第3回検討会 03/12/24 |
資料3 |
○ | 臨床現場において患者の高齢化・重症化、平均在院日数の短縮化等により、看護に求められる質が高度化し、その業務量も増加している。 |
○ | また、医療事故が頻発し医療安全の確保が最重要課題とされる中で看護の基礎教育、卒後教育の強化が必要となっている。 |
○ | 看護基礎教育では、医療機関における医療安全管理体制の強化や患者、家族の意識の変化等により、従来患者を対象として実施されてきた看護技術の訓練の範囲や機会が限定される傾向にある。 |
○ | 一方、新人看護職員については、多くの医療機関で研修が実施されているが、臨床現場では決められた時間の中で多重の課題に対応しなければならず、更に、ひとつの業務を遂行する間にも他の業務による中断がある等、高度な実践能力が求められ、新人看護職員の実践能力はこうした状況に即応できるレベルには到達していない。 |
○ | 更に、医療機関におけるヒヤリ・ハット事例において新人看護職員の占める割合が高くなっていること等から、新人看護職員の提供する看護ケアの質の向上にむけた取り組みが喫緊の課題となっている。 |
○ | こうした現状から新人看護職員研修を効果的・系統的に行うために新人看護職員が卒後の1年間で備えるべき看護技術等を示した「新人看護職員研修到達目標」(以下、「到達目標」)、新人看護職員の指導に必要な要件・指導方法等を示した「新人看護職員研修指導指針」(以下、「指導指針」)を作成した。 |
○ | 看護は人間の生命に深く関わる職業であり、患者の生命、人格、人権を尊重することを基本とし、生涯にわたって研鑽されるべきものである。新人看護職員研修は、看護実践の基礎を形成するものであり、極めて重要な意義を有する。 |
○ | 医療における安全の確保及び質の高い看護ケアの提供は重要な課題である。このため、医療機関は組織的に全職員の研修に取り組む必要があり、新人看護職員研修はその一環として位置づけられる性質のものである。 |
○ | 専門職業人として成長するためには、新人看護職員自身がたゆまぬ努力を重ねることは言うまでもないが、新人の時期から生涯にわたり、継続的に自己研鑽を積むことができる研修支援体制が整備されていることが重要である。 |
○ | 各施設内での新人看護職員研修の充実が望まれる一方で、施設内で実施できる研修に限界がある施設については、新人看護職員研修に実績のある施設、教育機関、専門職能団体等が積極的に支援を行っていく必要がある。 |
○ | 到達目標、指導指針は新卒者の就業の状況、安全なケア提供にあたっての優先度を加味し、病院でのケアにあたる看護職員を想定して検討した。 |
○ | 到達目標、指導指針の内容は新人看護職員研修として実施されるべき基本事項として提示するものである。 |
○ | 到達目標、指導指針は施設規模等の各施設の多様性を踏まえつつ出来る限り広く活用出来るものとした。 |
○ | 到達目標に含まれる内容は、生涯にわたる看護実践の基礎となる新卒の1年間に新人看護職員が習得すべき看護技術等の目標及び看護職員に必要とされる姿勢、態度とする。但し、新人助産師については助産技術を付加した。 |
○ | 到達目標の作成にあたっては、「看護学教育の在り方に関する検討会」(文部科学省 平成14年)、「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会」(厚生労働省 平成15年)等の看護基礎教育における看護技術教育のあり方に関する検討結果との連携を考慮した。 |
○ | 新人看護職員は医療機関の各部署に配属されるため、基本的な看護実践能力に加え、配属部署に関連した専門的知識、技術の習得が必要とされるが、到達目標は全ての看護職員に必要な看護実践能力を提示した。 |
1. | 医療人としての自覚を持ち責任ある行動がとれる。
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2. | 患者の理解に努め、患者・家族と良好な人間関係を確立できる。
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3. | 組織における役割・心構えを理解し、適切に行動できる。
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4. | 生涯にわたる主体的な自己学習の習慣をつける。
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1. | 患者の状態を的確にアセスメントし看護計画を立案することができる。 患者の病態及び心理社会的側面を含めた個別的な健康状態を把握する。その情報を分析し、看護問題及び患者の持つ力を見極め、適切な看護計画を立案することができる |
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2. | 基本的なケアを提供できる 看護実践における技術については、表1―1、表1−2の内容を安全かつ確実に実施できることを目標とし、以下の2つの段階で設定した。 なお、ここでは、高度なあるいは複雑な看護ケアを必要とする場合は除くこととする。
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3. | 患者と良好なコミュニケーションをとることができる。
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4. | 看護の場(施設・病棟等)の特性に応じて、必要なケアを実践できる。 所属する部署で主にみられる疾患とその症状及び治療、薬剤、検査、処置について理解し対応できる。 なお、所属する施設および部署で必要な知識、技術(表1―1、表1−2以外)については各施設で設定する。 |
1) | 施設における医療安全管理体制が説明できる。 |
2) | インシデント(ヒヤリ・ハット)事例や事故事例の報告を速やかに行える。 |
1) | 施設における院内感染対策が説明できる。 |
2) | 医療廃棄物の規定に沿った取り扱いができる。 |
3) | 針刺し防止対策を実施できる。 |
4) | 必要な防護用具(ガウン、手袋、ゴーグル等)が選択できる。 |
5) | 洗浄・消毒・滅菌の適切な選択 |
1) | 施設内の医療情報に関する規程の説明ができる。 |
2) | プライバシーを保護した医療情報や記録物の取扱いができる。 |
3) | 看護記録の目的を理解し、看護記録を正確に作成することができる。 |
1) | 業務の基準・手順に沿って実施ができる。 |
2) | 業務の優先度を考えて実施できる。 |
3) | 業務上の報告・連絡・相談が適切にできる。 |
4) | 決められた業務を時間内に実施できるように調整できる。 |
1) | 薬剤を適切に請求・受領・保管できる(含、毒薬・劇薬・麻薬)。 |
2) | 血液製剤を適切に請求・受領・保管できる。 |
1) | 災害発生時(地震・火災・水害・停電等)の初期行動が説明できる。 |
2) | 施設内の消火設備の定位置と避難ルートがわかり避難誘導ができる。 |
1) | 規定に沿った医療機器、器具の取り扱いができる。 |
2) | 看護用品・衛生材料の整備・点検ができる。 |
1) | 患者の負担を考慮し、物品を適切に使用できる。 |
2) | 費用対効果を考慮した衛生材料等の物品の選択ができる。 |
1. | OJT(On the Job Training:現場教育) 侵襲性の高い行為については事前に集合教育等により、新人看護職員の習得状況を十分に確認した上で実践することが必要である。 |
2. | Off-JT(Off-the Job Training:集合教育) 集合教育は施設全体で実施されるものと各部署で実施されるものとがあり、講義、演習、視聴覚機材等を用いて実施する。 |
1. | 自己学習 |
習得方法には上記の方法があるが、これらは各施設の条件によって適宜到達目標達成のために最適な方法を取り入れていく。 |
1. | 目標到達時期及び評価時期
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2. | 評価者
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3. | 評価方法
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4. | 評価の留意点
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○ | 人材育成は医療の質に関わる重要な要素であり、新人看護職員を含めた職員の教育は、施設全体で考え構築すべきものである。このため、各施設の職員の教育理念を明確にするとともに、施設全体の継続教育を統括する、複数の職種で構成される教育担当部門(委員会等)を設置することが望ましい。 |
○ | 新人看護職員研修について看護部門の理念を明確にし、看護部門の長の責任において、教育研修体制を構築する必要がある。教育研修体制は、看護部門並びに各部署に教育担当者を設置し、役割を明確化する必要がある。 |
○ | 看護部門の教育責任者は専任とすることが望ましい。 |
○ | 新人看護職員研修は、各職員がそれぞれの立場から関わるものであり、全ての職員に研修内容が周知される必要がある。 |
○ | 研修計画、研修内容については定期的に評価し改善することにより充実を図る必要がある。 |
○ | 各施設の看護手順等を整備し、これを基に新人看護職員研修を実施する必要がある。 |
○ | 施設の教育担当者は、新人看護職員研修にあたって医療安全等の担当部署との連携体制を構築することが必要であり、リスクマネジャー、感染管理等特定分野において専門的な知識・技術を有する看護職員を新人看護職員研修に参画させる必要がある。 |
○ | 新人看護職員の多くがリアリティショックを経験することから、施設および各部署での新人看護職員の相談窓口となる担当者を設置する等精神的な支援体制を整備することが望ましい。 また、看護部門の長をはじめ、部署の看護管理者や教育担当者、各指導者が新人看護職員の職場適応のために必要な基礎知識と援助方法を有することが必要である。 |
○ | 自施設内での実施が困難な研修内容については、他施設との連携、各種団体等の研修を利用することも必要であり、院内研修の中に計画的に組み込む必要がある。 |
○ | 新人看護職員研修は、看護学生が就職先を選定する上での重要な要因となっており、各施設は新人看護職員研修が医療安全の確保のみならず、看護職員の人材確保及び離職防止に貢献するものと認識する必要がある。 |
○ | また、施設、職員においても新人看護職員研修にあたって改めて自己を振り返り看護実践の根拠を確認する必要があることから、研修の質の向上は組織全体としての質の向上につながることを再認識する必要がある。 |
○ | 各部署における新人看護職員研修の実施にあたっては、各部署の看護管理者が研修を統括し、更に、各部署で実施される研修の企画、運営の中心となる教育担当者(教育委員等)を設置することが必要である。 |
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○ | 新人看護職員研修の実地指導にあたる指導者については以下のような体制が考えられるが、就職後一定の期間は、指導・相談を行う指導者を設置することが望ましい。 (指導者の設置例)
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○ | 新人看護職員の実地指導にあたる指導者への負担が過剰にならないように実地指導にあたる指導者の役割を明確にすることが必要である。 |
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○ | 更に、指導者を支援する臨床経験・教育経験の豊かな看護職員を設置し、指導者への助言・指導、新人看護職員への教育・指導を補足することが必要である。 |
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○ | 施設での教育計画に基づき、各部署での指導内容、指導時期、指導方法等を含んだ年間教育計画を明示し、部署の全ての看護職員に周知する必要がある。 |
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○ | また、各部署の教育計画には、施設で定めた研修内容の他に、各部署で新人看護職員に必要な教育内容を明示する必要がある。 |
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○ | 各部署における指導は施設で定められた看護手順に基づいて実施し、更に各部署で必要な看護手順等を整備することが必要である。 |
○ | 指導者は、指導を通して新人看護職員に与える影響が非常に大きいため、少なくとも3年以上の臨床実践経験を有することが望ましい。 |
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○ | 新人看護職員が各施設で充実した研修を受けることができる環境を整備するために、新人看護職員の指導者への施設内外での教育が重要である。新人看護職員の指導者育成の場としては以下のものが想定される。
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○ | 施設内外で実施される指導者育成のプログラムには、以下の内容を含めることが望ましい。
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○ | 上記の内容に加え、各施設、各部署の教育計画の実施方法等、各施設、各部署における指導に必要な事項を追加する必要がある。 |
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○ | また、各施設においては指導者としての不安・負担感を軽減することを目的として、各部署の長等による面接を実施する必要がある。 |
○ | 到達目標及び指導指針は各施設、新人看護職員研修の必須の事項として位置づけるが、施設規模、看護職員の構成、教育に係る予算等の状況にあわせた調整も必要である。 |
○ | また、看護職員の経験年数別の教育計画だけではなく、それぞれの看護職員の能力や希望する将来の専門等が活かせる、より柔軟な教育計画の作成も考慮することが必要である。 |
○ | 更に、新人看護職員研修は看護職員の生涯教育の一環であり、新人看護職員研修終了後の研修計画についても明示する必要がある。 |
○ | チーム医療を円滑に推進するために、新人看護職員研修に関して他職種との連携を密にとる必要がある。また、新人看護職員が他職種の業務を理解するための機会を設けることが望ましい。 |
○ | 各施設で実施されている新人看護職員研修の教育内容や方法には看護学生から大きな関心が寄せられており、各施設はホームページ等を活用し、新人看護職員研修に関する情報を広く公開することが望ましい。 |
○ | 新人看護職員研修に関する情報は看護学生の就職先の選定にあたって重要な情報であると同時に、また、各施設の新人看護職員研修に関する情報の公開は、施設間の協力・連携体制を構築する上でも有益である。 |
○ | 公開が期待される情報としては、新人看護職員研修についての施設の理念、施設が求める看護職員像、施設及び各部署の具体的な研修計画、研修内容、指導体制等である。 |
○ | 新人看護職員のリアリティショックを軽減し、臨床現場への適応を促すために各医療機関は自施設に関する情報を卒業前の学生に積極的に提供することが望ましい。 |
○ | 医療機関におけるITの導入が加速度的に進んでいる現在、新人看護職員研修においても、今後IT等の効果的な学習方法を検討することも有益である。 |
○ | これまで、看護職員の資質の向上に関する国の施策は中堅看護職員の専門性の向上や看護教員養成等を中心に行われてきたが、今後は新人看護職員研修に関する支援の充実を図ることが必要である。 |
○ | また、新人看護職員研修においては、指導者、看護管理者が果たす役割が重要であり、各施設以外で実施される研修には新人看護職員を対象としたもののみならず、指導者や看護管理者を対象にしたものが必要である。 |
○ | また、専門職能団体において現在実施されている新人看護職員、指導者等を対象とした研修が今後も継続して実施され、新人看護職員研修に関する支援を行っていくことが期待される。 |
○ | 学術団体は新人看護職員研修に関わる研究を推進し、研修方法等についてエビデンスに基づいた情報を提供することが期待される。 |
○ | 看護師学校養成所においては、臨床現場で求められる看護実践能力に関する情報を常に収集し、看護学生への教育に活かすことが必要である。このため、専任教員は実習施設等の新人看護職員研修に積極的に関わる必要がある。 |