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広報誌「厚生労働」

ニッポンの仕事、再発見!

《染物職》

 染料を使って布などに染め出す染物を、色づくりや染色などの全工程を経て仕上げるのが染物職。切りばめ、手描き、友禅染、型染、江戸小紋、紅型、絞りなど、染めにはさまざまな技法がある。

受け継がれた約2万種の型紙からオリジナルの型小紋を生み出す

三橋 京子
みつはし・きょうこ

 1946年、東京都生まれ。65年、高校卒業後、東京田中千代服装学園(現渋谷ファッション&アート専門学校)に入学。69年に三橋染工場に嫁ぎ、義父のもとで修業を始める。90年に6代目を継承し、三橋工房と名を改める。以来、江戸時代から続く伝統的手法にこだわりつつ、新しい型小紋の追求に努めている。
(江戸型小紋 三橋工房 住所:東京都江戸川区西小松川町29-11)

江戸時代から続く老舗の型染め工房の6代目として、独自性に富んだ型小紋をつくり続けている三橋京子さん。初代から受け継がれてきた柄を守りながら、現代感覚も取り入れた新しいデザインに挑戦し続けています。

江戸小紋とは異なるくっきり鮮やかな色柄

 6代目を継いで四半世紀。型染めの技法を現代に継承しているのが三橋京子さんです。その工房で制作している型染めは型小紋といい、一般的な江戸小紋とは趣を異にしています。
「江戸小紋は遠目では無地に見えるほど細かい柄をパターン化したものですが、当工房の柄のサイズはさまざま。くっきりと鮮やかな柄が特徴で、すべて手で色をさします」
 初代から蓄積してきた型紙は、優に2万を超えるとか。三橋さんは、現代人が求める色やデザインを追求し、型小紋を発展させてきました。その代表的な作品が、表裏の柄が異なる半幅帯。「最近は古典柄の着物に合う、新しい帯を求めるお客様が増えています」
 また、15年前から美大生と商品開発に取り組んでおり、財布や日傘など、現代人の感性にマッチする小物類も制作・販売。若者のアイデアに刺激を受けることもあるといいます。
 三橋さんは型小紋に新風を送り込む開拓者であると同時に、伝統的な技法を今に伝える第一人者でもあります。その一つが、三橋工房が代々得意としてきた染め「切りばめ」です。
「切りばめは、多彩な柄の型紙を10枚以上使い、バランスよく柄を組み合わせて手で色をさします。パッチワークのようなものですが、布を切っているのではなく染めで柄をつないでいくので、高度な技が求められます」
 布を着物の形に仮縫いして柄の当たりをつけ、いったん糸をほどいて染めます。柄がずれてしまわないよう、緻密な計算が必要なうえ、配色や柄の組み合わせなど、職人のセンスも問われます。まさに卓越した技能が存分に発揮された伝統の技といえるでしょう。
 現代にマッチした色や柄の開発には、時に生みの苦しみを伴います。現代感覚を取り入れるために、今、どんな洋服が好まれているのかなど観察を怠りません。また、客の要望から新たなアイデアの発想につながることもあるといいます。
「代々受け継がれてきた型を大事にしつつ、新しい柄を生み出す。終わりのない仕事ですね」と、三橋さんの探求心はとどまることがありません。

ぴんと張った反物の上に型紙をのせ、色粉入りの糊をへらで置いていくのが型付け。
型紙を真横に送りながら、反物全体に連続した図柄を描いていく。工程のなかでも、特に高度な技術を要する

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