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広報誌「厚生労働」

ニッポンの仕事、再発見!

《美容師》

主に美容室において、客の希望などをカウンセリングしたうえで、カット、カラー、セット、シャンプー、ブロー、パーマなどを施し、ヘアスタイルをつくり上げる。

技術・デザイン・感性の3つを駆使し顧客満足度の高いヘアスタイルを提供

川野和彦
かわの・かずひこ
1952年、大分県生まれ。70年、山野美容学校を卒業後、美容師の修業に入る。80年に独立し美容院を開業。次いで4店舗を開業し現在に至る。88年に美容世界大会の日本代表になるなど国際大会に4回出場。アジア大会や東京大会では4度優勝の実績がある。昨年、「現代の名工」に選定される。

美容師としての知識・技術を追求するだけでなく、メーカーと協力し、今までになかった梳きバサミを開発した川野さん。
国際大会に日本代表として4度も出場するなど、その卓越した技術は、美しさを求める女性たちから熱い信頼を寄せられています。

観察とコミュニケーションを通し、客の好みなどの情報を得る

 美容師の専門学校を卒業以来、46年にわたり美容師一筋に歩んできた川野和彦さんは、美容技術を競う国際大会に日本代表として4度も出場。世界に認められた卓越した技術が、客を魅了し続けています。
 「世界大会では、カット、ブローなどすべての種目の総合点で評価されます。つまり、美容師はトータルな技術を持っていないといけないということなんですね。特に大切なのは、技術とデザインと感性。この3つを兼ね備えていることが重要です」
 美容師は、髪に関する知識と技術があるだけでは務まらない。感性を磨くことによって、全身のバランスを見る目も必要だといいます。
 「まず服が決まり、次いで靴が決まる。ヘアスタイルを決めるのは、そのあとです。お客様のファッションを見たうえでヘアスタイルを決めると、全体のバランスがとれます。たとえば、スカート丈が長ければ髪の毛も長く、ミニスカートなら髪の毛も短くというのが基本です」
 顔の形に合ったヘアスタイルを見極めて提案するときも、バランスが大切です。丸顔の人が前髪を垂らすとますます丸くなり、面長の人が髪を真ん中で分けると顔の長さが強調されてしまうとか。川野さんは一人ひとり、客が好むファッションから顔の形まですべてを観察して、それぞれがより美しく見えるヘアスタイルを提案することを常に心がけています。
 しかし、美容師の満足=客の満足とは限りません。川野さんにとっての理想は、双方が満足できる仕事をすることです。
 「私としては『よくできた』と思っても、お客様には満足していただけないこともありますから、そのギャップをいかに埋めるかが重要ですね。そのためには、お客様のファッションの好みなどの情報を観察はもちろん、会話を通して得ることが欠かせません。お客様とのコミュニケーションのなかには、たくさんの情報が詰まっています」
 また、常にアンテナを立てて最新の流行の傾向をキャッチすることも怠りません。業界全体が最新のヘアスタイルや技術を導入するようになってからでは遅い。流行の少し先を読んで取り入れることが美容師には必要不可欠だと語ります。
 「今の流行は軽さのあるヘアスタイルですが、行くところまで行った感じがあります。これからは、重みのあるヘアスタイルになっていくのではないでしょうか。流行は繰り返しますが、昔とまったく同じではありません。現代風にアレンジする感性も、美容師には必要です」
 ただ、基本的な技術を習得していなければ、感性があっても、具体的なスタイルとして表現することはできません。学び続けることが、トータルな力を発揮できるようになる基本だそうです。川野さんは、営業時間終了後にカットの練習に励んだり、ロンドンやパリで美容技術を学んできました。若手には、基本をマスターしたら海外で修業することを勧めます。

技術・接客術はマニュアルにより先輩から後輩へと確実に継承

 他店で店長を任された25歳のとき以来、後進の育成のために一貫して取り組んでいるのは、技術と接客術のマニュアル作成と更新です。マニュアルがあれば、確実に技術の継承ができると考えているからです。
 「飲食店の場合、店主が変わると味が変わることは多々あります。美容院も同じなんです。でも、マニュアルがあれば、私以外のスタッフが技術・接客術を提供しても同じ高い品質を確保できます。かつての職人のように見て覚えろでは、技術の継承はできません」
 また、マニュアルによって基本が身につくと、柔軟に応用力を発揮できるようになるという利点もあり、スタッフの成長につながるのです。
 スタッフ一人ひとりに川野さんが指導していては、先輩美容師たちの若手育成意識は育ちません。むしろ自分の存在意義に疑問を持つため、仕事に対するモチベーションが下がってしまいます。マニュアルによる先輩から後輩への技術・接客の継承。これこそが、川野さんが自信を持って取り組んでいる後進の育成法なのです。

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