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広報誌「厚生労働」
特集
障害者総合支援法を改正しました
みんなが活躍する地域を共につくる
今回の改正は、障害児の多様化するニーズへのきめ細かな対応、障害者の生活と就労に対する支援、高齢障害者の介護保険サービスの円滑な利用促進など、子どもから高齢者まで、すべての世代に関係する内容となっています。
改正された項目ごとに、その内容や対象者、関連機関、サービス提供側の留意点などについて説明します。
Introduction:障害者総合支援法が変わりました!
2016年5月に障害者総合支援法が改正され、2018年より施行されます。
そこで、障害者支援の現状と、障害者総合支援法の改正の背景とそのポイントを解説します。
障害者の生活・就労に対する支援のニーズが高まる
身体や精神に障害や特定の疾患、難病等を抱えている障害者の総数は2011年現在、約787.9万人で、人口の約6.2%に相当します(図表1)。
その数は増加傾向にあり、障害者が地域のなかで生活していけるように支援する障害福祉サービスは、約79万人の障害者と約24万人の障害児が利用しています(2016年10月現在)。障害福祉サービス関係の予算額は1兆1,560億円です(2016年度)。障害者自立支援法の施行以来、障害者・児への支援は充実してきていますが、障害者の地域生活や社会参加に対するさらなる支援や、障害児支援のニーズの多様化へのよりきめ細やかな対応、質の高いサービスを持続的に提供していくための環境整備などが求められています。
まずは、今回の障害者総合支援法の改正の背景をみていきましょう。
障害者が地域生活に移行する際の受け皿となるグループホームの利用者数は、2009年3月は約4万8,000人だったのに対し、2016年3月には約10万2,000人と倍増しており、地域生活への移行ニーズの増加は明らかです(図表2)。
就労については、一般就労に移行する障害者数は、2009年度は約3,300人だったのに対し、2015年度には約1万2,000人と3.6倍増。これに伴い、生活面でさまざまな課題が生じ、その対応が必要になってきています(図表3)。
障害者の高齢化への対応も迫られています。障害福祉サービスを利用する65歳以上の高齢者数は、2010年5月の約5万3,000人から、2015年3月には約11万7,000人と倍増しています(図表4)。
また、医療技術の進歩等を背景として、NICU等に長期間入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアを必要とする障害児が増えており、障害児支援のニーズも多様化してきています。
3つの改正ポイントをチェック
このような障害者を取り巻く状況を背景として、今回の改正障害者総合支援法では「障害者の望む地域生活の支援」「障害児支援のニーズの多様化へのきめ細かな対応」「サービスの質の確保・向上に向けた環境整備」の3本の柱が立てられています。
「障害者の望む地域生活の支援」については、まず、障害者支援施設やグループホーム等から一人暮らしへの移行を希望する障害者について本人の意思を尊重した地域生活を支援するため、一定の期間にわたり、定期的な巡回訪問や随時の対応により、障害者の理解力・生活力等を補う観点から、適時のタイミングで適切な支援を行うサービスを新たに創設します。
また、障害者の就労に伴う生活面の課題に対応できるよう、事業所や家族との連絡調整などの支援を行うサービスを新設し、福祉から就労への移行を図ります。就労移行支援事業所等を利用して一般就労に移行した人の数は、2012年度は約8,000人でしたが、2017年度中には2倍(約1万6,000人)以上となることをめざしています。
このほか、ますます増加する高齢障害者への対応として、一般の高齢者との公平性を踏まえて、利用者負担を軽減するなど、介護保険サービスの円滑な利用を促進します。
「障害児支援のニーズの多様化へのきめ細かな対応」については、重度の障害などにより外出が著しく困難な障害児に対し、居宅を訪問して発達支援を行うサービスを新たに設けます。また、医療的ケアが必要な障害児が適切な支援を受けられるよう、地方公共団体において、各関連分野の連携促進に努めることとします。さらに、障害児支援の提供体制の計画的な構築を図るため、地方公共団体において、「障害児福祉計画」を策定することを義務付けます。
「サービスの質の確保・向上に向けた環境整備」については、都道府県が障害福祉サービスを提供する施設・事業所の事業内容等の情報を公表する制度を新設するとともに、自治体の事務の効率化を図るよう所要の規定を整備することも定められています。
12ページからは、今回の障害者総合支援法の改正内容について、項目ごとに詳しく解説していきます。
<第5期障害福祉計画の概要>
障害福祉計画とは、障害者総合支援法に基づき、障害福祉サービスなどの提供体制の構築や自立支援給付などの円滑な実施を目的とし、市町村や都道府県が作成する計画です。障害者の自己決定と自己選択を尊重し、市町村を基本とした身近な実施主体により障害の種別によらない一元的な障害福祉サービスを実施すること、地域生活への移行や就労支援などの課題に対応したサービスの提供体制を整備することを基本理念としています。この計画は、国が定める基本的な指針(以下「基本指針」という)に基づき、定めることとされています。基本指針は、これまで3カ年の計画期間ごとに見直しを行ってきました。
第1期計画期間(平成18〜平成20年度)では、平成23年度を目標として、地域の実情に応じた数値目標及び障害福祉サービスの見込み量が設定されました。続く第2期計画期間(平成21〜平成23年度)では、第1期の実績を踏まえて、第3期計画期間(平成24〜平成26年度)では、障害者自立支援法の改正などを踏まえて、第4期計画期間(平成27〜平成29年度)では障害者総合支援法の施行などを踏まえて、それぞれ見直しを行いました。
次の第5期計画期間は平成30〜平成32年度の3年間であり、今般、直近の障害者施策の動向等を踏まえ、基本指針を見直します。主な見直しのポイントとなるのは、今回の改正法において、障害児福祉計画の策定が義務づけられたことを踏まえた「障害児のサービス提供体制の計画的な構築」のほか、「地域における生活の維持及び継続の推進」「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」「就労定着に向けた支援」「地域共生社会の実現に向けた取組」「発達障害者支援の一層の充実」などです。
第5期障害福祉計画では、期間が終了する平成32年度末までに、次のような目標を掲げています。
(1)施設入所者の地域生活への移行
- 地域移行者数は平成28年度末の施設入所者の9%以上
- 施設入所者数は平成28年度末の2%以上削減
(2)精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築
- 各圏域、各市町村に保健・医療・福祉関係者による協議の場を設置
- 精神病床の1年以上入院患者数を14万6,000人〜15万7,000人に(平成26年度末の18万5,000人と比べて3万9,000人〜2万8,000人減)
- 退院率は入院後3カ月69%、入院後6カ月84%、入院後1年90%に(平成27年度時点の上位10%の都道府県の水準)
(3)地域生活支援拠点等の整備
各市町村または各圏域に少なくとも1つ整備
(4)福祉施設から一般就労への移行
- 一般就労への移行者数は平成28年度の1.5倍に
- 就労移行支援事業利用者は平成28年度の2割以上増
- 移行率3割以上の就労移行支援事業所を全体の5割以上に
- 就労定着支援1年後の職場定着率を8割以上に
(5)障害児支援の提供体制の整備等
- 児童発達支援センターを各市町村に少なくとも1カ所設置する
- 保育所等訪問支援を利用できる体制を各市町村で構築
- 主に重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所、放課後等デイサービスを各市町村に少なくとも1カ所確保する
- 医療的ケア児支援の協議の場を各都道府県、各圏域、各市町村に設置(平成30年度末まで)
また、その他の見直しとして、障害者虐待の防止と養護者に対する支援、障害を理由とする差別の解消の推進、意思決定支援や成年後見制度の利用促進のあり方、難病患者への一層の周知、などを挙げています。
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