ホーム > 報道・広報 > 広報・出版 > 広報誌「厚生労働」 > 特集 たばこを吸わない人も吸う人も、尊重し合う社会へ

広報誌「厚生労働」

特集1
たばこを吸わない人も吸う人も、尊重し合う社会へ みんなで防ごう!望まない受動喫煙

これまではたばこを吸わない人が、望んでいないのに受動喫煙にさらされてしまうという問題がありました。この問題を解決するため、7月18日に、受動喫煙対策の強化を盛り込んだ「健康増進法の一部を改正する法律(改正健康増進法)」が可決・成立。各施設によって利用者や、受動喫煙が与える影響の度合いが異なることから、施設の類型・場所ごとに対策を実施することとなりました。たばこを吸わない人・吸う人それぞれが尊重し合う社会の実現に向けて、対策を進め、一人ひとりがルールを守って「望まない受動喫煙」を防ぎましょう。

Part1 ここが変わる喫煙のルール みんなが使う場所だから……

今年7月に成立した「健康増進法の一部を改正する法律(改正健康増進法)」により、喫煙のルールはどのように変わったのでしょうか。その内容を紹介します。


<インタビュー> 気持ちよく過ごせる環境づくりには皆さんの協力が必要


武井貞治(厚生労働省健康局健康課長)
武井貞治(厚生労働省健康局健康課長)


義務化されたことで段階的・着実に推進される

Q.改正健康増進法の目的を教えてください。

武井●我が国では2003年以来、健康増進法により、多数の者が利用する施設を管理する者に受動喫煙の防止措置を取る努力義務が設けられてきました。これは一定の成果をあげてきましたが、依然として多くの国民がこうした施設において受動喫煙を経験している状況にあります。そこで、2年後の東京オリンピック・パラリンピックを一つの契機として、国民の健康増進をいっそう図るためには、受動喫煙対策をさらに強化していく必要があると考え、今年7月に今回の法律が成立・公布されました。
 同法には、重要なポイントが3つあります。
 1点目は、望まない受動喫煙をなくすこと。2点目が、受動喫煙による健康影響が大きい子どもや患者さん等に特に配慮すること。3点目が、施設の類型・場所ごとに対策を実施すること。以上、3つの基本的な考え方を基に策定されています。
 我が国の受動喫煙対策はこれまで、努力義務による自主的な対応によっていましたが、今回の改正により、新たに設ける義務の下で段階的かつ着実に前に進めるものになりました。ですので、改正の意義は極めて大きいと考えています。

Q.同法によって、ルールはどのように変わったのでしょうか?

武井●現在はそれぞれの施設の実情に応じて、施設の管理権原者が喫煙のルールを決めています。そのため、全面禁煙の施設もあれば、喫煙専用室でのみ喫煙ができる施設、パーテーションなどで区切られた喫煙場所でのみ喫煙できる施設などがあります。
 こうした多様な形態があるという実情を十分認識したうえで、今回の改正では、施設の類型ごとに喫煙できる場所のルールを明確化しました。
 ルールは大きく3点あります(図表1)。

図表1 改正健康増進法による変化

 1つ目は、受動喫煙による健康影響が大きい、20歳未満の方、患者さんなどが主な利用者である学校や病院等、また行政機関については、屋内は完全に禁煙になります。屋外も原則禁煙ですが、屋外で受動喫煙防止のための必要な措置がとられた場合は、喫煙場所を設置することができます。
 2つ目として、これ以外の施設は屋内は原則禁煙で、喫煙専用室でのみ喫煙ができます。
 さらに、すでに開設されている飲食店のうち、経営規模が小さな飲食店については、直ちに喫煙専用室の設置を行うことが事業継続に影響を与えることが考えられることから、これに配慮し、標識の掲示を行うことで、店内の喫煙を可能とすることができる経過措置を設けました。法施行後に新たに開設する飲食店については、この経過措置の対象とはならず、屋内は原則禁煙です。


それぞれの施設類型に応じた対応を

Q.私たちには、どんな義務が課されたのでしょうか? また、施設管理権原者には?

武井●改正法により、施設ごとに、決められた場所を除き禁煙となります。すべての国民の皆さんには、禁煙とされた場所で喫煙をしてはならない義務が課されます。
 施設の管理権原者等にも、次のような義務が課されます。禁煙の場所に灰皿等を設置してはいけないこと、喫煙専用室等の喫煙可能な場所には標識を掲示すること、喫煙可能な場所に20歳未満の方を立ち入らせてはいけないこと、などです。

Q.施設ごとの対策を教えてください。

武井●改正法では、大まかに分けますと、学校、病院、児童福祉施設等や行政機関といった施設、それ以外の多数の方が利用する施設、すでに開設されている飲食店のうち、経営規模の小さい飲食店のそれぞれで、異なる対策をとることが求められています。なお、経営規模の小さい飲食店については具体的に、個人または資本金5,000万円以下の中小企業であって、客席の面積が100m2以下の飲食店というルールが決まっています。
 まずは、ご自分の施設がどの類型に該当するかを把握し、それぞれの類型に応じたルールを確認してください。そのうえで、施行日までに禁煙とすることが必要な場所は禁煙とする、喫煙専用室を設ける場合には今後省令で示す基準に沿ってつくる、喫煙専用室や、既存の経営規模の小さな飲食店などの喫煙可能な場所には標識を掲示することが必要です。
 中小企業に喫煙専用室を設置する場合には、その費用の一部に対して助成金による支援も行っていますので、厚生労働省のホームページ等でご確認いただければと思います。
 施設内に喫煙可能な場所をつくる場合は、あわせて従業員の受動喫煙対策をとることも必要です。喫煙可能な場所には、20歳未満の従業員は立ち入らせてはいけません。従業員の受動喫煙対策として、たとえば勤務シフトや店内レイアウトを工夫するなどに取り組んでいただきたいと考えています。対応の具体例については、今後ガイドラインで示します。

Q.もし違反したら、どのような罰則が科されるのでしょうか?

武井●施設の利用者が禁煙場所で喫煙した場合、まず施設の管理権原者等が喫煙の禁止や禁煙場所からの退出を求めます。改善が見られない場合は、都道府県知事等の指導・命令により改善を求めますが、それでも応じない場合には、最終的には30万円以下の過料を適用します。
 また、施設の管理権原者等が禁煙場所に灰皿等を設置しているケースは、まずは知事等による指導を行い、改善が見られない場合に、同様に知事等による勧告や命令を行います。それにも応じない場合には、最終的には50万円以下の過料を適用します。
 このように、改正法では罰則も適用されますが、まずは皆さんに新しいルールを周知し、遵守していただけるような環境を整えていくことが重要だと考えています。ですから、さまざまな機会を通じて、厚生労働省として幅広く周知・啓発を行いたいと思います。


喫煙可能な場所でも周囲に配慮が必要

Q.改正健康増進法の目的を教えてください。

Q.改正健康増進法はいつから施行されますか?

武井●今後の施行スケジュールですが、施設の類型に応じ、施行に必要な準備期間を考慮して、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに段階的に施行することとしています(図表2)。

図表2 施行スケジュール

 まず国および地方自治体の責務等については、公布後6カ月以内で政令で定める日が施行日です。学校・病院・児童福祉施設等と行政機関については公布後1年6カ月以内、全面施行は2020年4月1日という流れです。
 そのため、喫煙専用室等の基準については現在、専門委員会で議論しているところです。これらの内容も踏まえて、今後政省令等により、制度の詳細を示していきます。厚生労働省としては、2020年の全面施行に向けて現場が混乱なく対応できるよう、必要な準備をしっかり行っていきたいと考えています。

Q.読者の皆さんにメッセージをお願いします。

武井●今回の法律では、法律上の義務として、一定の場所を除いて禁煙としています。しかし、家庭や路上などの喫煙が可能な場所であっても、周囲への配慮が必要だと考えています。法律のなかでも、喫煙をする際には望まない受動喫煙が生じないよう、周囲に配慮すべき旨の規定を設けています。たとえば、隣に20歳未満の方がいる、患者さんがいる、こうした場合には喫煙をご遠慮いただくなど、ご配慮をお願いしたいと思います。ご配慮により、仮に子ども連れで食事に行った際にも安心して過ごせてもらえる環境ができるはずです。
 また、改正法には、事務所などにおける受動喫煙対策も盛り込んでいます。今は、病気を持ちながらも働いていらっしゃる方がたくさんいます。そうした方がより安心して働ける社会をめざしていきたいと思っています。加えて、歓送迎会などでも参加者のなかに、患者さんや妊婦さんをはじめ、受動喫煙を望まない方がいる場合は、席で喫煙をできる場所を選ばないようにすることもお願いしたいと考えています。
 喫煙をする方もしない方もお互いに尊重し合い、気持ちよく過ごせる環境をつくっていけるよう、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

  • 続きを読む
    (発行元の(株)日本医療企画のページへリンクします)

ホーム > 報道・広報 > 広報・出版 > 広報誌「厚生労働」 > 特集 たばこを吸わない人も吸う人も、尊重し合う社会へ

ページの先頭へ戻る