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広報誌「厚生労働」

ニッポンの仕事、再発見!

旋盤工

特殊な機械を操作して、主に金属を丸い形状に加工する技術者。加工には、人の手で旋盤などの工作機械を扱う方法と、プログラムに基づいて自動的に加工するNC旋盤を扱う方法があり、これらを駆使してクライアントの要望どおりの品物を製造する。

金属などを丸く滑らかに切削加工 未知の形状にも果敢に挑む

馬場広明
ばば・ひろあき
1962年、新潟県生まれ。77年、高等職業訓練校に入学。79年、株式会社日立製作所中央研究所に入社。2014年、東京都優秀技能者選定。職業能力開発総合大学の講師を担当するなど、ものづくり技能の向上に寄与。昨年、「現代の名工」に選定される。

普段の暮らしではほとんど目にする機会がないさまざまな機械の部品の中でも、丸い形状の部品の多くは旋盤工が切削加工しています。約40年間にわたって旋盤工一筋に歩んできた馬場広明さんは、未知の形状でも必ず完成させるという卓越した技能の持ち主。経験に裏打ちされた技を継承するため、後進の育成にも注力しています。

加工するものは形・サイズが多種多様 目と手で確認しながら高い精度を実現

 金属などの素材を切って削って加工する。こうした作業を行う専門的技術は各種ありますが、金属加工の世界と接点がない人は、これらの技術にどのような違いがあるのかわからないでしょう。馬場広明さんは、金属加工のひとつである旋盤加工に長年従事してきたベテラン。旋盤加工とは、一言で言うと鉄、ステンレス、チタン、銅などの金属や木材、プラスチックなどを切削することによって丸く加工する技術です。手がけてきたのは、半導体の検査や製造のための装置の部品で、主に電子顕微鏡の部品の試作品です。
 「丸型の金属加工部品のほとんどは旋盤加工されています。私が手がけるのは直径0・3o〜500oまで、材質は各種あり形状も多様で、普段目にする車のホイールやねじなども旋盤によるものです。一般的なものは大量生産で加工しますが、一品物で精度を求められるものは、目と手と耳で確認しながら手作りします」
 工作機械の中には、丸い形状に加工するのが得意な旋盤と四角い形状に加工するのが得意なフライス盤があります。旋盤は被作物(削られる素材)が回転しますが、フライス盤は削る側の刃物が回転するという違いがあります。丸い形状はフライス盤でも加工できますが、高い精度で加工できるのは旋盤で、四角いものやとんがったものを作ったり、溝を入れるといった加工も可能です。ただし、形状によってはフライス盤を使う必要もあるため、旋盤工はフライス盤の技術も必要とされます。
 機械に読み込んだプログラムで自動的に加工するNC旋盤という方法もあり、これは人の手では加工が困難な形状を要求されたときに使用します。
「大量生産の場合はすべて同じ形状ですが、手作りの場合は同じ形状のものを求められることはほとんどありません。そのつど図面を見て工程を考えます。やりがいを感じるのは未知の形状を求められ、いろいろな角度から検証したうえで加工に取りかかり、イメージどおりに完成したときです。考える工程が一番大変ですが、そこをクリアすれば、あとは加工に着手するだけ。考え抜いた分、完成したときの喜びはひとしおですね」
 このように未知の形状を求められることも多いため、旋盤工は最後まで諦めないことが重要だと言います。
 「できないと思うこともありますし、弱気になることもありますが、その品物の完成を待っている人がいるわけですから、諦めるわけにはいきません。諦めたら先に進めませんからね。失敗したとしても、失敗の原因を見つけて、再度取りかかり必ず完成させます」

若手旋盤工の成長をサポート 技術を活かして社会貢献も

 馬場さんは現在、工程の管理を主な業務としています。100もの工程を経て完成させる部品もあるため、一部を外注し最終的にまとめ上げることも多々あるそうです。その業務と並行して行っているのが、後進の育成です。技能五輪の指導員として若手数名を入賞に導いたこともあり、成長の手助けができることに喜びを感じています。
 「私は先輩たちからの指導を受け、さまざまな形状に加工する訓練を繰り返してきました。経験の積み重ねによって知識と技術が磨かれたと思います。若い旋盤工も、あらゆる未知の形状に積極的に挑戦してほしいですね。ここは研究所ですから、研究者や開発者が発想したものを具現化するのが私たちの役割です。どんな要望にも高い精度で応えられる旋盤工を増やしていくことが、私の重要な役割だと思います」
 「現代の名工」受賞後に社長から言われた、「たまたまです。運が良かっただけなんですよ。周りに感謝しながら貢献してくださいね」という言葉を、真摯に受け止めています。
 馬場さんは、探査機「はやぶさ」のプロジェクトにも参加。小惑星イトカワから、必要量の試料を確実に採取できる掻き出しへらを製作しました。
 「はやぶさプロジェクトにかかわれたことは本当にうれしかったですね。イトカワの試料採取に少しは役に立てたと思います。これからも旋盤工としての技術を活かして、少しでも社会貢献できる仕事に取り組んでいきたいですね」

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