研究課題 | 実施期間 | 合計金額 (千円) |
主任研究者所属施設 | 氏名 |
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(3) その他の社会的インパクトなど(予定を含む) | 発表状況 | 特許 | 施策 | (4) 普及・啓発活動件数 | 研究事業名 | ||||||||||||||
原著論文(件)※2 | その他論文(件) | 口頭発表等(件) | 特許の出願及び取得状況 | 反映件数※3 | ||||||||||||||||||||||
乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断のためのガイドライン作成およびその予防と発症率軽減に関する研究 | 平成14-16年度 | 45,000 | 北里大学 | 坂上正道 | 乳幼児突然死症候群は乳児期における主要な死亡原因であり、その病態解明、予防法の確立などが望まれている。わが国においてはその診断を巡って医学的・社会的に混乱が生じている。 乳幼児突然死症候群のガイドライン、定義が作成され、原則として新生児期を含めて1歳未満の児に限定されることとなった。ただし、1歳を超える場合でも年齢以外の定義をみたす場合に限りSIDSとすることとなった。今回のガイドラインでは、解剖がなされない場合および死亡状況調査が実施されない場合は、死亡診断書(死体検案書)の分類上は「不詳」とすることが明記された。またその診断の為には、 乳幼児突然死症候群以外の乳幼児に突然の死をもたらす疾患および窒息や虐待などの外因死との鑑別診断が必要であることが明記された。生理学的にも病理組織学的にもSIDSの発症に覚醒反応に異常が関与している可能性が示唆され、SIDSの病態解明に一歩近付いたものと考えられる。予防法に関してはパルスオキシメータの有用性などが示唆された。また家族支援の必要性も認識された。 | 分担研究の成果を踏まえ、さらに国内外の情勢を検討し、乳幼児突然死症候群のガイドラインが作成された。今後、SIDSに関するガイドラインが全国の医療関係者ならびに広く社会に衆知徹底されることで、SIDSの疾患としての概念、窒息や虐待との異同に対する正しい知識が普及することが期待される。 | 神経病理学的、呼吸循環生理学的な病態解明、SIDS発症率の軽減、乳児死亡率の減少、さらには我が国の将来にとって乳幼児の障害の予防と健康保持増進対策の一助となることが期待される。 | 0 | 6 | 10 | 0 | 0 | 0 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||
児童虐待防止に効果的な地域セーフティーネットのあり方に関する研究 | 平成15-16年度 | 11,400 | 日本子ども家庭総合研究所子ども家庭福祉研究部 | 高橋 重宏 | (ア)子ども虐待発生の実態。市町村が児童相談を行うにあたっての問題点と課題。(イ)児童相談所で一時保護し、一定の方針が立ったケースの実態。海外の最新の児童虐待対応の仕組みとそれに携わるソーシャルワーカーの要請方法。児童相談に関する日本の先進市町村の具体例。エキスパート児童福祉司の対応のノウハウ。(ウ)児童虐待を防止するための仕組みについて、国内、海外の最新の実例を収集したこと。また、特に、エキスパートへの児童虐待事例への対応法についてのヒアリングでは、虐待の発生調査を加えたことにより、現実に基づいた客観的な視点により分析が行われている。 | 平成17年度4月より、市町村が児童相談の一義的窓口になった。しかし、児童相談のノウハウ自体をはじめ、今後解決していかなければならない課題も多いが、構築されるべき体制や、これまで児童相談所で蓄積されてきた具体的な対応のノウハウを示せ、体系的に示すことができた。 | 児童相談体制とそれに携わるソーシャルワーカーの資質向上に貢献できる。 | 2 | 3 | 6 | 0 | 0 | 1 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||
子どもの発達段階に応じた効果的な栄養・食教育プログラムの開発・評価に関する総合的研究(H14−子ども−030) | 平成14-16年度 | 25,000 | 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部国際公衆栄養学分野 | 山本茂 | (ア)子どもの健康問題が指摘されているが、その現状と解決のための方法論が確立していない。 (イ) systematic review から子供の肥満とやせ、不適切な食事などがあきらかになった。欧米のchild to childの方法を小学5年生から2年生への応用で効果があがることを実証した。 (ウ) 5年生から2年生に栄養教育を行う方法について、その実行可能性が学会などの専門家に高く評価された。 |
栄養の知識と重要性を小学校の上級生が下級生に教えることで、前者は責任をもって教えることの大切さ、自信を獲得し、下級生は親しみをもって学ぶことができるこの方式は、模範的な栄養教育モデルとして将来、広く活用されるであろう。まだ、出版には至っていない。 | 栄養教育を大人から子供へと伝えるのではなく、上級生から下級生に教えることは、上級生が栄養について自分自身で勉強し責任をもって下級生に教えることで栄養学への関心のみならず勉強のおもしろさ、自信につながり、下級生は親しみやすい身近な上級生からのことばは印象強く、今後、全国でひろく活用されるであろうことが期待される。 | 5 | 3 | 7 | 0 | 0 | 1 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||
予防接種の実施率向上のための母子保健の現場における活動マニュアルの開発に関する研究 | 平成16年度(単年度 | 5,000 | 財団法人予防接種リサーチセンター | 竹中 浩治 | (ア)予防接種の対象疾患、必要性、効果、副反応の種類・頻度、等については研究によって明らかになってきており、その専門書やガイドブックも流通している。(イ)麻疹の根絶を目的とした早期の予防接種勧奨と予防接種の実施率を高める必要は強調されていながら、具体的にどのような手段で実行すれば効果が上がるかについての研究はなかった。本研究では実効を上げつつある地方自治体の活動を収集・分析し、地域における健康教育や保健・教育行政と医師会との協働、広報等に関するノウハウをまとめてマニュアルとして示し、実用に供した。(ウ)医学的な新知見を求める研究ではないが、予防接種実施率を高め、麻疹根絶を可能にする保健活動の実行手法を示した研究である。 | 本研究によって開発・作製された母子保健担当者向けマニュアルは、予防接種本来の目的を達成するために必要な実施率の向上、麻疹の根絶を目標とする行政活動に直接貢献できるものである。マニュアルは都道府県、全市区町村等に配布する。 | 子どもの親や保育等の関係者は、母子保健担当者から」適切な指導を受けて、麻疹等の感染予防の意義、予防接種の必要性と受け方について知ることができ、麻疹の根絶や風疹による先天異常の根絶が可能になる。 | 0 | 6 | 7 | 0 | 上記(2)の1件の他、下記(4)の活動件数がある。 | 10件本研究成果物のマニュアル2500部を全市区町村に配布。日本ワクチン学会において「はしかゼロアピール」を採択(平成16年10月・札幌市)。ブロック別予防接種担当者研修会(7ヶ所)において接種率向上についての取り組みを講演。日本医師会、小児科医会が「こども予防接種週間」事業を実施(平成17年3月 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||
気管切開を行って退院する子どもと家族へのケア提供者の教育と教育効果の評価に関する研究 | 平成16年度 | 2,500 | 東京慈恵会医科大学医学部看護学科 | 濱中喜代 | (ア)気管切開後在宅に移行する子どもと家族への支援の重要性が高まっている中でケア提供者の困難性が高まっている。(イ)研修会を通して、支援の実際が高い率で理解され、家族の対応や家族に対する意識に良い変化があった。(ウ)全国3ヶ所で参加者280名の研修会ができ、それが波及することにより臨床でのケアの向上が図られる。また家族および医師からの聞き取り調査から改訂したケア提供者のためのケアマニュアルを普及させることによって慢性疾患や難病を持つ子どもと家族のQOLの更なる向上が期待できる。 | 昨今は気管切開の子どもと家族に対するケア提供者の枠が拡大されつつある中で、今回作成のケアマニュアルや研修会の教育方略が活かされれば、全国規模でのさまざまな人々に対する普及が可能となり、行政への貢献が期待できる。 | 2 | 2 | ケアマニュアル作成1 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||||||
母親とともに家庭内暴力被害を受けた子どもに被害がおよぼす中中期的影響の調査および支援プログラムの研究 | 平成14-16年度 | 14,000 | 国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部 | 金 吉晴 | (1) 専門的・学術的観点 ア 家庭内(配偶者間)暴力は子どもにとっても暴力の目撃、暴力の対象にされることによって心理的被害をもたらす。 イ 被害を受けた母子は、被害を共有している一方で、制御できない攻撃性のために、相互に傷つけあうというパターンがある。子どもが離別を納得していない場合など、自分を保護している母親に敵意を向けることがある。 ウ 被害を受けた母子であっても、保護後の母子関係には葛藤があり、それをふまえた上での治療支援が必要であることが見いだされた。また子どもの心理的発達上の課題も多く、中長期的な追跡が必要であることが明らかとなった。 |
研究のフィールドとなった施設を管轄する東京都に置いて、家庭内暴力の重要性が認識され、都としての行政報告書がまとめられ、施策に生かされている。 | 被害を受けた子どもが自分で読むための絵本形式のパンフを作成し、出版準備中である。 | 1 | 6 | 8 | 0 | 0 | 1 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||
性に関する思春期保健教育のためのマニュアル開発と教材作成に関する研究 | 平成16年度 | 4,500 | 自治医科大学看護学部 | 高村寿子 | (ア)(1)平成14-15年度の研究(ピアカウンセリング・ピアエデケーションのマニュアル作成と効果的普及に関する研究:主任研究員 同一主任研究員)から、思春期の若者の性意識・性行動の予防教育には、彼らと同世代を生きる仲間:ピアカウンセラーたちの、ピアカウンセリング・ピアエデケーション手法による性教育が有効であること。 (2)ピアカウンセリング事業に関わる人々(ピアカウンセラー・ピアカウンセラー養成者(指導者)・地域のコーデネィター)のパワーレスを予防し、エンパワーメントを高め活動を維持して行く支援システムが必要であること。 (3)本手法が全国展開をするためには、教育内容と方法および教材に教育水準の一定化が必要不可欠であること。 (4)学校現場で男子思春期保健教育の担い手である養護教諭に、医学的な知識を強化した指導書(ガイドライン)が必要であること (イ)(1)性に関する思春期保健教育の一方法として ピアカウンセリング手法が現場で展開されるときに、効果的な教材(テキスト、副読本、配布資料、紙芝居などの教材、ロールプレイビデオ集)が、一定の教育水準を満たして開発されたこと。(2)ピアカウンセリング事業に関わる人々(ピアカウンセラー・ピアカウンセラー養成者(指導者)・地域のコーデネィター)のパワーレスを予防し、エンパワーメントを図る支援システムが構築されたこと。具体的には日本ピアカウンセリング・ピアエデュケーション研究会が設立され、ホームページが開設されたこと。(2)今まであまり存在しなかった男子思春期向けマニュアルが、学校現場の指導者(養護教諭)向けに作成されたこと。 (ウ)(1)ピアカウンセリング・ピアエデケーションの担い手であるピアカウンセラー養成に効果的な教材が開発され、それに基づいて全国的に一定の教育水準で養成講座が実施されることになった。 (2)併せてピアカウンセラーおよびピアカウンセラー養成者のみならず性教育/思春期保健の受け手である中高校生から、教材画魅力的で、ニーズにあっているとの反響があった。 (3)医学的な知識に裏付けられた男子思春期向けマニュアルは、養護教諭からの反響が大きかった。 (4)これらの研究成果に基づく教材などの活用により、本手法の全国展開が容易になった。 |
本研究成果をもとに、思春期ピアカウンセリング事業を企画・実践する全国都道府県が増えたこと。その継続・定着のために、研究成果で判明下ニーズを対応するために設立された日本ピアカウンセリング・ピアエデュケーション研究会と、ホームページにより、健やか親子21の思春期作戦の一つである思春期保健教育としてのピアカウンセイング事業の効果的な全国展開が実現される。本成果が公表されることにより、教材の活用のニーズが高まることが予想される。人口妊娠中絶率の更なる低下を図り、STI予防教育の推進と感染率の減少をねらいたい。 | ピアカウンセリング事業が全国展開されることにより、若者の生=性の自己決定能力が強化されることは、次世代育成支援につながり、生き生きと生まれついた地域社会で世代を超えて生き生きと生きる若者が増えていくことが期待される | 0 | 0 | 6 | 0 | 全国18の都道府県市で、段階差はあるがピア事業に着手 | 1:日本ピアカウンセリング・ピアエデケーション研究会を、平成17年5月15日に立ち上げ。ホームページを作成、ピア事業関係者やピアカウンセラーのエンパワーメントを秤、かつ彼らからのQ&Aに答え、また教材や方法などの相談指導に当たる予定 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||
子育て時における両親の相談ニーズ把握及び保健医療福祉スタッフ支援モデル研究事業(H14-子ども-010) | 平成14-16年度 | 21,900 | 東京家政大学児童学科小児医学研究室 | 日暮 眞 | (ア)子育て時の両親の相談ニーズ把握は、個別の病院・診療所(飯田,小児科臨床Vol.48,2003等)や保健所(山田,外来小児科Vol.4,No1,2001等)での実施状況などが報告されているが、対象数や具体的な場面が未設定であり十分なフィールド調査ではない。小児スタッフの支援は、医療機関や保健所での相談事業等にインターネットの整備・活用の推進を提言する研究(武村ら,厚生の指標Vol.48,No6,2001等)や小児科研修医のメンタルケアに関する指導書作成の取組み(五十嵐,診断と治療社,1999)などが見られる。 (イ)第一は、子育て時の両親のニーズが不安や問題点などと併せて把握されたこと、小児科医などスタッフの相談対応状況や課題が把握されたこと、小児医療施設ごとの各業務に関する業務時間量が把握され、施設の機能別に相談業務への対応状況も異なり、特に診療所などの外来機能での相談ニーズが高いことが示されたこと。第二に、両親への相談対応・意識啓発やスタッフの対応体制のあり方と、具体的なスタッフ向けのツール「小児科スタッフの子育て支援に向けて〜スタッフ向けマニュアル(見本)〜」が検討・作成されたこと、併せて両親への意識啓発・教育の具体策(マニュアル)の検討を行ったことである。 (ウ)小児科医の子育て支援に対する関わり方が初めて具体的に示唆されたこと。小児医療施設における各業務に関する業務時間量が把握され、施設の機能別に相談業務への対応のあり方が示唆されたこと。子育て相談事業の新たな実施スキーム(かねを含む)が検討・構築されたこと。 |
○本研究でモデル実施した子育て相談の新たな事業スキームが構築されたこと。具体的には、企業の健康保険組合における保健事業として採用・導入された。従来、子育て支援関連では、出産一時給付金などしか存在しておらず、専門家が参画した新たな事業の構築に寄与できた。 ○小児科スタッフ向けの相談対応の支援ツール「小児科スタッフの子育て支援に向けて〜スタッフ向けマニュアル(見本)〜」が検討・作成されたこと。今後、活用されることによって、さらに改善していくことが期待できる。 |
子育て相談の新たな事業スキームが構築され、複数の企業の健康保険組合で採用・導入されたことにより、今後、全国の保険者の保健事業として普及・展開する可能性がある。 | 0 | 1 | 3 | 0 | 1 | 1(健康保険組合の健保だより掲載・紹介) | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||
地域における子育て支援システムの構築と普及に関する研究 | 平成14-16年度 | 13,000 | 社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センタ−愛育病院 | 山口規容子 | (ア)地域における子育て支援ネットワークは先駆的活動が展開されている。(イ)子育て支援ネットワーク構築のための主要な条件と課題が明らかになった。(ウ)この研究成果が多分野間で共有された。 | ○健やか親子21の第4課題の推進のために各分野の全国団体との連携が図られ、協議の場が持たれている。 | 1 | 0 | シンポジウム3 講演5 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||||||
被虐待児童の心身の機能回復に向けた家族支援のあり方に関する研究 | 平成15-16年度 | 49,000 | 聖徳大学短期大学部保育科 | 鈴木 力 | (ア)虐待を受けた子どもの心身の回復にむけた援助を行う前提として、家族に対する感情を整理することが必要であり、また家族との再統合を含めた家族支援が必要である。(イ)家庭支援においてはアセスメントプロセスと分離における子どもと保護者双方の合意形成プロセスへ着目した援助モデルの必要性がある。(ウ)虐待経験を持つ子どもの回復に向けた家庭援助・支援モデルを策定した。 | 虐待経験を持つ子どもの回復に向けた家庭援助・支援モデルを策定し、全国社会福祉協議会・全国児童養護施設協議会発行「季刊 児童養護」を通じて全国の児童養護施設に周知した。 | 子どもの回復という視点から保護者・家族への援助方法確立のための端緒となる基礎的研究であり、早急に新たな視点や援助・支援方法といった方策が必要となっている社会的養護の現場において活用可能な援助・支援モデルを提供するものである。 |
4 | 10 | 2 | 2 | 10 | 子ども家庭総合研究 | |||||||||||||
子どもと家庭を対象とした総合評価票の開発に関する研究 | 平成16年度 | 18,000 | お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 | 菅原ますみ | (ア)子どもの発達と適応に関する測定体系は領域ごと・発達段階ごとに分離していた(イ)”子ども自身要因・家庭要因・地域や学校要因”の複数領域における乳児期〜青年期までを共通概念で測定しうる評価体系を開発した。(ウ)個別ケースの包括的理解の深化に加え発達に沿った縦断的評価が可能になったことと、多様な要保護ケースについて共通概念で評価することを可能にした点に意義があると考えられる。 | 本研究で開発した”子ども家庭総合評価票”を中心として厚生労働省雇用機会均等・児童家庭局母子保健課による児童自立支援計画ガイドラインが策定され、全国に普及。主要新聞にも紹介された。 | 市町村や保育・教育機関などでの相談業務の補助的ツールとして広く利用されることが期待される。 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 5 | 子ども家庭総合研究 | ||||||||||||
難治性白血病に対する標準的治療法の確立に関する研究 | 平成14-16年度 | 105,680 | 愛知県がんセンター | 大野 竜三 | (ア)人口10万人当たりの年間発症件数が4〜5人という白血病の場合は、質の高い臨床研究を行うには全国的な多施設共同研究が不可欠であり、これなしにはレベルの高いエビデンスを持つ標準的治療法を確立することはできない。(イ)質の高い臨床研究をするために先ず登録センターとデータマネージメントセンターを整備して、全国78の大学病院・専門病院とその関連病院も含めて196病院よりなる我が国唯一のグループである成人白血病の多施設共同治療研究グループJapanb Adult Leukemia Study Group (JALSG)の症例集積能力を活用しつつ、信頼できるエビデンスを持つ難治性白血病に対する標準的治療法を確立を試みた。(ウ)5種類の成人白血病を対象として臨床研究をおこなった。3年間でほぼ順調に目標に近い症例が登録された。これまで化学療法に難反応性であったPhiladelphia(Ph) 染色体陽性急性リンパ性白血病を対象としたPh+ALL202 studyでは、イマチニブを導入することにより極めて良好な治療成績が得られたので、中間成績をBLOOD誌に投稿・掲載され、高い評価を受けた。 | 5つの治療研究はともに3年間では予定症例数を登録するのがやっとであり、成績は出ていない。それでも、これまで化学療法に難反応性であったPhiladelphia (Ph)染色体陽性急性リンパ性白血病を対象としたPh+ALL202 プロトコールは、日本のみならず世界の標準的治療法になってゆくものと期待されるほど、良好な成績を示しているす。 | 我が国唯一のグループである成人白血病の多施設共同治療研究グループJapan Adult Leukemia Study Group (JALSG)の症例集積能力は国際的にみても高く、これまで、日本における白血病治療のエビデンスを提供してきた。このたび、厚生労働省科学研究費補助金の支援を受けて、登録センターとデータマネージメントセンターを整備することができたので、今後信頼できるエビデンスを持つ難治性白血病に対する標準的治療法を確立できるものと考える。 | 12 | 125 | 12 | 0 | 0 | 0 | がん臨床研究 | ||||||||||||
食道がんに対する術後標準的治療法の確立に関する研究 | 平成14-16年度 | 75,280 | 東京歯科大学市川総合病院 外科 | 安藤暢敏 | (ア)日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) 食道がんグループでの多施設共同ランダム化比較試験(JCOG 9204)により、Stage II,III食道がんに対する術後化学療法FPによる再発予防効果が証明されている。(イ)極めて予後不良なStage IV症例に対する化学放射線療法の至適レジメンの検討(ウ)化学放射線療法の標準的レジメンの確立が期待される。 | ○JCOG9204の成果は食道がんの治療ガイドラインの内容に採用された。 | 現在各地域、各施設独自に行われている食道がんに対する化学放射線療法の標準的レジメンが確立され、統一した治療が行われるようになると思われる。 | 13 | 16 | がん臨床研究 | ||||||||||||||||
標準的な乳房温存療法の実施要項の研究 | 平成14-16年度 | 77,200 | (財)癌研究会有明病院 乳腺科 | 霞富士雄 | (ア)日本乳癌学会の調査によると2003年に乳癌の手術で乳房温存手術は乳房切除を抜いて主座に付いている。乳房温存手術はこれほど一般化しているが施行施設間にはその考え方、施行方法においてばらつきが見られ医師も患者家族ももう少し統一的な方法の設定が望まれている。(イ)標準的な温存手術施行方式の作定にあたって、乳癌学会の研修認定施設の長にアンケートを行ったが、要望として少々厳格で将来の努力目標になるように望む事が強く、班の要項設定もその主旨に合わせた。(ウ)3年間の研究によって「標準的な乳房温存療法の実施要項」をまとめることが出来たが、その成果を広く世に還元させるためにガイドラインを作定することとして2005年3月までに「医療者向け」と「一般向け」の2冊子を完成させることが出来た。 | この2冊子のガイドラインは2000名弱の乳癌学会の認定医に2005年4月初めに配布した。まだ配布直後のため反応を得るに至っていないが貢献度は大きいものと考えられる。 | 世の中よりさらにガイドラインを望む声が大きくなることを予想して、今後出版社を選んで出版を予定し、版権と印税は乳癌学会に委譲することとしている。 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 2005年5月1日朝日新聞の朝刊に厚生労働省が初めて温存療法のガイドラインを作定し、その実施のより統一化された姿を示したとの報道が成された。反響が期待される。 | がん臨床研究 | ||||||||||||
高悪性度骨軟部肉腫に対する標準的治療の確立に関する研究 | 平成14-16年度 | 116,850 | 九州大学大学院医学研究院整形外科 | 岩本幸英 | (ア)四肢発生の高悪性度軟部肉腫に対する現在の標準的治療は手術であるが、その治療成績は未だ不良である。(イ)最も奏効率の高い2剤(IFO, ADM)を用いた補助化学療法の有効性と安全性を評価する第2相臨床試験を計画、開始した。現在症例集積中である。(ウ)本研究によってIFO, ADMによる補助化学療法の有効性が示されれば、第3相試験を経て、四肢発生の高悪性度軟部肉腫に対する新しい標準治療の確立が期待できる。世界標準となる可能性も秘めており、極めてインパクトが大きいと考えられる。 | 本研究の成果を元に高悪性度軟部肉腫に対する治療ガイドラインが定められ、全国に普及することが期待される。実地臨床では頻用されながら軟部肉腫に対して保険適応外であったIFO, ADMが保険適応として認められる契機となった。現時点で世界的に見ても最良のレジメンと考えられるIFO, ADMによる補助化学療法のプロトコールを提示した。 | 我が国における高悪性度軟部肉腫に対する新しい標準的治療の確立が期待され、本症患者の受ける恩恵は極めて大きい。また本研究に附随して新規の分子標的治療の開発も期待できる。 | 19 | 194 | 306 | 3 | 3 | 1(http://www.jcog.jp/study/14_bsttsg/0304.htm) | がん臨床研究 | ||||||||||||
早期前立腺がんにおける根治術後の再発に対する標準的治療法の確立に関する研究 | 平成平成14-16年度 | 106,000 | 九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野 | 内藤誠二 | ア 限局性前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術後、約25-30%の患者にPSA再発を生じること。 イ PSA再発後の治療法として、放射線治療かと内分泌療法のどちらが有用か検証するための臨床試験を開始した。 ウ 限局性前立腺癌における根治術後のPSA再発に対する標準的治療を確立するとともに放射線療法あるいは内分泌療法単独で奏効する患者背景を明らかにできること。 |
併せて行なった日本の限局性前立腺癌の根治手術症例1192例のアウトカム研究では、欧米とほぼ同等な日本の治療成績が示された。また、PSA再発後の治療として、内分泌療法、放射線療法、無治療経過観察がほぼ同率に行なわれている日本の現状が明らかとなった。 | この研究により、前立腺癌の根治術後のPSA再発に対する適切な治療指針が確立されれば、国内外の医療に大きく貢献することが期待される。 | 2 | 0 | 4 | 0 | 0 | 2 | がん臨床研究 | ||||||||||||
固形癌に対する骨髄非破壊的移植前治療を用いた同種末梢血幹細胞移植療法の標準的治療の確立に関する研究 | 平成14-16度 | 57,000 | 九州大学大学院医学研究院・臓器機能医学部門内科学講座・病態修復内科学分野 | 原田実根 | (ア)固形癌に対する同種造血幹細胞移植は実施可能である。(イ)膵癌に対して腫瘍縮少効果がみられ、GVHDとの関連が高かった。(ウ)骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植によって移植片体腫瘍(GVT)効果が誘導された。 | 骨髄非破壊的移植前治療の毒性が高くないため、従来移植適応外と考えられていた高齢者に実施可能である。 | 難治性の固形腫瘍に対する新しい治療オプションとして期待される。 | 48 | 13 | 27 | 1 | 5 | 5 | がん臨床研究 | ||||||||||||
固形がんに対する同種細胞免疫療法を用いた標準的治療法の確立に関する研究〜転移固形腫瘍を対象としたミニ移植の安全性と有効性の検討〜 | 平成14-16年度 | 140,751 | 国立がんセンター 中央病院 薬物療法部 | 高上洋一 | (ア)難治性の腎癌や膵癌などの固形腫瘍に対する有効な治療法開発は急務である。抗がん剤使用量を減らして安全性を高め、かつ強力な同種抗腫瘍免疫効果を引き出すミニ移植の安全性と有効性は、造血器腫瘍においては確立したものの、難治・転移性固形腫瘍においては検証されていない。 (イ)多施設共同試験と国立がんセンター中央病院単独研究を、それぞれ厳正なデータ管理を行って推進した結果、治療の副作用が強く出るのは診断時から転移巣を有する急速進行例や移植時に全身状態の悪い患者であり、これらを欠く場合には、他に有効な治療法のない難治例であっても長期の抗腫瘍効果が得られることが判明した。免疫療法では、客観的に腫瘍縮小効果を証明した例は他にはなく、新たな根治的治療法を開発する貴重な手掛かりになった。さらに付随研究では、従来の免疫療法の開発手法では不可能であった腫瘍縮小を示した患者の検体を直接解析する手法をとることで、標的抗原と効果担当細胞の解明を効率的に進めている。 (ウ)本研究成果は、2004年12月に開催された全米血液学会で6題に分けて発表されるなど、国際的にも多くの注目を集めている。さらに付随基礎研究の成果は、今後の特異的免疫療法の開発にも貴重な知見となる。 |
(1)本臨床研究を遂行する過程で、参加各施設においても臨床試験を推進するための人的基盤作りを積極的に行った。具体的には、若手医師を対象として試験計画書、症例報告書や各種の標準手順書の具体的な作成方法に関する教育会合を多く開いた。 (2)新薬導入に必要な厳正な臨床試験に関する教育講演を班会議の中にも取り入れて、移植領域の医師の啓蒙に努めた。 (3)主要登録施設である国立がんセンター中央病院に研修医あるいは見学者として全国各施設の若手医師やコメディカルを受け入れ、合併症を含めた治療法、患者管理方法や試験管理法を具体的に教示することで治療の均てん化に大きく寄与した。 | 研究の過程で開発した移植領域の臨床試験に必須の各種手順書は、今後の我が国における臨床試験の推進に貴重である。 | 74 | 0 | 40 | 0 | 3 | 2件患者や社会に対する情報公開に努めるために啓蒙シンポジウムを積極的に開催した。 (1)がんの免疫療法と造血幹細胞移植。第17回市民公開講演会。(2004年11月19日、東京) (2)長寿科学振興財団後援 医師向け研修会(15年度 金沢・福岡)、一般向け研究成果発表会(平成15年度 札幌・東京、平成16年度 名古屋・大阪) |
がん臨床研究 | ||||||||||||
悪性脳腫瘍に対する標準的治療法の確立に関する研究 | 平成14-16年度 | 85,200 | 国立がんセンター中央病院脳神経外科 | 渋井壮一郎 | (ア)悪性神経膠腫は予後不良であり、標準的治療法が確立していない。(イ)JCOG脳腫瘍研究グループという脳腫瘍に対する臨床試験の基盤を構築した。(ウ)国外へ発信できる悪性脳腫瘍の治療におけるエビデンス確立という意味で、国内脳神経外科関連学会から注目された。 | Procarbazine効能追加申請の際、本研究の内容が、独立行政法人医薬品医療器総合機構への引用・補足資料として用いられた。 | 国内で脳腫瘍に対する臨床研究を進めるための方法論を提示することにより、この分野の研究の方向づけができた。 | 2 | 1 | 10 | 0 | 1 | 0 | がん臨床研究 | ||||||||||||
子宮体がんに対する標準的化学療法の確立に関する研究 | 平成14-16年度 | 61,000 | 慶應義塾大学医学部産婦人科 | 青木大輔 | (ア)子宮体がんの化学料としてはdoxorubicinとcisplatinがキードラックであるがtaxane系製剤はその単剤による奏効率は両者とほぼ同等。(イ)taxane系製剤とplatinum製剤の併用療法の組み合わせの認容性が高いこと、また将来計画される第III相試験の最適な組み合わせの選択を容易にした。(ウ)現在、子宮体がんの化学療法は卵巣がんの化学療法が流用されるなどevidenceに基づいて行われているとは言い難い。本試験の遂行によって根拠に基づく化学療法の実施に向けての方向性を示した。 | 本研究の内容は日本婦人科腫瘍学会が作成中の子宮体がん治療ガイドラインで反映。 | 本研究の成果が得られれば、将来計画される第III相試験の背景データとなり、現行の標準療法に比較してより認容性の高いと考えられるtaxaneとplatinumの併用療法使用の根拠となりうる。 | 17 | 24 | 36 | 0 | 1 | 2 | がん臨床研究 | ||||||||||||
頭頚部がんのリンパ節転移に対する標準的治療法の確立に関する研究 | 平成14-16年度 | 92,400 | 国立がんセンター東病院外来部 | 斉川雅久 | (ア)機能温存に主眼をおく頚部郭清術(機能温存術)は頭頚部がんのリンパ節転移に対する最も一般的な治療法であるが、機能温存術には多くの術式が存在し、各術式の名称や適応、切除範囲などには大きな混乱が見られ、治療成績の施設間格差を生み出す原因の一つとなっている。(イ)医師がお互いに手術を見学し合い批評し合うことにより切除範囲など術式の細部に関する均一化を図る研究を実施した。また、頚部リンパ節転移に対する治療ガイドライン案を原発巣別・進展度別に作成し、頚部郭清術に関する新たな名称統一案の作成、頚部郭清術に関する新たな術後機能評価表の作成およびこれに基づく術後機能評価を行った。(ウ)わが国の頭頚部がん診療を代表する施設において術式の細部の均一化が推進された。治療ガイドライン案により機能温存術の適応統一が図られた。頚部郭清術の新たな名称統一案を小冊子配布、学会発表、論文発表の形で公表し、国内から大きな反響を得た。新たな術後機能評価表につき検証を繰り返しその有用性について確証が得られたので、今後普及に努めるとともに、これに基づく大規模調査を計画している。 | ○頭頚部がんのリンパ節転移に対する治療に関して、治療方針の決定、治療内容の細部など多くの観点から、施設差の解消に貢献した。特に、通常はなかなかむずかしい外科手術の細部に関する均一化を推進したことにより、参加医師全体の技術向上および医師間の交流促進が得られ、医師の再教育という面でも成果があった。○本研究班で作成した治療ガイドライン案は、今後エビデンスの追加など検討を進めることにより、各学会などで作成中のガイドラインに採用されるよう努力していく予定である。 | 本研究班で作成した頚部郭清術に関する新たな名称統一案および術後機能評価表は、今後わが国における普及が見込まれる。 | 6 | 26 | 26 | 0 | 0 | 1(本研究班で作成した頚部郭清術の新たな名称統一案について小冊子を作成し、国内主要施設[208施設]に配布した。) | がん臨床研究 | ||||||||||||
2型糖尿病患者におけるアスピリンの冠動脈疾患一次予防効果に関する研究 | 平成14-16年度 | 98,200 | 熊本大学大学院・循環器病態学 | 小川久雄 | (ア)アスピリンの臨床効果については、今日まで多くの臨床研究が行われている。RISC研究やISIS-2研究では心筋梗塞再発症数を抑制できたことが報告された。本邦におけるアスピリンを用いた臨床研究としては、我々の行った、JAMIS研究(Am J Cardiol 1999; 83:1308-1313.)により、アスピリンによる心血管イベントの再発抑制効果が日本人でも確認された。これらの臨床研究により、今日ではアスピリンは2次予防として、糖尿病の有無に関係なく国内外で広く投与されている。(イ)予後調査の結果、心血管系事故発生は32症例であり(アスピリン投与群11例、アスピリン非投与群21例)、アスピリン投与群に心血管系事故が少ない傾向にあり、アスピリンが2型糖尿病患者の動脈硬化性疾患一次予防に有効である可能性がある。アスピリンによる重篤な合併症は認められなかった。(ウ)本研究では2500例を超える動脈硬化性疾患を有さない2型糖尿病患者が登録されており、未だ、2型糖尿病患者における動脈硬化性疾患、特に冠動脈疾患について、アスピリンの一次予防効果に対するエビデンスがなく、世界的に本研究は注目されている。 | 現在の日本において、2型糖尿病の罹患率は驚くべき速さで伸びている。糖尿病患者における動脈硬化性疾患は重症例が多く、その治療には多くの医療費が注がれている。一方で、2型糖尿病患者の動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞や脳梗塞は血糖をコントロールしただけでは充分に予防できないことも明らかとなってきた。そのような中、アスピリンという安価な薬剤がこれらの動脈硬化性疾患を予防できれば、患者にとっても、医療機関にとっても福音となる可能性がある。 | 急増する2型糖尿病患者に対する基本的治療方針の大きな転換となるであろう。 | 10 | 21 | 4 | 0 | 2 | 2 | 循環器疾患等総合研究 | ||||||||||||
家庭血圧に基づいた高血圧の至適治療に関する大規模臨床試験 | 平成14-16年度 | 54,000 | 国立循環器病センター内科 | 河野雄平 | (ア)高血圧治療は循環器病予防に効果がある。家庭血圧は外来血圧より臓器障害や予後に強く関連する。(イ)家庭血圧に基づいた高血圧治療の多施設共同無作為介入試験を推進した。厳格な家庭血圧のコントロールが臓器保護に効果的であった。(ウ)本研究は継続中であるが,家庭血圧に基づく最適な高血圧治療についての新知見をもとらすと考えられる。 | 本研究は日本高血圧学会の後援を得た。継続中であるが,その成果はわが国における高血圧治療の資料となり,高血圧治療ガイドラインに反映されると考えられる。 | 家庭血圧に基づいた高血圧治療の無作為臨床試験は,わが国で1件進行中であるが他にはなく,国際的にも重要と考えられる。 | 3 | 6 | 12 | 0 | 0 | 6件。HOSPニュース発行(3回),HOSP研究ホムページ開設,HOSP研究ポスター配布,HOSP研究案内リーフレット配布 | 循環器疾患等総合研究 | ||||||||||||
脳血管疾患の再発に対する高脂血症治療薬の HMGCoA阻害剤の予防効果に関する研究 |
平成14-16年度 | 108,125 | 広島大学大学院脳神経内科学 | 松本昌泰 | (ア)冠動脈疾患を既往する欧米人での臨床試験において、HMG-CoA還元酵素阻害薬が脳卒中発症率を低下させるとの報告がある。(イ)日本人で脳卒中の既往を有する患者において、HMG-CoA還元酵素阻害薬による脳卒中再発予防効果を検証するための研究実施体制を構築し、症例登録・追跡が進行中である。前向きの症例登録による予備調査研究により、虚血性脳卒中(特に非心原性脳卒中)既往患者において、高脂血症が脳卒中の危険因子となる可能性を示した。(ウ)日本人における脳卒中再発と高脂血症との関係を初めて明らかにできたことは、今後の脳卒中制圧において脂質低下療法という新たな治療方針の確立の重要性を示すと同時に、本研究の意義を裏付けるものである。 | 本研究の予備調査による成果は、日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患診療ガイドラインにおける脳梗塞の脂質低下療法の策定に参考となる情報を与えるものと考える。 | 本研究において大規模臨床試験の実施体制システムを構築したことは、今後の医療において質の高いエビデンスを確立するための参考となり、医師主導の大規模臨床試験のモデルケースになると考える。本研究の目的が達成されれば、寝たきりや認知症を含む要介護の原因疾患の第一位である脳血管疾患の予後を改善する効果的な医療技術が確立されることとなり、わが国の国民福祉の向上のみならず、医療費の軽減にもつながることが期待される。 | 2 | 4 | 142 | 0 | 0 | 6(http://jstars.umin.ne.jp/) | 循環器疾患等総合研究 | ||||||||||||
弁置換術後の脳梗塞発症及び脳高次機能異常予防のための標準的抗凝固療法確立に関する研究(JaSWAT-1) | 平成14-16年度 | 175,490 | 国立循環器病センター 心臓血管外科 | 坂東 興 | (ア)僧帽弁置換術後、心房細動のある患者では術後、脳梗塞が多い (イ)ワーファリンのコントロールをINR2.0−3.0と厳格に行ない、バイアスピリンを併用投与することで、どれくらいの頻度で脳梗塞が発症するか検証する (ウ)今回の研究は我が国における弁置換後の至適抗凝固療法を決定するための初めてのprospective randomized studyであり、今後我が国における抗凝固療法の標準化について大いに意義があると考えられる。 |
日本循環器学会で現在弁手術後の抗凝固療法についてはガイドラインを作成中であるが、これらのもとになる資料としては、外国のAHA/ACCのガイドラインしか存在していない。抗凝固に関しては、人種差が大きいことが指摘されているが、これまで、日本人を対象としたprospective studyは存在していなかった。本研究は、我が国における、機械弁による僧帽弁置換後の抗凝固療法のスタンダードとなりうる始めての試験であり、この試験の成果が、今後の我が国の弁置換後の抗凝固療法の基準となりうると考えられる。 |
一般向け発表会や、medical tribunte誌における座談会において、弁手術に関し一般向けに啓蒙事業を行い、機械弁による弁置換後の抗凝固療法の重要性と、起こり得る有害事象とその対策について、一般向けに十分な説明が出来たと考えられる。 |
0 | 5 | 7 | 0 | 0 | 6 ・Developing Academic Surgeon 2(「研究をはじめる前に:ideaをどこで見出すか」「基礎または臨床研究における組織作りの実際」 於:ロイトン札幌 2003年5月16日) ・第1回臨床研究セミナー(「心臓外科における大規模臨床試験」 於:ロイトン札幌 2003年6月6日) ・Developing Academic Surgeon 3(「これまでの心臓血管外科臨床研究の問題点」 於:福岡国際会議場 2004年2月20日) ・長寿科学振興財団一般向け 発表会(於:国立循環器病センター 2004年3月6日) ・第2回臨床研究セミナー(「心臓外科における retrospective study」 於:大阪国際会議場 2004年4月9日) ・Medical Tribune 特別企画 JaSWAT-1座談会 (2005年3月20日:2005年6月掲載予定) |
循環器疾患等総合研究 | ||||||||||||
慢性心不全におけるβ遮断薬による治療法確立のための大規模臨床試験 (H16‐循環器(生習)‐005) | 平成14-16年度 | 93,100 | 北海道大学大学院 医学研究科 循環病態内科学 | 北畠 顕 | (ア) β遮断薬による生命予後改善効果(イ)・心不全におけるβ遮断薬の至適用量・心不全におけるβ遮断薬個別化適正投与の指標・心不全におけるβ遮断薬responderの選別(ウ)・心不全におけるβ遮断薬を適切な患者で至適用量を投与可能となり、個別化医療が可能となり、副作用が少なく、安全で医療経済効率に優れた医療が実現する。 | ・心不全領域における医師主導の臨床試験が可能となる。 ・医療経済効率に優れ、安全性に配慮した個別化医療を実現できる。 ・心不全におけるβ遮断薬投与の投与量、投与方法について、全国的スタンダードを提示した。 |
・心不全の臨床データベースおよび遺伝子データベースの作成 | 5 | 12 | 10 | 1 | 3 | 5 ・患者へのパンフレット作成 ・ホームページ(http://poppy.ac/j-chf/)作成 ・心不全手帳作成 ・心不全啓蒙のための冊子作成・患者用ポスター作成 |
循環器疾患等総合研究 | ||||||||||||
脳卒中・虚血性心疾患臨床と地域疫学のデータベースのプラットフォーム化と分子疫学を基軸とした発症機序の解明に関する研究 | 平成14-16年度 | 160,497 | 国立循環器病センター病院長 | 友池仁暢 | (ア)脳血管障害、虚血性心疾患の成因の共通点として動脈硬化が関与しているが、疾病の発症機序は良く分かっていない。欧米と我が国での両疾患の発症の数に差が生じるのか良く分かっていない。(イ)多食、早食い、不規則な睡眠がメタボリックシンドロームと深くかかわっていること。一般住民の凝固制御因子と線溶因子の活性低値の割合を解析したこと、循環器疾患の遺伝的な危険因子をいくつか同定したこと。 (ウ)凝固線溶系の活性低値率が初めて分かり、循環器疾患に関係するいくつかの遺伝子多型が初めてわかった。 | 本研究で行った生活習慣アンケートが吹田市の基本健康診査の受診票に取り込まれ、本研究のテーマであるプラットフォームの役割を公的にも果たせるようになった。 | OCRシステムを作成し、大量のアンケート処理、データ管理体制が可能となった。 | 86 | 83 | 80 | 0 | 1 | 2 | 循環器疾患等総合研究 | ||||||||||||
知的障害者の社会参加を妨げる要因の解明とその解決法開発に関する研究 | 平成14-16度 | 18,000 | 国立精神・神経センター精神保健研究所 | 稲垣真澄 | (ア)知的障害者の社会参加促進要因について内因と外因に分けた研究は乏しい。(イ)知的障害者の生涯にわたる支援システムの構築を目指し、ICFの考え方による評価法を加えた。(ウ)小児期から成人期まで、社会生活移行も踏まえた支援記録帳を作成することができた。 | 知的障害者健康生活支援記録帳試作版を作成。知的障害のある母親支援のための子育て支援パンフレットを作成。全国500保健所に配布。ICFの概念に基づく社会資源活用アセスメントシートを作成し、就労生活センターに配布。ICFの考え方に沿った質問紙票を作成した。 | 知的障害者健康生活支援ノートを完成し、全国的な普及を図る予定。 | 9 | 2 | 14 | 0 | 0 | 5(発達障害医療に関するセミナーを開催。パンフレット作成。研究報告書をホームページhttp://www.ncnp-k.go.jp/division/ddd/kenkyuhoukokusyo/H15syougaihokenkenkyuu.pdfにて公開) | 障害保健福祉総合研究 | ||||||||||||
精神保健サービスの評価とモニタリングに関する研究 | 平成14-16年度 | 30,000 | 日本医療機能評価機構 | 岩ア榮 | 国外では、アメリカではHealthy People 2000において、「精神障害者の精神科医療への受療率を高める」「自殺率を低下させる」などの項目を挙げ、具体的な目標値を提示している。オーストラリアでは、「精神保健政策」を策定し、政策がどの程度進展しているのかについて、各指標についての全国値ならびに各州の達成度について年度ごとで公表している。ただし、地方分権化が進んでいる国では、全国値を提示するには困難が伴う場合があり、また病床数や医療費などのデータのみの公表のために具体的なサービス内容など公表できるデータや指標に限界があるのも事実である。 その点については、わが国では患者調査や行政報告などがなされており、詳細な分析が可能である。しかし、これらの行政・事業報告などの資料は必ずしも有効活用されている現状にあるとはいえない。そこで、本研究では、指定統計の目的外使用の承認を得て、厚生労働省の患者調査や病院報告などを用いて評価指標の開発(退院率、継続在院期間など)を行った。さらに、調査研究を通して新たな評価指標(再入院率、自殺率経年変化、精神科包括病棟病床数など)の開発・検討を行った。特に、最近の自殺死亡急増が大都市部で顕著である実態や精神科包括病棟動向については、新たな知見であり、学術的にも意義のある研究成果であると考えられる。 |
本研究成果は、平成14年12月に厚生労働省社会保障審議会障害者部会精神障害者分会が公表した「今後の精神保健医療福祉施策について」において柱となっている、「精神保健医療福祉施策の評価と計画的推進」の具体的なモデルの一つとして寄与すると考える。 また、平成15年度の研究成果である「診療報酬上の精神科包括病棟の取得動向に関する調査」に関しては、平成15年10月27日に開催された厚生労働省「第2回精神病床等に関する検討会」において、参考資料として採用された。 | 本研究により、これまで個別に報告されてきた行政調査報告や研究成果などを整理し、都道府県・指定都市の精神保健医療福祉の水準の評価指標を開発するとともに、目標値、実績値、および経年変化について都道府県・指定都市別で比較可能な形で分かりやすく提示できた。以上の研究成果は、地域や国全体でみた精神保健医療福祉の水準を評価する手法(指標)の開発の推進において、貴重な資料を提供すると考えられる。 | 3 | 15 | 15 | 0 | 1 | インターネットによる研究成果の公表を検討中 | 障害保健福祉総合研究 | ||||||||||||
知的障害児(者)ガイドヘルプの支援技術に関する研究 | 平成16年度 | 3、300 | 埼玉県立大学保健医療福祉学部 | 佐藤進 | (ア)知的障害児、者の地域生活を支援する上でガイドヘルプは重要な方法の一つであるということ(イ)しかしながら、身体障害者のそれに比して、義樹上の課題や方法論は必ずしも明確でなかった点を明らかにした。(ウ)障害者自立支援法の上程など、我が国障害者支援策が大きな転換点を迎えつつある中で、今後の地域福祉施策展開の中で、ガイドヘルプの概念を明確にし、加えて求めらっる質量を検討する資料を提供した。 | 障害者支援の方法として、近い将来の介護保険との統合を軸に、総合的な施策展開が予測される中、その中心となる地域生活支援策の中で、ガイドヘルプの位置付けとその展開の方法について資料を提供した。 | 平成15年からの支援費制度の実施の中で、急増したガイドヘルプニーズではあるが、その技術体系は必ずしも明確でなかったが、今後サービスの質量を同定する上で一つの方向を明らかにした。 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 報告書(500部)を作成し関係者に配布する | 障害保健福祉総合研究 | ||||||||||||
障害者のエンパワメント向上のためのスポーツ活動への参加および自立基盤づくりの評価に関する支援研究 | 平成14-16年度 | 14,500 | 川崎医療福祉大学医療技術学部 | 小野寺昇 | (ア)障害者のスポーツ活動バリアフリーが障害者のエンパワメント向上に寄与することが明らかとなっている.(イ)障害者のスポーツ活動の障害者のネットワークの構築がバリアフリーを促進発展させることが明らかとなった.その手段として,インターネット,ホームページ等の情報ハイウェイが最も高い効果が得られることが明らかとなった.(ウ)情報ハイウェイを活用した障害者ネットワークは,障害者のエンパワメントを向上させることを示唆する本研究の成果は,障害者ネットワークへの多大なアクセスとして反響があった. | 障害者ネットワーク(NPO法人)を立ち上げ,全国の障害者組織の活動に関するホームページ上での情報公開を可能にした. | ・自閉症児のための水中運動教室(2回/月)を開催し,健康運動指導士および健康運動実践指導者の育成に発展している. ・障害者水泳教室(1回/月)の開催に発展している. ・公立養護学校の授業支援に発展している. ・特別養護老人施設における筋力トレーニング教室(4回/月)の開催に発展している. ・ふれあいフェスティバルinおかやまの開催に発展している. |
5 | 0 | 33 | 0 | 0 | 障害保健福祉総合研究 | |||||||||||||
障害者のエンパワメントの視点と生活モデルに基づく、具体的な地域生活支援技術に関する研究 | 平成16年度 | 4,000 | 愛知淑徳大学医療福祉学部福祉貢献学科 | 谷口明広 | (ア)エンパワメントという言葉は、米国における黒人の公民権運動に起因するが、その定義は確立されていなかった。(イ)障害者福祉分野におけるエンパワメントを定義し、そのプロセスを提示したことにより、個人と環境の関係を明確にした。(ウ)エンパワメントの定義とプロセスを示したことにより、地域移行プログラムや自立支援に関する分野での大きな反響が期待できる。 | この研究成果をもとに、相談支援事業者による「自立支援プログラム」や関連施設による「地域移行プログラム」が確立されることが予想できる。改革のグランドデザイン案や障害者自立支援法が目指す地域自立への指針に反映されることが期待される。 | 障害をもつ人たちを支援する家族や施設職員、更に養護学校教員等の教育関係者が、エンパワメント・プログラムを理解することにより、リハビリテーション過程にエンパワメント理念が注入されたり、家庭や学校教育に反映されることが大きく期待できる。 | 2 | 5 | 4 | 0 | 1 | 10 予定 | 障害保健福祉総合研究 | ||||||||||||
国際生活機能分類(ICF)の活用のあり方に関する研究 | 平成14−16年度 | 36,000 | 結核予防会 | 仲村 英一 | (ア)ICFについては原理原則的なことは国際的に定められているが、活用法は各国に任せられており、統一的基準はない。 (イ)本研究によって我が国における評価基準を明確にするとともに、障害(生活機能低下)にかかわる全ての人の「共通言語」としてのICFの活用法が、多数例の実態調査にもとづいて確立された。 (ウ)本研究の成果及び、それをもとにICFが既に厚生行政及び地方行政に活用されていることがWHO主催その他の国際会議に報告され、注目をあびている。 |
○障害種別、利用サービスを越えた統一的な障害(生活機能低下)評価のための中核的ICF活用法を確立した。 ○老健局:高齢者リハ研究会報告書の基本骨格となり、老人保健事業見直し検討会及び介護予防に関する各種委員会報告書等にも反映された。この流れのなかで介護保険改定における介護予防は、生活機能低下予防であるとの方向性が明確に示された。 |
ICFは障害者のみにとどまらない「全ての人の生活機能上の問題把握のツール」であることを明らかにし、保健・医療・福祉・介護・教育等の分野で疾病中心の見方から生活機能中心の見方への根本的な転換をはかる流れを作り、大きなインパクトを与えた。 | 9 | 40 | 15 | 0 | 21 | 72 | 障害保健福祉総合研究 | ||||||||||||
精神保健の健康教育に関する研究 | 平成13-15年度 | 15,000 | 山口大学医学部 | 渡辺義文 | ア 精神障害者との交流体験により差別・偏見が修正される可能性が、特に青少年に高い。 イ 学校現場(中学・高校)で精神障害に関する授業、当事者との交流体験学習が施行可能であり、かつ安全・有効である。教師により実施可能な「心の健康教育」プログラムならびに補助教材を提案した。 ウ 本研究は学術的意味よりも、教育・行政に対する意義が高いものと考える。 |
本研究の成果をもとに、学校現場における中・高校生に対する精神障害の普及・啓発プログラムを文部科学省に提示できるものと考えられる。 | 本研究で提案された「心の健康教育」プログラムを全国規模で無料でアクセスできるようにし、多くの中学・高校で実施できるように働きかける予定である。 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 障害保健福祉総合研究 | ||||||||||||
精神疾患の呼称変更の効果に関する研究 | 平成14-16年度 | 21,000 | 慶應義塾大学保健管理センター | 大野 裕 | ァ)精神分裂病という用語は偏見を助長するものであり、そのために病名の告知率が低くなっている。 イ)精神分裂病を統合失調症と呼称が変更され、新病名が一気に広がり、病名告知とそれに基づく当事者中心の治療が可能になった。 ハ)呼称変更が精神疾患に対する偏見の是正と当事者中心の治療に役立つことが国の内外で注目された。 | 統合失調症という新病名の普及がはかれた。 Schizophreniaの用語を、法律用語まで含めて統合失調症に変える可能性が高まった。 統合失調症の治療に役立つ病名告知のあり方に関して全国的なスタンダードとなるマニュアルの基本を作成した。 |
呼称変更が偏見是正と治療に有用であることが国の内外で注目され、国内では学術会議や日本精神神経学会の精神疾患の偏見是正を目指す活動や、政治家やマスコミ、当事者など多領域の人たちによって構成されているアンチスティグマ研究会などの結成に影響を与えた。 国際的にも、世界精神医学会の偏見是正活動に影響を与え、欧米でも呼称変更を検討する動きが現れた。 |
0 | 21 | 17 | 0 | 0 | 障害保健福祉総合研究 | |||||||||||||
難聴が疑われた新生児の聴覚・言語獲得のための長期追跡研究 | 平成14-16年度 | 38 | 東京大学医学部 | 加我君孝 | ア:新生児聴覚スクリーニングで難聴新生児を生後直ちに発見し、6ヶ月には補聴器を装用し教育すれば、3歳で比較すると、その言語力は正常の90%に匹敵する。6ヶ月以後に補聴器を装用させても、言語力はそれ以下になる。 イ:難聴児を就学年齢の6歳で、発見年齢と補聴下の教育開始を0歳、1歳、2歳で比較すると、言語性IQの平均値をみると、0歳で発見した群は、正常児に匹敵する。しかし、1歳、2歳と年齢が遅くなるとそれだけ正常児より次第に遅れる。 ウ:難聴の発見と補聴下の教育開始が0歳群では、就学年齢は言語性IQが正常児と同じレベルに達するが、発見年齢が遅くなると次第に言語性IQの到達レベルが低くなることのデータは、Int.Ped.ORLや国内の学会誌に掲載され大きな反響があった。 |
本研究の成果をもとに、単行本「新生児聴覚スクリーニングのすべて」が主任研究者・加我君孝監修(198ページ)が平成17年1月15日に発刊され、全国の産科医、新生児科医、耳鼻科医、言語聴覚士に読まれつつある。長寿科学振興財団のパンフレットにも掲載され、本研究の成果の普及に貢献している。 | 新生児聴覚スクリーニングによる先天性難聴児の早期発見早期教育が本当に意義があることを、小学校就学の時点で発見の遅れた例と言語性IQを比較して優れていることを臨床疫学的に証明した。新生児聴覚スクリーニングのおかげで、かつては就学年齢になって発見された中等度難聴が早期に発見されることが意義のあることを明らかにした。さらに早期発見では言語障害や自閉症の合併がわからず、就学年齢になって初めて教育の成果が乏しいことがわかるなど新しい問題も提起した。 | 36 | 0 | 46 | 1 | 1 | 感覚器障害研究 | |||||||||||||
ミトコンドリアDNA遺伝子変異による高頻度薬剤性難聴発症の回避に関する研究 | 平成15-16年度 | 20,000 | 東北薬科大学 | 水柿道直 | (ア)ミトコンドリアDNA 1555A>G変異を有するヒトはアミノグリコシド系抗生物質により難聴になりやすい。(イ)ミトコンドリアDNA 1555A>G変異を簡易迅速に検出できるベッドサイド遺伝子診断法を開発した。(ウ)遺伝子診断によるテーラーメイド医療実現に向けての基盤技術の一部を推進できた。 | 長寿科学振興財団が作製した感覚器障害研究紹介パンフレットの中で、その内容が紹介された。 | 実際に遺伝外来を受診した患者の遺伝子診断を行い、ミトコンドリア遺伝子変異を明らかにし、将来的な難聴発症予防に貢献した。 | 1 | 0 | 5 | 0 | 1 | 1 | 感覚器障害研究 | ||||||||||||
強度近視における血管新生黄斑症の包括的治療法の確立 | 平成16年度 | 2,000 | 東京医科歯科大学・医歯学総合研究科 | 大野 京子 | (ア)強度近視眼における血管新生黄斑症にはこれまで有効な治療法は確立されておらず,また自然予後も不良である。(イ)本症における血管新生には機械的伸展による網膜色素上皮細胞の血管新生関連因子の発現変化が関与していること,また血管新生黄斑症の患者に光線力学療法やステロイド剤の後部テノン嚢下投与を施行すると高率に新生血管の閉塞が得られ,視力改善例がみられた。(ウ)これまで有効な治療法がなかった本症に対する治療の可能性を示した点で意義が高いと考えられる。 | 本研究の成果をもとに,近視性血管新生黄斑症に対する光線力学療法を,高度先進医療として申請した。 | 2 | 0 | 4 | 0 | 0 | 1 | 感覚器障害研究 | |||||||||||||
難治性内眼炎の発症機序解明と新しい免疫治療に関する研究 | 平成14- 16年度 | 17,600 | 北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻感覚器病学講座視覚器病学分野 | 大野重昭 | (1) 専門的・学術的観点 (ア)自然界には薬理作用を持つ物質が多数存在する(イ)わが国に豊富に存在するアスタキサンチン、イチョウ葉抽出物に強力な抗炎症効果があることが判明した。MCP-1を過剰に発現させたマウスでは正常マウスに比べ、実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎が増強された。しかし、抗MCP-1抗体を投与したマウスではぶどう膜炎が抑制されなかった。(ウ)本成果はInvest Ophthalmol Vis Sci等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 |
(2) 行政的観点(※1) 平成16年11月25日の財団法人長寿科学振興財団において、研究成果発表を行う。 平成17年1月14日、厚生労働省において、感覚器障害研究中間・事後評価委員会において研究成果を報告。 | (3) その他の社会的インパクトなど(予定を含む)ステロイド徐放剤のインプラント手術、または硝子体内注入手術を行った長期ぶどう膜炎罹患患者全例で炎症の軽快と視力向上がみられた。全身副作用が少なく、かつ治療効果が高い有望な治療法となる可能性がある。 | 7 | 20 | 0 | 感覚器障害研究 | |||||||||||||||
結核菌症の病態解明に基づく新たな治療法等の開発に関する研究: [抗結核キラーTリンパ球・結核殺傷蛋白による病態解明に基づく結核ワクチン (サブユニット-・DNA-・リコンビナントBCG-ワクチン)・化学療法剤の開発 による新しい治療・予防・診断法] |
平成14-16年度 | 170,700 | 独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 臨床研究センター・結核研究部 | 岡田全司 | 1. (ア)BCGワクチンに代わる新しい結核ワクチンはマウス及びモルモットの系に限られている。しかも、その結核予防ワクチン効果はBCGワクチンの10倍程度である。 (イ)我々はカニクイザル(最もヒトの結核感染に近い動物モデル)において著明な結核予防ワクチン効果を示すHSP65 DNA + IL-12 DNAワクチンを初めて開発した。しかも、このワクチンはBCGワクチンの1万倍強力なワクチン効果を示した。 (ウ)このワクチンがサルの結核感染にも有効である事はVaccine等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 さらに、第1回国際結核ワクチン学会(平成15年9月16日 カナダ、モントリオール市で開催)でシンポジストとして選ばれ、このワクチンが極めて高く評価された。 すなわち、BCGワクチンより1万倍強力な我々の結核予防ワクチンは、他の研究室より発表されている結核予防ワクチンより1000倍以上強力な点で、画期的なワクチンを開発したことが大きな学術的意義がある。 さらに、世界で初めてサルの系で有効な結核予防ワクチンを開発したことが専門的・学術的意義がある。 |
1. 平成16年4月26〜29日WHO(World Health Organization)のSTOP TB VACCINE MEETINGメンバーに選出された。このWHO会議でHVJ-liposome/HSP65 DNA + IL-12 DNA ワクチン(BCGより1万倍強力な結核予防ワクチン)を報告。WHOが推奨する世界の最先端の4つのワクチンの一つに選ばれた。このワクチンは日本のみでなく世界の結核対策に貢献し、厚生行政及び厚生労働省の国際協力施策としても極めて重要なワクチンとなる。 |
1. タイ国を中心として、アジアで我々のHSP65DNA+IL-12DNAワクチンの臨床応用計画がある。またタイでPhase I study、PhaseII studyをタイ国の厚生省と計画中にまで発展している。 |
51 | 75 | 83 | 10 | 20 | 3 | 新興・再興感染症研究 | ||||||||||||
2. (ア)結核治療ワクチンはいまだ世界中で開発されていない。 (イ)我々は世界に先駆けて2種類の結核治療ワクチンの開発に成功した。ひとつは上記のHSP65 DNA + IL-12 DNAワクチンであり、もう一つはIL-6 DNA + IL-6 レセプターDNA + gp130 DNAワクチン(アデノウイルスベクター)である。 (ウ)これら二種類の結核治療ワクチンをはじめて開発した成果は、平成16年12月日米医学協力事業結核・ハンセン病専門部会シンポジウム等で発表し、国内外から大きな反響があった。 |
2. このワクチン開発成果は国立病院機構政策医療(54施設)呼吸器ネットワークの10カ年計画に反映された。平成17年3月18日に国立病院機構本部に提出し承認された。すなわち、当国立病院機構近畿中央胸部疾患センターは呼吸器疾患(結核を含む)準ナショナルセンターとして、54施設の呼吸器(結核を含む)専門施設を束ね、日本の結核患者の50%以上、多剤耐性結核患者の70%以上の診療(診断・治療)を行っている。したがってこのワクチンを10ヶ年計画で国立病院機構政策医療呼吸器ネットワークを用いて臨床応用する方針となった。すなわち、厚生行政として多くの国民に実施できる行政施策となり、厚生労働省の将来の新しい結核ワクチンの臨床応用に大きく反映、寄与。 |
2. 我々が開発した新しい化学療法剤は多剤耐性結核にも有効であり、現在ではよい治療法がない多剤耐性結核(中国、ロシアでは結核の30〜20%が多剤耐性結核、日本でも5%が多剤耐性結核)に対し、画期的な治療法となる、極めて大きなインパクトとなる(2005年9月米国ニューオリンズICAACで発表予定)。 |
新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||
3. (ア)マウス・モルモットでワクチンとして有効な72f融合蛋白ワクチンは作製されている。 (イ)我々はこの72f蛋白をコードするDNAをBCGに組み込み初めてリコンビナント72f BCGワクチンを作製した。この結核予防ワクチンは極めて強力で、カニクイザルでも有効であることを明らかにした。 (ウ)このワクチンが強力であることを示す本成果は、平成16年12月日米医学協力事業結核・ハンセン病専門部会シンポジウム等で発表し、国内外から大きな反響があった。 |
3. 初めて報告された、スーパー・スプレッダー多剤耐性結核菌の発見及び、これによる6例の感染事例の発生(病院での)は、厚生労働行政の施策を大きく変えるインパクトを与えた。すなわち平成15年3月18日午後2時〜4時奈良保健所にて厚生労働省結核感染症課課長補佐2名、当岡田全司班の班員当近畿中央胸部疾患センター院長坂谷光則、鈴木克洋部長、(財)結核予防会結核研究所森亨所長等のメンバーで、スーパー・スプレッダー多剤耐性結核に対する協議会が開催され報告。今までのドグマ(多剤耐性結核菌はヒトにうつらない)を根本的に変える新しい発見が報告された。これを基にすべての結核病室は個室化にしていかねばならないとの厚生行政施策の指針の変更に極めて大きく貢献した。 |
3. Japan Medicine誌上(2003年11月14日 全国版)で「次世代結核ワクチンの開発に挑む」としてHsp65+lL-12 DNAワクチンが将来の臨床応用まで計画中の社会的インパクトが大きいトップ記事として取り上げられた。 | 新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||
4. (ア)多剤耐性結核菌は一般的にヒトからヒトに感染しないと考えられてきた。 (イ)ヒトからヒトに感染するスーパー・スプレッダー多剤耐性結核菌を発見した。 (ウ)今までのドグマ(多剤耐性結核菌はヒトにうつらない)を根本的に変える新しい発見である本成果(多剤耐性結核菌もヒトからヒトに感染すること)を平成15年度日米医学協力事業 結核・ハンセン病専門部会等で発表し国内外から大きな反響があった。 |
4. 世界で初めて結核治療ワクチンHsp65 DNA+IL-12 DNA ワクチン及びIL-6関連遺伝子ワクチンの開発成果を基に厚生労働省の結核感染症課の平成17年度研究プロジェクト、「アジア地域での多剤耐性結核の制御」の方針に反映。 |
4. 日経バイオテク(インターネット版)(2003年12月22日 全国版)で、新型結核ワクチン開発、カニクイザルで効果、確認でヒトの結核感染モデルで効果を世界で初めて示した我々のDNAワクチンが社会的インパクトの大きい研究として掲載。 |
新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||
5. (ア)ツベルクリン反応(ツ反)はBCG接種者に陽性となり結核感染特異性に乏しい。 (イ)我々は世界に先駆けてツ反に代わる二種類の新しい結核特異的診断法を開発した。ひとつはESAT-6 + CFP-10のin vitro刺激IFN-γ産生法であり、もう一つはDPPD蛋白皮内反応法である。 (ウ)これらの方法が極めて結核感染特異的な診断法となる本研究成果はAm. J. Respir Crit. Care. Med等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 |
5. 本成果のツベルクリン皮内反応に代わる新しい結核特異的診断法の開発(ESAT-6 + CFP-10 in vitro IFN-γ産生試験)はこの診断キット(Quanti FERON TB-2G)の体外診断用医薬品として認可を厚生労働省が平成17年4月14日行い、全国に普及。 結核集団感染の早期発見の画期的な行政施策となる。さらに、結核発症ハイリスク集団医療従事者、外国からの移民、ホームレス、免疫不全患者などの結核感染早期発見の指針に反映。 |
5. (2003年12月29日 テレビ朝日)「本当は怖い家庭の医学2」で当研究成果の新しい結核ワクチンHsp65+lL-12 DNAワクチンの研究成果が社会的インパクトの大きい研究として紹介。 |
新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||
6. (ア)結核菌殺傷に関与する蛋白は9Kdのgranulysinに限られている。しかもin vitroの実験結果に限られている。 (イ)我々は15Kd granulysinが直接マクロファージ内に入りマクロファージ内結核菌を殺す事を初めて発見した。さらに15Kd granulysin遺伝子導入マウス、9Kd granulysin遺伝子導入マウスを世界で初めて作製し、15Kd granulysinは生体内でも抗結核作用を示すことを初めて明らかにした。 (ウ)15Kd granulysinが抗結核作用を持つ初めての発見をした本成果は2004年9月28〜10月1日につくば市で開催された第5回 World Congress Vaccine and Immunologyシンポジウム等で発表され国内外から大きな反響があった。 |
6. BCGよりも強力な新しい結核ワクチン リコンビナント72f BCGワクチンの成果(マウス、モルモット、サルでHsp65 DNA+IL-12 DNAワクチン同様BCGよりも強力な結核予防ワクチン効果)はHsp65DNAワクチンに対する評価と相まって平成16年2月18日WHOよりWHO Stop TB Partnershipとして岡田全司が選出された。すなわち、日本の厚生行政のみでなく、厚生行政と連携して、WHOにおける世界の結核行政に大きく貢献中である。 |
新興・再興感染症研究 | ||||||||||||||||||||||||
7. (ア)多剤耐性結核に有効な治療法はない。 (イ)多剤耐性結核に有効な新しい化学療法剤を開発した。 (ウ)この化学療法剤が種々の多剤耐性結核菌に有効であることを示唆する本成果は本年(平成17年)の学会で発表を計画。約50年ぶりの新しい化学療法剤となる。 |
新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||||
8. (ア)ヒトの生体内結核免疫や生体内抗結核効果を測定するモデルは発表されていない。 (イ)我々はヒト生体内結核治療モデルSCID-PBL/huマウスの作製に成功した。これを用い上記の新しい結核ワクチン開発及び新しい結核化学療法剤の開発に成功した。 (ウ)このモデルがヒト免疫応答を介して結核治療ワクチン効果、結核化学療法剤が作用することを示唆する本研究は平成15年4月WHO(World Health Organization)Stop TB Vaccine Meeting等で発表され、国内外から大きな反響があった。 |
新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||||
9. (ア)TLR(Toll like レセプター)の結核感染における重要性はin vitroのみである。 (イ)我々はスーパースプレッダー多剤耐性結核菌がTLRの認識機構をエスケープする結果を発見。またTLRのシグナルを伝える免疫担当細胞内の蛋白MyD88とTRIFの遺伝子を消したマウスでは結核感染が増強することを発見した。 (ウ)スーパースプレッダー多剤耐性結核菌がTLRの認識をエスケープして感染性を示すことを示唆する本成果は日本感染症学会(東日本、新潟平成16年10月)で発表され全国の結核専門医、感染症専門医より大きな反響があった。 |
新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||||
10. (ア)今まで結核ワクチンに用いられたベクターは発現効率や安全性に問題があった。 (イ)(a)我々が開発したHSP65DNA+IL-12DNAワクチンに用いた、HVJ-liposome及びHVJ-エンベロープは発現効率や安全性に極めて優れていた。GMP(Good Manufacturing Practice)の臨床応用できるベクターとして極めて有用であることを明らかにした。 (b)今までのAdeno Associated Virus Vector(AAVベクター)の1000倍以上の発現効率が良いAAV2/5ベクターを開発し、画期的なAAV/HSP65DNAワクチンを作製した。 (c)乳幼児でも好んでワクチン接種が受けられる、経口ワクチン(無毒化Listeria菌をベクターとした)を世界で初めて開発した。 (ウ)これらの(a)(b)(c)の成果は、Vaccine(2005)、Inf. and Immunity.等に掲載され、国内外から大きな反響があった。さらに、ハーバード大学医学部で平成15年9月特別講演をし、大きな反響があった。 |
新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||||
赤痢アメーバ症等寄生虫症ハイリスク群に対する予防法等の開発に関する研究 | 平成14-16年度 | 76,000 | 慶應義塾大学医学部 | 竹内 勤 | (ア)本研究テーマでこれまでに判明していた事は下記のとおりである。(1)わが国では赤痢アメーバ症の届出が増加しつつあり、感染のハイリスク群として各種施設の利用者、特に知的障害者などの施設利用者には高率に感染が拡大していた。延べ700名に調査を行い、重症者施設等で高い場合には50%以上の陽性率がみられた。(2)対策立案に関しては、化学療法の他、感染予防対策が必要である事に鑑み、モデル施設と協力し、施設内感染予防ガイドラインを作成し、公表した。(3)診断法の確立等のためEntamoeba disparの細菌等を加えない培養系が開発でき、葉肉細胞中の増殖促進因子の性状も部分的に明らかできた。(4)ペルオキシレドキシン遺伝子のクローニングを行い、これによりアメーバ種の鑑別ができた。(5)150-kDaの新規表層レクチンを見い出した。このレクチンはワクチン能を肝膿瘍モデルにて示した。(6)Locus1-2、等を対象とした遺伝子多型解析法を作成できた。これにより施設内アメーバ感染は施設ごと単一な株に由来している事を見い出した。(7)新規化学療法剤開発のため、含硫アミノ酸代謝、嚢子形成/脱嚢機構の研究を行い、オリザリン等が見い出された。オリザリンはリード化合物となる可能性があるものと思われた。 | (1)前期研究班にて作成した感染予防ガイドラインをモデル施設と共に改訂し、公表した。(2)感染が繰り返し起こる重症者施設で、効果的に感染を抑圧で要る薬物治療法を策定し、現場で実施可能なモニタリング法の導入を行った。(3)東京都の関連委員会において研究概要の説明を行った。その結果、都健康安全研究センターの参加が促進され、より包括的な実態調査が可能となり、成果は都関連施設に還元された。 | 本研究班の成果により、初めて施設内アメーバ感染が具体的な形で解明され、当該分野で世界をリードする業績を挙げた。また、研究成果は公開シンポジウムやマスメディアによって取り上げられ、都健康安全研究センターとの共同研究を通して東京都の衛生行政施策にも反映された。更に今後、知的障害者等の社会復帰の促進に伴い、健康状況の把握、改善に寄与するものと想定される。 | 25 | 18 | 68 | 0 | 2 | 2 | 新興・再興感染症研究 | ||||||||||||
(イ)本研究で加えられた事は下記の通りである。(1)都関連施設の調査では、施設間で極めて大きな赤痢アメーバ感染率の差異があった。アメーバ感染がない場合でもジアルジア等の原虫感染があった事より、環境衛生上の問題が多くの施設にある。(2)モデル施設との共同作業で感染予防ガイドラインの改訂を行い、公表した。(3)繰り返し感染がおこる重症者施設でも確実に感染制圧ができる薬剤投与法が策定できた。(4)無症候性持続性感染が高率でみられた施設から分離されたアメーバは赤痢アメーバとE. disparの中間の性質を示した。(5)E. disparの完全無菌培養系が確立できた。(6)150-kDaレクチンの遺伝子が2種あった。その組み替え蛋白のC末が血清診断に有用であった。(7)脱嚢、脱嚢後発育の阻害剤を複数見い出した。メチオニン代謝、G蛋白のプレニル化等にかかわる諸酵素の阻害剤も見い出した。鉄-イオウクラスター生合成等に関しても新知見を得た。(8)遺伝子の多型解析をタイの分離株等に応用したが、わが国の分離株とは著しい差異があった。GPI遺伝子による多型解析の迅速化も検討した。 | 新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||||
(ウ)本研究の専門的・学術的意義は下記の通りである。(1)E. disparの完全無菌培養系の確立は世界で初めてで、高い評価を得た。(2)150-kDaレクチンも本研究班が世界に先駆けて同定、分離したもので、同様に高い評価を得ている。(3)4種の遺伝子を用いた多型解析法も初めてのもので、わが国のアメーバ感染経路の解明に大きく貢献した。これにより施設内感染に関わるアメーバ株のトレーシングが可能となった。 | 新興・再興感染症研究 | |||||||||||||||||||||||||
ビブリオ・バルニフィカスによる重篤な経口感染症に関する研究 | 平成14-16年度 | 74,800 | 国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部 | 山本茂貴 | (ア)肝臓に基礎疾患を持つ人はビブリオ・バルニフィカスの経口感染で敗血症を起こし死亡することがある。(イ)肝硬変、アルコール性肝炎、肝癌などがリスク因子となる。20℃以上の汽水域で生息し、貝類を中心とした魚貝類に分布していた。(ウ)ビブリオ・バルニフィカス感染症についての発生動向の調査と同時に診断・治療に対する一定の指針を加えた。健康危機情報として厚生労働省に提出した。 | 熊本県では県下の保健所において肝硬変等の基礎疾患のある人が夏場の魚貝類生食に関してビブリオ・バルニフィカスの危険がある旨の情報提供を行っている。 | 3 | 2 | 7 | 0 | 0 | 2 | 新興・再興感染症研究 |