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広報誌「厚生労働」

ニッポンの仕事、再発見!

中ぐり盤工

 中ぐり盤という工作機械を使って、各種金属の工作物に穴を開け、工具などで所定の大きさに加工する。ドリル穴開け、フライス削り、ねじ切りなどの加工も行う。
 中ぐり盤は、工作物を動かさずに加工できるため、大型のものにも容易に活用される。

卓越した切削加工技術でミクロン単位の高精度を実現

新関 謙二
にいぜき・けんじ

1963年、福島県生まれ。78年、高等職業訓練学校に入学。80年、株式会社日立製作所中央研究所に入社。2015年、東京都優秀技能者に選定。法政大学理工学部で講師を担当するなど、ものづくり技能の向上に寄与。16年、「現代の名工」に選定される。
(日立製作所 中央研究所 住所:東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地)

中ぐり盤にドリルやエンドミル、バイトなどの工具を取り付けて、機械の部品を切削加工するのが中ぐり盤工です。
この道約30年の新関謙二さんが加工しているのは、機械の部品です。
工作機械は、あらゆる機械やその部品類をつくるものです。
中ぐり盤による加工とはどういうものなのかをお伺いしました。

多様な技術を駆使し穴を開け所定の寸法に調整

 機械の部品を製造する技術者の種類は各種あり、中ぐり盤工もその一つです。株式会社日立製作所に在籍する新関謙二さんは長年にわたって、中ぐり盤工として各種機械に使われる部品の試作に従事しています。
 中ぐりとは、中ぐり盤という専用の機械を使って、さまざまな金属に穴を開け、その穴を所定の大きさにくり広げることをいいます。中ぐり加工をすることによって、穴の寸法精度や位置精度が高くなります。同じように切削加工をする旋盤とどこが違うのでしょうか。
 「旋盤での加工は削りたい工作物が回転しますが、中ぐり加工では逆に削る側の機械に工作物を取り付けて、切削工具のほうが回転します。つまり、旋盤加工は一方向に同心円状にしか穴を開けられないのに対して、中ぐり加工では切削工具が回転するため、さまざまな方向から穴を開けられるんですよ」
 中ぐりというと穴をあけるというイメージが強いですが、さまざまな形に削れるのが中ぐり盤。取り付ける切削工具を変えることによって、面削りやねじ切りなど多様な加工ができるといいます。
 「さまざまな切削法を活用しながら、ミクロン単位の高精度で穴を開けたり形を整えることによって、機械にぴたりとはまる部品をつくり上げるのが我々の仕事なんです。穴でも軸でも、少なからずひずみが出ますが、ここからここまでならOKという基準の数値があるので、その範囲内の寸法に絶対に収める必要があるんですよ」
 金属は加工すると熱を発して膨張します。そのため、冷えたときに基準の範囲内に収まるように加工しなければなりません。経験を重ねることによって、膨張の加減を見極める感覚が身についていくそうです。
 中ぐり盤工には図面を読み解く力も不可欠で、数多くの図面を見るという経験から学んでいきます。しかし、熟練工の新関さんですら、図面を目にしても完成形が見えてこない複雑な形状の部品もあります。
 「完成形がイメージできないときは、どこから削ったらいいかを数日かけてじっくり考え込むことがあります。すると、次第に完成形が見えてくる。その際に、重要なのは、加工手順を間違えないこと。間違えると、最終加工ができなくなってしまう場合があるんですよ」
 複雑な形状の部品に取り組むことは、新関さんにとって苦労でもあり、喜びでもあります。削っていく過程で形が見えてきて、図面どおりに部品が仕上がったときは、大きな達成感を覚えるといいます。

幅広い知識と技術を伝え全体のレベルアップをめざす

 新関さんは後進の指導にもあたっています。その際に伝えていることは、「失敗を恐れるな」ということです。失敗から得るものの大きさを、自身の体験からわかっているからです。まずは自分で考える。それでもわからないときは、同社内の先輩や図面を描いた設計者に質問する。失敗することで、人に聞くことの大切さも学んでいきます。
 また、切削加工に関して幅広い知識と技術を持つことの重要性も、仕事を通して若手に伝えています。
 「仕事では旋盤、フライス盤、中ぐり盤、それぞれの担当者と、図面を見ながら手順を検討し、お互いの意思を確認しています。相手の仕事がわかっていたほうがスムーズに加工が進むからですよ。ですから、若手に対しては、自分の仕事の技術だけで満足せず、いろいろな技術を覚えるように指導しています」
 新関さんも、「現代の名工」に選定された自身の技術力の現状に満足することはありません。
 「現代の名工に選定されたことでできない≠ニ断りにくくなりました。そのため、日々新しいものに挑戦し、技術向上の意欲を持ち続けています」
 さまざまな工夫や改善を積極的に積み重ねて全体のレベルアップを図り、技術力の高い中ぐり盤工を育成していきたいと考えています。

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