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III 目指すべき方向と基本的な3つの視点

1 目指すべき方向 〜女性自身の貢献がみのる年金制度〜

男女が家族的責任を果たしつつ様々な形で就労したことができるだけ年金制度上評価され、それに応じて自らの年金が報酬比例部分も含めて充実していく方向を展望

 女性と年金をめぐる問題の検討に当たっては、第II章でみてきた社会経済状況の変化を踏まえて、主たる生計維持者の保険料納付を通じて夫婦二人の老後生活を保障する従来の形から、夫婦であっても単身であっても、男女が家族的責任を果たしつつ様々な形で就労したことができるだけ年金制度上評価され、それに応じて老後の自立生活を支える自らの年金が報酬比例部分も含めて充実していく方向を、年金制度において展望すべきである。
 こうした方向は、男女が社会の対等な構成員として社会的、家族的責任を分かち合い、様々な形で個性と能力を発揮することのできる男女共同参画社会の実現が重要な課題となっている今日において、その基本理念にも沿うものと考えられる。

女性自身の貢献がみのる年金制度

 こうした方向を、女性と年金という問題意識に立って簡潔に分かりやすい形で表現すると、まず女性に着目すると、「女性自身の貢献がみのる年金制度」と言うことができるだろう。さらに、夫婦世帯を例にとってこれを表現すると、「夫一人で築く年金から、夫婦のそれぞれで築く年金へ」と言うこともできるだろう。


2 基本的な3つの視点

 こうした「女性自身の貢献がみのる年金制度」という大きな方向を目指しつつ、これまで述べてきた女性と年金制度との間に存在する問題については、以下の基本的な3つの視点に立って改善を図っていくことが適切である。

第1 個人の多様な選択に中立的な制度の構築

 個人のライフスタイル、就業形態、家族形態の多様化が急速に進んでおり、女性の就業が拡大してきている。こうした中、国民皆年金制度の下で、個人、とりわけ女性の多様なライフスタイルの選択に中立的な年金制度を構築することにより、働く意欲を持つ者が多様な形で働き、国民の一層の能力発揮につなげることが重要な課題となっている。この課題の実現は、ひいては安定的で信頼される年金制度の確立にも寄与することとなる。
 このような「個人の多様な選択に中立的な制度の構築」という観点は、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(平成13年6月26日閣議決定)」、「社会保障改革大綱(平成13年3月政府・与党社会保障改革協議会)」等においても、指摘されているところである。(資料III−1:政府、与党等における各種提言

第2 年金の「支え手」を増やしていく方向

 「21世紀に向けての社会保障(平成12年10月、社会保障構造のあり方について考える有識者会議)」等において、今後、少子高齢化が急速に進行することが見込まれる中で、社会保障の負担の支え手を増やすことは、給付と負担のバランスをとっていくことに寄与すると指摘されている。(資料III−1:政府、与党等における各種提言
 今後の年金制度のあり方として、急速な少子高齢化の中で安定的な運営を行っていくことができるよう、女性の就労の拡大や将来の年金制度を支える次世代の育成の支援につながるような年金制度であることが求められている。

第3 女性に対する年金保障の充実

 前述のように、女性の年金額が男性に比べて相対的に低い水準にとどまっていることには様々な要素が影響しているが、このうち年金制度の影響が考えられる点について、適切に対応することが必要である。また、自ら就労し保険料を納付したことが老後の年金に反映することを通じて、男性と比べて単身での老後生活期間を送る可能性の高い女性に対する年金保障の充実を図ることが求められている。
 なお、女性の年金が相対的に低い水準となっていることの背景にある、女性の雇用機会や賃金等、雇用にかかわる諸課題については、労働政策上の解決が図られるべきである。



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