研究課題 実施期間 合計金額
(千円)
主任研究者所属施設 氏名
(1)  専門的・学術的観点
 このテーマで、すでに分かっていること
 本研究で加えられたこと
 本研究成果の専門的・学術的意義
(2)  行政的観点(※1)
 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。
(3) その他の社会的インパクトなど(予定を含む) 発表状況 特許 施策 (4) 普及・啓発活動件数 研究事業名
原著論文(件)※2 その他論文(件) 口頭発表等(件) 特許の出願及び取得状況 反映件数※3
アルツハイマー病発症の分子機構におけるコレステロールの役割の検討 平成14-16年度 82,597 国立長寿医療センター研究所 アルツハイマー病研究部 道川 誠 (ア)体循環系におけるコレステロール代謝・輸送系については、多くの知見の蓄積があった。
(イ)中枢神経系でのコレステロール代謝・輸送系については未解明であった。本研究は、(1)これらを明らかにし、(2)神経細胞におけるコレステロールの意義及び、(3)コレステロールとアルツハイマー病病理との関連を明らかにした。
(ウ)(1)体循環系から独立した中枢神経系のコレステロール輸送は、脳内アポリポ蛋白Eによってアイソフォーム特異的に担われていること、(2)アルツハイマー病病理発現にコレステロールは中心的役割を果たすこと、等が明らかになり、(3) 脳内コレステロール代謝調節によるアルツハイマー病発症予防への可能性が示された。
本研究で得られた新たな視点が契機となり、複数の大学・病院で脳内コレステロール代謝とHDLコレステロール代謝に着目した研究が開始されている。脳内コレステロール代謝を調節する方法を開発し、アルツハイマー病発症を予防することで国民生活の向上に貢献が期待できる。 アルツハイマー病発症機構とコレステロール代謝変動との関連に関する研究及び、脳内におけるコレステロール代謝機構の全貌を明らかにする研究で、わが国における当該分野をリードする形に発展している。国民になじみのあるコレステロール代謝と、関心の高いアルツハイマー病発症機構との関連を示した点に意義がある。 29 9 25 0 0 7(http://www.nils.go.jp/)研究の成果が分かるホームページのURL、市民団体・町内会等主催の講演会 (5回)、シンポジウム開催(1回)。 長寿科学総合研究
骨粗鬆症におけるテーラーメード医療の確立に関する研究 平成14-16年 95,977 健康科学大学 折茂 肇 ア.骨粗鬆症に対する易罹患性や合併症である骨折の発症には個人差がある。 イ.骨粗鬆症の新しい臨床的指標や治療効果の判定方法が開発された。ウ.骨粗鬆症におけるテーラーメード医療確立のための総合的な視点が得られた。 平成17年度に日本骨粗鬆症学会と財団法人骨粗鬆症財団において策定予定の、骨粗鬆症予防と診療のガイドラインの作成のための基礎資料となった。 骨量のみではなく、微細構造や蛋白質、さらには遺伝子レベルでの骨脆弱性規定因子の意義が明らかにされ、骨粗鬆症の概念自体を見直すことにつながる可能性がある。 40 100 100 1 1件予定(骨粗鬆症予防と診療のガイドライン) 1(東京骨を守る会を通じた啓発活動) 長寿科学総合研究
心筋梗塞、脳硬塞の予知因子の同定と予知法の開発に関する研究 平成14-16年度 113,610 京都大学大学院医学研究科循環器内科 北 徹 ア、hsCRP等の炎症マーカーが急性心筋梗塞等発症リスクを高め、また、急性冠症候群発症2-3時間の早期において心筋トロポニンTの上昇を認めることが示されている。細菌性心内膜炎では特異的なマーカーはない。抗血小板療法の心筋梗塞等の予防効果が証明されているが、十分な血小板抑制効果が得られない患者に心筋梗塞等が多発することが示されている。現在広く臨床の場で用いられている血小板機能モニター法はない。
イ、急性冠症候群発症時に血清可溶型LOX-1(我々が見いだした酸化LDL受容体)濃度がピークとなっていることを見いだした(Circulation, 2005印刷中)。閉塞性動脈硬化症患者でも重症度に応じて血清可溶型LOX-1値が上昇することを見いだした。我々が見いだしたもう一つの酸化LDL受容体SR-PSOXは細菌性心内膜炎の弁組織に強発現し(ATVB, 2004)、血管新生に関与することを見出した(BBRC, 2005)。血小板機能モニター法を確立し、睡眠時無呼吸症候群で血小板凝集性が亢進していること、CPAP療法による呼吸状態の改善により凝集性亢進が正常化することを見いだした(論文執筆中)。
ウ、急性冠症候群時の血清可溶型LOX-1上昇の感度、特異度は、これまでの指標に比べはるかに高く、さらに、心筋トロポニンTよりも早期に上昇することより、今後、急性冠症候群の標準マーカーとなる可能性がある。さらに、閉塞性動脈硬化症や細菌性心内膜炎では、これまで特異的マーカーがなかったが、それぞれ可溶型LOX-1およびSR-PSOX値がマーカーとなる可能性がある。さらに睡眠時無呼吸症候群は血管イベントのリスクであるが、その原因の一端が血小板凝集性の亢進にある可能性がある。なお、LOX-1の研究では、総説をCirculation Research誌に発表し、抗血小板療法に関する総説をAnnals of Medicine誌に執筆中である。
本研究では、今後の医療、厚生労働行政に大きく影響する多くのシーズを得ることが出来た。現実の医療の場で用いられる指標に育てていくことが今後の課題である。以下の課題の解決は国民医療に非常に大きな貢献が期待されうる。
(1) 血清可溶型LOX-1値の急性冠症候群発症マーカーとしての確立
(2) 血清可溶型LOX-1値の閉塞性動脈硬化症マーカーとしての確立
(3) 血清可溶型SR-PSOX値(可溶型の存在はすでに把握している)の細菌性心内膜炎マーカーとしての確立
(4) 睡眠時無呼吸症候群における抗血小板療法の必要性の検討
(5) 抗血小板療法を受けている慢性安定期ハイリスク患者(1,000-2,000例)の抗血小板療法の効果をモニターし、同時に血清可溶型LOX-1、SR-PSOX値等を測定し、3年間予後を追跡するという前向き研究を開始した。
本研究により、我が国における抗血小板療法に十分な効果が得られない(アスピリン抵抗性等)頻度やそのイベント発症に対する影響、および、血管イベント予知因子としての血清可溶型LOX-1値、血清可溶型SR-PSOX値の意義を明らかにできる可能性がある。
血清可溶型LOX-1値の簡易測定法を開発中である。 睡眠時無呼吸症候群患者に対する抗血小板療法の必要性は検討項目である。 30 5 706 0 0 50(主として学会等における講演) 長寿科学総合研究
情報ネットワークを活用した行政・歯科医療機関・病院等の連携による要介護者口腔保健医療ケアシステムの開発に関する研究 平成14-16年度 32,076 新潟大学大学院 医歯学総合研究科 河野正司 (ア)要介護高齢者に口腔ケア・歯科治療を実施することにより誤嚥性肺炎の減少、ADLの改善等が認められる。(イ)実際の介護の現場で、関係者の連携のもと要介護者に対する適切な口腔ケア等を提供していくための方策を明らかにすると共に、これを支援するための摂食障害要介護者用標準工程表(クリニカルパス)、口腔ケアマニュアル、お口の体操ビデオ、情報提供のためのWebページ「要介護者口腔ケアネットワーク」等を作成した。(ウ)要介護者への口腔ケアの提供に関する社会学的研究はほとんど例が無く、各種学会等で発表を行った際に高い評価を得ている。 第3回医道審議会歯科医師分科会歯科医師臨床研修検討部会(平成16年9月28日)において医療機関外での研修の重要性を示す例として本研究の成果の一部が報告された。また、平成16年度に厚生労働省の補助により新潟県が実施した新潟県中越地震被災高齢者を対象とした口腔ケア推進事業において、本研究班が作成したマニュアル等が担当者研修の資料として採用されたほか、介護予防市町村モデル事業、要介護者歯科保健推進事業等を実施している都道府県、市町村において本研究の報告書や資料等が活用され、これらの事業の効果的な実施に貢献した。 本研究班が平成14年度に実施した要介護認定申請者の口腔実態調査の結果が一部マスコミにも取り上げられ、要介護者が抱える口腔の問題を提起した。(2)で記述した地方自治体関係者以外の介護関係者、歯科医療関係者等の現場担当者の関心も高く、業界紙等で研究内容が紹介された他、関係者から多くの問い合わせが寄せられている。また、研究報告書、クリニカルパス、マニュアル等をデータ提供しているウェブサイトからは各コンテンツが週あたり20〜40件のペースでダウンロードされている。
平成17年 11月 には全国歯科保健大会に併せて行われる行政歯科保健関係者を対象とした研修会で研究成果を報告予定。
0 4 7 0 6 19
(http://www.dent.niigata-u.ac.jp/oral-care/)
長寿科学総合研究
肺癌および慢性肺気腫原因遺伝子の研究 平成14-16年度 18,738 東北大学病院 老年・呼吸器内科 山谷 睦雄 (ア)アルファ−1アンチトリプシン欠損症は日本人肺気腫でほとんど存在しない。日本人肺癌の抗酸化酵素関連原因遺伝子が不明。(イ)日本人肺気腫にTIMP-2、CLCA1、IL-1、ADRB2遺伝子が関連すること。日本人とエジプト人で遺伝子が異なること。日本人肺腺癌発症にヘムオキシゲナーゼ−1(HO-1)遺伝子が関係すること。(ウ)これらの遺伝子が肺癌および慢性肺気腫原因遺伝子であることがJ Med Genet等の英文誌に発表された。 本研究成果は日本呼吸器学会の「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」(第2版)に紹介され、欧米と異なる日本人の慢性肺気腫および慢性閉塞性肺疾患原因遺伝子の候補遺伝子が存在する可能性が紹介された。また、解明された原因遺伝子をもとに、将来の肺がん・慢性肺気腫の予防・治療方法確立が期待される。 本研究成果が全国に普及して、肺癌および慢性肺気腫、慢性閉塞性肺疾患の新たな候補遺伝子研究におけるわが国当該分野をリードする形に発展している。 6 11 10 2 0 1(http://www.jrs.or.jp/jrs45/greeting.html) 長寿科学総合研究
高齢者手術の安全性の向上及び術後合併症の予防に関する研究 平成14-16年度 31,821 国立長寿医療センター 深田伸二 (ア)高齢者術後合併症予防に関する重要性は認識されているが、広く受け入れられた指針はまだ存在していない。(イ)呼吸器合併症 高齢者周術期呼吸管理に関する指針案が提示され、血清HMGB-1が発症予測や重症度指標になり、それを低下させることで術後経過が良くなる可能性、非侵襲的肺胞気管支系炎症診断法のMicro-probing法やreal time PCRによる菌血症迅速スクリーニングシステムでの高齢者術後肺合併症の早期診断、プロバイオティクスの周術期投与による感染性合併症減少の可能性が示された。肺動脈塞栓症・深部静脈血栓症 日本人術後に高率に無症候性に発症し、アスピリン予防投与が有用であること、「DVT・PE予防のためのプロトコール」による減少の可能性が示された。肝不全 高齢者手術時肝庇護の重要性、術後肝不全予防のための胆道ドレナージの必要性が示された。術後せん妄 「術後せん妄の手引き」が作成された。基礎研究でもこれら高齢者手術時のDVT・PE予防および肝庇護、術後呼吸器合併症など術後感染性合併症対策の重要性が示された。(ウ)高齢者術後合併症のなかで重要な呼吸器合併症、深部静脈血栓症及び肺塞栓症、術後肝不全、術後せん妄に対して、高齢者手術の安全性向上を目的とした、予防・早期発見のための指針案および提言ができた。 本研究における高齢者術後の合併症に対する新しい早期診断・治療法及び術前評価と予防に関する指針により、高齢者手術の安全性が向上し、術後合併症や入院期間低減、退院後の要介護状態の軽減が期待される。 本研究の術後合併症グレード分類が今後の高齢者外科研究に活用されることにより、各合併症の定義や重症度が統一され、いろいろな高齢者外科研究間の比較検討が可能になる。また、現在本合併症グレード分類を取り入れた別の高齢者外科研究も進行中。 11 41 33 0 0 1 長寿科学総合研究
老年病に対する成長ホルモン補充療法の有効性に関する研究 平成14-16年度 14,338 神戸大学大学院医学系研究科 千原和夫 ア 成長ホルモン(GH)は加齢とともに減少する可能性がある イ 日本人高齢者におけるGH分泌能が明らかとなった。下垂体に器質的疾患がみられないGH分泌不全者にGHを投与したときの効果が明らかとなった。GH分泌不全の動脈硬化に及ぼす効果があきらかとなった。 ウ 成果の一部がJCEM等の雑誌に掲載され,反響が大であった。 間脳下垂体機能障害調査研究班でも一部報告され、成人GH分泌不全症の診断の手引きの改訂に反映された。 本研究成果について、多くの反響や問合わせがあり、一部製薬企業のウェブサイトにも本研究内容が掲載された。 53 9 22 0 1 3 長寿科学総合研究
ヒト胚性幹細胞(ES細胞)を用いた「寝たきり」高齢者に対する再生医療の開発に関する研究 平成14-16年度 110,061 京都大学大学院 医学研究科 内分泌代謝内科 伊藤 裕 ア このテーマで、すでに分かっていること
我々自身の研究によりマウスES細胞より血管を構成する内皮細胞と血管平滑筋細胞の双方に分化可能な、我々が“血管前駆細胞(vascular progenitor cells; VPC)と命名した細胞が同定されていた。
イ 本研究で加えられたこと
1.ES細胞由来VPCの将来の臨床応用をめざして、霊長類であるサル、更に日本初のヒトES細胞を用いた本研究により、ヒトES細胞からのVPCの同定と単離に成功した。
2.ヒトVPCから分化させた発生初期内皮細胞および血管平滑筋細胞が、体外で継代大量増幅可能であることが明らかになり、これらの細胞を生体に移植することで効率よくヒトES細胞由来の血管を再生させることが可能であることが示された。
3.これらの細胞の混合移植により寝たきり病態の動物モデル(褥創モデル、脳卒中モデル、下肢壊疽モデル)において治療効果が得られることが示された。
4.独自に開発した人工血管基材に、ヒトES細胞由来VPCを播種し、拍動刺激を加えることにより、生体血管の階層性を有する人工血管の構築が可能であることが示された。
5.ヒトES細胞由来VPCを用いたin vitroヒト血管発生分化系を用いて、マイクロアレイ法により、ヒト血管発生分化に関連する遺伝子の網羅的解析を可能とするデータベース構築がなされた。
ウ 本研究成果の専門的・学術的意義
本研究課題は日本初のヒトES細胞を用いた研究であり、ヒトES細胞を用いた研究のプロトタイプとして、以下に示すような成果が得られたことにより、血管再生医療にとどまらず、ひろく再生医療開発研究へのヒトES細胞の応用の方向性が明確に示された。
1.ヒトES細胞からの目的とする臓器構成細胞の幹/前駆細胞の分化法の開発
2.生体に移植可能な分化段階の細胞の同定とその移植法の開発
3.寝たきり病態に対する再生医療からのアプローチ法の確立
4.生体工学へのヒトES細胞の応用の方法論の確立
5.ヒトES細胞由来幹/前駆細胞を用いたin vitro分化系を用いた、再生制御遺伝子の同定と再生薬剤の探索法の開発
本研究は、わが国におけるヒトES細胞の医学応用研究推進の体制づくりのスタンダードを提供した。すなわち、ヒトES細胞使用研究施設の整備、研究員の養成あるいは使用研究申請に関するノウハウなどが、本研究の推進によって示された。 本研究成果は今後のヒトES細胞の研究ひいては再生医療の推進につながることが期待される。 9 0 212 30 2 3件(教育講演など) 長寿科学総合研究
高齢者の施設・在宅における終末像の実証的検証および終末期ケアにおける高齢患者の自己決定のための情報開示のあり方に関する研究 平成14-16年度 37,615 名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻(発育・加齢医学講座老年医学) 葛谷雅文 ア)病院の形態・種類により終末期の医療行為に特徴がみられることが分かっている。イ)在宅・認知症高齢者グループホーム・介護老人保健施設の終末期ケアに対する方針や特徴が明らかになった。ウ)全国介護老人保健施設大会で発表を終え、大きな反響を得た。国内外の学術誌に投稿中である。 居宅サービス、認知症高齢者グループホーム及び介護老人保健施設の関係者により、それぞれの場所での終末期ケアのあり方について議論が深まっていくものと考えられる。それにより、高齢者終末期ケアの死亡場所別のガイドライン策定の基礎資料となると考える。 国民が終末期ケアに関して自己決定を行う上で不可欠な正確でわかりやすい情報が提供された。また、こうした情報は、海外の施政者らが各国で同様の調査を行うための貴重な情報となりえる。 11 9 4 0 3 5 長寿科学総合研究
摂食・嚥下障害患者の「食べる」機能に関する評価と対応 平成14-16年度 11,933 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座 才藤栄一 (ア)嚥下前咽頭進行を特徴とする咀嚼嚥下という様式が明らかになってきたが、臨床的意義の検討は乏しい。(イ)健常者に比して嚥下障害者、高齢者の嚥下前咽頭進行は深く誤嚥の危険を高めていた。評価では適切な2種の負荷法が同定でき、対処法では頭部屈曲位、食物形態では温度での変化がすくない物性が適していた。(ウ)嚥下障害への適切な対応が強く求められている医療現場で、評価基準や対処法として注目を集めている。 臨床現場での咀嚼嚥下負荷手順として、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「嚥下造影の標準的検査法(詳細版)」に採用された。 食べる機能は、高齢障害者の最後の楽しみであり、その際、咀嚼を伴った嚥下に対する理解が必須であり、臨床的意義に直結した検討は、訓練法開発や嚥下障害食開発に結びついて展開中である。 3 55 69 0 2 63 長寿科学総合研究
舌機能評価を応用した摂食嚥下リハビリテーションの確立 平成14-16年度 16,481 広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 先端歯科補綴学研究室 赤川安正 (ア)摂食嚥下障害のリハビリテーションにおいて口腔期,とりわけ舌機能の賦活化が必要であることが臨床的に示されている。(イ)この舌機能を評価するために,ディスポーザブル・プローブを用いた小型の舌圧測定器が開発できた。また,臨床応用に向けた標準値の作成,リハビリテーションへの応用の可能性が加わった。(ウ)要介護高齢者における舌圧と低栄養,食形態との関係,さらに,機能的口腔ケアにより舌圧が高まることが示され,摂食嚥下の口腔期における舌機能の評価の重要性を示すことができた。 島根県における平成15,16年度介護費用適正化特別対策事業の維持改善サービス調査研究事業では口腔内の評価として本研究において開発された舌圧測定器を使用して口腔内機能評価が行われた。 医療用具としての製品化を目指し、舌圧測定器の開発を継続し口腔機能評価および摂食機能の評価として社会に普及させる予定。 3 3 13 1 0 1 長寿科学総合研究
脳卒中患者の失認・失行と生活障害に関する研究 平成14-16年度 6,651 東京都老人総合研究所介護・生活基盤研究グループ 高橋龍太郎 ア.失認・失行を合併すると注意力低下などの生活障害が起こる。 イ.病態や機能低下への関心低下や認識低下がみられる。 ウ.注意や関心の刺激よりも意識の階層性を考慮した対策が必要である。 ・高次脳機能障害の主要症候であるNeglectの重症度を測定する実践的スケールを導入しその有用性を示した。 ・右大脳半球損傷(脳卒中)では、動作障害や空間認知の問題に加え病気の認識にも大きな問題を持っていること、それが生活障害を悪化させている可能性を明らかにした。 5 8 10     1(脳卒中患者の失認・失行と生活障害に関する研究ワークショップ2004.9.25) 長寿科学総合研究
要介護状態に応じた介護サービスに関する実証研究ー立案された介護サービス計画の質の評価に関する研究 平成14−16度 33,771 名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座 植村和正 ア ケアマネジメントによるサービス提供に対する利用者の満足度、あるいは個別の介護サービスに対する効果など イ 介護サービス計画によって選択される介護サービスの種類が経年的に減少していく傾向にあること ウ 介護サービス計画立案の傾向やその問題点の検証となった。 ・要支援、および要介護1に認定されている高齢者に対する、福祉器具や介護サービスの提供が与えた効果の検証が可能である。 本研究において作成されたケアマネジメントシステムが全国で活用され、そこから得られたデータの活用によりシステムの基本的な概念の妥当性が検証される。それにより、ケアマネジメント方法論の確立に対する寄与が期待される。 5 10 8 0 0 1 長寿科学総合研究
在宅高齢者に対する訪問リハビリテーションのプログラムとシステムに関する研究 平成14−16年度 108,540 国立長寿医療センター 研究所
生活機能賦活研究部
大川弥生 ア)我が国における訪問リハビリテーション(以下リハ)の本格的スタートは介護保険開始後とみてよく、具体的プログラムシステムも確立されていず、その効果も明らかでなかった。
イ)訪問リハは現行の「通院・通所不可能な重症者の機能訓練」ではなく、「実生活の場での利点を生かした活動自立訓練」へと位置づけた。また高齢者の生活機能低下について「廃用症候群(生活不活発病)モデル」と「脳卒中モデル」との類型化ができた。
ウ)本研究成果は訪問リハのあり方のみでなく、リハ全般及び生活機能低下の対応への指針を明らかにしたこととして大きく注目されている。
・廃用症候群モデルと脳卒中モデルの類型化はリハビリテーション(以下リハ)のみでなく、介護予防の対象が廃用症候群であるとターゲットを明確にするための基礎となり、介護予防に関する各種行政施策に大きく反映された。
・平成15年度の介護報酬改定においてで訪問リハが「活動向上訓練主体」と明確になるとともに、その他のリハ体系の大幅見直しの基礎資料となった。
・平成16年の高齢者リハビリテーション研究会中間報告、老人保健事業の見直しに関する検討会中間報告及び介護予防に関する各種委員会報告書等に本研究におけるリハビリテーションに係る考え方が反映された。
?本研究成果は具体的事例提示も含めて一部マスコミで報道され、一般的にも広く啓発され、訪問リハのみでなく、リハビリテーション(以下リハ)を訓練室での機能回復訓練という誤解をとき、正しく理解・活用をしてもらう流れを作った。
・廃用症候群モデルと脳卒中モデルは、リハのあり方、介護保険サービスの活用のあり方を大きく変える契機となっている。
6 30 24 0 8 103 長寿科学総合研究
超強力サンドイッチ型 超音波モータを用いた パワーアシストスーツの実用化 平成14-16年度 122,143 国立大学法人 東京農工大学 遠山茂樹 ア.本パワーアシストスーツは高齢化の介護の為のものであり、従来は介護者保護のために腰やひざのサポータがあるのみでこのようなマルチ能動的なものはない。
イ.本研究では、初めて介護者の力を補助、保護するスーツを開発し、介護にきわめて有効で有ることを示した。特に腰とひざに大きな力がかかる重筋作業をスーツが効果的に補助し、下肢のアシストにはきわめて有効であった。
ウ.本スーツはウェアラブルロボットの一種である。ウェアラブルロボットは、他の研究機関でも開発例があるが、本システムのように軽い装着感と滑らかな出力のものは本システムだけであり、その学術的意義は大きい。特に福祉工学シンポジウム2004では、きわめて高い評価をいただき、最優秀講演賞も受賞した。
日本機械学会の機素潤滑設計部門のヒトメカ研究会において主任研究者が委員長を務め、本システム利用時のガイドラインの作成、安全性の確保などの作業に着手した。これは人とロボットが共存する時の重要なガイドラインとなると期待される。 日経本誌に大きく取りあげられるなど高い社会インパクトを与えつつある。マスコミからの取材十数件、一般の利用を考えている方からの連絡二十数件と社会からの期待はきわめて高い。 10 5 10 3 2 20 長寿科学総合研究
高齢者の社会参加に関連する要因の解明と支援システム構築に関する研究 平成14-16年度 26,517 桜美林大学大学院 国際学研究科 老年学専攻 長田久雄 ア 社会参加、社会貢献は高齢者の心身の健康や生活の質の維持増進に効果があるにもかかわらず、定年直後にボランティアなどを通して社会貢献をする準備をしていない人が8割を超える。

イ 社会参加を促進するために行政では既存の支援を促進するともに、地域社会機能の再生強化が求められ、高齢化社会の変化に対応できる支援システム、サービスの再構築とともに、若年期からの支援システムの構築も必要であることが明らかとなった。

ウ 社会参加の効果が明らかになったことから、今後は、その支援方法の研究に焦点化してゆく方向づけが明確にされたと考えられる。
社会参加の促進・妨害要因が明確になり、それに基づく支援システム案が考察されたので、具体的施策立案の際に参考とすることが可能と考えられる。 今回の成果報告書の行政期間等への配布により、提案されたモデルの活用を具体的な形で促すことが可能となる。 5 7 30 0 0 30 長寿科学総合研究
高齢者の筋・骨格系の痛みに対する鍼灸及び徒手的治療法の除痛効果に関する基礎的および臨床的研究 平成14年度〜16年度 38,792 名古屋大学環境医学研究所 水村和枝 ア.痛みの神経機構の理解は皮膚の痛みを中心として大きく進歩したが、関節や筋の痛みについての実験的研究は国内外ともに極めて少なく、筋硬結やトリガーポイント、関連痛など、筋肉痛・関節痛に特有な機構についてはまったく未解明である。また、鍼灸・各種徒手的治療法についての基礎研究は、鍼麻酔が一世を風靡した一時期を除き、きわめて低迷している。
イ. 基礎研究では、ラットを用い、1)ECC負荷により筋圧痛覚過敏(遅発性筋痛)が出現すること、この筋圧痛覚過敏出現時期は130週齢の動物でも7週齢の動物と差が無いが、痛覚過敏からの回復が遅れること、加齢動物(80,130週齢)では筋圧痛閾値が高い傾向があり、これに一致して腓腹筋電気刺激による屈曲反射の誘発閾値は加齢ラット(110週齢)で有意に高いことを明らかにした。2)鍼・徒手療法で治療点として良く使われるトリガーポイント様の限局した痛覚過敏部位がこのモデルの筋に生じることを、逃避反射筋電図を指標に明らかにした。3)ECCに虚血または繰り返し寒冷ストレスを負荷することにより慢性筋痛モデルを作成できた。この慢性筋痛覚過敏状態では繰り返し筋神経刺激に対する屈曲反射筋電図のwind-up様の増大がみられ、これがNMDA受容体拮抗薬(MK-801)で抑制されたことから、脊髄の興奮性増大が関与していることが推定された。また、4)ECCにより痛覚過敏状態にある筋の細径線維受容器活動を記録し、熱感受性のあるポリモーダル受容器の機械感受性が亢進していることを明らかにした。この受容器の活動がECC負荷後の筋痛覚過敏に関わっていることが示唆された。5)筋支配無髄求心神経の脊髄内終枝の密度、広がりなどは皮膚、内臓のそれの中間的なものであることを明らかにした。また、筋内神経分布を免疫組織化学的に明らかにした。6)カラゲニンやcomplete Freund's adjuvantによる筋炎症、シスプラチンによる神経因性疼痛状態でASIC, 各種ATP受容体の発現が変化することを明らかにした。また、カラゲニン炎症により脊髄後角ニューロンの受容野が遠隔部へも拡大することを明らかにした。筋からの放散痛と関連した現象であると考えられる。7)神経損傷(坐骨神経絞扼モデル)によるニューロパチーで、皮膚のみならず筋も痛覚過敏状態になること、筋のミオシン重鎖アイファフォームが変化し、その変化が坐骨神経絞扼手術後に筋の伸張を行うことにより改善されることを明らかにし、神経因性疼痛治療の1つの可能性を示唆した。8)ヒト筋痛モデルでは、筋バイブレーションにより肘関節最大伸展時の疼痛感を軽減し、関節可動域を改善する効果が見られた。バイブレーション時にH波の抑制が起こることを見いだした。また、9) 皮膚表面麻酔下において各種先端径のプローブを用いて圧痛覚閾値測定を行い、そのときの圧の深部への伝達程度を三次元有限要素法を用いてコンピューターシミュレーションにより検討し、筋痛覚測定には先端直径2mm以上の大きなプローブを用いる必要があることを明らかにした。臨床研究では、1)腰痛、頚部痛を持つ高齢者に対しトリガーポイント鍼治療を実施し、腰部痛ではSHAM鍼治療よりもトリガーポイント鍼治療が統計的に有意に有効であることを明らかにした。また、伝統的経穴治療よりもトリガーポイント鍼治療がより有効であることも明らかにした。頚部痛ではまだ例数が少ないが、トリガーポイント鍼治療がSHAM鍼治療や伝統的経穴治療と比べて明らかな効果を示した。2)高齢膝痛患者に対し徒手、運動療法を実施し、全体的健康感の改善が見られた。
ウ.今まで欠落していた筋痛モデルが作成され、筋痛の検出法が考案され、その理論付けもおこなわれた。これらの方法は今まで立ち後れていた筋痛研究に大いに役立つと考えられる(作成されたモデルはそのようなものとして学術雑誌(J. Physiology)のPerspectiveで紹介された)。また筋痛の末梢、脊髄メカニズムが一部明らかにされた(筋C線維受容器の機械反応性亢進の証明は世界で初めて)。加齢によるその変化も一部明らかになった。鍼灸治療のRCTが実施されたのは意義が大きい。これに必要なSHAM鍼が考案され、今後の活用が期待される。
腰痛、頚部痛などの鍼灸治療にトリガーポイントを使用することにより、より強く長い効果が得られることが明らかになった。より多く施設で多くの症例で検証したのちに、鍼灸治療のガイドラインとして利用できる可能性がある。 鍼灸治療の有効性についてのRCTは少なく、本研究はその数少ないものとして評価できる。また、本研究で考案されたSHAM鍼は、鍼灸治療の有効性を科学的に証明する良い手段となると考えられる。 7 43 90     2 (市民公開講座、国際ワークショップ) 長寿科学総合研究
高齢者の口腔保健の維持増進に関する研究 平成15−16年度 14,265 東京歯科大学 石井拓男 (ア)口腔ケアと誤嚥性肺炎についての報告が多い (イ)医師・看護師の口腔ケア経口摂取への関与が必要であり、口腔ケアを含んだクリティカルパスが有効であった。成人歯科保健事業は8020達成に有効であった。(ウ)医科歯科連携の有効性を示した 口腔ケアと経口摂取を急性期から慢性期にクリニカルパスに組み込むことで入院期間の短縮に結びつく。成人保健事業に歯科健診を入れることは8020達成に効果的である 高齢者の口腔ケアと経口摂取そして継続的な歯科健診の実施は、さらなる介護制度を構築するのに有効となる。     3       長寿科学総合研究
高齢者の口腔乾燥症と咀嚼機能および栄養摂取との関係 平成15-16年度 7,606 大阪大学大学院歯学研究科 野首孝祠 (ア)咀嚼の客観的評価法は,ピーナッツによる篩分法であった.(イ)正確で簡便な検査用グミゼリーを用いた咀嚼能率検査法を確立した.(ウ)咀嚼機能の客観的な評価が可能となり,これを用いた治療効果の判定や疫学的研究が可能となった. 咀嚼機能評価の健康保険導入への重要な基礎資料が得られた.研究の一部は咀嚼能力検査法のガイドライン(日本歯科医学会雑誌,2005年4月)に掲載された.2005年5月には,専門学会(日本補綴歯科学会,参加者約2000名)において,咀嚼能率検査法に関するシンポジウムにおいて,成果の一部を公表する予定である. 咀嚼能率検査システムを開発し,広く普及させることによって,医療のみならず,高齢者や障害者への福祉等にも貢献する.すなわち,病院,福祉施設などにおける咀嚼機能評価とそれに基づいた食事の選択(ふつう食,きざみ食,流動食など),食事指導に当システムを用いる.また,最近増えている「噛めない」児童に対する,咀嚼機能の発育や咀嚼訓練の評価にも利用する. 2 1 22 0 0 2 長寿科学総合研究
老化及び老年病関連遺伝子同定を目指した
遺伝疫学研究
平成15年度〜16年度 39,726 愛媛大学医学部老年医学講座 三木哲郎 ア 老化及び老年病に関連するいくつかの候補遺伝子が報告されている。
イ GNAS1遺伝子rs7172多型と飲酒との交互作用が高血圧発症に関連することが再現性をもって確認された。POU2F1遺伝子およびFGF1遺伝子が晩発性アルツハイマー病の有意なリスクファクターとなることが示された。
ウ 今までに報告された高血圧感受性遺伝子は、再現性が得られないものが殆どであったが、本研究成果でGNAS1遺伝子多型と高血圧との相関が再現性をもって確認されたことは、その有意性を立証するものといえる。また、晩発性アルツハイマー病に関しては、以前より報告されていたFGF1遺伝子の有意性を再確認するとともに、あらたな候補遺伝子としてPOU2F1遺伝子を見いだした
・個別予防・医療の実現に向けて有用なエビデンスが蓄積された。
・多因子疾患の感受性遺伝子を同定する上で、遺伝因子と環境因子それぞれの直接効果のみならず、両者の交互作用を十分に加味する必要性が示された。この解析手法は、近年、多くの研究成績で取り入れられ、全国的スタンダードとなっている。
・本研究での一連の過程(バンキング−多型解析−統計解析)を礎とし、「えひめバイオバンク」が実現に向けて稼働し始めた。
他大学との共同研究ネットワークを構築しし、本邦では最大規模の遺伝疫学コンソーシアム(2万人コホート)を確立した。 17 0 32 0 3 5 長寿科学総合研究
腎薬物トランスポータの遺伝子機能解析を基盤とした高齢者の医薬品適正使用推進に関する研究 平成15-16年度 49,700 京都大学医学部附属病院 薬剤部 乾 賢一 (ァ)in vitro実験系においてヒト型トランスポータが種々の薬物を輸送することが示され、これらトランスポータが薬物腎排泄に関与すると考えられていた。しかし薬物腎排能の変動とトランスポータとの関連は不明であった。(イ)腎機能低下患者の腎生検組織では各トランスポータが異なった発現変動を示し、さらに有機アニオントランスポータhOAT3の発現量とアニオン性抗生物質セファゾリンの消失速度との間に有意な相関が認められた。(ウ)トランスポータ発現量が薬物動態を制御する因子であることを示した本研究成果は、薬物腎排泄能の個体間及び個体内変動機構を解析するうえで重要な情報である。 本研究成果は、高齢者や腎機能低下患者の個別投与設計法を確立するための重要な基礎情報となった。 腎機能低下患者に対する投与設計において血清クレアチニン値並びにクレアチニンクリアランスが必ずしも良好な指標とならないことを示し、これら腎機能検査値に基づく従来の薬物投与設計法の問題点を指摘した。さらに薬物に応じた検査マーカーの必要性を提唱するとともに、トランスポータ機能変動を考慮した薬物投与設計の可能性を示した。 15 25 17 2 1 1.http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~yakuzai/kenky.html 2. 日本薬学会第124年会においてシンポジウムを企画。3. 日本薬剤学会第18年会を開催した。3. 腎と生活習慣病フォーラムで講演。4. 「腎機能別薬剤使用マニュアル」を刊行。 5. 第27回生体膜と薬物の相互作用シンポジウムを開催予定。 長寿科学総合研究
蛋白質のフォールディング異常に着目した、分子シャペロンによる神経変性疾患の根本的治療法の開発 平成15-16年度 12,068 熊本大学大学院医学薬学研究部 水島 徹 ァ 分子シャペロン誘導剤が医薬品として有用であることが示唆されていた。
イ 漢方薬から、複数の分子シャペロン誘導剤を発見した
ウ 分子シャペロン誘導剤は、分子シャペロン研究において重要なツールとなる
アルツハイマー病などに、分子シャペロン誘導剤は有効であることが期待される 今後もこのようなスクリーニングを継続し、より有効な分子シャペロン誘導剤の発見が期待される。 3 3 15 0 3 3 長寿科学総合研究
老人性肺炎予防の新戦略−Evidence Based Medicine確立のための大規模研究 2003-2005 13,082 東北大学病院 大類 孝 ア 高齢者肺炎の発症には、誤嚥が関与するイ 降圧剤のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は、嚥下機能を改善し、高齢者肺炎の予防効果を有する ウ 誤嚥性肺炎を繰り返す高血圧患者には、ACE阻害剤投与が有効である 学会および研究会を通じ一般の開業医及び勤務医に対し、高齢者肺炎の治療および予防に関する啓発がなされた。 2006年に英国から出版予定の老年医療関連成書が出版予定(Principles and Practice of Geriatric Medicine, 4th Edition:Aspiration Pneumonia) 0 8 5 0 0   長寿科学総合研究
高齢者のソマトポーズとエネルギー代謝に及ぼす新規ホルモン グレリンの役割と臨床応用 平成15-16年度 86,390 国立循環器病センター研究所 寒川賢治 (ア)下垂体からの成長ホルモン(GH)分泌低下は、ソマトポーズと呼ばれ、老化促進因子の1つと考えられている。(イ)GH分泌促進因子受容体の内在性リガンド;グレリンは、強力なGH分泌促進作用および摂食亢進作用を有し、これらの作用は加齢による影響を受けない。(ウ)本研究事業での基礎的研究成果は、米国内分泌学会およびその関連雑誌などで発表され、大きな反響を得ている。臨床研究においても、胃切除患者へのグレリン補充療法、人工変形性股関節置換術周術期患者を対象にした第II相臨床試験を開始している。 第I相臨床試験によりグレリンの臨床効果と安全性を確認。創薬を目指したグレリン研究は、老化予防を推進し、高齢者の医療保険制度の見直しや修正案を検討する上で有用な基礎資料となり得る。 ソマトポーズ治療薬としてのグレリンの臨床応用は、高齢期に生じる寝たきりや代謝性疾患を予防し、超高齢化社会における国民の医療費負担の軽減や長期にわたる健康の享受に繋がると期待される。 22 89 86 4 2 4 長寿科学総合研究
運動・栄養による骨量減少予防効果に関する縦断的疫学研究―骨粗鬆症予防への遺伝子多型別のストラテジー 平成15-16年度 31,065 国立長寿医療センター 安藤富士子 ア.いくつかの遺伝子多型について骨密度との関連が報告されているが、統一された見解は少ない。ビタミンD受容体遺伝子多型でCa摂取量や若年者の運動と骨密度との関係が異なる、という報告があるが、他の骨密度関連候補遺伝子多型については運動、栄養との関連はほとんど報告されていない。イ.18種の遺伝子多型について骨密度との関連を明らかにした。また、運動と骨密度との関連に影響を与える遺伝子多型15種、栄養と骨密度との関係に影響を与える遺伝子多型16種を新たに発見した。ウ.遺伝子多型と骨密度との関連についてJ Mol Medなどに公表した。骨密度に運動・栄養が及ぼす効果に対する遺伝子多型の影響についても明らかになったものから順次公表中である(第7回アジアオセアニア老年学会 2003、日本老年医学会 2004など)。 遺伝子多型と運動・栄養の組み合わせの中には骨量推定値が2倍異なるものもあり、今後これらの結果を論文化して公表すると共にこれらの遺伝子多型の組み合わせることによって運動・栄養の骨粗鬆症予防効果の強い遺伝子多型を明らかにし、骨粗鬆症予防のオーダーメイド診断のためのSNP診断キットを作成する予定。 骨粗鬆症の遺伝子診断と遺伝子多型別の骨粗鬆症予防のための運動・栄養オーダーメイド処方のための特許申請、製品化について、遺伝子関連企業からのofferがあるなど関心が高まっている。 3 16 16 0 0 2 長寿科学総合研究
ステロイドシグナル経路を分子標的とした新しい老年病の予防・治療法の開発 平成15-16年度 47,020 東京大学医学部附属病院 井上 聡 ア ステロイドの作用は核内の受容体を介するが、その老年病との関連は不明な点が多い。 イ ステロイドの新しい標的分子、共役分子、作用機構を老化と老年病との関連で多数明らかにした。 ウ 新しい作用機構、標的分子に関して、国際的な一流専門誌に報告し、疾患との関連で国内外の注目を浴びた。   本成果として得られたステロイドの作用機構、応答遺伝子は、老年病の治療と診断、創薬の標的としての応用が期待される。 11 25 70       長寿科学総合研究
高齢者糖尿病治療と健康寿命に関するランダム化比較研究 平成15-16年度 58,850 東京都多摩老人医療センター 井藤英喜 (ア)高齢者の糖尿病治療が健康寿命の延長につながるかは不明(イ)治療介入3年目では強化治療が健康寿命延長につながるとは言えない。運動が認知機能低下を抑制する。(ウ)高齢者糖尿病の治療と健康寿命の関係を世界ではじめて検討した。 この種の研究の世界的水準に達するにはさらに数年の追跡が必要であるが、完了すれば高齢者糖尿病の治療のエビデンスを提供し治療ガイドラインを作成に貢献が可能。 いわゆる生活習慣病といわれる糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満などの高齢者における治療効果を検証できることから、この研究の成果の最終的な解析結果は、大きな関心を呼ぶと期待される。   44 71 0 0 なし 長寿科学総合研究
Dorfinによる老年期神経変性疾患の治療法の開発 平成15-16年度 62,061 名古屋大学大学院医学系研究科 祖父江元 (ア)老年期神経変性疾患においては病変部位にユビキチン化封入体が出現し、蛋白質品質管理機構の破綻による異常蛋白質の分解障害が病態に重要な役割を果たしている。
(イ)Dorfinはパーキンソン病・アルツハイマー病・筋萎縮性側索硬化症などの老年期変性疾患のユビキチン化封入体に幅広く存在し、これらの疾患の原因蛋白質のユビキチン化と神経細胞保護に関与する蛋白質品質管理機構の一員である。Dorfinの活性増強により疾患モデル動物の運動障害を改善することができた。
(ウ)Dorfinが幅広い老年期神経変性疾患に関与することを示唆する本成果はAM.J.Pathology、JBC等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。
本研究により老年期神経変性疾患における神経保護にDorfinが幅広く関わることが明らかとなった。Dorfinによる治療法や危険因子としての可能性の今後の研究のさらなる進展により、疾患概念の再構築、テーラーメイド医療や予防医療への応用など、本人のみならず家族・社会への負担が大きな老年期神経変性疾患の保健医療の向上につながると期待される。 ユビキチン・プロテアソーム系をターゲットとする治療戦略は、将来の老年期神経変性疾患治療において重要な位置を占めるものと予想されるが、Dorfinによる治療はこの治療戦略の先駆けとなるもので当該分野をリードする形に発展している。             長寿科学総合研究
高齢者の終末期を支える地域ケアシステム構築に関する研究 平成15−16年度 12,068 聖路加看護大学看護実践開発研究センター 川越博美 (ア) 訪問看護ステーションで行われている高齢者の終末期ケアの実態は既に報告書にされた。 (イ)グループホーム、小規模ケアホーム、家での看取りを専門とする訪問看護ステーションにおける高齢者の終末期ケアのプロセスと要因が明らかになった。またその結果から既存の在宅ケアチームと緩和ケアチームが協働して終末期ケアを行う地域ケアシステムを提言した。 (ウ)韓国で開催されたHome Care Conferenceでこのモデルを発表し、アジア諸国の地域ケアモデルになるとの評価を受けた。 ・グループホームや小規模ケアホームにおける訪問看護ステーションからのサービスの拡大が期待できる。
・家での看取りに重点を置いた専門的な訪問看護ステーションの設置の促進につながるものと期待される。
聖路加看護大学21世紀プCOEプロジェクトでこのモデルを使って、都内2地区において家で死ねるまちづくりを行っている。 0 0 2 0 0 0 長寿科学総合研究
高齢化社会に適応する人工関節の開発
―MPCポリマーによる長寿命人工関節に関する戦略的研究ー
平成15-16年度 28,699 東京大学・医学部附属病院 中村耕三 ア 人工関節の弛みは、その長期予後を決定する深刻かつ重大な合併症である。
イ 関節摺動面のナノ表面処理により長寿命型人工関節を開発できるという知見を得た。
ウ この研究成果はNature Materials誌、新聞、雑誌に掲載されまた、NHKの国際ニュースとして世界21カ国語で特集を組まれるなど、国内外より大きな反響があった。
・人工関節の長寿命化により、再置換術を防止し、高齢者を含む国民の健康の維持・増進への貢献が期待される。
・弛み・再置換手術による入院・リハビリテーションを防止し労働力の確保に貢献が期待される。
・我が国独自の技術による画期的な開発による、当該分野での発展が期待される。
長寿命型の人工関節が国内外で実用化される。 7 10 27 2 2 5 ( http://www.h.u-tokyo.ac.jp/ortho/) (http://bmw.mm.t.u-tokyo.ac.jp/ishihara/) 長寿科学総合研究
介護報酬改定が地域における介護サービスの質に与える影響に関する統計的研究(H15−長寿−023) 平成15年から平成16年 12,406 国立保健医療科学院 筒井孝子 ア.要介護高齢者や介護支援専門員の介護給付にどのような影響を与えるかは、今後の介護保険制度の運営や介護サービスの質の向上にとって重要である。
イ.平成15年度の介護報酬の改定が要介護高齢者の介護サービスの購入やその状態像の変化に影響を及ぼしたか否かを明らかにした。 ウ.介護サービスの種類別の利用と高齢者の状態の経年的な変化量との関係を分析した研究は、ほとんどなく、先駆的、独創的な研究といえる。
平成15年からの分析結果をもとに、現在厚生労働省老健局の介護予防スクリーニング小委員会において、予防給付対象者の選定手法の検討が行われた。(平成16年9月15日,10月4日報告) 今回、用いた統計手法については、国外でも注目され、申請者は2000年の第53回アメリカ国際 老年学会において、シンポジストとして「Measuring the Nursing Care Needs of Elderly People-The Structure and Function of the Nursing Care Needs Certification Program-」の題名で講演した。
2001年10月には、『14thAnnual Conference Aged & Community Services Australia』においても、本研究 に関連する内容の基調講演を行っている。
8 4 9   1   長寿科学総合研究
「在宅介護の質」:評価尺度の開発および介護負担との関連について 平成15-16年度 9,026 国立長寿医療センター研究所
長寿看護・介護研究室 (現:長寿政策科学研究部)
荒井
由美子
(ア)在宅介護の質」を評価していくことは、重要であるが客観的な指標を作成することは困難である。(イ)看護師が、観察方式により、「在宅介護の質」を客観的に評価する方法を開発した(ウ)Donabedianが提唱したケアの基本構造に準拠した「在宅介護の質」評価法が開発され、それに関する論文が老年医学雑誌に受理された他、関連研究がInt J Geriatr Psyなど欧文誌に掲載された。 作成した「在宅介護の質」評価法は、「不適切な処遇」「適切な着衣」「衛生と介助」「段差解消」などの下位尺度を兼ね備えており、平成17年4月よりO市医師会訪問看護ステーションなどでは、訪問看護記録にこの項目を取り入れることで、利用者の状態を継続的に評価する試みを開始した。 在宅介護の質を、客観的かつ総合的に評価する評価尺度は、世界的に見ても数少ないため、K県やS市の訪問看護ステーション等からの問い合わせもあり、わが国の当該分野をリードする形に発展している。 15 6 7 0 0 1
(研究成果についてはWeb登録済)
長寿科学総合研究
介護予防事業の有効性の評価とガイドラインの作成 平成15-16年度 19,166 福島県立医科大学医学部 安村誠司 ア 有効性のある介護予防事業が十分に明らかになっていないこと、及び、ガイドラインがないこと
イ 転倒・骨折予防、閉じこもり予防の効果を科学的に評価した
ウ 介護予防事業のエビデンスを科学的に明らかにしたことは、今後の事業推進上極めて意義深い
本研究の成果は、介護保険制度改革おける地域支援事業における「閉じこもり予防・支援マニュアル」作成の基礎資料となり、マニュアルのたたき台となった。 初年度(平成15年度)の研究報告書で「介護予防事業が十分に評価されず実施されている」実態が明らかになったことにより、その後の介護予防事業実施における「評価」の重要性が認識される契機になった。 0 2 1 0 1 1(http://www.fmu.ac.jp/Welcome-s.html) 長寿科学総合研究
ケアマネジャー向け住宅改修の研修プログラムの開発 平成15〜16年度 14,522 国立保健医療科学院 建築衛生部 鈴木 晃 (ア)ケアマネジャーの住宅改修サービスについての研修ニーズが高いこと (イ)ケアマネジャーを対象とした場合の研修獲得目標は、ケアマネジャーの役割がニーズ発見やディマンズとの調整を含めたアセスメントにあるという認識、およびその役割遂行に必要な視点と技術であること。またアセスメントを行う視点と技術を獲得する研修方法として、開発した事例提供ビデオを活用した演習が効果的である。 (ウ)本研究は実際的な開発研究の性格を有するため、学術的意義はその開発根拠に関するデータである。ケアマネジャーを対象とする研修の獲得目標を設定するため、その業務関連実態と改修結果とを関連させたデータを初めて提示した。 ・複数の自治体の「介護支援専門員現任研修(基礎I)」において、本研究において作成したプログラムが活用された。
・複数の自治体の「福祉用具・住宅改修研修事業」において、本研究において作成されたプログラムが活用された。
・その他複数の保険者における「ケアマネジメントリーダー活動支援事業」「介護サービス適正化実施指導事業」等において、本研究により作成されたプログラムが活用された。
本研究により開発した研修用教材(事例提供用ビデオ)を、全国の自治体等に送付し、当該プログラムの全国的な普及が期待される。 1 8 6   9   長寿科学総合研究
気管内痰の自動吸引器の実用化研究 平成15−16年度 76,182 大分県立病院
神経内科
法化図陽一 ア)気管内の痰の吸引は用手的に行うことしか方法がなかった。
イ)極めてシンプルな構成によって持続的に気管内痰の大部分を自動的に吸引排除するシステムを完成させることができた。また、臨床使用に耐える能力と安全性を確保した。
ウ)自動吸引装置の実用化は、世界初の成功であり、在宅人工呼吸管理(HMV)のみならず、急性期管理での人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防や、院内感染対策としても有効であると期待される。
HMV患者の家族外吸引の問題への解決の目処がついた。また身障者施設等での気切患者の介護を行う道も開かれた。
(本年3月に厚生労働省においてデモンストレーションを実施)
4月17日に日本ALS協会東京支部にて本研究成果の紹介がなされた。本年度の難病看護学会での教育口演が予定されるなど、多くのHMV関係者の注目を集めている。 2 1 3 4   2 (http://www3.coara.or.jp/~makoty/index.htm) (http://square.umin.ac.jp/intrac/) 長寿科学総合研究
音声聴取改善を目的とした新しい両耳補聴方式の開発(H-15長寿-029) 平成15年度 − 16年度 19,368 東北大学大学院医学系研究科 神経・感覚器病態学講座 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 川瀬哲明 ア)多帯域分割両耳分離聴の検討は過去に1件の報告があるが、今回行なったような、上向性マスキングの軽減を目的とした2帯域分割補聴に関する検討はない。 イ)○低域にエネルギーの大きな入力音があるときに、2帯域分割補聴が特に有効。○先行母音のホルマント周波数との関係では、第1ホルマントと第2ホルマント間の周波数を分割周波数として2帯域に分割した場合に、両耳分離補聴の補聴効果が大きい。○両耳間時間差を適切に設定することで、良好な音像定位が可能。○両耳分離補聴の適応。ウ)日本聴覚医学会誌、日本音響学会、音響に関する国際学会などで発表し、蝸牛基底板における上向性マスキングに対する有効な対策の1つとして、国内外から大きな反響を得た。 より良い補聴効果の実現は、高齢者の聴覚コミュニケーション改善、社会参加推進として、その意義は多きい。高齢者、難聴の社会参加が期待される。 次世代の補聴器が備えるべきオプション機能の1つになると期待され、 実用化へ向けた産学共同研究推進が検討予定。 4 6 9 1 0 東北大学大学院医学系研究科ホームページ中の耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野の紹介、同電気通信研究所ホームページ中の先端音情報システム研究分野の紹介のなかで、本研究への取組みを紹介している。 長寿科学総合研究
老人精神疾患患者に及ぼす家族の感情表出の影響に関する研究 平成14-16年度 16,847 大阪府立大学 社会福祉学部 三野善央 (ア)統合失調症、うつ病などでは家族の感情表出(EE)が疾病の経過に影響を及ぼすことが明らかになっていた。
(イ)高齢統合失調症者、うつ病者での家族のEEの影響を明らかにし、家族心理教育マニュアルを開発した。また,うつ病心理教育マニュアルを開発し、心理教育の効果を評価した。また認知症での家族のEEの国際比較研究を行った。
(ウ)高齢うつ病者、統合失調症者での家族のEEの影響を明らかにした研究は世界で初めて、国際学会で注目された。認知症の家族EE研究は国際共同研究に発展した。
本研究班で開発した統合失調症家族心理教育マニュアル、うつ病家族心理教育マニュアル、ビデオなどが広く活用され、統合失調症、うつ病家族心理教育が全国に拡大した。これらは高齢者の統合失調症、うつ病の再発予防につながり、医療費の適正化が期待できる。また、認知症でのEE研究はこれからの認知症家族心理教育に貢献していくものと期待される。 平成17年の精神障害者リハビリテーション学会において、本研究成果の臨床実践の普及を計る。 30 19 18 0 3 26 長寿科学総合研究
寒冷・豪雪地域におけるデイサービスの効果に関する研究 平成14-16年度 11,672 新潟大学医学部保健学科 西脇友子 通所サービスの効果を身体的,精神的,栄養的面から量的に調査した先行研究をみつけることができなかった.85歳以上の通所介護利用者で要支援と要介護1の人の要介護度の悪化因子は低アルブミン値であることが明らかとなった。また、通所介護利用頻回利用群で貧血,血清アルブミン値が高い傾向にあったことを考えると超高齢者の要介護度防止には通所介護が栄養管理にとって有効な手段であると考えれる。筋量や握力は通所介護利用・非利用で変化に有意差はなくかった。前腕・下腿の筋量が有意に低下していたことを考えると,超高齢者においては日常生活活動そのものがリハビリとなっていると考えられ,超高齢期のリハビリや通所介護のメニューに示唆を与える可能性がある。 調査を実施した旧大和町の調査参加者の健康管理と通所介護施設の業務改善等の貢献にとどまっており、十分な成果が上がっていない。 一部の介護保険施設から成果に対する問い合わせがあった。 2 0 0 0 0 0 長寿科学総合研究
先天性心疾患における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションによる拡大術の短・長期予後に関する多施設共同研究 平成14-16年度 76,400 国立循環器病センター 小児科 越後茂之 (ア)海外を中心に、大血管の狭窄に対するバルーンやステントを用いたそれぞれの拡大術の単独施設における成績の報告はみられる。(イ)多施設共同研究共同研究を実施し、後方視的および前方視的検討を行って、バルーン及びステントの治療成績についての比較を行った。(ウ)先天性心疾患における大血管狭窄に対するバルーンとステントの選択基準、使用バルーン径その効果、長期予後を綿密に比較検証することによって、これらに対するカテーテルインターベンションの適応や使用器具の選択基準が明確になった。 大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションの適応や使用器具の選択基準が明確になった成果をもとに、先天性の肺動脈および大動脈縮窄に対するカテーテルインターベンションの治療指針を作成した。この治療指針は、日本小児循環器学会の小児カテーテルインターベンションのガイドライン(2005年12月完成予定)のなかで、厚生労働科学研究の成果として掲載され、全国に普及して、安全カテーテルインターベンションの普及に貢献する。 大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションが、治療指針に基づいて適切に実施されれば、患者に負担が少ない治療法によって効果的な治療が可能になり、先天性心疾患の小児にとって多大なメリットがある。 8 3 17 0 1   小児疾患臨床研究
小児期発症のミトコンドリア脳筋症に対するL-アルギニンおよびジクロロ酢酸療法の効果判定と分子病態を踏まえた新しい治療法開発に関する臨床研究 平成14-16年度 85,720 久留米大学医学部 古賀靖敏 (ア)ミトコンドリア病は効果的治療法の無い慢性進行性致死性疾患である。(イ)脳卒中様発作を来たす病型MELASの特効薬的治療法を世界に先駆けて開発した(ウ)この新しい治療法は、それまで治療法が無いと考えられていたミトコンドリア脳筋症の治療に道を開き、Neurology等の雑誌のhighlighting paperに取り上げられ、国内外から大きな反響があった。 この研究成果をもとにミトコンドリア病の診断基準、重症度分類が策定され、全国に普及。平成17年度から施行された小児慢性特定疾患の「ミトコンドリア脳筋症」の追加補助事業と相まって医療行政上非常に効果があると考えられた。平成17年2月21日の評価委員会で報告。今後、ミトコンドリア脳筋症を適応とする薬剤の開発へ向けてのインフラ整備が完了したと考えられる。厚生労働省の医薬品審査課における薬剤開発・治験の推進に反映。 MELASに対するL−アルギニン療法は、わが国で開発した特効薬的治療法であり、今後、世界に向けて発信できる特効薬的治療法である。この開発により、神経学的多くの後遺症で苦しむ患者に光明を与え、ひいては、医療費抑制に貢献できると考えられる。このミトコンドリア病の治療分野で世界をリードする形に発展している。 83 41 189 4 1 7 (http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0309kodomozutsu.html) 小児疾患臨床研究
小児科診療における効果的薬剤使用のための遺伝子多型スクリーニングシステムの構築 平成14-16年度 89,280 慶應義塾大学医学部 小崎健次郎 (ア)薬物代謝酵素の遺伝子多型のうち、低代謝能アレルを有する患者において副作用を発症するリスクが高いことが示唆されているが、薬理遺伝学的研究成果を臨床に応用した事例は殆ど無い。小児科各領域[神経=抗てんかん薬クロバザム、循環器=抗凝固薬ワーファリン、血液腫瘍=抗白血病薬メソトレキセート等、内分泌=ジヒドロテストステロン]について、薬効・副作用の発症に遺伝子多型が関与することを明らかにした。(ウ)治療前遺伝子検査を行う理論的根拠を示した。 クロバザムについて、薬剤投与前に遺伝子検査を行い、薬効を予測し副作用を回避するいわゆる「テーラーメード医療」の小児科領域における最初の事例となった。チオプリンメチル転移酵素の全翻訳領域の効率的検査方法を確立して安全な6メルカプトプリン使用のための多型スクリーニングシステムを世界に先駆けて完成し、関東地区の4カ所の白血病治療施設で治療前スクリーニングを開始した。 (1) CYP2C19多型は白人に比較して日本人で頻度の高い多型である。本研究においてはCYP2C19多型により明らかにクロバザムの血中動態が異なることを示した。欧米で承認された薬を日本へブリッジングする際には、十分な数の日本人を対象とした臨床試験の実施が不可欠であることの重要性が改めて示された。(2)一般小児科外来受診家族へのアンケートによれば、投薬前遺伝子検査については肯定的意見が大部分を占め、国民のこの分野に対する期待が大きいことが明らかにされた。 15 7 8 1 0 2 小児疾患臨床研究
小児肉腫に対する至適治療法確立を目指した臨床試験とその基盤整備に関する研究 平成14-16年度 84,025 国立がんセンター中央病院 第二領域外来部 小児科 牧本 敦 (ア)小児がん領域で、日本では過去に真の意味の臨床試験が行われた事はなかった。(イ)臨床試験のインフラを整備し、モデルケースとしての高リスク横紋筋肉腫に対する治療開発のための臨床試験を実際に行った。(ウ)臨床試験を行うための最低限度の基盤整備が完成したと同時に、横紋筋肉腫に対する治療の知識を全国の研究者で共有し、治療開発につなげる事ができた。他の小児分野における同様の活動にも大きな影響を及ぼした。 ・臨床試験を行うために、基本的な抗がん剤の適応拡大が必要であったため、有効性・安全性のエビデンス収集を行い、「抗がん剤併用療法検討委員会」を通じて、6つの抗がん剤の効能拡大につなげた。
・同様のエビデンスを用いて、日本小児がん学会・日本癌治療学会の「抗がん剤適正使用のためのガイドライン」作成に貢献した。
・新規薬剤承認のための「医師主導治験」の実現のための基盤作りを行った。
全国多施設による共同臨床試験を行い、稀少疾患の臨床試験における必要症例数を確保して試験の実現可能性を高め、倫理的かつ科学的な臨床試験の遂行が可能なインフラを整備し、実際に運用を開始した。小児悪性腫瘍は多種にわたるが、それぞれの疾患に対する最適な治療の開発を目指した活動が、効率的かつ同時並行で行われる事により、顕著な成果が期待される。 3 140 48 0 3 1 小児疾患臨床研究
子ども家庭支援プログラムの開発に関する研究 平成15-16年度 7,800 関東学院大学人間環境学部 伊志嶺美津子 (ア)子育てひろば等での支援プログラムが必要である。(イ)親に力をつける複数のプログラムおよび支援者研修プログラムを作成、支援者養成への提言をした。(ウ)子育て支援内容の充実および支援者の資質向上、さらに支援者養成の方向を示した。 全国のつどいの広場や総合施設等における支援プログラムの参考となる。研修プログラムは各地の支援者研修に活かしている。養成カリキュラムは今後の保育者等の養成に寄与するものとして提言した。 子育て支援の場におけるプログラム等はいまだ未確立であるが、対人援助に必要とされるプログラムおよび支援者の資質について先進的な提案を行っている。支援者養成にかかわるカナダの大学の担当者を招聘し、講演およびシンポジウムを開催予定である。 4   2     5 子ども家庭総合研究
生涯を通じた健康の管理・保持増進のための健康教育・相談支援等の充実に関する研究 平成14-16年度 25,000 順天堂大学医学部衛生学 稲葉 裕 (ア)種々の疾患で性差のあることは古くから知られているが、その理由の解明や対策が注目され始めたのはこの10年ぐらいのことである。(イ)生涯を通じた女性の健康づくりの観点から、わが国における女性の健康障害の実状を明らかにした。(ウ)通常の地域コホートは死亡をend pointとするため、寿命が長い女性では結果が遅れて出る傾向がある。死因別では対象数が少なく有意差が出にくい傾向がある。本研究は日本の代表的コホートを対象に女性の死亡リスクを集中的に分析することができた。 健康管理や相談支援の体制についての提案するための基礎的な資料づくりをした。 病院の女性外来、保健所の女性健康相談受診者の調査を行い、健康づくりに高いモチベーションを有する中高年女性に対して正しい情報を提供する必要性や来所の目的などの実態を把握できた。 29 0 5 0 0 1 子ども家庭総合研究
小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究 平成14−16年度 100,000 社会福祉法人賛育会 賛育会病院 鴨 下 重 彦 (ア)小児科医、産科医の人手不足が深刻なために、医療現場で混乱を生じ、社会問題と化している。(イ)小児科医、産科医の医師不足の実態、その原因、対策など の問題点が明らかにされ、21世紀の母子医療のあり方が具体的に提言された。(ウ)本研究の成果は、学術的というよりは、次の行政的、医療政策的、乃至は社会的意義が大きかったと考える。 小児医療基本計画のための不可欠なデータといえる、小児科学会員のマスターファイルを作成した。小児科医、産科医の当直などを含む勤務体制が、他診療科に比して厳しいことから、特に労働基準法に照らして違法性のないよう検討を要する。小児医療(病院小児科)の不採算性を抜本的に解決するための方策の必要性が提言された。パイロット的に進められた0.5次救急ともいえる、小児救急患者の電話相談事業の効果が認められ、全国展開され、平成17年度には検討中を含めて45都道府県にまで展開された。他科の医師のための小児救急ハンドブックが作成され、臨床現場で実際に応用されている。産科医療における訴訟の回避と患者救済のための「無過失補償制度」の検討結果は、日本医師会でも委員会が発足、検討されることになった。救急医療現場でのコーディネーターとして重要な役割を果たす小児救急認定看護師の養成制度が日本看護協会で平成17年度から発足した。 平成17年3月24日の厚生労働省社会保障審議会医療部会で「小児をはじめとした救急医療体制の在り方、小児医療や周産期医療といった母子医療の推進について」で研究成果に基づく問題点が資料として提出され、検討された。女性医師支援策がまだまだ不十分であり、フレックスタイムの導入など、勤務体制の多様化が提言され、病院によっては実行に移されている。小児精神保健医療に関し、対応すべき施設が貧弱、専門医の不足が明らかにされ、その整備と医師養成が急務である。医学部附属病院における母子センター構想を実現する。また全国各地にある県立などの小児医療総合施設を、産科を取り込んだ周産期センター化する。産科リスクを減少、回避するために、わが国の実情にに合ったオープンシステム、セミオープンシステムを導入し、推進する。 研究班の研究の途中経過や成果は、全国紙、地方紙など新聞、雑誌などメディアにも度々取り上げられ、社会啓発には大きく貢献した。(4)参照 65 18 60   3 20 子ども家庭総合研究
望まない妊娠、人工妊娠中絶を防止するための効果的な避妊教育プログラムの開発に関する研究 平成14-16年度 45,200 自治医科大学医学部産科婦人科学教室 佐藤郁夫 (ア)全年齢の人工妊娠中絶実施件数並びに実施率は減少傾向を示しているが、20歳未満については1995年以降、直線的に増加しているが、ここ2年間、減少傾向を示している。(イ)「男女の生活と意識に関する調査」を2回実施することによって、中絶を行った女性が「胎児に対する憐憫の情」を強く抱いていることから、中絶前後の心のケアが必須であることがわかった。また、わが国の避妊法選択が歴史的に男性に主導されており、これを変えていくことが中絶防止に役立つこと、親と子のコミュニケーションスキルを高めることが、性交開始年齢を遅らせるだけでなく性交に際して責任ある行動がとれうようになること、年少であるという理由だけで中絶を選択するのではなく、家族を含め周囲のサポートが得られれば産むことができる場合があることを、などを明らかにした。(ウ)本研究班が2度にわたって実施した「男女の生活と意識に関する調査」結果は、わが国における性・避妊・中絶などの現状を知る貴重な資料となるだけでなく、毎日新聞社人口問題調査会が1950年代から25回にわたって行ってきた家族計画世論調査の追跡としても大きな意義がある。 平成17年3月7日に開催された厚生科学審議会エイズ・性感染症ワーキンググループで報告。平成17年5月11日、参議院少子高齢社会に関する調査会で方奥。(ア)母体保護法39条の医薬品(避妊薬)販売の特例に関して5年間の時限立法(平成17年7月31日)の更新に際して示唆に富んだ資料を提供した。(イ)人工妊娠中絶前後の心のケアを実践するための基本的な姿勢を明らかにした。(ウ)十代で妊娠・出産した事例に対して学校ができること、地域ができること、家族が果たすべき役割などについて提言した。(エ)(中学生の頃までに)親と子のコミュニケーションを積極的に図れるように取り組むことが、性交開始年齢を遅らせること、セックスに際して責任ある行動がとれることを明らかにした。これらは、すべて母子保健活動の重要なテーマになり得るものと確信している。 本研究班のテーマではなかったが、「男女の生活と意識に関する調査」結果からは、既婚者の32%がセックスレス(ここ一ヶ月間セックスがない)状態にあることが判明した。この人たちの背景を探ると、異性とのコミュニケーションを図ることが基本的に不得手であることから、男女間のコミュニケーションスキルを高めることが、少子化対策の一つの課題になるものと思われる。 5 11 11   2 16 子ども家庭総合研究
乳幼児から思春期まで一貫した子どもの健康管理のための母子健康手帳の活用に関する研究 平成14-16年度 18,900 国立保健医療科学院 生涯保健部 小林正子 (ア)母子健康手帳は母親の健康管理のみでなく育児に役立つ。(イ)就学前までしか記載されなかった母子健康手帳を延長活用することにより、育児や子どもの健康管理に役立てることができるほか、地域・家庭・学校をつなぐものとして子どもを巡る地域のネットワークづくりにも寄与できる。(ウ)子どもが思春期過ぎまで使用できる母子健康手帳の有用性を明らかにした。また、母子健康手帳に記載すべき育児情報の選別と科学的根拠を示した。さらに、発育グラフ作成ソフトを開発し、発育を基本とした継続的な健康管理の重要性を啓発した。グラフソフトは保健センターや学校に配布して大きな反響があった。 母子健康手帳に「妊娠中のアルコール類摂取の禁止」が記載された。その他はこれから実際の取り組みが始まることになるため、3年間の研究成果が実り、母子健康手帳のさらなる活用を通して家庭が責任を持って子どもの健康を見守る姿勢が構築され、地域・学校も家庭や子どもを継続的に支援する体制ができるよう、行政レベルで取り組んで頂くことを期待したい。 (1)子どもが思春期過ぎまで使用できる母子健康手帳を作成し、本年4月末、全国市町村に配布したところ、問い合わせが来始めた。(2)発育グラフ作成ソフトを開発し、さらに改良を加え使いやすいものにして学校および保健センターに本年2月より配布している。これは現在も依頼が続いている 2 6 7 0 2 6 子ども家庭総合研究
保健師による母子保健活動における児童虐待リスクアセスメントツールの開発 平成15−16年度 2,200 神戸大学医学部 松田宣子 (ア)児童虐待リスクについて明らかにされてきている(イ)虐待している母親との信頼関係がとれると虐待が少なくなってくる(ハ)母親への支援方法により虐待予防につながることがわかった。特に虐待の原因が育児ストレス,経済的困窮など精神的な不安定によるとわかり、母親にとって保健師が受けとめてくれる存在になることがわかった。 (2)児童虐待リスク・支援アセスメントツールの開発につながり、実際の健診や家庭訪問などの母子保健活動で用い、児童虐待の支援に役立つ。 児童虐待リスクアセスメントは存在するが、日本の文化に根ざしたリスクアセスメントと合わせて支援に役立つツールであり、予防的にも今後活用できる。 2 0 2 0 4 育児不安・ストレスなどについて講演し、育児サポートボランテイアへの活動に生かせるように話した。 子ども家庭総合研究
乳幼児健康診査における高機能広汎性発達障害の早期評価及び地域支援のマニュアル開発に関する研究 平成16年度 450,000 九州大学大学院 人間環境学研究院 神尾陽子 (ア)高機能広汎性発達障害児の大半は、乳幼児健康診査で見逃され、早期介入の好機を逸している。(イ)本スクリーニングによって、1歳6か月健診受診児全体の1.6%が2歳時に高機能広汎性発達障害と診断評価された。1歳6か月時での指さし、共同注意、言語理解などがこの群を最もよく判別した。(ウ)言語以外の早期発達指標が高機能広汎性発達障害の予測因子となりうることを示唆する本成果は、わが国の乳幼児健診の問診の在り方を問い直し、学術的にも早期行動マーカーの同定の可能性を示唆した。 ○昨年成立した発達障害者支援法に掲げられている発達障害の早期発見を実現するための実証的な指針となる成果がえられた。簡便な質問紙を用いているため、専門家や時間的余裕の乏しいわが国の乳幼児健診の現状でも十分波及しうる手続きである。本研究を実施した自治体以外の自治体や小児科医会からも問い合わせがあり、まだ暫定的成果ではあるものの、波及が始まっている。 広汎性発達障害に特異的な、前言語段階のコミュニケーション徴候の同定と、それを活用した乳幼児健診評価システムの確立はわが国のみならず諸外国においても注目されている。 0 0 0 0 0 9 子ども家庭総合研究
快適な妊娠・出産を支援する基盤整備に関する研究 平成13-15年度 13,500 自治医科大学 中村好一 (ア)妊娠・出産に関する各種の提言がWHOなどからなされているが、我が国ではこれらの提言と異なる医療やサービス提供が慣例としてなさtれてきていた。(イ)このような実態を明らかにし、その背景について検討を行った。(ウ)実態を明らかにすることにより、今後の妊娠・出産に関するサービス提供のあり方を検討する基礎資料となった。 今後の我が国における妊娠・出産に関するサービス提供のあり方に関する検討の基礎資料を提供した。 産科婦人科の関係団体に従来のサービス提供に関する検討への一石を投じた。 1 2 1 0 0 5 子ども家庭総合研究
日本における女性医療の課題に関する医療社会学的研究ならびに性差を加味した健康度および生活習慣の測定手法の評価に関する研究 平成14-16年度 35,000 千葉県衛生研究所 天野恵子 (ア)新しい視点からの研究で先例がない(イ)今回、全国に展開する女性外来担当医師のネットワークを構築し、新しい医療を支えるための医療者研修を開始した。又性差に基づく女性医療を支えるための研究会「性差医療・医学研究会」を立ち上げ、月刊誌の発刊による性差医療情報発信強化も行った。また、女性特有のデータの収集を目的としたデータファイリングシステムの活用を開始した。(ウ)性差に基づく女性医療:女性外来が全国の女性の支持を得たことは明らかで、2004年12月末で47都道府県328施設に女性外来が開設された。また、多くの学会で性差医療がテーマとして取り上げられ、進行中の日本人を対象とした臨床疫学調査に性差での解析が見られるようになり、多くの疾患で性差が報告されている。 国会においても「性差に基づく女性医療」の国としての積極的な取り組みが女性議員より求められ、厚生労働省は、2003年、国立成育医療センターに女性外来を開設した。また、2003年厚生労働省による「医療提供体制の改革のビジョン案」では、「女性外来を設置し、さらに、女性の健康問題に係わる調査研究などを推進し,女性の患者の視点を尊重しながら地域における必要な医療が充実される体制の確保に取り組む」と明記された。 「性差に基づく女性医療」の系統的な教育を目指す動きの一環として、医科大学に女性外来の設立が相次いでいる。現在47都道府県328施設に女性外来が確認され、31医科大学、105の公立病院を含んでいる。 15 24 26 0 22 76 子ども家庭総合研究
子どもの事故予防のための市町村活動マニュアルの開発に関する研究 平成16年度 4,500 国立保健医療科学院生涯保健部 田中哲郎 (ア)1.子どもの事故は1歳以降の死因順位の第1位で、子どもの健全育成の大きな障害因子である。2.子どもの事故は発達と関連している。3.全国調査をもとに安全チェックリストなど事故防止のプログラムが開発されていること(イ)1.安全チェックリストを使用した事故防止指導により医療機関受診事故を減らせることが明らかになったこと。2。事故防止のための情報が得られれば子どもの事故を経験した保護者は子どもの医療機関受診事故の73%が防止できるだろうと回答していること.3。市町村において事故活動が十分に行われていないことが明らかになった(ウ)安全チェックリストへの記入など積極的な事故防止活動により事故を減らせることが確認されたこと、事故防止の啓発時期、保護者への啓発と子どもへの安全教育の必要な時期の関係が明らかになったことは学術的に意義がある。 市町村母子保健事業用のマニュアルが開発されたことにより、政府の少子社会大綱にある事故防止対策に取り組んでいる市町村の割合を100%にする目標値を達成することが可能になり、育児不安の解消、少子化対策の面からも本研究は意義がある。 マニュアルが作成され、わが国の事故防止が進むことにより、安全文化の確立、育児不安の解消、少子化対策の面で社会に大きく貢献することが可能になった。 4 1 8 0 0 25 子ども家庭総合研究
「児童虐待発生要因の解明と児童虐待への地域における予防的支援方法の開発に関する研究」 平成14−16年度 31,900 大阪人間科学大学 人間科学部 服部祥子                   子ども家庭総合研究
分担研究1:「児童虐待発生要因の解明と児童虐待への地域における予防的支援方法の開発に関する研究」         (ア)児童虐待事例の把握はかなりすすんでいるが、「日本で今なぜ児童虐待が多発するのか」、また地域で虐待を予防するためにはどのようなことが必要かについては、あまり研究されていなかった。(イ)本研究では、子育て実態調査により、虐待がなぜ起こるのかをある程度科学的に解明した。そして、予防策として、参加型の親支援プログラムの必要性を明らかにした。 (ウ)本研究で実施した大規模な子育て実態調査は、1980年代に実施され今「大阪レポート」と呼ばれているものを追試し、さらに発展させたものであった。その結果、この23年間に子育て現場の大きな変貌を明らかにすることができた。 ・保健師や助産師などの専門職が読む専門誌に連載などで結果を掲載することで、乳幼児健診をはじめ地域での児童虐待の予防に役立つ指針を発信した。・フォーラムや講演会の開催により、保育士や地域で子育て支援にかかわっている民生委員などの啓発に役立った。・本研究で児童虐待予防策のひとつとして普及に勤めてきたカナダの親支援プログラム“Nobody's Perfect”が、平成16年度には大阪府摂津市で、平成17年度には奈良県と大阪府高槻市で正式に予算化された。 本研究で実施した子育て実態調査は、すでに「兵庫レポート」と呼ばれ、1980年代に実施された「大阪レポート」と並び、子育て支援の基礎資料となりつつある。・ほんの23年間に日本の子育て現場が大きく変貌を遂げていることを明らかにしたが、この結果は今後の児童虐待の予防策や次世代育成支援の方向性を示すものであった。 ・「兵庫レポート」は(財)日本生命財団の出版助成を得て、名古屋大学出版会より出版の予定である。 16 4 4 0   1(ホームページ) 子ども家庭総合研究
分担研究2:虐待する親・家族機能の質的評価と虐待進行の予防的支援方法に関する研究         (ア)虐待の進行・再発予防(三次予防)のためには、虐待者および家族の理解と治療的支援が必要になる。しかし、福祉・保健現場で利用しやすい「虐待者を理解するためのアセスメント表」がなく、また治療に重要な役割をしめる地域の医療機関(精神科等)の実態が十分把握されていない現状がある。(イ)本研究では多職種が使用可能な「親・家族支援のためのアセスメント」を作成、試行し、ツールとして利用することで地域における「質の高い」機関連携が行われる可能性を示唆した。また、精神科・小児科・産婦人科へのアンケート調査から、児童虐待・子育て不安への三医療機関の関与の実態を把握し、治療ネットワークへの参与のためにはどのような課題があるかを明らかにした。さらに市町村での家族支援の基幹になりうる家庭児童相談室と都道府県の要である児童相談所の詳細な実態も同時に把握し、それぞれの機関の進行・再発予防への関わりについて分析した。(ウ)これらをとうして、地域支援・治療ネットワークの可能性について言及した。 ○医療機関への実態調査の結果は、児童青年精神医学会と日本小児科学会で発表し、この問題に対する啓発と提言を行った。今後は、アンケートを行った大阪府の医療機関へ結果を報告する中で、地域医療ネットワークの必要性と可能性についての啓発を行うべく準備をすすめている。
○児童相談所・家庭児童相談室の実態調査の結果は、日本子どもの虐待予防学会で発表し、再発・進行予防の取り組みについての試みの交流を行った。
○「虐待者および家族支援のためのアセスメント」は、主として支援を行う福祉・保健現場での使用を継続する予定である。また「アセスメントの解説および利用の手引き」と他の調査結果の報告書を全国の主要福祉機関へ配布し、利用してもらうべく準備を進めている。
  0 0 4 0     子ども家庭総合研究
分担研究3:ヘルスプロモーションに基づいた、医療・福祉の連携等地域資源の有効活用による子育て不安対策に関する研究         (ア)現状の行政主導型の児童虐待対策では予防への展開が難しく、地域の資源を有効に活用する必要がある。(イ)医療機関(特に分娩機関)が、子育て資源として主体的に取り組むことが虐待予防に有効である。(ウ)ヘルスプロモーションの観点から、分娩機関のボランタリーな取り組みを推進する有効性や具体的な施策が提案された。 地域の医療機関への、リスクアセスメントのような行政からの依頼にとどまらず、主体的な取り組みを促す具体的な施策に反映できる。 地域において活用されていない分娩機関の子育て支援機能を賦活化することにより、子育てエンパワメントを通じた虐待予防への新たな展開が期待できる。   4 2     1(ホームページ) 子ども家庭総合研究
日本人女性の葉酸代謝関連酵素遺伝子多型と先天異常(神経管欠損症およびダウン症候群等)の発生予防効果に関する基礎的研究 平成14-16年度 19,000 名古屋市立大学大学院医学研究科生殖・遺伝医学講座生殖・発生医学分野 鈴森薫 ァ欧米諸国では、母体への葉酸投与が神経管閉鎖障害を減少させることが報告されている。ィダウン症分娩と染色体異常流産の母体症例に葉酸代謝関連酵素の多型の有意差があった。ゥ葉酸は、神経管閉鎖障害のみならず、流産予防の見地からも有用性があると考えられる。 胎児の神経管閉鎖障害のみならず、流産予防の見地からも葉酸の有用性があることをふまえ、葉酸摂取啓蒙活動の推進をおし進める必要があり、そのためにも有用な基礎データとなる。 流産に関してもさらに症例を追加して、葉酸の予防・治療的価値について検討する。 13 2 19 0 0 3 子ども家庭総合研究
児童虐待に対する治療的介入と児童相談所のあり方に関する研究 平成14-16年度 14,800 宮城県子ども総合センター 本間博彰 ァ)児童虐待対応の進行管理システムの具体的手法を提示し、あわせて実施上の問題点と課題についてまとめた。また、児童虐待が急激に増えたことにより児相はその対応に奔走され児童福祉法で規定された本来の責務や課題を果たせなくなり社会のニーズに十分に対応できない状態が続いていること、および児相における医療として精神科医療体制(常勤医の拡充、診療機能の整備)の拡充が早急になされる必要があることから、中央児相の機能については総合的なセンター機能を持つように整備する必要があることが示された。 児相の虐待対策の基本的なノウハウと進行管理システムのモデルを全国の児相に提示した。児相における精神科医療のあり方と現状を改善するための具体的対策を示した。児相が総合的な相談センター(育成センター)となるべき必要性を示し、かつその先駆けとなる新たな機関の設立や育成に寄与した(例として宮城県子ども総合センター)   2   2       子ども家庭総合研究

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