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広報誌「厚生労働」

特集
賢い患者になろう 上手な医療のかかり方

「ちょっと具合が悪くなったので、とりあえず病院や診療所にかかっている」……ちょっと待って! 本当にそのような「かかり方」で問題はないのでしょうか。不要不急の夜間受診や軽症での受診は、患者にとっても医師にとってもマイナスになることもあります。このような現状を踏まえ、国は昨年10月から「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」を開催。そこで宣言された「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト宣言!」と、意外と知られていない「上手な医療のかかり方」をご紹介します。


「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト5つの方策」

1、患者・家族の不安を解消する取組を最優先で実施すること
2、医療の現場が危機である現状を国民に広く共有すること
3、緊急時の相談電話やサイトを導入・周知・活用すること
4、信頼できる医療情報を見やすくまとめて提供すること
5、チーム医療を徹底し、患者・家族の相談体制を確立すること

Part1: 「いのちをまもり、医療をまもる」国民プロジェクト宣言!

国民にあまり知られていない「上手な医療のかかり方」。国はこれを広めるため、2018年10月から懇談会を開催しています。

<デーモン閣下>
悪魔。アーティスト。和の伝統芸能との共作活動を30年間超展開。広島県がん検診啓発特使、早大相撲部特別参与。当「懇談会」に多様な意見を反映させるため構成員として要請される。

多彩な構成員が意見交換議論の様子をネット配信
 2018年12月17日、厚生労働省に報道陣や一般の傍聴人が多く詰めかけました。この日は、10月から始まった「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」の第5回会合。構成員から提案がなされるということで、注目されていたのです。
 同懇談会には、医師をはじめとした医療従事者などの過度な負担を軽減し、医療の質・安全を確保する目的があります。もし医療の質・安全が保たれなければ、患者やその家族の健康は脅かされてしまうからです。
 とはいえ、上手な医療のかかり方を広めるのは、簡単なことではありません。そこで、さまざまな視点から方策を検討するため、同懇談会には多種多様な分野から構成員が集められました。アーティストのデーモン閣下、コミュニケーションデザインなどを手がける佐藤尚之さん(株式会社ツナグ代表取締役)、マスコミからはBuzzFeed Japan News Editorの岩永直子さん、がんサバイバーである鈴木美穂さん(認定NPO法人マギーズ東京共同代表理事)など、多彩な顔ぶれです(座長は、東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室の渋谷健司教授)。
 また、第1回会合で出た「議論の様子を動画で公開すべき」との指摘を踏まえ、第2回からは懇談会の全模様をインターネットで配信。SNS上ではハッシュタグ「#上手な医療のかかり方」を設定し、多くの人の意見を反映しやすい仕組みづくりも進めました。そこでは、「閣下も加わっている!」という驚きの声から、「#上手な医療のかかり方 おぉ!これ知りたいし勉強したいなぁ…!」という期待感を込めた声まで、さまざまな意見が寄せられています。

国民が総力戦で今すぐできることから着手
 第2回会合では、東京女子医科大学東医療センター救命救急センターの赤星昴己さんが医師の立場から、現状を説明。「若手医師や救急医は人の命を助けたいと思って医師になったが、睡眠時間がまったくとれないこともあり、無意識に集中力が低下していることがあるかもしれない」という話に、衝撃を受ける構成員もいました。
 そうした経緯を経て、今回の会合で提案されたのが、前ページの「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト宣言!」です。これは、「病院・診療所にかかるすべての国民」と、「国民の健康を守るために日夜力を尽くす医師・医療従事者」のために、「『いのちをまもり、医療をまもる』ための5つの方策」を実施するというものです。  そのうえで、国民が総力戦で取り組む必要性を強調し、市民・行政・医師/医療提供者・民間企業のそれぞれが今すぐできるアクション例を示しています。
 渋谷さんは、「構成員は5つの方策について、来年度以降も継続的にコミットし、進捗状況をチェックし続ける」と宣言。株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵さんは、「仕事を休めないと思い、夜間受診を選んでしまう人もいます。休みをとれるようにする、民間企業のアクションも大切」と指摘しました。デーモン閣下も、「懇談会は今日が最終回ですが、ゴールではなくスタート」と、宣言をもとにさらに取り組みを推進していくことを呼びかけました。

Part2:子どものための医療機関の選び方と症状別対応法

画像 伊藤隆一さん

伊藤隆一さん
医療法人社団慈清会 的場医院 院長/日本小児科医会 副会長

普段からスキンタッチとウォッチングをしよう
 「低年齢であればあるほど抵抗力が弱いので、注意が必要です」と話すのは、医療法人社団慈清会的場医院(東京都葛飾区)の院長で、日本小児科医会の副会長の伊藤隆一さんです。
 核家族化が進み、周囲に相談できる人がいない、一人目の子どもなので子育てに慣れていないなど、さまざまな理由から、子どもの体調の変化に気づけなかったり、ただ不安にかられたりするお父さん・お母さんもいることでしょう。変化に気づくには、普段の「スキンタッチ」と「ウォッチング」が大切です。
 スキンタッチとは、お子さんに触れて、日頃の体温や肌の状態などを知っておくこと。これにより「いつもより熱がある」「肌が乾燥している」といった点を感じとれます。
 ウォッチングとは、観察すること。普段から食事や遊んでいる様子を把握しておくことで、「今日は食欲がない」「いつもより元気がない」といった点に気づけます。
 子どもの具合が悪くなったら、すぐにお医者さんに診てもらったほうが良いか心配になるはず。では、どこの医療機関にかかればいいのでしょうか。
 医療機関と一言でいっても、大きく分けて診療所と病院があります。診療所は入院施設がない医療機関、もしくはベッドの数が19床以下の医療機関のこと。病院は、20床以上のベッドがある医療機関のことです。
 さらに、その役割に応じて一次医療機関、二次医療機関、三次医療機関に分かれています(図表1)。

図1 各医療機関の役割

 一次医療機関は地域の診療所など初期治療を行うところ、二次医療機関は入院治療や専門的な医療を担っている病院、三次医療機関は専門的な医療や高度・先進的な医療を行う病院で、大学病院などが当てはまります。
 普段は、日中なら自分の家の近くにある一次医療機関(診療所)にかかりましょう。「もし聞きたいことがあれば、医療機関に行く前にメモにまとめておくと、忘れずに確認できますよ」と、伊藤さんは助言します。

夜間や休日に悪くなったらどうすればいいの?
 いつもかかっている医療機関が開いていない夜間や休日に、子どもの具合が悪くなったりけがをした場合、救急車を呼ぶべきか、様子を見るべきか、判断ができないこともあるでしょう。子どもは大人よりも症状が急に悪くなったり、早く回復する傾向があります。判断に迷った場合に伊藤さんは、「厚生労働省が整備を進めている『子ども医療電話相談事業(#8000)』に電話しましょう」と強調します。
 ここに電話をすると、住んでいる都道府県の窓口につながり、小児科のお医者さんや看護師さんが症状などを聞いたうえで、「救急車を呼んだほうがいい」「様子を見て、翌日かかりつけ医を受診しましょう」などのアドバイスをしてくれます。
 子どもの症状をわかりやすく伝えるためのチェックポイントや、受診する際の必携品などを図表2にまとめました。心配でも、慌てずに電話し、行動するようにしましょう。

図1 夜間や休日の対応法

起きやすい症状別 覚えておきたい 子どもの症状別対応法

<伊藤さんから一言>
子どもは抵抗力が弱く、医療機関にかかることが多くあります。でも、特に大変なのは小学校に上がる前までですよ!

 子どもが起こしやすい症状別に、「救急車を呼ぶ」「様子を見る」といった対応法をまとめました。伊藤さんは、「たとえ熱が出ていたとしても、食欲があったり機嫌がよければ問題ないケースがほとんどです。何より、普段からお子さんの様子をよく観察するようにしましょう」とポイントを指摘します。
 子どもが遭いやすい事故などについては、母子健康手帳に年齢別に書いてあるので参考にしましょう。

◎発熱
 人によって平熱が違うため、「○℃以上は危険」といった目安はありません。一般的に、「平熱+0.5℃」で寒気やだるさが生じ、「平熱+1℃」で起き上がるのがつらい状態になりがちです。普段からお子さんの平熱を知っておき、医師に伝えられるようにしておくことが大切です。ただ、3カ月未満のお子さんが夜間に38℃以上の熱を出した場合は、救急車を呼ぶか、夜間救急外来がある医療機関を受診しましょう。
 もし、熱が出ても、食欲があったり機嫌がよければ、重症ではない可能性があるので、救急車を呼んだり夜間救急外来を受診したりせず、翌日かかりつけ医に診てもらうようにしましょう。

◎誤飲
 食べ物・飲み物以外のものを飲み込むことを「誤飲」と言います。飲み込んだものによって、吐かせたほうがいい場合と、無理に吐かせてはいけない場合があります。母子健康手帳によっては誤飲しやすいものとその対処法が書いてあるので、確認しましょう。

◎脱水症
 体重の10〜15%の水分が急激に減ると、脱水症になります。1歳児の平均体重は10kgなので、1割は1,000ccです。健康時の体重を日頃から知っておき、水分がきちんととれているのかを確認しましょう。
 また、次の症状が出ている場合は、脱水症の可能性があります。
・おしっこの回数が少ない
・おしっこの量が少ない
・おしっこの色が濃い
・涙が出ない
・目がくぼんでいる
・おなかがへこんでいる
すぐに救急車を呼ぶか、夜間救急外来がある医療機関にかかりましょう。

◎嘔吐
 ミルクなどを飲ませた直後に吐き出した場合、30〜40分後にもう一度ミルクなどを飲ませてみましょう。元気よく飲んだり、顔色が良かった場合は、げっぷがうまく出なかった、せき込んだといったことが原因と考えられるので、問題がありません。飲まなかったり、胃液や胆汁を吐いた場合は、「#8000」に電話して指示に従いましょう。

◎けいれん
けいれんは、脳炎など重い病気の可能性があります。次の場合は、救急車を呼びましょう。
・人生で初めてのけいれん
・1歳未満でのけいれん
・体の片半身だけがけいれんしている
繰り返しけいれんを起こす場合は、何らかの病気の可能性があるので、かかりつけ医に相談してみてください。

【ワンポイント】
うまく話せない子どもは、痛くてもそれを伝えられません。一般的に、痛みの特徴として、
・赤くなる
・腫れる
・熱を出す
・機能に障害が出る(歩けないなど)
があります。このいずれかに当てはまったら、かかりつけ医に見せましょう。

ここに挙げたのは、あくまでも一例です。個人差があるので、不安なときは「#8000」に電話をするなどの対応をとってください。

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