(1) | 内部進行管理について、内部評価結果等に基づく研究予算の増額措置により研究員のインセンティブを高めるとともに、ポイント制による個人業績評価により評価の客観性、公平性を高める等の取組がされているが、このような改革の成果が具体的に現れるよう、継続的に検証することが望ましい。 |
(2) | 講演会等の開催、一般公開等については積極的に行われているが、参加者が十分でなく、産業安全は社会一般の関心が高い分野であり、国民の研究所に対する理解を深めるためにも、関心が持たれるよう広報に工夫が必要である。 |
(1) | 調査研究に関する業務内容 調査研究業務については、当研究所の目的である「労働者の安全の確保」への寄与という観点から、適正に実施されている。 労働現場のニーズの把握については、産業安全に関する情報交換会を開催し、要望、意見等については、極力取り上げており、研究所の活動に活かされている。また、産業安全関連団体・学会等57の各種の委員会へ職員を派遣し、委員会を通じた現場のニーズの把握などの実績を上げている。本研究所は産業安全の第一線のニーズを注視することが重要であり、さらに一層ニーズの把握のための機会を充実させることが期待される。 プロジェクト研究については、中期計画に基づき行政ニーズ及び社会的ニーズを踏まえた研究活動を任期付き研究員の活用等により効率的に実施している。外部研究評価会議、内部研究評価会議において進捗状況を確認しながら、有効に実施されている。 また、基盤的研究については、中期計画に基づき研究活動を実施するとともに、大規模事業場で一度に3人以上が被災する重大災害が頻発したことを受け大規模産業災害頻発要因に関する研究を立ち上げるなど、年度途中に立ち上げたものを含め35課題の基盤的研究を実施し、ピアレビューを行っている。課題の件数や成果をあげるための取組について評価できる。今後、基盤的研究の重点化を図り、成果が対策に活かされるようにすることが必要である。 上記の研究の一方、当該法人は行政機関等からの要請に対応して迅速かつ的確に産業災害の調査を行うことが求められており、これを着実に実施したことは高く評価できる。これらの結果は行政通達などに有効に反映され、同種災害の防止に寄与している。国内外の労働安全に関する基準の制定改定に際しては、当該法人の研究成果を各種委員会において提供し、労働者の安全、作業快適性の改善向上に多大の貢献をしている。さらに、ISO等の国際規格への反映など、国際的にも貢献しており、少ない人員の中で研究成果を活かして多大な貢献をしていることについて評価できる。 また、産業安全に関する国内外の科学技術情報、資料等の調査については、各種業務活動の中で国内外の安全に係る情報・資料の収集に努めるほか、職業運転手の疲労と業務上の交通事故に関する調査の報告等、行政から要請のあった8件について調査を行い、報告をしているが、行政からの要請に対応するだけではなく、国民一般に向けて積極的な情報発信をすることが必要である。 外部評価については、外部研究評価会議において内部研究評価会議の実施状況に対する意見、提言を受けるとともに、プロジェクト研究の評価を研究計画に反映させるなど、適切に実施されている。 |
(2) | 調査研究成果の普及及び活用 調査研究成果の普及及び活用についても、中期目標に照らし適正に実施されている。 国内外の学会での発表(123回)、論文発表(48報)に関しては、中期目標(学会発表300回以上、論文発表200報以上)を達成するためには十分なものであり、活発な研究発表等が行われ、質的にも関連する「日本機械学会交通・物流部門優秀論文講演賞」を受賞する等、高く評価されている。 また、研究成果を安研ニュース、研究報告、安全資料等として発信するとともに、インターネットのほか技術専門誌、雑誌、講演など幅広い手段を活用してその成果の普及を行っている。 講演会等の開催については、全国3カ所で安全技術講演会を主催し、成果の普及に努めており、一般公開についても105名の参加をみている。一般社会の関心は高いと考えられる分野であるので、今後、より多くの人が参加することができるよう、一層の充実、工夫が必要である。 知的財産の活用促進に関しては、10件の特許を出願し、6件の登録がされている。また、所有特許の製品化が初めてなされており、16年度には初めての特許収益が得られるなど、これまでの取組に成果が出ていることは高く評価できる。さらに特許の活用が進むよう広報等の取組を行うことが望ましい。 |
(3) | 外部機関との協力の推進 若手研究者等の育成への貢献については、我が国唯一の産業安全に関する研究機関である産業安全研究所の責務として、研究員等の受入れ、研究所職員による他機関への講演や技術支援、労働大学校・安全衛生教育機関・災害防止団体における研修講師としての派遣等の協力による直接的な安全に係る担当者の育成等、中小事業者や産業現場のための活動を実施している。研究者の受入については、産業界の技術者・実務者と幅広く連携し、より効果を高めることが望ましい。 また、フェロー研究員制度の創設、流動研究員制度の活用、研究協力協定等により、国内外の研究機関との研究交流を積極的に進めている。今後、研究協力の戦略を鮮明にし、成果を検証する等により、相互に高いメリットがあるものとすることが望ましい。 |