研究課題 実施期間 合計金額
(千円)
主任研究者所属施設 氏名
(1)  専門的・学術的観点
 このテーマで、すでに分かっていること
 本研究で加えられたこと
 本研究成果の専門的・学術的意義
(2)  行政的観点(※1)
 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。
(3) その他の社会的インパクトなど(予定を含む) 発表状況 特許 施策 (4) 普及・啓発活動件数 研究事業名
原著論文(件)※2 その他論文(件) 口頭発表等(件) 特許の出願及び取得状況 反映件数※3
社会福祉サービス利用契約の法的研究 平成14-16年度 11,200 東京大学大学院法学政治学研究科 岩村正彦 (ア)福祉サービス利用契約については法的研究は皆無に等しい。(イ)ドイツ・フランス・スウェーデンにおける福祉サービス利用の法制度(一般には契約)を解明するとともにわが国の現行制度の状況と問題点を明らかにした。(ウ)これまで社会保障法学ではほとんど注目されてこなかった福祉サービス利用契約について本格的な比較法的研究を行い、それをもとにわが国の制度について考察を加えた。 福祉サービス利用契約については介護保険・支援費制度に関する厚生労働行政では必ずしも十分に検討されているとは言い難いが、この研究をベースに今後契約をめぐる問題点について制度設計のあり方を含め、政策形成に反映されることが期待される。   3 2 1 0 0   政策科学推進研究
介護サービスの利用に伴う高齢者の経済的負担に関する実証研究−立案された介護サービス計画の経済学的検討 平成14-16年度 32,400 長寿医療センター包括診療部 遠藤英俊 (ア)高齢者の介護サービスの利用は月額約20、000円強程度であり、ケアマネジメントから導かれる介護サービスとは乖離がみられる(イ)介護サービスの利用には地域特性、利用者・介護者の意識、居宅介護事業者の特性が加味される必要がある(ウ)年齢、要介護度の変化は介護サービスの利用量を増加させる重大な因子である 介護費用の増大に対して介護サービスは必要かつ効率的な利用が期待される。今後の政策において介護予防や地域支援事業における要介護の悪化の防止対策が重要である。本研究はこの政策に対する理論的根拠の一つとなる。 今後の本研究のさらなる分析により、論文・講演等の発表の機会を求める 4 1 3 0 0 30以上 政策科学推進研究
韓国・台湾・シンガポール等における少子化と少子化対策に関する比較研究 平成14-16年度 17,200 国立社会保障・人口問題研究所 小島 宏 (ア)アジアNIESでは出生率が急低下している。(イ)本研究開始時点ではNIESの出生率がわが国よりも高かったが、当初、予想したとおり、わが国より低くなったし、低出生率の要因もわが国と類似するものが少なくないことが明らかになった。(ウ)外国人研究協力者の寄稿論文5本が2003年6月に当研究所のウェッブジャーナル(Japanese Journal of Population)に掲載されたが、欧米でも類似の研究がほとんどないことから国外でしばしば引用されている。また、国内のさまざまな分野の社会科学系研究者から報告書の送付依頼があることからみて、先駆的でオリジナルな研究であったと言える。 欧米諸国以上に少子化が進むNIES諸国の実情と対策に関する情報を提供できた。一例としては少子化を特集した「2003〜2004海外情勢報告」に資料提供したことが挙げられる。また、最終報告書に掲載された韓国の地方自治体の少子化対策に関する報告はわが国における地方自治体レベルの少子化対策に関するガイドライン作成等に役立つ可能性がある。 日本経済新聞朝刊(2004年7月26日)のアジアNIES少子化に関する記事に協力した後、他の新聞等でもアジアの少子化に関する記事が掲載されるようになった。また、関連するテーマでの取材も増えたし、通商産業省による通商白書作成準備のためのヒアリングも受けた。 5 4 13 0 0 5(公開講演会、公開ワークショップ、公開シンポジウム) 政策科学推進研究
少子化の新局面と家族・労働政策の対応に関する研究 平成14-16年度 60,600 国立社会保障・人口問題研究所 高橋重郷 (ア)晩婚・非婚化と夫婦出生力低下が少子化の要因であること(イ)少子化の人口学的過程、女性就業と出生力ならびに政策効果の検証、ならびにシュミレーションによる機会費用と出生率変化を確認(ウ)研究成果が出版され反響を得た。 家族・労働政策を進める上で、より柔軟な女性雇用の仕組みを進めること。あわせて育児支援をより拡大し、女性の機会費用を引き下げる施策が必要である。研究結果はそのような施策の学術的根拠をを与える。 少子化問題を広く専門的に明らかにし、少子化対策にかかわる国民的合意形成に貢献している。H16年度には研究普及のために厚生政策セミナー(社人研主催)を開催する。 31   28 0     政策科学推進研究
サービス利用モデルを用いた給付実証分析による介護保険政策評価研究 平成14-16年度 12,700 筑波大学人間総合科学研究科 田宮菜奈子 ア わが国では実証データによる研究は乏しかった
イ 家族介護・経済状況がケアのあり方に果たしている役割が具体的に明らかになった。
ウ 実証データで、高齢者ケアに関する社会経済要因の重要性を実証できたこと。ドイツ介護保険の介護者支援について明らかになったこと
介護者支援の重要性をデータで示し、ドイツのぐたい例も紹介し、今後のわが国の介護保険見直しに参考になると思われる。 性差医学・医療研究会での学術講演に招かれ、家族の役割とケアの重要性を本研究データに基づき講演したところ取材依頼や関連執筆の依頼が多くインパクトが大きかった。 3 25 20       政策科学推進研究
確定拠出年金制度の運用実態に関する調査研究 平成14-16年度 29,800 (社)生活福祉研究機構 田村正雄 (ア)先行する米国調査からは、以下のような中小企業への普及を図る上での問題点が指摘されていた。大規模な年金スポンサー(母体企業)がDCプランを加入員に提供する場合、規模のメリットに応じて、加入者1人当たりのコストを抑えることができる。また、固定費が存在しているだけでなく、規模の大きいプランへの優遇も存在している。また、一般的に、年金プランの規模が大きくなると、絶対額での投資関連費用は増えるが、経費率・加入者一人当りの費用は減少する。全体として、大規模プランは広範囲な低コスト・オプションを享受できる。(イ)DCプランの費用の負担者と手数料・費用の実態を明らかにした。1人当たりの費用を規模別に見ると、明らかにスケール・メリットが働いており、初期費用については小規模プランで相対的に重い負担になっている。また、初期費用に比較して、維持管理・継続費用のスケール・メリットが顕著である。投資教育業務では、初期費用は主に事業主・企業負担、維持管理・継続費用にあたる個別サービス費用は加入者負担になる。こうした費用については、スケール・メリットは見られず、サービス内容と費用・手数料に相関があることが考えられる。そして、資産運用に関する理解度は、個人の属性に依存し、積極的な投資教育は、投資リスクの理解や分散投資につながっている。(ウ)資産運用に関する個人行動の分析をし、投資教育の項目別理解度、理解度と投資行動の関係、そして事業主側の投資教育体制との関連性を明らかにした。この成果は学会や研究会での発表で大いに関心を呼んだ。 確定拠出年金制度における投資教育のあり方について、「意欲・知識などの2極分化へどう対応するのか」、「費用対効果などからみて、効果的な投資教育をどう工夫していくのか」、「投資教育の理解度と成果をどう把握するのか」といった課題を分析することにより、運営管理機関との協力体制のあり方や、効果的な投資教育の具体策、そして投資教育における官民の協力体制、などについて知見を得た。こうした知見の一部を「投資教育に関するガイドライン」作成に活かすことができた。 確定拠出年金という制度と適正な投資教育というものがセットになれば、加入者の資産形成に確実に寄与することで、彼らの老後生活を豊かに、かつ安定したものにできる。あわせて、勤労・就労所得と資産所得のバランスをとることを可能にし、金融・株式市場を下支えする「賢い投資家」の養成にも繋がる。 8 1 6 0 0 8 政策科学推進研究
「世代とジェンダー」の視点からみた少子高齢社会に関する国際比較研究 平成14-16年度 78,400 国立社会保障・人口問題研究所 人口構造部 西岡八郎 (ア)先進諸国間にみられる少子化の水準の違いは各国固有の世代・ジェンダー関係が影響を及ぼしている。(イ)本研究はパネル調査の実施を企図しており、パネルデータの分析によって研究の意義が深まる。パネル調査を実施していない段階で得られた知見は、日本では、北西欧諸国に比べ、様々な面で男女間のジェンダー・ギャップが大きいという特徴が明らかになり、そのことが少子化に直結する家族形成行動、出生行動にも影響を及ぼしていることが明らかになった。(ウ)本プロジェクトは少子高齢化の要因を「世代とジェンダー」の視点、国際比較の視点からミクロデータ(パネルデータ含む)、マクロデータを利用して分析するもので類似の研究はみられない。先駆的でオリジナルな研究であるといえる(ミクロデータを得るための国際比較調査は国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)が企画したものであり、本プロジェクトでは企画段階から参加している)。 多くの先進諸国は人口置換水準を下回っているが仔細に観察すると、lowest low fertility countries, lowfertility countries と少子化のレベルに国家間の差がみられる。国際比較のミクロデータを中心とする分析から、少子化の程度に差が生じている要因、背景分析、対策に関する情報を提供できた。今後、本研究をパネル調査として継続、発展させることにより、さらに日本における有効な少子化対策を提示できる。 読売新聞の2004年2月17日付朝刊に、本プロジェクトで実施した国際比較調査について、親子関係や夫婦関係が少子化に及ぼす影響を国際比較の観点から探る調査として、「海外先進諸国共通の要因と日本独特の要因を比較することで、今後の少子化対策につながる」調査で、「この分野の多国間の比較調査はほとんど例がない」と、調査実施への期待が掲載されている。調査結果についても近々同紙に掲載予定であり、本プロジェクトへの関心の高さが伺われる。 9 2 2 0 0 *HP立ち上げ予定(2005) 政策科学推進研究
かかりつけ医の診療プロセスとアウトカムに関する研究 平成14-16年度 15,200 京都大学大学院医学研究科 福原俊一 (ア)かかりつけ医のわが国におけるこれまでの貢献
(イ) かかりつけ医の診療の質測定評価方法
(ウ) 医療の質を評価する指標の開発と検証、指標を用いた評価方法について一定の成果をあげた。
医療の質を標準化し改善することによってもたらされる国民レベルの健康アウトカムへの影響および医療経済的な節約効果をしミュレーションによって明らかにした。 21世紀の我が国においてかかりつけ医に求められる新しい役割、新しい役割機能を果たす際に求められる医療の質の標準化によって期待されうる国民レベルのアウトカムへのインパクトを示した。 54 22 12 0 0 0 政策科学推進研究
少子化日本の子産み・子育てにおけるジェンダー構造に関する研究 平成15-16年度 7,700 東京都立大学人文学部 石原邦雄 (ア)現代日本における子産み・子育ての実態や意識にみられるジェンダー構造は、男性は稼得役割責任を、女性は育児役割責任をという従来の性別役割規範の存在を強く示唆する。未婚者の結婚意向や子どもをもつ希望にも影響をあたえており、性別役割規範を受容することが結婚出産を促進するという構造は、社会文化的趨勢とは明らかに対立している。(イ)高学歴者を中心に結婚意向や子どもをもつ希望が表明されている。結婚・子産み・子育て資源がより利用可能な環境にあると仮定すれば、そうした手段をもたない階層への重点的な施策が求められる。(ウ)全国標本調査にもとづく子産み・子育てに関する基盤データを構築し、今後公開利用に提供していくことに、強い期待が寄せられている。 今回構築した基盤データを広く公開し、利用に提供することで、今後の行政研究での実証的な活用が期待される。 基盤データは2006年を目途に東京大学社会科学研究所SSJDAを介して公開する予定である。 0 11 0 0 0   政策科学推進研究
社会保障における少子化対策の位置付けに関する研究 平成15-16年度 12,000 国立社会保障・人口問題研究所 勝又幸子 (ア)少子化が世代間の様々な援助関係や家族関係に影響を与えていること。(イ)世代間の経済的援助関係や世話的援助関係は必要(ニーズ)に関係しているというより、成人子と老親の関係の密接さに影響されている。妻(成人娘)と老両親との援助関係は夫と老両親とのそれよりも密接で頻繁である。(ウ)経済的援助関係と老親の所得水準に関係が認められることなど、生前贈与や資産関係についても明らかにした。 子育て支援に対する期待は若い世代ほど公的な機関に向けられている一方、高齢者では家族が担うべきとの考え方が強く、世代間に意識の差がある。この世代間の意識の差を踏まえながら、社会的な子育て支援と家族・世代間の支援関係をいかに調和させていくかが、限りある社会的資源を有効に使った少子化対策の有効な方法だと考えられる。 シックスポケットとよばれる祖父母世帯から孫世帯への経済的移転の規模がはじめて調査によって明らかになった。 0 2 1 0 0 2 政策科学推進研究
年金制度の長期的な制度体系のあり方に関する研究 平成15-16年度 11,100 (財)年金総合研究センター 同左 (ア)平成16年の年金制度改正を、恒久的に継続可能な年金制度構築のための第一ステップと位置づけている。(イ)制度の現状と先行き、主要先進国の年金改革との比較を実施し、さらに新たな体系案における給付水準シミュレーションも実施して検証した。(ウ)中立的な研究機関による現行制度の検証や今後の体系案導出については一定の評価が得られると考える。 公的年金制度の所得比例一本化・NDC化に対する検討・評価は、厚生労働行政に対して一定の情報提供をなし得たものと考える。   1 2 4 0 0 1 政策科学推進研究
研修医マッチング初年度参加主体の意識調査とその行動分析 平成16年度 2,800 学習院大学 経済学部 和光 純 (ア)我国の研修医マッチングは平成15年に開始された新制度であり、第三者による参加者の意識行動調査実例は少ない。(イ)研修医マッチング事業は、研修希望の新医師のジョブマッチングの自由度を増加させ、公正さを維持する分かり易い手続きにより、研修医・研修病院の負担を軽減すると認識されていると考えられる。平成15年の初回実施時は情報供給が十分ではなかったが、十分に改善可能である。(ウ)本調査は、時間を経ると採取困難な初回時の記録となると思われる。 新医師臨床研修制度を支援するために平成15年より始まった研修医マッチングは、我国の臨床研修体制の改革、ならびに、新労働市場創設の観点からもその定着を目指す意義が大きい。今回の調査からは、研修医マッチングが順調に定着して行くのではないかと思われる。また、医師臨床研修マッチング協議会による精力的な情報供給の向上により、本制度は、より明瞭なマッチング制度になりつつある。今回の調査によって得た結果は、あくまで初回時の記録の1つとして、今後の参照点の1つになればよいと思われる。 新医師臨床研修必修化は社会的に大きなインパクトを持っていると思われる。一方、それを支援する研修医マッチングは、現状では順調に進んでいると思われる。この意味では、本調査の社会的インパクトは現時点では強くないかもしれない。しかし、マッチング制度がうまく定着しなければ、臨床研修に大きな障害が出るため、マッチング参加者の行動調査は定期的に必要と思われる。 0 0 0 0 0 0 政策科学推進研究
戦後日本の健康水準の改善経験を途上国保健医療システム強化に活用する方策に関する研究 平成14-16年度 21,000 大阪大学大学院人間科学研究科 中村安秀 (ア)わが国における戦後の健康水準の改善経験を途上国に活かすことのニーズ。
(イ)徹底した現場主義と自己裁量権、セクターを越えた協働、受益者からのAppreciationという評価軸など、途上国に応用可能な要因が見出された。
(ウ)学会やODA機関が、日本の経験を途上国保健医療システム強化に活用する機運が高まったのは、本研究班による大きな社会的インパクトであった。
厚生労働省大臣官房国際課・国際協力事業評価検討会での審議で、本研究班の成果である日本の経験を活用することが言及される。外務省委託調査の「ミレニアム開発目標(妊産婦死亡率の低減)に向けた日本の援助のあり方に関する調査」に反映。JICA「保健医療分野課題別支援委員会」において、日本の経験を活用することが反映。JICA「結核対策リーダーシップ研修コース」において、本研究班の成果を反映。JICA「インドネシア母子手帳研修コース」において、本研究班の成果を反映。 本研究班の成果は、第19回日本国際保健医療学会ワークショップ「母子保健:日本の経験を国際協力に活かす」(2004年10月)、第63回日本公衆衛生学会自由集会「公衆衛生に国境はない」においてまとまった形で発表された。また、2004年12月の「第4回国際母子健康手帳シンポジウム」(タイ・マヒドン大学)において、本研究班の成果が高く評価された。JICA広報誌「クロスロード」の連載「途上国ニッポンの知恵」は大きな反響を呼んだ。 1 10 34 0 5 4 社会保障国際協力推進研究
紛争後の復興開発と平和構築に対する保健医療活動の役割に関する研究 平成14-16年度 14,200 名古屋大学大学院医学系研究科 青山 温子 (ァ)開発途上国の紛争とその復旧支援では、常に保健医療援助が行なわれる。しかし、緊急人道援助は、本質的に一時的救命的で、その後の長期開発支援とは整合性を持たない。また、紛争再発防や平和構築など長期的視点での計画との連携も行なわれてこなかった。
(イ)紛争国では、緊急期から中長期的展望をもった人材養成が必要であり、保健医療分野や、地域住民の参画しうる保健医療活動を通じての、地域社会再建と住民レベルでの和解促進が必要である。特に、人間の安全保障の観点から、復興期には社会的弱者への配慮が重要である。
(ウ)保健医療分野の紛争後復興支援は、人道的観点からの保健医療サービス供給に留まらず、和解と平和構築を促進する重要な手段となることから、今後の紛争後国に対する緊急期から復興期にかけての保健医療分野支援の具体的方向性を示したという意義がある。
研究成果に基づいて、厚生労働省国際協力事業評価検討会にて、今後の日本の政府開発援助(ODA)における保健医療分野の方向性や必要とされる人材等について提言した。研究者が関与する大学などでは、成果を踏まえて、ODAによる国際保健医療協力に今後必要となる人材を育成している。 外務省ODA総合戦略会議にて、研究成果に基づいて提言し、ODA中期政策、パキスタン国別援助計画等の内容に反映させるよう努めた。国際協力機構(JICA)事業評価委員会、アフガニスタン・カンボディア・パキスタンに関する委員会にて、研究成果に基づいて意見を述べた。さらに、平成17年度JICA客員研究員として、紛争後国の保健医療分野支援のあり方について調査研究を進めて提言をまとめる予定である。 1 38 19 0 6 36 社会保障国際協力推進研究
システムの質の評価と途上国の保健医療システム強化支援のあり方に関する研究 平成14−16年度 12,700 東北大学大学院医学系研究科 上原鳴夫 (ア)地域保健医療システムの質評価と改善に当たって信頼できるデータと情報システムの存在が不可欠であるが、途上国ではデータの信頼性が乏しく、根拠のある政策形成が困難となっている。
(イ)フィリピンの地域保健サービス情報システムの構造分析と改善チームによるデータの質評価調査を通じて、指標設定,データ収集の方法、データ報告手順の各問題点が具体的に明確になった。
(ウ)結果に対する問題はよく指摘されるが、実際のプロセスで質不良をもたらしている要因を具体的に明示した点が新しく、これを通じて、質評価の方法論と、参加型実証的質改善活動の意義が確認された。
適正な質指標と報告システムに求められる特性が明らかになったことで、途上国に適した指標の開発と保健情報システムの設計、ひいては、根拠に基づいた政策形成に貢献するものと期待される。 ベンゲット地域医務局は同研究の知見を参考にして地域保健情報システムの改訂を検討している。 フィリピン医療保険公社要員と地域行政官対して参加型実証的質改善活動に関する遠隔教育を実施し、同手法の普及を援ける計画を検討中である。 0 1 1 0 0 1(フィリピン医療保険公社が、参加型実証的質甲斐z年活動(EPQI)の教材を刊行し、医療関係者に配布した。) 社会保障国際協力推進研究
わが国の国際協力を担う国内の人材育成及び供給強化並びにキャリアパスのために医学教育が果たすべき役割の研究 平成15-16年度 5,400 長崎大学熱帯医学研究所 社会環境分野 溝田 勉 (ア)厚生労働省所管の研究・専門機関で実施されたキャリア・パスを目的とした、人材育成・研究者数。
(イ)他省庁、とりわけ文部科学省所管の大学や専門機関で行われてきた同上目的のための、人材育成・研修者数および医学教育の質的側面ならびに欧米先進国に見る同一の諸点。
(ウ)これまでに発表されたものは統計的データで数量的側面が中心であった。本研究の場合は(1)最新のデータを駆使した、(2)質的側面の研究に重点を置いた、(3)行政施策に反映できる、の3点が新たな成果と言い得る。
行政的に活用いただけることを念頭に置いた共同研究である。協力研究者リストからも判明するとおり、外務・文部両省やJICA、JSPSといった独立行政法人組織の行う事業のうち厚生労働省が対応する内容、とりわけ国際協力分野においては必ずや活用願えるし、貢献度は高いと思慮する。 現在のところ未知の部分が多いが、今後(1)関連諸学会で行うシンポジウムや研究集会、(2)専門家および市民を対象とした“国際協力のための人材派遣”イベント開催の際にマス・メディアを通じるアドボカシーの機会は相当数予想される。 5 3 5 0   5 社会保障国際協力推進研究
レコードリンケージを用いた保健医療福祉統計の有効活用に関する研究 平成15-16年度 7,009 藤田保健衛生大学 医学部 橋本修二 (ア)レコードリンケージの実施可能性と有用性は、保健医療福祉の一部の統計で知られている。(イ)保健医療福祉の主な統計について、主なパターンのレコードリンケージの実施可能性と有用性を広く評価した。(ウ)保健医療福祉統計におけるレコードリンケージの役割と課題の確立に寄与した。 保健医療福祉統計において、レコードリンケージを応用するための基礎資料となる。 保健医療福祉統計の利用範囲の拡大や利用の促進に資する。 0 0 1 0 0 1 統計情報高度利用総合研究
データ・リンケージによる産業別生命表の作成とその応用に関する研究 平成15-16年度 7,920 国立保健医療科学院 公衆衛生政策部 島茂 (ア)経済政策・経済動向が人口動態に及ぼす影響を予測する方法がなかった(イ)産業別生命表を作成し,それを産業連関分析にリンケージすることによって,産業別公共投資が人口動態に及ぼす影響をシミュレーションし,投資先による労働人口全体の平均余命の変化を予測したところ,投資先によって人口動態の変化は相違していた。特に農業と小売り業への投資が人口全体の生命表を改善していた。(ウ)公共投資の投資先によって人口動態が変化することを政策決定時に折り込む必要があることが示された。 ○公共投資の投資先によって人口動態が変化することを政策決定時に折り込む必要があることが示された。○現状の産業別死亡率統計の改善方法が示された。特に,生命表の作成の基礎統計である,国勢調査と人口動態統計(死亡届)における産業分類の整合性を改善する必要性が示された。 経済活動が国民の健康に及ぼす影響の定量的な予測を政策決定の材料にしうることが認識された。 2   3 1   2 統計情報高度利用総合研究
レコードリンケージ解析を利用した医療経済面を含めた医療関連統計調査の活用方法等に関する研究 平成15-16年度 7,920 東京医科歯科大学医療情報システム学 伏見清秀 (ア)複数の厚生統計調査個票をリンクして多次元分析を行う手法の基礎および患者特性に基づく医療機関評価指標の候補
(イ)実用性のある厚生統計多次元分析システムおよび医療機関評価と地域医療評価に直接結びつく複数の統計指標の開発
(ウ)統計情報学としては可用性の高い統計分析システムの開発と多次元分析手法の確立の意義があり、また医療政策学としては客観的な数値解析に基づく医療機関の機能評価と地域医療計画目標設定、評価の基盤を提供した意義がある。
○「統計行政の新たな展開方向」に示された統計情報の高度利用の促進における「公表・提供形態の多様化・早期化」に向けた取り組みに貢献することが期待される。
○「医療計画の見直し等に関する検討会」報告書のライフコースアプローチ、病床機能の評価、実効的医療圏の評価、具体的な数値執行目標の設定等に密接に関連するデータおよび評価指標を提供することが期待される。
○本研究成果に基づいて医療機関の評価と地域医療の評価に活用するためのデータブックと分析実例集の出版を準備中
○医療経済研究機構主催の3回のセミナーにて本研究成果を発表
○公的な病院団体が主催するセミナーに於いて本研究成果を発表
○医師会主催のセミナーにて本研究成果を発表予定
3 11 25 0 4 15 統計情報高度利用総合研究
危機管理における備蓄の経済学に関わる研究 平成16年度 3,000 同志社大学研究開発推進機構 安川文朗 (ア)わが国および欧米の政策ベースでのバイオテロ危機への対応について、ガイドライン、通達等が存在する。(イ)バイオテロの被害予測の困難さと対応に関するコスト推計の基本要件が整理された。(ウ)テロ研究の経済学的研究視点および手法の文献的整理がなされ、同時に今後必要とされる分析視点に関する問題提起が、米国専門研究所からも評価され、共同研究の道が開拓された。 バイオテロの被害予測および抑止の社会経済的メカニズムの解明における基本モデルの提示が可能になるとともに、テロ対応に向けた法整備の方向性提示の指針を提供できる。 日本国民の危機意識の醸成や、テロ等の大量殺戮を伴う危機に対する保険の設計に関する議論などを喚起する可能性がある。 0 1 1 0 1 0 厚生労働科学特別研究
天然痘ワクチンの科学的備蓄規模と使用に関する研究 平成16年度 15,000 財団法人国際保健医療交流センター 蟻田 功 (ア)天然痘ウイルスを用いた生物兵器テロの危機があるため、各国政府および国際社会がその対策を講じる必要があること。日本は既にLC16m8株のワクチンを備蓄しつつある。
(イ)備蓄するLC16m8ワクチンの品質は適当であり、その備蓄量は現在5600万人分が適当と考えられるが、将来適宜確認していく。今後の国際貢献を考慮すると更にワクチンの安全性、有効性に関する共同研究が国際的な協力研究も含めて行われることが望まれる。
(ウ)LC16m8ワクチンについての学術論文が少ないこと及び将来のバイオテロ対策におけるワクチンとして国際社会は大きな期待を持っている。本研究で得られた臨床試験結果、ウイルス学・分子生物学的考察、保存安定性試験結果、また接種対象人口の予備調査結果などは学術専門性が高く、国際間の追加試験等が行われるであろう。
 本研究成果が天然痘ワクチン備蓄に関する国の方針に反映される。  バイオデフェンス対策の方針(国内及び国外)として、WHOまたUS関係機関との協力調査研究が行われる予定である。 0 0 2 0 1 0 厚生労働科学特別研究
腎不全モデルを用いたスギヒラタケとの関連が疑われる急性脳症の発症機序解明 平成16年度 3,200 新潟大学医歯学総合病院 下条文武 (ア)腎不全患者に多発している急性脳症の原因は全く不明であった。(イ)スギヒラタケとの関連を証明し、腎不全動物モデルによる解析を開始した。(ウ)食用キノコであるスギヒラタケが腎不全状態では急性脳症を起こす可能性があり、大きな反響があった。論文はKidney Internationalに掲載されるが、スギヒラタケの写真が、その表紙を飾ることになっている。 このキノコは、従来安全なものと認識されてきたが、特に腎機能低下者では食用しないよう、インターネットや新聞等を通じて呼びかけた。これ以降は同様の急性脳症は全く発生していない。 腎不全と急性脳症の関連は以前より知られていたが、今回の脳症の発症様式や症状は、全く新しいものであり、腎臓病学のみならず、神経内科学的にも興味深いものであった。今後この急性脳症の発症機序が明らかになれば、両方の医学領域に大きなインパクトを与えるものと思われる。 1 2 3 0 1 2(http://www.jsn.or.jp/) 厚生労働科学特別研究
東北北陸地方での急性脳症多発事例にかかる研究 平成16年度 2,000 埼玉県立大学 柳川洋 (ア)2004年9月より、東北・北陸地方を中心に急性脳症事例が多発し、死亡例も発生している。多くの症例の特徴として、腎機能障害、スギヒラタケの摂食があげられているが、原因は未だ不明である。(イ)本研究班は、東北・北陸等での急性脳症多事例に関し、現在の状況を吟味し、専門家等による学際的議論を通じて、今後の研究の方向性を示すことにより、今後の予防等の推進に寄与することを目的とした。(ウ)本研究班においては会議形式の研究班(公開)を開催した。班会議においては、国立感染症研究所感染症情報センターにおいて把握している感染症情報、国立医薬品食品衛生研究所において把握されているスギヒラタケなどのキノコに関する情報、その他各自治体が把握している情報を共有し、それを基に議論を行った。
 議論は、疫学、感染症、中毒学、腎臓病、神経内科、救急医学などの専門的視点より行われた。
 具体的には、現在の調査内容及びそのスキームの確認及び得られた情報の吟味、情報の統合により得られる可能性のある事実についての検討、より一層検討を要する事項の有無などについて確認された。
 これまでの調査結果から、スギヒラタケの摂取と脳症の発症との因果関係を証明することはできないが、原因究明のためには、今後以下の研究が必要であることが提示された。
・スギヒラタケの成分分析
・実験動物等を用いたスギヒラタケの毒性分析
・患者検体を用いた因果関係の確認研究
・症例定義の確立に基づき、症例対照研究などの手法による疫学調査
・感染症の可能性についての探索研究
研究の成果により、急性脳症の原因が解明され、今後の公衆衛生対策に資することが期待される。 0 0 0 0 1 なし 厚生労働科学特別研究
健康フロンティア戦略における科学的知見集積に関する循環器疾患関連研究調査研究 平成16年度 2,500 国立循環器病センター 北村惣一郎 ア 心臓病と脳卒中による死亡率は死因の28%を占め、生活習慣病対策の要である。 イ 予防、医療、療養に至る切れ目のないシステム構築が必要である。基礎研究の充実は医療の充実に不可欠である。 ウ 循環器病対策の必要性を多角度から検討し、今後のあるべき形を提言したこと。 健康日本21の数値目標を達成する為の具体的対策を予防から医療全般にわたって検討したこと。 循環器病の今後の研究課題について重要度を評価するための資料を提供したこと。循環器病に関する専門学会のあり方についても提言した。医療の質を上げるための基盤について検討した。 0 0 0 0 1 0 厚生労働科学特別研究
全国国立ハンセン病療養所における現状と将来対策に関する研究 平成16年度 3,500 国立療養所大島青松園 長尾榮治 (ア)入所者の減少傾向が継続する。(イ)今後、療養所において、運営方針のターニングポイントとなる時点とその時の状態が解析できた。(ウ)政府が国立ハンセン病療養所の将来構想を立案する資料・参考案となる。 全国13カ所の国立ハンセン病療養所における施設整備などの運営方針や、将来構想の策定や方針に反映。 ハンセン病療養所の入所者自治会及びその全国組織(全国ハンセン病療養所入所者協議会)の活動方針に影響を与えた 0 0 1 0 1 1 厚生労働科学特別研究
ヒト胚の研究体制に関する研究 平成16年度 6,000 慶應義塾大学医学部産婦人科 吉村泰典 専門的・学術的観点
総合学術会議は「生殖補助医療研究」に限定して、ヒト胚の研究目的での新たな作成と利用を容認した(「ヒト胚の取り扱いに関する基本的考え方」、2004)が、これに関して提供者の人権等に配慮した同意書等の整備がその前提となっている。
本研究では、最近わが国で行われた生殖補助医療に関する研究の解析から、必要となりうる研究の実態を確認し、諸外国の胚研究、とくに新たに胚を作成する研究の規制状況をふまえ、わが国で使用可能な同意書案と管理機構案を作成した。
本研究で得られた成果は、個体になりうる細胞であるヒト胚の特殊性を尊重しつつ、かつ生殖補助医療の進歩に寄与する基礎研究の発展をできるだけ妨げない、わが国の現状に適合した管理体制を構築する基礎資料となり、またその世界の中での位置づけをあきらかにしている。
本研究の成果は、総合学術会議で認められた胚研究のわが国における公的な議論の基礎資料となると予想される。また今後構築されるであろう第三者機関を考える上でも実質的な基礎資料となると考えられる。 胚は、ヒト個体となりうる細胞である。とくに研究目的であらたに受精をおこして胚を作成する研究は、実験目的であらたにヒトをつくる研究と考えることもできるため、このような研究については社会的なコンセンサスが必要である。この種の研究の科学的意義と実態を解析することにより、倫理的な議論を行うために必要な基礎資料となるとともに、作成した管理指針を社会に対し発信する際の根拠となると考えられる。 4 0 8 0 1 0 厚生労働科学特別研究
核・放射線テロ発生時のマスマネジメントに関する研究 平成16年度 5,000 杏林大学医学部救急医学 山口芳裕 ア.本邦における緊急被ばく医療体制は、原子力施設における事故を想定して整備が進められてきたが、テロへの対応体制としては認識されておらず具体的な検討もなされていない。
イ.(1)放射性物質を利用するテロリズムの概要と具体例検討:『飛散』型に関しては、想定される線源の強度は、病院で治療用に利用されているγ線源の強度を上回るようなことはないと考えられ、20 m程度の距離を取ればNCRPのturn-around levelを超えない。一方『爆弾』型の場合には、人工密集地域を狙われれば0.01KTの低火力核爆弾でも数万人の死者を出す可能性があり、死者を出す可能性がある範囲は半径200m以上にも及ぶ。(2)放射性物質と関連したテロ攻撃のアラームサインと超早期対応:発災現場での判断に焦点を当てて、放射性物質に関連したテロ攻撃の際のゾーニング、トリアージ、除染についての考え方を整理した。(1)爆発を伴うあらゆる事象においてNBCのいずれか、あるいはその組み合わせのハザードが存在する可能性を前提として対応すべきである。(2)化学物質に対する対応を準備することにより、ハザードが放射性物質を含んでいた時にも実効的な安全をほぼ確保できる。(3)放射線に関わる既存の種々の規制は、この「実効的な安全」を判断する上で必ずしも適当ではない。 ウ.放射性物質を用いたテロが公衆に対し行われた際の対応体制のあり方を検討する上での根拠となりうる基本資料となった。
本研究では、現実に即した分析を通じて実効性のあるテロ対応体制の構築を目指すという観点から、ゾーニングや除染の判断基準についてかなり思い切ったラインを提示した。今後これは、核種ごとにテロに使用される量と可能性の分析から、リアルタイムに確立論的な数値を関係各機関に警告できるシステムに発展することが期待される。 (1) 緊急被曝医療も、従来の救急医療体制の枠組みの中でシステムを構築するのが最も実効性が高い。また、救命救急センターの積極的な関与が有効であり、かつその要望が強いことから、その機能の専門強化の必要性を指摘した。 (2)災害医療を展開する上で医療者や病院を保護する法的整備の必要性を指摘した。 0 0 0 0 1 0 厚生労働科学特別研究
うつ病関連の自殺予防戦略研究課題の提案と評価に関する研究 平成16年度 3,000 国立精神・神経センター武蔵病院 樋口輝彦 (ア)自殺関連うつ対策に有効な介入方法に関して、小規模での蓄積はあるが、明確な結論は出ていない。(イ)自殺関連うつ対策で優先順位の高く有効と考えられるプロトコールを提案した。 提案した研究課題は、第23回科学技術技術部会で報告され、平成17年度の新たな戦略研究課題として採用された。 平成17年度は、提案した採択課題が、研究実施委託団体から公募され、研究が開始される予定と聞いている 0 0 0 0 2 1 厚生労働科学特別研究
戦略的アウトカム研究策定に関する研究 平成16年度 8,000 東京大学先端科学技術研究センター 黒川清 (ア)わが国ではアウトカムに焦点をあてた多施設大規模臨床研究は限られている。(イ)戦略的アウトカム研究の遂行を可能にする為に必要な運営体制や研究インフラのあり方を検討、さらに17年度の戦略課題として糖尿病・うつ病を選定し、質の高い研究を遂行する為の研究プロトコール、作業計画を策定した。(ウ)提案した研究課題は、国際的にも高い学術レベルでの研究成果が期待できる。 提案した研究インフラおよび、糖尿病対策研究課題は、第23回科学技術技術部会で報告され、平成17年度の新たな戦略研究課題として採用された。 平成17年度は、提案した採択課題が、研究実施委託団体から公募され、研究が開始される予定と聞いている 0 0 0 0 2 1 厚生労働科学特別研究
痘そうワクチンの備蓄戦略の為の品質向上、生産性向上に関する研究 平成16年度 10,000 (財)化学及血清療法研究所 大隈邦夫 (ア)乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16m8は、近年天然痘ウイルスによる生物テロの危機から生物テロ対策医薬品として国家備蓄されている。過去の厚生労働科学研究において有効性の確認の報告がある。(イ)動物実験(サル脳内投与実験、SCIDマウス投与実験など)にて安全性を確認した。また有効な力価試験法及び有効期限延長の基盤となる成果を得た。(ウ)より効率的な国家備蓄となるべく、痘そうワクチンの品質・安全性の評価と生産性向上に展開できうる基礎成績を得た。 ○痘そうワクチンの備蓄はテロ対策の一環として必要不可欠である。本研究において、有効期限の延長及び生産コスト削減の可能性を評価し、更に、より安全で安価なワクチン開発の可能性についての知見により、長期的な国家備蓄計画をより効率的に進めるための基礎的資料を得ることが出来る。 生物テロ対策及びワクチン施策の具体的かつ長期的な国家備蓄体制の構築により、社会の安定化に寄与する。 0 0 0 0 1 0 厚生労働科学特別研究
医師臨床研修指導ガイドラインに関する研究 平成16年度 9,000 国立保健医療科学院
公衆衛生政策部
曽根智史 (ア)新臨床研修指導制度が平成16年度より開始されていたが、指導医ガイドラインはなかった。
(イ)基本3科目(内科系、外科系、救急)+必修4科目(小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療)+医療安全管理の8分野を含む、ガイドライン試行版を作成した。
(ウ)各科目独自の内容を取り入れつつ、全体として統一的なガイドラインを目指した。特に近年注目されている医療安全管理を積極的に取り入れた点が優れている。
・本臨床研修指導医ガイドラインを整備することによって、全国の臨床研修病院で、研修医に対して質の高い指導が実施されることが期待される。
・平成17年4月14日に開催された第2回医師臨床研修指導ガイドライン作成検討会の資料として提出された。
・医療安全管理に関するガイドラインは、先行して、国立保健医療科学院のホームページで公開された。
研修医に対して質の高い指導を提供することによって、国民に安全で質の高い医療を提供する医師が養成され、国民の健康水準が向上すると共に、医療に対する満足度が向上する。 0 0 0 0 1 1件:新医師臨床研修制度における指導ガイドライン−安全管理−(http://www.niph.go.jp/soshiki/seisaku/anzen/resident.htm) 厚生労働特別研究
持続可能なへき地等における保健医療を実現する方策に関する研究 (H16-特別-028) 平成16年度 6,000 自治医科大学医学部救急医学教室 鈴川正之 ア)わが国のへき地・離島医療に対する対策は50年近くにわたり、「へき地保健医療計画」により改善が図られてきた。結果としてかなり充実が見られたが、依然として一部のへき地・離島では専門職種の不足、ネットワーク不足、行政などとの協力体制の不備などにより、住民が十分な医療を受けられない地域が存在している。
イ)へき地・離島医療に関するアンケートを都道府県、市町村、公立・私立のへき地診療所長および勤務医師、へき地医療拠点病院に行なったことで、現在へき地・離島医療が抱える課題について明らかにすることができた。さらに診療所に勤務する医師に対し、へき地・離島医療の標準化についても回答を求め、実現可能性について思索した。
ウ)今回、へき地・離島医療の問題点が明らかにできたことで、どのようにへき地・離島の保健・医療を向上させていくべきかが判明した。
○現在、へき地・離島の保健医療が抱える課題を明らかにできたことで、疾病構造および国民の医療に対する要望の変化にも対応できるへき地・離島医療の体制を築くことができることとなった。さらに、へき地・離島医療への参加を現在よりも容易にすることや各地域の格差をいくらかでも解消することを目的としてへき地・離島医療の標準化についての施策を提案した。
○平成17年6月8日 へき地保健医療対策検討会へ報告し、第10次へき地保健医療計画策定へ反映された。
○へき地・離島医療の標準化の指針を作成するために平成17年度に研究班が結成された。
現在、個々の地域で行なわれているへき地・離島医療をまとめることで、住民に対して居住している地域の医療について思慮を促すことができる。  0 2 5 0 3 0 厚生労働特別研究
病原性グラム陰性桿菌における16S-rRNAメチレース遺伝子の獲得状況等に関する緊急調査 平成16年度 4,500 国立感染症研究所 細菌第二部 荒川宜親 (ア)伝達性プラスミドに媒介される16S rRNAメチレースの遺伝子を保有する、新型の凡アミノ配糖体超高度耐性緑膿菌が、我が国の臨床現場で確認された。また、最近、多剤耐性緑膿菌が国内各地の医療施設で分離され問題となっている。(イ)国内の169の医療施設の参加協力により調査した結果、少なくとも16施設から、29株、新型の耐性機構を獲得した緑膿菌やアシネトバクター、肺炎桿菌、大腸菌などが確認された。また、同じような遺伝子型を持つ多剤耐性緑膿菌が複数の使節から分離され、伝播し易い特定の株の存在が示唆された。(ウ)この種の新型薬剤耐性機構を獲得した凡アミノ配糖体超高度耐性緑膿菌などの病原細菌や多剤耐性緑膿菌などが、既に国内の複数の医療施設に伝播拡散している事が確認された為、細菌学、感染症関連の学会総会や学術専門誌でその実態を示しつつ、臨床現場に注意を喚起する科学的根拠が得られた。 研究成果については、その一部は、既に感染症、細菌学・微生物関連の学会や研究会で発表され、感染症関連、院内感染対策関連の多くの専門家の方々に、注意を喚起しつつある。また、現在、欧文の学術雑誌に研究成果を公表すべく準備が進められている。さらに、この種の新型耐性菌の伝播・拡散を防止するために、調査研究の成果について、国立感染症研究所のHPで紹介し、国内の医療施設の従事者や感染症、細菌検査の専門家の方々に注意を喚起する事を計画している。 今回の調査研究により、国内には、我々が2003年以降、出現を確認している既知のRmtA, RmtB, ArmAの3種類の16S rRNA メチレース産生株に加え、新たにRmtCと我々が命名した第4のタイプが存在する事が確認された。欧州や台湾、韓国でもこの種の新型耐性菌の出現が相次いで報告されており、この種の新型耐性菌の出現と蔓延は、我が国のみの問題では無く、地球規模で進行している事態と考えられ、今後、国際的な連携をとりつつ、監視と対策が必要となっている。 2 0 5 0 1 3 厚生労働特別研究
医籍登録情報の電子化・カード化の医療施策への活用に関する研究 平成16年度 7,000 東京大学大学院情報学環 山本隆一 (ア)医籍情報をはじめとする医療分野での資格確認を電子的に可能とすることが制度としての医療のIT化にとって非常に重要であることはe-Japan戦略をはじめとして各方面で指摘されていた。(イ)この方面で先進的であるフランスおよび台湾の医籍情報の管理状況とその高度利用に関する状況を明らかにすることができ、また資格確認のトークンとしてのICカードの要件、および制度整備のコストの考え方について一定の知見を得た。(ウ)本研究は制度整備の実際に際しての問題点と効果を明らかにすることで、社会情報学的な立場から十分な成果が得られたと考える。 医療のIT化を促進し、さらにそれが単なる医療機関の合理化にとどまらず、医療そのものに革新的な影響を与え、国民の健康に資するためには医療連携の高度化が必須であり、そのためには連携情報の適切な電子化と信頼性確保は早急に達成されなければならない。本研究の成果は連携に際して交換される、または患者等に提供される医療情報の信頼性確保の手段として重要かつ必須である医療従事者の資格確認の電子化に資するもので、グランドデザインの最終目標の達成に大きく貢献することが期待できる。 厚生労働省の医療情報ネットワーク基盤検討会で作成された保険医療福祉分野の署名用証明書発行ポリシと本研究の成果を合わせることで、運用が容易で信頼性の高い医療従事者の資格確認が可能な電子署名の応用の実証実験が複数計画されている。 0 1 3 0 1 3 厚生労働特別研究
国内外諸領域における他領域ADR制度などに関する研究 平成16年度 5,000 新潟医療福祉大学
学長
高橋榮明 ア:ADR制度の政策的関心は、世界的な潮流としてADRの発見・推進の時期から、冷静にその意義及び限界を明確にし、そのルール作りに基づく弱者保護・利用者保護をどのように担保していくかという段階にきている。国内においては、ADR研究は盛んであるが、個別分野ごとの評価やあるべき姿を具体的かつ実証的に分析したものは未だ十分にあるとはいえない現状にある。イ:本研究では、司法制度改革推進本部ADR検討会において選定されたADR機関を基礎として、その他のADR組織および類似した機能を持つ機関を抽出し、可能な限り網羅的にADR組織・機関を把握した。そして、抽出した機関を統一された情報フォーマットを用いて基礎的情報データベースを作成した。さらに、特定の領域(交通事故領域、海運・海事領域、航空事故・鉄道事故領域など)については、具体的な紛争処理過程についても明らかにした。ウ:前述のようにわが国においては、紛争処理制度についての包括的な研究はこれまでほとんどなかった状況に対し、わが国におけるADR組織・機関を網羅的に抽出するとともに基礎的情報を収集し、さらに、特定領域の現況を分析した点に本研究の最大の貢献があるのではないかと考える。 本研究により、個々のADR組織・機関は単独で存在しうるわけではなく、それらが位置する産業構造や制度との複雑な関連性の中でその役割や機能が規定されており、こうした点を十分に検討して初めて、医療分野におけるADRの有効性に関する議論が可能となることが判明した。その他、必要に応じて厚生労働省・医療安全推進室からの問い合わせ、また、課題解決に資する資料作成、調査を実施した。以上をふまえると、医療安全推進室による医療安全政策策定に少なからず貢献できたのではないかと自負する次第である。 医療事故・医療紛争にかかわる当事者が固有に係る紛争解決ニーズなどをADRという制度体系でどこまで、そしてどのように汲み取ることが出来るのか、その範囲を具体的に提示することができた点は、今後、医療版ADR制度を検討する際の基礎資料として大いに寄与すると考えられる。 4 0 0 0 1 公表方法を検討中 厚生労働特別研究
医療情報ネットワーク基盤整備と安全な電子カルテ実現のための技術的方策に関する研究 平成16年度 8,000 東京工業大学 像情報工学研究施設 大山永昭 (ア)個人情報の安全性を確保するためには、医療データ等を使用する者の正当性を認証すること及び、通信回線上や医療機関内での医療データ等の保護を実現することが必要である。(イ)多機能ICチップを利用し、オープンなネットワーク上で安全に情報サービスを利用可能とするオンデマンドVPNを利用することで、医療分野における利用者や利用環境をネットワーク経由で迅速に確認でき、複数の医療情報機器間で動的にセキュアなネットワークを構築することが可能となるため、ネットワーク上を流通する医療情報の保護に有効であることが明らかになった。(ウ)医療にかかわる多くの機関が相互に情報交換可能な環境下で電子カルテに代表される医療情報の電子化を進めることが可能になり、個人情報保護を実現しつつ必要な情報の授受を実現する基盤が構築可能となる。 本研究における医療データ等を使用するものに対する認証の必要性及び、通信回線上や医療機関内での医療データ等の保護の議論は、平成17年3月に医療情報ネットワーク基盤検討会より出された医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに反映。 保健・医療・福祉情報セキュアネットワーク基盤普及促進コンソーシアムが進めている医療機関相互における情報連携の実証実験や医療サービスの検討等への反映や、オンデマンドVPNを構成する技術仕様へフィードバックすることを予定。 1 6 11 0 2 15 厚生労働特別研究
医療事故事例の調査に係る内容や費用・人材育成に関する研究 平成16年度 10,000 財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止センター 野本亀久雄 (ア)医療機関内で発生した事故について、全国的な事故情報収集システムや個別の事故調査分析モデル事業の開始が予定されているが、現行の医事法制下における第3者機関による現地状況調査の方法や、モデル地域における医療関連死の調査における対象事案やその情報管理に関しては検討がなされていない。(イ)事故報告の受付から事例番号の交付、事例の選別、現地調査依頼の発出、訪問調査、事後処理という一連の過程を検討し、2件のモデル事案における試行的実施を経て確立した。医療関連死調査における、中央事務局とモデル地域の役割、必要人員と資質、個人情報保護についての取り扱いを確立した。(ウ)わが国における多数の医療事故事例に基づく大規模な分析とその成果の社会への還元が図られることとなり、医療安全の観点から大変意義深い。また医療関連死の原因解明が進むことは、医療従事者の医療技術の向上のみならず、遺族等の疑問に対する回答にもなることから、医療の不確実性の中でいたずらに誤解や不満が増大することを防ぐことに資すると考えられ大変意義深い。 ○本研究の成果に基づき、対象医療機関から報告された医療事故情報の収集・分析を開始している。平成16年度は、6件程度の個別医療機関に調査を行った。その大部分は直接医療機関を訪問し調査を行っている。平成17年4月15日には、第1回の報告書を公表したところである。その内容は、厚生労働省における医療安全関連の会議において報告した。○本研究の成果に基づき、現在全国9地区程度が候補となっている「診療行為に関連した死亡の調査分析に関するモデル事業」がじゃ頤使されることとなっている。当該事業は5年間の試行期間を経て全国展開することが検討されている。 ○医療事故情報収集に関しては、平成16年10月に事業を開始し、平成17年3月末までに533医療機関より533件の事故情報が寄せられたところである。これに対し、現時点での分析を加え、4月15日に公表した報告書に関しては新聞、ニュース番組、関連雑誌等、多くの報道がなされ、社会的関心の高さが伺える。医療事故の防止による医療安全の一層の推進に資する情報提供や注意喚起となったものと考えられる。 ○診療関連死に関する事業は今年度、これから実施されるところであるが、従来医師法21条に定める「異状死」に関しては多くの報道がなされ、また、日本内科学会、日本外科学会等の医療界の主要学会においても高い関心を示している。医療界のみならず、患者の遺族や、また、警察庁においても事業に参加することとなっており、その実施と成果は、医療関連死に関する問題Aの解決に当たって社会的に大きな影響を及ぼすことと想定される。 0 0 0 0 2 6 厚生労働特別研究
在宅療養促進のための訪問看護のあり方に関する研究 平成16年度 5,000 社団法人 全国訪問看護事業協会 副会長 伊藤 雅治 1.分担研究:通常の(老人)訪問看護以外の訪問看護利用に関する調査研究
ア 保険外における訪問看護(有償訪問看護)サービスは実施されているが、その実態は不明
イ (1)有償訪問看護利用者は利用期間が短く、障害の程度の重い者が多い(2)保険サービスに追加的に利用する者で85%を占めた(3)平均利用回数は月3.3回で1回のみの利用者で51%を占めた(4)目的は「医療処置などの頻回訪問」「介護給付を超えるニーズ」が30%と多かった(5)料金の取決めは75%の事業所でなされるも内容等には差異が大きかった
ウ 当会全会員の訪問看護ステーションを対象に調査を実施し、訪問看護需要とそれに見合った提供システムの検討資料として整理され、潜在的なものを含む訪問看護需要やそれに対応する訪問看護師の役割や教育内容の検討に活用できる
2.分担研究:退院調整看護師養成プログラム作成
ア 「退院調整看護師」はすでに活躍しているが、その養成のため全国レベルで基準化されたプログラムは存在せず、その質も保障されていない
イ 専門家から構成された委員会にてプログラムは作成された
ウ プログラムが基準化されたことで、研修事業で広く活用されることが期待でき、退院調整看護師の質の向上に貢献するとともに、医療依存度の高い患者・家族が安心して在宅療養へ移行する支援体制の構築への第一歩となる
1.分担研究:通常の(老人)訪問看護以外の訪問看護利用に関する調査研究
18年度診療報酬改定と介護報酬改定に向けての検討材料として反映
2.分担研究:退院調整看護師養成プログラム作成
看護職員確保対策における看護職員の資質向上施策の項目として
退院調整看護師養成を取り込み18年度の予算請求に反映
1.分担研究:通常の(老人)訪問看護以外の訪問看護利用に関する調査研究
有償訪問看護サービス内容、潜在的なものも含む訪問看護の需要、有償訪問看護サービスの料金設定と提供方法の参考資料となった
2.分担研究:退院調整看護師養成プログラム作成
基準化されたプログラムによる研修事業の開催により、退院調整看護師の質の向上と在宅療養の推進が期待できる
0 0 0 0 1 0 厚生労働特別研究
化学テロにおけるサーベイランスに関する研究 平成16年度 4,000 財団法人日本中毒情報センター 大橋教良 ア)松本、地下鉄両サリン事件後10年を経て、この間の化学テロに関する知見を集積する。(イ)大量の患者が発生する以前にみられる、通常とは異なるわずかな異変を察知することで早期に化学物質による健康危害(テロを含む)に対処可能となる。(ウ)サリンによる健康危害は世界中で松本と地下鉄のサリン事件以外になく、詳細なレポートを残すこと自体に意味がある (1)NBCテロ対処現地関係機関連携モデルに示されている体制を大量の患者が発生する以前に発動するための、要領が明らかになった。(2)化学物質が関与する健康危害事例には都道府県の公害衛生研究所の日常活動、感染症サーベイランスなど既存の監視体制を充実させることで対応可能な事例も存在することが判明した。こんご、この体制の強化が望まれる。   0 0 0 0 1 シンポジウム1 厚生労働特別研究
科学研究費計画書の電子受付化に関する研究 平成16年度 20,000 東京大学大学院医学系研究科クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット 山崎力 (ア)これまで、科学研究費計画書の電子受付化の研究はない。(イ)αバージョンを作成し、電子申請に活用できる機能を有するものであることを確認した。(ウ)科学研究費計画書の電子受付を行うことで、研究費がさらに効果的に利用されることが期待できる。 総合科学技術会議における競争的研究資金制度改革の意見(平成15年4月21日)で求められている申請書の受付書面審査、評価結果の開示等における電子システム化に寄与することが期待できる。 今後の科学研究の急速増加にも十分対応可能である。 0 0 0 0 1 0 厚生労働特別研究
室内空気質の健康影響に係る医学的知見の整理 平成16年度 10,000 北里大学 医学部 相澤好治 (ア)シックハウス症候群は、住宅などの室内環境要因に起因し、アレルギ-疾患と中毒に加え、病態未解明な状態の複合概念であり、患者や医療機関で受診機会や治療など臨床上の混乱が生じている。また、欧米では真菌・ダニなどの生物学的要因も注目されている。
(イ)本研究で加えられたこと
 (1)本症候群疾患概念の整理(文献調査)
 (2)調査研究結果の概要整理
 (3)発症に関わる人側の要因調査
 (4)予防対策の現状と効果
 (5)今後の問題点整理。
(ウ)成果の専門的・学術的意義
 ・住宅の化学物質と真菌・ダニなどの生物学的要因の自覚症状への影響の検討が必要である。
 ・中毒、免疫学的機序、心因的機序、不明な機序の4つに分類・整理。
 ・生活習慣・心理的要因との関連性調査。
 ・化学物質代謝酵素の遺伝子学的検討の現状調査
 ・建築衛生の実施、建築材料の適正化などによる発生源対策、換気による希釈、清浄器による曝露低減措置などが必要である。
 ・ホルムアルデヒドはIgE抗体を産生すると共にIV型アレルギーのアレルゲンとなることが観察されている。これらの感作とシックハウス症候群の発生とはかならずしも相関しないことが示されている。
 ・室内環境関連症状と室内環境因子との関連を調査した結果、症状は非特異的であり、環境以外の因子によっても生じうる。診療上の混乱を防ぐため一般診療家が使用できる「明確で判定しやすい診断基準」の設定が急務である。
・シックハウス症候群の概念が広いため、診療において混乱をきたしている。本研究で、その病態、原因、発生の場所を明確に分類し、アレルギー、中毒については、それぞれの専門医において診療すること、それ以外の非特異的症状については、今後科学的研究を継続することが示された。漠然とした本疾患概念を整理することにより、本病態の対処を容易にし、保険医療行政に貢献すると思われる。
・化学物質対策に偏っていた対策を、生物的要因に視野を広げた点、環境衛生行政に寄与するところが大きいと考えられる。
・環境と個人要因から発生する可能性が文献検索により示され、行政的研究の方向性が提案された。
・発生源対策における行政施策はきわめて重要であり、建築学と医学の観点より建築衛生行政に貢献すると思われる。
本研究で得られたシックハウス症候群に関する疾患概念の整理は、適切な医療の実現に寄与し、広く医療機関や国民に分かり易く説明することが可能となる。化学物質、住宅起因性健康障害における生物学的要因、生活習慣などに注目し、概念を整理することにより、国民が発生機転を正しく理解し、建築衛生に対しても正しい知識を持ち、適切な医療機関の受診が可能となる。さらに適切な予防措置の材料となる。 32 17 31 0 1 1 厚生労働特別研究
化学修飾によるプラスミドDNAのナノ粒子化とDDSに関する研究 平成14-16年度 14,000 京都大学大学院 薬学研究科 西川 元也 (ア)プラスミドDNAの利用は遺伝子のデリバリーに限られている。(イ)化学修飾によりプラスミドDNAを骨格とするDDSキャリアを開発し、抗癌剤の腫瘍デリバリーを実現した。(ウ)担癌マウスにおいて有効性の増大、副作用の軽減が認められた。     2 0 8 0 0   萌芽的先端医療技術推進研究
糖鎖担持カルボシランデンドリマー製剤の設計技術開発に関する研究 平成14-16年度 89,100 埼玉大学工学部 照沼大陽 (ア)実用的なベロ毒素阻害剤の開発が望まれている。しかし、明確な構造を有する阻害剤はまったく知られていない。 (イ)まったく新規なコンセプトに基づき、初めて個体(マウス)に対してベロ毒素阻害活性を有する化合物を開発した。(ウ)機能性糖鎖をオーダーメードで配置出来る技術を開発し、そのベロ毒素阻害剤をはじめ、インフルエンザウイルスあるいはデング熱ウイルス等に対して有効性を世界で初めて実証した。さらに、ベロ毒素に対するグロボ三糖の接着機構について新たな知見を得た。 毎年のように社会的問題となるO157による発症に対して、個体(マウス)で有効な阻害剤を開発することができた。また、このコンセプトを利用することで、今後、あらたに発生することが危惧される悪性ウイルスあるいは毒素に対して有効な医薬品開発の可能性が明示された。今後、実用レベルでの調査・検討が望まれる。 機能性糖鎖の大量合成とその利用法の開発はポストゲノムの有力な候補となりうることを明らかとした。 O157、インフルエンザウイルスあるいはデング熱ウイルス阻害剤など社会的に問題となる薬剤開発に有効な新規コンセプトを提案・実証することが出来た。 O157阻害剤の開発研究に関して、原著論文の参考文献に示したとおり今回開発した薬剤に対する編者の総合的意見が掲載されるなどの評価を得た。 さらに、現在、デング熱阻害剤の個体による実験を計画している。 8 3 63 6 4 4 萌芽的先端医療技術推進研究
クロマチン転写制御を目的とした人工酵素の開発 平成14-16年度 14,000 東京大学大学院医学系研究科 鈴木亨 (ア)クロマチンからの転写制御は重要でありながら、研究されていない領域である。(イ)DNA結合転写因子とクロマチン関連因子との相互作用ならびに制御に関する新規分子反応を複数明らかにし、これらを標的とした創薬を試みた。(ウ)クロマチンからの転写制御に関する複数の新規の分子反応を明らかにすることができ、転写研究に寄与することができた。これらの成果は欧米一流雑誌に発表した。国内外から大きな反響があった。また、これらの成果に基づき、クロマチンからの転写制御を標的とした新しい創薬アプローチを開発した。 遺伝子発現転写を標的とした治療法の開発が遅れていることはクロマチンの制御が理解されていないことが要因のひとつである。本研究を通して実施した、創薬標的となる分子反応の発見、創薬の試みは次世代型のピンポイント創薬(ゲノム創薬、テイラーメイド医療)の考え方のひとつを示す。 明らかにした新規分子反応ならびにそれらを標的とした創薬アプローチは新規性に富み、現在製薬会社との連携のもと、創薬を進めている。次世代型の創薬アプローチにつながると期待される。 6 0 9 0 2   萌芽的先端医療技術推進研究
超極限分子プローブによる組織障害の再生・治癒機構の解析と高精度局所診断技術の開発 平成14-16度 232,369 慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻 南谷晴之 (ア)細胞内オルガネラや構成分子を特異的に染色または蛍光標識固定して形態や分子局在性を識別する方法はも技術的にも確立している。(イ)細胞や組織の生きた状態で一分子の動態を可視化解析する、あるいはオルガネラや構成分子の分子生理機能を動的に経時的にマルチカラー可視化解析したり、細胞間相互作用を観測し、病態に関わるメカニズムを明らかにした。とくに虚血再灌流障害における微小循環血流・酸素代謝異常、糖尿病性最小血管障害・血栓亢進に関わる内皮細胞上の血小板・白血球の接着亢進、急性腎炎・関節炎など免疫性炎症反応における活性化好中球の作用と特異的蛋白分子の易血栓性応答、腫瘍など血管新生構築機序における血流・酸素代謝異常、血管内皮細胞の酸化ストレス応答及びメカニカルストレスに対するNO, pH, カルシウムの特異的応答、などを明らかにした。また肝細胞・神経細胞・腫瘍細胞のアポトーシスに関わるタンパク・酵素の発現・促進・抑制機序を確認した。(ウ)生体組織・細胞・オルガネラ・構成分子を特異的に蛍光イメージングして、その動的機能を生きた状態で可視化解析するナノプロ−ブとイメージング技術を確立した。開発した方法と装置は当該分野において広く利用されるようになってきており、その一部は国外においても注目されている。また、解析された生体分子生理機能の研究成果は、著名な国際的学術誌に掲載され高い評価を得ている。 「日常初期診療における臨床検査の使い方」小委員会及び「診断群分類を用いた急性期入院医療の検査ガイドライン策定に関する研究」研究班により「胃潰瘍または十二指腸潰瘍診断群別臨床検査のガイドライン2003−医療の標準化に向けて−」、「胃の悪性新生物診断群別臨床検査のガイドライン2003−医療の標準化に向けて−」、「潰瘍性大腸炎(手術なし)診断群別臨床検査のガイドライン2003−医療の標準化に向けて−」などが作成報告・公表され、当該分野に広く反映させた。 本研究で推進されたナノプローブとバイオイメージング技術の開発、その方法と装置の利用は、わが国当該分野をリードする形に発展している。ナノイメージングというキーワードが広く普及しつつあることは、本研究で目指したナノレベルのバイオイメージング技術の新規開発、その有効な利用法の確立、種々の生体機能の解明が、新しい臨床診断治療への展開に一つのシーズを作り出したといえる。 230 91 764 6 3 4 萌芽的先端医療技術推進研究
極細ファイバー関節鏡とその付属機器の開発に関する研究 平成14-16年度 12,500 大阪市立大学大学院
医学研究科整形外科学
伊藤陽一 (ア)関節鏡が低侵襲手術に有用であることは周知である。(イ)従来の硬性鏡の関節鏡ではなく、軟性鏡である極細ファイバー関節鏡を開発した。(ウ)低侵襲で広範囲の視野確保が可能な医療器機の開発がなされ、関節疾患の早期治療に貢献可能である。 高齢化社会の我が国で、変形性関節症の患者数増加は著しい。極細ファイバー関節鏡の開発に伴い、低侵襲で正確な鏡視下手術が可能になる。入院を必要としない外来手術により医療費軽減につながり、行政面での貢献が期待できる。 極細ファイバー関節鏡による低侵襲手術は局所麻酔下で可能であり、将来的には、開業医レベルでの利用が可能となり、早期診断と早期治療に直結する。 6 0 6 0 0   萌芽的先端医療技術推進研究
ナノテクノロジーを用いた新規DDS製剤の研究開発 平成14-16年度 164,494 東京慈恵会医科大学DDS研究所 水島 裕 (ア)製剤のナノ粒子化は、ターゲッティングや徐放性のDDS製剤に適している。(イ)いくつかの薬物について応用した。ターゲッティングと徐放を併せ持つ初めての製剤を作製した。(ウ)本研究の成果によって、副作用軽減・効果の持続・利便性の向上が充分期待される。 ナノテクノロジーは、平成13年度閣議決定した価額技術立国達成のための4つのテーマのひとつである。本研究が半ば成功したことにより、今後の行政指導のますますの発展するであろう。 本研究により開発した製剤については、わが国の製薬企業により研究開発がされている状況にある。 17 21 27 29     萌芽的先端医療技術推進研究
細胞機能・組織修復・再生のナノ・マニピュレーション:生体機能材料のナノ設計・ナノ技術および医療応用 平成14-16年度 220,690 九州大学大学院医学研究院医用工学分野 松田 武久 ア:分子レベルでの細胞・組織の研究は精力的になされているが、医工学の観点からの研究は僅かであった。
イ:工学の技術による細胞・組織のマルチスケール操作技術が開発された。
ウ:医工学の手法による細胞・組織のマニプレーションは再生医療と細胞・組織のシステム生理学の基盤となる。
なし なし 239 13 203 9     萌芽的先端医療技術推進研究
萌芽的先端医療技術推進研究(ナノメディシン分野)の企画と評価に関する研究 平成16年度 8,000 財団法人医療機器センター 長谷川 慧重 (ア)厚生労働科学研究の応募課題に対する事前評価の際、評価委員に過度の負担が掛かっており、効率的・効果的な評価作業が実施されていない。(イ)事前評価システムの効率的・効果的な最適モデル(ピアレビュー)のあり方を検討し、本研究事業をモデルケースとしてピアレビューを実施した。(ウ)検討した事前評価システムが厚生労働科学研究全体で採用されれば、我が国の厚生労働科学の全体的底上げと発展に大きく寄与することが示唆された。 平成17年度の応募課題に対し、ピアレビューを実施。事前評価に貢献した。 限られた研究資源を有効活用するため、優秀な研究の絞り込みに作業(事前評価)に重点をおく必要があり、その結果、事後の研究成果を著しく向上させることが期待できる。その意味から本研究の社会的意義は高い。 0 0 0 0 1 0 萌芽的先端医療技術推進研究
微細加工技術(FIB)を応用した細胞配列化チップの創製 平成14-16年度 13,500 芝浦工業大学工学部 松村一成 (ア)細胞・ウイルスを固定化したバイオセンサーの膜タンパク質機能解析手法としての有用性(イ) FIB加工技術により、従来技術では不可能だった基盤材料(センサーチップ上の高分子等)を直接的に細胞・ウイルスの吸着場とすることに成功した(ウ)バイオセンサーの高機能化、高精度化のための新規技術の獲得に資することが期待される 直接的な貢献は現在ないが、特許として技術公開したことによる波及効果が期待される。 産業新聞報道による産業界への周知効果。 2 1 6 1 0 1 萌芽的先端医療技術推進研究
ナノチューブ、ナノ微粒子、マイクロ微粒子の組織反応性とバイオ応用 平成14-16年度 229,899 北海道大学大学院歯学研究科 亘理文夫 (ア)人工股関節部から発生する摩耗粉が炎症を誘発する。針状微粒子のアスベストは肺癌の発癌性がある。(イ)生体親和性材料でもマイクロ/ナノ微粒子になると組織刺激性が昂進する物理的サイズ・形状依存性微粒子効果を明らかにした。50nm以下のナノ微粒子は呼吸器系を通して体内に取り込まれ、全身循環する。カーボンナノチューブは短中期的に特異的な為害性は示さず、むしろバイオ応用に有利な特性を有することを明らかにした。(ウ)ナノパーティクルの生体反応性の最も基本的な現象を明らかにした。カーボンナノチューブの生体適合性については為害性の可能性を主張する記事が欧米から出され、係争中の問題であるが、データに基づき特性を報告。 平成17年3月23日 (於 北海道大学大学院歯学研究科)
内閣府 総合科学技術会議による視察
来学者: 内閣府 総合科学技術会議事務局 大臣官房審議官 清水一治、同 参事官補佐 古金谷敏之、同 政策調査員 加東智明、主任科学技術官(重点分野担当)付 参事官補佐(ナノテクノロジー・材料担当) 柳 健一の各氏
視察目的:ナノ物質のバイオ応用と生体影響に関する研究の現状と今後の課題についての意見交換
貢献内容:研究内容(とりわけカーボンナノチューブやナノパーティクルの為害性問題)について討議ならびに施設視察。
(1)ナノテクノロジー開発の是非を問うナノトキシコロジー問題に対して、科学的なデータを得てナノトキシコロジー/安全性条件を把握し、導出されたナノテクノロジー開発指針(案)に基づき、バイオ応用開発を推進するという学術的な対応によるナノテクノロジーアセスメントを提起。(2)カーボンナノチューブのバイオ応用開発の可能性を提起。(3)国際シンポジウムでの研究班の発表のほかに、書籍発刊、研究会発足を予定。(4)ナノ/マイクロ微粒子の生体反応性に関する研究は日本ではほかにあまり見当たらない。特にカーボンナノチューブのバイオ応用に関しては世界的にリード。 96 55 200 1 6 12 萌芽的先端医療技術推進研究
ナノサイズ・センシングカプセルの新規開発と医療応用 平成14-16年度 189,648 東北大学大学院 医学系研究科 大内憲明 ア 密度汎関数法に基づく第一原理計算によりナノ粒子の分子設計が可能であること
イ 1.混合基底法及び拡散量子モンテカルロ法を開発したことで更に高精度にナノクラスターの構造、エネルギー状態の計算ができ、理論的にシリコンフラーレンが作製可能となった。
2.癌を標的とした医療用ナノ物質として籠状構造を持つCdSeナノ粒子構造を作製できた。また、ナノ粒子のシリカコーティング技術の確立に成功した。
3.抗体・量子ドット複合体、シリコンナノ蛍光剤による超高感度計測系を確立した。更に癌手術におけるセンチネルリンパ節生検にナノ粒子蛍光検出法を開発し、最適なサイズ、蛍光波長を確立した。
ウ 1.実験値を一切使わずにナノクラスター構造・物性の予言可能となったことは化学合成の手法に革命的な影響を与えることが予測される。既にいくつかの、新たな物質の創製にも成功している。
2.これまでに作製したナノクラスター、コーティングナノ粒子は新たな蛍光マーカーとして生物・医療分野での利用が期待できる。
3.ナノサイズでリアルタイムに細胞イメージングが可能となったことから、今後、細胞レベルでの癌診断、薬物動態研究への応用が期待される。癌手術に不可欠なセンチネルリンパ節生検に最適なナノ粒子を明らかにしたことで新たな機能性ナノ粒子の開発に弾みがつくと予測される。
厚生科学審議会科学技術部会における厚生労働科学技術部会の中で、先端医療の実現に関し、ナノテクノロジーの応用はこの柱の一つに上げられ、医療の重要な課題となっている。今後ナノテクノロジーの進歩によってテイラーメイドメディスン、癌の超早期発見における応用が加速すると考えられる。また、今日新たな医療技術として、細胞または分子レベルでの癌の病態解明が進められており、単分子イメージング可能な機能性ナノ粒子の応用が期待されている。本研究ではがん細胞の蛍光分子標的イメージングに成功し、かつ癌手術のテイラーメイドメディスンに不可欠なセンチネルリンパ節生検に蛍光ナノ粒子を用いた蛍光検出法やシリカコーティングAgIビーズを用いたX線検出法の開発を行うなど、先端医療の実現に及ぼす影響は大きいものと考えられる。 医療の低侵襲、テイラーメイド化を推進する新たな医療技術として、癌手術におけるセンチネルリンパ節生検法が注目されるが、新たにナノ粒子を用いた蛍光検出法ならびにX線検出法を提案した。またアレルギー等、従来のX線造影剤の副作用解消を目的としてナノ粒子のシリカコーティングにも着手し、次世代X線造影剤として、シリカコーティングAgIナノビーズの作製に成功した。さらに細胞または分子レベルでの診断・治療への応用が期待される分子標的マーキングならびに細胞内単分子蛍光計測に成功した。本研究で作成した機能性ナノ粒子は今後、医療の低侵襲、テイラーメイド化を推進する上で、社会に大きな影響を与えると考えられる。われわれは機能性ナノ粒子によるがんの診断・治療へ向けて、当該ナノメディシン分野をリードする研究グループとして発展している。 5 47 51 5 0 3 萌芽的先端医療技術推進研究
ナノテク集積型埋め込み式心室補助装置 平成14-16年度 110,700 東北大学加齢医学研究所 山家智之 (ア)心不全時の心臓マッサージによる血行動態の改善。(イ)ナノテク集積型心室補助装置によって、有効な血行動態の補助が行われ、完全埋め込み型システムを用いた慢性実験では、4例3ヶ月以上の補助効果が継続して得られた。(ウ)心臓を外部から補助する完全埋め込み型システムを具現化したものはこれまで内外になく、欧米の人工臓器学会の雑誌にも掲載され、国内外から大きな反響があった。 本研究の成果を元に、平成16年度より行われてきた内閣府におけるナノテク部会などに第3次科学基本計画における
四本柱のひとつであるナノテクノロジー・材料の基本方針を策定するディスカッションにおける基礎資料を提供するに至った。
超高齢化社会を迎え、高齢心不全患者の社会復帰が求められる社会となった。重症心不全では、補助人工心臓か心臓移植しか救命の方法論はありえないが、移植提供心臓は不足しており、補助人工心臓も血液との親和性が問題として示唆されている。 31 75 198 14 1 45 萌芽的先端医療技術推進研究
バイオナノ粒子による治療用生体高分子デリバリーシステムの開発 平成14-16年度 199,318 ジェノミディア株式会社 小谷 均 (ア)先進国において遺伝子医薬など先端バイオ医薬用のデリバリーシステムの開発に成功している研究機関はなく、新規デリバリーシステムが切望されていた。
(イ)新規癌免疫療法の臨床応用に必要な基礎データ(薬効に関するデータ、安全性に関するデータ)と、治験薬を製造する場合の確認申請に必要な、製造用材料(マスターバンク)の整備を行う事が出来た。
(ウ)研究成果である新規癌免疫療法により誘導される免疫は長期継続型であり、従来の治療法で課題となっていた持続性の問題を解決できる可能性がある。また、種々の抗癌剤との併用が有効である事が明らかとなっており、安全で有効性の高い癌の新しい治療法として期待できる。更に、確立した標的化技術は、他のデリバリーシステムにも応用可能であり、新規のデリバリー技術の開発への展開も期待できる。
本研究は、大学所有の先端医薬品シーズを、大学発バイオベンチャー企業が医薬品レベルまで開発を行うというスキームで行われた。本研究による成果をもとに、ジェノミディアでは国内の大手化学メーカーと臨床開発や事業化に関する交渉を開始しており、実際に事業化に直結する研究成果を得ることが出来た。
現在、先端医薬品の開発は、海外の巨大製薬メーカー主導で進められているが、その導入には多額のライセンス料などを支払い必要がある。国内での先端医薬品開発開発を促進するためには、本研究のように国内の研究機関の持つ基礎研究をシーズにして、国内のベンチャー企業が開発を進めるシステムを構築する必要がある。
本研究で得られた成果をもとに事業化が進んでいることは、国内での先端医薬品開発におけるトランスレーショナルリサーチのモデルになりうるケースであり重要な成果である。
本研究のように先端医薬品の開発に関して国内技術をベースで進めることが成功すれば、現在海外のメーカーに支払っている医薬品特許に対するロイヤルテイが不要になることから、国民医療費削減の面で社会的インパクトは大きいと考えられる。
また、本研究成果である新規癌免疫療法技術が実用化すれば、3大疾患の中で心筋梗塞と脳梗塞による死亡者をあわせた数よりも、さらに死亡者数が多い癌に対して安全性・有効性の高い治療技術になると予測される。そのため、特に高齢化社会における国民のQOL向上に貢献できると期待している。
更に、遺伝子医薬など新規医薬品開発に関して実用化を進めるためには、新しい分野の医薬品開発のためのガイドライン作りを規制当局である厚生労働省と共に進める必要がある。そのようなプロセスにより規制整備が進めば、従来は海外へ流出していた先端医薬品開発が、国内で進められることになり、国内で難治性疾患に苦しむ患者さんに対して、より早い時期に優れた医薬品が供給されると期待される。
8 3 7 3 0 5 萌芽的先端医療技術推進研究
副作用発現回避を目的とした代謝物発現プロファイル及び薬剤反応性遺伝子の解析 平成14-16年度 14,000 東北薬科大学 平塚真弘 (ア)多くの医薬品の代謝に関与するCYP3A4の発現には著しい個人差がある。(イ)抗血小板薬シロスタゾールの代謝にはRXRやCYP2B6の遺伝子多型が関与することが示唆された。(ウ)シロスタゾールをモデル薬物として体内動態の個人差を解析した例はこれまでになく、学会等で注目された。 末梢血のCYP3A4 mRNA定量値は薬物動態予測のサロゲートマーカーとして利用するのは困難であることが判明したことについては、今後の厚生労働研究の方向性に重要な示唆を与えるものとなる。 シロスタゾールの副作用発現は薬物血中濃度や代謝物プロファイル解析、薬剤反応性遺伝子の解析だけでは予測が困難であることが明らかになった。 1 0 2 0 1 0 萌芽的先端医療技術推進研究
個々人におけるモルヒネ作用強度のゲノム解析による予測に関する研究 平成14-16年度 14,500 財団法人 東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所
分子精神医学研究部門
池田和隆 (ア)モルヒネ作用機序において、ミューオピオイド受容体が中心的役割を果たすこと。モルヒネ感受性マウス系統差の遺伝子メカニズムとして、ミューオピオイド受容体遺伝子3’非翻訳領域の差異があること。
(イ)ミューオピオイド受容体遺伝子多型を100以上同定。これらの多型と薬剤感受性との相関を一部解明。検査キット開発の準備。
(ウ)本研究で明らかにしたモルヒネ作用強度個人差の遺伝子メカニズムは、種々の学術雑誌に掲載され、Trend Pharmacol Sciから総説執筆依頼があるなど、国内外から注目されている。
本成果を元に、ファーマコゲノミクス研究分野での新規のより大きな研究班が組織された。 本研究の成果を元に特許を出願しており、鎮痛薬感受性個人差を予測する方法の開発で世界をリードしている。 11 20 109 2 1 9 萌芽的先端医療技術推進研究
プライマリーヒト肝・腎細胞を用いた薬剤曝露、遺伝子発現に関する研究 平成14-16年度 212,932 自治医科大学 藤村 昭夫 (ア)トキシコゲノミクス研究の対象として実験動物または、海外ヒト組織に限られている
(イ)日本人組織を用いたトキシコゲノミクス研究の基盤が確立し、さらに日本人組織を用いた遺伝子発現データが20の薬物について明らかとなった。
(ウ)本研究成果の一つである解析手法がGenome Informatics誌・Experimental Hematology誌に掲載され、国外からの反響があった。
 同様のプロジェクトが先行する米国においても、トキシコゲノミクス研究のレギュレーションへの応用は未だなされておらず、本研究分野は萌芽的研究分野といえる。
 本成果のGenome Informatics誌上における公開内容は広く遺伝子発現研究に応用されている。
 本研究に関してFDA CBERディビジョンディレクターのRaj K Puri博士よりコンタクトがあった。
 トキシコゲノミックス研究分野では日本人組織の利用に関して唯一の体系的情報を有しており、我々が当該分野をリードする形で発展している。 12 25 6 6 3 4 萌芽的先端医療技術推進研究
シングルセル発現プロフィール解析の毒性評価への応用 平成14-16年度 150,000 京都大学大学院薬学研究科 杉本幸彦 ア)微量組織でのトキシコゲノミクス解析は、困難で一般的でなかった。(イ)迅速・簡便な微量組織トキシコゲノミクス解析法を確立し、これを実践した。例えばアスピリン様薬物の消化管に対する毒性に関して、粘膜上皮のみを用いた解析が大腸全臓器を用いた場合よりも早期にかつ高感度に毒性検出できることを示した。(ウ)本法を用いた解析例は、Nature姉妹紙等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 本成果は、任意の標的細胞(組織)の毒性を分子発現レベルから迅速・簡便・高再現性に評価できるもので、毒性の早期評価や安全性確保におけるスタンダード技法として使用できる。実際、本法は日経産業新聞(2004年2月23日)に掲載され、国内外から大きな反響を得た。また国内外の製薬会社と技術提携に向けて交渉中である。 迅速・簡便に任意の標的細胞(組織)の発現プロフィールを調べることのできる本法は、産業化やプロトコル刊行への動きがあり、我が国のみならず世界の当該分野をリードする形に発展している。 18 37 65 2 3 2 萌芽的先端医療技術推進研究
医薬品等の毒性試験に用いるストレス遺伝子チップの開発 平成14-16年度 14,500 熊本大学大学院医学薬学研究部 水島 徹 ァ ストレスにより誘導されるストレス遺伝子が多数存在すること
イ それらストレス遺伝子を網羅したストレス遺伝子チップを開発した。そのストレス遺伝子チップを用いて、NSAIDsにより誘導されるストレス遺伝子を解析した
ウ 本研究により、NSAIDsが小胞体ストレス応答を介して、細胞を傷害していることが分かった。
本研究で開発されたストレス遺伝子を用いて、イレッサなどその副作用が問題になっている医薬品の解析を行うことより、その副作用機構の解明が期待できる。 本研究が基に、副作用のNSAIDsを開発することは、この副作用で苦しんでいる多くの患者さんを救うことが出来る。 2 2 12 4 0 3 萌芽的先端医療技術推進研究
ヒト肝細胞キメラマウスを用いた医薬品の動態および安全性予測システムの構築 平成14-16年度 233,220 金沢大学薬学部 横井毅 (ア)分担研究者である広島大学の吉里研究室で、ヒト肝細胞キメラマウスの作製に成功した。このキメラマウスを創薬研究に活かすためのデーターを得ることが本プロジェクトの目的であった。(イ)ヒト肝細胞キメラマウスは、ヒトの遺伝子を持ち、増殖させ、ヒトと同様の酵素学的機能を有することが明らかになった。さらに、ヒトに外挿する新薬の開発データーを得ることができるマウスであることを証明する多くの知見をえることができた。(ウ)本マウスは、世界に例のないものであり、創薬研究の様々な場面で活用できることを示す多くの学会発表を行った。特に海外での発表には大きな反響が得られた。さらに、我が国の主要製薬メーカー7社と研究会をつくり、様々な研究を実施することができた。  本プロジェクトにおいて、ヒト肝細胞キメラマウスを、創薬研究のとくに動態および毒性学の研究に活用できるようにするための基礎的検討を完了することができた。さらに、我が国の主要な製薬メーカー7社の研究者等と一緒に研究をすることができ、このヒト肝細胞キメラマウスを我が国発の新技術として、創薬研究に活かすための研究を推進することができた。またこのキメラマウスを用いた受託研究を行う会社が本年春から本格的にスタートされた。以上より、本プロジェクトは、我が国における創薬研究を推進するための我が国発の新たな手法として確立することができた。  (1) この研究が開始された直後から、創薬研究への応用研究が、このヒト肝細胞キメラマウスでは全く行っていない段階にもかかわらず、多くの製薬メーカーでこのマウスの使用希望が多かった。したがって、当初の予定どおり、創薬研究に実際に役立ててもらうための予備的な検討を行うために、ヒト肝細胞キメラマウス研究会を立ち上げて、本プロジェクトからキメラマウスを供給し、disucussionを練り、個々の研究11プロジェクトについて研究協力を頂いた。実際の研究は広島または金沢で実施した。7メーカー(武田薬品工業(株)開発研究センター、山之内製薬(株)代謝研究所、三共(株)薬物動態研究所、(株)大塚製薬工場栄養研究所、第一製薬(株)創剤代謝研究所、ファイザー(株)薬物動態力学研究部、エーザイ(株)薬理安全性研究所)と2大学(東京大学大学院薬学研究科杉山雄一研、東京理解大学薬学部玉井郁巳研)が加わり、多彩な研究を推進することができた。現在、多くの研究がまとめの段階にあるために、学会報告や論文の数はあまり多くないものの、今後1年以内に多くの発表を行うことができる予定である。また、現状では、論文は投稿中や投稿準備中のものが多いのもこためである。以上のように、本プロジェクトでは、ヒト肝細胞キメラマウスの創薬研究に直結した検討を十分に実施することができた。さらに、(2)本年4月から、ベンチャー会社である、(株)フェニックスバイオが、ヒト肝細胞キメラマウスを用いた薬物動態および安全性研究の受託試験を開始した。この会社は、昨年度大学発の最優秀ベンチャー会社として、日経から表彰をされ、多くの学会や記事で取り上げられている。ヒト肝細胞キメラマウスは、プロジェクトが終了した現在、すでに創薬研究の現場に直結した利用が推進されている。以上の2点を、施策の反映件数として、2とした。 7 5 23 0 2   萌芽的先端医療技術推進研究

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