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4−1.現行の事前審査・規制制度の概要

(1) 化学物質審査規制法に基づく審査・規制のスキーム

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<化審法の審査対象外となるもの>
  • 食品衛生法の食品、添加物、容器包装、おもちゃ、洗浄剤
  • 農薬取締法の農薬
  • 肥料取締法の普通肥料
  • 飼料安全法の飼料、飼料添加物
  • 薬事法の医薬品、医薬部外品、化粧品、医療用具等







化学物質審査規制法に基づく審査・規制のスキーム


(2) 化学物質審査規制法の概要について

1.経緯

  (1)  化学物質審査規制法は、難分解性の性状を有し、かつ人の健康を損なうおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するため、昭和48年(1973年)に制定された法律。新規の化学物質の事前審査制度を設けるとともに、PCBと同様、難分解であり高蓄積性を有し、かつ、長期毒性を有する化学物質を特定化学物質(現在の第一種特定化学物質)に指定し、製造、輸入について許可制をとるとともに使用に係る規制を行うこととされた。

(2)  その後、難分解性及び長期毒性を有するにもかかわらず蓄積性を有さない物質についても、環境中での残留の状況によっては規制の必要性が生じたことから、昭和61年(1986年)に化審法が改正され、指定化学物質及び第二種特定化学物質の制度が導入された。

2.概要

 

(1) 新規化学物質の審査

 これまで我が国で製造、輸入が行われたことのない新規化学物質については、製造又は輸入に際し、事業者からの届出に基づき事前にその化学物質が次の性状を有するかどうかを審査し判定を行っている。

 
(1) 自然的作用による化学的変化を生じにくいものであるかどうか(分解性)

(2) 生物の体内に蓄積されやすいものであるかどうか(蓄積性)

(3) 継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるものであるかどうか(長期毒性)

 なお、薬事法の許可に係る医薬品の中間物として製造又は輸入する場合並びに、製造量及び輸入量が全国で年間1トン以下の化学物質(少量新規化学物質)であって、事業者からの申出に基づいて確認を行い、既知見等から判断して環境汚染を生じ人の健康を損なうおそれがない場合には、上記の届出を要しないこととしている。

(2) 規制

 化学物質の性状に応じて、それぞれ以下の措置を講じることとされている。

 
(1) 第一種特定化学物質(PCB等 13物質)
  • 難分解性、高蓄積性及び長期毒性を有する化学物質(第一種特定化学物質)を政令で指定。

  • 措置の内容としては、製造又は輸入の許可、使用の制限、指定製品の輸入制限、指定の際の回収等措置命令等が規定されている。

(2) 第二種特定化学物質(トリクロロエチレン等 23物質)
  • 高蓄積性は有さないが、難分解性であり、長期毒性を有する化学物質(第二種特定化学物質)を政令で指定。

  • 措置の内容としては、製造、輸入の予定及び実績数量を把握するとともに、環境の汚染により人の健康に係る被害が生じることを防止するため、製造又は輸入を制限することが必要な事態が生じたときには、その旨認定し、製造又は輸入予定数量の変更を命令できる。また、環境汚染を防止するためにとるべき措置について技術上の指針を公表し必要に応じ勧告を行うこと、表示の義務付け等により、環境中への残留の程度を低減するための措置が規定されている。

(3) 指定化学物質(クロロホルム等 616物質)
  • 高蓄積性は有さないが、難分解性であり、長期毒性の疑いのある化学物質(指定化学物質)を告示し、製造及び輸入数量の実績等を把握、合計100t以上の化学物質については、物質名と数量を公表している。

  • 製造、輸入、使用等の状況からみて当該化学物質による環境の汚染により、人の健康に係る被害を生ずるおそれがあると見込まれる場合には、製造又は輸入業者に対し有害性(長期毒性)の調査を指示することができ、その結果、長期毒性を有すると判定された場合には第二種特定化学物質に指定される。

(3) その他の措置

  • 指定化学物質又は第二種特定化学物質による環境汚染の防止のため特に必要があると認めるときは、取扱い事業者に対して、取扱い方法に関し必要な指導及び助言を行うことができる。

  • 第一種特定化学物質又は第二種特定化学物質に該当すると疑うに足りる理由があると認めるときは、必要な限度において、製造、輸入又は使用の制限や使用方法の改善に関し必要な勧告を行うことができる。



(3) 化学物質審査規制法における審査項目に係る試験法について

分解度試験(微生物等による化学物質の分解度試験)

 化学物質が環境中に放出されたとき自然的作用(主に微生物の作用)により変化を受けるかどうか調べるための試験。
 被験物質溶液に活性汚泥を接種して原則28日間培養し、酸素消費量の変化を経時的に測定する等により分解性を評価する。易分解性の判断基準はOECDテストガイドラインの酸素消費量に基づく分解度で60%以上を目安としている。

濃縮度試験(魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験)

 魚介類への化学物質の濃縮性の程度を調べるための試験。
 ヒメダカ、コイ等を用いて、魚に著しい生理的障害を与えない濃度で、28日間又は定常状態に達するまで(最長60日間)試験を実施。設定した水中濃度と測定した被験物質の魚体中濃度から、魚介類への濃縮倍率を算出する。高濃縮性の判断基準としては第一種特定化学物質であるPCB等の濃縮倍率やPOPs条約等を踏まえ、濃縮倍率5000倍を一つの目安としている。

スクリーニング毒性試験

 化学物質審査規制法では長期毒性予測のためのスクリーニング毒性試験として、「ほ乳類を用いる28日間の反復投与毒性試験」、「細菌を用いる復帰突然変異試験」、「ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験」を選択している。

(1)ほ乳類を用いる28日間の反復投与毒性試験 化学物質による生体の機能、形態の変化を調べるための試験。ラットの雄及び雌を使用し28日間連続して経口投与を行い、死亡率、出現する変化、最大無作用量、可逆性(2週間の回復期間における毒性影響の変化の様相、遅発性影響の発現)の程度等を評価する。
(2)変異原性試験 化学物質の発がん性等を予測するための試験。
  細菌を用いる復帰突然変異試験(エームス試験) ネズミチフス菌及び大腸菌を使用し、復帰突然変異コロニー数の計測により突然変異誘発性を評価する。
ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験 チャイニーズハムスター線維芽細胞株等を使用し、染色体異常を持つ細胞の出現率等により染色体異常誘発性を評価する。

長期毒性の判定の際の評価項目

 化学物質が継続的に摂取される場合に人間の健康をそこなうおそれがあるものであるかどうか(長期毒性の有無)についての判定は、以下の試験を実施し、その試験成績に基づいて行うものとされている。

慢性毒性試験 動物に被験物質を長期間(12ヶ月以上)連続投与したときに現れる生体の機能及び形態等の変化を観察することにより、被験物質の慢性毒性を明らかにするための試験。
生殖能及び後世代に及ぼす影響に関する試験 動物の雄及び雌に被験物質を多世代にわたり投与し、被験物質の生殖能及び後世代の発生に及ぼす影響を明らかにするための試験。
催奇形性試験 胎仔の器官形成期に妊娠動物に被験物質を投与し、被験物質の胎仔の発生に及ぼす影響、特に催奇形性を明らかにするための試験。
変異原性試験
(げっ歯類を用いる小核試験)
比較的簡便な短期間の試験により、被験物質の発がん性等を予測するための試験。必要に応じ、スクリーニング毒性試験の二試験にげっ歯類を用いる小核試験を追加する。
がん原性試験 動物に被験物質をほぼ一生涯にわたる期間連続投与し、被験物質のがん原性の有無を明らかにするための試験。
生体内運命に関する試験 動物に被験物質を投与し、吸収、分布、蓄積、代謝、排泄等を調べることにより、被験物質の生体内における動態を把握するための試験。
薬理学的試験 被験物質の薬理学的特性を明らかにするための試験。

高分子フロースキーム

 高分子化合物については、化学物質審査規制法における分解度試験や濃縮度試験等の適用が馴染まないこと、欧米においても一般の化学物質とは異なる措置が講じられること等を踏まえ、数平均分子量1000以上で分子量分布を有し、溶解度、融点等が明瞭でない等の特色を有することが確認される場合には、以下の安全性の評価方法が用いられている。

 

(1)安定性試験(生分解性、物理化学的安定性、酸・アルカリ溶解性)

 自然環境中での安定性を調べるため、光、熱、水及びpHの変化によって測定方法に起因する誤差範囲以上の重量変化がないことの確認を行う(変化がある場合には、赤外吸収スペクトルにより構造変化がないことを確認。)。

(2)溶解度試験

 生体内への取り込みの可能性を評価するため、水、親脂溶性溶媒(生体内脂質類似)及び汎用性溶媒(自然環境中で曝露可能性のあるもの)に対して測定方法に起因する誤差範囲以上の重量変化がなく不溶であること、特定構造(架橋構造、結晶性等)の有無、酸・アルカリに不溶であることについて確認を行う(溶解性がある場合には、分子量1000未満の成分含有が1%以下で高蓄積性を示唆する知見がないことの確認。)。

 なお、重金属を含まない、化学構造と長期毒性との関連性に関する知見等から判断して、長期毒性を有すると示唆されないことの確認も行われる。

高分子フロースキームの図


(4) 第一種、第二種特定化学物質の指定状況

○第一種特定化学物質

物質名
(政令指定日)
用途 製造時期
(国内)
指定までの経緯
ポリ塩化ビフェニル
(昭49. 6. 7)
絶縁油
潤滑油
感圧複写紙
塗料
昭和29年頃〜47年
  • 昭和49年5月に試験結果に基づき難分解、高濃縮性と判定

  • 昭和49年5月に長期毒性ありと判定

ポリ塩化ナフタレン(PCN)
ヘキサクロロベンゼン(HCB)
(昭54. 8.14)
潤滑油
木材用防腐剤
木材用防虫剤
塗料
PCN
昭和15年
  〜50年
HCB
昭和27年
  〜47年
  • 昭和49年10月に既存点検結果により、難分解、高濃縮性と判定

  • 昭和53年10月に長期毒性ありと判定

アルドリン
ディルドリン
エンドリン
DDT
(昭56.10. 2)
木材用防腐剤
木材用防虫剤
塗料
〜昭和55年
  • 昭和53年及び54年の環境庁調査結果において環境中より検出

  • 昭和56年7月に既存点検結果により難分解、高濃縮性と判定

  • 昭和56年8月に長期毒性ありと判定

クロルデン類
(昭61. 9.17)
白アリ防除剤
木材用防腐剤
木材用防虫剤
塗料
昭和30年代〜61年
  • 昭和50年頃より各国で残留性が高 いことなどから農薬としての使用が禁止

  • 既存点検結果により、昭和57年9 月にヘプタクロル、クロルデンを難分解と判定、昭和58年9月にヘプタクロルを高濃縮性と判定、昭和60年5月にクロルデンを高濃縮性と判定

  • 昭和61年9月に長期毒性ありと判定

ビス(トリブチルスズ)=オキシド
(平元.12.27)
防腐剤
かび防止剤
塗料
漁網防汚剤
昭和40年代後半
  〜63年
  • 昭和63年より米国で、平成元年にECで船底塗料への使用禁止

  • 昭和60年5月に既存点検結果により、難分解、高濃縮性と判定

  • 平成元年12月に長期毒性ありと判定

N,N'-ジトリル-パラ-フェニレンジアミン、N-トリル-N'-キシリル-パラ-フェニレンジアミン、又はN,N'-ジキシリル-パラ-フェニレンジアミン
(平12.12.27)
ゴム老化防止剤 〜平成5年
  • 昭和57年6月に既存点検結果により、難分解、高濃縮性と判定

  • 平成12年12月に長期毒性ありと判定

TTBP
(平12.12.27)
酸化防止剤
(潤滑油、燃料油用)
輸入のみ
  • 平成3年3月に既存点検結果により、難分解、高濃縮性と判定

  • 平成12年12月に長期毒性ありと判定

トキサフェン
マイレックス
(平14. 9. 4)
(トキサフェン)
殺虫剤
(マイレックス)
木材用防虫剤
難燃剤
製造、輸入
実績なし
  • 平成13年5月にストックホルム条約採択

  • 昭和14年4月に難分解、高濃縮性と判定

  • 平成14年5月に長期毒性ありと判定

○第二種特定化学物質

物質名
(政令指定日)
用途 製造時期
(国内)
指定までの経緯
トリクロロエチレン
(平成元. 3. 29)
洗浄剤
金属加工油
接着剤
塗料
〜現在
  • 既存点検結果により、昭和53年9月に難分解と判定、昭和54年9月に低濃縮性と判定

  • 昭和62年5月に指定化学物質に指定

  • 昭和63年12月に有害性の調査を指示

  • 平成元年3月に長期毒性ありと判定

テトラクロロエチレン
(平成元. 3. 29)
洗浄剤
加硫剤
接着剤
塗料
繊維仕上剤
〜現在
  • 既存点検結果により、昭和51年3月に低濃縮性と判定、昭和59年3月に難分解と判定

  • 昭和62年5月に指定化学物質に指定

  • 昭和63年12月に有害性の調査を指示

  • 平成元年3月に長期毒性ありと判定

四塩化炭素
(平成元. 3. 29)
洗浄剤
塗料
接着剤
〜現在
  • 既存点検結果により、昭和54年3月に難分解と判定、昭和55年3月に低濃縮性と判定

  • 昭和62年5月に指定化学物質に指定

  • 昭和63年12月に有害性の調査を指示

  • 平成元年3月に長期毒性ありと判定

TPT化合物
     7物質
(平成元. 12. 27)
防汚塗料(船底、漁網用)
農薬
〜平成8年
  • 既存点検結果により昭和57年〜平成元年にTPT化合物7物質を難分解、低濃縮性と判定

  • トリフェニルスズ=N,N-ジメチルジチオカルバマート等6物質を昭和63年7月に、トリフェニルスズ=クロロアセタートを平成元年3月に各々指定化学物質に指定

  • 平成元年7月に有害性の調査を指示

  • 平成元年11月(通産省)、12月(厚生省)に長期毒性ありと判定

TBT化合物
    13物質
(平成2. 9.12)
防汚塗料(船底、漁網用)
防腐剤
かび防止剤
〜平成10年
  • 既存点検結果により昭和57年〜平成元年にTBT化合物13物質を難分解、低濃縮性と判定

  • トリブチルスズ=メタクリラート等8物質を昭和63年4月に、トリブチルスズ=スルファマート等5物質を平成元年3月に各々指定化学物質に指定

  • 平成2年8月に長期毒性ありと判定



(5) 欧米における化学物質の事前審査制度について

1.米国有害物質規制法(TSCA)における事前審査制度について

 

1) 事前審査の対象とする化学物質の範囲

(1) TSCAにおいては、医薬品、農薬や食品添加物等、他法で規制される物質はTSCAの対象とする化学物質の定義から除かれている。

(2) また、以下の場合には製造前届出(PMN)の対象から除かれることとされている。
  • 研究開発目的の化学物質
  • 商品(article)の場合
  • 混合物、不純物、商業目的のために使用されない副生物、単離されない中間体
  • 輸出のためにのみ製造される場合

(3) さらに、以下の場合には、事前の承認を受けることにより、製造前届出における事業者負担を軽減する措置が講じられている。(届出の記載事項はPMNと同一。)
  • 試験販売目的の化学物質
  • 年間製造(輸入)予定数量が一事業者当たり10トン未満の新規化学物質(※1)
  • 低い環境放出及び低い人暴露を有する新規化学物質(※2)
     ※1: 裾切りの要件については、1995年に年間数量1tから10tに変更された。
※2: 低い環境放出及び低い人暴露を有する化学物質とは、その物質の製造、加工、流通、使用、廃棄の全ての段階において、以下の条件を満たすものをいう。
(1) 消費者及び一般住民の経皮暴露、吸入暴露がなく、かつ飲料水からの暴露が1mg/年を超えないこと
(2) 労働者への経皮暴露、吸入暴露がないこと
(3) 環境地表水域への放出、焼却からの環境大気放出、土地又は地下水への放出が定められた量以下であること

2)新規化学物質の審査(有害性項目)

(1) 新規化学物質の製造又は輸入を予定している者は、製造・輸入の90日前までに、新規化学物質の同定、生産量、暴露及び排出量の推定の他に手持ちの人の健康又は環境への影響に関するデータをEPAに提出する。

(2) EPAは、事業者から提出された試験データに加えて、構造活性相関(QSAR)、暴露モデル等を活用して人への暴露及び環境排出に関するアセスメントを行い、(1)人の健康や環境に過度のリスクをもたらす恐れがある、又は(2)相当な量の環境への排出若しくは人への暴露の恐れがあると判断した化学物質については、その製造、輸入又は使用を制限又は禁止する規制を行うこととなる。

3) 主な規制措置

 TSCAにおいては、新規化学物質の申請者と評価の各段階で同意を取りながら進めていくという審査体系となっており、上記(1)、(2)のような懸念のある化学物質に対する規制は、個別の申請毎にきめ細かい措置を講じられる体系となっている。
 具体的には、申請者に対する同意指令(Consent Order)及び申請者以外の者にも同様の規制を行うための重要新規利用規則(SNUR:Significant New Use Rule)により行われる。対象物質についてSNUR要件を遵守できない場合には、事前に重要新規利用届出(SNUN)を提出し、個別に審査を受けることとなる。
 SNUR対象物質に対する制限措置としては、MSDS作成やラベリング、使用者への注意義務、数量制限や特定用途の制限、個別事業者における排水管理などの幅広い手法があげられており、対象物質に応じて適切な規制が適用される。(現在SNURの対象となっている物質は約600以上)


2.EUにおける事前審査制度について

 

1) 事前審査の対象とする化学物質の範囲

 「危険な物質の分類、包装、表示に関する法律、規制、行政規定の近似化に関する指令(67/548/EEC)」においては、医薬品や農薬等、最終使用者向けを意図した調剤で届出・認可手続きが存在し要件が同指令と同等であるものは指令の適用除外とされている。
 また、一事業者当たりの上市量が年間10kg未満の新規化学物質については事前審査の適用除外とされており、また、上市の年間予定数量又は累積予定数量に応じて、以下のように段階的に届出事項や期日を定めている。

(1)完全届出

  • 一事業者当たり年間1トン以上(累積5トン以上)の場合

     生産量、用途、毒性試験データ(急性毒性、変異原性、28日間反復投与毒性、生態毒性)等を含む届出を上市の60日前までに提出

(2)少量届出

  • 一事業者当たり年間1トン未満(累積5トン未満)の場合

     生産量、用途、毒性試験データの一部(急性毒性、変異原性(加盟国の裁量によりミジンコ急性毒性))を含む届出を上市の30日前までに提出

  • 一事業者当たり年間100kg未満(累積500kg)の場合

     生産量、用途、毒性試験データの一部(急性毒性)を含む届出を上市の30日前までに提出

(3)届出不要

  • 一事業者当たり年間10kg未満の場合

(注) 現在、EUにおいては、「将来の化学物質政策の戦略」(欧州委員会作成白書)を踏まえ、新たな化学物質政策の議論がなされており、その中で、新規物質と既存物質の試験と評価に当てられる資源の最適配分の観点から、上記のデータ提出の義務付けの閾値の見直しの議論がなされている。具体的には、現在の1トン以上を10トン〜100トンに変更する案が示されている。

2) 新規化学物質の事前審査(有害性項目)

 EU指令に基づき定められた各国制度において、1)で示した数量に応じて届け出られる物質の固有の性質を記述する技術的文書(上市量に応じた内容)に基づき有害性の評価が行われる。さらに、一定程度以上の有害性が認められる場合には、人の健康及び環境への影響に関するリスク評価が行われる。必要な場合は追加情報、追加試験を要求できることとなっている。

3) 主な規制措置

 届出物質に対しては、試験結果による有害性情報及び分類基準に基づき、必要に応じ危険有害性の分類及び表示(リスク警告)が行われる。また、リスク評価の結果を踏まえ、必要に応じて個別の化学物質毎にリスク削減のための措置が求められることとなる。



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