研究課題 | 実施期間 | 合計金額 (千円) |
主任研究者所属施設 | 氏名 |
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(3) その他の社会的インパクトなど(予定を含む) | 発表状況 | 特許 | 施策 | (4) 普及・啓発活動件数 | 研究事業名 | ||||||||||||||
原著論文(件)※2 | その他論文(件) | 口頭発表等(件) | 特許の出願及び取得状況 | 反映件数※3 | ||||||||||||||||||||||
生物テロに使用される可能性の高い病原体による感染症の蔓延防止、予防、診断、治療に関する研究 | 平成14-16年度 | 155,500 | 東京専売病院 | 島田 馨 | ア・対象疾患と外国での診断、治療 イ・検査診断法として、新たに、迅速病理・免疫組織化学診断法、天然痘、サル痘、エボラ出血熱、ペスト菌、炭疽菌、野兎病菌、鼻疽・類鼻疽菌、Q熱コクシエラの核酸迅速診断法、ニューキノロン耐性ないし低感受性菌の検出系、ブルセラ、エボラ出血熱、クリミアーコンゴ出血熱、Q熱コクシエラの血清診断系を開発し、炭疽菌、野兎病菌、類鼻疽菌の免疫診断用抗原を作製した。またボツリヌス毒素の簡易診断キットとボツリヌストキソイドを作製した。 ウ・各病原体等の迅速で特異的検出法を開発した。 | 診断、検査、治療マニュアルを作製した。また同ホームページを作製した。 | 診断、検査、治療マニュアルのホームページを近日公開予定。 | 23 | 13 | 28 | 3 | 2 | 4 | 新興・再興感染症研究 | ||||||||||||
国内での発生が希少のため知見が乏しい感染症対応のための 技術的基盤整備に関する研究(H14-新興_5) |
平成14・15・16年度 | 61,800 | 日本医科大学付属病院 救急医学教室主任教授 | 山本保博 | ア 近年.地球規模で蔓延してきた新興・再興感染症の脅威にバイオテロの脅威が加わり∴迅速で感染拡大を防止することが急務となってきた.国内での発生が稀少のため知見が乏しい、各種ウイルス.リケッチア,細菌,毒素などが発生した場合に感染症対応を実際に行うフロントラインに対してより実践的な行動対応マニュアル,シミュレーション・模擬演習の実施の方法等を作成、普及させると共に.各地域における技術的基盤整備の向上を計ることは最重要課題で本研究の目的である。 イ(1)最もバイオテロなどによりアウトブレイクが懸念されている天然痘に対し、対応マニュアルを作成した (2)そのフィージビリティスタディを東京都、千葉県の協力の下に天然痘予防接種シミュレーションを実施した。 (3)ITによる技術的基盤整備を目的としてインフルエンザ迅速把握(毎日)報告グラフ(http://inhluenza-mhlw.sfc.wide.ad.jp)を運用した。 (4)天然痘訓練をビデオ撮影および参加者に対してアンケート調査を行い、作業負荷を量・質の両面から評価した。 (5)東京・千葉・厚生労働省SARS合同訓練を行い、患者搬送・疫学調査・国及び都・県間などの情報伝達についてフィージビリティスタディの評価を行った。 (6)SARS患者の航空搬送を中心として搬送の手引きを作成し、都道府県および全国の基幹病院に配付した。 (7)鳥インフルエンザにたいする高動指針および現場の対応方法 (8)天然痘ワクチンの必要量の算定 (9)[大規模災害発生時の自衛隊の対処について解説・記載したII]よくわかる「自衛隊災害派遣(医療支援)」のパンフレットを改訂し、各地方自治体、全国の県・郡市医師会並びに災害拠点病院等に送付した。 (10)市民グループや防災機関が、演習を通じNBC災害(炭ソ菌)対処における問題点及び課題を発見し・今後の問題解決及び地域防災・防犯力の強化に資する」ことを目的とした演習計画を提示した (11)2005年日本国際博覧会における発生が稀少のため知見が乏しい感染症対応についてのシナリオ作成を行った。 ウ(1)バイオテロ(天然痘)に対して、関係機関が協力し緊急対応を行う技術的基盤整備が期待される。 (2)ITによる技術的基盤整備により、どの地域においても迅速に感染症情報が共有化され、日常における緊急時の感染症対応も飛躍的に向上する。 (3)SARS合同訓練を行い、患者搬送・疫学調査・国及び都・県間などの情報伝達基盤が向上する |
アセスメントシートを作成し、各地域における評価により現状の問題点と改善すべき点を具体化することにより、新しい対応マニュアルに反映させることにより地域の医療システムに適した 基盤整備がなされるところにある。また予測されるワクチンや抗生剤の備蓄量の特定と配置すべき場所の研究や、自衛隊・保健所による感染症患者の搬送システムの構築、医療経済面からみた技術的基盤整、コンピューターを利用したリモートアクセス活用などの最新の知見を加えたものはなく、今後の国内における人為的感染災害対策として、その効果は多大である。 |
テロ・感染症に対する国民の注目度は、大きく、その恐怖も感じているのが現状である.国内での発生が希少のため知見が乏しい感染症対応のための技術的基盤整備が着実になされることは、社会におけるインパクトは多大である. | 0 | 3 | 1 | 0 | 4 | 5 | 新興・再興感染症研究 | ||||||||||||
大規模感染症発生時における行政機関・医療機関等の間の広域連携に関する研究 | 平成14ー16年度 | 63,600 | 筑波大学大学院人間総合科学研究科 | 大久保一郎 | (ア)大規模な感染症が発生した時には都道府県を越えた広域的対応が必要であるが、感染症法では都道府県単位で完結されることとなっており、感染症法の見直しや関連機関の連携の在り方が求められている。 (イ)模擬訓練や実態調査により連携及び対応上の課題が明確になった。諸外国の法体制の比較から日本の今後改善すべき点を明確にした。 (ウ)成果に関しては公衆衛生関係雑誌、救急医学関係雑誌、法律関係著書等で公表し、多くの関係機関及び関係者に大規模感染症発生時の対応のあり方に大きな影響を与え、行政的研究の意義を示した。 | 感染症法の見直しやバイオテロ発生時における法整備の国の検討に貢献。地方自治体、地方厚生局、検疫所等の関係機関の連携体制の構築に貢献。既存のサーベイランス以外の迅速な情報システムの必要性を提言。諸外国や国際機関の最新の動向を国へ報告。 | 検疫所で作成された対応マニュアルや翻訳されたNBC準備ガイドライン等が普及し関係者に活用される。バイオテロ等を迅速に察知するためのシステムが国で開発される可能性。関係機関の連携体制の構築及び強化により感染症以外の事例にも対応可能。 | 15 | 7 | 約30 | 0 | 6 | 6 | 新興・再興感染症研究 | ||||||||||||
都市部における一般対策の及びにくい特定集団に対する効果的な感染症対策に関する研究 | 平成14−16年度 | 157,545 | 財団法人結核研究所副所長室 | 石川信克 | 1.住所不定者、他生活困窮者、外国人、高齢者等の特定集団に対する効果的方策として以下が示された:a)DOT(直接服薬支援)の積極的適用(外来DOT、訪問DOTともに対費用効果が高く、間歇療法も有効。)、b)保健所、福祉、病院の強い連携(患者への病院訪問や人間的絆の強化、生活保障や住居の提供)、c)定期的治療評価会(保健所と病院)の開催、d)地域内社会資源の活用(NPO、薬局等)、e)外国人への文化的・言語的配慮(各国語によるパンフ・服薬手帳の作成)、f)指標を用いた対策の評価(評価図の作成)。 2.大阪市では上記DOTSの拡大強化と相まって、全国を上回る罹患率減少率、薬剤耐性率の減少を見た。 3.RFLP分析により、住所不定者間の感染、地域内感染が強く示唆された。 4.政策基盤の人権養護と公共性のバランスには弱者支援型(AIDS)と社会防衛型(SARS)があり、結核はその中間に位置することを論じた。 |
1.新結核予防法における都道府県の予防計画策定に向けて、提言を策定し、ホームページに公開および各都道府県に送付した、2.結核対策に関わる地方保健行政システムの地域的差異、中央政府の役割と課題について論じた、3.DOTSのガイドライン・教育プログラムを作成した。 | DOTSの積極的適用、保健所、福祉施設、病院の連携、NPOや薬局などの地域的社会資源の活用を含む、都市部における一般対策の及びにくい特定集団に対する効果的な対策が示された。 | 8 | 17 | 49 | 0 | 3 | 1.社会福祉専門誌「季刊Shelter-less 24号」に特集を企画、「路上生活者の結核問題と対策」を掲載、2.ヒューマンサイエンス振興財団主催の平成15年度厚生労働科学研究費補助金による新興・再興感染症研究推進事業研究成果発表会にて報告 | 新興・再興感染症研究 | ||||||||||||
インフルエンザ予防接種のEBMに基づく政策評価に関する研究 | 平成14-16年度 | 103,950 | 大阪市立大学 大学院医学研究科 公衆衛生学 | 廣田 良夫 | (ア)施設入所高齢者におけるインフルエンザワクチンの肺炎入院・死亡予防効果(国内報告は全く無い)。(イ)地域高齢者と施設入所高齢者における発病防止効果。(ウ)多変量解析により、基礎疾患や居住環境など交絡因子の影響を調整して、ワクチンの独立した有効性を算出した。 | ○ワクチン有効性に関する海外の論文178編の抄訳集を作成。 ○上記内容を、HP上で一般公開作業中。 ○平成17年2月2日の「予防接種に関する検討会」で報告。 ○平成18年予定の予防接種法改正に反映。 |
インフルエンザワクチン有効性に関し、初めて行われた疫学者による共同研究である。 | 11 | 40 | 15 | 0 | 2 | 13(論文抄訳集4冊。HP上で一般公開作業中。ヒューマンサイエンス振興財団主催成果発表会で講演。平成17年度日本ワクチン学会で特別シンポジウムを企画し、7人の分担研究者と研究協力者が7演題講演) | 新興・再興感染症研究 | ||||||||||||
肝炎ウイルス等の標準的治療困難例に対する治療法の確立に関する研究 | 平成14-16年度 | 116,702 | 独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター | 八橋 弘 | (ア)HCV1b型高ウイルス群は、IFN単独治療では9%、Rib併用療法でも22%と治癒率が低い。本対象者をいわゆる難治例として定義する。 (イ)高齢者では、Rib併用の副作用である貧血の出現頻度、程度が高度で早期の減量が必要。ただし、減量しても中断しなければ治癒率は低下しない。 (ウ) 1)Dmを用いて、治療効果予測のAlgを作成。HCV型、HCV-RNA量、IFN総投与量、Rib総投与量、IFNの種類などが治療効果に関与し、それぞれの属性を満たす集団の治癒率が具体的に算出、表示できた。 2)Lam治療の変異株出現予測のアルゴリズムを作成。治療前ALT値、HBV-DNA量が関与。 |
本邦の急性肝炎ではE型肝炎、欧米型B型肝炎の増加を確認。 | (1) ウイルス肝炎治療の新たな指針を提示、紹介。(2004年5/24朝日新聞) (2) C型肝炎IFN治療応答性遺伝子に対するDmを用いた研究を紹介。(2004年5/31日経新聞) (3) E型肝炎、欧米型B型肝炎の感染の実態の紹介。(2003年6月中日、東京新聞) 等で、広く国民に研究の進捗状況を報告し、理解と啓発を求めた。 |
9 | 8 | 3 | 0 | 0 | 3 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
末期肝硬変に対する治療に関する研究 | 平成14-16年度 | 62,200 | 慶應義塾大学 医学部 | 石井裕正 | (ア)肝性脳症の発症機序にはアンモニアが関係している。肝硬変に伴う低アルブミン血症に対し分枝鎖アミノ酸製剤内服に効果がある。外国の難治性腹水治療における利尿剤投与量は大量であり、腹水の慢性的な貯留は特発性細菌性腹膜炎合併がおこりやすい。肝硬変の主体である肝線維化の診断は肝生検に依る。新たな治療法の開発が望まれる。(イ)肝性脳症の発症機序にグルタミンなどの脳内代謝物質やベンゾジアゼピン受容体が関与する。就寝前分枝鎖アミノ酸製剤の投与が血清アルブミン値と筋肉量の改善に有意に寄与し、予後改善につながる。欧米のガイドラインにおける利尿剤投与量は日本人に対しては過剰で、腹水中の血管内皮増殖因子測定が難治性腹水の予測に有用で、好中球エラスターゼ活性測定が特発性細菌性腹膜炎合併の早期診断に有用である。肝線維化の指標として肝弾性度測定が非侵襲的で有用である。免疫抑制下でのアデノウイルス投与と経胆管的投与により慢性肝障害下の有効な遺伝子導入は可能で、動物実験ではMMP-13遺伝子導入が線維化溶解に効果的であった。さらに骨髄細胞の肝再生療法の可能性が開けた。(ウ)末期肝硬変に対する従来の診断法、治療法には臨床現場に即さないものがあることを認識し、新たな診断、治療法の可能性を示唆できた。さらにわが国の肝硬変診療の実情に見合った診療ガイドライン作成の方向付けを行うことができた。 | ガイドラインの作成について(1)欧米において末期肝硬変の治療には移植医療が極めて重要視されているが、わが国ではドナー不足のため移植医療のプライオリティーは低い。(2)従って、肝硬変への進展阻止や肝硬変末期の肝不全治療の進歩とその標準化が強く要望される。(3)その観点から末期肝硬変のみならず肝硬変全般の治療ガイドライン作成は極めて重要であり、本研究班の再重要任務と位置づけ、その作成をできるだけ早期に完成し、全国的標準を提示するため鋭意努力している。 | 医療経済学的観点からはC型肝炎に対するインターフェロン療法の費用対効果に関しては腎移植や乳がん検診などの費用対効果とその価値は同等であることがエビデンスとして示された。 | 14 | 36 | 32 | 1 | 0 | 0 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
進行肝がんに対する集学的治療に関する研究 | 平成14-16年度 | 119,400 | 大阪大学大学院医学系研究科消化器外科 | 門田守人 | (ア)治療抵抗性進行肝細胞癌に対する有効な治療法について確立されたものはない。(イ)治療抵抗性進行肝細胞癌に対して、5FUの肝動注化学療法とIFNの皮下投与(IFN併用化学療法)は治療効果に対するRCTが施行され、その可能性が示唆された。このことは、基礎的研究によっても指示される結果を得た。(ウ)現在までに既存の治療に対して全く治療効果を示さない進行肝細胞癌に対する有効な治療法の確立とその科学的根拠の提示 | 本成果をもとに、IFN併用化学療法の保険適応についての薬剤臨床試験が施行 されている。 |
進行肝細胞癌治療の新機軸として、我が国の当該分野の臨床・研究での最先端を進む形で発展している | 56 | 60 | 103 | 0 | 0 | 大阪大学大学院消化器外科講座ホームページにおいて、その成績などを公開している(http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/surg2/www/index.html)。 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
肝がん患者のQOL向上に関する研究 | 平成14-16年度 | 48,200 | 埼玉医科大学 | 藤原研司 | (ア)肝がん患者のQOL調査に適した調査票を新たなに作成した (イ)新規調査票の効用値をRetrospective Studyにより決定した (ウ)新規調査票の精度を因子と疾患群の4分類により向上させた (エ)Prospective Studyにより治療3カ月後に各治療法間で有意差を認めた |
(ア)肝がん治療法を患者自身が選択するEBMとして活用できる (イ)QOL面から見た各治療法と経費との得失が評価できる (ウ)長期的なQOLと治療効果との関係が判明すれば医療経済面に役立つ |
(ア)肝がん患者の自己決定に役立つ判断根拠を示す社会的意義は大きい (イ)全研究者の活動状況から本研究は信頼度は極めて高いと期待される (ウ)長期のProspecite Studyは困難なだけに本研究の継続は重要である |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
肝炎ウイルスによる宿主細胞のがん化メカニズムの解明に関する研究 | 平成14-16年度 | 48,000 | 岡山大学大学院医歯学総合研究科 | 加藤宣之 | (ア)C型肝炎ウイルスが肝がんの発症に関与している(イ)C型肝炎ウイルスの複製増殖モデルを開発して、肝がん発症への具体的関与を示した。肝がん発症予防につながるC型肝炎ウイルス増殖抑制剤を見出した。(ウ)本研究の成果は権威ある国際誌や新聞に掲載され、国内外から反響があった。 | C型肝炎患者に対する治療方法の改善ならびに新たな治療方法の開発に反映。C型肝炎ウイルス感染による発がん機構の一部を解明。新規抗ウイルス剤開発に向けた新しい標的および評価系の提供。 | C型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス剤を簡便な方法により大規模に探索できるシステムの開発を世界で初めて成し遂げたことから、わが国が当該分野をリードする形に発展できる可能性がある。我が国でリウマチ薬として認可使用されており副作用の少ないミゾリビンがリバビリンに代替できる抗ウイルス剤であることを示したことは高齢化しているC型肝炎患者に新規治療法を提供した点でそのインパクトは大きい。 | 21 | 7 | 49 | 0 | 0 | 2(http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20050408/20050408a4520.html?C=S)(http://www.okayamau.ac.jp/user/med/dmb/research.html) | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
新規肝がん関連遺伝子の網羅的探索とDNAチップを用いた遺伝子の相互関連性に関する研究 | 平成14-16年度 | 95,900 | 東京大学国際・産学共同研究センター ゲノムサイエンス分野 | 油谷浩幸 | (ア)肝炎、肝硬変から肝細胞癌の発生にかかわる遺伝子変異が理解されておらず、個別化医療の実現のための分子標的が存在しなかった(イ)肝癌において高発現する分子としてGlypican3を含めて、膜分子3、転写因子2、フォスファターゼ1、細胞質因子2,分泌分子2を同定した。(ウ)GPC3は新規血清マーカー、免疫組織染色マーカーとして有望であるほか、治療用抗体としての開発も期待される | 抗体医薬のシーズを提供し、産学連携を推進した。 ゲノム抗体創薬の研究拠点として東京大学駒場キャンパスに未来創薬研究所が設立 | ゲノム情報にもとづいて抗体医薬、診断薬の開発へ向けて世界の当該分野をリードする形に発展している | 21 | 1 | 108 | 6 | 2 | 3(講演、ホームページ、データベース) | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
トランスジェニック・マウスを用いた肝発がんメカニズムの解析 | 平成14-16年度 | 52,800 | 東京大学医学部附属病院感染症内科 | 小池和彦 | (ア)慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染症では肝細胞癌が多発する。(イ)HCVのコア蛋白が酸化ストレスや細胞内シグナルを増強して生体内で肝細胞癌を引き起こした。(ウ)このウイルス分子が肝細胞癌発生に関与しているという本成果はHepatology, Gastroenterology等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 | (ア)C型肝炎ウイルスの存在が肝発がんに重要であり、このウイルスの排除が肝発がんの制御のために必須であることを科学的に明らかにした。(イ)C型肝炎におけるアルコール摂取が肝癌発生の危険因子であることを明らかにし、C型肝炎における禁酒の重要性を科学的に証明した。いずれも医療保健行政上極めて重要な事項である。 | HCV感染症では糖尿病を発症しやすく、それが慢性肝炎進行を促進することを発表して、新聞等で大きく取り上げられた。肝癌発生の抑制にも生活習慣病対策が重要であることを認識させた。 | 32 | 55 | 29 | 0 | 0 | (2)市民公開講座「生活習慣病・がんと肝臓」での講演。 足立区中央本町保健総合センター講演会「C型肝炎の最新の治療」。 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
職場における慢性肝炎の増悪因子(化学物質暴露等)及び健康管理に関する研究 | 平成14-16年度 | 14,400 | 産業医科大学医学部 | 川本俊弘 | (ア)ほとんどが不明であった。(イ) 調査対象集団中約1.2%がB型・C型肝炎およびキャリアーとして産業医に把握されていた。このうち約3割が有害業務に従事しており、就業制限や配置転換の指導がなされているものが5%いた。慢性肝炎の増悪と作業関連要因との関係について明確なエビデンスは認められなかった。ただし、過重労働や精神的ストレスが肝炎を増悪させた可能性も示された。(ウ)「肝炎ウィルスに感染した労働者の健康管理に関する提言」を作成した。 | 本研究結果が、「職場における肝炎ウィルス感染に関する留意事項」 (平成16年12月8日、基発第1208004号)に反映された。 | 職場における肝炎ウィルスに感染している労働者に対する健康管理の方法について一定の方向付けができた。 | 2 | 1 | 15 | 0 | 1 | 0 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
輸血後肝炎に関する研究 | 平成14-16年度 | 26,300 | H14国立郡山病院H15国立仙台病院H16国立病院機構 仙台医療センター | 菊地 秀 | (ア)1.輸血後肝炎は、献血々液のHCV抗体スクリーニング(HCV-Ab)採用後は減少し、更に1999年にNATを採用してから一段と減少した。 2.献血々液のスクリーニングにNATが採用されてから輸血後肝炎は極めて稀となったが皆無には到らなかった。 3.2002年に本邦で初めて輸血によるE型肝炎症例が報告された。 4.TTVは班員施設における非A非B非C型肝炎例から、分離されたDNAウイルスで、遺伝子の変異が多く、当初は肝炎ウイルスと見なされたが最近では否定的である。 5.輸血後肝炎発症直後から長期間にわたり追跡して、輸血後C型肝炎の予後を調査した成績はこれまでに無かったのではっきりした予後は分からなかった。 (イ)1. この調査により過去30数年にわたる輸血後肝炎の発生数や発生率が明らかとなった。直近の過去3年の発生率を見ると2002年には0.7%、2003年には0.2%、2004年には0%であった。 2. NAT検査は特にHCV感染検体の排除には極めて有効であり、この3年間は輸血によるHCV感染は認められず、HBV感染が2002年に8例、2003年に9例、2004年に12例認められた。この中には感染後約1年近く経てから肝炎を発症した例もあった。感染源となった献血者にも個別NAT陰性のoccult carrierの存在が明らかとなった。 3.献血々液および肝炎発症例や肝炎疑診例を含む輸血患者からは輸血後にもHEV感染は認められなかった。しかし、健常人にもHEV-IgG抗体価が高い人がいた。 4.TTVによる肝炎(診断基準による)の発生率は5.9%(50例中2例)であった。TTVには輸血以外の医療行為等を介しての感染ルートの存在が推測された。また、TTV関連の肝炎症例には高齢者や糖尿病合併者が多いことからTTV感染はhostの免疫能の低下に関係しているものと推測された。 5.輸血後急性C型肝炎は肝硬変に至るまでに平均36.4年(1年毎のfibrosis stageは0.11)を要することが分かった。輸血時年齢と肝細胞癌診断時までの期間はy=59.0-0.72x(y:期間年、x:輸血時年齢)で表現されることが分かり、感染時の年齢が予後に影響することがわかった。 (ウ)1.約30年に及ぶ輸血後肝炎の発生調査の結果は、この分野においてわが国を代表する成果としてこれまで広く引用かつ利用されて来た。 2.個別NATでも陰性のoccult carrierやHBV感染後約1年後に発症する肝炎の存在が明らかになったことは、輸血後肝炎の防止対策を考える上で大きな示唆を与えるものである。 3.現行の献血々液投与後、輸血後E型肝炎が発生することは今のところ稀であると考える。しかし、今後も監視は必要である。 4.肝炎におけるTTVの解析を足がかりにして遺伝子型の異なる他のTTVの解析がすすめば臨床におけるTTV関与の実態もより解明される。 5.輸血後C型肝炎の予後(肝硬変・肝癌)が予想出来るようになった。 |
約30年にわたる当研究班の輸血後肝炎の発生調査の結果は、わが国を代表する成績として内外に広く引用されてきた。特にこの結果を基にして1996年に策定した「輸血後肝炎の診断基準」と、「輸血後肝炎集計の手引き」は多くの医療機関で利用されてきたが、これ以外にも現在まで、その時々の輸血後肝炎防止対策の立案や行政に深くかかわって来た。 この3年の研究からNAT検査はHCVによる輸血後肝炎の撲滅には大いに有効であるが、occult carrierなどの献血々液中に含まれるHBVによる感染が明らかとなった事実は今後の輸血後肝炎の防止対策に生かされるものと推測する。 |
輸血を起因とする肝炎は極めて稀となったが、絶対的な安全には到っていないことを折に触れ強調して来た。 | 12 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
血液透析施設におけるC型肝炎感染事故(含:透析事故)防止体制の確立に関する研究 | 平成14-16年 | 44,700 | (社)日本透析医会 | 山ア親雄 | (ア)透析治療におけるC型肝炎感染および透析関連事故頻度は高い。 (イ)わが国初の大規模調査では、透析患者におけるC型肝炎抗体陽転率は、年2.1%であった。また重篤な事故は40.4件/100万透析あり、シャント関連事故が最も高頻度であった。 (ウ)感染事故が多いこと、特に限られた施設で多発していることを全ての透析施設に勧告し、注意を喚起した。感染が減少したかに関しては今後の検証が必要である。 |
○成果をもとに、C型肝炎集団感染防止に関する緊急勧告を、全ての透析施設に送付した。 ○多くの集団感染の感染経路は、共通に使用される抗凝固薬などであり、メーカーを通じて個人使用のヘパリン生食溶液の作成を依頼し、市販されるにいたった。 ○事故対策に関しても、「特に死亡事故につながりやすい重点4項目に関するおマニュアル遵守の願い」と、「安全な血液透析療法のための標準的血液回路」および「透析装置等安全基準ガイドライン(案)」が提示された。 |
安全を考えた「透析施設基準」と、透析看護度調査票が独自に開発され、安全を考えた「スタッフの適正配置」が提示された。また、地域を限った事故調査システムが機能し始めている。 | 18 | 9 | 6 | 0 | 0 | 1(http://www.touseki-ikai.or.jp/) | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
C型肝炎ウイルス等の母子感染防止に関する研究 | 平成14-16年度 | 44,700 | 鳥取大学医学部 | 白木和夫 | (ア)C型肝炎ウイルスに母子感染が起こることは報告されていたが、わが国全国におけるその実態は解明されていなかった。(イ)本研究での多施設共同研究の結果、わが国でのC型肝炎ウイルス母子感染によるキャリア発生率は約10%であること、その最大の要因は妊婦の高ウイルス量であることと分娩様式が関与すること、感染児の約30%で3歳までに血中C型肝炎ウイルスが消失すること、などが明らかとなった。(ウ)これまでC型肝炎ウイルスキャリア妊婦とその出生児に対する対応について一定の方針が存在せず、そのガイドラインが医療機関のみならず患者からも求められていたが、本研究の成果を基に策定された管理指導基準により、医療機関の対応に指針があたえられ、当該妊婦の不安軽減にも多大の効果が期待される。このため本研究の成果はマスコミからも大きな注目を浴び、平成16年2月17日発行の朝日新聞朝刊第1面、平成17年1月11日発行の読売新聞朝刊第1面、ならびに平成15年12月25日発行の教育医事新聞に掲載された。 | 本研究の成果を基に「C型肝炎ウイルスキャリア妊婦とその出生児の管理指導基準」を策定し、日本小児科学会雑誌平成17年1月号に発表するとともに、その内容を関係医療機関に配布して周知させるためパンフレットを作成した。また(財)ウイルス肝炎研究財団主催による「厚生労働科学研究費肝炎等克服緊急対策研究公開報告会」において平成15年2月、平成16年2月、平成17年3月の3回にわたって本研究の成果を報告した。平成17年4月12日には厚生労働省「第3回C型肝炎対策等に関する専門家会議」の参考人として出席し本研究の成果を中心に、C型肝炎ウイルスの母児感染の現状ならびに妊婦と感染児への対策に関して意見を陳述した。本研究の結果、わが国における母子感染によるC型肝炎ウイルスキャリア発生は年間150人〜300人程度であることが推計され、行政としての対応の根拠が明らかとなった。 | 現在、わが国の肝がんの成因の80%以上はC型肝炎ウイルス感染であり、これに対する対策が緊急の課題である。本ウイルスの水平感染は近年ほぼ制圧され激減したが、母子感染の防御方法は無く、その全人口におけるキャリア発生に関するマグニチュードも明らかでなく、行政としてどのような対策が必要かが明らかでなく困惑していた。本研究の成果はその感染危険要因をほぼ明らかにし、更に母子感染によるキャリア発生のマグニチュードが厚生省「B型肝炎母子感染防止事業」によって激減したB型肝炎ウイルスの母子感染率と同等ないし以下であることが明らかとなり、B型肝炎と同様の全国的な防止策実施は現実的でなく、ハイリスク妊婦に対する個別的な対応を徹底するのが適当とする根拠が得られた。本研究班で策定した「C型肝炎ウイルスキャリア妊婦とその出生児の指導管理基準」により、現在、これらに対する具体的対応に苦慮している医療機関で統一した管理指導が行えるようになり、C型肝炎ウイルスキャリア妊婦の不安を軽減する効果が期待される。 | 13 | 25 | 40 | 0 | 1 | 6 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
慢性C型肝炎に対する治療用ヒト型抗体の開発に関する研究 | 平成14-16年度 | 85,721 | 大阪大学微生物病研究所 | 松浦善治 | (ア)HCVの感染様式や発癌機構は依然として謎に包まれたままである。(イ) ヒト型抗HCVエンベロープモノクローナル抗体を作製し、そのウイルス排除活性をHCV持続感染チンパンジーで評価した。また、本研究でヒト繊維芽細胞成長因子受容体がHCVの受容体候補として同定され、HCVのコア蛋白質の一部が核に移行して分解されることが明らかとなった。(ウ)C型肝炎ウイルスの新しい受容体分子をターゲットとした、慢性C型肝炎に対する新たな創薬の可能性が考えられる。 | 残念ながら得られたヒト型抗体には、C型肝炎ウイルスを生体から排除する活性がなかった。しかしながら、この成績が慢性C型肝炎対策に抗体療法が無効であることを意味するものではない。本研究事業を通して得られた成績は、必ずや将来の抗体療法に貴重な基礎データーを提供してくれるものと思われる。 | 世界中の研究者が探し求めていたC型肝炎ウイルスの真の受容体分子を発見した可能性がある。もちろん、最終確認には更なる研究が必要であることは言うまでもない。 | 12 | 4 | 50 | 0 | 0 | 0 | 肝炎等克服緊急対策研究 | ||||||||||||
男性同性間のHIV感染予防対策とその推進に関する研究 | 平成14-16年度 | 134,166 | 名古屋市立大学看護学部 | 市川誠一 | (ア) エイズ動向調査では男性同性間のHIV感染は拡大傾向にあり、MSMへの積極的なエイズ対策が望まれている。エイズ予防指針でも男性同性愛者へのエイズ対策の必要性、NGO連携の必要性が提唱されている。しかし、わが国では未だMSMへの有効なエイズ対策が示されていない。 | 厚労省エイズ予防指針見直し検討会の資料提示。大阪府エイズ対策検討会で報告し大阪土曜常設検査などの施策に反映。名古屋でのHIV検査会の成果により夜間検査設置。ゲイCBOの活動に伴い東京、大阪、名古屋でコミュニティセンターの試行。大阪、名古屋での臨時検査および検査機関での受検者調査の成果を即日検査ガイドライン策定に反映。 | My first safer sex展およびそのパンフレット、”Living Together計画”およびそのパンフレット、コンドームアウトリーチ、コミュニティ誌による啓発などは他の地域へも波及した。これらはMSM以外の層への資材モデルともなる。 インターネット調査によるMSMの心理社会的要因について報告書を作成し、MSMの理解を高めるために保健所、臨床心理士、NPO/NGOに配布。 | 4 | 21 | 7 | パンフレット等作成 7件 | エイズ対策研究 | ||||||||||||||
(イ) ゲイのボランタリー・セクターと研究者とのパートナーシップを構築しHIV感染予防への啓発普及を試行した。東京、名古屋、大阪、福岡地域で、ゲイコミュニティにおける啓発普及プログラムを開発・試行しし、普及基盤を構築した。啓発資材の認知と予防行動への効果を評価する調査を導入した。地域の行政との連携を図った。 | ○ゲイコミュニティと自治体の連携が構築されていないために、地域でのMSM対象のエイズ対策が進展していない。福岡では、当事者CBOの活動を支援する連携組織として、保健・医療機関、福岡県・市、他のNGOで構成する「福岡セクシュアルヘルス対策懇談会」が発足し、地域でのMSMへのHIV感染対策をCBOと協働で取り組むことを容易にした。 | 東京、大阪、名古屋、福岡では行政と連携した啓発事業が行われており、これらの地域でのエイズ対策の基盤となることが期待される。 | 講演・シンポジウム 18件 | エイズ対策研究 | ||||||||||||||||||||||
(ウ) 本研究はゲイボランティアと協働して行うもので、そのプロセス、啓発プログラム、アウトリーチ等の成果は、MSM対象の啓発のニーズや啓発方法等が十分に把握できていない自治体に対してエイズ対策構築のモデルとなり、社会的意義が高い。 | ○MSMではAIDS患者が増加しており、早期発見、早期治療の検査普及が必要である。大阪では予防啓発が進んだことでMSMのHIV検査受検率が1999年の2倍に達した。 | 名古屋のHIV検査会、検査機関でのMSM受検者層の動向調査は、それぞれの地域でのMSMにおけるHIV/STI感染状況や予防啓発の効果を把握する上で有用である。 | ホームページ 5件 | エイズ対策研究 | ||||||||||||||||||||||
計算機を活用したHIVの薬剤耐性評価 | 平成15-16年度 | 15,000 | 千葉大学 大学院薬学研究院 | 星野忠次 | (ア)HIV感染患者に薬を投与する前に、予め薬剤耐性検査を行うことが、抗HIV療法をより充実させるために重要である。(イ)ジェノタイプ検査やフェノタイプ検査に並ぶ新しい薬剤耐性検査法として、「コンピュテーショナル検査」を提案し、その可能性を示した。(ウ)計算機による親和性の算出値と実験による測定値の間の整合性がみられるようになり、コンピュテーショナル検査に用いるソフトウェアが開発できた。 | 本研究で開拓された計算検査システムが実用になった段階で評価されるので、現時点での具体的な貢献は十分ではない。 | 高速コンピューター解析は、将来、必ず医療分野で普及する。抗エイズ薬のみならず、計算機を援用した薬剤選択の最初の成功例にするため、実用化を果たしたい。 | 1 | 0 | 17 | 0 | 0 | エイズ対策研究 | |||||||||||||
エイズ対策研究事業の企画と評価に関する研究 | 平成16-16年度 | 21,000 | 国立感染症研究所 エイズ研究センター | 山本直樹 | (ア)研究計画発表会と研究成果発表会を例年開催。(イ)公募研究課題案と組織の設定、研究成果の評価などの項目について検討し、提言を行った。(ウ)国内外からも評価される研究が数多く生まれた。 | エイズ対策研究事業において、成果の有効利用により、限られたリソースとしての研究費の適正使用、配分に反映。 | HIVの検査や医療体制、さらにはリスクグループの感染予防に対し提言を行い、有効に活用されている。 | 0 | 0 | 9 | 0 | 0 | エイズ対策研究 | |||||||||||||
花粉症のQOLからみた各種治療法の評価と新しい治療法の基礎的研究 | 平成14-16年度 | 130,000 | 日本医科大学耳鼻咽喉科 | 大久保公裕 | (ア)花粉症によって国民のQOLは低下する。花粉症の新しい治療ターゲットが存在する。(イ)花粉症によるQOLの低下は各種の治療薬、初期治療により改善されたが、初期治療の効果は飛散開始4週後までが有意であった。新しい治療法として舌下免疫療法の臨床試験を行い、有効性を確認した。細胞内シグナル伝達での好酸球浸潤抑制の可能性を広げた。またスギ特異的T細胞の反応を抑制するスギ遊離糖鎖の特許を得た。花粉症患者のスギ特異的Th2細胞を検出することが可能になった。(ウ)花粉症の治療有効性の指標として国内でQOLが使用され始めている。また舌下免疫療法は欧州を主体として海外では行なわれているものの国内では初めての試みであった。 | これら研究成果をもとに国民への啓蒙活動の一環として「的確な花粉症診療のために」を出版し、厚生労働省のホームページにも掲載した。これに合わせて「花粉症に関する相談マニュアル(Q&A)」を各都道府県、保健所などの相談用に作成し、厚生労働省のホームページ上で公開した。また国民へ向けての情報発信として厚生労働省の主催の「花粉症シンポジウム」でこれまでの研究成果を盛り込んだ講演を行い、行政と共に国民の花粉症克服のための活動を行なった。 | 我々の研究班で臨床試験を行なった舌下免疫療法が花粉症連絡会議にも取り上げられ、今後の臨床応用の可能性が高まった。推奨 | 28 | 54 | 35 | 1 | 4 | 6(http://mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/) (http://mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/ookubo.html) (http://data.sokki.jmbsc.or.jp/pollen/xmhlw/) (http://www.selfdoctor.net/q_and_a/2005_01/kafun/01.html) | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
皮膚・気道・鼻粘膜局所におけるresidential cell による生体機構のアレルギー疾患における役割の解析に関する研究に関する研究 | 平成14-16年度 | 90,000 | 順天堂大学 医学部 | 小川秀興 | (ア)皮膚バリア機能はアトピー性皮膚炎の病態形成に関与している。(イ)ダニ抗原のプロテアーゼ活性が皮膚バリア機能を障害する。皮膚バリア機能を簡便に測定する手法を開発した。(ウ)本研究班の成果はアレルギー関係の一流誌に掲載され、数多く引用されている。 | 皮膚バリア機能を簡便に測定する手法の開発は、アトピー性皮膚炎治療ガイドラインの作成に影響を与えた。 | 皮膚バリア機能を簡便に測定する手法の開発は、将来、アトピー性皮膚炎の臨床現場に新たな治療基準を与え、アトピー性皮 膚炎の臨床レベルを向上させる。 | 7 | 5 | 6 | 0 | 0 | 研究期間に5回(第300-305回順天堂医学会学術集会)の学術集会(一般公開)を開き市民に最新の医療情報について啓蒙した。 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
皮膚アレルギー炎症発症と治療におけるサイトカイン・ケモカインとその受容体に関する研究 | 平成14-16年度 | 56,000 | 東京大学大学院医学系研究科皮膚科学 | 玉置邦彦 | (ア) 皮膚アレルギー疾患におけるケモカインの関与に関する研究では、アトピー性皮膚炎(AD)患者血清中でTARCが高値を示しかつ病勢と相関し、TARC産生細胞は表皮ケラチノサイト(KC)であろうとする結果をすでに報告した。(イ) AD患者血清中では、MDC, Eotaxin-3, CTACK, MECなどのケモカインも高値を示し病勢を反映することを明らかにした。末梢血好酸球数増多や血清IgE値上昇などでADと共通した病態を示す水疱性類天疱瘡や菌状息肉症患者でも、血清中のTARCが高値を示し病勢を反映することを示した。また、KCからのTARC, MDC, Eotaxin-3, CTACK, MECなどのin vitroでの産生制御機構について、シグナル伝達経路を含めて明らかにした。さらにKCにTARC, CTACK, VEGFなどを過剰発現させたトランスジェニックマウス(Tg)を作成し、in vivoでの機能を明らかにした。(ウ) アレルギー性皮膚疾患におけるケモカインの関与に関する研究は、我々の研究が世界的にみても先進的である。今回の研究は今までの研究成果をさらに発展させたものであり、皮膚アレルギー炎症におけるケモカインの役割についてより深い理解を得ることができた。特に動物モデルとして作成したTARC TgやCTACK Tgは世界の他施設からの報告は未だなく、国際的にも貴重なモデルマウスと言える。また現在まとめているが、血清TARC値がADの臨床指標となりうることが示唆された。今回の研究の成果はJ Allergy Clin Immunol, J Immunol, J Invest Dermatolなどの雑誌に掲載され、大きな反響があった。 | 皮膚アレルギー炎症には近年難治化と患者数の増加が指摘されているアトピー性皮膚炎をはじめ、厚生労働行政上問題となっている疾患が多く含まれており、本研究班の研究成果は行政的にも意義深いと考えている。本研究における皮膚の病態解析に関する検討からアレルギー性皮膚疾患の理解がより深まり、さらに新たな治療戦略の開発へと結びついていくものと期待される。 | 本研究で得られた研究成果を基に今後さらに研究を発展させて、アレルギー性皮膚疾患での臨床応用を考えている。今回血清TARC値が日常臨床でアトピー性皮膚炎のマーカーとして用いられる可能性を示唆する結果を得たので、今後はTARC以外にもMDC, CTACKを中心に数多くの皮膚疾患について多施設でそれらが臨床的指標として使用可能かどうか検討したいと考えている。 | 18 | 7 | 22 | 2 | 1 | 3 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
重症アトピー性皮膚炎に対する核酸医薬を用いた新規治療法の開発に関する研究 | 平成14-16年度 | 60,000 | 大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学 | 玉井克人 | (ア)NFkBデコイDNAを細胞内に導入するとNFkBに結合し、その機能を阻害する。(イ)NFkBデコイDNAを含有する軟膏を作成し、重症アトピー性皮膚炎患者を対象に研究を行った結果、重症顔面病変に特に有効であること、その効果は肥満細胞のアポトーシス誘導によることが明らかになった。(ウ)デコイDNA軟膏が皮膚疾患の治療に応用可能なことを世界で始めて報告した。その結果、NFkBのみならず、Stat6などその他の転写因子に対するデコイDNA軟膏の開発が進められるきっかけとなった。 | 既存の治療薬投与が困難な重症アトピー性皮膚炎顔面病変に対し、これまで世界中で類を見ない治療薬としてNFkBデコイDNA軟膏を開発し、臨床試験をすすめた。この研究成果は現在医薬としての臨床治験開発へと展開中である。 | ステロイド外用剤や免疫抑制剤軟膏は重症顔面病変への使用は困難である。本研究により開発されたNFkBデコイDNAの臨床治験が進展し、その有効性・安全性が確立すれば、治療に苦慮している多くの患者さんやその家族、治療に関わる医師にとって新たな選択肢を提供することになる。 | 18 | 56 | 28 | 5 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||||
アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及 | 平成14-16年度 | 93,000 | 九州大学大学院医学研究院 | 古江増隆 | (ア)アトピー性皮膚炎の治療ガイドラインが作成・改訂されたことで、ともすれば混乱していた本疾患の治療に一定の目安が確立されたことは高く評価されている。しかしこれらのガイドラインはいずれもその治療の骨子をまとめたもので、個々の治療を詳述したものではない。このガイドラインを今後も改良していくことが重要であることはいうまでもないが、それと並行して個々の治療の有用性をevidence-based medicineに基づいて評価し詳述した解説書が必須となってきた。しかしながら本疾患の治療のEBMは世界的にみてもイギリスのHealth Technology Assessment Programm により2000年にまとめられているものがあるのみで、最新の治療の解説は含まれていない。また我が国での本疾患の治療のEBM集はなかった。(イ)我々は平成16年3月までの文献を網羅し、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬、除去食療法、アレルゲン除去療法、スキンケア、紫外線療法、シクロスポリン内服、漢方療法、民間療法、合併症(細菌・ウイルス感染、眼病変)に関するアトピー性皮膚炎治療のEBMをまとめ、「アトピー性皮膚炎―よりよい治療のためのEvidence-based medicine (EBM)とデータ集」 (http://www.kyudai-derm.org/atopy_ebm/index.html) として、平成16年10月13日にインターネット上に公開した。また書籍としては中山書店より17年4月に上梓された。(ウ)アトピー性皮膚炎の治療に関する最新のEBM(解説・分類・文献等も含めて)を、日本中の医療関係者がいつでもインターネットで閲覧できるようになったことは極めて有用・有益なことである。 |
本事業によってアトピー性皮膚炎の治療ガイドラインを補完し、全国に普及させた。また。また「アトピー性皮膚炎―よりよい治療のためのEvidence-based medicine (EBM)とデータ集」(http://www.kyudai-derm.org/atopy_ebm/index.html)では、医療関係者向けの情報だけではなく、EBMに基づいた一般向けのQ&Aにも力がそそがれていて、毎日100件以上のアクセスを得ている。さらに治療に関する一般向けの情報を発信するためにインターネットサービスとして「アトピー性皮膚炎について一緒に考えましょう」」(http://www.kyudai-derm.org/atopy/)も作成し公開したが、このサイトは毎日500件以上のアクセスがあり、Yahoo, google, OCNなどの検索サイトでは常にトップページに掲載されるようになった。今後はこれらのサイトを活用して有用な情報を全国に発信することが可能となった。国民への普及を目的として事業は極めて重要であると考える。 | 本研究班によって構築されたインターネット閲覧システムには、リウマチ・アレルギー情報サイト(厚生労働省)、日本皮膚科学会、日本アレルギー学会、日本アレルギー協会などのホームページがリンクされており、アトピー性皮膚炎に関する有益な情報発信源としての社会的インパクトは大きい。 | 51 | 250 | 42 | 0 | 不明 | 2 http://www.kyudai-derm.org/atopy_ebm/index.html http://www.kyudai-derm.org/atopy/ | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
アレルギー疾患の遺伝要因と環境要因の相互作用に関する研究 | 平成14-16年度 | 52,000 | 佐賀大学医学部分子生命科学講座 | 出原賢治 | (ア)アレルギー疾患は遺伝要因と環境要因とが複雑に組み合わさって生じる。アレルギー疾患の遺伝要因は多因子であり、一塩基多型(SNP)の中に含まれている。近年のアレルギー疾患罹患率の飛躍的な増大は環境要因の変化による。感染症の減少、食生活の変化、大気汚染などが環境要因としてあげられている。(イ)IL-4あるいはIL-13は気道上皮細胞を刺激してSCCA分子の産生を誘導し、産生されたSCCA分子がグループIのダニアレルゲンの生物活性を阻害した。野生型SCCA2よりダニアレルゲンに対して強力な阻害効果を持つ変異型SCCA分子を作製した。グループIのダニアレルゲンが持つシステインプロテアーゼ活性により潜在型TGF-betaが生物活性を持つ活性型に変換された。IL-4によりダイオキシン受容体であるAhRが誘導され、ダイオキシンの生物活性を増強した。一方、ダイオキシンはIL-4によるIgE産生、CD23発現には影響しなかった。ディーゼル排気粒子はヒト気道上皮細胞におけるTGF-beta作用を増強した。アレルギー患者の末梢血単核球ではインフルエンザウイルスとRSウイルスの感染により喘鳴時にIFN-gamma産生が低下した。また、ウイルス感染症によりIL-12レセプターbeta2鎖の変異型の産生が増強された。経口的なTGF-beta投与は血中IgE産生、皮膚炎形成などのアレルギー反応を抑制した。フィセチン等のフラボノイドは好塩基球からのIL-4 とIL-13産生を強く抑制して、抗アレルギー効果を示した。 AhR、 TGF-beta1、beta2アドレナリン受容体、 IL-18、 IL-12p40遺伝子上のSNPと何らかのアレルギー症状との間に相関が見られた。(ウ)ダニアレルゲン、ダイオキシン、デイーゼル微粒子、ウイルス感染症、母乳、食物中に含まれるフラボノイドとアレルギー疾患との関連について新たな知見を得た。アレルギー疾患と相関する新たなSNPを同定した。RNA編集という新規の型の遺伝要因を同定した。 | 特になし | (1)ダニアレルゲンを標的とした新規の創薬の糸口を作った。(2)アレルギー状態はダイオキシンの作用を増強する一方で、ダイオキシンはアレルギー状態に影響を与えないことが明らかとなった。(3)TGF-betaの経口摂取、あるいはそれを含んだ母乳の摂取が抗アレルギー効果を示すことを明らかにした。(4)フラボノイドの摂取、あるいはそれを多く含んだ野菜の摂取が抗アレルギー効果を示すことを明らかにした。 | 117 | 98 | 144 | 5 | 0 | 20 (パンフレット作製 10、シンポジウム等開催 6、HP作製 4) | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
アレルギー疾患の発症および悪化に影響する因子の解析 | 平成14-16年度 | 81,000 | 帝京大学医学部内科 | 大田 健 | (ア)喘息、アトピー性皮膚炎、アトピー体質などに関連性を示す遺伝子多型が個別にいくつか報告されているが、原因遺伝子として広く認められたものは少なく多因子の関与が示唆されている。(イ)機能的にアレルギー疾患の病態に関与する可能性のある分子を新規分子を含めて選択し、同一検体で多施設の協力で多因子についての遺伝子多型と疾患(喘息とアトピー性皮膚炎)の発現および経過との関連性を検討した。遺伝子多型と表現型の分析から、MIF、EGFR、TGF-b、FcRIbとPAI1、IL-13、IL-18、UGRP1が発症に影響する因子となり、TARC、MDC、TGF-b、IL-18が悪化に関連する因子であることが判明した。(ウ) アレルギー疾患は多因子疾患であり、その病態も様々である。我々研究班は、統合を意識し、いままで個別にやってきた研究のフォーマットを統一した。そしてデーターとして信頼度と質と量を確保した。またアレルギー研究で第一線の各研究施設の得意分野を生かし、効率的な候補遺伝子研究を可能にした。その結果、同一の検体を共有して多因子を検討することが可能となり、多くの興味深い結果を得た。このような試みによる成果は国際的にも未だみられず、今後、本研究を土台として行われる詳細な基礎研究や、被験者らの継続したフォローアップにより、更に重要な知見が得られることが期待される。 | 本成果をもとに喘息とアトピー性皮膚炎あるいは両者の合併、喘息の難治化あるいは寛解などアレルギー疾患の発症や経過に関連性を示す複数の因子に関連する遺伝子多型の一端が解明された。その結果、多因子でのハプロタイプ解析を含む遺伝子多型の解析が可能となり、アレルギー疾患の発症を示唆する遺伝子多型のパターンでは積極的な予防対策を講じ、発症を予防できるかどうかの検証を可能にした。また、アレルギー疾患の経過が難治化する遺伝子多型のパターンでは、より積極的な治療を施行し、寛解する遺伝子多型パターンでは最小限の治療でコントロールする妥当性の検証を可能にした。将来的には、治療方針を立てるうえで、本研究を基盤とする遺伝子多型パターンがテーラーメード医療として用いられ、アレルギー疾患の予防・治療ガイドラインの上でも反映されることが期待される。その結果、アレルギー疾患の増加抑制、経過の予測に基づく適切な治療と医療費の無駄使いの減少が期待される。 | 遺伝子多型の解析に多因子を同時に解析することが、可能でかつ有用であり、臨床に今後広く応用され貢献することが明らかになった。将来的には、DNAチップの応用で多因子の遺伝子多型を解析し、アレルギー疾患の予防や治療方針を立てることに発展することが期待される。そして、期待を現実にするためには、臨床での前向き研究、これまでの研究手段でさらに症例を重ねて得られた解析結果の精度を上げること、多因子の解析方法の確立とその簡便化などを実施することが至急必要である。主任研究者は喘息の予防・治療ガイドラインに深く関与し、本研究の内容を含めてガイドラインの将来ということで一部を紹介しはじめている。また日本医学会のシンポジウムでの報告、日本および米国呼吸器学会、環太平洋アレルギー免疫学会など内外の学会でも報告しはじめている。 | 29 | 68 | 53 | 0 | 0 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | |||||||||||||
関節リウマチ・骨粗鬆症患者の疫学、病態解明と治療法開発に関する研究 | 平成14 -16年度 | 272,004 | 独立行政法人国立病院機構 相模原病院 | 越智隆弘 | (ア)従来、免疫異常の克服を治療目標にされてきた関節リウマチ(RA )患者には、非RA対照のいわゆる原発性骨粗鬆症に比して更に高頻度、高度な骨粗鬆症と引き続き起きる骨折が、関節機能障害に併せて発症している事が認知され、注目され始めた。滑膜における免疫異常機序を目標に世界中で諸研究が進められながら未解決の現状に対し、新たに重度な骨粗鬆症という特徴的な臨床症状を引き起こす「骨髄」を重要な場とした組織破壊の病因・病態解明という新たな突破口が浮き彫りにされてきた。これら問題の解明に、(1)RA患者の骨粗鬆症の臨床疫学研究、(2)RA患者の骨吸収亢進病態解明研究、(3)RA病因解明研究、を遂行した。 (イ)(1)臨床疫学研究:RA患者は、一般高齢者に比べて、有意に高頻度、高度に骨粗鬆症と骨折が起きる実態を解明し、その評価法を確立した。(2)RA病態解明研究:RAに特異的破骨細胞の存在を証明し、その分化成熟過程を解明し、特異的遺伝子の単離に成功した。RA罹患部の主要構成細胞である線維芽細胞様細胞(RAナース細胞)がRAの慢性病巣形成に重要である事を示し、その特異的遺伝子の単離に成功した。(3)RA病因解明研究:RA患者骨髄液の選択敵的トランスクリプトーム解析からRAに特異的遺伝子の網羅的解析を終了しRA病因に関与する遺伝子群を単離した。(ウ)(1)RA患者には疾患特異的に骨粗鬆症が広く認められる。骨量減少は原発性骨粗鬆症と異なり、脊椎よりも大腿骨近位部に特徴的で、骨折頻度も高く、今後のRA対策として重要な事項が明示された(2)RAの骨脆弱の病因が骨髄病態であることを示し、RAナース細胞とRA特異的破骨細胞の分子病態機序解明が推進され、創薬に向けた研究が可能となった。(3)RA病態・病因に関与する可能性を有する候補遺伝子の網羅的解析から原因遺伝子の特定研究が可能となった。 | (1).成果をもとに関節リウマチの治療ガイドライン(班長として)を策定し、全国に普及。 (2).高齢者リハビリテーション研究会(厚生労働省老健局;2002年7月10日〜2004年1月29日)の委員として中間報告書とりまとめに参画。 (3).循環器等総合研究事業(厚生労働省健康局)の企画・事前評価委員;2003年4月1日〜)として参画。 (4).薬事・食品衛生審議会(厚生労働省医薬局;2002年1月23日〜)の専門委員として参画。 (5).独立行政法人医薬品医療機器総合機構の研究業務運営評議会委員(2003年7月15日〜)として参画。 (6).独立行政法人医薬品医療機器総合機構の専門委員(2003年4月1日〜)として参画。 (7).先端医療専門家会議(厚生労働省健康局;2005年1月31日〜)の構成員として参画。 (8)リウマチ対策検討会(厚生労働省健康局;2005年2月8日〜)の座長として参画。 | (1).RA患者の骨粗鬆症に対する評価方法のガイドライン策定を目指した形で発展してる。 (2).RA患者に特異的に見出され破骨細胞(RA破骨細胞)は、従来、マウス等の系で確立された「RANKL依存性」ではなく、正常代謝とRA、または、げっ歯類の実験系とヒトでは異なり得る事が示され、RAの重要病態である骨粗鬆症あるいは骨関節破壊を選択的に抑制する治療法開発と期待され我国当該分野をリードする形で発展している。(3).RA患者骨髄液を用いた選択的とランスクリプトーム解析から得られた候補遺伝子を包括的に解析し、RA病因解明後の予防法の開発が我国当該分野をリードする形で発展している。 | 31 | 72 | 55 | 2 | 8 | 6件 (平成14年度厚生労働科学研究費補助金 免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業 リウマチ研究班合同公開シンポジウム, 平成15年度厚生労働科学研究費補助金 免疫アレギー疾患予防・治療研究事業 リウマチ研究班合同公開シンポジウム, 平成16年度厚生労働科学研究費補助金 免疫アレギー疾患予防・治療研究事業 リウマチ研究班合同公開シンポジウム, 相模原病院臨床研究セターホームページ;http://www.hosp.go.jp/%7Esagami/rinken/crc/index.html) | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
関節リウマチの疫学ー患者の受療動態に関する研究ー | 平成13-15年度 | 59,500 | 聖マリアンナ医科大学医学部 | 吉田勝美 | (ア)骨関節疾患はWHOの「運動器の十年」の課題として取り上げられている重要な疾病負担である。(イ)骨関節疾患による我が国の疾病負担の定量的、経時的、医療経済的な測定を行い、生活習慣病に相当する疾病負担量を有することが示された点。(ウ)Population-basedで骨関節疾患の有所見を疫学的に測定し、長期コホートによる骨関節疾患の有病率の推移、医療機関コホートによる疾病重症度、新規治療薬導入による医療経済的評価を行い、受療動態に影響する因子を明らかにした点。 | Population-basedによる骨関節疾患の性別年齢別部位別重症度別頻度を明らかにし、YLD換算を行い定量的に国際的、国内の関連疾患との定量的比較を行った結果は、施策決定の資料となりうる点。また、新規製剤のマクロ経済分析の基礎資料となる点 | 骨関節疾患の疾病負担の重症度を明らかにして、将来の新規治療薬導入による受療動態の変動について検討した点。 | 11 | 9 | 15 | 0 | 0 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | |||||||||||||
関節リウマチの内科的治療の検証に関する研究 | 平成14-16年度 | 39,000 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター リウマチ性疾患研究部 | 當間重人 | (ア)諸外国には関節リウマチ患者に関するデータベースが整備され、種々の疫学調査結果が報告されている。(イ)日本における多施設共同関節リウマチ患者データベースを初めて作成した。(ウ)日本における関節リウマチ患者の実状を明らかにすることができた。 | 日本における全国的規模の関節リウマチデータベースを初めて構築。関節リウマチにおける新規治療薬剤(特に生物学的製剤)で懸念されている結核等感染症、あるいは悪性新生物の発症に関する疫学研究の基礎資料となる。 | 本邦関節リウマチデータベースとして、WEB上にて公開している。本研究班を中心に、ネットワークとして取り組む共同臨床研究支援システムを開発、汎用性のあるシステムとして応用が期待できる。 | 0 | 0 | 16 | 0 | 1 | 2(http://www.ninja-ra.jp) | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
関節リウマチの先端的治療に関する研究 | 平成14-16年度 | 88,860 | 聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター | 西岡久寿樹 | (ア) 関節リウマチの病態・病因解明に関節構成細胞(滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞)がどのような役割を担うかが解明されつつあり、先端治療の標的候補分子が探索されている。(イ) 本疾患の病因・病態に関与するゲノム、ペプチドタンパクを網羅的に解析する方法を確立し、その成果を創薬研究に移行させた。(ウ) 滑膜細胞増殖に関する2つの重要な分子(シノビオリン,APO-1 IgM)、Smadシグナル障害による軟骨細胞肥大化抑制、破骨細胞の分化過程におけるRANKLの共刺激分子の同定を通じて新規リウマチ治療薬開発の基礎的研究が進展した。 | 包括的な研究成果は平成17年1月31日-2月1日の平成16年度厚生労働科学研究費補助金-免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業 研究報告会において討議され、さらに平成17年2月8日の厚生労働科学研究費補助金-免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業 公開シンポジウムにおいて広く一般に普及・啓蒙活動を行った。また、原因不明である難治性運動器疾患である線維筋痛症の病態・病因に関してリウマチ性疾患共通の分子機構の解明を研究し、その成果を平成17年3月8日の厚生労働科学研究費補助金-免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業 線維筋痛症の病因・病態に関する分科会 公開シンポジウムにおいて報告、本疾患の診断基準、治療指針策定の基盤として反映させた。 | 関節リウマチの先端治療標的分子の探索とともに、研究の社会還元という観点から精力的に創薬への展開が進められている。 | 33 | 26 | 155 | 3 | 3 | 3 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
関節リウマチの頚椎・上肢機能再建に関する研究 | 平成14-16年度 | 75,000 | 独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター | 米延 策雄 | (ア)関節リウマチに対する頚椎および上肢各関節の再建手術は、単独施設での個々の部位ごとの評価による報告では、安定した成果が得られるようになってきている。(イ)関節リウマチ頚椎手術に関しては、本邦での実施状況(疫学)を示し、多施設調査に基づき、周術期死亡の減少、重症例での治療成績向上、術後の生命予後を明らかにした。また、コンピュータ工学技術を用い手術の安全性を高める支援システムを構築した。上肢手術においては、これまでの個々の関節での評価だけでなく、これまで省みられていなかった上肢全体の機能評価を加え、成績を提示した。また、頚椎−上肢機能を動作解析手法により成分分析する新たな方法を確立し、外科治療が与えるストレスをホルモン測定で客観的に捉える方法を示した。(ウ)関節リウマチ頚椎手術の本邦での疫学、多施設調査に基づく周術期死亡の減少、重症例での治療成績向上は、関節リウマチ治療医への頚椎病変に対する認識向上への啓蒙となる。コンピュータ工学技術を用いた支援システムは、今後さらなる発展が見込まれる分野である。さらに、エビデンスに基づいた治療体系確立が要求されてきている現状で、本領域はまだまだ評価法そのものが未熟であり、その確立が急務であることを提言し得る研究となったことは意義あるものであった。 | 研究班は、関節リウマチにおける頚椎・上肢機能再建に関する本邦の臨床研究ネットワーク作りに貢献。本研究成果は、関節リウマチにおける頚椎・上肢機能再建のガイドライン作成のための基盤となる。 | 外科治療における多施設研究のモデルとなる。 | 16 | 15 | 47 | 0 | 0 | 0 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
免疫難病のシグナル異常と病態解明・治療応用に関する研究 | 平成14-16年度 | 67,000 | 産業医科大学医学部第一内科学講座 | 田中 良哉 | ア このテーマで、すでに分かっていること 全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする膠原病は、多臓器病変を特徴とする全身性自己免疫疾患であり、免疫難病に位置付けられる。SLEの発症過程には、自己反応性T細胞のシグナルの異常が関与する事が解明されてきた。しかし、免疫シグナルの異常な賦活化、免疫抑制性シグナルの機能異常については、不詳であった。また、治療は、ステロイド薬中心の副作用の多い非特異的免疫療法に終止し、新規治療開発は社会的にも急務であった。 イ 本研究で加えられたこと (1) 自己反応性T細胞の活性化をもたらす抑制性シグナル低下の原因として、SLE患者のTCRζ鎖エクソン7の欠損、並びに、自己免疫関節炎モデルでTCRζ鎖の下流に位置するZAP-70遺伝子の変異が、同定された。 (2) 自己反応性T細胞の活性化をもたらす賦活化シグナル亢進の原因として、SLE患者T細胞のCD29−FAK−CD40L−共刺激シグナル経路の亢進が同定され、ループス腎炎などの臓器病変の進展との関連性が示された。 (3) 抑制性シグナル低下と賦活化シグナル亢進の調整役としてのIL-6の役割が同定され、治療抵抗性膠原病の症例に対して、ヒト化抗IL-6レセプター抗体を使用し、治療効果が示された。 ウ 本研究成果の専門的・学術的意義 ZAP-70遺伝子の変異による抑制性シグナル低下の結果、自己反応性T細胞の活性化、引いては、自己免疫疾患の発症を引き起こすとの結果を始め、本研究班の研究成果の多くは、Nature等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 |
本研究班の成果は、厚生労働省「厚生科学研究公開シンポジウム」(平成16年2月24日、17年2月8日)、及び、厚生労働省免疫アレルギー疾患予防・治療研究推進事業リウマチ・アレルギーシンポジウム(15年3月29日、16年2月28日、17年2月11日)で報告し、臨床医、研究者、薬剤メーカー、患者など全国への普及に努めた。 | TCRζ鎖とZAP-70の遺伝子変異によって制御性刺激シグナルの欠損が生じ、その結果、CD29やCD40Lなどの共刺激系のシグナル異常活性化が生じ、自己反応性T細胞活性化を齎し、膠原病を引き起こすことが解明された。また、下流に位置するIL-6を介するシグナルの制御に関する臨床的検討により、難治性膠原病の新規治療法の可能性が展開した。斯様な結果やコンセプトは本邦の当該分野をリードしており、今後、免疫難病に対する新規治療軸の確立に繋がるものと期待される。 | 164 | 125 | 101 | 2 | 0 | 3 http://www.sympo.jp/040228/ http://www.sympo.jp/050211/http://www.sympo.jp/0303/0329pm.html | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
全身性自己免疫疾患における難治性病態の診断と治療法に関する研究 | 平成14-16年度 | 69,000 | 京都大学大学院医学研究科臨床免疫学 | 三森経世 | (ア)近年の治療の進歩,診断技術の向上に伴い膠原病の生存率は年代とともに向上してきた一方で,依然として治療法が確立していないために死亡率が高く,または重い障害を残すような病態が認められている.かかる難治性病態の治療についてはまだ確固たる方針が定まっていないものが多い.(イ)自己抗体による難治性病態の診断と予後予測,遺伝子多型による予後予測,線維化病態のCD40-CD40Lシグナル機序解明とその制御,難治性筋炎におけるケモカインの関与と制御,中枢神経ループスの病態形成における抗リボゾームP抗体の役割,肺線維症モデルにおけるIL-10の治療効果,PM/DM間質性肺炎に対するシクロホスファミド間歇静注療法の有用性などを明らかにした.(ウ)種々の難治性病態の病態解明,新たな診断法,治療法の開発を目指し,一定の成果が得られた. | 研究成果を生かし,さらに過去の臨床研究文献を集積してエビデンスレベルを解析しエビデンスを重視した「全身性自己免疫疾患における難治性病態の診療ガイドライン」を作成,全国主要施設に配布した.本ガイドラインは現状で考えうる最良の情報を与える良い機会と考えられる. | プロジェクト研究として「難治性病態の早期診断,予後推定,治療方針確立における自己抗体の意義に関する多施設共同研究」を手がけており,種々の自己抗体の特異性・治療反応性・転帰との関連を明らかにして,早期診断・予後推定・治療方針の指標を確立することを目指した.今後も追跡調査を継続する. | 56 | 50 | 87 | 0 | 0 | 1 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
免疫疾患の合併症とその治療法に関する研究 | 平成14-16年度 | 67,000 | 順天堂大学医学部膠原病内科 | 橋本博史 | (ア)膠原病の生命予後は、依然として重篤な臓器病変や合併症により不幸な転帰をとる症例が存在する。さらに、長期生存例の増加と治療の長期化に伴い、治療による副作用あるいは加齢に伴う合併症の増加は、生命予後あるいはQOLを障害している。 (イ)膠原病に合併する肺病変・腎病変・精神神経病変・血液病変・感染症・ステロイド性骨粗鬆症の実態を分析し、EBMに基づく治療法及び予防法を確立した。 (ウ)各合併症について多施設の多数の症例を集積した報告は少なく、実態がより明らかとなり、診療ガイドラインを作成することができた。 |
成果をもとに「膠原病合併肺高血圧」、「ループス精神病の分類基準」、「免疫疾患に合併するニューモシスティス肺炎の予防基準」、「ステロイド性骨粗鬆症の予防と治療」の診療ガイドラインを作成した。 | 診療ガイドラインを全国の関係施設に送付し、参考としてもらう。 | 228 | 405 | 586 | 0 | 0 | 厚生労働科学研究成果データベース報告システム(http://mhlw-grants.niph.go.jp) | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
免疫疾患に対する免疫抑制療法等先端的新規治療法に関する研究 | 平成14-16年度 | 91,000 | 東京大学大学院医学系研究科 | 山本一彦 | (ア)全身性自己免疫疾患での新規治療法は現在欧米を中心に盛んに検討されているが、未だに確立されたものはほとんどない。(イ)我が国から基礎免疫的にオリジナルな新規治療法として報告され、研究が始められているプロジェクトを中心にそれぞれが近未来的に実際の応用治療に到達することを目標に研究を推進した。(ウ)本研究領域に関係する基礎免疫学者と臨床免疫学者の比較的少人数で研究班を構成し、お互いに議論しながらそれぞれの新規治療法の確立と臨床応用を推進した。 | 欧米における本領域の新規治療法開発のスピードとわが国の速度の差が顕著であり、これを少しでも縮める方向の研究を推進した。 | CD25陽性CD4陽性制御性T細胞は坂口分担研究者のオリジナルな概念で世界的に注目されている細胞である。この細胞の臨床応用が世界的な競争となっており、わが国での開発に寄与出来た意義は大きい。 | 137 | 20 | 86 | 1 | 0 | 0 | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | ||||||||||||
免疫アレルギー疾患予防・治療研究に係る企画及び評価に関する研究 | 平成15-16年度 | 40,630 | 国立病院機構相模原病院臨床研究センター | 秋山一男 | ア.適切な課題設定と評価が重要であること。イ.課題に即した研究内容か否かについての事前評価と事後評価の整合性を図った。ウ.我が国の免疫アレルギー研究の方向性の確立と適切な課題設定及び国民への情報提供。 | ○本研究事業の成果を基にリウマチ・アレルギー疾患関連のガイドラインが策定され、全国への普及が図られている。○本研究事業参加研究者により四疾患相談員研修会が実施されている。○本研究班で花粉症関連医療関係者への相談窓口を開設した。 | 本研究事業が我が国免疫アレルギー研究の中心的研究事業として当該分野関連研究者の研究意欲の向上に貢献している。 | 4(http//www.allergy.go.jp) | 免疫アレルギー疾患予防・治験研究 | |||||||||||||||||
選択的リンパ球吸着療法による免疫性神経筋疾患の治療に関する研究 | 平成14-16度 | 30,000 | 独立行政法人国立病院機構長崎神経医療センター | 渋谷統寿 | (ア)多発性硬化症では自己の中枢神経抗原に反応するCD4陽性T細胞が病態の主役であること。(イ)循環血中より選択的にCD4陽性T細胞除去する体外循環システムを開発し、臨床応用のために健常人で試験を行い、安全性および性能が確認された。(ウ)本研究は、全血フロー系で標的となるCD4陽性T細胞を特異的に除去することで免疫調節を行うもので、今後、担体物質の最適化やリガンドの精製技術を改良することで自己反応T細胞または病因となる免疫担当細胞のより選択的な除去・補足による免疫調整技術を更に発展させることが可能である。これらの技術は世界に類をみないもので、全く独創的な研究である。 | MSなどT細胞介在性の自己免疫性疾患では有効な治療法が確立されていないものが多く、再発・後遺症に苦しんでいる患者が多い。この新しい体外循環治療の臨床応用により本治療の有用性が確認されば、難治性の免疫疾患患者の罹病期間の短縮、QOLの向上、社会生活への復帰および医療費の削減など社会的貢献は計り知れないものがある。 | 特異的な細胞吸着療法はT細胞介在性の他の自己免疫疾患の治療に応用できるのみならず骨髄移植や臓器移植における異常免疫反応の抑制やGVHDの予防にも応用しうる画期的なものである。 | 2 | 1 | 4 | 0 | 0 | こころの健康科学(神経) | |||||||||||||
神経遺伝病に対するケミカルシャペロン療法の開発に関する研究 | 平成14-16年度 | 30,000 | 国際医療福祉大学臨床医学研究センター | 鈴木義之 | (ア)われわれの過去の成果により基質類似の競合的阻害剤が細胞内では変異酵素分子の安定化活性発現にはたらくこと。(イ)マウス個体への投与により脳組織の病変が著しく軽減されたこと。(ウ)神経遺伝病に対する新しい治療法の概念を確立したこと。 | ○オーファンドラッグとして開発中の酵素補充薬を補う脳病変に対する治療薬としての可能性を示したこと。 | 現在治療法のない脳障害を伴う遺伝病への治療予防により介護福祉教育の対象となる患者数の軽減につながる。 | 6 | 10 | 50 | 2 | 0 | こころの健康科学(神経) | |||||||||||||
細胞外マトリックスの異常による遺伝性筋疾患の病態解明と治療法に関する研究 | 平成14-16年度 | 59,000 | 順天堂大学大学院 | 平澤恵理 | (ア)細胞外マトリックス分子ラミニン等の異常により筋ジストロフィーやミオパチーを発症する。(イ)細胞外マトリックスパールカン、VI型コラーゲンの異常によるミオパチーの発症機構の解明が進んだ。臨床的にSchwartz-Jampel症候群、Ullrich病と診断される例にはヘテロな疾患が含まれる可能性を示した。(ウ)細胞外マトリックスの筋の発生や維持機構における重要性が示された。SJSモデルマウスの作成と解析により新しいミオトニアの機構が示された。 | 細胞外マトリックスの異常による遺伝性筋疾患は比較的まれな疾患であるが、難病にたいする病態解明は社会的にも重要な行政であり、またそこから得られる学術的意義が広く社会に還元されると考えられる。細胞外マトリックスは筋疾患にかかわらず、ガンや血管性疾患を始めあらゆる疾患において重要な役割をはたし、疾患の発症や進行の予防のターゲットである。その遺伝的欠損マウスなどの作成、解析からえられる細胞生物学的情報の蓄積は広く国民の疾病対策に貢献すると考えられる。 | 筋疾患はもとより、一般的な疾患における細胞治療、再生治療の実施において細胞外マトリックスの修飾、制御は必須であり、その基盤的研究成果を示していく。 | 4 | 6 | 12 | 0 | 0 | 5 | こころの健康科学(神経) | ||||||||||||
ALS2分子病態解明とALS治療技術の開発 | 平成14-16度 | 123,040 | 東海大学 総合医学研究所 | 池田穰衛 | (ア)我々は、ALS2遺伝子が遺伝性運動ニューロン疾患の原因遺伝子であることを発見した。 (イ) ALS2遺伝子における56ヶ所における遺伝子多型配列を新たに同定した。ALS2遺伝子産物であるALS2タンパク質が低分子量Gタンパク質Rab5の活性化因子であることを明らかにした。Als2遺伝子ノックアウトマウスの作出に成功した。(ウ)神経変性疾患原因遺伝子の一つであるALS2の遺伝子産物機能を世界に先駆けて明らかにするとともに、Als2ノックアウトマウスの作出にも成功した本成果は国際誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 | 本研究による新たな疾患発症メカニズムの提唱は、今後の疾患研究行政施策策定に対する新しい科学的根拠を提供しうると考えられる。 | 運動ニューロン疾患モデルとしてのAls2遺伝子ノックアウトマウス作出の成功、ならびにALS2遺伝子産物の分子機能に関する研究成果は、ALSをはじめとする種々の神経疾患の診断、治療法、ならびに治療薬開発のための研究材料・知見となることが期待される。 | 26 | 10 | 16 | 0 | 0 | 0 | こころの健康科学(神経) | ||||||||||||
発現型RNAiを用いた神経・筋疾患の画期的遺伝子治療法の開発 | 平成14-16年 | 39,040 | 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 | 水澤英洋 | (ア)RNAiに強力な遺伝子発現抑制作用がることに限られている。(イ)筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子、脳卒中の発症に係わる細胞接着因子の遺伝子、C型肝炎ウイルス遺伝子などを効率よく抑制するsiRNAの作製に成功し、筋萎縮性側索硬化症の発症予防やC型肝炎ウイルスの増殖抑制を示した。効果的siRNAデザインシステムを開発しsiRNA発現ライブラリーを構築して、小胞体ストレス経路に係わる新規機能遺伝子を同定した。(ウ)これらの業績はNature等に掲載され多くのメデイアにも取り上げられ国内外から非常に高い評価を受けている。 | ・RNAiによる難病の遺伝子治療への可能性が示され、実現すれば医療費や介護費の大幅な削減につながると期待される。・一部は平成17年2月23日に自民党本部で行われた科学技術立国調査会での発表資料となった。 | これらのsiRNAによる遺伝子治療研究の成果は、神経疾患の枠を超えてわが国の当該分野を牽引する形に発展している。また、今回開発したsiRNAデザインシステムと発現ライブラリーは、世界をリードしている。 | 8 | 27 | 10 | 6 | こころの健康科学(神経) | ||||||||||||||
慢性頭痛の診療ガイドライン作成に関する研究 | 平成14-16年度 | 100,000 | 北里大学医学部 | 坂井文彦 | (ア)慢性頭痛診療のための指針として欧米諸国では自国のエビデンスに基づいたガイドラインがある。本邦では外国のエビデンスをまとめた治療ガイドラインが学会により作成されているのみ。(イ)診断と治療を包括した頭痛診療ガイドラインが作成された。エビデンスとして外国の成績のみでなく、本研究で臨床研究、評価試験が行われた結果、国内のエビデンスが追加された。本ガイドラインは国内外のエビデンスを集約したものである。(ウ)国際頭痛分類の改訂に日本のエビデンスを反映させた。新分類の全訳にあたり分類、診断基準、用語を統一させ、頭痛の臨床研究に対する科学的アプローチの一歩が達成された。 | 研究成果をもとに、慢性頭痛診療ガイドラインが作成された。頭痛医療を効率化する上で極めて重要な行政的意味をもつ。慢性頭痛の標準的治療を行う上に必須である。 | 頭痛に悩む人が多いことは社会的に認知され始めており、本ガイドラインについての報道が新聞(日本経済新聞)、テレビ(NHK)により行われ、当初から全国的な普及が始まった。 | 14 | 169 | 73 | 0 | 0 | 2件「慢性頭痛ガイドライン」刊行予定,ホームページ上に掲載予定,(件数未定)各種学会・シンポジウムにて報告予定, | こころの健康科学(神経) | ||||||||||||
感情障害の発症脆弱性素因に関する神経発達・神経新生的側面からの検討並びにその修復機序に関する分子生物学的研究 | 平成14-16年度 | 106,800 | 群馬大学大学院 医学系研究科 脳神経精神行動学 |
三國雅彦 | ア.感情障害が精神症状の状態依存的脳機能異常を呈する。 イ.感情障害には微細な脳器質的異常が存在し、その脳部位に状態依存的機能異常が生ずる。 ウ.初発年齢が20歳代の躁うつ病などの感情障害では神経発達的異常が、高齢初発の感情障害では脳血管障害性の異常が存在する。これらの器質的異常を修復する可能性のある神経ステロイドの合成系を証明し、新生神経細胞の移動の実態について解明した。これらの学術的価値は高い。 |
感情障害の亜型の区別や重症度の評価に関する客観的検査指標を見出し、内科系学会社会保険連合を通じて保険収載の申請中。これらが実施されると、18億円の医療費削減に結びつくという試算があり、厚生労働行政への貢献となる。 | 76 | 104 | 139 | 4 | 14 | こころの健康科学(精神) | ||||||||||||||
精神分裂病の発症脆弱性の解明およびその客観的な診断方法の確立に関する研究 | 平成14-16年度 | 106,800 | 東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野 | 松岡洋夫 | (ア)精神分裂病(現 統合失調症)の発症脆弱性に広範な認知障害が関与。(イ)トランスレーショナル研究を可能とし臨床研究にも応用可能な認知機能評価方法としてプレパルス・インヒビションと近赤外線分光法が有用であることを示した。(ウ)本成果は国際学会や雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 | 統合失調症の再発と慢性化の問題は適切な病床数や医療行政の根幹に直接関係するが、新たな臨床指標の導入・一般化によって早期に予後予測を可能にし長期的な医療施策に有用な情報を提供する | 精神疾患の機能評価法として一般臨床に定着すれば、保険の点数化につながる。 | 6 | 16 | 50 | 0 | 1 | 3 | こころの健康科学(精神) | ||||||||||||
ゲノム医学を活用した統合失調症及び気分障害に対する個別化治療法の開発 | 平成16年度 | 10,000 | 新潟大学医歯学系精神医学分野 | 染矢俊幸 | (ア)統合失調症及び気分障害に対して、薬物療法がもっとも有効であることがわかっている。しかし、患者個別の薬剤反応性、副作用感受性は薬剤毎に異なっていることが明らかになっているにもかかわらず、薬剤選択の基準が存在しない。 (イ)5-HT1A受容体Gly272Asp多型が抗うつ薬fluvoxamineの治療効果と関連し、5-HT2A受容体A-1438G多型とCYP2D6遺伝子多型はfluvoxamineの消化器系副作用と関連していた。 急性期統合失調症患者においてMDR1遺伝子多型と臨床効果との関係について検討し、この多型が定型抗精神病薬の副作用である認知機能障害に関連している可能性を示した。 欠陥型統合失調症と5-HT2A受容体遺伝子多型との関連を検討し、欠陥型においては5-HT2A受容体遺伝子多型T102Cとの関連を検出した。 定型抗精神病薬サンプルにおいて治療効果・副作用とdopamine受容体遺伝子多型との関連について解析を行い、TaqI Aおよび-141C Ins/Del dopamine D2受容体遺伝子多型の組み合わせが治療反応性及び悪性症候群発症のリスクの予測に有用である可能性を示した。 (ウ)抗精神病薬、抗うつ薬の効果及び副作用に関する上記の成果は、国外一流紙に掲載され、国内外から大きな反響があった。本研究の成果によって、治療反応性予測因子が明らかになれば、個々の症例に即した薬物の選択、投与量の調節が可能となり、無駄のない、速やかな薬物治療が実現可能となる。結果として疾患期間の短縮が可能となり、入院期間短縮、労働力低下の早期改善・自殺数減少、精神科病床数削減、向精神薬副作用に起因する医療費の削減などにつながることが期待できる。 |
成果をもとに厚生労働省委託費班研究「感情障害の治療ガイドラインを用いた臨床実証的研究」研究報告会で発表。厚生労働省施策である「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」のなかでは「こころの健康づくり」を目標に設定してある。この中ではストレスの低減、睡眠の確保及び自殺者の減少について具体的に目標が設定されているが、ストレスの多い社会では感情障害、特にうつ病の患者数が極めて増加してきており、自殺者の多くが本疾患に罹患していた可能性が示唆されている。本研究の成果はうつ病患者治療期間の短縮化につながり、この結果自殺率を減少させることができると考えられる。 | 非常に有病率の高い感情障害及び統合失調症に対して、薬物治療の個別化を目指す本研究は社会的な期待も高い。本研究班はこれまで、国内はもちろん世界的にもこの分野における成果を報告してきた専門的グループから構成されており、当該領域における成果について最も期待されている。 | 32 | 13 | 39 | 0 | 1 | 国際学会の開催 1. 環太平洋臨床薬理学会(PRACP)(会長:染矢俊幸) 講演 1. 2005 Meeting of Korean Society of Biological Psychiaty 2005.3.4. Seoul. Someya T: Clinical pharmacogenetic research in Japan. 2. 第12回日本精神・行動遺伝学会 2004.10.16. 東京. 染矢俊幸: 臨床薬理遺伝学. 3. 平成16年度栃木県精神医学会 2005.2.26. 宇都宮. 染矢俊幸: うつ病の診断と治療について -最近の薬理遺伝学の進歩より-. 4. WFSBP Asian Pacific Congress. Korea, 2004.7.9-11. Ozaki N, Iwata N, Inada T: Genomic research of schizophrenia:from candidate gene and pharmacogenetic approach to whole genome study. シンポジウム 1. 第1回うつ病学会 2004.7.2. 東京. 染矢俊幸, 川嶋義章: シンポジウム: うつ病はくすりでどれだけ治るのか? 2. 第14回日本臨床精神神経薬理学会 2004.9.30. 神戸. 染矢俊幸, 鈴木雄太郎, 澤村一司: シンポジウム: 薬理遺伝学の進歩. 3. 第14回日本臨床精神神経薬理学会 2004. 9.30. 神戸. 尾崎紀夫, 稲田俊也, 岩田仲生: シンポジウム「分子精神医学の進歩と精神科薬物療法」統合失調症ゲノム研究と臨床薬理学研究との架橋を目指して. 4. 第34回日本神経精神薬理学会第26回日本生物学的精神医学会合同年会 2004.7.21-23. 東京. 斎藤顕宜, 山田光彦, 山田美佐,亀井淳三: シンポジウム「分子からこころを探る」慢性投与モデルを評価系に用いたオピオイドδ受容体作動薬の抗うつ作用の解析. |
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重症精神障害者に対する、新たな訪問型の包括的地域生活支援サービス・システムの開発に関する研究 | 平成14-16年度 | 120,318 | 国立精神・神経センター国府台病院 | 塚田 和美 | (ァ)包括型地域生活支援プログラム(ACT)は欧米において、重症精神障害者の安定した地域滞在日数の増加、入院日数の減少、患者のサービス満足度の向上、などに貢献する。 (イ)わが国においてもACTは入院日数の減少、入院回数の減少に貢献することが実証できた。 (ウ)医療・保健・福祉の包括かつ訪問型のリハビリテーション・モデルは我が国でも重症精神障害者の地域での安定化に有効であり今後の精神保健福祉施策に活用できる。 |
病院中心の精神医療から地域中心の精神保健福祉へという施策の枠組みの中で以下のような具体的な貢献をした。 ・モデル事業案 ・「精神科医療・保健・福祉の改革ビション」(H16.9.)でのACTへの言及 ・障害者自立支援法への記載 ・医療観察法における地域生活支援モデルとして、ACTが検討された。 |
・京都、岡山、帯広などでACTモデルの地域生活支援プログラムが開始された。 ・日本精神障害者リハビリテーション学会、日本病院地域精神医学会、日本精神科救急医療学会などでACTに関するシンポジウムがもたれた。 ・国立精神・神経センター精神保健研究所の医学研修としてACTに関する研修プログラムが組まれた。 ・ACTに関するネットワークが構築される予定である(2005.11.) |
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ストレス性精神障害の予防と介入に携わる専門職のスキル向上とネットワーク構築に関する研究 | 平成16年度 | 5,000 | 兵庫県こころのケアセンター | 加藤 寛 | (ア)専門職が業務をとおして受ける心理的影響は、看過するべきでない。 (イ)消防士、女性センター職員、保健師、および海上保安庁職員などの職域で、日常から外傷性ストレスとなりうる事態に、高率に遭遇していることが分かった。PTSDのハイリスク者と判断される者の割合は、消防隊員11%〜15%、女性センター職員22%、保健師11%、海上保安官13%であった。 (ウ)職域での外傷性ストレス研究を、多職種で検証した総括的な研究となった。 |
本研究成果をもとに、神戸市や西宮市、福岡市などの消防本部で、惨事ストレス対策を推進する根拠となった。また、海上保安庁において惨事ストレスマニュアルを作成し、すべての管区に普及する基礎資料となった。 | 大事故や大災害後に、救援者の受ける心理的影響は大きな社会的関心を集めるようになっており、各職域で対策を立てる上での資料として活用されることが期待される。 | 3 | 1 | 2 | 2 | 5 | こころの健康科学(精神) | |||||||||||||
自閉症の原因解明と予防、治療法の開発―分子遺伝・環境・機能画像からのアプローチ― | 平成14-16年度 | 106,800 | 東京大学医学部附属病院精神神経科 | 加藤進昌 | ア: 自閉症の発生率が近年増加していることが広く知られるにつれ、世界的にその原因解明の研究は飛躍的に増加している。アメリカでは既にその研究費はアルツハイマー病関連予算の7分の1にまで達している。しかしながら、わが国では、児童精神医学界の混乱が長く続いたためもあって、特に自閉症の生物学的研究は決定的に立ち遅れている。 イ:A)自閉症の当事者・家族に向けて、生物学的研究の意義を解説するパンフレットを作成し、自閉症協会、地域家族会などの団体を通じて5000部を配布した。B)脳画像研究で、高機能自閉症では社会性やコミュニケーションに関わる脳部位のネットワーク障害が存在することが明らかになった。特に一卵性双生児の研究で、情動の座である扁桃体が自閉症発症に関連するといわれていたことを否定する結果を得た。C)自閉症110家系サンプルを収集した。7q領域の遺伝子との相関を示唆する結果を得た。D)自閉症児の新生児スクリーニング時のTSH(甲状腺刺激ホルモン)値を100例で調査し、知能との逆相関を認めた。 ウ:脳画像研究はNeurologyなどの国際誌に受理され、わが国でも自閉症研究が進展しつつあることを内外に印象付けることができた。遺伝研究はさらに症例数を増やしつつあり、いずれカナダの同様の研究プロジェクトと連携する方向で協議が進んでいる。本研究費で招聘したHarvard大学Pauls教授の遺伝に関する特別講演を児童精神医学会で実現した。ほとんど信じられないことだが、この学会で遺伝研究の講演があったのは初めてである。 |
(2)ア:平成16年11月7日に東大安田講堂において、本研究事業の成果を発表する公開シンポジウムを、当事者・家族を中心とする1000名の参加者を得て開催した。アンケートを実施し、遺伝研究を含む生物学的研究の必要性が十分浸透したことを確認した。同時に100名以上の参加者から研究協力の申し出をいただいた。今後の研究推進の大きな第一歩と考えている。 イ:横浜市で自閉症の新生児期の甲状腺機能を調べるネットワークを形成した。今後、自閉症発症に関わる環境要因を疫学的に調査するフィールドとして活用できるものである。 | (3)本研究事業の推進を足がかりにして、過去30年余の自閉症療育の実績も評価され、平成17年度から、自閉症をはじめとする発達障害者の治療や教育を支援する人材育成を目的として、「こころの発達臨床教育センター」が東大病院で発足した。5年間の時限で約3億円の事業であり、このような施設はわが国では例が無い。センターでの教育と、本事業での研究が連携して進展することによって、わが国の自閉症に関する一大拠点に育てることができると期待している。 | 46 | 45 | 0 | 2 | 8件 【14年度】・2003年自閉症パンフレット作成(一般向) 【15年度】・3月11日医局集談会岡田俊先生「自閉症における視線認知とコミュニケーション」十一元三先生「広汎性発達障害におけるエピソード記憶・意味記憶と認知処理」・7月31日東京医学会講演Michael Meaney, Ph.D.「How adversity in early life affects stress vulnerability?発達環境がストレス脆弱性に影響する分子メカニズム」【16年度】・6月24日東京医学会第2337回集会ローレンス・スケーヒル先生講演(自閉症の薬物療法の現状と展望)・7月1日Cathy L Barr博士(トロント大学精神科)講演会・11月5日David Pauls先生講演(児童精神医学学会講演)11月7日公開シンポジウム「自閉症の原因を探る」(安田講堂)・2月中旬先生講演Roger Keith. Pitman先生招聘講演 |
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自殺を惹起する精神疾患の感受性遺伝子の解明 | 平成14-16年度 | 106,800 | 国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第三部 | 功刀 浩 | (ア)自殺を惹起する精神疾患(統合失調症、気分障害、薬物依存)や自殺行動は、遺伝的要因が強く働いている。(イ)(1)Dysbindinが統合失調症の感受性遺伝子であることを明らかにし、この分子が、グルタミン酸放出量を増加させ、細胞保護効果をもつことを見出した。(2)脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子の新しい機能的変異を同定し、躁うつ病の感受性遺伝子であることを示した。(3)その他、気分障害の感受性遺伝子としてp75NTR、chimerin 2、GMIP、BCR、GABRA5などを同定し、統合失調症や覚醒剤使用障害の感受性遺伝子として5-HT4R、chromogranin A、chromogranin B、AKT1、DRPO-2などを見出し、自殺既遂と関連する遺伝子としてCOMTや14-3-3εを同定し、一部はそのメカニズムも明らかにした。(ウ)これらの分子が精神疾患や自殺行動において重要な役割を果たしていることを示す成果は、Hum Mol Genet, Mol Psychiatry, Biol Psychiatryなどの雑誌に多数掲載され、国内外から大きな反響があった。なお、一部は現在論文投稿中である。 | (1)統合失調症、気分障害、薬物依存、自殺行動などの脳内分子メカニズムについては不明の部分が多いが、本研究によりこころの病気に重要な働きをしている分子が次々に明らかにされ、生物学的診断法の確立、新しい治療薬の開発の標的分子として注目されている。(2)これらの知見はオーダーメード医療の実現化に有用な知見である。(3)本研究を通じて非常に多数の精神疾患患者様と健常者のゲノムDNA等研究試料の収集が進み、今後、遺伝子解析研究だけでなく、精神疾患の研究事業を進める上でわが国における貴重なリサーチ・リソースとなる。 | (1)Dysbindinの機能の発見は、統合失調症のグルタミン酸機能低下仮説に合致し、統合失調症の新しい治療法開発の分野に強いインパクトを与えている。(2)BDNFの新たな機能的変異が躁うつ病の発病危険性を高めることを示した知見は、躁うつ病の診断・治療法開発の分野に強いインパクトを与えるものと思われる(学術雑誌公表時にプレスリリースの予定)。(3)覚醒剤使用障害のサンプル数は世界最大規模となっており、同障害の発症、再燃、予後に関する遺伝子レベルの解明が世界の当該分野をリードするかたちに発展している。 | 33 | 88 | 135 | 2 | 3 | 24 | こころの健康科学(精神) | ||||||||||||
自殺多発地域における中高年の自殺予防を目的とした地域と医療機関の連携による大規模介入研究 | 平成14-16度 | 44,250 | 岩手医科大学医学部 | 酒井明夫 | (ア)自殺予防では、一次・二次・三次予防の有効性が確認されている。(イ)自殺多発地域において自殺の一次・二次・三次予防までを自殺予防ネットワークを構築しながら包括的に展開し、地域における自殺予防の方法論を確立した。自殺予防のネットワークを機能させることで、医療および行政の連携を促進した。(ウ)対照地区を設定し、介入前後に意識調査を住民・医療従事者に対して行うことで、介入活動の有効性を実証した。 | (1)リエゾンナース事業の取り組みを厚生労働省のうつ対応マニュアルに反映、(2)リエゾンナース事業が認知され、岩手県医療局でリエゾンナースをH17年度より雇用、(3)行政と連携した住民の啓発事業の実施と効果確認、(4)医療機関への啓発事業(岩手県立久慈病院・町立種市病院)の実施と効果確認、(5)健康づくり事業のための地域住民との話し合い(山形村)、(6)モデル地区で厚生労働省のうつ対応マニュアルのスクリーニング法によるスクリーニング事業の実施と有効性の確認(久慈市夏井地区・山形村荷軽部地区)、(7)保健師など地域保健医療従事者・保健所などに対する啓発活動および連携(久慈保健所など)、(9)他地域の住民に対する講演会による啓発事業(盛岡市)、(10)久慈地域での自殺予防ネットワークの構築の支援 | 13 | 3 | 25 | 0 | 6 | 112 | こころの健康科学(精神) | |||||||||||||
拡張型心筋症に対するβ遮断薬療法の個別化医療実現のための研究 | 平成16-17年度 | 92,000 | 大阪市立大学大学院医学研究科 | 吉川純一 | (ア)拡張型心筋症患者においてβ遮断薬療法の有用性が大規模臨床試験で証明されている。しかしながら、有効症例は、日本人においては全体の約60%であり、有効性の予測方法の確立が期待されている。(イ)175遺伝子多型に関し、β遮断薬の有効性との相関を検討したところ、7遺伝子・8SNPsに有意な相関を得た。また、eNOSとACEの遺伝子多型を組み合わせることにより、β遮断薬の有効性を予測できる可能性が示された。(ウ)これまでβ遮断薬の心不全に対する有効性の薬理機序は全く不明であった。今回の結果から、その薬理機序として(1)ノルエピネフリン系シグナル、(2)アンギオテンシンをはじめとする神経体液性因子、(3)血管機能制御 の複合的な効果によりβ遮断薬が心不全に対し有効性を示すことが明らかになった。さらに、上記の遺伝子多型を組み合わせて判断基準を作成することにより、β遮断薬の有効性の予測方法が提案された。 | ○海外からの報告では、β受容体の遺伝子多型が、β遮断薬の有効性の予測因子となりうるとされていたが、今回の研究結果では、その結果の再現性が得られなかった。すなわち、β遮断薬療法において、β受容体遺伝子多型を治療法選択の基準とすることに警鐘を鳴らした。日本循環器学会の作成する心不全治療に関するガイドラインに成果を還元する予定である。○現在、American Heart Associationは、心不全治療におけるpharmacogenomics研究に重点を置きつつある。おそらく、今後数年内に、遺伝子多型と治療有効性・副作用に関するさまざまな情報が欧米から流入するであろう。上記の例のように、日本人において海外の結果があてはまるかどうかを検討する基礎データが作成されたと考えられる。 | ○今回の成果の一部を大規模臨床試験J-CHFを通して日本循環器学会専門医に公開することで、ゲノム情報に基づく個別化適正医療の概念が広く理解されるようになり、今後の循環器領域におけるゲノム情報に基づいた個別化適正医療、pharmacogenomics研究を医師主導で推進する基盤が形成された。「行政的観点」に記したように今後心不全治療の領域におけるpharmacogenomics研究が欧米で飛躍的に推進されると予想されることから、今回形成された知的基盤が、日本の知的財産形成の一助となると考える。○β遮断薬の有効性の予測に有用と予測される遺伝子多型に関してベッドサイドで判定可能なDNAチップの作製に着手する。 | 25 | 12 | 25 | 1 | 8 | 難治性疾患克服研究 |