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広報誌「厚生労働」

ニッポンの仕事、再発見!

《配管工》

 主に建築物における給水管、排水管やガス管、エアコンなどの空調設備、トイレなどの衛生設備の配管をする。パイプを曲げる技術や接合するための技術はもちろん、効率的な作業をするために現場での判断力も求められる。

水・ガス・空気の通り道をつくる建築物のライフラインの守り役

松本 正美
まつもと・まさみ

 1951年、東京都生まれ。工学院大学建築学科卒業後、設計事務所に入社。給排水・空調換気設備の設計・監理に従事。1978年に退社し、翌年、父が創業した有限会社タルヤ設備工業所に入社、配管工として勤務。89年、代表取締役に就任。2016年、「現代の名工」に選定される。
(有限会社タルヤ設備工業所 住所:東京都稲城市東長沼1591番地)

住まいの中を水やガス、空気がスムーズに流れているからこそ、私たちは日々、支障なく生活を維持できています。便利な暮らしの陰を支える“立役者”が配管工です。松本正美さんは、40年近く配管工事に取り組みつつ、指導を通して業界全体のレベルアップにも尽力しています。

仕事を効率よく進めるために事前準備と現場での判断が重要

 二代目として家業を継いで以来、長きにわたり配管工としての技能を磨き続けてきた松本正美さん。配管工とは、建築物における給水管や排水管、ガス管、空調設備などの配管をする職種です。配管の際に使用するパイプは鉄や銅、ステンレスなどの金属管と樹脂管です。
「水やガス、空気などの循環がストップすると生活に支障が出てしまいます。配管は人体の血管と同じで、建物全体のライフラインを保持する役割を果たしているんです。たとえば、血管のどこかに血栓ができたりコレステロールがたまると、血流が悪くなったり詰まったりしますよね。配管も、それと同じこと。ですから、メンテナンスも重要な仕事です」
 建物の内部には、血管のようにパイプが縦横に走っており、パイプの位置は設計図に示されています。配管工の仕事は、設計図を見て、素材や本数、またその長さも判断し、パイプの問屋に正確に発注することから始まります。
「段取り八分というぐらい、事前の準備がとても重要です。正確に把握しておかないと無駄が出たり、パイプの口径サイズが合わなかったりして、コスト面や効率面に大きく影響します。この仕事は熟練工でないと難しいです」
 若手は、現場で先輩の仕事を見ながら覚えていきます。松本さんも事前準備を完璧にできるようになるまでには10年くらいかかったそうです。
 配管工の仕事を大きく分けると、切断、加工、接合の3つになります。切断とは文字どおり、各種パイプ(長さ4mが定尺)を切断することで、加工とは切断部分にねじを切ったり(ねじ状になるよう加工を施すこと)、パイプを曲げたりすること。接合とは、加工したパイプをつないでいくことです。現場で設計図を見ながら、これらの作業を行うわけです。
 配管工にとって最も重要なことは、どんな現場でも必ず配管の収まりが悪いところが何カ所か出てくるため、その部分を早く発見することです。それによって、適切に配管することができ作業の効率性もアップします。これも、現場体験を積んだ熟練工でなければできない仕事です。
「配管が収まらない場合や、ほかのパイプとぶつかる場合は、その場でどうすべきか判断しなければなりません。たとえば、空調の配管の場合は、温度や湿度の調整に水が使われており、パイプのつなぎ方を間違うと、パイプの中に空気だまりができて水の流れが悪くなったり、逆に空気を吸い込んで水が逆流したりしますからね」

高校生のキャリア教育や若手の指導に注力

 現代の名工に選定されたのは、そろそろ引退しようと考えていた65歳のとき。しかし、選定されたことにより、生涯現役を目指したいと思うようになったといいます。
「私がやるべきことは、若手の指導に力を注ぐことです。業界全体の技能レベルを上げることによって、配管工の社会的地位の向上を目指したいですね」
 松本さんは、これまでも自身が経営する会社で1級技能士を5人育て上げただけでなく、全国管工事業協同組合連合会が主催する研修での講師など、若手の指導に尽力してきました。また、技能五輪・技能グランプリの課題作成のほかに競技委員として審査にあたったり、技能検定国家試験の検定委員も務めるなど、長年にわたって業界の発展に取り組んでいます。
「技能五輪は23歳未満の若年者が対象、技能グランプリは一級技能士を取得している中堅以上の人が対象の競技会で、こうした競技会への参加の促進も重要な指導のひとつです。配管工は、資格を持たず経験だけで仕事をしてきた人がとても多いのですが、それは昔の徒弟制度が根強く残っているからです。親方の仕事ぶりを現場で見て学ぶ、これでは熟練するのに時間がかかってしまいます。技能五輪は、即戦力の人材を養成する目的もあるんですよ」
 松本さんは、高校生のキャリア教育にも目を向けています。配管の基礎を学べるDVD(全国管工事業協同組合連合会発行)を全管連技術部会として監修。全国の工業高校や全管連の会員に配布、技能五輪の参加者のレベル向上に着実につながっているそうです。

松本 正美さん

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