研究課題 実施期間 合計金額
(千円)
主任研究者所属施設 氏名
(1)  専門的・学術的観点
 このテーマで、すでに分かっていること
 本研究で加えられたこと
 本研究成果の専門的・学術的意義
(2)  行政的観点(※1)
 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。
(3) その他の社会的インパクトなど(予定を含む) 発表状況 特許 施策 (4) 普及・啓発活動件数 研究事業名
原著論文(件)※2 その他論文(件) 口頭発表等(件) 特許の出願及び取得状況 反映件数※3
化学物質の胎盤ホルモン産生系・代謝系への影響に関する研究 平成14-16年度 14,000 大阪大学大学院薬学研究科 中西 剛 (ア)化学物質の発生毒性試験は、実験動物とヒトとの胎盤内分泌機能には大きな種差があるにも関わらず、それを考慮して行われていない。(イ)化学物質の中には、ヒトの胎盤には存在し、齧歯類の胎盤にはない分子またはその逆に齧歯類に存在する分子に作用するものが多々存在し、また同じ分子の発現に対しても動物間で大きな種差があることが判明した。また実験動物に化学物質を投与して、各組織の遺伝子発現変動を解析する手法も、その感度がかなり悪い可能性が示唆された。(ウ)実験動物を用いた現行の発生毒性試験だけでは、ヒトの発生毒性を正確には評価できない可能性があり、胎盤を含む内分泌機能の種差を考慮した発生毒性評価法を追加する必要があると化学工業界でも認識されつつある。 特になし 本研究成果は、今後の化学物質の発生毒性試験のありかたに、かならず一石を投じるものであり、化学工業界でも発生段階における内分泌機能の種差を考慮した毒性試験についての注目が高まりつつある。 7 0 16 0 0 1 萌芽的先端医療技術推進研究
トキシコプロテオミクス:ABCトランスポーターの遺伝子発現と薬物相互作用の解析に関する研究 平成14-16年度 144,237 東京工業大学大学院生命理工学研究科 石川智久 ア)すでに分かっていること
薬物代謝酵素に関して、その遺伝子多型および薬物相互作用と副作用との関係が詳細に解明されてきた。一方、薬物の副作用をひきおこす1つの原因として薬物トランスポーターでの薬物相互作用の寄与は大きいと考えられ、迅速に予測する方法が早急に求められている。また、薬の長期投与の場合、薬物トランスポーターの発現レベルの変動が薬物体内動態の変化を促し、副作用の原因となる可能性がある。したがって、薬物トランスポーター、特にABCトランスポーターの遺伝子発現プロファイリングと制御機構の解明が必要である。
ABCトランスポーターの生理機能は極めて多様であり、in silico解析ではその基質特異性といった真の機能を予測することが難しい。したがって各々のABCトランスポーターのcDNA発現系を用いた機能解析が重要である。 一方、近年薬物の反応性と患者の遺伝的背景との関連性が薬理遺伝学/ファーマコゲノミクスによって突き止められようとしている。個人の遺伝子情報と薬剤への感受性との相関を研究して、より効果的な医療を確立する基盤ができつつある。遺伝子多型に基づいて、薬物代謝酵素の発現レベルばかりでなく薬物トランスポーターの誘導機構を理解し、患者の代謝能や薬物動態の差を明らかにすることは、遺伝的変異性のある患者に対する薬の用量設定試験を計画する際の指針として役立つと考えられる。薬物輸送に関係するABCトランスポーターの同定と基質特異性の解析、およびその遺伝子の薬理ゲノム解析は将来の創薬分子デザインと臨床試験等に影響を与えると考えられる。現時点では、しかしながら、それに対応する具体的な方策が充分にはとられていない。

イ)本研究で加えられたこと
ABCトランスポーターの基質特異性解析のハイスループット化 昆虫細胞発現系と、96wellプレートを用いたATPase活性測定の高速スクリーニング系を構築した。P-糖蛋白質(ABCB1)の基質特異性プロファイリングを行い、構造活性相関の方法を開発した。さらに、新規ABCトランスポーターABCG2の予測スクリーニングシステムを構築し、薬物相互作用の予測をするアルゴリズムを開発した。また薬物による肝臓毒性に関与する胆汁鬱滞をin vitroで検証するために、胆汁酸輸送に関与するヒトABCB11の薬物スクリーニング系を構築した。
ヒトABCトランスポーター遺伝子のプロモーター解析 in silicoによる網羅的なホモロジー検索をすることによって、現在知られているヒトABCトランスポーター遺伝子48個の上流域(2〜5kb)の解析を行い、発現制御に関係する転写因子とその結合部位を予測した。
厚生労働省の団体であるヒューマンサイエンス振興財団が発行する報告書「ゲノム科学と医療:そのフロンティアを探る」に、薬物トランスポーターと薬物相互作用の関係を具体的に示し、行政の新しい取り組みの必要性を執筆した。
また今年米国FDAは、新薬の臨床開発研究に関して必要なファーマコゲノミクスデータ提出のためのガイダンスを公開した。しかしながら、薬物トランスポーターに関して、国際標準に相当する薬物スクリーニング方法が定まっていない。当該国際標準スクリーニング方法の策定を米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校と東工大生命理工石川研究室がワーキンググループを組織する準備をおこなった。
薬物代謝物を迅速に細胞外へ排出することは、薬物の副作用を低下させる上で非常に重要である。さらに薬物トランスポート過程での薬物相互作用や薬物による遺伝子発現誘導を回避する分子デザインも創薬戦略の1つである。薬物トランスポーターの基質特異性とその薬物動態上の意義を定量的に解析することは、ポストゲノム時代における合理的な創薬分子設計戦略と副作用の低下(安全性の向上)に大きく貢献するものと考えられる。特に、ABCB1, ABCB11, ABCG2のスクリーニング系および構造活性相関解析方法の確立は、薬物相互作用の少ない創薬分子設計に応用できる。また、本研究において高速スクリーニング装置は中小企業との共同作業によって開発され、国内のバイオ産業化にも貢献した。
定量的PCRによるヒトABCトランスポーター遺伝子発現の解析 組織に発現しているABCトランスポーターのプロファイリングのため、48個すべてのABCトランスポーターの定量的PCRプライマー・セットと標準ベクターを調整した。
DNAアレイを用いたABCトランスポーター遺伝子の発現量多様性の解析 EBVで株化したリンパ球17例について、RNAを抽出し、T7ポリメラーゼによりcDNAを合成、biotin標識し、アレイ解析を行った。発現量にばらつきのみられるABC遺伝子が認められ、プロモーター領域にある遺伝子多型との関係が確認された。
ABCトランスポーター遺伝子の発現プロファイル GeneChip(ヒトU133A,Bアレイ)を用いて、4万遺伝子の発現をデータベース化した。ABCトランスポーター遺伝子の組織特異的発現や癌細胞株の薬剤感受性との関連について検討を進めた。
医薬品等化学物質の結合親和性についてデータベース化 医薬品や化学物質に対する体内標的(受容体、酵素、トランスポーター等)の特異性を究明する一方、トランスポーターに関するデータを収集/整理したデータベースの開発とSNPと疾患との関連情報の収集を実施し、核内受容体/膜受容体とそのリガンドである医薬品等化学物質の結合親和性についてデータベース化して公開したhttp://moldb.nihs.go.jp/tgdb/。

ウ)本研究成果の専門的学術的意義
薬物の副作用をひきおこす1つの原因として薬物トランスポーターでの薬物相互作用の寄与は大きいと考えられ、迅速に予測する方法が早急に求められている。また、薬の長期投与の場合、薬物トランスポーターの発現レベルの変動が薬物体内動態の変化を促し、副作用の原因となる可能性がある。したがって、薬物トランスポーター、特にABCトランスポーターの遺伝子発現プロファイリングと制御機構の解明は、極めて重要である。本研究において、既存の医薬品の薬物相互作用に関与する薬物トランスポーターを同定し、その薬物トランスポーターの基質特異性に基づいて薬物の副作用を予測する技術を開発することができた。
46 47 74 1 2 41 萌芽的先端医療技術推進研究
          定量的PCRによるヒトABCトランスポーター遺伝子発現の解析 組織に発現しているABCトランスポーターのプロファイリングのため、48個すべてのABCトランスポーターの定量的PCRプライマー・セットと標準ベクターを調整した。
DNAアレイを用いたABCトランスポーター遺伝子の発現量多様性の解析 EBVで株化したリンパ球17例について、RNAを抽出し、T7ポリメラーゼによりcDNAを合成、biotin標識し、アレイ解析を行った。発現量にばらつきのみられるABC遺伝子が認められ、プロモーター領域にある遺伝子多型との関係が確認された。
ABCトランスポーター遺伝子の発現プロファイル GeneChip(ヒトU133A,Bアレイ)を用いて、4万遺伝子の発現をデータベース化した。ABCトランスポーター遺伝子の組織特異的発現や癌細胞株の薬剤感受性との関連について検討を進めた。
医薬品等化学物質の結合親和性についてデータベース化 医薬品や化学物質に対する体内標的(受容体、酵素、トランスポーター等)の特異性を究明する一方、トランスポーターに関するデータを収集/整理したデータベースの開発とSNPと疾患との関連情報の収集を実施し、核内受容体/膜受容体とそのリガンドである医薬品等化学物質の結合親和性についてデータベース化して公開した
http://moldb.nihs.go.jp/tgdb/。

ウ)本研究成果の専門的学術的意義
薬物の副作用をひきおこす1つの原因として薬物トランスポーターでの薬物相互作用の寄与は大きいと考えられ、迅速に予測する方法が早急に求められている。また、薬の長期投与の場合、薬物トランスポーターの発現レベルの変動が薬物体内動態の変化を促し、副作用の原因となる可能性がある。したがって、薬物トランスポーター、特にABCトランスポーターの遺伝子発現プロファイリングと制御機構の解明は、極めて重要である。本研究において、既存の医薬品の薬物相互作用に関与する薬物トランスポーターを同定し、その薬物トランスポーターの基質特異性に基づいて薬物の副作用を予測する技術を開発することができた。
                萌芽的先端医療技術推進研究
マイクロアレー、プロテインチップを活用した、ヒト正常神経細胞を用いた薬剤安全性評価システムの開発 平成14-16年度 126,000 独立行政法人産業技術総合研究所 金村米博 (ア)正常神経系細胞を用いた薬剤安全性評価は殆どが動物由来細胞を用いたもので、ヒト由来細胞を用いた成果は極めて乏しい。

(イ)(1)ヒト羊膜、骨髄細胞、臍帯血細胞からそれぞれ神経系細胞(グリア細胞)を作成し、ヒト神経系細胞の標準モデル細胞としての有用性を確立した。(2)投与薬剤の濃度依存性に変動する遺伝子・蛋白質をマイクロアレーならびにプロテインチップを用いて包括的に解析する手法を確立した。(3)薬剤投与後時間に依存して変動する遺伝子・蛋白質をマイクロアレーならびにプロテインチップを用いて包括的に解析する手法を確立した。(4)薬剤構造、作用機序に依存して変動する遺伝子・蛋白質をマイクロアレーならびにプロテインチップを用いて包括的に解析する手法を確立した。

(ウ)各種薬剤に対するヒト神経系細胞の反応性を遺伝子・蛋白質発現のレベルで網羅的に把握するシステムが確立された。その結果、従来は情報に乏しかった、生きたヒト神経系細胞の薬剤反応性に関する情報と薬剤の副作用関連遺伝子パスウェイの同定が可能となった。
超高齢化社会に至り、社会的急務である難治性神経疾患患者の急増に対応するための有効な薬剤開発を強力にサポートする支援技術になりうるものと考えられ、神経疾患の克服による国民健康の向上と国民医療費軽減へ大きく貢献する成果をもたらすと考えられる。

薬剤開発のボトルネックである各種薬剤のヒト細胞における安全性を高感度にかつ効率よく評価するための有用なツールになりうるものと考えられ、当該領域に及ぼす技術波及効果は大きく、新規薬剤開発期間の短縮による国際競争力の獲得に貢献すると思われる。
国際的にも今後の大きな基盤技術の1つになるものと思われるヒトES細胞などを含めた各種ヒト正常幹細胞由来ヒト分化細胞を用いた創薬研究において、他に先駆けて達成された本研究成果は、倫理的且つ社会的に容認されやすいヒト細胞ソースを用いた次世代の創薬研究のモデル技術の1つとして、学術的領域のみならず、実用的、産業的領域への応用も可能なものであり、薬剤開発のボトルネックである各種薬剤のヒト細胞における安全性を高感度にかつ効率よく評価するための有用なツールとして当該分野をリードするものと考えられる。 58 16 73 2 0 0 萌芽的先端医療技術推進研究
組換え胎盤培養細胞を用いた新規作用を有する化合物のスクリーニングシステムの構築および核内受容体の同定 平成14-16年度 14,000 独立行政法人国立環境研究所環境健康研究領域 大迫誠一郎 (ア)DES等の化合物は従来のERを介した作用とは異なるオーファン受容体のリガンドとして作用することが知られている。(イ)このような新規受容体を探索するツールとしてラット胎盤由来の株化細胞Rcho-1細胞が適していることを示した。(ウ)細胞の反応性を探る上で適したレポーターアッセイ系を確立した。 依然基礎的レベルの研究であり、行政的観点からの応用には時間がかかると思われる。 新規の薬剤候補となる生理活性物質を探索するためのシステムとなるかもしれない。 0 0 0 0 0   萌芽的先端医療技術推進研究
ヒト硫酸転移酵素遺伝子ファミリーの網羅的機能解析に関する研究 平成14-16年度 14,000 宮崎大学 農学部 榊原陽一 (ア)硫酸転移酵素は遺伝子ファミリーを形成し、解毒代謝機構に関与する酵素である。(イ)硫酸転移酵素の多様な機能として、食品機能性成分の作用機構に関与することなど明らかにした。新規硫酸転移酵素SULT1C1およびSULT6A1をクローニングした。SULT1C1はスプライスバリアントが存在することを明らかにした。(ウ)これらの一連の硫酸転移酵素に関する研究が評価され、2003年度農芸化学奨励賞が授与された。 特にありません これまで、解毒代謝機構の一反応にすぎないと考えられてきた硫酸化が、生体内で情報伝達など多様な機能に関与することが判明した。トキシコゲノミクス分野における医薬品およびその候補物質の副作用等を効率的に解明する基盤技術としても、さらにテーラーメイド医療を目指した研究としても今後が期待される。 10 6 32 0 0 0 萌芽的先端医療技術推進研究
cDNAアレイを用いた新しい乳癌治療体系の構築 平成14-16年度 49,779 国立がんセンター中央病院 藤原康弘 (ア)現在の乳癌治療は、HE染色と免疫染色(エストロゲン受容体、プロジェステロン受容体の発現の有無)を用いて病理組織検体を評価した結果と、腫瘍サイズ、患者の年齢あるいは閉経の有無等に関する情報で、治療方針を決定している(イ)乳癌術前化学療法の前後の乳癌組織、末梢血リンパ球検体より抽出したRNAについて、新カスタムアレイを用いた遺伝子発現測定を行い、薬物療法の効果・副作用を予測する遺伝子を選択できた。(ウ)本成果は癌学会シンポジウム等で紹介され、各種新聞に掲載され、国内外から大きな反響があった。 平成16年12月6日開催の「ヒトゲノム研究事業の企画と評価に関する研究」班第6回検討会議において、「ゲノム研究事業の課題と展望について(企画と評価の視点から)」の表題で講演を行い、当該研究成果を踏まえて厚生労働科学研究費のヒトゲノム研究事業の将来計画に関する提言を行った。また平成17年4月20日開催の第2回治験のあり方に関する検討会において、「医師主導治験におけるGCP上の問題点について」の講演の中で当該研究成果(とくに海外調査結果)を紹介するとともに資料として公開した。 治療レジメ毎の遺伝子を用いた予測式が作成されており、本予測法を用いた、治療体系の改善に挑む予定である。 また平成16年11月15日号の雑誌AERAの「女性がん- 最新医療」の特集記事(がん治療最前線 抗がん剤の新療法)において当該研究が紹介され、テーラーメード医療のピットフォールを明らかにした。 3 3 5 1 2 1 萌芽的先端医療技術推進研究
薬物トランスポーターの分子多様性と機能解析および副作用発現との連鎖解析 平成14-16年度 191,951 東京大学・大学院薬学系研究科 杉山雄一 (ア)複数の個々のトランスポーターの機能解析が、それぞれ別々のグループによって発現系を用いたin vitro機能解析がされていた。(イ)複数の薬物トランスポーターについて、遺伝子多型の解析をin vitro変異体発現細胞を用いた実験と、in vivoヒト臨床試験の両方の観点から示した。トランスポーターを介した薬物間相互作用が起こりうることを証明した。膜透過過程における複数のトランスポーターのそれぞれの寄与率を見積もる方法を確立した。(ウ)トランスポーターを介した薬物間相互作用が起こりうることを、薬物動態学の理論を用いて、世界に先駆けて、定量的に示した。また、トランスポーターの遺伝子変異により、薬物動態や効果・副作用が変動する可能性があることを複数実証し、さらにin vitro実験系からin vivoにおける薬物動態の変動の割合を予測が可能であることを示した。これらの知見は、多くの学会発表や論文報告を通じて、国内外の医薬品開発に携わる企業や大学の創薬研究者に大きな反響をもらっている。 薬物間相互作用については、国内、米国FDA,EUのいずれのガイドライン相当の文書には、代謝酵素(特にP450(CYP))が中心になっている。 その中でも、我が国の薬物間相互作用を記載した指針においては、他の国よりもトランスポーターに関する記述がはるかに多くなされている。しかし、これも大部分は、P-糖蛋白に関するものが中心であった。我々の研究結果から、取り込みおよび排出に関するトランスポーターの両者に注意を払う必要がある事例があることが示された。特に、市場に出た後に、重篤な副作用のためにwithdrawしたセリバスタチンの撤退の原因のひとつに、我々の研究により肝取り込みトランスポーターの関わる可能性が示され、米国FDAにおいてもガイドラインに、トランスポーターに関する項目の追加が検討されている。、さらには、トランスポーターなどの遺伝子多型に関する情報も申請の資料となりうることが加えられようとしている。本国においても、新薬の承認に関してトランスポーターについても検討を進めるようガイドラインの改定が強く望まれる。実際、それを行わなければ、これまで他の国に先んじてトランスポーターの重要性を指針に反映させてきたことが生かされてこないものと憂慮している次第である。 これまで、代謝酵素のみに焦点が当てられてきたが、我々の研究を通じて、トランスポーターの、薬物動態や薬効・副作用における重要性が徐々に明らかになりつつあり、実際に、複数の製薬会社において、発現系を用いた創薬段階初期でのスクリーニング系の開発が進められており、トランスポーターに関する情報をできるだけ早期に得て、合理的な創薬に結び付けていこうという考え方が徐々に浸透しつつある。また、トランスポーターの輸送能力の機能解析系を用いた受託研究を複数の会社が立ち上げつつある。また、臨床検査会社においても、トランスポーターの重要な多型を迅速に診断できるキットの開発なども進められており、社会的にもトランスポーターが薬物動態・効果・副作用に与える影響について注目が集まりつつある。 40 21 48 0 1 10 萌芽的先端医療技術推進研究
エストロゲンによる周生期脳インプリンティングを中心とした、個体レベルでの核内受容体シグナル検出系の確立 平成14-16年度 11,760 北海道大学大学院獣医学研究科 石塚真由美 (ア)周生期には脳におけるエストロゲンシグナルが性成熟に重要である。(イ)周生期視床下部のエストロゲンの新規標的遺伝子を同定した。この時期の化学物質の曝露による毒性影響を明らかにした。また、細胞培養などではdetectできない脳ステロイドインプリンティングに関し、In vivoでエストロゲンシグナルを検出できるトランスジェニックラットを作成した。(ウ)living animalとレポーターアッセイをMIXした光イメージング法を確立した。これまで不明な点の多かった周生期の脳におけるエストロゲンシグナルの標的因子を同定した。 培養細胞など既存のin vitro毒性試験方法では検出できない環境化学物質や薬剤の毒性影響について、in vivoでの新規解析方法を確立した。 living animalの光イメージングに関して、その条件検討を行い、GFPなどでは不可能な深部撮影を可能にした。 8 0 9 0 0 0 萌芽的先端医療技術推進研究
既存薬剤の副作用に関与する遺伝子の探索技術の開発 平成14-16年度 87,300 慶應義塾大学理工学部 柳川弘志 (ア)医薬品(薬剤)-蛋白質相互作用を網羅的に解析する手法は限られていた。(イ)本研究室で独自に開発したin vitro virus (IVV)法を用いた、トキシコゲノミックス(プロテオミックス)の手法としての、薬剤-蛋白質相互作用の網羅的解析法を開発した。(ウ)本解析法を薬学会、分子生物学会、メディシナルケミストリーシンポジウム等で発表し、創薬に大きく貢献する手法として反響があった。 イレッサやサリドマイドに結合する蛋白質の網羅的解析データの最終解析中であり、副作用機序解明により厚生労働行政に対する貢献が期待される。 本手法を用いた、網羅的な薬剤と相互作用する蛋白質の受託解析サービスを、ゾイジーン社(三菱化学系のベンチャー企業)が商業化し、創薬関連産業での発展が見込める。 7 2 5 2 0 3 萌芽的先端医療技術推進研究
プライマリーヒト肝・腎細胞を用いた薬剤曝露、遺伝子発現に関する研究 平成14-16年度 179,529 名古屋市立大学大学院薬学研究科 宮田直樹 (ア)プライマリーヒト細胞を用いた網羅的遺伝子発現解析を、薬剤の毒性評価に利用する手法が未完成。(イ)上記について最適プロトコールを構築した。代表的な薬剤を用いて毒性発現に関わる遺伝子群の同定ならびに遺伝子発現パターンのデータベースを完成した。薬剤の構造修飾が遺伝子発現に及ぼす影響を明らかにした。(ウ)プライマリーヒト細胞を用いる網羅的遺伝子発現解析が、薬剤のヒトでの毒性予測に適していることを明らかにした。 ○成果をもとに作成した遺伝子発現データベースは、実験動物から得られた遺伝子発現解析データをヒトへ外挿するための手法として有用。 毒性発現機構に関わる遺伝子発現をパスウェー・ネットワーク解析することにより、毒性発現メカニズムの解析ならびに、薬物の毒性作用の分類にも応用できる。 15 4 35 0 0 1 萌芽的先端医療技術推進研究
C型ナトリウム利尿ペプチド賦活化による軟骨欠損修復のための新しい治療法の開発とその臨床応用 平成15-16年度 87,040 京都大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科 中尾 一和 (ア)軟骨無形成症は常染色体優性遺伝形式をとり、その原因が3型線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体の活性型遺伝子変異であること。(イ)軟骨の成長においてC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が重要であり、CNP欠損マウスでは成長板軟骨の発育障害の結果、四肢体幹の著しい短縮が起こること、逆に軟骨にCNPを過剰発現すると軟骨無形成症モデルマウスの四肢体幹の短縮が正常まで改善することを明らかにした。更にヒトの四肢短縮型の低身長をきたす疾患である遠位中間肢異形成症Maroteaux型がCNPの受容体の不活性型遺伝子変異が原因であることが発見され、ヒトにおけるCNPの重要性が認識されるに至った。(ウ)CNPが軟骨無形成症の治療に応用できる可能性を証明した本研究成果はNature Medicine誌等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があり、CNPは骨・軟骨における新しい制御機構として注目されたことから、この分野の基礎的、臨床的研究が益々進歩することが予想される。 本研究成果の一部が平成16年2月5日内閣の知的財産戦略本部に於いて「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」で報告され、「療担規則及び薬担基準に基づく厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「特定療養及び特定療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の制定に伴う実施上の留意事項の一部改正(平成17年3月31日厚生労働省保険局医療課長通知)により、平成17年4月1日から、特定療養費の対象期間(治験を実施した期間)にかかる、検査画像診断、投薬注射、治験薬にかかる費用の取り扱いについて、自ら治験を実施するものによる治験(医師主導治験)にかかるものについて改定された。
平成17年4月1日から小児慢性特定疾患治療研究事業が制度改正され、軟骨無形成症に関しても障害の重症度応じた給付が行われることとなった。
基礎研究の成果を臨床応用に発展させるトランスレーショナルリサーチにおいてわが国当該分野をリードしている。 63 30 90 17 2件 平成17年4月1日より、特定療養費の対象期間(治験を実施した期間)にかかる、検査画像診断、投薬注射、治験薬にかかる費用の取り扱いについて、自ら治験を実施するものによる治験(医師主導治験)にかかるものについて改定された。
平成17年4月1日から小児慢性特定疾患治療研究事業が制度改正され、軟骨無形成症に関しても障害の重症度応じた給付が行われることとなった。
13件 http://hina.pos.to/
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ヒトゲノム・再生医療等研究
組織工学技術を用いた骨・軟骨の効果的再生による臨床研究 平成15-16年度 91,140 名古屋大学大学院医学系研究科 上田 実 (ア)我々の研究室で、再生骨用の新たな担体として開発した流動型人工骨、培養骨膜移植については、動物実験において効果があることを明らかにしていた。(イ)注入型人工骨、培養骨膜治療については、大型動物疾患モデルにて効果を確認した後,臨床応用を開始した。本研究期間で臨床的有用性が確認できる段階に達した。(ウ)現在は歯科領域への応用であるが,今後これまでの臨床応用の結果がさまざまな分野の骨再生治療につながるものと期待される。 細胞組織医療用具委員会の委員として臓器別調査報告書作成を行い、ガイドライン作りに貢献をした。 この研究結果を基に、骨治療のベンチャー企業設立(オステオジェネシス株式会社(神戸))を行った。名大病院において再生歯科外来を開設し、一般の患者に臨床研究を行った。 12 33 25 13 0   ヒトゲノム・再生医療等研究
組織工学による血管増生心筋組織の構築ならびにその移植による冠血管床の再生 平成15-16年度 74,000 国立循環器病センター研究所心臓生理部 盛英三 (ア)重症心不全に対する再生医療として単離した細胞を直接注入する治療法が臨床応用されている。(イ)生体外で細胞をシート化・積層化し組織として病変部に移植することにより血管網を伴った組織再生ならびに心機能の改善が可能であることを示した。(ウ)細胞シートを用いた再生医療は日本独自のものであり血管網を伴った厚い(約1mm)心筋組織の再生は国際的にも初の成果である。 臨床応用可能な骨髄細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、血管内皮前駆細胞などから作製される細胞シートを用いたトランスレーショナルリサーチ実施への契機となる。 血管網を伴った組織の再生は肝臓など他の組織・臓器の再生医療にも応用可能であり将来的に多くの患者に福音をもたらすと予測され社会的意義は大きい。 5 98 369 5 1 0 ヒトゲノム・再生医療等研究
低出力体外衝撃波を用いた閉塞性動脈硬化症に対する非侵襲性血管新生療法の開発に関する研究 平成15-16年度 35,000 九州大学大学院医学研究院 循環器内科学 下川宏明 (ア)我々は、低出力体外衝撃波治療が重症狭心症の非侵襲性治療として有用であることを明らかにした。(イ)本研究では、我々が開発した非侵襲性血管新生療法が閉塞性動脈硬化症の治療にも有用であることを明らかにした。(ウ)この成果は、現在、血管外科・循環器内科領域の学会で取り上げられ、大きな関心を集めている。 今後、臨床試験において同治療法の有用性が確認されれば、閉塞性動脈硬化症に対する非侵襲性の治療として、患者のQOLの改善や大幅な医療費の削減に貢献することが期待される。 閉塞性動脈硬化症に対する全く新しい非侵襲性治療が我が国から発信されることになる。 1 2 18 0     ヒトゲノム・再生医療等研究
組織工学、再生医療技術を応用した凍結保存同種あるいは異種弁移植の質の向上に関する研究 平成15-16年度 91,140 国立循環器病センター 北村 惣一郎 (ア)生体組織を薬液洗浄処理することで脱細胞化し、再生型の組織移植が開発できる可能性がある。
(イ)薬液洗浄処理に代わる、超高静水圧印加及びマイクロ波照射下洗浄という新規な方法を開発することで、これまで不可能だった高度な安全性を達成し、大きさや部位に囚われない種々の生体組織に適用することが可能となった。
(ウ)安全性に関しては世界トップクラスで、米国や豪州から技術の問い合わせがあった。
○本基礎研究の成果が、次年度以降の臨床応用推進事業の契機となった。
○本研究の成果を踏まえ、医療機器大手及び機械製造大手企業と市販化を見据えた共同研究をすることとなり、我が国発の新規医療用具開発の契機となった。
高度な安全性を有した生体組織処理方法を開発したことで、再生型組織移植の技術開発で我が国の先頭を走っている。 11 44 94 13 4 5
新聞記事2件、月刊誌記事1件、ホームページ2件(http://www.ncvc.go.jp/res/chiryo/chiryoj.html、http://ss.nikkei.co.jp/ss/sozo/5-5.html)
ヒトゲノム・再生医療等研究
血管新生と血管保護療法の開発に関する研究 平成15-16年度 76,000 東京大学大学院医学系研究科(循環器内科) 永井良三 (ア)虚血下肢への自家骨髄移植による治療法が3大学での検討で有効であることが認められた。(イ)虚血下肢への自家骨髄移植による治療法はさらに24大学病院で同じプロトコールで175人の虚血下肢を対象に実施され有効性と安全性が確認された。ウ)虚血下肢での治療成績はLancetに世界初の循環器病での細胞移植による血管新生治療として掲載され注目された。また米国FDAも承認し、欧米も含めて難治性心臓血管病の症例が骨髄単核球による血管新生治療で救済されている。世界に普及させた血管再生治療としての、国際的・社会的意義は非常に大きい。 虚血下肢への自家骨髄移植による治療法は国内初の再生医療に関する保険適応の高度先進医療として厚生労働省から認定された(2003年) 虚血下肢への自家骨髄移植による治療法は国内初の再生医療に関する保険適応の高度先進医療として厚生労働省から認定され、下肢切断しか治療法のなかった患者には福音である。わが国当該分野をリードする形に発展している。 95 180 143 9 1 http://www.kuhp.kyoto.u.ac.jp/~cardiac/member/
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/gts/division/r_03.htm
http://plaza.umin.ac.jp/~msata/
ヒトゲノム・再生医療等研究
骨髄細胞を用いた形質転換心筋細胞の開発に関する研究 平成15-16年度 54,000 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学 小室 一成 ア.このテーマですでに分かっていること マウスの骨髄間葉系幹細胞は脱メチル化剤により心筋細胞に形質転換する。骨髄間葉系細胞細胞が胚性幹細胞やP19CL6細胞を心筋細胞に分化させる。未分化な細胞を骨髄より末梢血中に動員する作用をもつG-CSF等の造血サイトカインの投与により梗塞後の心臓リモデリングが抑制される。
イ.本研究で加えられたこと 骨髄間葉系細胞OP9細胞に発現している分泌蛋白について解析し、P19CL6細胞を高率に心筋細胞に分化させる因子を同定した。G-CSF投与による梗塞面積、左室拡張末期径、短縮率、左室拡張末期圧の改善、アポトーシス抑制、毛細血管数増加効果はG-CSFを介するJAK-Statシグナルが関与していることが明らかになった。寿命延長したヒト骨髄間葉系細胞は胎児心筋細胞と共培養することにより心筋細胞に分化した。また、月経血由来の子宮内膜間葉系細胞も胎児心筋細胞と共培養することにより心筋細胞に分化した。ヒト間葉系幹細胞に対して優れた増殖性を示す低血清ヒト型合成培地を確立した。
ウ.本研究成果の専門的・学術的意義 間葉系細胞から分泌される心筋分化誘導因子はこれまで報告されておらず、その機序をさらに検討することにより、創薬に発展する可能性がある。G-CSFの心筋梗塞リモデリング抑制効果の機序はNature Medicine誌に掲載され、国内から大きな反響があった。ヒト骨髄間葉系細胞のみならずヒト月経血由来の子宮内膜間葉系細胞からも心筋細胞に分化させることに成功したことは、げっ歯類のみならず、ヒトの成体内にもin vitroで心筋細胞に分化可能な細胞が存在することを証明した点で重要である。低血清ヒト型合成培地はヒトへの安全な細胞移植治療に大きく貢献できる。
ヒト月経血由来の子宮内膜間葉系細胞は不特定多数の若年者から容易に採取できる体細胞であり、将来、無痛性で繰り返し大量に採取出来、あらゆるHLAに対応した細胞バンクシステムの構築が可能であることを示唆する。G-CSFの急性心筋梗塞患者に対するリモデリング抑制効果は臨床試験を行っている。 心筋細胞分化誘導因子、間葉系幹細胞の本研究はわが国の当該分野をリードする形で発展している。 8 69 24 6 1   ヒトゲノム・再生医療等研究
神経幹細胞を用いた神経変性疾患の治療に関する研究 平成15-16年度 130,300 国立精神・神経センター
神経研究所
高坂新一 (ア)
・神経幹細胞を含む胎児脳組織の移植によりパーキンソン病モデルラット及び霊長類の異常行動が一部改善されることが示されていた。
・齧歯類胎児脳組織から神経幹細胞を選択的に培養する技術は確立されていた。
(イ)
・齧歯類のみならず、霊長類及びヒト胎児組織からも神経幹細胞を効率よく分離培養する技術を開発した。
・培養神経幹細胞の増殖や分化を調節できる因子を3つ明らかにした。
・脳内に内在する神経幹細胞の増殖を促進させる低分子化合物を明らかにした。
・培養神経幹細胞を齧歯類、霊長類の脳内に移植し生着させることに成功した。また、この両者のパーキンソン病モデル動物の異常行動が脳内移植によって一部改善されることも明らかにした。
・齧歯類及びヒト由来ES細胞を、神経幹細胞さらには神経細胞へ分化させる技術開発に一部成功した。
(ウ)
・本研究においては、齧歯類のみならず、霊長類及びヒトにおいても神経幹細胞の分離培養に成功し、モデル動物のレベルではあるが細胞移植により異常行動の一部が改善されることを明らかにした点は、今後の臨床応用に多大な貢献を果たすものである。
・神経幹細胞の脳内移植による治療法の開発に比べ、より臨床応用に直結すると考えられる脳内在性の神経幹細胞賦活化因子を明らかにした点は治療薬の開発の観点からも極めて重要な発見である。
 神経幹細胞を用いた臨床研究のあり方に関する指針作りが遅れている現状を勘案すると、脳内に内在する神経幹細胞を賦活化出来る可能性を示したことは、今後の治療法のあり方を考える上で極めて重要な成果である。  脳内に内在する神経幹細胞の賦活化により,神経変性疾患や虚血性脳疾患ばかりでなく認知症などの薬剤療法が確立される可能性を示すことができた。 44 2 26 4 1 9
(http://www.ncnp.go.jp/nin/)
ヒトゲノム・再生医療等研究
羊膜を用いた再生上皮シートによる角膜再生の基礎的・臨床研究 平成15-16年度 64,500 東京歯科大学市川総合病院角膜センター 坪田一男 (ア)培養上皮シートの作成に成功し、臨床応用を開始した。(イ)他施設共同研究で遠隔地への運搬法を確立や口腔粘膜上皮シートの作成にも成功し、臨床応用の適応が拡大した。また、羊膜特性の解明や、羊膜を組み合わせた、ハイブリッドポリマーの開発など、基礎的面でも多くの成果が得られた。(ウ)基礎的裏づけと臨床応用の実現により、ここ数年でその成果は確実に上がっており、国際的に見ても高い評価をえている。 本研究参加施設内で、同一のプロトコールで同一施設で作成された上皮シートを用いた多施設共同研究を行った。これにより培養上皮シート移植の有用性を客観的に検討することができ、将来本治療法が多くの施設で行われる際の輸送・保存・術後管理法に関する知見を得ることができた。これらは、再生医療が実用化される際の費用算出や安全性検討の面で一つのモデルとなると期待される。 培養上皮移植による眼表面治療が複数の施設で臨床応用されるようになったことで、治療成績の改善が得られた。これらの進歩は新聞などマスコミでも報じられ、患者からの大きな反響が得られた。また、培養上皮シート作成を目的とするビジネスの計画が動き出しており、近い将来臨床治験が開始される見通しである。これに成功すれば、幅広い施設で本治療法を取り入れることができるようになり、患者にとってより治療を受ける機会が増える。 35 19 38 1 2 15 (http://www.tsubota.ne.jp/kakumaku/main.html) ヒトゲノム・再生医療等研究
骨髄等を利用した効率的な造血幹細胞移植の運用・登録と臨床試験体制の確立に関する研究 平成15-16年度 136,500 名古屋第一赤十字病院 骨髄移植センター 小寺良尚 ア このテーマで、すでに分かっていること:1)同種末梢血幹細胞移植は骨髄移植と同等の効果を有する反面、ドナーの安全性については未だ情報が不十分である。2)血縁間でもHLA二座以上不適合移植はGVHD等の副作用が大きい。3)膠原病の一部は造血幹細胞移植で治療できるとする海外報告がある。4)DLIは移植後白血病再発・重症感染症・生着不全に有効であるがGVHD等の副作用が多い。5)HLA遺伝子学的不適合非血縁間移植は予後が良くない。
イ 本研究で加えられたこと:1)末梢血幹細胞ドナーには短期的にも中・長期的にもある程度の有害事象が発生するが、多くは予測可能である。2)相互に免疫寛容関係にある血縁間ではHLA二座以上不適合移植も可能である。3)強皮症に自家末梢血幹細胞移植は有用である。4)対外活性化・増幅T細胞を用いたDLIは移植後重症感染症に有用である。5)HLA Class−II遺伝子学的不適合移植の成績は完全適合と等しく、又今までその役割が不詳であったC座抗原の不適合はGVHDのリスクとなる反面、再発抑止のKey抗原である。
ウ 本研究成果の専門的・学術的意義:1)血縁同種末梢血幹細胞ドナー全件把握システムに基づくドナー安全に関するデータは国内外で注目され、2004年度欧州造血細胞移植学会(EBMT)のPresidential symposiumにて報告された。2)母児間免疫寛容に基づくHLA二座以上不適合移植の成績は良好であり、その成果は雑誌Bloodに掲載された。3)膠原病に対する新しい治療戦略が示された。4)Ex vivo manipulated cell therapyの有効性と安全性を示し Cell therapyのモデルを形成した。5)HLAの多様な抗原がそれぞれの役割(意義)を有することを明らかにしつつある。
1)造血幹細胞ドナーの安全性に関わる情報は逐一厚生科学審議会(造血幹細胞移植委員会)に報告され、造血幹細胞移植療法に対する国民の信頼性の担保に貢献している。2)HLAのバリアをどこまで越えられるかを検討し幹細胞ドナー総体の拡充に貢献している。3)患者数が多くQOLの低下例が多い膠原病の治癒を望みうる治療戦略は国民医療費の節減に貢献する可能性がある。5)細胞治療の臨床応用への道筋は他の領域でも応用できる。 1)同種造血幹細胞採取・移植法を非血縁ドナー(骨髄バンクドナー)に適用可能になれば非血縁者間造血幹細胞移植を大きく進展させることになろう。2)対外操作を加えた細胞による治療法は新しい治療ジャンルを開くことになろう。 374 3 147 11 10 10 ヒトゲノム・再生医療等研究
臍帯血を用いた造血細胞移植の確立に関する研究 平成15-16年度 142,858 国立病院機構名古屋医療センター 院長 齋藤英彦 ア.臍帯血は造血幹細胞のソースである。イ.小児急性白血病に対しては臍帯血移植は非血縁者間骨髄移植とほぼ同等の安全性、有効性を持つ。また、臨床応用可能な臍帯血の体外増幅法を開発した。ウ.造血幹細胞移植における臍帯血移植の位置付けを明らかにした。また、体外増幅法は国際的にも優れたものである。 本研究の成果により日本さい帯血バンクネットワークのガイドラインが修正された。 わが国における臍帯血移植数が2,000例を超えた。 10     1   2 ヒトゲノム・再生医療等研究
造血系再生医療への応用を目的とした増殖分化制御システムの開発研究 平成15-16年度 86,968 自治医科大学 医学部 小澤 敬也 (ア)1) 第一世代選択的増幅遺伝子(SAG)システムを開発し、基本コンセプトを以前の研究で明らかにしていた。また、骨髄腔内移植法については池原博士(関西医大)により報告されていた。
2)in vitroの系で、脱分化遺伝子(Msx1)を働かせると筋芽細胞が脱分化し、その働きを解除すると筋管細胞・骨細胞・脂肪細胞に再分化することが報告されていた。
3)サルES細胞にレンチウイルスベクターで効率よく遺伝子導入できること、サル個体にES細胞を移植するとテラトーマが発生することを以前の研究で明らかにしていた。
4)AAVの組込み機序を利用したAAVS1領域特異的遺伝子導入法(TVI法)の基本技術は既に開発されていた。
(イ)1) 慢性肉芽腫症の治療に第二世代SAGシステムが有用であることを疾患モデルマウスの系で明らかにし、さらに、骨髄腔内移植法と組み合わせることにより、遺伝子操作により修復した造血系細胞を前処置なしで移植し、その体内増幅が可能であることをサルの系で示した。
2)骨格筋でMsx1遺伝子を一過性に働かせることにより、造血系に分化しうる細胞が筋肉内に出現することをマウスの系で明らかにした。
3)サルES細胞の遺伝子操作法(センダイウイルスベクター法)の開発と、造血系への分化条件の検討、サル個体へ移植する際のテラトーマ防止法の開発を行うことができた。
4)TVI法が間葉系細胞に応用できることを示した。
(ウ)1) SAGシステムは国際的にも注目されており、米国遺伝子治療学会の2005年総会ではシンポジウムの演題に採用された。
2)再生医療分野では、「幹細胞の可塑性」・「分化転換」といった現象が注目されたが、稀な現象であることが認識されてきている。しかし、遺伝子操作技術を駆使することにより、そのような現象を人為的に誘導できることを示唆した点で注目される。
3)ES細胞の性質は、マウスと霊長類では大きく異なっており、サルの系での基礎研究は必要不可欠である。
4)幹細胞の安全な遺伝子操作法の開発は、再生医療の発展のために必須であり、TVI法はその一つとして重要である。
(財)ヒューマンサイエンス振興財団の規制基準委員会第37回規制動向調査WG勉強会の講師として、研究成果を紹介した[平成15年10月31日(東京)]。 1)本プロジェクトは、同種造血幹細胞移植のドナーが得られない遺伝性造血異常疾患で、患者自身の造血系細胞を機能修復して自家移植する根本的治療法に発展するものである。
2)Msx1プロジェクトは、移植医療において新たな幹細胞ソースの開発に繋がるものである。
3)ES細胞は再生医療の観点から注目されているが、サルを利用したトランスレーショナル研究はまだ乏しく、その意味でも貴重なプロジェクトである。
4)レトロウイルスベクターを用いた造血幹細胞遺伝子治療で、遺伝子操作に基づく白血病が発生し大問題となっている。そこで、部位特異的遺伝子導入法は安全性の観点から極めて重要である。
12 15 11 3 1 2((財)ヒューマンサイエンス振興財団主催の先端医学研究等普及啓発セミナー「先端医療の現状と今後―臓器・組織移植医療、遺伝子治療の安全性と倫理を中心としてー」において、本研究成果を含め、“遺伝子治療の安全性と今後の展望”をテーマに2回に亘って講演した[平成16年2月7日(東京)、2月21日(大阪)]。) ヒトゲノム・再生医療等研究
骨髄ストローマ由来因子による造血幹細胞の増幅に関する研究 平成15-16年度 68,250 東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 細胞療法分野 北村俊雄 (ア)骨髄ストローマ細胞由来分子mKirreおよびISFは造血幹細胞の自己複製を誘導する。(イ)mKirreは成体では造血ニッチと考えられている部位に、また胎児では造血幹細胞の発生部位であるAGM領域に発現していた。この結果はmKirreが生体においても造血に重要な役割を果たしている事を強く示唆している。一方のISFはプロトンポンプのサブユニットであること、その造血支持能にはポンプ活性が必須であることが判明した。またISFの過剰発現はTIMP3およびSFRP-1の発現抑制を介して造血幹細胞増幅を誘導している事を明らかにした。(ウ)mKirreが造血幹細胞増幅に関与する分子であることはNature Immunologyに掲載され国内外で注目を集めた。本分子が脳にも発現しているという興味深い研究成果はNeuroscienceにin pressである。 現在までのところなし。 mKirreの幹細胞増幅能に関して海外の企業から問い合わせがあるなど注目された。今後臍帯血中の造血幹細胞増幅に応用予定。 28 6 20 1 0 平成15年度から現在までに、講演27回(内、国際シンポジウム2回、それ以外の海外での招待講演2回)ホームページURL(http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/zouketsu/index.html) ヒトゲノム・再生医療等研究
幹細胞機能のエンハンスメントによる非破壊的造血幹細胞移植穂の確定に関する研究 平成15年度-平成16年度 82,800 東京大学医科学研究所 中内 啓光 (ア)Lnkがc-kit分子の下流にあるアダプター分子であること、B細胞の分化増殖を負に制御する機能を持つこと。
(イ)個々の造血幹細胞の能力を定量的に解析する方法を確立した。
Lnkが造血幹細胞の自己複製を負に制御すること。
Lnkの作用をドミナントネガティブ型Lnkを強制発現させることにより移植した造血幹細胞の機能をエンハンスして移植成績を向上させ得ることを明らかにした。
(ウ)造血幹細胞の能力をクローナルなレベルで定量する方法を確立したことにより、造血幹細胞の自己複製に影響を与える分子の機能を定量的に測定することが可能となった。今後、こういった分子の機能解析が急速に進むと思われる。
また、造血幹細胞の能力を負に制御する機構の存在は全く新しい概念である。さらに本研究ではLnkの機能発現を押さえる方法を開発し、実際に移植の生着率が向上することまで示すことができた。
造血幹細胞の機能をエンハンスする方法を開発し、実際に移植の成績を向上させることができた。
動物実験の成果ではあるが、ヒトの治療にこの原理を応用することは可能である。今後Lnkの機能発現を抑制する低分子化合物を同定すれば、近い将来に臨床応用が期待できる。
比較的簡単な処理で造血幹細胞の移植生着率を向上させることができるようになれば臍帯血の大人への移植、高齢者への移植などにおける安全性、成功率を上げること、ならびに適応拡大が期待される。 24 1 34 0 0 5 ヒトゲノム・再生医療等研究
臓器移植の成績向上と新規治療法開発に関する研究 平成15-16年度 45,000 独立行政法人労働者健康福祉機構千葉労災病院 深尾 立 ア 臓器移植の生着率は全ての臓器で80〜97%である。血液型不適合の臓器移植は不可能だった。免疫寛容は導入できず免疫抑制剤は一生必要である。臓器提供が心停止下に可能なのは腎臓、膵臓のみで、他の臓器では脳死体、生体からである。臓器保存は短時間ある必要から地理的、時間的制約が大きい。臓器移植医療の集約化、拠点化についての検討はない。
イ 臓器移植の生着率低下の問題点を明らかにして解決策を探った。血液型不適合での腎臓移植が優秀な成績を示し、肝臓でも成績が向上した。肝臓移植で3分の1の症例に計画的免疫抑制剤離脱を可能とし、腎臓移植で4分の1の症例で4週間ステロイド離脱を可能とした。心停止下の多臓器提供の可能性を示した。臓器保存時間延長のための方法を開発し、応用した。臓器移植医療の拠点化と理想的な運営形態を明らかにした。
ウ 成果をもとに各臓器での移植成績向上の方策が研究会で発表されている。本研究として全国規模の腎移植におけるステロイド離脱療法に関する研究会が組織され、移植後の免疫抑制剤離脱の臨床研究が全国規模で進んでいる。この成果は全国集会で報告されている。心停止下の多臓器提供、臓器保存時間延長の研究は学会等で報告されて、反響があった。
成果をもとに日本臓器移植ネットワークでの臓器提供、配分の基準が順次改変されてきている。臓器移植医療の拠点化に関する検討は厚生労働行政に反映された。 臓器移植の成績向上をはじめとした本研究の成果全ては、臓器移植医療を一般医療として定着・普及させるための一途として貢献した。 102 2 146 1 0 0 ヒトゲノム・再生医療等研究
臓器移植の社会基盤に向けての研究 平成15-16年度 30,848 国立長寿医療センター 大島伸一 (ア)臓器の提供不足解消のための手法としてのドナー・アクション・プログラムは欧米で、その効果が実証されている。
(イ)病院職員の意識調査により、脳死についての医療人の理解が予想以上に低く、欧米と比べてこの点が著しく異なっていた。
(ウ)日本人の特に医療現場における移植医療に関する問題意識が明らかにされたこと、及び急性期の死のケアに対する要請が大きいことが明らかとなった。
ドナー・アクション・プログラムの導入により、ドナー情報、臓器提供についてオプション提示、臓器提供数のいずれにおいても導入した県で増加傾向にある。 臓器提供数が増えることにより、増え続ける血液透析患者数及びそれに要する費用の軽減に寄与できる。また、世界的に問題視されている海外渡航による移植という社会問題の解決に寄与し、日本の医療への信頼回復が期待できる。 6 8 99 0 2 http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do ヒトゲノム・再生医療等研究
脳死下での臓器移植の社会基盤にむけての研究(H15−再生−020) 平成15〜16年度 27,000 日本医科大学医学部 横田裕行 (ア)平成15年12月10日現在、脳死下臓器提供の事例は僅か25例である。一方、脳死判定が困難で意思表示カードを有していても臓器提供ができなかった事例、すなわち鼓膜損傷、眼球損傷、先天的な視力・聴力障害を有していたために脳死判定基準の脳幹反射が検査できず、脳死判定が出来なかった事例が7例も存在している。また、脳死下臓器提供の際には臓器提供施設では時間的、経済的、精神的な負担が大きいことも過去の研究で明らかになっている。(イ)横田班;脳死判定の際に穂所検査としてSSEPを利用し、現在判定できない症例に対して判定できる方法と理論的根拠、その実際解説をし、測定の際のビデオを作成した。貫井班;脳死判定補助検査として脳血流検査のマニュアルを作成した。北原班;時間的、経済的な提供側の負担を減ずるよう,種々の整備が必要であることが明らかとなった。久志本班;現行4類型の施設においても、通常業務である診療などにも支障を来たしていることが明らかになった。田中班;米国の脳死判定法はの実際を上記視点から調査した結果、人種、宗教によるカテゴリをすべて理解しており、個別に対応出来るよう名マニュアルがあることが明らかになった。藤原班;心臓では適応のあるレシピエントでも、15歳未満では海外で移植を受けざるを得なかった。現時点では15歳未満では脳死下臓器提供ができないからである。菊池班;教科書はコーディネーターの初期教育に極めて有用であることが明かとなった。(ウ)上記のような症例において補助検査を用いた検査法から脳死判定が出来るか否かを横田班、貫井班が検討した。また、北原班、久志本班では提供施設の抱える負担とその解決法に関して考察し、田中班は海外の実情を考慮した日本の提供システムのあるべき指針を提示した。藤原班では現行の脳死下臓器提供のシステムでレシピエント側が抱える問題、特に小児の海外渡航移植の実態について調査した。菊池班では移植コーディネーターの教育の問題について検討した。このような検討は本邦の脳死下臓器提供の円滑化に必ずや貢献するものと考えられる。 本研究の要旨と成果は平成17年3月24日、臓器移植法の改正に向けての与党国会議員の有志の集まりで発表した。より良い臓器移植法の改正に向けて大きな貢献をするものと確信する。 有限責任中間法人日本救急医学会に研究成果を 3 5 14 0 0 平成17年3月24日、臓器移植法の改正に向けての与党国会議員の有志の集まりで発表した。 ヒトゲノム・再生医療等研究
ヒト胎児組織の供給システムのあり方と胎児組織提供コーディネーターの役割に関する研究 平成15-16年度 1,000 信州大学医学部保健学科 玉井真理子 (ア)胎児組織の研究利用が国内外ですでに行われている。(イ)胎児組織の研究利用は、国、学会等の規制のもとに行われている。同時にこれを認めていない学会や州もある。(ウ)胎児組織の研究利用に関する規制のあり方について、網羅的に資料を収集し、共通原理を抽出することができた。 本研究の成果は、厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する第16回専門委員会(平成15年12月12日)において報告され(主任研究者が参考人として招聘された)、これをもとにして委員会での検討資料が作成され、「(仮称)ヒト幹細胞を用いた臨床研究の指針」の作成に方向性を与えた。 本研究の成果を左記専門委員会で報告したこと、また主任研究者のホームページ上で研究成果を逐次報告していたことをきっかけに、関連問題を扱った科学ジャーナリズムのなかでも取り上げられ(朝日新聞社刊『論座』117号、4月9日放送NHKスペシャル「中絶胎児利用の衝撃」など)、社会的な議論の活性化の一助となった。また、本研究の成果を今年中に『資料で読む現代:胎児編』(法政大学出版局)、『胎児組織の研究利用と生命倫理』(保健計画研究所)になって出版される予定である。 0 4 4 0 2 1 ヒトゲノム・再生医療等研究
移植医療におけるドナー及びレシピエントのQOL向上に関する研究 平成16年度 8,500 東海大学医学部 加藤俊一 (ア)骨髄バンクを介して実施されている非血縁者間骨髄移植のドナーに関しては、骨髄移植推進財団における事業においてドナーの権利保護が確実に保証され、有害事象の発生状況も完全に把握されている。また、血縁者間末梢血幹細胞移植のドナーについては、日本造血細胞移植学会が行っている末梢血幹細胞移植ドナーの登録事業により有害事象の発生率が把握されているが、ドナーの権利保護については把握されていない。血縁者間骨髄移植のドナーに関しては、有害事象の発生状況の調査は1994年に坂巻壽らによる報告以来実施されておらず、権利保護の状況についてはまったく把握されていなかった。(イ)血縁者間造血幹細胞移植(骨髄移植及び末梢血幹細胞移植)におけるドナー選択の過程における諸問題が明らかにされ、血縁者間骨髄移植における有害事象の発生状況が判明した。(ウ)造血幹細胞移植のドナーの安全性に関するにエビデンスを示したこと、移植医療現場におけるドナーの権利保護の状況が明確にできたこと、すべての造血幹細胞移植に関する有害事象の発生状況のデータが揃ったこと、などわが国のみならず国際的にも専門的・学術的意義が大きい。 平成17年5月に予定されている厚生労働審議会で報告(予定)。 (1)日本造血細胞移植学会の倫理指針が策定された。(2)骨髄バンクと日本さい帯血バンクネットワークの共同事業として患者相談窓口のあり方が検討されている。(3)骨髄移植のドナーを対象とした傷害保険が末梢血幹細胞移植ドナーにも拡大される方向で日本造血細胞移植学会と当該保険会社が金融庁に申請を行った。(4)日本小児血液学会の造血幹細胞移植ドナーに関する倫理指針の徹底を行うことになった。(5)日本造血細胞移植学会において従来の血縁者間末梢血幹細胞移植ドナーに加えて血縁者間骨髄移植ドナーについてもすべて登録することになった。(6)骨髄バンクにおけるドナー年齢の拡大のための資料となる。(7)日欧共同で造血幹細胞移植ドナーにおける有害事象の継続的調査を行うことになった。 30 14 20 0 8 公開シンポジウムを4班合同で開催した(平成17年1月29日) ヒトゲノム・再生医療等研究
骨髄由来の間葉系細胞と生分解性ポリマーを用いた細胞移植に関する研究 平成14-16年度 249,820 国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部 梅澤明弘 ア) このテーマですでに解っていること
a) マウス及びヒト骨髄間質細胞が多分化能を有していること
b) 細胞の延命、不死化に関わる因子としてRb/p16経路の活性化阻害が重要であること。
c) PLGA メッシュが生体分解性を有し細胞の足場となること。
d) アルミナセラミック、ハイドロキシアパタイトセラミックが骨伝導能を有していること。
e) 骨髄間質細胞を含む骨髄液を添加することにより骨創傷治癒は促進する。
f) ビタミンDが骨粗鬆症治療薬として有用であり、広く用いられている。
イ) 本研究で加えられたこと
a) ヒト骨髄由来及び臍帯血由来間葉系細胞、の延命、不死化が可能となりそれらの細胞が間葉系幹細胞としての多分化能を保持していることを確認した。またRb/p16経路の活性化阻害、TERT導入による安定した寿命延長法を構築した。
b) ヒト骨髄間質細胞から全長cDNAライブラリーを作成し細胞の性格のデータベースを作成した。また米国NIH/NIAグループとの共同研究により骨髄間質由来間葉系細胞の網羅的な遺伝子発現解析を行いデータベースを作成し、骨髄間質細胞をプロファイリングした。
c) 細胞の足場となるコラーゲン添加型PLGA(生体分解性ポリマー)メッシュを開発し骨分化誘導可能なマウス骨髄間質細胞株(KUSA-A1)と組み合わせることにより任意の形態の骨を作成することが可能となった。
d) イヌ壊死骨モデルにおいて骨髄間質細胞を添加し変形が生じること無く骨再生が得られた。
e) アルミナセラミック、ハイドロキシアパタイトセラミックに骨髄由来間葉系細胞を添加しその表面に骨基質をの沈着を確認した。またin vitroでの同様の成果を得た。
f) 骨髄由来間葉系細胞にビタミンDを作用させることにより脂肪細胞への分化が抑制し骨量の増加を促進した。
ウ) 本研究成果の専門的・学術的意義
これらの研究内容はすべて国際的な医学、科学雑誌に掲載され国内外からの多くの反響を得ている。
骨組織の維持にかかわる問題は社会的に注目されて久しい。骨粗鬆症に代表される問題は、閉経後婦人、寝たきり(手術後を含む)、老化、宇宙医学(無重力状態)、ダイエットと多岐に渡り、その意義は、時代と共に増大している。骨形成に用いることが可能な高分子担体には天然高分子と合成高分子のふたつが存在する。天然であるコラーゲンは細胞保持性に優れているものの、形状の維持が困難である。そのため強度に優れた合成高分子の研究が進んできたが、疎水性であるが故に細胞接着性に乏しいという欠点が存在する。両者の問題点を解決するため、合成高分子にて作製したスポンジ形状をした培養担体にコラーゲンを複合化することで初期強度に優れ、かつ細胞接着性に優れた培養担体を開発、骨・軟骨再生における有用性を報告してきた。均一な細胞分布、形状制御の簡便さを目的として新たにシート形状をした複合培養担体を作製し、さらに骨髄間質細胞由来骨芽細胞を用い、新規複合化シートの形状制御を要する骨再生への有用性を明確にすることは新規医療ビジネス戦略として妥当であると同時に社会への責務を果たすことになるものである。 a) 骨髄由来間葉系幹細胞の詳細なプロファイリングにより我が国当該分野での成体幹細胞研究分野をリードする形に発展している。
b) 骨髄由来間葉系細胞を用いてin vitroでの骨形成を可能とする成果をもたらした。これは臨床応用への具体的な重要な足がかりとなっている。
c) Cell processing centerの設立により製造管理及び品質管理規則を満たす施設であること、さらにヒト以外の動物由来細胞成分を排除した骨髄由来間葉系幹細胞培養システムを構築した。
28 1 0 1 0 1 基礎研究成果の臨床応用推進研究
癌治療ペプチドワクチン及びペプチド抗体開発:遺伝子同定から臨床試験までに関する研究 平成14-16年度 233,180 久留米大学 医学部 伊東恭悟 (ア)がんペプチドワクチン候補の同定は限定的であり、更にその臨床展開は殆ど進捗が無かった。(イ)基礎研究では目的としたHLA-クラスIA及びBアレールに拘束される拒絶抗原遺伝子を新規に50以上、ペプチドでは100以上同定した。更にHLA−A3スーパーファミリーに拘束されるペプチドを複数同定し、その結果HLA型の差異にかかわらず癌症例全例へのペプチドワクチンの提供を可能とした。一方、臨床研究では目的としたテーラーメイド癌ペプチドワクチン第I相及び早期第II相臨床試験を終了させ、進行性前立腺癌と脳腫瘍において安全性が確認され、更に良好な臨床効果が得られた。(ウ)進行性前立腺癌と脳腫瘍へのテーラーメイドペプチドワクチンは国内外から大きな反響が得られつつある。 本研究成果の医薬品化事業を大学発ベンチャーを設立して実施中であるが、そのベンチャー企業より、独立法人科学技術振興機構の新規企業向け委託開発事業(平成15年度)にホルモン不応答性再燃前立腺がんへのテーラーメイドペプチドワクチン開発を応募して採択された。同じく独立法人医薬品医療機器総合機構の研究支援業務委託事業(平成16年度)に術後放射線化学療法抵抗性の脳腫瘍へのテーラーメイドペプチドワクチン開発を応募して採択された。 これまで治療法が無かった癌種への新しい癌治療法の開発により国民の健康と生命を守ることに貢献できる可能性を見出した。また、臨床的に有効な癌特異免疫療法は開発されていないが、本研究にて臨床的に有効な免疫療法開発の可能性が示された。 62 14 71 22 2 9 基礎研究成果の臨床応用推進研究
基礎研究成果の臨床応用推進研究の企画と評価に関する研究 平成16年度 8,000 財団法人医療機器センター 長谷川 慧重 (ア)厚生労働科学研究の応募課題に対する事前評価の際、評価委員に過度の負担が掛かっており、効率的・効果的な評価作業が実施されていない。(イ)事前評価システムの効率的・効果的な最適モデル(ピアレビュー)のあり方を検討し、本研究事業をモデルケースとしてピアレビューを実施した。(ウ)検討した事前評価システムが厚生労働科学研究全体で採用されれば、我が国の厚生労働科学の全体的底上げと発展に大きく寄与することが示唆された。 平成17年度の応募課題に対し、ピアレビューを実施。事前評価に貢献した。 限られた研究資源を有効活用するため、優秀な研究の絞り込みに作業(事前評価)に重点をおく必要があり、その結果、事後の研究成果を著しく向上させることが期待できる。その意味から本研究の社会的意義は高い。 0 0 0 0 1 0 基礎研究成果の臨床応用推進研究
高機能人工心臓システムの臨床応用推進に関する研究 平成14-16年度 309,100 国立循環器病センター 北村惣一郎 (ァ)世界的に見て体内完全埋め込み型全人工心臓システムとして実用化されたシステムは無い。(イ)体内完全埋め込み型全人工心臓の要素技術の研究開発、構成要素の統合化がなされ、慢性動物を生存させた。耐久性試験は継続中。(ウ)体内完全埋め込み型の慢性動物の生存は我が国初、世界的にも3つ目のシステムとなった。耐久性試験も1年を超えて継続中。基礎技術の臨床応用がなされた。 先端医療機器の研究開発に挑戦できた。派生技術に基づいた世界最小レベルの人工心臓駆動装置、抗血栓性を改良した補助人工心臓の医療機器としての厚生労働省からの製造承認を取得できたなど、医療機器産業ビジョンを具現化した。 本研究で開発した技術に基づいて、重症心不全の新しい治療機器を製品化する基礎技術を多数生み出すことができた。そのうちのいくつかは、ベンチャー企業などによる製品化の道筋に乗っている。 11 66 69 3 0 2 基礎研究成果の臨床応用推進研究
GM−CSF吸入による重症特発性肺胞蛋白症の治療研究 平成14-16年度 170,000 新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センター 中田光 (ア)半世紀以上病因が不明であった特発性肺胞蛋白症の病因が抗GM−CSF自己抗体であることを我々は世界に先駆けて解明した。(イ)これまで、気管支鏡や肺生検などつらい検査を受けなければならなかった患者の診断が血清検査で行えるように診断法を開発した。(ウ)これまで、全肺洗浄という片肺を20リッターの生理食塩水で洗浄するような大変な治療に変わって、毎日20分の吸入で楽に治療できる方法を開発した。 ◎病因である抗GM−CSF自己抗体の検出法を全国に啓蒙し、血清診断の普及に努めた。◎本治療は、在宅で治療するため、入院治療に比べて患者の精神的負担が軽減される。また、治療途中でも改善すれば、患者の社会復帰が期待できる。また、入院費の節減につながると思われる。 我が国で病因が解明され、血清診断法が開発され(優先権主張番号特願平10−303858)、本申請に述べたように新治療法も開拓されつつある。この研究過程で、自己免疫疾患の新側面が明らかとなり、かつ、研究手法の技術的な集積が行われたために、今後も海外に先んじて研究を進めていける分野である。また、本プロジェクトは治療研究なので、大学の基礎医学研究者と大学病院の臨床スタッフが協力して世界に発信できる成果を出すことが期待できる。 11 17 18 1 0 3 基礎研究成果の臨床応用推進研究
パーキンソン病や癌などに対するAAVベクターを用いた遺伝子治療法の開発とその臨床応用 平成14-16年度 184,509 自治医科大学 医学部 小澤 敬也 (ア)1) AAVベクターを用いた神経疾患の遺伝子治療では、パーキンソン病が対象疾患として適していると考えられていた。
2)AAVベクターを用いたパーキンソン病遺伝子治療が有効であることを、疾患モデルラットの系で既に明らかにしていた。
3)AAVは病原性がないことから、それに由来する遺伝子導入ベクターは安全性が高く、様々な応用が検討されてきていた。
(イ)1)パーキンソン病遺伝子治療臨床研究の実施計画書を作成した。
2)AAVベクターを用いたパーキンソン病遺伝子治療の臨床プロトコールに基づいて、疾患モデルサルの系で前臨床研究を行い、その有効性を確認した。また、モデルラットの系で、導入遺伝子の制御法を開発した。
3)基礎研究では、以下の検討を行った。i)AAVの血清型と組織特異性の関係について検討した。ii)抗腫瘍効果について、可溶型Flt-1遺伝子/IL-10遺伝子搭載AAVベクターの治療効果を確認した。また、可溶型Flt-1発現AAVベクターの網膜内注入により、ラットモデルで糖尿病性網膜症に対する治療効果を認めた。iii)腫瘍内自己複製型AAVベクターの開発を行った。iv)心血管系疾患に対して、IL-10発現AAVベクター筋注法の効果を疾患モデル動物で明らかにした。v)中枢性尿崩症モデル動物でAAV-AVPの治療効果を観察した。vi)感音性難聴に関して、GDNF発現AAVベクターの蝸牛への注入の効果をモデル動物で認めた。vii)新生仔マウスへのAAVベクター注入法を検討した。viii)AAVベクターによる脂肪細胞への遺伝子導入条件を明らかにした。
(ウ)1)パーキンソン病は遺伝子治療に適した対象疾患であり、臨床研究の成り行きが注目されている。
2)霊長類のサルでパーキンソン病遺伝子治療の効果が確認されたことは、臨床応用に向けて重要な前進である。また、将来的発展には、導入遺伝子の制御法の開発は不可欠である。
3)AAVベクターを利用した遺伝子治療法の可能性を探る上で、様々な疾患モデル動物の系での前臨床研究は大きな意義を持っている。
(財)ヒューマンサイエンス振興財団の規制基準委員会第37回規制動向調査WG勉強会の講師として、研究成果を紹介した[平成15年10月31日(東京)]。 1)安全性の高いAAVベクターを用いた遺伝子治療の臨床研究を予定している(平成17年6月に厚労省へ計画書を提出予定)が、わが国では最初のものとなる。また、パーキンソン病を対象としている点でも世界的に注目されている。
2)他のウイルスベクターの深刻な副作用が問題になっている今日、安全性の高いAAVベクターに対する期待が高まっている。
25 18 75 6 1 2 基礎研究成果の臨床応用推進研究
自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法の開発に関する研究 平成14-16年度 144,237 山口大学医学部附属病院 沖田 極 (ア)骨髄細胞中に肝細胞に分化する幹細胞が存在する発見があった。しかしながらその幹細胞を実際に肝不全患者に使う治療法の開発は全く行われていなかった。(イ)我々は(自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法)の臨床応用を進める基盤モデルとして骨髄細胞から肝細胞への分化評価モデル(GFP/CCl4モデル)の開発し、骨髄細胞が持続的肝障害の肝硬変時に肝臓に遊走され肝細胞へ分化・増殖することを明らかにした(JB2003、特公2003-70377)。さらにこのモデルの解析を通じ、骨髄細胞移植により生存率の回復、また肝線維化の改善を発見した(Hepatology2004, この発見はWiley社よりHepatology News Alert記事とし世界に発信された)。さらに骨髄細胞を用いた再生療法をより効率的に行うための骨髄細胞の肝細胞への分子制御機構をMicro array-Self Organization Map(SOM)解析法にて解析した(FEBS letters 2004, 生データはhttp://liver-project.med.yamaguchi-u.ac.jp/researchのサイトでホームページにて公開している。)。また我々の開発したLiv8抗体は骨髄中の肝再生に有効な分画の分離に有効であることが明らかになった(BBRC 2004)。今後は抗原同定を進め人抗体を作ることで、効率的な再生療法の臨床開発が期待できる。これらの基礎研究成果を基盤に約2年の月日をかけ臨床研究の準備を進め平成15年11月14日に国内初の(自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法)のPhaseI臨床研究を開始した。現在までに8例の患者に施行し副作用の発生はない。また肝機能について長期に経過観察しえた6症例についての解析をしたところ、(術前、1ヶ月、6ヶ月のエンドポイントでの評価では、平均値で血清アルブミン値は15.2%(1ヶ月後)、および8.7%(6ヶ月後)上昇、血小板値は19.8%、および18.9%上昇、また肝線維化の評価として血清プロコラーゲンIII型ペプタイド値は9%および12.3%減少と肝線維化の改善傾向を確認した。また骨髄細胞投与1ヶ月後の肝生検組織において肝再生マーカー蛋白の発現より肝再生も誘導されたと考えられた。この結果は、肝移植以外に有効な治療法がない肝不全患者に対し、自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法の有効性を示し、また安全性が確認された。(ウ)骨髄細胞移植に伴う肝線維化改善についての発見は、Wiley社よりHepatology News Alert記事とし世界に発信された。またNew Scientist誌(12月16日号)にこの線維化改善については、肝硬変症の全く新しい治療法の開発への可能性へのトライアルとして発信された。 本研究助成で開始した臨床研究より、肝移植以外に有効な治療法がない肝不全患者に対し、自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法の有効性を示唆され、また安全性が確認された。本治療法は移植とは違い自己細胞を使うため倫理的問題がほとんどない。今後は本治療法の臨床における有効性のエビデンスを明確にし、増加している肝不全患者を救命するため山口大学で施行したプロトコール、技術を多施設で検討する必要があると考えている。また治療法の開発普及のためには、今までのPhaseI臨床研究により開発した基盤技術(実際のプロトコール)を、他の施設においても施行可能にするようにすることが、全国の肝不全患者によりよい治療法を提供するために不可欠と考えており、旭川医科大学、山形大学、東京医科歯科大学、山口大学と、日本のほぼ全域を網羅するように拠点を選定し多施設にて臨床研究ができる体制が整えた。このグループの名はLiver Regeneration with Cell Transplantation (LRCT) Study Groupとする。このLRCTにて、『自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法』のPhaseIIの臨床研究を開始したいと考えている。このPhaseII臨床研究は多施設研究であり、当初は山口大学で開発したプロトコールを各施設で行えるように技術移転を行い各施設ごとに3症例/年の施行を目標に臨床研究を進める。このような研究体制により今後は本治療法の確立の全国に普及、また多施設研究を行い有効性についてさらに評価していく。このように具体的にPhaseIからPhaseIIと多施設研究を推進していくことで、日本発のエビデンスをもった次世代の肝臓再生療法の開発が推進できる。 1.臨床研究については、その開始がNHK等の報道機関で取り上げられ非常に大きな期待の中で臨床研究が開始された。テレビ以外の新聞報道は15件以上あり、非常に大きな注目を集めている。また現在も全国各地から臨床研究参加依頼が山口大学病院にきており、肝不全患者に対する本治療法の開発は今後ますます社会的インパクトは非常に大きい。
2.これらの研究成果を国際的にアピールするために我々は新たに山口大学に研究協力推進体:国際肝再生医療コンソーシアムを設立し、基礎研究、臨床研究の活動拠点としている。このコンソーシアムを通じ、我々が開発を進めている自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法の開発が国際的に推進できる体制作りになると考える。
そのホームページは
http://kenkyusuishin.jimu.yamaguchi-u.ac.jp/study03112okita.html
3.また海外の招待講演としてFASEB Meeting1回、NIHにて4回, Duke大学で1回、Yonsei大学で2回、また台湾消化器病学会で2回招待講演を主任研究者、分担研究者で行った。
10 26 56 4 0 7 基礎研究成果の臨床応用推進研究
Ex vivo増幅臍帯血幹細胞を用いたトランスレーショナルリサーチ 平成14-16年度 279,460 先端医療センター 再生医療研究部 中畑龍俊 ア)造血前駆細胞表面に発現しているサイトカインレセプターの解析より、Stem cell factor, Thorombopoietin, IL-6/solble IL-6R, Flk-1/Flt-3 ligandの組み合わせで培養を行うと、造血前駆細胞を体外増幅させることが、でき、NOD/SCIDマウスによる移植実験において、長期造血を維持できる最も未分化な造血前駆細胞を4.3倍増幅できることを確認した。
イ)基礎の成果を臨床応用するため、GTP(Good Tissue Practice)に準拠可能な閉鎖系、無血清培養法を開発し、また、非臨床試験として増幅される細胞の、安全性試験、効果を検証する試験をin vitro, in vivoの系で確認し、臨床試験実施要項を作成し、ヒトの臨床試験を行うための基盤を整備した。
ウ)基礎研究を臨床応用するトランスレーショナルリサーチの具体的研究方法を示すことができ、特にマウスを用いた増幅臍帯血の移植後の動態を長期にわたり追跡できたこと、NOGマウスを用いてこれまで不可能とされていた、T cell系の再構築を確認できたことに意義がある。
臨床試験にて安全性が確認されれば、細胞数の関係で臍帯血バンクで1割しか利用されていない保存臍帯血の利用率を高めることが可能であり、ドナープールの拡大と保存に伴うコストの削減に貢献できることが予想される。また、細胞治療製剤の安全性、品質管理法、培養法の基盤を整備し、具体例として平成14年5月2日の第3回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会で報告し、ヒト幹細胞を用いた臨床研究の指針策定に反映された。   55 33 127 10 1 0 基礎研究成果の臨床応用推進研究
虚血性疾患に対する血管内皮前駆細胞移植の基礎・臨床研究 平成14-16年度 183,602 先端医療振興財団先端医療センター 浅原孝之 (ア)血管内皮前駆細胞が骨髄由来の細胞であり、血管新生部位に移植されると、血管再生に貢献することが、動物実験的にわかっていた。(イ)虚血性疾患患者に、G-CSF投与後に末梢血液から血管内皮前駆細胞を採取し患部に移植する治療の臨床研究が実現し、安全性有効性の確認がされている。(ウ)本当の意味での幹細胞治療が臨床的に開始された。この臨床研究は、臨床プロトコールのあり方、バイオインフォーマティクスの重要性を踏まえた先進的なトライアルとなった。このための前臨床研究は、Circulation, Am J Physiol, などに発表された。 本研究は虚血性心疾患の治療に大きな可能性を切り開くものである。虚血性疾患は、動脈硬化性疾患、難病性血管炎を原因として、拡大する疾患人口を考えると、人類の大きな課題の一つといえる。この治療の発展は、公共的な利益に大いに結びつくものと考える。この臨床研究は、臨床プロトコールのあり方、バイオインフォーマティクスの重要性を踏まえた先進的な試みなったことも、厚生労働行政に対する貢献になったと考える。 血管内皮前駆細胞による血管再生療法としての治療法開発が、新たな医療領域を創り出し経済活性化に繋がると考える。この次世代治療である血管内皮前駆細胞の生体外増幅の医療応用も新たな医療産業化に貢献すると考えられている。 37   63 3   5 基礎研究成果の臨床応用推進研究
アルツハイマー病発症の分子機構におけるコレステロールの役割の検討 平成14-16年度 82,497 国立長寿医療センター研究所 アルツハイマー病研究部 道川 誠 (ア)体循環系におけるコレステロール代謝・輸送系については、多くの知見の蓄積があった。
(イ)中枢神経系でのコレステロール代謝・輸送系については未解明であった。本研究は、(1)これらを明らかにし、(2)神経細胞におけるコレステロールの意義及び、(3)コレステロールとアルツハイマー病病理との関連を明らかにした。
(ウ)(1)体循環系から独立した中枢神経系のコレステロール輸送は、脳内アポリポ蛋白Eによってアイソフォーム特異的に担われていること、(2)アルツハイマー病病理発現にコレステロールは中心的役割を果たすこと、等が明らかになり、(3) 脳内コレステロール代謝調節によるアルツハイマー病発症予防への可能性が示された。
本研究で得られた新たな視点が契機となり、複数の大学・病院で脳内コレステロール代謝とHDLコレステロール代謝に着目した研究が開始されている。脳内コレステロール代謝を調節する方法を開発し、アルツハイマー病発症を予防することで国民生活の向上に貢献が期待できる。 アルツハイマー病発症機構とコレステロール代謝変動との関連に関する研究及び、脳内におけるコレステロール代謝機構の全貌を明らかにする研究で、わが国における当該分野をリードする形に発展している。国民になじみのあるコレステロール代謝と、関心の高いアルツハイマー病発症機構との関連を示した点に意義がある。 29 9 25 0 0 7(http://www.nils.go.jp/)研究の成果が分かるホームページのURL、市民団体・町内会等主催の講演会 (5回)、シンポジウム開催(1回)。 長寿科学総合研究
摂食・嚥下障害患者の「食べる」機能に関する評価と対応 平成14-16年度 11,933 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座 才藤栄一 (ア)嚥下前咽頭進行を特徴とする咀嚼嚥下という様式が明らかになってきたが、臨床的意義の検討は乏しい。(イ)健常者に比して嚥下障害者、高齢者の嚥下前咽頭進行は深く誤嚥の危険を高めていた。評価では適切な2種の負荷法が同定でき、対処法では頭部屈曲位、食物形態では温度での変化がすくない物性が適していた。(ウ)嚥下障害への適切な対応が強く求められている医療現場で、評価基準や対処法として注目を集めている。 臨床現場での咀嚼嚥下負荷手順として、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「嚥下造影の標準的検査法(詳細版)」に採用された。 食べる機能は、高齢障害者の最後の楽しみであり、その際、咀嚼を伴った嚥下に対する理解が必須であり、臨床的意義に直結した検討は、訓練法開発や嚥下障害食開発に結びついて展開中である。 3 55 69 0 2 63 長寿科学総合研究
在宅高齢者に対する訪問リハビリテーションのプログラムとシステムに関する研究 平成14−16年度 108,540 国立長寿医療センター 研究所
生活機能賦活研究部
大川弥生 ア)我が国における訪問リハビリテーション(以下リハ)の本格的スタートは介護保険開始後とみてよく、具体的プログラムシステムも確立されていず、その効果も明らかでなかった。
イ)訪問リハは現行の「通院・通所不可能な重症者の機能訓練」ではなく、「実生活の場での利点を生かした活動自立訓練」へと位置づけた。また高齢者の生活機能低下について「廃用症候群(生活不活発病)モデル」と「脳卒中モデル」との類型化ができた。
ウ)本研究成果は訪問リハのあり方のみでなく、リハ全般及び生活機能低下の対応への指針を明らかにしたこととして大きく注目されている。
・廃用症候群モデルと脳卒中モデルの類型化はリハビリテーション(以下リハ)のみでなく、介護予防の対象が廃用症候群であるとターゲットを明確にするための基礎となり、介護予防に関する各種行政施策に大きく反映された。
・平成15年度の介護報酬改定においてで訪問リハが「活動向上訓練主体」と明確になるとともに、その他のリハ体系の大幅見直しの基礎資料となった。
・平成16年の高齢者リハビリテーション研究会中間報告、老人保健事業の見直しに関する検討会中間報告及び介護予防に関する各種委員会報告書等に本研究におけるリハビリテーションに係る考え方が反映された。
?本研究成果は具体的事例提示も含めて一部マスコミで報道され、一般的にも広く啓発され、訪問リハのみでなく、リハビリテーション(以下リハ)を訓練室での機能回復訓練という誤解をとき、正しく理解・活用をしてもらう流れを作った。
・廃用症候群モデルと脳卒中モデルは、リハのあり方、介護保険サービスの活用のあり方を大きく変える契機となっている。
6 30 24 0 8 103 長寿科学総合研究
超強力サンドイッチ型 超音波モータを用いた パワーアシストスーツの実用化 平成14-16年度 122,143 国立大学法人 東京農工大学 遠山茂樹 ア.本パワーアシストスーツは高齢化の介護の為のものであり、従来は介護者保護のために腰やひざのサポータがあるのみでこのようなマルチ能動的なものはない。
イ.本研究では、初めて介護者の力を補助、保護するスーツを開発し、介護にきわめて有効で有ることを示した。特に腰とひざに大きな力がかかる重筋作業をスーツが効果的に補助し、下肢のアシストにはきわめて有効であった。
ウ.本スーツはウェアラブルロボットの一種である。ウェアラブルロボットは、他の研究機関でも開発例があるが、本システムのように軽い装着感と滑らかな出力のものは本システムだけであり、その学術的意義は大きい。特に福祉工学シンポジウム2004では、きわめて高い評価をいただき、最優秀講演賞も受賞した。
日本機械学会の機素潤滑設計部門のヒトメカ研究会において主任研究者が委員長を務め、本システム利用時のガイドラインの作成、安全性の確保などの作業に着手した。これは人とロボットが共存する時の重要なガイドラインとなると期待される。 日経本誌に大きく取りあげられるなど高い社会インパクトを与えつつある。マスコミからの取材十数件、一般の利用を考えている方からの連絡二十数件と社会からの期待はきわめて高い。 10 5 10 3 2 20 長寿科学総合研究
高齢者の社会参加に関連する要因の解明と支援システム構築に関する研究 平成14-16年度 26,517 桜美林大学大学院 国際学研究科 老年学専攻 長田久雄 ア 社会参加、社会貢献は高齢者の心身の健康や生活の質の維持増進に効果があるにもかかわらず、定年直後にボランティアなどを通して社会貢献をする準備をしていない人が8割を超える。

イ 社会参加を促進するために行政では既存の支援を促進するともに、地域社会機能の再生強化が求められ、高齢化社会の変化に対応できる支援システム、サービスの再構築とともに、若年期からの支援システムの構築も必要であることが明らかとなった。

ウ 社会参加の効果が明らかになったことから、今後は、その支援方法の研究に焦点化してゆく方向づけが明確にされたと考えられる。
社会参加の促進・妨害要因が明確になり、それに基づく支援システム案が考察されたので、具体的施策立案の際に参考とすることが可能と考えられる。 今回の成果報告書の行政期間等への配布により、提案されたモデルの活用を具体的な形で促すことが可能となる。 5 7 30 0 0 30 長寿科学総合研究
音声聴取改善を目的とした新しい両耳補聴方式の開発(H-15長寿-029) 平成15年度 − 16年度 19,368 東北大学大学院医学系研究科 神経・感覚器病態学講座 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 川瀬哲明 ア)多帯域分割両耳分離聴の検討は過去に1件の報告があるが、今回行なったような、上向性マスキングの軽減を目的とした2帯域分割補聴に関する検討はない。
イ)○低域にエネルギーの大きな入力音があるときに、2帯域分割補聴が特に有効。○先行母音のホルマント周波数との関係では、第1ホルマントと第2ホルマント間の周波数を分割周波数として2帯域に分割した場合に、両耳分離補聴の補聴効果が大きい。○両耳間時間差を適切に設定することで、良好な音像定位が可能。○両耳分離補聴の適応。
ウ)日本聴覚医学会誌、日本音響学会、音響に関する国際学会などで発表し、蝸牛基底板における上向性マスキングに対する有効な対策の1つとして、国内外から大きな反響を得た。
より良い補聴効果の実現は、高齢者の聴覚コミュニケーション改善、社会参加推進として、その意義は多きい。高齢者、難聴の社会参加が期待される。 次世代の補聴器が備えるべきオプション機能の1つになると期待され、実用化へ向けた産学共同研究推進が検討予定。 4 6 9 1 0 東北大学大学院医学系研究科ホームページ中の耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野の紹介、同電気通信研究所ホームページ中の先端音情報システム研究分野の紹介のなかで、本研究への取組みを紹介している。 長寿科学総合研究
高齢者炎症性・難治性肺疾患における病態分子機序の解明および新治療法開発の戦略的展開 平成14−16年度 81,425 東京大学医学部附属病院 長瀬隆英 (ア)老年者におけるARDS、特発性間質性肺炎などの炎症性肺疾患は社会的にも重要であり、発症には種々の化学物質が複雑に関与していると考えられる。(イ)脂質性メディエ−タ−、抗菌ペプチドなどが、呼吸器系炎症の発症・制御に寄与している可能性が示された。(ウ)本成果は、Nature Medicine, JCI, J Immunol、JBC等の雑誌に掲載され、難治性の老年者呼吸器炎症性疾患に対する新治療薬開発を提示する視点から、国内外より大きな注目を浴びた。 本研究成果の一部は、呼吸不全やCOPDのガイドライン作成および改訂に反映し、全国に普及。 本研究成果は、難治性の老年者呼吸器炎症性疾患に対する新治療薬開発の実現化に寄与することが予想される。 35 20 20 2 2 5 長寿科学総合研究
軽度認知障害の前方視的・後方視的研究 平成14-16年度 52,152 財団法人・東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 村山繁雄 (ア)軽度認知障害は、アルツハイマー病初期を多く含み、認知症予防の点で重要である。(イ)軽度認知障害は、アルツハイマー病だけでなく、さまざまな病理学的背景を持ち、それをもとに介入することが重要である。(ウ)国際的に最先端の神経病理診断から得られた成果を、前方視的研究に結合させる試みは、米国神経病理学会誌、米国神経学会誌等に多数の論文を掲載する成果を生んだ  軽度認知障害診断・治療クリティカルパスをインターネット上に公開、検査可能施設を、独立行政法人国立病院機構を中核に全国レベルに拡大することで、国民全体が本研究の成果に基づく成果の恩恵を受けうるシステムを確立した。  アルツハイマー病の基準検査として、スウェーデンで採用されている髄液バイオマーカー、米国で採用されている糖代謝ポジトロンCT scanを、本研究費を用いることで、軽度認知障害の生物学的診断に用いることができた点は、前方視的研究参入者が200人を越える状態をもたらし、痴呆予防への有用性を明らかにすることができた 18 37 109 0 2 24
1. www.mci.gr.jpを立ち上げ成果発表
2. 第45回日本神経病理学会シンポジウム主催(軽度認知障害の神経病理)
3. NHKテレビに主演しての啓蒙1回
4-13講演:痴呆予防、東京6回、浜松1回、名古屋2回、大阪1回、
14-16.科学技術週間での講演3回
17-22.老人研究所友の会での講演6回
23-24.新聞記事2回
長寿科学総合研究
健康寿命およびADL, QOL低下に影響を与える要因の分析と健康寿命危険度評価テーブル作成に関する研究:NIPPON DATA80・90の19年、10年の追跡調査より 平成14-16年度 36,473 滋賀医科大学福祉保健医学講座 上島弘嗣 (ア)NIPPON DATA80・90は国民の代表集団である厚生省(当時)の第三次、第四次循環器疾患基礎調査対象者、それぞれ1万人、8,000人の19年間、10年間の大規模コホート調査である。追跡率は95%を超え、調査時の健診所見、生活習慣病と生命予後との関連を明らかにしてきた。さらにそれぞれのコホートの65歳以上の高齢者に対して日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)の調査を実施し、本邦のADL低下の発症率等について明らかにした。
(イ)日本人の代表集団の19年に及ぶ追跡調査成績(NIPPON DATA)に基づいて、事故等外的死因を除く全死亡、脳卒中および冠動脈疾患死亡の健康度評価テーブルを作成した。この健康度評価テーブルは、年齢、性別、喫煙習慣、血圧水準、耐糖能異常の有無、血清総コレステロール値等、各個人が持っている要因のレベルに応じて推定される10年以内の死亡確率が色づけ表示されており、自らの健康度を視覚的に容易に把握することができるとともに、生活習慣の改善を必要とする個人への動機づけに利用することができる。
試験的にこの健康度評価テーブルの現場での活用を試みた。平成16年度に広島県下の某町において、生活習慣病予防対策事業に取り込み、地域住民の健康教育で使用した。生活習慣病発症の可能性を早期から予測し、個々の健康指導を適切に実施するために住民の基本健康診査結果をこのテーブルに当てはめ、生活習慣改善プランの設定に活用した。健康度評価テーブルは、生活習慣改善プランを作成する上で、各種検査値の変動を示すグラフとともに視覚的な指導に使用できる。特に収縮期血圧、血清総コレステロール、血糖値および喫煙習慣による10年以内のリスク別死亡率の関係が色分けによって視覚的に明示されるため、保健指導を行う上で受診者にとって分りやすく効果的である。またこれとは別に集団全体の将来の要介護者数を予測するテーブルも作成された。これを用いると簡単な断面調査により5年後のADL低下者数を予測でき、介護サービス等の需要の将来予測に有用である。 分析から得られる比例ハザード式より、国民の血圧水準を2mmHg低下できれば、また糖尿病が1%減ればどの程度健康寿命の延長が測られるか等を推計することが出来る(「健康日本21」の数値目標の設定の基礎資料となった)。また要介護者の死亡率や回復率を考慮した上で、将来の要介護者数の推計が可能である。従って、「健康日本21」対策の中間評価や最終年度の評価にあたっても、その危険因子対策の結果から、疾病の発症予防、要介護者の予防にどの程度貢献できたかを評価することが可能である。また健康度評価テーブルを一般で利用可能な教材として整備すれば、健康教育やヘルスアセスメントの場で広く利用することができる。 14 14 14 0 2 12 長寿科学総合研究
          (ウ)米国フラミンガム研究やニュージーランドの研究では、冠動脈疾患のテーブルは存在しているが、これらは日本国民にそのまま当てはまるものではない。日本人の代表集団約1万人を対象として追跡したNIPPON DATA80は、実際に日本人で観察された危険因子と死亡との関連が地域的な偏りなく適切に示されている調査であり、今回作成した健康度評価テーブルは、この調査をもとに計算されたものであるので、日本人の死亡リスクを的確に表したテーブルである。従って、このテーブルは広く国民の健康増進に役立つものと期待される。                 長寿科学総合研究
老化因子と加齢に伴う身体機能変化に関する長期縦断的疫学研究 平成14-16年度 153,476 国立長寿医療センター 下方浩史 (ア)施設型の老化に関する長期縦断研究は日本ではほとんど実施されていない。(イ)調査結果をインターネット上に公開した。このように包括的かつ詳細な老化の基礎データの公開は他にほとんど例のないものである。(ウ)日本人における加齢による身体的および精神的変化の包括的縦断疫学研究は、(1)基礎医学から社会科学まで長寿科学全体の基礎データとなるばかりでなく、(2)正常老化と加齢に関連した身体諸臓器の病的変化を明確に区別し、老化機序の解明に貢献するともに、(3)生活習慣・環境要因による老化や老年病への影響が解明され、予防法が明らかになる。 高齢化が急速に進む日本の社会において、高齢になってもできる限り元気に過ごす国民の共通の願いを実現することは急務である。高齢者の健康を増進させ、疾病を予防し、医療費及び介護費用の適正化が求められている。本研究の内容は、そのための基礎データとして必要不可欠である。また国民の健康寿命を伸ばすことを基本目標とした政府の「健康フロンティア戦略」実現のために重要な内容である。 研究成果は国民全体の保健や医療・福祉の向上を通して、社会に大きく貢献する。老化に関しての大規模な長期縦断研究から得られたデータは、国内ばかりでなくインターネット等を介して世界へも情報を発信することにより、今後の長寿科学の発展へ大きく貢献できると期待される。 19 18 104     一般向け書籍(1件)、一般向け講演(4件)、新聞記事(61件)、テレビ番組(3件)、ホームページ(1件)

計70件
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αトコフェロール転送蛋白遺伝子変異による酸化ストレス病態の解明 平成14-16年 28,218 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 水澤英洋 (ア)αTTP欠損はビタミンEを欠乏させ酸化ストレスを来たして失調症を起こす。多くの神経変性疾患では酸化ストレスが病態に係わる。輸送機構してとは肝細胞内のビタミンEを細胞外に積極的に放出する(イ)αTTP遺伝子の欠損(-/-)がより重篤で寿命短縮という予想に反し、マウスではαTTP(+/-)の寿命がより短縮する傾向を認めた。アルツハイマー病のモデルマウスにおいては酸化ストレスの機序はAβの排泄障害であることを明らかにした。αTTPは肝細胞形質膜に存在するPIP2(ホスファチジルイノシトール2リン酸)を認識することによりビタミンEを形質膜まで運び、そこでさらにABCトランスポーターにより細胞外に放出していることが明らかになった。(ウ)アルツハイマー病の発症機序における老化の関わる意義が明らかになった。αTTPはビタミンE代謝とは別の経路で、寿命に影響を与えている可能性が示唆される。細胞内のある地点から別の地点までベクトリアルな輸送機構が解明された例はほとんどなく、細胞生物学的意義も大きい。 ・本発見はアルツハイマー病の新しい発症機序を示しており、治療にも関係しており、関係者間では非常に注目されている。 ・老化や寿命と酸化ストレスとの関係をこれほど多数の個体を用いて検討する研究は他になく、有識者の間では長期間掛かり地味ではあるが、きわめて重要な研究と理解されている。
・ビタミンEの抗酸化作用は哺乳類の老化に抗して寿命を伸ばすと思われてきたが、それは間違いである可能性が示され、無駄な摂取の是正や真の因子の同定が進展する。
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寝たきり予防を目的とした老年症候群発生予防の検診(「お達者健診」)の実施と評価に関する研究 平成14-16年度 57,297 東京都老人総合研究所
疫学・福祉・政策科学研究グループ
鈴木隆雄(平成14-15年度) 吉田英世(平成16年度) (ア) 要介護状態をもたらす危険因子。
(イ) 介護予防の効果的スクリーニング。
(ウ) 研究課題は国内外の専門誌に公表され、特に国内では介護予防の具体的取り組みとして高い評価を得た。
本研究の成果の一部は、介護保険制度改革における65歳以上の高齢者に対する介護予防健診の検討のための基礎資料となった。 主任研究者を中心に介護予防の重要性等について研修や講演などを通じ啓発活動を行なっており、社会的インパクトも大きい。 7 12 13 0   37 長寿科学総合研究
老化に伴うカルパイン活性制御不全の機構解明 平成14-16年度 19,952 財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 遠藤玉夫 (ア)klotho遺伝子を欠損したマウス(klothoマウス)は、ヒトの老化症状に類似した多彩な症状を呈する。このことからklotho遺伝子に老化や老化に伴う疾患の制御因子としての機能があると考えられている。
(イ)klotho遺伝子の変異や加齢によるklotho蛋白質の減少は、腎臓と肺における蛋白質分解酵素カルパインの異常活性化を引き起こし、腎・肺疾患の原因となることを明らかにした。
(ウ)klotho蛋白質がカルパインの活性制御に関わることを明らかにした本成果は、Journal of Biological Chemistry誌の表紙に掲載されるなど国内外から大きな反響があった。
・若手研究者育成活用事業として、リサーチレジデント1名を採用し、研究指導・育成を行った。 ・老化の分子メカニズムの一端を明らかにしたとして、一部マスコミに報道された。
・klotho蛋白質の発現に影響を与える物質のスクリーニングシステムを構築し、老化や老化に伴う疾患を予防する薬剤の開発への貢献が期待される。
3 3 1 0 1 3 (平成14年7月17日 朝日新聞朝刊「効き過ぎが老化の原因」,平成14年7月22日 日本経済新聞朝刊「老化招く一因の酵素異常を発見」,The Journal of Biological Chemistry 277号38巻(2002年)表紙: http://www.jbc.org/content/vol277/issue38/) 長寿科学総合研究
脳アミロイド画像法によるアルツハイマー病の早期診断と予防医学 平成14−16年度 20,068 東北大学 荒井啓行 ア.脳アミロイド画像法を開発している競合的研究グループは、米国ピッツバーグ大学とスウェ−デンウプサラ大学の共同研究グループのみであるが、ヒト臨床応用を成功させるには至っていない。
イ.競合的研究グループのリガンドであるPIBに比して、本研究で開発したBF227は脳移行性に優れ変異原性が低いという利点を有している。
ウ.モデル動物における研究成果は、昨年J.Neuroscienceに掲載された。この論文をNature Reiview誌が取り上げ、5月号に掲載し海外からの大きな反響と国内からの講演や執筆依頼が相次いだ。
本研究は、アルツハイマー病の客観的・早期診断へ決定的な道を拓くものであり、認知症診療現場における適正な薬物使用に貢献するものと考えられる。 本研究成果は、東北大学に新設された先進医工学研究機構の重要な研究タスクとして採用された。 2 10 5 0 0 平成16年度産学官連携会議に出展。 長寿科学総合研究

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