24 0 7
(研究報告書の作成と配布)
食品の安全性高度化推進研究
バイオフラボノイドの遺伝子再構成作用に関する研究 平成14-16年度 53,500 国立成育医療センター研究所 発生・分化研究部 清河信敬 (ア)バイオフラボノイド(BFN)はトポイソメラーゼII抑制作用により培養血球細胞のMLL遺伝子を切断する。MLL遺伝子の再構成は乳児白血病発症に関与することから、妊娠母体のBFN摂取と胎児の乳児白血病発症との関連性が示唆されていた。
(イ)ヒト造血細胞を移植・生着させた免疫不全NOD/SCIDマウスにBFNを投与し、生体内でもヒト血球のMLL遺伝子切断が起こることを示した。しかし、切断したMLL遺伝子が再構成に至る可能性は非常に低いことが明らかになった。
(ウ)MLL遺伝子切断を含むBFNの血球に対する作用の一端が明らかになり、今後の研究課題としての重要性が示された。
BFNは茶、柑橘類、ハーブ等のさまざまな食材に含まれ、健康食品としても販売されていることから、その大量接種に対して安全性を危惧する報告もあったが、今回の研究の結果はBFN摂取が乳児白血病発症に直結するわけではないことを示唆すると考えられる。ただし、BFNが血球に対して多様な作用を持つことから、今後も慎重に検討を続けて行く必要性が示された。 BFNの血球に対する多様な作用が注目されており、白血病に対する治療薬として応用できる可能性も示された。また、本研究の過程で確立された動物モデルは、今後、食品の安全性高度化推進事業における様々な研究に応用可能である。 7 0 2 0 0 0 食品の安全性高度化推進研究
反復投与毒性や発がん性試験等の実施による既存添加物の安全性評価に関する研究 平成14-16年度 160,000 国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部 西川秋佳 (ア)既存添加物は、平成7年5月の食品衛生法改正にともなう経過措置として使用が認められているものであり、安全性の面からみれば収載品の多くはそれ自体もしくはその基源が長年食用に供されていたなどの経験はあるものの、動物実験などによる毒性試験などの科学的な安全性データに欠けるものも少なくない。
(イ)ガムベース・光沢剤(コーパル樹脂、ホホバロウ、マスチックおよびモンタンロウ)、増粘安定剤(アウレオバシジウム培養液)、苦味料(ヒメマツタケ抽出物)、着色料(アルカネット色素)および製造用剤(メバロン酸)を対象として90日間反復投与毒性試験を実施し、無毒性量を推定した。
(ウ)これら物質の毒性学的プロファイルを示す本成果はFood and Chemical Toxicology等の雑誌に掲載され、国内外から反響があった。
○平成16年6月24日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会で報告。
○平成16年10月4日、11月1日および12月24日の厚生労働省食品添加物安全性評価検討会の審議資料となった。
これらの成果に基づき、安全性に問題があると判明した場合には使用禁止とすることにより、既存添加物の安全性の確保を進め、もって国民の食、特に既存添加物に対する不安に応えることができるようになるものと考える。 44 6 62 0 6 3
(http://www.jpsfc.com),
(http://www.sciencedirect.com/science?),
(http://ifstp.org/)
食品の安全性高度化推進研究
容器包装詰低酸性食品のボツリヌス食中毒に対するリスク評価 平成14-16年度 130,520 岡山大学大学院医歯学総合研究科 病原細菌学 小熊惠二 (ア)(1)ボツリヌスI型菌の芽胞は、嫌気的条件下でpH4.6、Aw0.94以上の状態で発芽・増殖する。代替えにスポロゲネス菌は使用できる。(2)実験動物を使用せずに、微量の毒素を簡単に迅速に検出する方法がない。(3)食品に添加可能な、ボツリヌス芽胞の発芽・増殖を抑制、および(あるいは)、毒素を中和する安全なものはあまりない。
(イ)(1)同じI型菌でも、菌株により芽胞の性状や発芽・増殖の条件は多少異なる。気体透過性のある容器でも、食品により芽胞は発芽・増殖する。調べたスポロゲネス菌芽胞は、pH5.2では発芽・増殖しなかった。(2)A、B、E型毒素を簡単に検出できるイムノクロマト法を開発した。(3)植物由来エキスの中に、芽胞の発芽・増殖の抑制や毒素を中和するものを発見した。
(ウ)ボツリヌスI型菌やスポロゲネス菌芽胞の性状や発芽の詳細な条件を解析(添加実験に使用できるA、B型菌各5株の選定)。毒素検出用イムノクロマト法を開発。中毒の予防や治療の新しい方法の開発。
(1)添加実験の方法の確立。(2)A、B、E型毒素の検出用キットの開発。(3)植物エキスの中毒の予防や治療への応用。 栄養に富んだ容器包装詰低酸性食品では、ボツリヌス芽胞が増殖可能であることを実証した。実際にボツリヌス菌により汚染されていた食肉製品を発見し、その生産工場を指導した。また、香辛料は比較的高頻度にボツリヌス芽胞に汚染されていることも認めた。 34 16 25 3 0 3
1) ボツリヌス菌により汚染されていた食肉製品の生産工場を訪問し、指導した。
2) 容器包装詰食品の取り扱いについて厚生労働省より通知を発出した。
3) 食品微生物学会で特別講演をした。
食品の安全性高度化推進研究
油脂加工食品中に生成する脂質酸化物の安全性に関する研究 平成15-16年度 25,000 東京海洋大学
海洋食品科学科
和田 俊 (ア)酸化した油脂を含む食品(即席麺)を摂取することによりヒトは食中毒(嘔吐、下痢、腹痛など)を起こす。齧歯類を用いた一般毒性試験の結果、過酸化物価(PV)が400meq/kg以上の油脂を数週間投与すると、体重増加が抑制され、毒性が観察されたが、実際の食中毒を起こした食品中のPVは100meq/kg程度である。
(イ)○神経毒性に関わる試験で齧歯類を用いて酸化油脂の毒性を評価した結果、PVが100meq/kg程度でも毒性を呈することが判明した。
○油脂の酸化において、PVが30meq/kgを超えると急激な酸化が開始するため、食品中油脂のPVは30meq/kgを超えないようにすることが望ましいことを示した。
○世界中から集めた即席麺中のPVおよび酸価(AV)を測定した結果、両指標の増加に相関は認められず、AVからPVを予想することは困難であることが判明した。
(ウ)酸化油脂中に神経毒性を呈する物質が存在する可能性を示した。
現在、日本からCodex総会に対し、即席麺の規格基準に関し提案を行っている。本研究成果は、即席麺中油脂の、過酸化物価に関わる規格値を提案する際の基本データとしてCodex総会(The Hague, the Netherlands, 25-29 April 2005)に提出された。(CX/FAC 05/37/37 December2004) ○酸化劣化した油脂中に、神経毒性を示す物質が生成する可能性を明らかにした。これにより、今までより低いレベルの油脂酸化物にも毒性が備わっていることを世に示すことが出来た。
○食品中の油脂をPV:30meq/kg以下に保つことで、食品の急激な酸化を抑制することが出来ることを明らかにした。これは食品衛生法中に定められているPVの上限値を支持する結果である。
6 0 4 0 3 1
http://www2.minlnv.nl/lnv/algemeen/vvm/codex/documenten/2004/CCFAC/fa37_37e.pdf
食品の安全性高度化推進研究
食品中のアレルギー物質の同定と表示方法に関する研究 平成16年度 21,000 藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院小児科 宇理須 厚雄 (ア)甲殻類の主要アレルゲンはトロポミオシンであり、トロポミオシンは甲殻類生物間だけではなく、無脊椎動物間でも交叉反応性を呈する。
(イ)トロポミオシンは甲殻類間では90%前後のアミノ酸配列の相同性がみられたが、甲殻類と軟体動物との間ではそれよりも低い相同性であった。このことはエビアレルギーとカニアレルギーの合併率が約60%であるのに対し、エビアレルギーとイカ・タコアレルギーとの合併率がこれよりも低値であることからも証明された。また、エビ・カニトロポミオシンと軟体類トロポミオシンを区別できる抗体が作製できた。
(ウ)エビ・カニに対して特異的な検知法の開発の目処がついた。しかし、エビとカニと区別する抗体の作製は困難である可能性が高いことが示唆された。今後、エビとカニとを区別する必要があるならばDNAレベルで検知するPCR法の開発が必要であると考えられた。また、臨床データ等から表示対象品目の範囲についてエビとカニを一括りにする対応が妥当であると考えられた。
今回得られた成果はエビ・カニを食品表示義務化する際に必要となる表示方法や検知法開発の科学的エビデンスとなる。 エビ・カニのアレルギー件数は表示義務である特定原材料に次いで高い。また、アナフィラキシーのような重篤な症状も起こすことも多い食品である。エビ・カニが食品表示義務化になれば、これらの誤食を減らすことになり、国民の食の安心と安全に大きく貢献すると期待される 2 0 2 0 0 0 食品の安全性高度化推進研究
アカネ色素の発がん機構に関する実験的研究 平成16年度 18,000 国立医薬品食品衛生研究所 病理部 広瀬雅雄 (ア)アカネ色素は1年以上の経口投与により、ラットの肝臓及び腎臓に発がん性を示すことが明らかにされている。
(イ)腎臓における発がんに、遺伝毒性及び酸化的ストレスが関与していることを明らかにした。
(ウ)アカネ色素が遺伝毒性を示すことは、既に明らかにされているが、肝臓や腎臓における発がんに、遺伝毒性が関与しているか否かは不明であった。本研究により、発がん標的臓器、特に腎臓における腫瘍発生に、遺伝毒性が関与していることが証明された。
アカネ色素は、平成16年7月2日の食品安全委員会において、ADIを設定できないと評価され、既存添加物名簿から削除されたが、その理由は、発がんに遺伝毒性の関与が示唆されるためであった。今回の研究で、その理由の正当性が確認された。 韓国では、中国から輸入されたアカネ色素が、医薬品として使用されてきたが、日本からの情報により、一時的に使用が禁止されている。今回の実験結果は、アカネ色素の使用を全面的に禁止するための資料として、韓国など国外でも使用される可能性がある。 5 0 7 0 0 2 食品の安全性高度化推進研究
スギヒラタケ中の有害成分の分析に関する研究 平成16年度 5,000 国立医薬品食品衛生研究所 食品部 米谷民雄 (ア)平成16年秋に多発した急性脳症の原因として、スギヒラタケ摂取が浮上してきた。スギヒラタケにはレクチンが多いこと、シアンが含まれていることなどが知られていたが、これまで安全と考えられてきたキノコゆえ、成分研究は殆どされていなかった。(イ)重金属分析では水銀濃度が高いことが注目された。カビについてはCladobotryumとTrichodermaが分離された。キノコ成分では、tryptophan、linoleic acid、oleic acid、isoamylamineが同定された。また、スギヒラタケのレクチン解析で耐熱性のレクチンが検出され、さらに、分析した6試料のうち3検体から高濃度のシアン化物イオンが検出された。(ウ)スギヒラタケの成分については殆ど知られておらず、本研究成果は毒性を追及する上で、重要な科学的データになり得ると考えられる。 スギヒラタケによると考えられる急性脳症については、マスコミ等でも報じられ国民の関心は高い。厚生労働省が迅速に原因究明にのりだしたという事実は重要である。原因物質が究明されれば、行政的に対応がとれ、食の安全に大いに寄与できる。平成17年度食品安全行政講習会で、全国の関係者に進捗状況を解説した。 急性脳症との関連において化合物を評価する方法が確立されていないこともあり、未だ原因物質の究明には至っていない。しかし、原因が究明されれば、行政として対策がとれ、また、国民の食生活の安全に寄与するところ大である。 0 0 0 0 0 1(平成17年度食品安全行政講習会で、全国の関係者に進捗状況を解説した。) 食品の安全性高度化推進研究
内分泌かく乱化学物質の作用機構に焦点を当てた新しいハイ・スルー・プットスクリーニング法による内分泌撹乱性の優先順位付けに関する研究 平成14-16年度 230,400 国立医薬品食品衛生研究所 毒性部 菅野 純 (ア)内分泌かく乱化学物質のスクリーニング手法は各種提案されているが、未だ十分にバリデーションがなされ確定されたものはない。
(イ)In silico、レポーター遺伝子HTPS測定系、SPR-HTPS系の3手法について大規模スクリーニングを行い各系の検証及び精度向上を行った。
(ウ)この3手法をはじめとした高速スクリーニングシステムに、in vivoにおける子宮肥大試験やハーシュバーガー試験等の高次スクリーニング試験を組み合わせて用いることで、内分泌かく乱性を確定するための詳細試験に資する化学物質の優先順位付けを、迅速かつ取りこぼしなく行うスキームを確立した。
本研究の成果は、厚生労働省の「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」試験スキーム及びその改訂版に反映された。本研究において構築されたin silico手法を、OECDやECVAMにおける内分泌かく乱化学物質QSARバリデーションに提案した。 本スクリーニングスキームを適用して、より科学的な観点から情報を蓄積し、詳細試験に供する化学物質の科学的根拠に基づくより正確な優先的な抽出が可能となる。これによって、現代生活において利用されている数万に及ぶ身の回りの化学物質の内分泌かく乱性の評価を行うに当たり、この問題の早期解決に貢献することで、国民生活の向上に寄与する。 14 12 32 0 2 http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do 化学物質リスク研究
アロマターゼ高発現KGN細胞および三次元共焦点顕微鏡による内分泌撹乱物質のスクリーニングシステムの開発 平成14-16年度 75,000 九州大学大学院医学研究院病態制内科教授 名和田 新 (ア) エストロゲンおよびアンドロゲンの合成、作用系の基礎的知見(イ)(ア)の知見を踏まえ、高感度で簡易なエストロゲン合成や作用系に干渉する内分泌攪乱物質のスクリーニング系を確立(ウ)エストロゲン合成系のスクリーニングに関しては、ELISA弐よりキット化し、またエストロゲン作用系スクリーング系に関しては、ベンチャー企業を立ち上げた ○成果をもとに、行政的に内分泌攪乱物資津の標準的スクリーニングシステムの一つとして有用である可能性を示唆。 ある農薬や除草剤の作用機構の一端を解明したこと。 29 0 34 4 0 1(http://kyushu.yomiuri.co.jp/kenko/ken_020924.htm) 化学物質リスク研究
水道におけるフタル酸ジ-2-エチルヘキシルの濃縮機構等に関する研究 平成14-16年度 105,000 国立保健医療科学院 水道工学部 国包章一 (ア)フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)がある浄水場でスカムに高濃度で濃縮されている。(イ)浄水汚泥やスカムにDEHPが濃縮されるのは一般的な現象で、除去されたDEHPの大部分は汚泥中に移行する。また、タール系樹脂塗装からのPAH等の溶出は時間経過とともに認められなくなるが、代表的なPAHであるピレンは残留塩素と反応してその酸化物、塩素化物及び臭素化物が生成される。(ウ)浄水処理におけるDEHPの挙動、並びに、ピレンの水中における残留塩素との反応機構が解明された。 ○平成15年水道水質基準改正の基礎となった厚生科学審議会答申「水質基準の見直し等」及びその根拠資料「水質基準の見直しにおける検討概要」に活用。○厚生労働省内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会生体曝露量等作業班報告書に反映。○平成16年5月14日及び平成17年4月28日の厚生労働省水道水質基準逐次改正検討会資料に活用。 浄水場の水質管理において汚泥の管理が重要であることが、全国の水道事業体に広く再認識されつつある。 12 1 30 0 5 0 化学物質リスク研究
試料分析の信頼性確保と生体暴露量のモニタリングに関する研究 平成14-16年度 229,048 東海大学医学部 牧野恒久 (ア)生体試料中からフタル酸エステル類、ビスフェノールA、ノニルフェノールが高濃度に検出されたと報告があったが、信頼性の検証された分析法ではなかった。動物実験からも用量反応的名副作用の報告があったが、動物飼料及び床敷中の各化学物質の分析がされていなかった。(イ)(1)フタル酸エステル類、ビスフェノールA(BPA)、ノニルフェノールにおいて生体試料分析法を開発した。また動物試料中からも化学物質、および植物エストロゲンが検出され、in vivo実験において、実験環境からの暴露を考慮する必要があると考えられた。(2)生体試料中からは特に問題となる濃度の検出はなかった。(3)グルクロン酸未抱合の化学物質は胎児側に移行することを明らかにした。また、フタル酸エステルはゲノムDNAメチル化に変化を与え、一過性の暴露でもその後の遺伝子発現に影響を及ぼす可能性が示唆された。(4)子宮内膜症疾患感受性遺伝子の遺伝子多型を明らかにした。また健常者と子宮内膜症患者におけるタイピングを行った結果、数種の遺伝子型、遺伝マーカーおよび一つの対立遺伝子で統計的な有意差を示した。(ウ)本研究により内分泌かく乱化学物質の分析方法を確立し、生体試料等の分析を行った。また化学物質の分子レベルでの影響の解明を試み、有意な結果を得た。 この成果を元に食品中の内分泌かく乱化学物質分析ガイドラインが策定された。内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書追補(https://www.mhlw.go.jp/shingi/0112/s1226-2.html)及び内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書追補その2(作成中)のホームページに充分に反映された。 信頼性のある生体試料分析法が、必要以上に誇張されて公表された研究データーに対する正しい評価を可能とした。実験動物を用いたデーターの解釈に際しても批判的に評価する必要を認知せしめた。 18 6 19 0 3 5 化学物質リスク研究
前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明 平成14-16年度 235,993 北海道大学大学院医学研究科 岸 玲子 (ア)(1)尿道下裂・停留精巣は妊娠中のホルモン製剤、Diethylstilbestrol (DES)の投与、農業従事、菜食主義者等でリスクの上昇が報告されている。(2)これらの疾患は欧米諸国で有病率の上昇が報告されている。(3)わが国でも、日本産婦人科医会のモニタリングで、尿道下裂の有病率の上昇が報告されている。(4)低出生体重と母親の喫煙との関連は知られているが、葉酸摂取との関連は一致した結果は得られていない。(5)尿道下裂、停留精巣のリスクと低出生体重との関連は知られているが、感受性素因に関してはよくわかっていない。(6)初産婦は経産婦に比べ血中ダイオキシン濃度は高い。有機フッ素系化合物の汚染状況はよくわかっていない。(イ)(1)我々が行った北海道の病院ベースの調査では、尿道下裂の有病率に有意な変動はみられなかった。(2)妊娠12週時の血清葉酸値が最も低い群(5.7ng/ml以下)で出生時体重との間に負の関連がみられ、喫煙群の児は、身長、体重ともに有意に小さかった。(3)母親の異物代謝酵素遺伝子CYP1A1変異型アリルを少なくとも1つ持つ場合、野生型と比較して、児の尿道下裂に対して有意なオッズ比の減少を示した。また、異常分娩、妊娠初期・妊娠中の父の職業性ディーゼル暴露、喫煙で停留精巣に対する比の上昇がみられた。(4)有機フッ素化合物PFOSは母体血全例から検出され、胎盤から胎児に比例的に移行することが明らかになった。(ウ)本研究では、疫学データの蓄積によって、尿道下裂の母親の感受性素因、有機フッ素系化合物の胎盤から胎児への移行等これまで明らかでなかったことを示し、国内外で大きな反響があった。 厚生労働省内分泌かく乱化学物質の健康影響評価に関する検討会の疫学班、曝露班において中間報告書作成に加わり、化学物質のリスクの総合的かつ迅速な評価、規制基準の設定など施策に有用な情報を提供し、貢献した。 妊娠初期の血清葉酸値が低値になると、出生時体重に影響を及ぼす可能性があり、周産期における葉酸摂取の重要性を本邦ではじめて明らかにすることができた。 22 9 52 0 2 5 化学物質リスク研究
内分泌かく乱物質・ダイオキシン類の小児、成人の汚染実態および暴露に関する調査研究 平成14-16年度 598,000 慶應義塾大学医学部病理学教室 山田健人 (ア)内分泌かく乱物質の人体での蓄積状況は、血液、母乳で調査されていた。(イ)人の主要な臓器での内分泌かく乱物質の蓄積状況が明らかとなった。(ウ)同一の人での各臓器での内分泌かく乱物質の蓄積パターンがわかったことから、腸肝循環での代謝や加齢との関係が明らかとなり、Environmental Health Perspectivesなどで発表し評価されている。 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会などで報告し、「内分泌かく乱化学物質の現状と今後の取組」へ反映された。 低暴露集団である大学病院での剖検症例において、内分泌かく乱物質化学物質の暴露状況が明らかとなり、その濃度から、現状では臓器障害に直結している可能性は低いことを明らかにし、国民の不安に対する一つの回答を示した。 6 1 12 0 0 2 化学物質リスク研究
内分泌 かく乱物質と大豆等既存食品の発育・癌化及び内分泌かく乱作用の比較 平成14-16年度 43,900 関西医科大学 医学部 螺良愛郎 (ア)食品中にはエストロゲン活性をもつ天然(phytoestrogensやmycoestrogens)ならびに合成化学物質(industrical chemicals)が存在し、生体に内分泌かく乱作用をきたす。また、農薬(agricultural chemicals)の中にはエストロゲン活性を呈するものが知られている。(イ)食品関連化学物質の中でエストロゲン活性はmycoestrogenが最も高かった。実験動物へのmycoestrogen(Zearalenone やZeranol)の周生期暴露では、無排卵性卵巣をみた。また、エストロゲン活性の見られた農薬を組み合わせたところ、単独の場合よりエストロゲン活性が増強するものがあった。(ウ)mycoestrogenやphytoestrogenの生体に及ぼす影響についての成果は複数の英文誌に掲載されている。なお、農薬を組み合わせて得られたエストロゲン活性値は、残留農薬分析値を勘案すると、通常の農薬使用では、人体に影響を及ぼす濃度を下まわっていた。 Zearalenoneはカビに汚染された食品に存在し、Zeranolは米国では家畜の発育促進剤として使用が許可されていることから輸入食肉に含まれている可能性がある。本成果は食品中の許容量のガイドライン作成の基礎データーとして貢献しうる。 胎児期・新生児期の食品関連化学物質の生体影響の分析は次世代に及ぶ食習慣改善への提言となりうる。 9 1 13 0 0 0 化学物質リスク研究
内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する疫学研究 平成14‐16年度 141,400 国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部 津金昌一郎 (ア)有機塩素系化合物などの化学物質には内分泌かく乱作用があると疑われているが、日本人を対象とした疫学研究による証拠はほとんどない。 これまでの疫学知見のまとめの成果をもとに、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」による中間報告書追補その2の作成に貢献し、これまでにヒトに対して内分泌かく乱作用が確認された事例がなく、関連がないという結論の基礎データを作った。 平成14年度に、「内分泌かく乱化学物質と人への健康影響との関連−疫学研究からの知見−(平成13年12月、厚生労働省内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会・暴露疫学等調査作業班(班長:紫芝良昌)・疫学サブ班(サブ班長:津金昌一郎))報告書」の全文をインターネット上で公開した。また、それ以降に出版された原著論文についても疫学知見をまとめ、インターネット上に公開した。さらに、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」による中間報告書追補その2に収録される疫学知見に関する情報も公開する予定である。 11 1 16 0 1 1 (http://epi.ncc.go.jp/) 化学物質リスク研究
          (イ)子宮内膜症と血清中ダイオキシン22項目、PCB類36項目、有機塩素系農薬類13項目との関連を検討したところ、これらの化学物質は子宮内膜症のリスクに関連していなかった。尿中イソフラボンレベルが高い群では子宮内膜症のリスクが低いことが観察された。エストロゲン合成・分解に関与している代謝酵素のCYP17、CYP19、HSD17B1、CYP1A1、CYP1B1、COMT、GSTの遺伝子多型、さらにERαのXbaI、PvuII、ERβのRsaI、Alu I遺伝子多型、ダイオキシン類のレセプターである AhR、ARNT、AhRのdown regulatorであるAhRRの遺伝子多型について分析を行い、子宮内膜症症例と対照の間で遺伝子多型頻度を比較したところ、HSD17B1とAhRR多型において統計学的に有意な差が認められた。また血清中有機塩素系化合物濃度と魚摂取頻度の間に関連が見られた。乳がんに関して、既存の住民対象大規模コホート研究のデータを用いたコホート内症例対照研究と長野市内の病院を中心にした症例対照研究を行った。それぞれ血中化学物質の測定が進行し、疫学研究において両者の関連を検証することが可能になった。また、2001年1月1日以降に出版された疫学原著論文を収集し、ヒトへの健康影響についての疫学知見をまとめた。                 化学物質リスク研究
          (ウ)本研究は、日本人が社会で現実に曝露しているレベルにおける内分泌かく乱作用が疑われる化学物質の健康影響を評価した点において意義深く、国民の健康リスク評価の際の一つの有用なエビデンスとなった。すなわち、子宮内膜症の発症にダイオキシン類、PCB、有機塩素系農薬類などの内分泌かく乱作用が懸念される化学物質が関与しているという証拠は得られなかった。また、これまでの疫学知見のまとめより、現時点では世界的に見ても合成ホルモン剤の薬理効果のような例を除けば、人間集団において内分泌かく乱化学物質による健康影響が確実であると確認された事例はないという現状に変化がなかったことが確認された。                 化学物質リスク研究
内分泌かく乱物質PCBと子宮体がん発生リスクに関する症例対照研究 平成14-16年度 65,700 東北大学大学院医学系研究科 八重樫伸生 (ア)PCBは残留性と毒性が強くエストロゲン様作用があるために子宮体がんとの関連が疑われているが、科学的に質の高い疫学的検証は未だ行われていない。(イ)脂肪摂取と炒め物、揚げ物の摂取頻度が高いほど子宮体がんの発生リスクが上がることが示された。また症例群でTri-PCBs、Tetra-PCBs、Mono-PCBsが多く、ビタミンEとβカロテンが少なかった。(ウ)本研究の途中経過を日本婦人科がん検診学会、日本産科婦人科学会で成果を発表し、大きな反響があった。 本研究成果が子宮体癌検診のガイドライン策定(日本産科婦人科学会作成)の資料として使われた。また本研究成果を参考にしながら子宮体癌の治療ガイドラインを策定中(作成副委員長:八重樫伸生)である。 高分解能GC/MSを用いた特定異性体によるPCB簡易分析法の開発を行った。UNEP-7異性体またはUNEP-30異性体を用いて、相関式より得られたファクターより全異性体のTotal-PCBs濃度が推測可能であることを確認した。これによりUNEP-7異性体またはUNEP-30異性体を用いる簡易分析の有用性が示された。 20 10 5 0 0 2 化学物質リスク研究
化学物質によるヒト生殖・次世代影響の解明と内分泌かく乱作用検出のための新たなバイオマーカーの開発 平成14-16年度 49,400 名古屋大学大学院医学系研究科 那須民江 1)有機リン系殺虫剤
(ア)疫学情報はごく少ない。
(イ)職域暴露作業者、非暴露対照者の性ホルモン、精液指標、尿中代謝物量、代謝酵素多型、尿中8-OHdGが測定された。
(ウ)同一対象者で散布の繁忙期、閑散期の季節変動データを含む世界的にも貴重な調査結果である。
1)有機リン殺虫剤の尿中代謝物の高感度迅速測定法を開発し、対照群と殺虫剤散布者の尿中代謝物を測定した。この内容は、平成16年12月1日第16回内分泌かく乱物質の健康影響に関する検討会でとりあげられた。また、精子数に関する発表論文は「同検討会中間報告書追補その2」に引用された(p226,241等)。 1)尿中代謝物測定による一般および職域集団での暴露モニタリングは国内では実施例がごく限られ、当該分野をリードしている。特に、一般集団でのデータは皆無なので、疫学的に代表性のある集団のモニタリングを行い、日本人における暴露の実態を明らかにしたい。 4 0 6 0 1 0 化学物質リスク研究
          2)臭化メチル: (ア)ヒトにおける生殖毒性の報告は、急性暴露、慢性暴露とも皆無である。しかし、ラットとマウスの吸入実験で、精母細胞および精子細胞に変性が量反応的に生じる。(イ)今回調査した製造職域での暴露レベルでは、生殖器系への悪影響は観察されなかった。(ウ)現在論文執筆中。現行の許容濃度は生殖次世代影響の予防上問題ないことを示唆。 2)臭化メチルは2005年に全廃の方針であるが、一部不可欠用途および検疫処理に関しての使用は認められている。調査した職域での暴露濃度程度では生殖系への悪影響は観察されなかった。代替物質が無いのであれば、現行の健康管理方法で使用可能であろう。 2)類似構造化合物の1または2-ブロモプロパンで生殖器影響のみられることから、暴露量のより多い他の職域で生殖次世代影響の有無を継続して調査することにより、構造活性相関に関する情報をヒトで得られる。 1 0 2 0 0 0 化学物質リスク研究
          3)有機溶剤: (ア)グリコールエーテル類やブロモプロパンによる生殖腺への影響、有機溶剤への暴露による妊孕性の低下等が外国で報告されているが、日本でのデータは皆無に近い。(イ)不妊外来受診者の8%が職業性有機溶剤暴露歴を有していた。(ウ)まだ結論が得られていないが、日本の暴露の実態下での日本人でのデータは重要。 3)不妊外来受診者では、職業性に有機溶剤暴露歴のある者のほとんどが有機溶剤中毒予防規則にもとづく特殊健康診断を受けていなかった。今後、健康管理の充実が必要な業種、職種を明らかにしたい。ちなみに、北欧では妊娠中は許容濃度の10%の暴露にとどめる管理が行われている。 3)有機溶剤の生殖次世代影響に関してはまだ結論は得られていないが、調査を継続して、重症度の高い不妊患者と有機溶剤暴露との関係を明らかにする必要がある。 0 0 0 0 0 0 化学物質リスク研究
          4)有機スズ: (ア)トリブチルスズやトリフェニルスズ等の有機スズはイボニシのインポセックスの原因、しかし疫学研究はきわめて乏しい。
(イ)塩化トリメチルスズの生殖器、甲状腺への悪影響は観察されなかったが、神経系への影響は明らかに観察された。
(ウ)現在論文執筆中。
4)トリメチルスズの疫学調査はわが国では不可能である。中国での中毒患者の調査では生殖次世代影響は認められなかったが、神経系への影響は観察された。注目する健康影響を神経系に移し、さらに詳細な調査を行ってわが国における有機スズの行政的対応の知見とすべきである。 4)有機スズに関してはイボニシのインポセックスの原因として社会で認識され、生殖器への影響ばかりが注目されてきたが、今回の疫学調査結果は生殖器より神経系に注目すべきであることを示唆する。子供の神経の発達や、老年期の記憶障害との関連性等に焦点を移し、有機スズの問題に対峙する予定である。 1 0 0 0 0 0 化学物質リスク研究
          5)バイオマーカー: (ア)生殖次世代影響のマーカーとして、精液指標、血中性ホルモンレベル、有機リンの低用量暴露のバイオマーカーとして尿中のジアルキルリン酸(DAP)が知られている。
(イ)新しいバイオマーカー候補として精子クレアチンキナーゼ、尿中8-OHdG、感受性のマーカーとしてPON1遺伝子多型の解析が試みられた。また、既報のDAP測定法を改良し、多検体の迅速処理が可能になった。
(ウ)DAP測定法に関しては論文投稿中、8-OHdGとPON1遺伝子多型に関しては投稿準備中である。調査を継続して学術論文として完成させる。
5)新しいバイオマーカー候補として精子のクレアチンキナーゼ活性が開発された。疫学研究でその有効性を確認して、生殖次世代影響のマーカーとして使用することが望まれる。また、尿中有機リン代謝物量は対照群の中に散布者より高いレベルで検出される者がいた。これは一般生活者中における殺虫剤暴露量が多い者の存在を示すものであり、行政的に注視する必要がある。 5)国内化学物質取り扱い職域での精液検査実施実績において当該分野をリードする。化学物質等に暴露する作業者に、男性生殖機能の健康管理に潜在的な不安があってもとりあげられることの全くない現状において、職域で生殖機能調査を行ったこと自体に社会的なインパクトがある。 2 1 7 0 1 0 化学物質リスク研究
内分泌攪乱物質のリスク・コミュニケーションに関する研究 平成14-16年度 66,100 慶応義塾大学商学部 吉川肇子 (ア)原子力、環境、化学物質一般のリスク・コミュニケーションについて、マニュアルおよび手法は、主に外国文献の翻訳紹介の形で出版されている。それらの中では、御製と国民とが相互理解を図ることが重要であると指摘されてきた。(イ)内分泌かく乱化学物質の健康リスクに対しては、相互理解を深めるだけでは十分でなく、行政が国民の健康を守るためにより積極的にリスク・コミュニケーションを行う必要がある。そのための具体的な手法やガイドラインが、日本人のデータ(調査および実験による)を基に作成された。(ウ)内分泌かく乱化学物質はもとより、健康リスクに関して、日本人のデータを基にしたリスク・コミュニケーションのガイドラインは初めてのものである。また、言語表現の検討のように、他分野のリスク・コミュニケーションにもない資料を得たことは今後の学術的研究の基礎ともなるものである。 ○内分泌攪乱化学物質のリスクコミュニケーションガイドラインとして提出した○平成17年3月31日発表「内分泌かく乱化学物質御健康影響に関する検討会中間報告書追補その2について」に反映された。○平成16年12月10日行政担当者向けリスク・コミュニケーショントレーニングセミナーを開催した。 ○成果をまとめ、「健康リスク・コミュニケーションのための手引き」(仮題)として出版予定である。 2 0 5 0 3 ○平成16年12月11日一般国民向けシンポジウムを開催○一般国民向けパンフレットを作成 化学物質リスク研究
ダイオキシン類汚染に起因する悪性新生物死亡の超過リスクに関するコホート研究 平成14-16年度 73,800 国立保健医療科学院技術評価部 丹後俊郎 (ア)ごみ焼却施設周辺における悪性新生物死亡の超過リスクに関してはよく分かっていなかったのが現状。(イ)本研究の結果、悪性新生物13死因すべてにおいて統計学的に有意な超過リスクが観察されなかった。(ウ)ダイオキシン類のヒトの健康影響に関する分野で、国際的なリスク評価に資するデータが日本から発信できた点は学術的意義が大きい。 本研究の結果は、世界で初めての大規模コホート調査で得られた疫学的証拠であり、この問題に対する的確な対策を推進するための重要な情報を提供するものと考えることができると考えている。 過去20年に関して、ごみ焼却施設周辺におけるダイオキシン類の健康影響、特に、悪性新生物に対する影響が観察されなかったという結果は、国民の間のいたずらな混乱・不安をある程度解消するための結果であると考えている。 1 1 4       化学物質リスク研究
臭素化ダイオキシン類に係る労働現場のリスク評価研究 平成14-16年度 231,197 中央労働災害防止協会 労働衛生調査分析センター 櫻井治彦 (ア)臭素化ダイオキシン類のヒトリスクにつては全く未解明の状態である。(イ)本研究では焼却作業場、家電リサイクル工場、プラスッチック成形工場を対象として、空気中臭素化ダイオキシンを定量的に測定し、更に臭素系難燃剤のばく露モニタリング、健康影響、血液中の臭素化ダイオキシン類の高感度微量分析法の開発および生体試料の分析を行った。(二)労働者の健康確保の立場から、臭素化ダイオキシンのばく露実態を把握でき、リスク評価及びリスクの判定ができた。 化学物質による労災は、年に300〜400件発生しており、また臭素化ダイオキシン類は、塩素化ダイオキシン類と同様の猛毒物質と考えられていることから、そのリスク評価を行うことは、労働行政としてこの問題に対処でき、かつ資となる。 塩素化ダイオキシン類は、国民に大きな健康不安を引き起こし、労働環境にも飛火したが、それは科学的データがないことに起因する。臭素化ダイオキシンに関してはリスク評価、リスクの判定が行われたので行政として十分に説明ができ、必要な対策を講じることも可能である。   2 5       化学物質リスク研究
コプラナーPCBの非ダイオキシン毒性の識別によるダイオキシン耐容摂取量の設定の在り方に関する研究 平成14-16年度 44,658 東京大学大学院医学系研究科附属 疾患生命工学センター 遠山千春 (ア)コプラナーPCB異性体の毒性強度は、2,3,7,8-四塩素化ジベンゾーp-ジオキシン(TCDD)に対する相対毒性として表すことができる。(イ)複数種のコプラナーPCB異性体は、記憶学習機能や免疫機能、甲状腺ホルモン・レチノイドの恒常性維持に対する非TCDD毒性を有する。(ハ)毒性等価係数(TEF)の見直しの基礎となる知見を提供した本成果は、ダイオキシン国際会議など専門家会合で注目を浴びた。 2005年6月に参加予定のWHOのIPCS主催によるダイオキシン類TEFデーターベースの見直しに関するシンポジウムにおいて、本成果を基礎データとして提出する。 本成果を踏まえ、主任研究者は、欧州食品安全局(EFSA)で2004年6月にブリュッセルで開催されたTEFの見直しのための専門家会合に招聘された。 8 14 69 0 1 4 化学物質リスク研究
フタル酸/アジピン酸エステル類の生殖器障害に関する調査研究 平成14-16年度 84,000 国立医薬品食品衛生研究所 病理部 渋谷 淳 (ア)・フタル酸エステル類による発達期毒性は,げっ歯類を用いた研究で精巣障害に起因する雄での障害性のみが知られ,それに基づいてNOAEL等の評価が行われている。
・フタル酸エステル類による発達期毒性に対する脳の性分化障害の関与についての報告はない。
・アジピン酸エステル類による発達期性分化障害は確認されていない。
・脳の性分化障害評価手法として有効な手法は確立されていない。
・フタル酸エステル類による精巣毒性に関して,基礎疾患存在下での修飾影響は検討されていない。
・DEHPはカニクイザルやマーモセットで精巣毒性を誘発しないことが報告されているが,フタル酸エステル類による精巣毒性の感受性種差を規定する要因の検討は殆どなされていない。
・フタル酸エステル類による精巣毒性の感受性種差を含むメカニズムに関して分子的な検討はなされていない。
今回得られた成果は,フタル酸/アジピン酸エステル類の安全性評価の際,問題となる不確実性に関する新たな内容を数多く含んでおり,今後開かれる審議会の重要な資料になると考えられた。 ・関連技術として,パラフィン包埋組織からマイクロダイセクション法により採取された特定の細胞集団での遺伝子発現解析手法の開発が,国内外を問わず高い評価を得ている。  ・成果の一部については,2005年3月31日に開催された学会などで,シンポジウム講演を行った。 40 3 34 0 0 0 化学物質リスク研究
生活環境中微量化学物質に対する感受性決定に関する遺伝子群の解明 平成14-16年度 125,122 東北大学大学院薬学研究科 永沼 章 (ア)対象とした環境化学物質に対する感受性決定に関与する遺伝子は数個しか判明していなかった(イ)総計311個の遺伝子を新たに同定するという画期的な成果が得られた(ウ)本研究で用いた感受性決定遺伝子検索法の有用性が明確に示され、今後の薬毒物の感受性決定機構解明研究の飛躍的進展をもたらすと思われる。 本研究課題は非常に重要で社会的要請度も高いにもかかわらず、その困難さから実りある研究がほとんど行われてこなかったものである。今後は本研究で得られた成果が突破口となり、高感受性グループの特定が容易に実施されるようになり、化学物質による健康被害の低減化につながるものと期待される。 化学物質に対して高い感受性を示す人々を遺伝子診断で特定できる可能性が示されたことから、本研究成果を基礎とすることによって将来的には化学物質による健康被害に悩む人々の救済に大きく貢献できると思われる。 3 6 49 0 0 0 化学物質リスク研究
胎生期の水銀およびカドミウム曝露による神経行動毒性の高感受性群におけるリスク評価に関する研究 平成
14-16
年度
69,300 東京大学大学院
医学系研究科
人類生態学分野
渡辺知保 (ア)メチル水銀(MeHg)の発達毒性は明らかだが,遺伝的修飾要因については未知である.カドミウム(Cd)については発達毒性の有無も不明である.(イ)メタロチオネイン欠損ならびに加齢はMeHg発達毒性の修飾要因となった.Cdも発達毒性を有することが示唆された.MeHg,Cdともに新生仔甲状腺ホルモン環境をかく乱した.(ウ)水銀の行動毒性の遺伝的修飾は,専門誌に掲載された.両金属の甲状腺ホルモンへの影響は新しい毒性のターゲットとして注目される. 遺伝的要因,加齢によるMeHgの発達毒性の修飾は,現実的なリスク評価の上でのインパクトは大きい.Cdの発達毒性についても,特に甲状腺ホルモンとの関連が解明されれば,リスク評価上での評価がやはり高いので,公表を急ぐ. 5 19 26 0 0 1
(www.humeco.m.u-tokyo.ac.jp のHPにコンテンツ作成中)
化学物質リスク研究
室内汚染微量化学物質の生体モニタリングと健康影響との関連に関する研究 平成14-16年度 68,500 京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻 内山巌雄 (ア)これまで生体内試料を用いた室内汚染微量化学物質(VOCs)の測定法は確立していなかった(イ)尿中のVOCsの測定法を確立し、室内空気中濃度との関連、一般人、有症状者のVOCs濃度を確認した。アルデヒド脱水素酵素欠損マウスを用いて個体差を解明した。(ウ)生体内のVOCs濃度の経時変化を治療の生活指導に利用できることが示唆された。遺伝因子による感受性の個人差をモデル動物により解析し、定量化することに成功した。 ○成果をもとに病院外来患者の検査を試行している○平成16年3月23日第10回シックハウス問題に関する検討会でアセトアルデヒド曝露に対する日本人の高感受性(約6倍)の可能性を報告。基準値作成の際に、日本人特有のALDH2不活性型のヒトを考慮に入れなければならない根拠を示した。 ○尿中のVOCsの測定依頼の問い合わせがある。○遺伝因子によるヒト感受性の個人差を、遺伝子改変動物をもちいて検討することの可能性を示し、国際的にもこの分野でリードしている。 3 4 64 1 2 6 化学物質リスク研究
家庭用品における製品表示と理解度との関連及び誤使用・被害事故との関連の検証に関する研究 平成14-16年度 79,230 財団法人日本中毒情報センター 吉岡敏治 (ア)家庭用品における成分表示、使用上の注意等の製品表示について、記載内容の実態、及びその有用性評価に関する調査は、これまでほとんど報告されていない。カビ取り剤・漂白剤等、一部の家庭用化学製品において製品表示の指導がなされているに過ぎない。(イ)家庭用品による健康被害事故防止の観点から現状の製品表示の問題点と製品表示作成者の自社製品による健康被害に関する危険認識度を明らかにした。家庭用品による事故は、用途だけでなく、「成分の毒性・性質」「剤型」「容器」「使用方法」「使用場所」等の種々の要因が複合的に作用した結果発生していることが判明した。本研究で得られた基礎資料に基づき次の各種データベースを構築しガイドライン等を提案した。業者名から当該製品による事故事例を迅速に報告できる『日本中毒情報センター事故状況報告システム』、製品表示作成者が製品の特徴(含有成分、剤型、容器、使用方法、使用場所)を選択入力することにより、関連する家庭用品による事故事例と対策上必要な表示内容を確認できる『製品表示内容提案データベース』、実際の製品表示を評価するための『製品表示評価データベース』を構築し、『応急処置の表示内容に関するガイドライン』、漂白剤等17種の製品の表示見本と事例集からなる『製品表示改善案』を提案した。(ウ)日本中毒情報センターが把握する健康被害状況に関する情報を活用した個別製品(群)毎の製品表示の作成が可能となった。日本中毒情報センターが製品表示作成者に事故の発生状況を報告することで製品表示作成者の危険認識度を高めることができる。 ○化学物質リスク研究のシンポジウム(2005年2月東京、3月大阪)において本研究の成果を報告し、国民および関係者の理解を得た。○本研究で得られた基礎資料および各種データベースをはじめとする成果は、家庭用品の安全対策として実施されている「安全確保マニュアル作成の手引き」や「商品群ごとの自主基準」について、その改良や未作成の製品群に関してこれらを作成する際の基礎資料となりうる。 ○56社の業者に日本中毒情報センターが把握している当該製品の事故発生状況を報告。数社から製品表示作成時や製品の製造・販売・輸入を決定する際にアドバイスがほしいとの要望があった。○本研究の成果を2004年6月に洗浄剤・漂白剤等安全対策協議会総会、2004年11月に生活害虫防除協議会総会にて報告。生活害虫防除協議会では同協議会のホームページから日本中毒情報センターのホームページへリンクすることをはじめ、あらためて健康被害事故の発生防止や事故対応にあたる予定である。○本研究の成果は、家庭用品関連業界団体、各個別業者と日本中毒情報センターの緊密な連絡体制を整えることはもちろん、行政と連携することにより健康被害事故防止に有用な製品表示作成システムに発展していく。消費者に対する健康被害事故防止や対応のための啓発・教育活動を強化することにより、さらなる被害事故防止効果が期待できる。 8 5 25 0 0 5(化学物質リスク研究推進事業シンポジウム「健康な生活環境の設計に向けて〜生活環境中の化学物質に関する研究」 東京、大阪、2005年2月,3月)(洗浄剤・漂白剤等安全対策協議会総会、2004年6月)(生活害虫防除協議会総会、2004年11月)(http://www.j-poison-ic.or.jp/homepage-k.nsf) 化学物質リスク研究
中枢神経系に影響を与える内分泌かく乱化学物質の順位付けとヒトでのリスク予測と回避法の研究 平成14年〜16年度 97,500 大阪市立大学大学院医学研究科 舩江良彦 内分泌かく乱化学物質は、生殖器への影響のみならず、中枢神経へも作用する。
ビスフェノールAはラット脳細胞の発達期にシナプトゾームに存在する、protein disulfide isomerase (PDI)に結合し、甲状腺ホルモンをかく乱することによって中枢神経系に影響を与えることが示唆された。中枢神経系に影響を与える化学物質の評価法を開発した。
ビスフェノールAの結合たんぱく質がPDIであることを発見したことは、内分泌かく乱化学物質の生体への影響を研究していく上で、画期的な発見である。
PDIに対する結合実験から中枢神経系への影響を予測する方法が開発されたので、この評価法を利用し、中枢神経系への影響が疑われる化学物質の一斉点検が可能になる。 甲状腺ホルモンは、PDIを介してかく乱されるという機構解明は、これからの社会的に大きなインパクトを与えることと確信する。 5 3 15 2 0 0 化学物質リスク研究
薬物動態関連遺伝子多型の人種差に関する研究 平成14-16年度 36,400 千葉大学大学院薬学研究院 千葉 寛 (ア)トランスポーターの遺伝子多型と人種差に関する情報はP糖タンパクに限られていた。
(イ)OATP-C、BCRPなど多くのトランスポータの多型と人種差に関する知見を明らかにした。
(ウ)Clin Pharmacol Ther をはじめとする臨床薬理顎関係の一流雑誌に成果が発表され、大きな反響があった。
医薬品の許認可に必要な、薬物動態の人種差に関する基礎的情報基盤を構築した。   10 2 36 0 0 1 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
医薬品の最新品質管理技法の導入及び薬事法改正への対応等による日本薬局方の質的向上並びに信頼性確保に関する研究 平成14-16年度 42,000 国立医薬品食品衛生研究所 大阪支所 谷本 剛 (ア)日本薬局方の質を向上させ、その信頼性を確保するための総合的かつ体系的研究が行われた例はほとんどない。
(イ)日局収載品目の充実方策、薬局方外基準書の有効活用法、標準品の整備充実方策、医薬品添加剤の国際調和の推進方策、最新の高度品質管理技法試案などを提言して、日本薬局方の質的向上を図った。薬事法改正を踏まえた日本薬局方の質的向上及び信頼性確保のために、品質に関連する承認事項の軽微な変更の範囲及び日局の新しい構成のあり方を提示した。
(ウ)本研究で提言した日本薬局方の質的向上と信頼性確保のための方策が行政施策に反映され、欧米薬局方に比肩できる高水準の日本薬局方の作成が可能になった。
○提示した日局収載品目選定指針をもとに、日局15の新規収載品目約350品目が選定された。 ○収載品目の充実を図るために構築した新審議システムを行政当局が採用し、新たに日局原案事前整備検討委員会が組織され、その運用が開始された。 ○提示した「原案評価指針」(案)に基づいて当局は「日局原案整備指針」を作成し、原案の事前整備に活用している。 ○作成した日局収載医薬品改正履歴に基づいて、当局は既収載品目の改正計画に着手した。 ○提示した局外規第三部の具体的活用法は日局各条委員会審議で利用されている。 ○局外規第四部の具体的活用法は日局抗生物質委員会審議で利用されている。 ○標準品に関する提言をもとに、当局は日局標準品委員会を組織して日局標準品の整備・充実策について検討を開始した。 ○BSE問題への対応として、ウシ脳を原料とする標準品の代替標準品を確立し、日局14第二追補(厚生労働省告示第461号:平成16年12月28日)に反映された。 ○BSE問題への対応として、ウシ脳及び血液を使用する医薬品試験法の代替試験法を確立し、日局14第二追補(厚生労働省告示第461号:平成16年12月28日)に反映された。○無機性不純物のプロファイル分析法として作成した高周波誘導プラズマ分析法を日局一般試験法に収載するために日局理化学試験法委員会に提出予定。 ○本研究の成果をもとに、薬事法改正に伴う日局15の全体的な構成のあり方が決定された。 行政当局が研究成果を施策に反映させ、その着実な実施によって、日本薬局方の国際的な地位が高まり、国内的には薬業界の新薬申請や品質管理などに利便性を与えている。 1 3 4 0 16 10 (日局医薬品各条の原案作成に関する薬業界への説明会:H14.09.30、H14.11.28、H14.12.02、H15.10.22、H16.07.05、H16.07.14)、(日局標準品品質標準の原案作成に関する薬業界への説明会:H16.02.10)、(日本薬局方の改正動向に関する地方薬事行政官への講演:H15.10.31) (薬業界に対する研究成果報告会:H15.11)、(薬局方に関する産業界、学界、官界に対するシンポジウム:H16.10.29) 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
重篤な循環器系副作用(QT延長症候群等)の症例情報の収集・評価及びそれに基づく併用薬剤等のリスク因子の解明に関する研究 平成14-16年度 21,880 国立循環器病センター心臓血管内科 鎌倉史郎 ア)種々の薬剤でQT延長が生じることが知られている。イ)本邦において薬剤性QT延長をもたらす原因薬剤、疾患、病態を明らかにして、データベースと検索システムを構築した。心電学的手法で潜在性QT延長症候群の遺伝子型を診断する方法を確立した。薬剤性QT延長症候群の動物実験モデル、分子薬理学的手法を開発した。ウ)作成したCD-ROMは薬剤誘発性QT延長症候群の情報の収集や検索を容易にして有害事象防止のための医薬品安全対策に貢献できる。また医療関係者の研修用の資料としても活用しうる。通常QT延長症候群の遺伝子解析には時間を要するが、本法を用いれば遺伝子解析に先立って、QT延長症候群の遺伝子型を推定できる。 本邦において、薬剤誘発性QT延長症候群の発生を監視し、情報を提供する施設は未だないが、将来設置されるべき公的機関(薬剤性QT延長監視センターのような)の基盤作りがなされたと考えられる。 薬剤性QT延長症候群の動物実験モデル、分子薬理学的手法は今後さらに発展すると思われる。 38 16 82 0 0 薬剤誘発性QT延長症候群の文献・情報検索用CD-ROM作成、ホームページhttp://www.nms.ac.jp/Qtdrugs、シンポジウム開催予定(2005/5/30,第20回日本心臓ペーシング・電気生理学会にて) 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
医療用具の適正使用に係る添付文書情報の提供システムの開発に関する研究 平成14-16年度 48,780 財団法人医療機器センター 箭内 博行 (ア)医薬品の添付文書情報システムは既に構築済み(平成11年5月からインターネットで運用・公開)だが、医療機器版は存在しなかった。(イ)医療機器の添付文書情報システムのシステム開発を終了した。(ウ)医療機器の操作法・図面などを記載した添付文書情報システムが活用されれば、医療機器の適正使用が推進され、医療安全の向上に繋がる。 本研究の成果を受けて、今後、事業として独立行政法人医薬品医療機器総合機構の「医薬品医療機器情報提供ホームページ」に医療機器添付文書情報が掲載されることとなっている。 電子化された医療機器添付文書情報の最新の情報をいつでも、誰でも、迅速にみることができるなど医療機器添付文書情報のメリットが活用され、医療機器の適正使用に貢献することが期待される。 0 11 6 0 1 1 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
患者にとって重篤な副作用をもたらす催奇形性等のリスク評価の手法及びその情報提供のあり方に関する研究 平成15-16年度 9,695 筑波大学・大学院人間総合科学研究科 吉川裕之 (ア)アメリカ、オーストラリア等では妊娠中,授乳中の薬剤のリスク評価ができている。(イ)日本における薬剤のリスク評価の問題点を抽出し、評価法および情報提供について方向性を明確にした。(ウ)薬剤リスク評価へのEBMの導入と、情報提供の具体的施策の提示は医薬品の安全性の確立に意義があった。 医薬品添付文書において、妊娠中の薬剤投与について不適切な記載がある薬剤を10種以上抽出した。特に、禁忌となっているもので、必ず使用が必要なものは、臓器移植後の免疫抑制剤、禁忌とすべきで禁忌となっていない薬剤にDESがあり、早急な改善を勧告した。成育医療センターの相談システム。 添付文書における妊娠中の薬剤安全性情報をヒトにおける疫学データを主体とする方向性が提示された。また。EBMに基づくリスク評価基準の作成にも進展できる方向性を確立した。さらに、情報提供の具体的試みに着手することができ、これは直接的に社会へのインパクトがある。 5 1 1 0 2 0 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
患者及び国民に理解される副作用等医薬品情報内容の構築と医薬品適正使用への患者参加推進に関する研究 平成15-16年度 15,515 (財)日本薬剤師研修センター 事業部 久保鈴子 (ア)医療用医薬品の患者向け説明文書は、くすり適正使用協議会作成「くすりのしおり」等が作成されていた。(イ)諸外国のガイドラインを参考に医療用医薬品を対象とした「患者向け説明文書」素案を作成した。また、患者に分かりやすい説明文書とするために副作用用語を患者自覚症状用語に置き換える患者用語集を作成した。(ウ)全ての副作用情報を患者・国民に分かりやすい表現で公開し、患者を副作用第一発見者として医療への参画を促そうとする本研究の成果は、安全対策に寄与するものである ○本研究成果は、厚生労働省医薬品情報提供のあり方に関する懇談会最終報告「医薬品総合情報ネットワーク」における患者・国民向け説明文書の基礎資料として貢献。○本研究で作成した患者用語集は安全対策の基盤整備上重要である。 専門家向け情報を患者・国民に分かりやすく表現したことで、患者・国民と医療従事者が共通の情報の基にコミュニケーションを図ることになり、医療全体の質向上が期待できる。 0 2 5 0 2 2 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
薬物代謝酵素が関与する医薬品相互作用の添付文書等による適正な情報提供に関する研究 平成15-16年度 11,635 国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 長谷川隆一 (ア)添付文書による医薬品相互作用の情報提供が不十分であるとの指摘がある。(イ)添付文書への薬物代謝酵素CYP分子種名の記載率の推移、スタチン系薬剤及びカルシウム拮抗剤と他剤あるいは柑橘類との相互作用に係る文献情報の添付文書への反映状況を明らかにした。(ウ)添付文書情報を体系的に解析する研究はこれまで実施されておらず、独創性が高い。成果の一部は学術雑誌に掲載され、国内外から反響を得ている。 スタチン系薬剤と他剤との薬物動態学的相互作用の文献情報を的確に反映したスタチン系薬剤の添付文書改訂案を作成・提言した。 添付文書改訂案に基づいて適切な添付文書の改訂を行うことにより、医薬品の適正使用の促進が期待される。 6 0 5 0 0 1(http://www.nihs.go.jp/mss/index.html の第一室) 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
植物由来催幻覚成分の薬物依存性および細胞毒性の評価 平成16年度 7,000 国立精神・神経センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 舩田正彦 (ア)ハルマラ植物の乱用が問題になっている。その依存性と毒性は不明である。また、薬物依存形成に関与する遺伝子検索が行われている。(イ)植物由来の幻覚成分ハルミンの依存性と細胞毒性を証明した。また、覚せい剤依存に関与する遺伝子を網羅的に解析し候補遺伝子GILZを見出した。(ウ)動物実験と培養細胞を組み合わせた物質の乱用危険性を予見するシステムを構築した。GILZが乱用危険度を予見する候補になりうる。 脱法ドラッグである合成化学物質に加え、植物乱用の危険性を証明した。本システムを利用して脱法ドラッグの依存性と毒性に関する科学的証拠を提供できる。この情報を基に、脱法ドラッグの迅速な規制が可能になる。 脱法ドラッグの乱用防止の啓発。マスコミを通じての脱法ドラッグ乱用防止にデータを活用した。 2 19 8 0 5 5 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
医薬品の最新の品質管理システムのあり方・手法に関する研究 平成14-16年度 28,000 国立医薬品食品衛生研究所 薬品部 檜山行雄 (ア)製薬製造業内の品質管理システムにおいて、安全性研究、製品開発、臨床開発などの研究開発活動と、医薬品を生産する工場との連携が必ずしも良好でないこと。医薬品製造の管理基準であるGMPに形式主義が見られること。医薬品製造の製造法の変更における管理に杜撰さが見られること。企業が善意に基づく製造法の改善を行うのに生涯がある。(イ)上記企業活動における問題点は我が国においては、薬事法制下の数百の通知による複雑さ及びGMPガイドラインの欠落であること、欧米においては過度に詳細な規制があることが由来と結論した。また、研究開発活動と生産活動の乖離は、企業活動における情報の整理及び移転の共有が不十分であること、また、行政側においては研究活動を評価する担当の審査部門と生産活動を規制する監視部門の連携の不十分さから由来している。これらの結果に基づき、医薬品製剤GMPガイドライン、技術移転ガイドライン、試験検査室管理ガイドラインを作成。また、科学反応を基本原理とする原薬・医薬品添加剤に対して、物理的・物理化学的加工を基本とする固形製剤工場のGMPハードについての指針を作成。(ウ)上記(イ)における解析結果を2003年7月の会議において厚生労働省の現状認識として発表をした。この認識が米欧の医薬行政当局の認識にも影響を与え、過度な規制は医薬品の品質管理システムに有害である、技術移転の要素をGMPに付け加えるべきとの共通認識になった。また、薬局等構造設備規則(GMPハード)対応に関する具体的な指針への要求が実務担当者レベルから強く要請されていたため、固形製剤工場のGMPハードの指針は大変歓迎された。 ○ドラフト段階の医薬品製剤GMPガイドラインは監視行政の整合性検討会の検討資料として使われ、新GMP省令(平成16年12月発行)および同施行通知(平成17年3月発行)に貢献した○上記3ガイドラインは我が国はじめてのGMPガイドラインとして事務連絡される○本研究の基本的な解析は監査手法の研究班の開始をうながし、技術移転の解析結果は改正薬事法下の承認書記載の原則を構築する上で貢献した○厚生労働省令のGMPハードを補完する指針として、GMPハードの円滑な施行に貢献できる。 3つのGPM関連ガイドラインは日本国内のみならず海外の医薬品工場の品質管理基準として用いられ、我が国に流通する医薬品の品質確保に貢献する。また固形製剤工場指針の付属資料である「GMPハード関連データベース(空調・製造用水編)」の対象拡大・更新版の作成を製剤機械技術研究会で継続することを検討中 7 5 5 0 3 30 医療品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究

トップへ