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広報誌「厚生労働」

特集 元気に働いてもらうために会社ができること 労働者の健康は財産です!

少子高齢化で労働力人口が減るなか、企業が働き手の健康維持・増進に留意し、元気に働いてもらうことは今まで以上に重要になっています。やりがいや老後の生活のゆとりのために、できるだけ長く働き続けたいと考えている働き手も、自身の健康管理に努める必要があります。医療費の適正化に向け、各保険者が保健事業をさらに進めなければならないでしょう。本特集では、みんなが元気に働く社会の実現のために、企業・働き手・健康保険組合の3者ができることを、事例をもとに紹介します。

<Part1><Part2>は、こちらへ(発行元の(株)日本医療企画のページへリンクします)

<Part3>How to 4ステップで学ぶコラボヘルスの進め方

企業と健康保険組合が協働で労働者の健康維持・増進に取り組む(コラボヘルス)ための方法を紹介します。

<Step1>推進体制・役割分担を決め、情報の共有を図りましょう

推進体制の構築における2つの重要なポイント
 労働者がいつまでも元気に働き続けるためには、企業と健康保険組合の両方の支援が不可欠です。コラボヘルスに取り組むにあたっては、まずは推進体制を構築する必要があります。
 推進体制の一つとして、企業と健康保険組合が密に情報交換できるように、企業側の健康推進関連部署と健康保険組合を隣接させる方法があります。また、定期的に合同会議を開き、決まった内容を企業・健康保険組合側それぞれが持ち帰って組織内での承認をとるという方法も考えられます。企業と健康保険組合の各職務を兼任するスタッフを置くことで、スムーズに展開できるかもしれません。自社の規模や健康保険組合の財政状況に合わせた方法を考えてみましょう。
 自社の課題解決につながる推進体制を構築するにあたって、重要なポイントは2つあります。1つ目は「社長・役員など経営者の直轄の組織体として位置づけていること」、2つ目は「産業医・保健師など医療専門職や外部専門事業者が関与していること」です。これらの点に気をつけて、体制づくりを進めましょう。

お互いの役割を見直し、人的資源やコストを適正化
 続いて、企業と健康保険組合の役割分担を見直し、それぞれが持っている人的資源やコストの適正化を図り、再構築することが求められます。
 まず、健康保険組合は特定健康診査・特定保健指導など、各種法定項目を実施するなど、保険者機能を強化します。
 次に、企業は自社の課題を洗い出し、対策を考えます。これらについては、ステップ2やステップ3で改めて紹介します。対策を立てたら、企業は職場内環境の整備(受診しやすい勤務体制づくり等)など、健康保険組合は受診勧奨や特定保健指導の実施など、それぞれ役割を分担して事業を進めます。
 これにより、事業の効率化が図れるうえ、社員に対しても統一した情報を提供することができます。

個人情報保護法に則った対応を
 コラボヘルスをより効果的に進めるためには、企業と健康保険組合がそれぞれ持っているデータの共有・活用が必要となります。そうすることで、労働者の健康状態の全体像を把握できるからです。
 しかし、健診結果やレセプトなどの個人の健康・医療情報は、改正個人情報保護法で適切な取り扱いが厳格に求められる「要配慮個人情報」に位置づけられています。労働者にとっては、ほかの人に知られたくない情報であり、企業や健康保険組合は個人情報保護法やプライバシー権に配慮しながら慎重に扱う必要があります。
 こうした点を踏まえ、個人の健康・医療情報ではなく、集計データの活用を検討しましょう。ただし、集計データにも留意点があります。小規模事業所など、分析する集団の人数が少ない場合は、個人が特定される可能性が高くなるうえ、個人の数値が全体に与える影響が大きくなるので、集団の特徴が正しく把握できないケースも生じます。
 個人の健康・医療情報を企業と健康保険組合が互いに提供する場合は「第三者提供」となるため、あらかじめ本人から同意を得なければなりません。
ただし、次の2つのケースにおいては、同意は必要ありません。
 1つ目は、個人の健康・医療情報を特定の者との間で共同利用するとあらかじめ本人に伝えておく場合です。これは、「第三者提供」に該当しません。その際は、「共同利用される個人データの項目」「共同利用者の範囲」「利用目的」「管理責任を有する者の氏名または名称」を通知する、もしくは簡単に知ることができる状態にしておきます。また、個人の健康・医療情報の管理方法や受け渡し方法については、企業と健康保険組合の間で取り決め、覚書を作成しておくことが望ましいです。
 2つ目は、事業主が健診データを健康保険組合に渡す場合です。高齢者の医療の確保に関する法律に基づいた特定健診実施のためであれば、「第三者提供」に該当しません。
 なお、健康保険組合が持つレセプトデータやこれに類するものは、「加入者の権利利益の侵害が想定される主なもの」とされているので、原則的に企業との共有は適切ではありません。
 労働者の健康維持・増進を図るため、専門事業者など外部資源とデータを共有するケースもあります。外部資源が利用目的を達成するのに必要な範囲内で、委託を受けて、個人データの全部または一部を提供してもらうのは、「第三者提供」には該当しません。業務委託の際には、個人情報の取り扱いに関する取り決めをし、それを公表しましょう。渡すデータは匿名化するなど、データの扱いには細心の注意が必要です。

<Step2>現状を把握し課題の見える化を進めましょう

各取り組み状況を数値で確認
 労働者の健康維持・増進を図るにあたっては、まず、これまで実施してきた予防・健康づくり事業の洗い出しをしてみましょう。そのうえで、取り組みの漏れ(特定の層に向けた事業が行われていないなど)や、重複、目的が不明瞭な事業などがないかを確認します。その際は、取り組みの内容を企業側と健康保険組合側に分けたうえで、目的や実施根拠の法律などを明確化しましょう。
 次に、現状(メンタルヘルス不調等による長期欠勤者数・休職者数・退職者数など)や、取り組み状況(健診受診率、特定保健指導実施率)の数値のほか、加入者の男女割合や年齢構成などの全体像も把握します。
 各取り組み状況の数値をもとに、「健康白書」を作成し、自社の特性を明らかにしましょう。
 健康白書とは、自社の健康状態や生活習慣の特性を「見える化」したものです。これをもとに、性別・年代・事業所・エリア・職種などに分けて業態の平均と比較し、特徴を分析して課題を見つけ、対策を立てます。

確認するポイントを次に挙げます。
【1】医療費
  一人あたりの医療費について、自社と同業態平均や全業態平均を比較します。疾病別医療費を見て、対策の優先順位を決めます。
【2】健康状態など
  メタボリックシンドローム該当者の割合や、生活習慣病を引き起こす可能性のある高血圧や脂質異常、高血糖の人の割合を把握します。
【3】生活習慣
  年代別に運動・食事・睡眠・喫煙・飲酒の5つの習慣を確認します。
【4】人事データ
  残業時間と睡眠習慣・食習慣などを見比べて、働き方と生活習慣にどんな関係があるのかを把握します。
【5】その他
  労働生産性に関するアンケートをとることで、健康状態と労働生産性の関係を確認できます。
【6】男女比較
  医療費や生活習慣などを男女で比較することで、それぞれに対して優先して行うべき対策が明らかになります。
【7】年代比較
  年代ごとに医療費や生活習慣を比較し、どの年代から増えていくのかといった傾向を調べましょう。
【8】事業所比較
  複数の事業所を持っている場合は、事業所ごとに比較します。ただし、事業所の規模が小さい場合は、個人の傾向が明らかになってしまうので、比較は避けましょう。
【9】エリア比較
  全国に事業所がある場合は、エリアごとに比較し、優先的に対策をとるべきエリアがあるかを調べます。
【10】職種比較
  複数の職種がある場合は、職種ごとの傾向をつかむようにしましょう。

図表1は、ある企業の男女別のそれぞれの生活習慣を、同業態平均や全業態平均と比較したものです。男性の運動習慣はよい状態である一方で、女性の運動習慣はよくないことがわかります。そのため、女性の運動習慣を改善できるような対策が必要だとわかります。

※ 健康経営はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

<Step3>目標・評価指標を設定しましょう

エビデンスのある事業目的に対応したものに
 ステップ2で自社の健康課題が明らかになったら、その対策に着手します。まず、企業と健康保険組合が一緒に、エビデンス(証拠・根拠)のある共通の目標と評価指標を設定します。
 この目標と評価指標は、事業目的に対応していなければなりません。図表2のとおり、その目的に基づいて、事業計画を若者や女性などの対象者や、年度ごとに作成します。

 続いて、評価指標となる目標値としてアウトプット(実施量)とアウトカム(成果)を定めます。
 評価の手段や時期、基準は、事業計画を策定するときに決めておきましょう。この時点から明確にしておくことで、事業の実効性が高まります。
 また、取り組みの実施前に、事業の推進や評価に必要なデータの種類や取得方法、費用の分担などを企業と健康保険組合の間で決めておくことが必要です。これにより、正確に効果を測定できます。
 評価は、ストラクチャー(構造)、プロセス(過程)、アウトプット(実施量)、アウトカム(成果)の4つの観点から実施します。評価する対象を明確にし、事業の前後や、事業に参加した人としなかった人などを比較しましょう。ステップ4でPDCAについて紹介しますが、PDCAを回すときも効果をもとに計画を考えるため、効果を調べるのはとても大切です。
 ただし、アウトカム(成果)については、数値データをとるまでに数年かかることもあります。そのため、単年度では評価ができないケースも考えられます。そのような際は、アウトプットの観点から評価します。

<Step4>PDCAを回しましょう

達成状況に応じて改善策を立案・実行
 目標や評価指標が定まったら、早速、取り組みを開始しましょう。効果を上げるためには、PDCAサイクルが肝要です。
 PDCAとは次のとおりです。

・P(Plan) :自社の健康課題に応じた実施計画の策定。
・D(Do) :事業を実施する。
・C(Check) :事業を振り返って評価する。
・A(Action) :問題点を把握し、改善につなげる。

Dにあたる「事業の実施」については、具体的な対策例を紹介します。同様の健康課題を抱えている場合は、ぜひ参考にしてください。

◎例1
【健康課題】 健康診断の受診率の低さ
【事   業】 疾病に関する知識を掲載する冊子を配布し、受診の大切さを伝える。

◎例2
【健康課題】 特定保健指導の実施率の低さ
【事   業】 勤務時間中に特定保健指導を受けられるようにする。

◎例3
【健康課題】 生活習慣病の社員の多さ
【事   業】 給食業者と連携して、社員食堂のメニューのカロリーや塩分量を見直す。

◎例4
【健康課題】 健康への意識の低さ
【事   業】 自社の健康課題に合わせたセミナーを企画し、実施する。

 たとえ事業を実施しても、1年目は、想定していた効果が出ない可能性もあります。そうした場合は、目標と実績になぜ差が生まれたのかを調べて、達成状況に合わせた改善策を立てて実行していくことが大切です。
 いかがでしたか。労働者が長く元気に働くために、ぜひコラボヘルスを進めましょう。
 最後に、コラボヘルスの実効性を上げるためのチェックリスト(図表3)を掲載します。自社の取り組みに足りないところ・できていないところがないかを確認してみましょう。

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