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広報誌「厚生労働」

特集2 発生させないために一緒に学ぶ労働災害防止

 労働者が安心して働くためには、企業・労働者の双方が労働災害防止に取り組むことが大切です。国も5年ごとに「労働災害防止計画」を策定し、労災防止対策を総合的かつ計画的に推進しています。
 本特集では、労災の基礎知識や防止策、国の目標などについて、一緒に学んでいきましょう。

<1時限目>そもそも労働災害って何?

労働災害防止について考えるには、まず労災の基礎知識を身につけることが必要です。
1時限目では、労災とは何かについて学びましょう。

2つに大別される労災(労働災害)とは

 最初に、労災の基礎知識を押さえておきましょう。労災とは、労働者が事業主の管理下にあるときに業務を原因として被った災害や、通勤によって被った災害のこと。ここでいう災害とは、負傷・疾病・障害・死亡を指しています。
 前者を業務災害、後者を通勤災害と大別しています(図表1)。通勤とは、就業において「住居と就業の場所との間の往復」「就業の場所から他の就業の場所への移動」「単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動」を合理的な経路と方法で行うことをいいます。

労災の発生状況

 労災の発生状況に関しては、厚生労働省が毎年データを公表しています。全産業の「休業4日以上の死傷災害(労働災害によって4日以上休業した人と死亡者の合計)」の推移については、2012年から2016年にかけて、年によって増えたり減ったりしながら減少傾向。「死亡災害(死亡者数)」は、同じ4年間で2014年を除き減少に向かっています(図表2)。

 また、「平成29年における労働災害発生状況について(平成30年3月速報)」によると、全産業の死傷者数は11万8,079人で前年同期比2.1%の増加、死亡者数は925人で前年同期比3.5%の増加となっています。
 次に、死傷災害の発生状況を業種別にみると、製造業が2万6,249人(前年同期比0.8%増)、建設業が1万4,874人(同0.6%増)、陸上貨物運送事業が1万4,488人(同5.4%増)、第三次産業が5万4,666人(同3.1%増)となっています。
 また、死亡災害の発生状況を業種別にみると、製造業が157人(前年同期比7.6%減)、建設業が304人(同6.3%増)、陸上貨物運送事業が128人(同39.1%増)と、建設業での被災が依然として多いことがわかります。

<労災の事例>

家屋解体現場で作業員が掘削機にひかれて死亡

 家屋の解体現場で庭の立ち木処理をしていた掘削機(ドラグショベル)が後退した際、後方にいた作業員が履帯(りたい:キャタピラー)に両足を挟まれて大ケガをし、2日後に死亡しました。掘削機の運転者が無資格で知識や技能が不十分だったことに加え、誘導員が適切に配置されていなかったことや、立ち入り禁止柵が設置されていなかったことなど、複数の原因が重なって起こった事故だと考えられます。さまざまな点から労災防止に気をつけましょう。

介護施設で入浴介助中にスタッフが転倒して負傷

 介護スタッフが入居者の臀部(尻)を洗うため、前方から抱えて立たせようとしたときに、支えきれずに入居者を抱えたまま後ろに倒れて壁に激突し、頭部と肩を打撲しました。介助をする際は被介助者の介助必要度に応じた人数で行うべきであり、特に自力で立てない人の臀部を洗う場合は、入浴ベルトを使って被介助者を1人が抱え、もう1人が臀部を洗うようにしないと危険です。

プレス機の操作中に外国人作業員が右手首を切断

 経験の浅い外国人作業員が金属加工用のプレス機の操作中に手を差し込んだため、右手首を切断しました。会社はプレス機を動かすときは手を入れてはいけないという教育をしていましたが、経験が1カ月しかない被災者は安全作業手順にまだ慣れていないために被災しました。事故防止には教育だけでは不十分で、作業ゾーンに手を入れたときに緊急停止する安全装置をつけるなどの対策も必要です。

<国の取り組み>

7月から始まる全国安全週間で安全を呼びかけ

 厚生労働省では7月1日から1週間、「全国安全週間」を実施します。これは、労災を防止するための産業界での自主的な活動の推進、職場での安全に対する意識の向上、安全維持の活動の定着が目的です。今年度のスローガンは「新たな視点でみつめる職場 創意と工夫で安全管理 惜しまぬ努力で築くゼロ災」に決まりました。

「こども霞が関見学デー」で子どもたちに安全について教える

 毎年実施されている厚生労働省の「こども霞が関見学デー」では、多彩なイベントを開催。昨年は、「安全に働くために必要なこと」を知ってもらうことを目的に、高所作業で用いる墜落防止用のフルハーネス型安全帯を装着する体験コーナーを設置し、子どもたちに安全について学んでもらいました。

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