厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会等の取組

 令和元年6月26日、働き方改革と取引適正化を車の両輪として捉え、「就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境」と「公正な取引環境」の実現が、大企業・親事業者と下請等中小事業者の双方において「成長と分配の好循環」を実現する上での共通の課題の一つであるとの認識に立ち、厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会が緊密な連携を図りつつ講じる所要の措置を「大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」防止のための総合対策」として取りまとめました。
 総合対策としてまとめた取組を着実に実施することにより、大企業・親事業者(以下「大企業等」という。)の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」を防止していきたいと考えています。
 具体的には、次のとおりです。

❶ 事業者が遵守すべき関係法令等の周知徹底

⑴ あらゆる機会を通じた周知

 都道府県労働局(以下「労働局」という。)は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第10条の3に基づく協議会等(地方版政労使会議を含む。)において、業所管省庁や労使団体等の関係者との間で、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する課題の共有を図り、地域における取組を推進しています。
 また、労働局、労働基準監督署(以下「労基署」という。)及び働き方改革推進支援センターは、窓口、集団指導及び監督指導等のあらゆる機会を通じて、労働時間等設定改善法(注1)に加え、下請事業者が払うべき努力の方向性や親事業者が行うべき協力の在り方を示した「振興基準」(注2)等についてもリーフレット等を活用した周知を図り、事業者が遵守すべき関係法令等の内容について、事業者に広く周知を図っています。
 さらに、労基署が行う働き方改革関連法に関する説明会において、地方経済産業局(以下「経産局」という。)の職員から働き方改革に伴う「しわ寄せ」防止に向けた周知啓発を行い、必要に応じ、説明会の会場で「しわ寄せ」に関する相談に応じるなど、労働局と経産局による連携した取組を実施しています。

(注1)
他の事業主との取引において、長時間労働につながる短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮すること(労働時間等設定改善法)については、リーフレット「ダメ!短納期発注!!」をご覧ください。
(注2)
振興基準については、パンフレット「下請振興法の『振興基準』とは?」をご覧ください。

⑵ 「しわ寄せ」防止キャンペーン月間の設定等

 新たに11月を「「しわ寄せ」防止キャンペーン月間」(注3)と位置づけ、厚生労働省が実施する「過重労働解消キャンペーン」及び公正取引委員会・中小企業庁が実施する「下請取引適正化推進月間」の各種取組と連携を図りながら、経営トップセミナーの開催など、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」の防止に向けた集中的・効果的な取組を実施しています。

(注3)
「しわ寄せ」防止キャンペーン月間のリーフレットは、こちらをご覧ください。

⑶ 公正取引委員会・中小企業庁による不当な行為の事例集等を用いた啓発

 公正取引委員会・中小企業庁は、下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号。以下「下請法」という。)違反の疑いのある「しわ寄せ」事案など指導等を行った事案及び不当な行為の事例集(いわゆる「べからず集」(注4))等を用いて、大企業等を対象とした各種説明会等の機会を活用し、分かりやすい啓発を積極的に行っています。
 また、厚生労働省も、上記⑴の周知においてこの事例集等を活用しています。

(注4)
いわゆる「べからず集」は、リーフレット「『働き方改革』を阻害する不当な行為をしないよう気を付けましょう!!」をご覧ください。

❷ 大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する情報の提供

⑴ 「しわ寄せ」相談情報の提供

 労働局及び労基署等の窓口において、下請等中小事業者から、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する相談が寄せられた場合や、下請等中小事業者に対する監督指導時等において、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」に関する情報を把握した場合(下記⑵の通報制度の対象となる場合を除く。)には、上記①⑴の周知を図るとともに、相談情報を経産局に情報提供しています。

⑵ 通報制度の的確な運用

 労働基準関係法令違反の背景に、極端な短納期発注等に起因する下請法等違反が疑われる事案について、厚生労働省から公正取引委員会・中小企業庁に通報する制度の運用を厳格に行っています。

❸ 大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」防止に向けた
  重点的な要請等及び厳正な対応

⑴ 労働時間等設定改善法に基づく重点的な要請等

 労働局は、管内の大企業等を個別に訪ね、労働時間等設定改善法第2条第4項の取引上必要な配慮をするよう努めなければならないとする規定に関する要請等を重点的に実施しています。

⑵ 下請法等違反の疑いのある「しわ寄せ」事案に対する厳正な対応

 公正取引委員会・中小企業庁は、下請法等の違反の疑いのある「しわ寄せ」 事案の情報に接した場合には、当該事案に対して厳正に対応しています。 

❹ 業所管省庁に対する働きかけ

 厚生労働省・中小企業庁は、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」防止に向けて、業所管省庁(警察庁、総務省、国税庁、厚生労働省、農林水産省、林野庁、水産庁、経済産業省、国土交通省、観光庁)から所管業界団体への指導、周知啓発等の積極的な関与について働きかけを行っています。
 特に、次の取組については、確実に実施されるよう働きかけを行っています。

 平成31年2月から3月にかけて厚生労働省から文書要請を行った業界団体へのフォローアップ調査を通じて得られた「しわ寄せ」の声やその防止、改善につながったとの声について、さらに追加ヒアリング等を行い、「しわ寄せ」の防止・改善事例を取りまとめ、業界団体への周知徹底を図ること。
 全国的・地域単位の主要な会合等において、業所管省庁の幹部等から大企業等の経営トップに対し、自社の働き方改革により下請等中小事業者に「しわ寄せ」が生じないよう直接要請等を行うこと。
 「しわ寄せ」事案に対し、「振興基準」等を活用した行政指導を活性化させること。
大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」防止のための総合対策は、こちらをご覧ください。
当該総合対策策定に係る報道発表資料は、こちらをご覧ください。
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