戻る  前ページ

IV  終わりに

 以上、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方の具体化について、○○回にわたり、慎重な検討を経て取りまとめられた本部会として検討結果を報告した。

 本報告書の冒頭で述べたように、生殖補助医療が社会に着実に広まっている一方、生殖補助医療をめぐり様々な問題が発生している。
 本部会における検討を開始した後も、日本産科婦人科学会の会告に違反する生殖補助医療を実施したため、学会から除名された医師が、学会の会告では認められていない生殖補助医療を引き続き実施するといった事例が見られており、本部会としても、学会の会告に一定の限界があることは認めざるを得ず、精子の売買や代理懐胎の斡旋など商業主義的な行為への規制を含め、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療の適正な実施のためには新たな制度が必要との認識に至った。

 すでに専門委員会報告において、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療について法整備を含めた制度整備の必要性が指摘されていたところであるが、本部会としても、こうした状況を踏まえ、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の適正な実施のためには、法整備を含めた制度整備が必要との結論に至った。

 本報告書は、生殖補助医療をめぐる様々な状況を総合的に勘案し、一定の条件のもとに、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を一定の範囲で容認することとするが、当該生殖補助医療が、特に生まれてきた子の福祉に直結する問題であることを踏まえ、本報告書における結論を実施するために必要な制度の整備が早急に行われることを求めるものである。

 なお、本部会において容認することとされた各生殖補助医療といえども、こうした必要な制度の整備が行われるまでは、匿名性を担保できる者から提供された精子による人工授精以外は実施されるべきではなく、こうした人工授精についても、その適用が可能な範囲内で本報告書における結論にそった適切な対応がなされることを望むものである。

 また、本部会としては、生殖補助医療をめぐる様々な状況を総合的に勘案し、現時点における結論をまとめたものであるが、必要な制度が整備され、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施が開始されてから一定期間経過後に、その実施状況やその時点における国民世論等を勘案しつつ、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方について必要な見直しが行われるべきと考える。

 専門委員会及び本部会においては、親子関係の確定や商業主義等の観点から、その実施に当たって特に問題が生じやすい精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療について検討を行い、その検討結果を取りまとめたところであるが、本報告書における結論の中には、生殖補助医療一般に関しても適用できるものが存在することから、他の形態の生殖補助医療についても、その適用が可能な範囲内で本報告書における結論にそった適切な対応がなされることが望まれる。


トップへ
戻る  前ページ