II. | 背根神経節を含むウシの脊柱による消費者のBSE感染リスクの数量的評価 ウシの脊柱及び背根神経節への曝露が消費者にもたらすBSEリスクの数量化に関する唯一入手可能な科学的分析は、Det Norske Veritas(DNV)社が英国(1997年)及びアイルランド(2001年)について実施した数量的評価だけである。これらの報告書は、「両国国民」が感染した背根神経節を摂取するリスクとその感染性の程度を、ヒト経口 ID50という単位を用いて推定している。このDNV社の報告書(1997年)はまた、残留脊髄組織で汚染された脊柱によるリスクも推定している。 シナリオと前提条件の設定3に基づく、これらの評価結果は次の通りである。 1997年の英国(月齢30ヵ月未満のウシに由来するすべての消費肉)(DNV1997年)
2000年のアイルランド(DNV2000年) (月齢12ヵ月を超えるウシからの脊柱除去が義務付けられる以前で、かつ、簡易検査の普及以前。ただし、アイルランドの肉生産量の約89%が輸出用であることを考慮したもの。)
上記のリスク推定値は、国により消費パターン4もBSE発生率も異なるため、他の国々に一般化して適用することはできない。他の国々や大陸側のEU諸国全体について同様の評価をするためには、関連情報をあらかじめ収集することが必要と思われるが、そうした情報はすぐには入手しにくく実地調査を通じた情報収集が必要なものもある。 しかしながら、EU加盟諸国の現時点(2002年)でのリスクが1997年の英国や2000年のアイルランドのリスクを大きく上回るとは考えられない。これらの評価の時点で、両国のBSE発生率は他のEU諸国より高かったし(例外として、ポルトガルはアイルランドより高かったが)、BSE簡易検査を用いての監視改善もなされていなかったからである。 それでもなお、推定されるリスクは皆無ではない。しかし、そうしたリスクは主に[唯一]潜伏期間の最後の12ヵ月における動物が持つ感染性に基づくものであるから、潜伏期間の充分に早い時期の個体に由来するものであれば、背根神経節と脊椎骨に付着した脊髄が感染性を示す可能性はごく小さく、リスクとはならないと結論付けることができる。 |
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3 | シナリオと前提条件に含まれる項目は、例えば、骨無し肉と骨付き肉の割合、骨とともに除去される背根神経節の割合(%)、骨付き肉とともに食べられる背根神経節の割合(%)などである。 |
4 | 個人別消費量、骨付き肉製造に使用される部位、骨付き肉やその他背根神経節付きで消費される部位の消費頻度、屠体の月齢構成など。 |