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IV. 2001年後期のEUでの簡易検査によるBSE陽性症例の月齢構成分析

2001年のBSE検査に関するEC(2002年)報告書草案によれば、合計850万1,457頭のウシが、監視プログラムの枠組みの中で2001年中に検査され、そのうち2,150頭が陽性となった。844万1,360頭のウシは能動的監視(感染リスクがあるウシとヒトが消費するために屠殺されたウシに対する簡易検査)により検査し、一方、3,634頭のウシが受動的調査(農家または開業獣医からBSEの疑いありと報告があったため、実験室での検査を受けた)により検査した。更に、BSE根絶の枠組みの中で、5万6,463頭のウシを検査した。陽性症例の49%が「能動的監視」により、また51%が「受動的調査」により見つかったものである。陽性の症例は、ルクセンブルグとスウェーデンを除く全加盟国で見つかった。

次に示す表2から表9は上述の報告書からの抜粋であり、本「意見」に照らして関連がある情報のまとめとなっている。

付属文書 1から6は、以下のように分類される個体に関する「2001年の陽性症例の月齢分布」の詳細を示すものである。これらの分類とは、「倒れた」ウシ(健康なまま屠殺された個体)、感染リスクがある個体、及び疑わしい個体である。

表2  サンプルを抽出する際の月齢制限

  月齢制限
緊急屠殺 屠殺前に臨床的症状 「倒れた」ウシ 健康な個体 BSE疑い例
ベルギー 24ヵ月以上 月齢制限なし 24ヵ月以上 30ヵ月以上 月齢制限なし
デンマーク 24ヵ月以上 24ヵ月以上 24ヵ月以上 30ヵ月以上 月齢制限なし
ドイツ 強制検査24ヵ月以上、自発的検査24ヵ月以下 月齢制限なし
ギリシャ 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 30ヵ月以上 月齢制限なし
スペイン 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 30ヵ月以上 月齢制限なし
フランス     24ヵ月以上 24/30ヵ月以上1 月齢制限なし
アイルランド   24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 30ヵ月以上 月齢制限なし
イタリア 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上2 月齢制限なし
ルクセンブルグ 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 30ヵ月以上 月齢制限なし
オランダ 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 30ヵ月以上 月齢制限なし
オーストリア 24ヵ月以上5 月齢制限なし
ポルトガル 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 30ヵ月以上 月齢制限なし
フィンランド 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 30ヵ月以上 月齢制限なし
スウェーデン 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 24/30ヵ月以上1 30ヵ月以上 月齢制限なし
英国 30ヵ月以上 月齢制限なし 24/30ヵ月以上3 30ヵ月以上4 月齢制限なし
1 1月から6月まで 30ヵ月以上
7月から12月まで 24ヵ月以上
2 1月から9月まで 30ヵ月以上
10月から12月まで 24ヵ月以上
3 北アイルランド 24ヵ月以上
4 北アイルランド 月齢制限なし
5 オーストリアでは2001年1月以降、月齢20ヵ月を超えるウシで中枢神経系に症状の現れたもの、あるいは緊急屠殺されたものは、すべてBSE検査の対象となっている。2001年10月以降は、月齢20ヵ月以降の「倒れた」ウシもすべてBSE検査の対象とされた。


表3 検査の全体

  検査実施件数  
緊急屠殺 屠殺前に
臨床的症状
「倒れた」ウシ 健康な個体 BSE疑い例 BSE撲滅 合計
ベルギー 1,513 137 13,060 359,435 242 3,522 377,909
デンマーク 1,796 99 20,297 250,414 73 4,286 276,965
ドイツ 7,972 185 268,776 2,565,341 214 13,849 2,856,337
ギリシャ 224 2 1,429 15,360 3 95 17,113
スペイン 3,353 195 50,033 328,517 464 3,700 386,262
フランス 171 0 133,718 2,382,225 469 11,117 2,527,700
アイルランド 0 893 24,614 636,930 482 12,196 675,115
イタリア 8,282 14,648 47,214 388,494 10 5,098 463,746
ルクセンブルグ 30 35 1,330 19,475 14 2 20,886
オランダ 13,279 2 31,056 454,649 97 2,558 501,641
オーストリア 2,490 0 7,023 216,045 2 28 225,588
ポルトガル 1,468 5,403 1,162 28,384 326 2,012 38,755
フィンランド 8,140 5,940 3,880 9,882 3 31 27,876
スウェーデン 1,393 2 22,248 4,433 25 0 28,101
英国 46,189 13 27,228 21,033 1,211 407 96,081
合計 96,300 27,554 653,068 7,680,617 3,635 58,901 8,520,075


表4 全頭数に対する検査件数

    成牛
(百万頭)1
感染リスクがある個体2 健康な個体
検査件数 検査件数/
成牛数(%)
検査件数 検査件数/
成牛数(%)
ベルギー 1.5 14,710 0.98% 359,435 24.0%
デンマーク 0.9 22,192 2.47% 250,414 27.8%
ドイツ 6.5 276,933 4.26% 2,565,341 39.5%
ギリシャ 0.3 1,655 0.55% 15,360 5.10%
スペイン 3.4 53,581 1.58% 328,517 9.7%
フランス 11.2 133,889 1.20% 2,382,225 21.3%
アイルランド 3.4 25,507 0.75% 636,930 18.7%
イタリア 3.4 70,144 2.06% 388,494 11.4%
ルクセンブルグ 0.1 1,395 1.40% 19,475 19.5%
オランダ 1.8 44,337 2.46% 454,649 25.3%
オーストリア 1.0 9,513 0.95% 216,045 21.6%
ポルトガル 0.8 8,033 1.00% 28,384 3.50%
フィンランド 0.4 17,960 4.49% 9,882 2.5%
スウェーデン 0.7 23,643 3.38% 4,433 0.60%
英国 5.0 73,430 1.47% 21,033 0.4%
   
合計 40.4 776,922 1.92% 7,680,617 19.0%
 
  合計検査件数 8,457,539  
1 出典:Eurostat
2 「倒れた」ウシ、緊急屠体、屠殺前検査で罹病が判明したウシ


表5  検査された個体の月齢構成。各月齢群の検査を受けたウシの推定数
 (オランダについては、この情報は入手不可)

月齢 英国 デンマーク スペイン アイルランド イタリア フランス ベルギー ドイツ オーストリア フィンランド ポルトガル ギリシャ ルクセンブルグ スウェーデン 14カ国合計
<24 0 726,275 0 3,991 0 0 1,014 0 0 0 0 0 0 0 731,280
24-30 14,653 405,652 21,987 11,974 71,035 76,721 2,660 2,778 14,084 1,960 2,370 2,505 1,400 660 630,440
31-36 799 262,903 23,521 269,707 53,190 341,142 35,503 31,613 23,306 2,152 1,975 821 3,351 2,550 1,052,533
37-42 6,099 189,047 14,986 86,026 38,395 327,014 39,562 31,978 16,185 2,701 6,045 923 2,612 2,600 761,152*
43-48 6,777 162,757 23,564 39,317 36,540 216,898 45,113 34,912 14,374 2,589   1,017 1,879 2,350 591,110*
49-54 5,424 148,009 17,424 23,693 29,449 171,754 40,193 32,329 12,725 3,092 4,973 1,187 1,661 2,692 492,119*
55-60 12,088 137,014 27,029 28,872 27,751 153,662 37,501 28,881 13,153 2,690   1,185 1,321 2,360 475,993*
61-66 13,922 123,784 14,825 17,663 27,138 142,343 31,277 25,124 12,518 2,788 4,746 1,283 1,295 2,675 419,007*
67-72 11,464 112,811 26,584 17,238 23,742 130,258 28,469 21,312 13,107 2,186   1,185 1,113 1,194 393,755*
73-78 4,109 99,955 14,134 10,446 20,660 118,989 23,660 16,748 11,647 1,940 4,157 1,168 1,017 1,736 328,289*
79-84 4,637 87,903 24,026 18,342 20,660 107,674 20,622 13,059 11,815 1,492   892 839 1,090 315,129*
85-90 4,654 74,818 12,507 8,832 16,037 95,989 15,575 10,022 10,277 1,191 3,253 866 834 443 253,672*
91-96 3,997 64,624 20,413 20,211 15,110 87,466 13,293 7,633 10,668 884   610 620 1,553 248,708*
>96 7,457 260,785 145,260 118,802 84,039 557,790 43,467 20,577 61,729 2,212 4,157 3,471 2,946 5,478 1,318,170
合計 96,081 2,856,337 386,262 675,115 463,746 2,527,700 377,909 276,965 225,588 27,876 31,675 17,113 20,886 28,101 8,011,354
*  ポルトガルのウシの月齢構成は1年単位のものしかないため、ポルトガルのウシの数値は、半年ずつに折半して合算してある。


表6  月齢分類別BSE発生率。月齢が異なるウシのBSE発生率(1万頭あたりの陽性件数)

月齢 英国 デンマーク スペイン アイルランド イタリア フランス ベルギー ドイツ ポルトガル オーストリア フィンランド ギリシャ ルクセンブルグ スウェーデン 14カ国合計から英国・
ポルトガルを除いた値
標本数 陽性 割合
24-30 0.00 0.05 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 613,173 2 0.03
31-36 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 1,048,366 0.00 0.00
37-42 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.03 0.00 0.31 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 750,643 2 0.03
43-48 0.00 0.06 2.55 0.00 0.27 0.05 0.00 0.29 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 580,420 10.00 0.17
49-54 11.77 0.68 1.72 0.00 2.04 0.12 0.00 0.00 22.12 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 483,514 21 0.43
55-60 4.53 2.34 4.81 1.39 2.52 0.26 1.60 0.00 0.00 0.00 8.45 0.00 0.00 460,812 67 1.45
61-66 21.62 2.67 8.09 9.06 4.42 2.61 3.20 1.19 48.46 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 402,153 112 2.79
67-72 86.73 2.66 3.76 27.84 3.79 3.93 3.51 0.00 0.76 0.00 0.00 0.00 0.00 379,420 138 3.64
73-78 372.98 0.60 6.37 31.59 2.90 5.83 3.80 0.00 69.77 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 321,644 143 4.45
79-84 405.22 0.57 3.33 32.17 1.45 4.95 1.94 0.00 0.00 6.70 0.00 0.00 0.00 308,010 101 3.28
85-90 278.33 0.27 5.60 21.51 1.25 3.77 1.28 1.0 92.22 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 247,030 107 4.33
91-96 292.15 0.15 2.94 14.84 0.00 1.49 2.26 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 242,766 43 1.77
>96 472.19 0.12 0.55 2.78 0.36 0.18 0.46 0.00 15.13 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 1,304,474 61 0.47


表7  年齢が異なる健康で屠殺されたウシのBSE発生率(1万頭あたりの陽性件数)

年齢(月齢) デンマーク スペイン アイルランド イタリア フランス ベルギー ドイツ ルクセンブルグ オーストリア ギリシャ 10加盟国
標本数 陽性 発生率
2(24-35) 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 1,498,411 0.00 0.00
3(36-47) 0.00 0.31 0.00 0.00 0.02 0.00 0.17 0.00 0.00 0.00 1,312,008 3 0.02
4(48-59) 0.39 1.87 0.00 1.64 0.06 0.27 0.00 0.00 0.00 4.66 860,809 30.00 0.35
5(60-71) 0.84 1.13 3.34 2.74 0.85 2.63 0.48 0.00 0.41 0.00 709,975 84 1.18
6(72-83) 0.29 1.84 2.56 1.41 1.91 1.43 0.00 0.00 0.00 0.00 574,493 70.00 1.22
7(84-95) 0.00 3.55 2.86 0.36 0.87 1.10 0.00 0.00 0.00 0.00 449,300.00 37 0.82
>8(>96) 0.13 0.40 0.92 0.13 0.04 0.49 0.00 0.00 0.00 0.00 1,184,085 22 0.19


しかしながら、2001年の前半時点では、全加盟国の間で検査プログラムはまだ充分に統一されていなかったことに注意する必要がある。つまり、対象集団とその定義が異なっていたかもしれない。後半になってプログラムが互いに揃ってきたので、2001年後半の検査結果のほうが分析に用いる上では適している。表8は、2001年後期における、異なる月齢のウシのBSE発生率(すべての対象集団が混在)を示している。

表8  後期における月齢が異なるウシのBSE発生率(1万頭あたりの陽性件数)

年齢
(月齢)
英国 デンマーク スペイン アイルランド イタリア フランス ベルギー ドイツ ポルトガル オーストリア フィンランド ギリシャ ルクセンブルグ スウェーデン 14カ国合計から英国・
ポルトガルを除いた値
標本数 陽性 割合
24-30 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 374.169 0.00 0.00
31-36 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 687.356 0.00 0.00
37-42 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.59 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 401.186 1 0.02
43-48 0.00 0.00 2.59 0.00 0.00 0.07 0.00 0.00   0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 367.276 5 0.14
49-54 7.38 0.40 1.59 0.00 2.60 0.11 0.00 0.00 18.82 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 264.710 11 0.42
55-60 4.45 0.26 4.02 0.00 3.12 0.31 1.27 0.00   0.00 0.00 12.95 0.00 0.00 289.562 22 0.76
61-66 4.89 2.73 1.98 0.00 5.90 1.15 2.49 2.17 46.21 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 223.005 45 2.02
67-72 48.59 2.78 2.39 7.66 2.95 4.02 5.48 0.00   1.16 0.00 0.00 0.00 0.00 238.538 82 3.44
73-78 213.16 0.61 4.27 20.71 1.44 6.13 5.54 0.00 43.04 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 176.574 89 5.04
79-84 279.36 0.00 1.95 31.71 1.44 6.39 2.18 0.00   0.00 11.15 0.00 0.00 0.00 197.792 74 3.74
85-90 205.41 0.00 4.73 32.01 1.08 4.59 1.17 0.00 66.07 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 132.822 83 6.25
91-96 205.57 0.26 1.54 27.18 0.00 1.38 3.33 0.00   0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 159.838 29 1.81
>96 376.83 0.07 0.43 14.15 0.60 0.29 0.00 0.00 19.44 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 810.97 43 0.53


表9  2001年1月1日から2002年2月までの、月齢48ヵ月未満の陽性症例の詳細

月齢 国名 対象集団 生年月日
28 ドイツ 緊急屠殺 98年9月
29 ドイツ 緊急屠殺 98年8月
42 デンマーク 健康で屠殺 98年5月
42 フランス 健康で屠殺 97年8月
43 スペイン 緊急屠殺 97年7月
43 スペイン 緊急屠殺 97年12月
44 ドイツ 「倒れた」ウシ 97年9月
45 スペイン 健康で屠殺 97年10月
47 スペイン 「倒れた」ウシ 97年8月


解説

a) 2001年に実施されたBSE簡易検査プログラムの対象となったのは、月齢24ヵ月未満の月齢層のウシについて、ドイツでは72万6,275頭、アイルランドでは3,991頭、ベルギーでは1,014頭である。このうち陽性とされたものは無かった。月齢24ヵ月から35ヵ月の時に屠殺されテストされた健康な約120万頭については陽性症例は見つからなかったが、36ヵ月未満の緊急屠殺ウシからは2頭の陽性症例が見つかった。月齢36ヵ月から47ヵ月で屠殺された健康な120万頭からは計3頭の陽性症例が見つかった。更に、同じ月齢層の緊急屠殺ウシと「倒れた」ウシから4頭の陽性症例が見つかった。月齢48ヵ月以上のウシについては、BSE陽性の症例が急増し、屠殺された健康なウシ約80万頭中30頭が陽性だった。

上述のような発生率が、ヒトの曝露リスクにつながるのかどうかを判断できるよう評価したものは非常に少ない。そうした評価からは、EU諸国における現在のリスクが、以下のような評価に比べて減少していると結論付けるだけの証拠が得られない。

英国の骨付き肉消費禁止令解除の意思決定に関する科学運営委員会の2000年4月14日付け意見書(EC 2000年a)が言及しているリスク評価。この評価は、ヒトの食物連鎖に入ってくるかも知れない月齢30ヵ月未満でBSE潜伏期間の最終年にあるBSE感染ウシの推定数量に言及した。その推定数量は2000年に1.2頭の感染ウシ、2001年に0.8頭というものだった。両年の英国の屠殺統計は、それぞれ220万頭、230万頭だった。

英国における骨付き肉中の背根神経節摂取によるヒトの曝露リスクについての1997年の評価(DNV 1997年)

シナリオにもよるが、英国の全人口が1997年中に曝露していたであろう背根神経節(残余脊髄は除く)の総感染性の中央値は(すなわち、社会的危険)、0.004〜0.25 ヒト経口 ID50である(最も可能性が高いシナリオは、0.05 ヒト経口 ID50)。これに対応する95百分位数は2×10-5 〜63 ヒト経口 ID50である。消費用に屠殺されたウシは約230万頭だった。

これに対応する個人リスクの中央値は、1997年で一人当たり7×10-11 〜5×10-9 ヒト経口 ID50の範囲となる。これに対応する95百分位数は4×10-13 〜1×10-6ヒト経口 ID50である。

アイルランドにおける骨付き肉中の背根神経節摂取によるヒトの曝露リスクについての2000年の評価(DNV 2001年)

2000年のアイルランドにおいて、(月齢12ヵ月を超える個体からの脊柱除去が義務付けられる以前で、かつ、簡易検査の普及以前。ただし、アイルランドの肉生産量の約89%が輸出用であることを考慮したもの。)アイルランドの全人口がさらされていたであろう背根神経節(残余脊髄は除く)の総感染性の中央値(すなわち、社会的危険)は、シナリオに応じて、0.008〜0.6 ヒト経口 ID50である。これに対応する95百分位数は 5×10-5〜110 ヒト経口 ID50であると推定された。国内消費用に屠殺されたウシ(輸出は除く)は約20万頭だった(そのうち月齢36ヵ月未満のものは19万5,000頭)。

これに対応する平均的な個人リスクの中央値は、2000年で1人当たり3×10-9 〜2×10-7ヒト経口 ID50の範囲となる。これに対応する95百分位数は2×10-11 〜4×10-5ヒト経口 ID50である。

上記のリスク評価において、月齢9ヵ月以下(英国の場合)または月齢12ヵ月以下(アイルランドの場合)で屠殺されたウシは、重大な感染性を持たないと仮定された。これについては、潜伏期間の中間時点が脊髄と背根神経節の感染性の発現時期とみなされるべきだという科学運営委員会の現在の見解とは異なっている。

EU加盟諸国の現時点でのヒトの曝露リスクは、1997年及び2000年の英国や2000年のアイルランドを下回っているとみなすことができる。しかしこれらのリスク評価は、2001年のEUでの調査結果を解釈する上で簡単に利用できるものではない。その理由は、対象個体数、境界条件(発病の12ヵ月前あるいは潜伏期間の中間時点では脊髄は検知可能な感染性を持たない)、屠殺された個体の年齢特性、及び加盟諸国の消費パターンにある。したがって、月齢制限を12ヵ月より引き上げることでもたらされるEU加盟諸国でのヒトの曝露リスクについて評価するためには、追加分析[上述のリスク評価を他の加盟国に適用すること]が必要となり、これには以下に掲げる情報が必要である。

BSE潜伏期間の最終年[最悪のケースではBSE潜伏期間の後半]に、ヒトの消費のために屠殺されるBSE感染ウシの数

(a)ウシ経口ID50、及び(b) 想定される種の壁を考慮に入れてヒト経口 ID50を単位として表わされるI型ウシ1頭につき消費される背根神経節の感染性

b) EU加盟国のBSE統計を見ると、すべての加盟国のBSE流行の進展が同じ段階にある訳ではない。流行の始まりが遅れた国々では、観測症例数が依然増加している場合もある。

c) EU全体では2001年の月齢48ヵ月までのBSE陽性の総数が比較的少なかったが、これはリスク管理対策が数年来実施されてきた国々での数字が低かったことが影響しているためかもしれない。他の国々(例えばスペインやドイツ)では、この月齢層の陽性件数は、全体の発生率の中で無視できない割合を占めている。健康な個体の検査はヒトが消費する予定の月齢30ヵ月を超える個体についてだけしか義務付けられていないということも、影響しているかもしれない。


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