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広報誌「厚生労働」

ニッポンの仕事、再発見!

《洋生菓子・焼菓子製造工》

 近年はパティシエという名称が一般的。ケーキやシュークリームなどの洋生菓子と、クッキーやパウンドケーキなどの焼菓子をつくる。基本を大切にしながら、新しいアイデアのオリジナル菓子の開発も求められる。

限られた材料を自在にアレンジ 常に新しい洋菓子を開発し続ける

大山 栄蔵
おおやま・えいぞう

 1949年、埼玉県生まれ。香川栄養専門学校卒業。東京・六本木の「ルコント」に2年間勤務し、71年に渡仏。パリの一流店で修業。77年、東京・成城に「マルメゾン」を開店。一般社団法人日本洋菓子協会連合会副会長、公益社団法人東京洋菓子協会会長、聖徳大学客員教授。2016年、「現代の名工」に選定される。
(マルメゾン 住所:東京都世田谷区成城6‐25‐12)

彩り豊かで華やかなケーキやサクッとした食感の焼菓子、そして、チョコレートにアイスクリーム…。スイーツ人気はとどまるところを知らず、常に流行も変わります。日本人が求める洋菓子をつくり続けてきた大山栄蔵さんは、アレンジ力こそパティシエには不可欠だと語ります。

アレンジ力を磨くにはおいしいものを食べること

 日本で初めて誕生したフランス菓子専門の洋菓子店で修業したあと渡仏し、パティシエとして腕を磨いてきた大山栄蔵さんは、約40年前に自身の洋菓子店を開店しました。
「昔は、洋菓子職人の仕事の種類は限られていましたが、今はアイスクリーム、チョコレート、あめ細工など幅広いジャンルでの技術が求められています。専門学校でも一通り学びますが、仕事をしながら身につけていくことになります。経験を積むことが最も大切だと思いますね」
 洋菓子の本場はフランス、イタリア、オーストリア、スイスが有名で、特に近隣諸国の優れている点を吸収して発展したのがフランス菓子だそうです。
「フランスでは常に新しいものが求められていますが、それ以上に日本では開発に貪欲です。次々にいろいろな洋菓子が流行することからもわかります。フランス菓子をベースに独自の発展をしてきたのが日本の洋菓子です」
 日本人の要求に応えるうえで重要なのはアレンジ力を磨くこと。洋菓子の材料はバター、砂糖、卵、小麦粉がメインです。一人前をつくるのに必要な量も決まっており、10人分のときは材料を10倍にします。限られた材料で、どうアレンジして新しいものをつくるかが、とても大切になってきます。
「アレンジのヒントは、どこにでもあります。ある程度経験を積んでいれば、毎日新しい洋菓子をつくれます」
 大山さんは、これまで数え切れないほどの種類の洋菓子を開発・提供してきました。しかも、良い材料でつくり立てを提供することがモットー。質の良い材料を使うことは絶対に譲れないと言います。
 アレンジ力を磨いて、常に新しいものを提供していくためには、第一においしいものを食べることだそうです。
「洋菓子に限らず和洋中の料理など、なんでも食べてみることですね。中華料理からだってアレンジのヒントはもらえます。日本人が今どんなものを求めているか情報収集することも大切です。近年、日本人全体の舌が肥えていて、味覚のレベルが上がっていますから、勉強しなければならないし、緊張感をもってつくらないといけません。お客さまより、あまり先に行くと受け入れられませんから、少し先を行くくらいの気持ちで、洋菓子づくりに向き合うのがいいのではないでしょうか」
 洋菓子は、半完成品をつくって冷凍しておき、朝仕上げるものが大半です。大山さんの店では7時からつくり始め、9時半に開店します。
「決して楽な仕事ではありませんよ。毎日10時間拘束は当たり前ですし、材料は値が張るものばかりなので、売れ残りを避けなければなりません。ですから、毎日その日の天気と曜日、去年のデータを見て、どの商品をどれだけつくるかを決めます。雨天のときはお客さまが少ないですし、夏はケーキの売れ行きが冬の半分、3分の1のときもありますよ。毎日、天気とにらめっこですよ(笑)」

スタッフの独立を念頭にあらゆる仕事を体験させる

 現在、大山さんの店では10人のスタッフが修業しており、誰もがいずれは独立したいと考えています。独立のためには、ひとつの店で修業し続けることがいいとは言えないとか。大山さんは、スタッフの将来まで考えて指導しています。
「スタッフには、できるだけ早く仕事を覚えて、できるだけ早く私の店をやめなさいと言っているんですよ(笑)。やったことがないことはできませんから、なんでもやらせています。早く次の店に移って、ここでは習えなかったことや不得手なことを学び、いずれは自分の店をもってほしいですね」
 大山さんは専門学校や大学でもパティシエや管理栄養士志望の若者を指導しています。また、毎年、元スタッフたちが集まりOB会を開催。各地でパティシエとして働いていたり、独立した元スタッフたちが刺激を受け合う場になっています。大山さんも教わることが多いと言います。
「私のマネをしている子は、まったくいません。それぞれが地域の特徴に合わせてオリジナルを追求しているのがうれしいですね。地域の一番店をめざせと、いつも励ましているんですよ」

大山 栄蔵さん

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