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(2)子ども家庭総合研究経費
事務事業名 子ども家庭総合研究経費
担当部局・課主管課 【(1)子ども家庭総合研究】
 雇用均等・児童家庭局 母子保健課
【(2)小児疾患臨床研究】
 医政局 研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の控除に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
【(1)子ども家庭総合研究】
 乳幼児の障害の予防、乳幼児および生涯を通じた女性の健康保持増進等について効果的・効率的な研究の推進を図るとともに、少子化等最近の社会情勢を見据えて、児童を取り巻く環境やこれらが児童に及ぼす影響等についての総合的・実証的な研究に取り組むことにより、母子保健の推進及び次世代育成支援を総合的・計画的に推進するための児童家庭福祉の向上に資することを目的に本事業を実施する。
 本事業においてはこのような行政上必要な研究について公募を行い、専門家、行政官による評価により採択された研究課題について補助金を交付する。また、得られた研究の成果は適切に行政施策に反映される。

【(2)小児疾患臨床研究】
 医薬品の使用は基本的に承認された内容により行われるべきであるが、実際のところ医療の現場においては、医薬品が適応外で使用される例が散見されており、特に小児疾患においてはその7割〜8割が適応外の使用になるといわれている。このように小児疾患において、可能な限り早く医薬品の適正な使用を行えるようにしていく必要があり、事例の集積、薬効の評価等が急務である。
 上記をふまえ、本研究事業は、小児疾患に関して、根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)の推進を図り、より効果的な保健医療技術の確立を目指し、研究体制の整備を図りつつ、日本人の特性や小児における安全性に留意した質の高い大規模な臨床研究の実施を目的としており、より効果的かつ効率的な予防、診断、治療等を確立するための質の高い臨床研究を行う。
 本研究事業は、公募を行い、専門家、行政官による評価の後、採択された研究課題に対して補助金を交付する。

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
(1) 618
(2) 0
(1) 648
(2) 0
(1) 798
(2) 240
(1) 798
(2) 457
(1) 838
(2) 450

(3)問題分析
【(1)子ども家庭総合研究】
(現状分析)
 母子保健については、わが国の母子保健の様々な指標は、これまでに関係者が努力を続けた成果として、20世紀中にすでに世界最高水準に到達しているものの、今後は、その成果を踏まえつつ、以下のような課題に取り組む必要がある。
(1)20世紀中に到達した母子保健水準を低下させないこと(母子保健システムの量と質の維持)
(2)20世紀中に達成しきれなかった課題を早期に克服すること(乳幼児の事故防止、妊産婦死亡率の世界最高水準の達成等)
(3)今後さらに深刻化することが予想される新たな課題に対応すること(性や喫煙、飲酒といった課題についての思春期保健の取組、育児不安と子どものこころの発達、児童虐待防止対策)
(4)社会や行政の新たな発想や手法により、いっそうの成果を目指すこと(根拠に基づいた小児医療の推進、生活の質の観点からの慢性疾患児に対する療育環境の整備、妊娠から出産に至るまでの環境の整備など)
 また、少子化の進行にともなって、次世代育成支援が急務となっており、行政における対応も、これまでの要保護児童や、保育に欠ける児童を対象とした取組から、地域における子育て支援の強化を目指す考え方に変わりつつある。また、要保護児童への対応についても、その後の生涯の質を向上させる観点から、いっそうの向上が求められている。
 社会や家庭の変化による問題の変化や、一般の認識が変わったことにより、これまで見過ごされてきた課題に注目が集まるなどにより、取り組むべき課題が変化しており、これらの変化に対応して課題を解決することが求められている。

【(2)小児疾患臨床研究】
(現状分析)
 現在、小児疾患に関しては、医薬品の7割〜8割が小児に対する適用がなく、医療の現場では適応外使用がなされているのが現状である。
 (原因と問題点)
 この点については、小児における薬物代謝等、成人に対する医療技術と同一の対処ができないこと、先天性疾患等小児特有の疾患等については、製薬企業が開発する際、採算性の点で難があること、実際に小児を対象とした治験を実施することは症例の確保等で困難が生じること等の問題が生じている。
 上記により、医療現場では、医薬品を適応外使用といった有効性や安全性が確立されていない状況下で使用することとなっている。
 (事業の必要性)
 こうした小児疾患に関する医薬品の使用実績の収集、評価を行うことにより治療方法を確立していくとともに、治験を実施していく上で最も基本となる臨床研究自体の質の向上を図ることが可能であると考えられる。

(4)事務事業の目標
【(1)子ども家庭総合研究】
 母子保健および児童家庭福祉行政における各課題について、知見を収集整理し、その対策についての検討と評価を行い、これらによって得られた知識を整理して、ガイドライン等を通じて保健医療福祉の現場に還元し、対応の質的向上をはかることを目指している。

【(2)小児疾患臨床研究】
 研究課題採択にあっては、専門家、行政官による事前評価委員会を設置したうえで評価を行い採択課題の決定を行う。
 採択された課題に関しては、別途、専門家、行政官により構成する中間・事後評価委員会を設置し、中間評価及び事後評価を行う。

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
【(1)子ども家庭総合研究】
 本研究事業は、母子保健行政、児童家庭福祉行政の推進に大きく貢献しており、行政的意義が高いのはもちろんのこと、本研究事業に含まれる各分野において、先導的な役割を果たしている。
 次世代育成支援対策が行政上さらに重要な課題と認識されつつある現在、その有効な推進の基礎となる本研究事業の必要性は増している。

【(2)小児疾患臨床研究】
 小児といった企業が開発にあたって着手し難い疾患にあっては、行政的にもその研究を支援していく必要があり、そこで得られた治療法に関する情報を評価・蓄積し、医薬品の適正使用に結びつけていくことが急務である。
 また、主任研究者の適切な指導のもとで、研究を実施していくことで臨床研究自体の質の向上が期待できる。この点は現在、「スピードが遅い」、「質がよくない」等の指摘がなされている国内の治験においても、インフラの整備等において大きく寄与するものと考えられる。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
【(1)子ども家庭総合研究】
 本研究事業においては、研究班を構成する研究者から幅広い情報が収集され、先導的な知識を集約した研究を効率的に進めることが可能である。また、積極的に他の研究事業の成果を適切に活用している。
 評価方法については、外部の評価委員で構成される評価委員会が多角的な視点から評価を行い、その結果に基づいて研究費の配分が行われており、効率的に事業を進めている。

【(2)小児疾患臨床研究】
 医薬品の小児適応に関しては、国内・国外における差も認められており、海外で小児適応のある医薬品であっても、国内では適応となっていないこともある。本研究事業により、このような格差の是正も図れる。
 なお、本研究事業の採択に関しては研究内容、実施体制、倫理性等について、外部の評価委員により構成される評価委員会において検討・評価され、研究費の配分(必要な場合には指示等)が行われる。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
【(1)子ども家庭総合研究】
 本事業においては、各分野の知識を創出するとともに、各分野の手引書やガイドラインの作成など、現場に役立つ形まで、一貫した取り組みとしている。母子保健や、児童家庭福祉分野は、重要性の認識の高まりとともに、新たな考え方による取り組みを行っており、本研究事業は重要な基礎となっている。
 一例としては、児童虐待対策の推進が重要課題となっており、これに対し、疫学的な手法による実態解明と要因分析、(予防、早期発見と早期対応、フォローの各相における)対応方策の検討と有効性の評価、ガイドラインの作成といった施策の形成を包括的に研究開発し、成果をあげているところである。本研究事業各分野においても、同様に、包括的かつ一貫した取り組みが行われている。

【(2)小児疾患臨床研究】
 小児疾患に関する医薬品については、治験の実施の困難さや少子化による不採算等の課題から、企業における研究開発の難しい分野となっており、国による臨床研究の支援が効率性の観点からも重要である。 

(4)その他
【(1)子ども家庭総合研究】
 母子保健及び児童家庭福祉行政は、国民生活に密着しており、これまで、どちらかというと待ちの姿勢であったと言われているところを、今後は、国民のニーズに対してより迅速できめ細かく対応する必要があると認識されている。そのためにはそれぞれの現場において根拠のある施策を持ち合わせる必要があり、この基礎となる知見の収集と開発に努める必要がある。

【(2)小児疾患臨床研究】
 本研究事業は、現在の国内における医療環境に大きく寄与するものであり、小児疾患の臨床研究といった特殊性を踏まえ、倫理面等の問題を十分検討し、より適切かつ効率的に研究を進める必要があると考えられる。

(5)特記事項
【(1)子ども家庭総合研究】
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
平成14年6月にとりまとめられた「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会報告書」において、小児慢性疾患の研究を充実させる必要性が指摘されている。

【(2)小児疾患臨床研究】
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
小児・未熟児の医薬品等の臨床研究課題採択に際しては、外部の学識経験者等の評価を踏まえ選定。

3.総合評価
【(1)子ども家庭総合研究】
 本研究事業は、母子保健および児童家庭福祉行政が重要性を増しつつ、大きく転換する現在、その基礎となる知識の開発に重要な役割を果たしており、今後ともその推進に努めるべきである。
 本研究事業の各分野では、さらに有効な取り組みとなるよう、多面的・包括的プロジェクトとしてすすめることが適当である。また、他の研究事業との連携をさらに強めることも重要である。
 今後とも、これらの点に留意しつつ、母子保健と児童家庭福祉行政の変化に従い、本研究分野を先導することが望まれる。

【(2)小児疾患臨床研究】
 小児疾患においては医薬品の使用においてはその7割〜8割が適応外の使用になるといわれており、小児疾患における事例の集積、薬効の評価等が急務である。
 しかしながら、その採算性等により企業での開発が進まない状況下において、今後の我が国を支える小児に対し、国が支援していく必要性は大きく、患者の生命を救うことやQOLの向上に貢献できることから高く評価できる事業と言える。
 なお、本研究事業は対象を小児としていることから、インフォームド・アセント等といった小児特有の要素を良く検討して実施することが必要になると考えられる。


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