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ニッポンの仕事、再発見!

《製缶工》
鉄やステンレス鋼材を、多様な技術を駆使して加工し、タンクや鉄骨構造物などを成形する。環境設備や貯槽、プラント、産業機械など、幅広い分野で必要とされる。溶接技術、機械加工、機械製図などの知識・経験・資格のほか、品質管理やクレーン作業の技術も必要となる。

豊かな経験に裏打ちされた高度な技術でタンクや鉄骨構造物などを製作

平 茂
たいら・しげる
1951年、秋田県生まれ。66年、15歳で三進工業株式会社に入社。以来、製缶工として核燃料廃棄格納貯蔵容器の製作や液化天然ガス貯蔵施設の建設などに携わる。現在は、福島県の復興事業として、各地でガレキなどを燃やす焼却設備の製作に取り組んでいる。建設本部建設部課長。ものづくりマイスター。2015年、「現代の名工」に選定される。

製缶工になって50年。
平茂さんは、タンクや鉄骨構造物などの製作に携わってきました。
製缶工は、なにより経験がものをいう仕事。
豊かな経験によって培われた知識と技術を継承すべく、
現在、全国各地の現場で若手製缶工の師として活躍しています。

多岐にわたる仕事内容 若手の仕事のチェック機能も果たす

製缶工とはどのような仕事なのか、ご存じの人は少ないでしょう。製缶工として活躍している平茂さんも、「15歳で上京したときは、缶詰の缶でもつくるのかなぁ」と思っていたとか。それが今では勤続50年の大ベテラン。65歳の現在も全国の現場を飛び回っています。
製缶工とは、鉄やステンレスなどの厚板鋼板を加工・成形する仕事です。
「缶は缶でも巨大な缶です。40トンの電車が5000台すっぽり入るぐらいの容量のタンクを造ったりします。容器だけでなく、鉄骨構造物も造りますし、船や車両を製造する現場にも製缶工はいます」
その仕事内容は多岐にわたり、原寸展開、ケガキ、溶断、穴あけ、曲げ、溶接、仕上げなど多くの工程を手がけます。そのため製缶工は溶接やクレーン操作・玉掛けなど多くの資格を取得する必要があり、約20種の資格を取得しているとか。平さんほどの経験と知識・技術があれば、どんな仕事も軽々とこなすと思いきや、仕事のときはいつも不安と背中合わせだと言います。
「発注される仕事は似ているようで、毎回全然違う一品種一生産です。顧客のニーズに応えられるかどうかという不安はいまだにあります。時代の変化に伴いニーズが多様化しているので、あと100年生きても不安が消えることはないと思います」
製缶工の重要な仕事は原寸展開技術です。通常、図面には完成品のサイズしか記載されていませんが、製缶工が必要とするのは各パーツの実寸です。パーツごとに展開図を描き、実寸を導き出さなければなりません。
「若い人たちはパソコンで展開図を描きますが、機械任せだと間違いに気づきにくいんです。ですから、できあがった展開図は必ずチェックし、計算し直すこともしばしばあります」
チェック機能を果たせるのも、長年の経験とカンがあればこそ。最後は人間の技だと言います。
現場の状況に合わせたアイデアの発想力も問われるのが製缶工です。核燃料廃棄物格納貯蔵容器を製作したときのこと。高レベル放射性廃棄物を地下埋設させる数十個のステンレス製容器を、すべて水平かつ効率的に収めるための歪み防止の道具を考案しました。
「このときは社内改善提案制度による社長賞1級をいただき、うれしかったですね。個人で、あるいはチームで、さまざまなアイデアを考えてきました」

現場での製品トラブルにも対応 自ら対処法を見せて若手を指導

製缶工は加工・成形するだけではありません。現場では臨機応変に対応することも求められます。製品がなんらかの衝撃で曲がったり折れたり、曲がるべきところが曲がっていなかったり、ねじれが生じていて取り付けられないといった製品トラブルが発生したときは、製缶工の出番。新たに製品を仕入れれば時間とコストがかかるため、現場で修復するのも製缶工の重要な仕事なのです。
「若い人は、加工と成形はできても修繕はできません。現場で直して、使えるものにしてしまうのが、経験に裏打ちされたベテランの技なんです。うまくいったときは、とてもやりがいを感じますね。もちろんうまくいかないこともあるし、ミスもありますが、間違いの数の分だけ経験として蓄積されていくのが、この仕事です」
平さんは60歳を迎えて以降、全国各地の現場を巡っています。現場には協力会社の若手製缶工も大勢集まってきているため、経験豊かなベテランとして、自社の若手だけでなく他社の製缶工の指導も熱心に行っています。
「新人は見よう見まねで早く仕上げようとします。言葉は悪いですが、どこで手を抜くかは経験によって学ぶもの。最初から手を抜くと基本が身につきませんから、そんな様子が見えたときは、自ら仕事の仕方を見せ、理論立てて説明・指導しています。肉体的には勝てませんが、技術では負けません」
平さんは現在、福島県の復興事業としてガレキなどを燃やすごみ焼却施設の建設に携わっています。
「役に立ちたいという気持ちがある限り、この仕事を続けていきたいですね」

製缶工にとって重要な仕事は、各パーツごとに展開図を描き起こす原寸展開の技術。これをもとにして加工・成形という実作業を行う渡会さんが使用しているのは「細川紙」。長い毛足が特徴の楮100%の手すき和紙だからこそ、ちぎって貼っていくことによって色をつなげていくことができる

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