研究課題 実施期間 合計金額
(千円)
主任研究者所属施設 氏名
(1)  専門的・学術的観点
 このテーマで、すでに分かっていること
 本研究で加えられたこと
 本研究成果の専門的・学術的意義
(2)  行政的観点(※1)
 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。
(3) その他の社会的インパクトなど(予定を含む) 発表状況 特許 施策 (4) 普及・啓発活動件数 研究事業名
原著論文(件)※2 その他論文(件) 口頭発表等(件) 特許の出願及び取得状況 反映件数※3
先天性水頭症に関する研究 平成14‐ 16年度 42,000 独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター臨床研究部・脳神経外科 山崎麻美 (ア)X連鎖性遺伝性水頭症の原因遺伝子が神経接着因子L1CAMであること
(イ)1)本邦におけるL1CAM遺伝子解析を行い、30家系において遺伝子異常を同定。重症L1症候群の臨床的診断基準を提唱した。
2)神経接着因子の水頭症発症のメカニズムについて解明した。
3)中脳水道狭窄を呈する分子メカニズムを解明した。
(ウ)水頭症研究に分子遺伝子学的観点を導入し、ヒトの病態との関連性での解析を行った。
(ア)先天性水頭症の中でもっとも問題点の多い胎児期水頭症について、本邦では初の胎児期水頭症の診断と治療ガイドラインを作成した。 (ア)神経管閉鎖不全症の発症リスクの低減に対する葉酸摂取の貢献について、健康危険情報通報を行い、患者会療育相談などを通じて情報宣伝に努めた。 315 155 516 1 5   難治性疾患克服研究
モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)関する調査研究 平成14-16年度 79,000 東北大学大学院医学系研究科神経外科学分野 吉本高志 (ア)モヤモヤ病は欧米に少なく本邦に多い原因不明の脳血管性障害である。家族例が10%見られ若年発症、再出血例の予後が不良であることが知られている。(イ)全国疫学調査により年間受療患者数 7,500人と推定されるなど精度の高い疫学データが得られた。MRI, SPECTによる新たな診断・病態評価基準を策定し、小児例に対する非侵襲的評価法を確立した。全国規模の前向き無作為振り分け試験研究(JAM trial)により再出血予防効果の治療指針に関する研究を開始し、進行中である。更に病因解明研究が遺伝子レベルで進行した。(ウ)本研究は、施設枠を越え4つの主題に取り組むという研究姿勢の転換の結果、不明な点が多かった本疾患の疫学像、病因・病態の解明に寄与した。また予後不良因子である再出血予防に関する治療指針確立の端緒となった。 脳卒中治療ガイドライン2003, 2004・モヤモヤ病による脳出血の項目に反映。厚生労働省の難病対策提要の改定に反映。難病情報センターの特定疾患 home page改定に反映。モヤモヤ病臨床調査票の改定(病系分類)に反映。疾病対策研究会「特定疾患介護ハンドブック」改定に反映。 本班研究は、欧米に少なく本邦に多いモヤモヤ病に関する世界唯一の大規模研究であり、4点の重点課題、すなわち[1] 疫学調査、[2] 出血発症例の治療指針、[3] 診断基準の見直し、そして[4] 病因遺伝子解明研究の各項目において、新知見が得られた。その研究規模は世界をリードするものである。今後の更なる病態解明や治療法の確立・予後の向上を通じて世界規模での社会貢献をもたらすものと考えられる。 15 106 52 0 0 (1)平成14年7月22日(仙台市青葉区五橋 福祉プラザ第2研修室):医療費需給者対象講演会開催 演題「ウィリス動脈輪閉塞症の話」 (2)平成15年11月28日(仙台江陽グランドホテル 銀河の間):モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)研究 公開シンポジウム開催 難治性疾患克服研究
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究 平成14-16年度 121,980 九州大学大学院医学研究院眼科学分野 石橋 達朗 (ア)加齢黄斑変性に対する新たな治療法である光線力学的療法は欧米の患者では進行阻止に有効な可能性がある。網膜色素変性では二次的に視細胞が変性に陥る。(イ)日本人の加齢黄斑変性患者に対して光線力学的療法は視力改善効果も期待しうることが明らかになった。網膜変性疾患に対する、遺伝子治療・細胞移植治療により視細胞の変性を遅延させる可能性を示した。(ウ)光線力学的療法の確立は、加齢黄斑変性ばかりでなく、他の眼内血管新生性疾患に対しても適応が拡大していく可能性がある。遺伝子治療・細胞移植治療の確立は有効な治療法なく失明に至る疾患に対して適応の拡大が期待される。 本研究の成果を元に、加齢黄斑変性、類縁疾患であるポリープ状脈絡膜血管症・網膜内血管腫状増殖に関する診断基準のガイドラインを作製。  これまで加齢黄斑変性に対して有効な治療法はなかったことから、発症者はただ失明を待つしか選択の余地がなかった。しかし光線力学療法が保険診療として開始され、視力改善効果も期待しうることが明らかになり社会的反響も非常に大きく、この疾患に対する社会的認知も高まった。また遺伝子治療や細胞移植治療、人工視覚の開発も着実に進んでおり、ヒトへの応用も確実に視野にとらえている。人間が生活する上でその大半は視覚情報によるとも言われており、適応疾患の拡大も考えると、本研究の進展が与える社会的インパクトは非常に大きいものと考える。 636 238 1380 7 1 網膜色素変性診断基準および個人調査票の改訂(H14年度) 第4回網膜色素変性症患者のつどい(平成15年6月)医療講演「網膜色素変性症とその治療」 第5回網膜色素変性症患者のつどい(平成16年6月)医療講演「網膜色素変性の治療法研究の現状と展望」 研究成果の分かるホームページ (http://www.med.kyushu-u.ac.jp/pathol1/) 難治性疾患克服研究
前庭機能異常に関する調査研究 平成14-16年度 57,000 東海大学医学部 高橋 正紘 (ア)メニエール病の病因、治療は未解決で、外リンパろうの診断法はなかった。(イ)メ病は特異な行動による生活習慣病であることが示唆された。動物実験で薬剤の局所投与で内耳障害予防に成功した。外リンパろうの診断法を確立した。(ウ)再発予防(生活指導)と進行予防(局所治療)への具体化が、これからの課題である。外リンパろう診断法は特許を獲得した。 いまだ大きな貢献はないが、今後、調査結果の再発予防への広報活動、局所治療の産学協同による具体化で成果が期待できる。 メ病患者の行動特性については、たびたび新聞でも報道された。薬剤の局所投与による内耳障害の進行予防の研究は、国際的にも本研究班は大きな成果を上げている。 70 14 307 1 0 0 難治性疾患克服研究
急性高度難聴に関する調査研究 平成14-16年度 56,000 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 喜多村 健 (ア)突発性難聴の病態は不明であるが、罹患患者数は増大している(イ)2001年の突発性難聴全国推定受療患者数は35,000人で、人口100万人対の受療率は275.0と推定された。(ウ)過去30年の疫学調査で突発性難聴が増大し、50-60歳代の増加が証明され、循環障害が発症に関与していると推定され、症例対照研究では糖尿病が発症のリスクファクターと判明した。難聴を呈する実験動物モデルにiRNAを用いた難聴治療に世界で初めて成功した。急性低音障害型感音難聴の蝸電図検査にて、内リンパ水腫が難聴発症機序に関与していると示した。 1.突発性難聴の予後は、難聴が高度、めまいを伴う例、治療開始が遅い例ほど不良である点が医師ならびに国民にも認知されてきた。2.疫学調査からムンプス難聴は、ムンプスワクチン接種で予防されると証明した。3.急性低音障害型感音難聴は早期受診の予後が良好で、早期治療の有用性を示した。 急性低音障害型感音難聴の初めての疫学調査を平成16年度に施行し、罹患頻度の推定を行う。急性低音障害型感音難聴の多施設単剤治嫌を平成17年度に施行予定である。 30 154 416 5 3 3,難病情報センターのホームページ(http://www.nanbyou.or.jp/)遺伝性難聴ホームページ(http://www.okayama-u.ac.jp/user/med/oto/oto/HHihome.htm)日本人難聴遺伝子データホームページ(http://ent.md.shinshu-u.ac.jp/deafgene.html) 難治性疾患克服研究
特発性心筋症に関する調査研究(H14‐難治‐22) 平成14-16年度 142,600 北海道大学大学院 医学研究科 循環病態内科学 北畠 顕 (ア)拡張型心筋症の診断基準(イ)・心ファブリー病、たこつぼ型心筋症の診断基準を追加・肥大型心筋症の診断基準新規作成・拘束型心筋症の診断基準新規作成 ・家族性突然死症候群、ARVCの診断基準新規作成・ミトコンドリア病の診断基準新規作成(ウ)・心筋症を細分化し、それぞれの診断基準を作成し、 国際的な診断・治療のスタンダードを提供した。・疫学的検討により予後を評価しようとした。・病因の解析について、遺伝子解析や免疫学的解析を 中心に検討し、新規の遺伝子や病態を数多く発見した。 ・特発性拡張型心筋症臨床調査個人票改定により全国登録の電子化を進めた。・心筋症診断・治療のガイドラインを提示した。・再生医療など新規分野の活性化を果たした。・原因遺伝子の同定など病態解明に資した。・経過や重症度の把握のため、テネイシン測定による診断法を開発した。・生命予後解明のため疫学的解析を行った ・国際シンポジウム開催
・市民公開講座開催
200 30 89 9 30  3件
・「特発性心筋症診断の手引き」の作成
・国際シンポジウム開催
・市民公開講座開催
難治性疾患克服研究
びまん性肺疾患に関する調査研究 平成14-16年度 79,500 東北大学加齢医学研究所 呼吸器腫瘍研究分野 貫和 敏博 (ア)画像および病理診断学の向上により、特発性間質性肺炎の新しい疾患概念が確立したが、予後が格段に悪い特発性肺線維症の発症および病態進展機序の理解は得られていない。そのために疾患の発症予防、早期診断・治療などが各段に遅れている。また自覚症状出現前の早期病態はほとんど知られていない。サルコイドーシスは世界に先駆けてp.acness の重要な関連が明らかにしたものの、疾患発症機序がまだ不明であった。びまん性班細気管支炎に対する治療法は班研究によって確立したが、疾患関連遺伝子の確立、および難治化する機序が明らかになっていない。狭窄性細気管支炎は、骨髄移植や肺移植に伴って増加し、膠原病や民間治療薬などの薬剤によっても発症することが明らかになっているがている極めて難治性の気道疾患であるが、治療法開発の元となる病態発症機序は知られていなかった。 特発性間質性肺炎の診断と治療のガイドラインを策定・出版(2004)したことにより、全国に普及。これがまた各医療施設における厚生労働省の臨床調査個人票の作成にも大きな影響を与え、複雑な疾患をもつ患者群の正しい把握が可能になる。また新しい分子標的薬や抗リウマチ薬による肺障害の分類、その早期診断、治療の指針に反映している。サルコイドーシスの無治療の長期経過観察患者群を臨床調査個人票から一時解除し、疾患症状発現による治療開始時に臨床調査を再開することを決定したために、医療費軽減に大きな貢献となる。 (1)患者の遺伝子背景に基づいた新しい治療法の確立。(2)危険度が極めて少ない肺選択的遺伝子導入療法の確立(特許出願)。(3)線維化抑制を目的とした新薬(pirfenidon)による治療の一般化。(4)民間治療薬などによる狭窄性細気管支炎発症の危険性の公表。 298 511 605 1 3 10件 難治性疾患克服研究
          (イ)難治である特発性肺線維症を中心として臨床、画像、病理の多方面から患者病態に取り組んだ。その結果、(1)世界的にも初めての試みとなるCT画像診断による疫学調査、(2)早期診断から死亡にいたる詳細な臨床経過の集積を目的としたWEB登録制の確立、(3)家族発症例を中心とした疾患関連遺伝子の解析、(4)患者生検および剖検肺を対象とした分子病理的な詳細な検討、(5)死因である急性増悪の臨床像と病理像の解析、(5)疾患モデル動物を対象とした肺の線維化機序の解明、(6)疾患モデルを用いて線維化抑制効果をもつ新しい分子標的治療薬や新しい遺伝子導入法の確立による新しい治療戦略確立、(7)近縁疾患である慢性過敏性肺炎との類似病態の解析、(6)線維化抑制を目的とした新薬(pirfenidon)の臨床試験の評価などを行なった。サルコイドーシスに関しては(1)p.acness の患者組織内での分布を詳細に検討し、(2)患者における疾患感受性遺伝子の解析、さらに、(3)p.acness による病態形成機序をマウスを用いた実験モデルから解明した。びまん性班細気管支炎に関しては(1)疾患関連遺伝子の範囲が狭まめられ、(2)マクロライドによる遺伝子発現プロファイリングを行なった。狭窄性細気管支炎に関しては(1)全国調査と、(2)実験モデルにおける新しい治療法の開発が試みられた。                  
          (ウ)本研究班の成果は英文原著論文にて241報にまとめられ報告された。その内訳としてはこの分野で世界的に評価の高い米国胸部疾患学会雑誌に16報、米国生理学会雑誌に8報、米国放射線学会誌に5報、Lancet 1報などに加え、基礎的な学会雑誌であるJ immnunologyに5報など、その高い研究内容を反映している。実際にそのいくつかはそのオリジナリテイが欧米でも高く評価され、疾患概念の理解に貢献している。疫学調査に関しては世界的に初めての試みが開始されているが、その結果は今後段階的に報告され、疾患に関する新な情報を発信していくことが予想される。これらの研究の目的は単なる臨床・基礎研究ではなく、将来的に疾患発症遺伝子背景をもつ患者の疾患発症の予防、早期診断・早期治療による重症化の防御、自覚症状の改善、 死因としての急性増悪の治癒を目的としている。またこれらのことを達成する過程が、新たな学術的な意義を生むものと考える。                  
呼吸不全に関する調査研究 平成14-16年度 96,500 信州大学医学部内科学第一講座 久保 惠嗣 ○若年性肺気腫(若年発症COPD):(ア)重喫煙や喫煙感受性の亢進が示唆されている。女性では男性に比し喫煙感受性が亢進している。(イ)喫煙開始年齢が低く、短期間の重喫煙、遺伝的な喫煙感受性が関与している。HRCTで肺気腫優位型が多い。(ウ)わが国にはα1−AT欠損は極めて少ないが、喫煙感受性亢進と関連する遺伝子が存在する可能性が示唆された。○在宅呼吸ケアの現状:(ア)全国的調査がこの10年間行われていない。(イ)医師、患者団体、両者からの全国調査をおこなった。(ウ)日本呼吸器学会と共同で「在宅呼吸ケア白書」として発表される。○肺気腫の発生機序:(ア)活性酸素説、蛋白分解酵素説がある。(イ)細胞死と細胞老化が関与している。(ウ)動物モデルで証明し、高い評価を受けた。○急性増悪とウイルス感染:(ア)急性増悪の原因にウイルス気道感染が重要である。(イ)マクロライド抗菌薬がライノウイルス感染を抑制する。(ウ)本研究班からの新知見である。 ○わが国における若年発症COPDの現状が明らかとなった。HRCTによる気道病変優位型の証明は、今後のガイドライン改訂の際の参考となる。○わが国における在宅呼吸療法の現状が患者サイドからも明らかとなった。○COPDの病態解明・新たな治療法の解明に繋がる。○急性増悪の抑制は、COPDの死亡率減少・医療費の削減に繋がる可能性が大である。 ○喫煙開始年齢の低年齢化や女性の喫煙率の増加が社会的な問題となっている。若年発症COPDの増加がおこりうる可能性があり、対策が必要と思われる。気道病変、肺気腫優位型で治療戦略が変わる可能性がある。○今後の在宅医療の在り方の参考資料となる。○再生医療の可能性に繋がる。○臨床治験を予定中である。 52 58 48 1 0 2 難治性疾患克服研究
          肺リンパ脈管筋腫症(LAM):(ア)わが国での肺移植施行例にLAMが多い。(イ)全国的疫学調査で173例が蓄積された。(ウ)わが国で初の全国疫学調査である。論文を作成し、広く公開する。 LAMの診断基準作成の基礎的資料となる。特定疾患治療研究事業の対象となりうるかの判断資料となる。 本疾患の罹患率が人口100万人あたり1-2人と推定された。 6 8 4 0 0 3  
          肥満低換気症候群・肺胞低換気症候群を含む睡眠時無呼吸症候群:(ア)生活習慣病、冠動脈硬化・動脈硬化症との関連が示唆されている。(イ)心疾患の危険因子QTc dispersionがみられ、nCPAP治療で軽快する。動脈硬化関連因子が高値を示す。35%に脂肪肝とは考えにくい肝機能障害がみられ、nCPAP治療で軽快する。(ウ)心臓血管疾患、動脈硬化、生活習慣病との関連を強く示唆する所見である。 睡眠時無呼吸症候群(SAS)、特に閉塞型SAS(OSAS)が動脈硬化や生活習慣病の主要な原因であり、かつnCPAPで軽快することは社会予防医学的見地からも重要である。 OSASが予後、不良と考えられている非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steathepatitis, NASH)の原因となりうることを証明した。 39 28 44 0 0 0  
          原発性肺高血圧症(PPH)および慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型)(CTEPH):(ア)家族性PPHだけでなく弧発性PPHにもBMPR2遺伝子異常がみられる。(イ)わが国のPPHでは56例中26例(46.4%)にBMPR2またはALK1遺伝子変異が確認された。また、CTEPHでHLA-B*5201およびDPB1*0202が高頻度であった。(ウ)わが国のPPHでの遺伝子異常の証明は国際的にも有意義である。CTEPHが遺伝子学的に高安動脈炎類似の血管炎と類似の遺伝子異常を呈する可能性を示唆し学術的に有意義である。 PPHおよびCTEPHの診断にこれら遺伝子変異の存在が役立つ可能性が示唆された。 これらの疾患の発生機序に関する遺伝子変異の関与を検討する事で遺伝子治療を含めた治療法の確立が期待できる。 20 28 19 0 0 0  
難治性の肝疾患に関する調査研究 平成14-16年度 97,000 東京慈恵会医科大学消化器肝臓内科 戸田剛太郎 .自己免疫性肝炎(AIH) (ア).診断のための臨床的指標、副腎皮質ステロイドをはじめとする免疫抑制薬の有効性、原発性胆汁性肝硬変(PBC)とのオーバーラップなど非定型的AIHの存在 (イ).小児AIHの我が国における実態および治療指針、肝組織における遺伝子発現パターン(DNAマイクロアレイによる)、プロテインチップを用いた血清蛋白解析により非定型的AIHはAIHかPBCのいずれかの範疇に入ること、AIHにおける免疫学的寛容の破綻における制御性T細胞機能低下の関与、AIHモデル動物の作製 (ウ).(イ)の成果は小児AIHのステロイド治療における副作用の軽減、AIH, PBCの診断精度の向上、新治療法の開発に有用であると期待される。
原発性胆汁性肝硬変(PBC)(ア)診断のための臨床的指標、ウルソデオキシコール酸(UDCA)の臨床検査値改善効果 (イ)全国調査によりUDCAが臨床検査の改善のみならず予後改善効果を有すること、掻痒感、黄疸いずれもなく食道静脈瘤を有する症例があり、このような症例を症候性PBCに分類することの提案、ベザフィブラートはUDCAと併用することによりPBCにおける臨床検査値の更なる改善をもたらすこと、自己免疫性胆管障害における細胞障害性T細胞の誘導における分子擬態の関与、胆管障害における老化関連遺伝子発現抑制因子の発現低下の関与 (ウ)UDCAが予後改善効果を持っているかどうかについては欧米では否定的な報告が多いが本研究では予後改善効果があるという結果であった。ベザフィブラートの有効性は我が国で見いだされたものであり、未発表であるが大きな反響を呼ぶものと期待される。
厚生労働省特定疾患である原発性胆汁性肝硬変の診断基準を改定し、医療費支給対象疾患である症候性原発性胆汁性肝硬変の判定指針を改定し、掻痒感、黄疸がなくても食道静脈瘤など肝障害に基づく症状、症候を示す症例も症候性の範疇に加えた。 特定疾患介護ハンドブックにより原発性胆汁性肝硬変、劇症肝炎、自己免疫性肝炎の介護指針を示した。 小児自己免疫性肝炎の治療指針を示し、メチルプレドニソロンパルス療法の有用性をしめした。ベザフィブラートの原発性胆汁性肝硬変に対する有効性を無作為化二群間比較試験で世界ではじめて明らかにした。ベザフィブラート使用により本疾患の予後改善が期待される。 HGFの簡便な半定量法を開発し、ベッドサイドでHGF測定が可能となり、劇症肝炎の治療効果の判定、予後判定に有用性を発揮すると期待される。 136 81 255 2 1 3 難治性疾患克服研究
          劇症肝炎(ア)診断指針、成因は多様であり、成因はウイルス性、自己免疫性、薬物性、成因不明、分類不能(情報不足)に分類される。このうちB型肝炎ウイルス(HBV)キャリアからの急性発症は予後不良である(救命率20%)。最も有効な治療法は肝移植である。(イ)HBVキャリアからの急性発症例に対してはプロトロンビン時間40%以上、ビリルビン15mg/dl以上の段階でラミブジンを使用することにより救命率は向上する。自己骨髄由来幹細胞を用いた肝再生療法、HGF投与、HNF-4遺伝子導入肝細胞を用いたハイブリッド型人工肝が将来期待される治療法として報告された。(ウ)唯一確実な治療法として現時点では肝移植に依存せざるを得ないが、ウイルスに起因する劇症肝炎については早期に抗ウイルス薬を使用することが奨められる。                  
門脈血行異常症に関する調査研究 平成14-16年度 63,000 九州大学大学院医学研究院災害救急医学 橋爪 誠 (ア) このテーマで、すでに分かっていること
 IPH、EHO、BCSの病因は未だ不明である。近年、BCSの病因として、欧米諸国で血液凝固系の遺伝子異常(Factor V Leiden mutationなど)の症例が報告された。
(イ) 本研究で加えられたこと
 IPHではHO-1発現が低下していることが明らかになった。また、IPHにおいてCTGF遺伝子が特異的に発現亢進していることが明らかになった。本邦では欧米と違い、BCSの病因としてFactor VのLeiden mutationが関与していないことが明らかになった。また、BCSの病理学的所見の国際間比較を行った。
(ウ) 本研究成果の専門的・学術的意義
 門脈血行異常症はその病因病態が未だ不明であるため、その治療も対症的なものが主であり、根本的治療が行われていないのが現状である。これらの研究成果は、各疾患の根本的治療につながる可能性が期待できる。
平成10年度に、BCSが治療研究対象疾患に採択され、患者にとって大きな福音となった。また、平成12年12月には「門脈血行異常症の診断と治療(2001年)」を新基準として制定し、全国に啓蒙した。平成17年には大規模な全国疫学調査を開始した。  IPHの病因病態に関連して、HO-1発現低下、CTGF遺伝子の発現亢進を世界で初めて明らかにした。また、門脈血行異常症(門脈圧亢進症)の食道胃静脈瘤出血に対する塩酸プロプラノロールの予防効果および安全性を明らかにし、薬物療法への展開の可能性を示唆した。 45 47 83 0 2 0 難治性疾患克服研究
肝内結石症に関する調査研究 平成14-16年度 29,000 杏林大学外科 跡見 裕 (ア)肝内結石症は1.肝内胆管狭窄などを背景にし増殖性胆管炎を伴って発症する。2.多発地域が存在する3.一般的に難治であり、また長期観察により発癌が多く認められる などの特徴がある(イ)1)肝内結石症に対する低侵襲的で、費用効率の良い画像診断法を策定し、効率的な画像診断体系を確立 2)肝内結石症の成因を、生活習慣や感染症との関連から検討するための症例対照研究、および肝内結石症の予後を調査し、重症化因子を検討するコホート研究の実施 3.肝内結石症および肝内胆管癌の発生機序の解明 4.肝内結石症の診断基準を作成し、治療方針を見直しが行われた。(ウ)診断基準改定によりMRCPやMDCTによる診断が可能となり施設間の載の差異が解消された。また成因の解明はフィブラート剤の治療薬としての可能性を示唆した。胆管癌に関しては遺伝子療法の可能性が開けた 肝内結石症の症例調査、コホート調査により、本症が背景となる発癌の疫学・病態とも明らかになってきている。また肝内結石症に対する薬物治療法の可能性も判明し、今後の厚生労働行政の基礎資料となった。 各施設が、共通した基準をもって、診断治療をを行う基盤が整備され、治療成績の比較等今後の成果が期待される。 10 22 28 1 0   難治性疾患克服研究
難治性疾患克服研究事業
難治性膵疾患に関する調査研究
I.重症急性膵炎
(1)急性膵炎発症と重症化の機序と予知に関する研究
平成14-16年度 63,000 産業医科大学 消化器・代謝内科 大槻 眞 (ア)急性膵炎重症化の個体側因子として確立されたものはない.カチオニックトリプシノーゲン(CT/PRSS1)遺伝子変異に起因する膵炎は優性遺伝形式で発症する.入院時のIL-6,トリプシノーゲン活性化ペプチド(TAP),尿中トリプシノーゲン-2,血清好中球エラスターゼは重症化の早期予知マーカーとなる.重症化予知因子としては,厚生労働省「急性膵炎の重症度スコア」が予後予測の優れた指標であることが確認されている.
(イ)PSTI遺伝子変異は急性膵炎発症の個体側の危険因子であった.血清マクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor: MIF)は重症化の早期予知マーカーとして,また感染症合併の早期予知マーカーとなった.
(ウ)急性膵炎発症の個体側因子として遺伝的背景を考慮する必要が明らかとなり,膵炎の予防や治療に活用する.急性膵炎の重症化や重症感染症合併の早期予測が可能となり,患者管理や治療方針の決定に活用する.
・重症化の早期予知と早期対策により,重症急性膵炎の致命率を低下させる. 個体側の発症要因を明らかにすることによって,急性膵炎や慢性膵炎の啓蒙活動や予防対策に貢献する. 34 48 56     35 難治性疾患克服研究
(2)急性膵炎重症化機序の解明と治療に関する研究         (ア)急性膵炎で,他院・他科からの転入例の致命率が高い. 高齢者やCRP高値症例は膵炎が重症化する.
(イ)急性膵炎治療開始14日以内の死亡(約40%)は特発性膵炎に多く,死因は心・循環不全,呼吸不全,腎不全を主とする多臓器不全で,15日以降の死亡(約60%)はアルコール性慢性膵炎が多く,死因は敗血症と播種性血管内凝固症候群を主とする多臓器不全であった.入院初期の輸液量が少ない症例が多く,急性膵炎による死亡例の約80%で第1病日の輸液量が最低必要量である3,500 mL以下であった.急性膵炎の予後判定には24〜48時間後の重症度スコアが有用で,24〜48時間後に重症度スコア2点以下の症例は,24時間以前および48時間以降の重症度スコアに関係なく救命率が高かった.
(ウ)急性膵炎での死亡例の病態が明らかにされ,初期治療の重要性を示した.
・成果をもとに「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン」を発刊し,全国に普及した.
・成果をもとに「急性膵炎における初期治療のコンセンサス」を発刊し,全国に普及した.
・急性膵炎の診断と重症度判定基準の改訂の基礎資料となった.急性膵炎による死亡の28%は急性膵炎発症1週間以内であったことから,土日,休祭日に発症した重症急性膵炎に対する特定疾患医療費申請が受け付けられない現在の制度を見直す必要性がある.
「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン」と「急性膵炎における初期治療のコンセンサス」はわが国における急性膵炎の診療の基本になっている.簡便にかつ正確に急性膵炎の診断と重症度を判定出来るように,急性膵炎の診断と重症度判定基準の改訂を開始した. 12 70 33     26  
(3)急性膵炎の診断基準・重症度判定基準の改定に関する研究         (ア)現行の急性膵炎の診断基準・重症度判定基準は1990年に作成された.この判定基準に従って医療費の公費負担制度の適否が判定されてきた.
(イ) 時代の変化や医療水準の進歩に適合した診断基準・重症度判定基準に改定した.重症度判定改定案では,予後判定因子として9項目を用い,3項目以上を重症,2項目以下を軽症とした.また,造影CT所見を独立させ,造影CT Grade≧2であれば単独でも重症とした.
(ウ)急性膵炎の重症度判定基準を改定するために,本研究班における全国疫学調査の資料をデータベースとした.改訂基準案の妥当性に関しては,生命予後をend pointとしたreceiver operating characteristic (ROC)解析を用いて総合的な評価を行った.
・時代の変化や医療水準の進歩に適合した診断基準・重症度判定基準に改定することは行政的観点からも重要である.
・今回の改訂判定基準を重症急性膵炎医療費制度の適否判定に反映させる.
2003年に「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン」が作成されており,急性膵炎の診断基準・重症度判定基準はガイドラインの根幹をなすものとして位置づけられる.基準の改定によりガイドラインを含めて急性膵炎の診療に大きな影響を与えることが予測される. 12 26 20     16  
(4)腹痛患者に占める急性膵炎の頻度に関する研究         (ア) 国内外のデータは無い.
(イ)腹痛を主訴に受診した患者の4.9%が急性膵炎と診断され,急性膵炎が腹痛の原因疾患の第8位であった.
(ウ)急性膵炎の頻度が高いことが始めて明らかにされ,大きな反響があった.
・成果を「急性膵炎における初期治療のコンセンサス」策定に反映した. 腹痛を訴える患者を診察した際には,常に急性膵炎を念頭に置いて診察しなければならないことを明らかにした.   1       4  
(5)急性膵炎疫学に関する研究         (ア)急性膵炎の推定受療患者数は1982年から1986年までの5年間の報告から14,500人(95%信頼区間9,500〜19,500例),1998年の調査では19,500例(95%信頼区間17,000〜22,000例)であった.致命率は1998年の調査では,膵炎全体で7.3%,重症急性膵炎に限ると21.7%であった.
(イ)2003年1年間の急性膵炎受療患者数は35,300例(95%信頼区間30,500〜40,000例),重症度別では軽症23,000人(95%信頼区間18,900〜27,000人),中等症7,200人(95%信頼区間6,200〜8,300人),重症5,100人(95%信頼区間4,300〜5,800人)と推定された.2003年1年間の15歳以下で発症した小児急性膵炎は740例(95%信頼区間620〜850例)と推定された.急性膵炎全体の致命率3.0%で,重症度別致命率は軽症0.4%,中等症0.9%,重症12.6%であった.
(ウ)急性膵炎は増加してきている.重症急性膵炎の救命率は格段に改善されてきている.蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法などの新しい治療法が致命率の改善に寄与していると考えられる.
・成果を「急性膵炎における初期治療のコンセンサス」策定に反映した.
・蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注治療を保険診療として認める必要がある.
急性膵炎は増加しており,特定疾患医療費受給制度を啓蒙し普及させる.「急性膵炎における初期治療のコンセンサス」はわが国における急性膵炎の診療の基本になるよう普及させる.簡便にかつ正確に急性膵炎の診断と重症度を判定出来るように,急性膵炎の診断と重症度判定基準の改訂を開始した. 1 14 2     10  
(6)特定疾患治療研究事業の運用状況に関する研究         (ア)1991年1月から,重症急性膵炎は特定疾患治療研究事業の対象疾患(難病)に指定されたが,新規申請と更新申請が同じ臨床調査個人票を用いている.特定疾患治療研究事業による重症急性膵炎に対する新規医療費受給者数は年々増加している.更新受給者数は年々減少しているが複数年度にわたり更新が繰り返されている患者が多い.
(イ)新規申請用とは別に,更新申請用の臨床調査個人票を新たに作成し,更新可能な具体的基準例を挙げた.複数年度に及ぶ更新受給者数は減少した.特定疾患治療研究事業による重症急性膵炎に対する新規医療費受給者数は急性膵炎の全国疫学調査の結果から推計された重症急性膵炎受療患者の30%程度に過ぎなかった.特定疾患医療受給者証の臨床調査個人票の主治医記載日が重症急性膵炎発症から2日以内のものは18.3%に過ぎず,1週以後のものが39.4%を占めていた.
(ウ)平成15年度から採用された更新用の臨床個人調査票が有効に機能していると考えられた.
・複数年度に及ぶ更新受給者数は減少した.
・重症急性膵炎の推定患者数に比べ医療費受給新規受給者数が少なく,本制度の普及を図る.
・土日,休祭日に発症した重症急性膵炎に対する特定疾患医療費申請が受け付けられない現在の制度を見直す.
特定疾患治療研究事業による医療費給付制度は,申請後の医療費に対してのみしか認められず,急性膵炎は週末,祝祭日,年末年始に発症が多い傾向にあるが,現行の制度では,重症急性膵炎でも金曜日の午後5時過ぎ以降に発症した場合には月曜日まで,また,12月28日の夕方以降に発症した場合には年明けの1月4日まで医療費が給付されないことが問題である.申請前に死亡した患者は特定疾患医療受給者証が交付されないことから,主治医が入院後出来るだけ早期に書類を作成する必要があり,今後も制度の普及を図る啓蒙活動を行う. 1   1     5  
(7)重症急性膵炎の転帰に関する研究         (ア)重症急性膵炎の致命率は1982-1986年の報告では30%,1995-1998年では21%,1998年では22%と高率である.
(イ)重症急性膵炎医療費受給者全体の致命率は12.3%で,救命率の改善があったが,高齢者では致命率が高く,80歳代では32.4%にも達した.アルコール性重症急性膵炎の16.7%が再発したが, 胆石性の再発は5.2%であった.職業を軽いものに変更した患者が7.4%, 仕事ができなくなった患者が9.3%いた.
(ウ)蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法や持続的血液濾過透析治療などの新しい治療法が致命率の改善に寄与したと考えられる.
・成果を「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン」と「急性膵炎における初期治療のコンセンサス」策定に反映した.
・医療保険に加入していない患者や申請前に死亡した患者は特定疾患医療費受給者証が交付されないため今回の調査対象に含まれていないので,医療費給付制度の見直しが必要である.
重症急性膵炎の救命率が改善された.急性膵炎は良性疾患であるが,依然として致命率が高く予後不良の疾患である.アルコール性重症急性膵炎患者は治癒後も禁酒が守れず,飲酒を持続し再発を繰り返すことから, 退院後も患者への生活指導を徹底し,慎重に経過観察する必要がある.職業を軽いものに変更しり,仕事ができなくなった患者が16.7%もおり,重症急性膵炎は予後不良の疾患である.   28       4  
(8)急性膵炎の長期転帰に関する研究         (ア)1987年発症の急性膵炎も14年後の追跡調査で,死亡28.2%,再発24.9%,慢性膵炎確診例への進展23.7%である.
(イ)急性膵炎発症後13-18年経過したアルコール性膵炎で,膵炎回復後も以前と同様に継続して飲酒している症例では膵炎再発率57.7%,慢性膵炎確診例への移行率40.9%,糖尿病合併率37.2%と高かった.
(ウ)急性膵炎発症時の重症度,膵壊死の有無,外科手術の有無と急性膵炎の再発,慢性膵炎確診への移行,糖尿病の合併,悪性腫瘍による死亡との関連はなかった.
・アルコール性急性膵炎の予後が不良であることが明らかとなり,急性膵炎発症後禁酒を守らせる等の生活習慣を改善させる指導が重要であることを治療指針に反映する. アルコール性膵炎では膵炎治癒後生活習慣を改善させなければならない. 2 1 3     2  
II.慢性膵炎
(1)慢性膵炎の早期像と慢性膵炎診断基準に関する研究
        (ア)現在の慢性膵炎診断基準で慢性膵炎と診断できる時には,既に全ての成因に共通する慢性膵炎の終末像が完成している.
(イ)男性の飲酒家で急性膵炎を繰り返す症例では35.5%が慢性膵炎へ進展した.他の成因の急性膵炎例では慢性膵炎への進展は低頻度であった. 内視鏡的逆行性膵管造影(ERCP)で軽度の膵管像の変化を示す症例では,超音波内視鏡検査(EUS)で点状,あるいは斑状高エコーなどの膵実質の変化が特異的に観察された.
(ウ)男性の飲酒家で急性膵炎を繰り返す症例は慢性膵炎の早期である確率が高く,強力に治療すべきである.
・成果を成因別の慢性膵炎臨床診断基準策定に活用する.
・慢性膵炎を可逆的な時期に診断できるようにする.
・膵の変化が軽微な段階で発見し,治療的アプローチ(すなわち禁酒)を開始することが,臨床的,医療経済的観点からも必要である.
アルコール性膵炎は,患者自身のアルコール依存および問題性格が病状形成に大きな役割を果たしている. 7 14 13     12  
(2)アルコール性膵障害に関する研究         (ア)完成されたアルコール性膵障害は,慢性膵炎確診および準確診として定義されている.アルコール性膵障害の早期像に関しては,現時点では定義がない.
(イ)慢性膵炎確診,準確診および急性膵炎と定義されない,軽度のアルコール性膵障害を「アルコール性膵症(alcoholic pancreatopathy)」として定義し,その診断基準(案)を作成した.上記診断基準(案)に対する,各専門家の意見を収集した.
(ウ)アルコール性膵障害の初期像を明確化し,その治療的意義を考察した.
・アルコール性慢性膵炎症例では,長期間にわたる多量の飲酒という性格的問題点を指摘できる.
・慢性膵炎完成後の治療は,糖尿病や疼痛に対する対症療法に終始するが,そのために投下される医療資源は看過し得ない水準にある.
・合併症が発症する以前に治療的働きかけ(禁酒指導など)を行えば,長期的には医療費削減効果が見込まれ,国民衛生の観点からも有益である.
多量飲酒による弊害は,膵障害などの健康面だけではなく,家庭崩壊,家庭内暴力,反社会的行為など,多岐に及ぶ.多量飲酒症例に対する治療的働きかけは,上記社会的な側面からも重要であると考えられる. 1 4 2        
(3)慢性膵炎の遺伝的背景-CFTR遺伝子多型に関する研究         (ア)CFTR (cystic fibrosis transmembrane con-ductance regulator)はクロライドチャネルであり,膵臓では,膵導管細胞の管腔膜に発現し膵液への重炭酸塩の分泌に重要な役割を果たしている.びまん性汎細気管支炎,副鼻腔炎,男性不妊症,特発性膵炎の一部の患者はCFTR遺伝子変異を高頻度に合併しており,CFTR関連疾患として注目されている.
(イ)アルコール性慢性膵炎では,(TG)の反復の多い(TG)12が高頻度に認められた. 特発性慢性膵炎では,クロライドチャネル機能が低下する(TG)11/V470ホモ接合体の頻度が高かった.(TG)12や V470ではクロライドチャネル機能が低下しており,正常なCFTR蛋白量の減少が慢性膵炎に関連する.アルコール性慢性膵炎群ではM470ホモ接合体の頻度が有意に高く,特発性慢性膵炎群ではV470ホモ接合体の頻度が高かった.
(ウ)慢性膵炎では健常人に比べて(TG)12/12の頻度が高く,正常なCFTR蛋白量の減少が本症に関連すると推定される.慢性膵炎の遺伝的背景を明らかにした.
・本研究結果を慢性膵炎発症・進展阻止に活用する. 慢性膵炎発症には飲酒や喫煙などの生活習慣だけではなく,遺伝的因子も大きく関与している.   1       2  
(4)遺伝子異常に起因する膵炎に関する研究         (ア)カチオニックトリプシノーゲン遺伝子の変異で膵炎を発症する家系がある. 膵分泌性トリプシンインヒビター(pancreatic secretory trypsin inhibitor: PSTI)の遺伝子変異を伴う膵炎家系がある.
(イ)膵炎発症に関与する可能性の高い遺伝子変異として,CT/PRSS1,PSTI/SPINK1,α1ATの三遺伝子をとりあげ,CT/PRSS1遺伝子のN29I変異とR122H変異,PSTI/SPINK1遺伝子のIVS1-37T変異,N34S変異,及びR67C変異,α1AT遺伝子のE264V変異とE342K変異の解析系を確立した.マウスにおいて,PSTIの遺伝子発現をノックアウトすると,膵腺房細胞のトリプシン活性を制御できず,膵腺房細胞がオートファジー細胞死に陥り,消失した. PSTI遺伝子変異による膵炎発症は,両アレルの変異例で高率(98%)であり,劣性遺伝形式での発症と考えられ,ヘテロ接合体では膵炎の易発症性を獲得するにとどまることを明らかにした.
(ウ)本研究成果は,膵炎の発症機構の解明につながる,重要なものである.オートファジー細胞死という,ネクローシス,アポトーシスにつづく第三の細胞死の機構が,実際の疾患においてmassiveに惹起されることを示した初めての報告である.
・遺伝子変異に起因する膵炎(遺伝子異常がその発症に関与する膵炎)の診断体系を構築した.
・現在,膵炎発症に関与する遺伝子変異の解析は,ごく一部の限られた専門的施設でしか行えないので,研究班では,膵炎発症に関与する遺伝子変異の解析を希望する場合,解析を無料で行える体制を整えた. 
カチオニックトリプシノーゲンに遺伝子変異を持つ膵炎家系では,膵癌合併の相対危険度が50〜70倍であり,約40%の患者が70歳までに膵癌を発症する.PSTIの遺伝子変異を伴う膵炎患者の場合も,若年時から膵の炎症を繰り返す可能性が高く,膵癌の発症に留意する必要がある.遺伝子異常に起因する膵炎では,膵炎に対する一般的な診療内容に加えて,膵癌の発生について,特に留意して診療を行う必要がある.遺伝子異常に起因する膵炎の診断の基本として発展させる. 4 8 5     8  
(5)アルコール性膵炎の実態に関する研究         (ア)大酒家における膵炎の頻度は1-5%と報告されているが,その根拠は不明である.アルコール性膵炎は大量飲酒開始後約20年で発症すると言われている.慢性膵炎で飲酒に起因する症例は67.7%,急性膵炎では35.3%と高率である.
(イ)全日本断酒連盟に所属している男性会員4,120人の17.4%にアルコール性膵炎の既往があった.初飲年齢を膵炎例が19.1±3.86歳(平均±標準偏差),膵炎診断年齢は43.0±10.5歳であった.一日平均の飲酒量は,日本酒換算でアルコール性膵炎例では7.3±5.3合で,膵炎既往のない症例の6.8±4.7合比べが有意に多かった.
(ウ)大量飲酒者では高率にアルコール性膵炎が発症していることを示した.
・成果を生活習慣改善の啓蒙に活用する.
・慢性膵炎の診療指針策定に活用する.
・大量飲酒者における膵炎発症例においては,早期に断酒指導が必要であり,その面での行政指導も必要と思われた.
大量飲酒者ではかなり高率にアルコール性膵炎が生じている可能性があり,生活習慣の改善の必要がある. 1   1     5  
(6)慢性膵炎におけるステント・体外衝撃波結石破砕治療の適応と長期転帰に関する研究         (ア)慢性膵炎に合併する膵石症,主膵管狭窄は膵液うっ滞を介して疼痛や膵炎の増悪を引き起こす.確実な予防法は確立されていない.膵石および膵管狭窄に対しては従来,外科的切除が広く行われてきた.膵石および膵管狭窄に対して,体外衝撃波結石破砕療法(extracorporeal shock wave lithotripsy: ESWL)や膵管ステント留置術が1990年代から試験的に応用されてきた.
(イ)慢性膵炎604例約80%の症例で長期(平均約3.5年)の疼痛緩和効果が得られた.慢性膵炎604例膵石に関しては,治療例の80%程度で排石が認められた.ESWLないし内視鏡治療を施行した慢性膵炎604例の中外科的治療への移行率は1.3%に止まった.主膵管非狭窄例に対する膵管ステント留置の有効性は認められなかった.
(ウ)主膵管非狭窄例は本療法に不適であることが再確認され,適応がより明確化できた.
・非侵襲的本療法が外科治療に代わり得る治療法であることが裏付けられ,今後,保険収載申請時に活用できる資料とな. これを契機に本療法の啓発・普及が更にはかられ,疼痛に悩む慢性膵炎患者のQOLの向上に大きな寄与が期待される. 8 17 26     19  
(7)慢性膵炎の疫学に関する研究         (ア)1999年の調査では年間推定受療患者数42,000人で,人口10万人当たりの有病患者率は33.2人,新規発症率5.8人と推定されている.1999年の調査ではアルコール性が54.0%,特発性が30.0%,胆石性が4.0%であった.
(イ)2002年1年間の慢性膵炎推定受療患者数は45,200(95%信頼区間35,600-54,700)人,人口10万人当たりの有病患者数は35.5人,新規発症率14.4人と推定された.アルコール性67.5%,特発性20.6%,胆石性3.1%であった.
(ウ)この3年間で慢性膵炎の推定受療患者数が約8.0%,有病患者数は約7.0%,新規発症患者数は148%増加した.アルコール性の頻度が増加し,特発性と胆石性の頻度が減少した. 画像診断の進歩により,特発性膵炎が減少したと考えられる.腹腔鏡下胆嚢摘除術など,有胆石患者に対して早期に処置がなされるようになった結果胆石性膵炎が減少したと考えられる.
・結果を慢性膵炎診療指針策定に活用する.
・結果を生活習慣改善の啓蒙に活用する.
国民のアルコール消費量と飲酒者数の増加が慢性膵炎患者数の増加に関与している. 1 4       6  
(8)慢性膵炎の長期転帰に関する研究         (ア)慢性膵炎は膵癌をはじめ種々の悪性腫瘍を合併する頻度が高く,生命予後が悪い.
(イ)慢性膵炎患者を1995年から2002年まで8年間追跡調査期間で27.6%の死亡を確認した.死亡時年齢は,男女とも平均66歳で,人口動態統計から見た日本人の平均寿命より男性では11歳,女性では17歳若かった.死因の第1位は悪性新生物でであった.生死が確認できた慢性膵炎963例の12.1%が悪性新生物によって死亡し,膵癌合併死が3.1%であった.
(ウ)わが国の慢性膵炎患者においても膵癌の合併する頻度が高く,生命予後が悪いことを第102回日本内科学会講演会シンポジウムで発表し大きな反響があった.
・成果をもとに慢性膵炎診療ガイドラインを策定する. 慢性膵炎は生命予後が悪く,生活習慣の改善が重要である. 15 5 7     16  
III.自己免疫性膵炎
(1)自己免疫性膵炎の病態の解明に関する研究
        (ア)自己免疫性膵炎では膵管の不整狭細化と膵腫大が特徴的であり,通常の慢性膵炎とは異なる独立した疾患概念である. 自己免疫性膵炎では血清γグロブリン,IgGが高値となり,組織中にリンパ球形質細胞の浸潤を著明に認め,ステロイド治療に良好に反応することより病態に自己免疫学的機序の関与が考えられる.
(イ)膵管の不整狭細化と膵腫大は,病態に応じて変化し,限局性から膵全体に病変が進展する場合もある. 自己免疫性膵炎は再燃を繰り返すと,膵石が形成される進行性の病態であり,進行期には通常の慢性膵炎と同様の画像所見をとりうる.膵管病変は限局性にとどまる例や,び漫性に移行する症例,自然軽快する症例があった.膵以外の臓器病変(胆管病変,唾液腺炎,後腹膜線維症,肺門リンパ腺腫大,閉塞性静脈炎など)の合併を認め,全身疾患の可能性もあり,多臓器に線維化を生じるmultifocal fibrosclerosisとの強い関連性を示した.自己免疫性膵炎患者では HLA DRB1*0405-DQB1*0401 haplotypeと有意な相関を認め,これらHLA分子により呈示される抗原ペプチドに T cell receptor が反応することが疾患発症に関与している.
(ウ) 自己免疫性膵炎の臨床像の詳細,特に長期経過例と通常の慢性膵炎との関連について明確になってきた. 自己免疫性膵炎と種々の膵外病変の関連が明らかとなり,本疾患が全身疾患である可能性が示唆された.IgG4の測定法とカットオフ値についてコンセンサスが得られた.最近の知見をふまえた疾患の定義・概念についてコンセンサスが得られた.
・成果をもとに「自己免疫性膵炎診断基準2002年」を発刊し,全国に普及した.
・成果をもとに,膵癌と自己免疫性膵炎の鑑別がより明確になり,不必要な外科手術施行を無くすることが出来るようになった.
自己免疫性膵炎の病態解析と治療指針は,わが国のみならず世界をリードする型に発展している. 28 44 85     34  
(2)自己免疫性膵炎の治療に関する研究         (ア) 自己免疫性膵炎ではステロイド剤が奏効することより,多くの症例で同治療が行われているが,ステロイド剤の初期量,漸減法,維持量および維持量の投与期間,再燃に関連した投与中止の是非など,具体的な治療法についての指針は呈示されていない.(イ)黄疸例では原則的に胆道ドレナージを,糖尿病合併例では血糖のコントロールを行う.黄疸,胆管狭窄,腹痛等の臨床症状の軽快しない症例に対しては,経口プレドニン30〜40mg/日から投与を開始し,臨床徴候の改善をみながら,2〜3ヶ月を目安に維持量(目安として2.5〜5mg/日)まで漸減する. 自己免疫性膵炎の診断がつかない時点で,安易にステロイド治療を行ってはならない.ステロイド治療の効果判定および再燃についての経過観察には,血清γグロブリンやIgG,IgG4などの血液生化学検査所見,腹部画像所見,黄疸や腹部不快感などの臨床徴候を参考にする.
(ウ) 自己免疫性膵炎の治療についてのコンセンサスを集約した.自己免疫膵炎の治療について一定の指針を呈示したのは本研究が世界で初めてである.現時点での標準治療についてのコンセンサスを呈示したことは,今後の臨床研究の礎を築くものと考えられる.
・成果を自己免疫性膵炎の治療指針として発表し,全国に普及する.
・自己免疫性膵炎のステロイド治療について初めてコンサンサスが得られた.同治療を自己免疫性膵炎の保険適応治療として認める方向での検討が必要である.
一般臨床医にとってこれまで手探り状態であった自己免疫性膵炎の治療について一定の指針が呈示されたことは,本邦における同治療の標準化に大きく寄与するものと考えられる. 28 42 79     32  
(3)自己免疫性膵炎の疫学に関する研究         (ア) 高齢の男性に多いことは知られているが,患者数の調査はない.
(イ)2002年に医療機関を受診した診断基準を満たす自己免疫性膵炎推定患者数は900人(95%信頼区間: 670-1,110人)であった.診断基準は満たさないが自己免疫性膵炎と考えられる推定患者数は800人(95%信頼区間: 410-1,180人)であった.自己免疫疾患(膠原病)に合併した慢性膵炎推定患者数は530人(95%信頼区間: 250-810人)であった.自己免疫性膵炎有病者数は人口10万人当たり0.71人,自己免疫性膵炎疑い症例は人口10万人当たり0.63人と推定された.男女比は2.5:1であった.
(ウ)今回の調査で初めて本邦における自己免疫性膵炎の患者数が明らかとなった.これまで限られた地域でさえ患者数の調査は行われたことがなく,本研究報告が自己免疫性膵炎についての世界で初めての報告である.
・今後自己免疫性膵炎患者の増加が予想され,今回の疫学調査は出発点となるものであり,患者数の増減に対応した行政的施策の決定に際し重要な判断材料となる. 自己免疫性膵炎の患者数が明かとなったことより,未だ一般臨床医にとって馴染みの薄い同疾患の啓蒙に寄与する.   1       4  
IV.膵嚢胞線維症
(1)膵嚢胞線維症の疫学に関する研究
        (ア)日本人の膵嚢胞線維症は非常に稀であるが,正確な頻度はわかっていない.生命予後は不良である.
(イ)1999年1年間の受療患者数は15人(95%信頼区間:12-18)と集計され,発症頻度は1人/1,740,000人(95%信頼区間:1/218万〜1/145万)と推定された.1994年の調査結果に比べ,1999年の調査では,経過の長い患者が増加しており,約80%は10歳以上であった.“特定疾患の疫学に関する研究班”と協力し,2004年の全国疫学調査を立案,開始した.過去の調査で集められた症例の追跡調査を併せて実施し,症例報告(原著論文,会議録)についても調査を開始した.
(ウ)本症は予後不良の遺伝性疾患であるが,経過の長い患者が増加し,約80%は10歳以上であり,生命予後が改善しつつある.
・予後不良の遺伝性疾患である本症に対する行政対策に必要なデータを提供できる.
・診断ならびに治療指針・診療マニュアルを作成し,普及する.
全国疫学調査により,膵嚢胞線維症の実態と動向が判明する.     3     1  
(2)膵嚢胞線維症の病態,診断に関する研究         (ア)日本人の膵嚢胞線維症患者のCFTR遺伝子変異のスペクトルは欧米と異なっている.診断の必須項目である汗中クロライド濃度の測定では,検査過程の精度に問題がある.
(イ)これまで,わが国の膵嚢胞線維症を計14例解析し,欧米でもきわめて稀な変異や,CF Mutation Database (CFMD)に登録記載のない複数のCFTR変異を新たに検出,確認した.正常群におけるTG repeats多型の分布が日本人と欧米人で異なった.日本人では(TG)11と(TG)12にシフトしており,CFTRの発現量が少なかった.簡単で再現性も良く,被験者の負担が少ない指先汗クロライド測定方法を開発した.膵導管細胞におけるHCO3-輸送に重要な役割を果たしているSLC26A陰イオン交換輸送体の機能がCFTRにより調節されている.
(ウ)すでに全世界では1,300種以上のCFTR遺伝子変異が報告されているが,本邦の膵嚢胞線維症患者のCFTR遺伝子変異は欧米人の変異スペクトラムと全く様相を異にしていた.膵嚢胞線維症患者診断に必須の汗クロライド濃度を簡単で再現性良く測定できる方法を開発した.
・我が国の医療機関で施行可能な汗中クロライド測定法に基づく診断基準を作成し,普及させる.
・日本人固有の遺伝子変異を集積し,データベースの作成が進める.
アジア各国との共同研究により,アジアの民族特有のCFTR遺伝子多型の分布および疾患との関連を解明する. 6 5 13     1  
稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究(天疱瘡) 平成14-16年度 109,000 岐阜大学大学院医学研究科 北島康雄 (ア)尋常性天疱瘡の標的抗原はデスモゾーム構成蛋白のクローニングによりデスモグレイン3であることの発見(班員の研究)。(イ)デスモグレイン3、1のELISA検査法を開発したこと。デスモグレイン3ノックアウトマウスのリンパ球移植を用いて天疱瘡モデルマウス作成に成功したこと。病原性デスモグレイン3モノクローナル抗体作成とに成功したこと。(ウ)(1) 天疱瘡モデルマウスは6ヵ月以上にわたり安定した病的抗体産生が認められるので、治療剤、免疫抑制剤の評価系として有用である。また天疱瘡モデルマウスから単離した病原性モノクローナル抗体cDNAからDsg3特異的B細胞トランスジェニックマウスを作成した。これは末梢自己抗原に対するB細胞トレランスのメカニズム解明、さらに多くの自己免疫疾患病態解明に役立つ。本成果はJ. Clin Invest 等の雑誌に掲載され国内外から大きな反響があった。(2) 天疱瘡抗体がデスモグレイン3に結合後細胞内にシグナル伝達が惹起されることを一連の研究で明らかにし(Arch Dermatol Res、Clin Exp Dermatolに発表)この面からの発症機序と治療法開発の視点から国際的に追試されている。 デスモグレイン1,3のELISA抗体価測定法の開発とその健保収載により、本症の診断と疾患活動性評価が容易に行なわれるようになり全国の病院で適切な診断に基づいた適切な治療が可能となった。 当研究班の成果を元に開発されたデスモグレイン1,3のELISA抗体価測定キットは本邦だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ等世界中で販売使用されている。 38 296 300 6 0 9
http://www.med.hokudai.ac.jp/derma-w/ http://www.okayama-u.ac.jp/user/med/derm/network.htm
難治性疾患克服研究
(表皮水疱症)         (ア)栄養障害型表皮水疱症は7型コラーゲンの遺伝子変異により起こる。(イ)7型コラーゲン遺伝子変異の位置によって臨床型(フェノタイプ)が特異に分類されることを明らかにした。栄養障害型表皮水疱症の原因遺伝子であるVII型コラーゲン遺伝子に存在するalternative splicingを発見し、創傷治癒や皮膚remodelingにとの関係を明らかにした。遺伝子治療を目的とした、7型コラーゲン導入のためのプロモーター開発、超音波を用いた遺伝子導入法やウイルスベクターの開発をした。(ウ)上記の遺伝子導入法やウイルスベクターについての成果はGene Therapyなど多くの国際誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。
遺伝子治療でVII型コラーゲンcDNAを発現させるためのCOL7A1プロモーターのクローニングを行った。
免疫反応回避方法の開発:マウス胎児皮膚にGFP発現プラスミドを導入することにより、GFPに対する免疫寛容を誘導し得た
培養皮膚センター化方式にて、全国の10大学に冷凍宅配便で送付し、11例に移植に治療を行って治療的意義を示した。
不治の病であるこの疾患の治療の可能性を示したことは期待される。
遺伝子変異と臨床像の関係については解明が進んでいるので、出生前診断施行ガイドライン設定にむけての出生前診断基準案を準備した。
遺伝子導入のためのウイルスエンベロ-プベクターは日本及びオーストラリアで特許を取得した。将来多くの疾患に対する遺伝子治療への応用が期待されている。難治であった皮膚の潰瘍に対して培養皮膚よる栄養障害型表皮水疱症の治療法の確立によって一定の治療的効果の可能性が持たされた。出生診断法を確立は学術的にレベルが高く、かつ社会的には極めてニードが高い。患者のDNA配列をしらべ遺伝子変異を同定しgenotype/phenotype の解析結果は数多く国際誌に報告されレベルが高い。             難治性疾患克服研究
(膿疱性乾癬)         (ア)一応の診断基準と臨床経験的治療法が列挙されている。しかし、発生機序および遺伝学的背景は殆ど解明されていない。また、QOLと小児の病態は不明である。
(イ)(1)1995-2003年の日本乾癬学会登録データから汎発性膿疱性乾癬(GPP)症例を抽出し疫学的検討を加えた.その結果、GPP再発時の重症度は80%が不変,悪化しており,再発をいかに予防するかが課題と考えられた.また、小児の病態が大人のそれと違いがあることが推察された(16歳以下小児例は,GPP全体の11.7%を占め、小児の治療ではシクロスポリンの使用が増加していた.)。(2)本症の膿疱形成機序における好中球性炎症と表皮由来分子との連鎖を解明した。(3)マイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイドな遺伝的相関解析により標的領域を40に絞り込んだ。(4) 膿疱性乾癬と尋常性乾癬の角層下膿疱形成過程において、IL-8だけでなく、C5aが好中球集積に重要な因子であることが示された。(5)ロキシスロマイシン、Parthenolide、Bay11-7085、SB202190が表皮細胞によるケモカインTARC、CTACKの産生を抑制した。これらの物質が膿疱性乾癬の治療薬として有用である可能性が示唆された。(6)乾癬患者由来角化細胞のEGFR過剰発現の原因として、転写因子AP-2の恒常性発現とEGFR遺伝子の低メチル化の関与を示した。
(ウ)上記成果はDermatologyなどの国際誌に掲載され国内外から反響があった。
平成13年度に汎発性膿疱性乾癬診断・治療ガイドラインを作成。
山陽地方における本症その他難治性皮膚疾患患者支援を目的として岡山皮膚難病支援ネットワークを設立した。
岡山皮膚難病支援ネットワークを設立は、膿疱性乾癬患者間および行政、医療機関との連携が極めて密になり、全国に拡散する可能性を示した。             難治性疾患克服研究
(魚鱗癬様紅皮症)         (ア)本症はケラチン1、10の遺伝子変異により起こる。診断基準、疫学、治療法は不明である(イ) BCIEのgenotype/phenotype相関解析結果、a)ケラチン1の変異が見られる例では掌蹠角化や手指拘扼を生じる例があること、b)ケラチン10の変異例ではそれらが見られないこと、c)両ケラチンの2Bドメインに変異が見られる例の一部は環状皮疹を生じること、d)家系内においても臨床症状に差異があること、などを示した。本症の発症機序としてケラチン線維異常が層板顆粒の分泌過程を障害し蛋白分解酵素の供給が不十分となり角層細胞間の分解過程が遅延することが明らかになった。(ウ)上記の発症機序、また新症例の集積と文献症例における遺伝子変異と臨床像の関係解析結果はJ. Invest Dermatol などの国際誌に掲載され反響があった。 平成13年度に本症の診断手引きを作成した。平成14年度から当研究班の調査対象疾患として認められた。
患者数、重症度、治療状況などにつき、全国的疫学(一次、二次)調査を本邦で初めて実施した結果、全国の病院を受療した患者数は55人(95%信頼区間35-75人)と推計され、重傷度による患者数分布も推定され、国としての医療行政の資料となる。
難治性疾患克服研究事業をもってはじめて本疾患の調査が可能となった。将来、本研究班を中心に疫学、病態、治療などの研究が進むと期待されている。             難治性疾患克服研究
強皮症における病因解明と根治的治療法の開発 平成14-16年度 62,000 金沢大学大学院医学系研究科血管新生・結合組織代謝学(皮膚科学) 竹原和彦 (ア)免疫異常・線維芽細胞の活性化・血管内皮障害の3つが成因に関与している
(イ)B細胞異常の関与・ CTGFによる持続的線維化機構・血中血管内皮前駆細胞の減少が明らかとなった
(ウ)それぞれ,J Clin Invest, J Immunol, J Cell Physol, Lancetなどの国際誌に掲載され,我が国の研究が本症の病因解明を促進した。
臓器別重症度分類・治療指針が作成され,リーフレット及びインターネットで全国に発信。読売新聞(2004年4月5日)にも紹介される。 重症型の血清学的マーカーである,抗RNAポリメラーゼ測定キットが本研究班メンバーによって開発され,欧米で認可,我が国でも保険適応を目指す。 33 399 452 1 1 3 難治性疾患克服研究
混合性結合組織病の病態、治療と関連する遺伝的因子、自己抗体の研究 平成14−16年度 70,000 北里大学医学部 近藤啓文 ア このテーマで、すでに分かっていること
1) 混合性結合組織病は抗U1RNP抗体を必須の自己抗体とするオーバーラップ症候群で、わが国に多い疾患である。
2) 予後を決定する病変は肺高血圧症(PH)で、他の膠原病と比べ高頻度に認められる。
3) 特定疾患として、診断基準、重症度分類、治療指針がある。
イ 本研究で加えられたこと
1) 抗U1RNP抗体陽性無治療患者のプロスペクティブ研究により、現行の診断基準の妥当性を確認し、これにPH加えた診断基準の改定を行なった。さらに、陽性患者データバンクを構築した。
2) 抗U1RNP抗体陽性群には特異な遺伝的背景(U1RNP・A抗原にSNPが有意に多い)の存在が示唆された。
3)PPHではBMPR-IIの遺伝子多型が高率であるが、膠原病合併PHでは変異が認められなかった。しかし、PH合併例ではNO合成酵素の遺伝子多型が認められた。
4) PHのモデル動物で、PGD合成酵素(PGDS)を発現する線維芽細胞を投与し、PGDSの発現とPHの抑制を証明した。PHの新しい治療の可能性が示された。

1) 研究成果を基に混合性結合組織病の診断基準の改定を行なった。

2) 膠原病合併PHの治療ガイドラインを厚生科学研究の他の研究班(橋本班、三森班)と共同で提案した。

3) 混合性結合組織病の治療ガイドラインを改訂し、発刊した。

4) 膠原病合併PHの治療薬として承認されたエポプロステノールとボセンタンの治験に協力した。
  44 60 63   4   難治性疾患克服研究
          ウ 本研究成果の専門的・学術的意義
1) 疾患に必須の自己抗体陽性者のプロスペクティブ研究は他に例を見ない。この研究により、データに基づく診断基準改定を可能にし、データバンクを構築した。
2) 自己抗体の発現機序に対応抗原のSNPの存在が関与する可能性が示された。
3) 本症に合併するPHの特徴が遺伝子多型の面で明らかになった。
4) モデル動物であるがPHの新しい治療戦略が示されたことは画期的である。
                 
神経皮膚症候群に関する調査研究 平成14-16年度 62,000 福岡大学医学部 中山樹一郎 (ア)神経皮膚症候群(神経線維腫症1型および2型、結節性硬化症)の責任遺伝子は既に同定されている。(イ)遺伝子産物の関連蛋白を含めて病態を制御している細胞内シグナル伝達、細胞内機能の一部が分子レベルで明らかとなった。また新しい治療法の開発では、有用性の期待できるものが複数見出された。(ウ)本成果により将来的な分子治療および発症予防薬の開発や既に実用化されている既存治療法への応用が期待される。 前研究班の作成したガイドライン、治療指針に沿った治療を推進することにより、その有用性を検討した。本成果をもとに神経線維腫症1型の臨床調査個人表の重症度分類の一部改訂を予定している。またインターネットウェブサイトでの本症候群や研究班の情報波及効果により、診察を希望し受診する患者数が増加した。 神経皮膚症候群の病態解明は飛躍的にすすんでおり、本研究班の国際的な学術的評価は高い。臨床医、疫学研究者、基礎医学研究者等多彩な専門分野の研究者が基礎的情報を共有し協力して新しい治療法の開発をめざす本研究班は国際的にも類を見ないものであり独創的である。今後もインターネットや医学雑誌等様々な情報媒体を利用し、治療指針の広報や普及などの地道な努力を積み重ね、患者QOLの改善、向上をめざす予定である。 98 32 105 3 2 1(http://www.nanbyou.or.jp/) 難治性疾患克服研究
進行性腎障害に関する調査研究 平成14-16年度 98,000 順天堂大学医学部腎臓内科 富野康日己 (ア)遺伝因子としては、多発性嚢胞腎のPKD1,PKD2遺伝子が報告され、家族性IgA腎症の原因遺伝子として、6q22-23(IGAN1)が同定されている。また、IgA腎症では、扁桃感染と病状の進行との関連が示唆されている。しかし、いずれの疾患とも明らかな原因や病態は解明されていない。高血圧・高度蛋白尿が疾患の予後増悪因子であることは明らかである。
(イ)IgA腎症の全国疫学調査にて予後に影響するのは、高血圧、高度蛋白尿、腎生検での高度障害であった。IgA腎症予後不良群に対して、ステロイド薬・抗凝固薬・アンジオテンシン阻害薬による多剤併用療法の有効性が示唆された。MPO-ANCA型急速進行性糸球体腎炎に対するシクロフォスファミドパルス療法の有用性が示唆された。膜性腎症の予後調査について長期予後の点では、発症15年までは良好であるが、それ以降低下する傾向が明確となった。加齢以外にも悪化の要因があると考えられた。治療法別の予後解析では、ステロイド薬単独療法の有効性が示唆された。高血圧を有する多発性嚢胞腎症例に対し、カルシウム拮抗薬投与群に比較して、アンジオテンシン受容体拮抗薬投与群では、尿中蛋白排泄量やアルブミン排泄量を減少させることが明らかとなった。
・IgA腎症・急速進行性糸球体腎炎・難治性ネフローゼ症候群・多発性嚢胞腎ともに、平成13年度までに診療指針を作成した。しかし、研究や疫学調査の成果からエビデンスを確立することにより、診療指針は改訂されてゆくべきものである。4疾患ともに、全国的な規模で疫学調査および、新たな治療法の確立へ向けて多施設共同臨床試験を開始した。倫理的な問題を解決することが前提であり、各施設で倫理委員会を立ち上げ、承認を得るなど、土台は整備され、すでに症例の登録を開始した。
・全国の国立大学および国立病院を主体とした腎ネットワークを作成した。登録されるデータは、腎病理診断、使用薬剤、検査データ、合併症、経過・予後など多岐にわたり、統計解析可能な診療支援環境を構築した。
・従来の方法では治療困難とされる高度の肝腫大を伴った多発性嚢胞腎症例に対する動脈塞栓術療法を、腎臓に続き肝臓に対しても世界で初めて行った。・DNA多型解析を効率よく、かつ低いコストで行うことができるシステム「DNA多型解析ラボラトリー」を構築した。 142 55 137 0 1 セミナー:6件
講演:3件
シンポジウム:3件
計12件
難治性疾患克服研究
          さらに、ω3不飽和脂肪酸であるイコサペント酸が、進行抑制作用をもつことが示唆された。
(ウ)進行性腎障害に関する総括的な研究のほかに、各個研究を行っており、それらの研究成果は、国際誌に掲載するだけでなく毎年開催している業績発表会にて公表している。この業績発表会には、毎年全国より200名以上の病院・研究関係者が出席し、研究成果は学術的に広く啓蒙されていると考える。さらに、毎年開催される日本腎臓学会学術総会にて「進行性腎障害に関する調査研究」の公開シンポジウムを行い、当研究班の成果を公表している。
                難治性疾患克服研究
スモンに関する調査研究 平成14-16年度 287,044 独立行政法人国立病院機構東名古屋病院 松岡幸彦 (ア)スモンの原因は整腸薬キノホルムの副作用である。(イ)発病後35年も経過したスモン患者の実情が明らかとなった。(ウ)この研究の成果は、J.Neurol.Sci.などの国際雑誌にも掲載され、大きな反響があった。 ・臨床と病理とのより密接な協力体制を作るうえで、腎生検病理診断に関わる用語の定義、用語や組織分類の標準化を行った。 二度と薬害を起こしてはならないとする世論の形成に大きな役割を果たしている。 4 1 4 0 1 5 (「スモンの集い」開催3回「スモンの過去・現在・未来」出版2回) 難治性疾患克服研究
特定疾患の微生物学的原因究明に関する研究 平成14-16年度 88,000 国立感染症研究所感染病理部 佐多徹太郎 (ア)難治性疾患(特定疾患)の原因として微生物が疑われているが、不明である。(イ)ボルナ病ウイルスと神経変性疾患、ギラン・バレー症候群とC. jejuni、サルコイドーシスとプロピオニバクテリア、慢性難治性気道性感染症疾患とライノウイルス、難治性血管炎とカンジダ、クローン病とHHV-6の関連が強く示唆され、原発性肺高血圧症とHHV-8の関連が否定された。(ウ)病原体等と難治性疾患の関連性についての学術論文が発表された。 発症機序として、ギラン・バレー症候群とC. jejuni、サルコイドーシスとプロピオニバクテリアの関連が明白となりつつある。治療への貢献としては慢性難治性気道性感染症疾患とライノウイルス感染が示唆された。また原発性肺高血圧症とHHV-8の関連が否定された。 原発性肺高血圧症とHHV-8の関連が否定された点については米国の学術誌等の多くに引用された。 35 17 133 8 1 0(未だ明白ではないため) 難治性疾患克服研究
HB-EGFにかかわる新規拡張型心筋症モデルマウスの作成とその治療薬開発に関する研究 平成14-16年度 106,800 国立循環器病センター 生理機能検査部 北風 政史 ア. 増殖因子HB-EGFは心臓特異的な作用を有する。
イ. 世界で始めてのマウス拡張型心筋症モデルを確立した。HB-EGFの心不全治療薬としての応用の可能性を示した。高感度ヒト血中HB-EGF測定法を開発、心不全重症度の経過マーカとして使用できる可能性を示した。
ウ. Nature Medicine, Nature Genetics, PNAS, JCBなどtop jounalに成果は発表され、循環器領域でのHB-EGFの重要性は世界で確立・注目されている。
エ. HB-EGFに関しては発見からモノクローナル抗体、遺伝子改変マウスの作成、生化学的解析、ヒトでの遺伝子解析、高感度測定法、にいたるまで殆ど独占的に世界で最も先進の研究を行っている。
世界初のマウス自然発症拡張型心筋症モデルを確立、新規心不全治療薬のスクリーニングが敏速化され、薬剤のみならず細胞治療などのアッセイにも多施設で使用されている。高齢化社会の進行に伴い急激に増加する心不全の新しい治療法の開発に役立つと考えられ、厚生労働行政上の重要な成果となったと思われる。今後も多施設に供給予定である。またHB-EGFは新規心不全治療薬として特許を取得して臨床応用を計画している。 HB-EGFは新規の心不全治療薬として今後臨床応用される可能性が高い。 72 15 50 1 20 3 難治性疾患克服研究
特定疾患対策のための免疫学的手法の開発に関する研究 平成14-16年度 106,000 筑波大学大学院人間総合科学研究科先端応用医学専攻臨床免疫学 住田 孝之 〔ア)特定疾患の多くは自己免疫疾患であい、自己反応性T細胞や自己抗体の関与が明らかにされていた。〔イ〕自己反応性T細胞の対応抗原、T細胞エピトープ、アナログペプチドを解明した。TCRと制御分子を細胞に遺伝子導入する手法あるいはES-DCに抗原と制御分子を遺伝子導入する手法により、自己免疫疾患を抗原特異的に制御する基盤技術を確立した。〔ウ)この基盤研究の成果はJ.Immunolなどの雑誌に掲載され、国内外から注目されている。 本研究は特定疾患の新たな抗原特異的治療戦略確立のための基盤研究であり、将来的には、診断、治療のガイドラインに含まれることが期待される。 特定疾患の現在の治療は、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、サイトカイン治療などであり、抗原非特異的な治療であるため、感染症、悪性腫瘍などの副作用が認められる。そこで、本研究で抗原特異的な治療戦略を確立することにより、より安全で根治的な治療が期待される。 229 11 96 4 0 0 難治性疾患克服研究
特定疾患に対する自己免疫モデル開発に関する研究 平成14-16年度 73,000 慶應義塾大学医学部 天谷雅行 (ア)強制免疫により、非効率的ではあるが、自己免疫反応を惹起し、自己免疫モデルマウスを作成することができる。(イ)自己抗原ノックアウトマウスが欠損している自己抗原に対して免疫寛容が成立していない事実を利用し、自己抗原ノックアウトマウスのリンパ球を自己抗原を発現しているマウスに移植することにより、抗原特異的な免疫反応が持続的に認められる自己免疫モデルマウスの開発し成功した。(ウ)皮膚を標的とする尋常性天疱瘡、心筋を標的とする自己免疫性心筋炎のモデルマウスの作成に成功し、病態解明、新規治療法開発に貢献している。 実際の病態にできるだけ近い臓器特異的自己免疫疾患のモデルマウスを作成し、それぞれの疾患の病態を解明し、副作用の少ない疾患特異的、抗原特異的な免疫抑制療法の開発することは、国民の受ける医療の向上につながるばかりでなく、医療費全般の削減となり厚生行政に寄与すること期待される 本作製法は、様々な自己免疫疾患に幅広く応用されている。また、天疱瘡モデルマウスを用いた解析の結果、新しい免疫寛容機構の存在が示唆されている。 110 21 99 7 0 1 難治性疾患克服研究
罹患組織における遺伝子発現プロファイル解析からの病因解明に関する研究 平成14-16年度 90,000 東京大学国際・産学共同研究センター ゲノムサイエンス分野 油谷浩幸 (ア)研究開始時に公開された網羅的な遺伝子発現データベースは存在せず、微量臨床検体の発現解析は困難であった (イ)微量検体の解析データも含めて、研究者間で共有可能な大規模な遺伝子発現データベースを構築、ホームページ上で公開し、横断的研究班として分担研究者のみならず広く病態解明へむけての機能ゲノム情報を提供した (ウ)データベースから臓器特異的な遺伝子群を抽出し、疾患発症にかかわる細胞系譜の同定を加速化できた 疾患特異的な発現をしめす遺伝子を特定することにより、バイオマーカー、治療標的分子の探索に役立った ゲノム解析にもとづく疾患解析の国内での有数な拠点を形成した。ゲノムコピー数多様性の国際コンソーシウムに参加した 31 1 47 10 2 2 (データベースURL:www.lsbm.org) 難治性疾患克服研究
特定疾患の疫学に関する研究 平成14-16年度 140,280 順天堂大学医学部衛生学 稲葉裕 (ア)各種難病の頻度分布はある程度わかっているものもあるが、新しい診断基準の導入による変化や年次推移の評価など、継続的な研究を要するものが多い。(イ)(ウ)症例対照研究により、10疾患のうちいくつかの疾患の発生関連要因が明らかにされた。難病の頻度分布について25疾患の全国調査を実施し、患者数の推計を行った。予後調査はIgA腎症で予測スコアを作成し臨床の現場に還元した。 臨床調査個人票を用いて治療研究事業対象者の18年間の特徴、将来の受給者数の推計を示した。難病対策の評価として「難病30年の研究成果」を発行した。患者の保健医療福祉とQOLの向上に資するための研究も実施した。 H16年に利用体系が確立したオンラインシステムの解析をし、その結果をまとめた報告書を刊行した。 54 2 39 0 0 4 難治性疾患克服研究
特定疾患のアウトカム研究:QOL、介護負担、経済評価班 平成14−16年度 168,580 京都大学大学院医学研究科 福原 俊一 (ア) 難治性疾患において患者のQOLを改善することの重要性。
(イ) 難治性疾患における患者QOL測定尺度の開発、非薬物治療方法の有効性を、QOLをアウトカムとして評価する2つの本格的な臨床試験を計画、実施した。
(ウ) 難治性疾患およびそれ以外の疾患にも活用可能な介護負担感尺度の開発と検証、種々の基礎的・方法論的諸問題の解決のための研究を行った。
難治性疾患の治療に関する医療経済評価研究を行った。(呼吸不全患者に対する在宅酸素療法の費用効果分析) 難治性疾患および重症疾患における意思決定にまつわる倫理的諸問題を整理し、実際に役立つ診療倫理指針を作成、公表した。 124 168 76 0 0 2 難治性疾患克服研究
特定疾患の地域支援体制の構築に関する研究 平成14−16年度 135,400 国立病院機構西多賀病院 木村格 ア:難病に対する専門医療と生活支援体制の絶対的不備。入院患者受け入れ可能病院の不足と、専門医師の地域偏在。難病は特殊なものという医療サイドの意識と地域医師会、一般病院の参画・協力体制の不備。患者、家族、医療スタッフがどんなことでも1ヶ所で相談ができる相談・支援窓口の不備。患者、家族、医療スタッフがどんなことでも1ヶ所で相談ができる相談・支援窓口の不備。難病者・家族が難病に由来する身体的不利益と精神的障害のため困難を克服できない。
イ:医療体制整備=都道府県単位に拠点・協力病院体制からなる医療ネットワークを整備、その効果を検証。生活支援体制の構築=個々の難病患者毎に多専門職種からなる生活支援チームを構築、効果を検証。 相談事業の整備=都道府県に最低1ヶ所、相談と支援のできるセンターを設置、相談支援員を配置。
ウ:精神的支援体制=身体的支援体制整備と並列して精神的・心理的サポート体制の必要性を研究。 療養環境・生活支援・相談事業など特定モデル地域での成果を全国に普遍化する戦略を確立。 研究事業での成果は利用者の視点から検証し、今後の研究戦略、問題解決策として提言した。研究事業での成果を国の難病対策事業として普遍化、その進捗と効果について研究。医療体制=都道府県単位に難病医療ネットワークを構築してより円滑に専門医療を供給できる体制整備、拠点病院と協力病院の役割分担、個々の患者の長期支援に専門医師がより積極的に参画する意義、効果について研究、これらの支援体制整備の具体的な効果を実証できた。
研究成果から政策的提言がなされ、2つの都道府県事業が実現した。研究班は事業進捗を推進、阻害要因を解決する戦略を求め、実質的な成果を得た。
 (1)重症難病患者入院施設確保事業:全国での実施率90%
 (2)難病相談支援センター事業:全国での実施率40%
○難病に対してより円滑な医療サービスと実質的な生活支援環境が整備されることによってより多くの難病患者が例え人工呼吸器を装着してでも生きる決心ができ、障害や社会的不利益を克服して生きがいを持ち、より高い生活の質を保持した生活ができることを実証。
○本研究班の主導で、各地で多専門職種を包括する難病支援体制整備やその実践的研究が実施され、難病医療と生活支援体制のケアシステムが質・量共に向上した。
○難病者にとっても最大の生きがいとなる『雇用の拡大等就労支援体制』について研究を進め、最終的に難病者の自立支援、難病克服体制を創造する。
主任研究者・分担研究者を核にして、全国の都道府県を対象に
○難病に対する県民と専門スタッフへ多面的な啓蒙活動を実施。
○地域での支援活動のキーパーソンを養成し、入院施設確保事業と
相談・支援事業の質の向上を推進。
○国民誰でも難病の支援に参加でき、寄与できるという啓蒙活動を実施。
○特に難病支援団体と研究者、医療者、行政との協議の場を設定し、
地域特異性を尊重した体制構築を進めた。
5 5 30 0 研究成果を政策へ反映:2事業
事業の進捗を推進
事業実施による国民への成果を検証
研究者・行政・難病支援団体との共同
作業体制の場を整備
全国難病医療ネットワーク研究会を2回開催
全国難病センター研究会を5回開催
シンポジウムなど:10
都道府県での講演・研修会の実施:120
パンフレット・マニュアルの刊行:70
ケアプラン検討会など:200
各都道府県でホームページ作成:38
難治性疾患克服研究
進行性腎障害に対する腎機能維持・回復療法に関する研究 平成14-16年度 121,200 慶應義塾大学医学部 林 松彦 (ア)進行性腎障害の進行因子として多くのサイトカインあるいはレニン・アンジオテンシン系が重要な役割を果たすことが示されており、また、幾つかの遺伝素因が関与することが知られていた。腎臓の再生に関しては殆ど研究が行われていなかった。(イ)新規腎障害進行因子としてプロレニン・プロレニン受容体を同定し、新たなIgA腎症進行に関わる遺伝因子を同定した。腎臓の再生に、骨髄間葉系幹細胞および内皮前駆細胞が有用であることが初めて示されるとともにSall 1ファミリー、MTF-1などの分化誘導因子のクローニングを行った。を始めとする。(ウ)これら成果はJ Clin Invest、Proc Natl Acad Sci USA等の雑誌に掲載され、国内外で高い評価を得ている。 直接的な行政的貢献はないが、増加の一途をたどる進行性腎障害による末期腎不全患者治療の開発という責務を果たす上で非常に重要な業績を挙げた。 世界で初めて、プロレニン・プロレニン受容体が進行性腎障害において重要な進行因子であることを示し、新規治療薬開発が開始されている。また、腎臓の再生というテーマもこれまでに真剣に取り上げられたことはなかったが、本研究により啓発され、国内外で研究が始まった。これらの内容の一部は新聞で報道されるとともに、腎不全患者団体の講演会でも報告され、多くの反響を呼んでいる。 27 0 136 2 0 2 難治性疾患克服研究
筋萎縮性側索硬化症の病因・病態に関わる新規治療法の開発に関する研究 平成14-16年度 73,000 東北大学大学院研究科神経内科 糸山泰人 (ア)SOD1遺伝子変異により筋萎縮性側策硬化症がおきるが、その原因は不明。(イ)変異SOD1特異的に結合するユビキチンライゲースを同定した。また数種の変異SOD1遺伝子導入トランスジェニックマウスを作製し、臨床病像との相関を明らかにした。さらには治療法の開発に応用するために髄腔内への薬剤投与が可能なトランスジェニックラットを作製し、新規治療法の開発を行った。(ウ)特に、ラットによるALSモデルを用いた新規治療法の開発手法に関しては国内外から大きな反響があった。 本研究班は世界的一級の基礎医学者とALSの臨床研究者が共同して運動ニューロン死を研究する組織であり、世界的にも極めて貴重な研究組織となった。この班研究により基礎医学者が参入した形の多くの共同研究が開始される契機となり、運動ニューロン死の機序解明やALSに対する新たな治療法の開発研究が大いに促進された。 現在、世界的にみても有効な治療法のないALSに対する新たな治療法の開発研究は社会的要請が非常に高い。 30 108 95 5 2 1 難治性疾患克服研究

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