厚生労働省

  • 文字サイズの変更
  • 小
  • 中
  • 大

平成20年7月30日

厚生労働省医薬食品局食品安全部
加地 監視安全課長

担当:田中(監視安全課 内線2455)
佐々木(企画情報課 内線2448)

中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案について(お知らせ)

今般、当部が取りまとめた「中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案について−行政及び事業者等の対応の検証と改善策−」及び「中国産冷凍食品による薬物中毒事案の実態把握に関する検討会」で取りまとめられた中間報告について、本日開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会に報告しましたので、お知らせします。

なお、全文については、厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/china-gyoza/index.html)を参照してください。

1.中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案について−行政及び事業者等の対応の検証と改善策−

(1) 経緯

昨年12月から本年1月までの間に千葉県及び兵庫県で3家族10名の有機リン中毒患者が発生した中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案について、公衆衛生の観点から問題点を総括するため、当該事案の検証と改善策の取りまとめを実施。

(2) 概要

[1] 行政対応

・  中毒発生時に事業者が保健所と連絡を取ることができず、初動対応が遅れた事案が見受けられたことを踏まえ、保健所等における24時間・365日の対応体制の確保など、健康危機情報を迅速に把握できる体制の確保を図るよう、都道府県等に要請(本年2月)。

・  輸入食品が原因と疑われる健康被害において、都道府県等から厚生労働省への報告がなかった事案が見受けられたことを踏まえ、食品衛生法に基づく報告の遵守を徹底するよう、都道府県等に要請(本年2月)。また、食品衛生法施行規則を改正し、都道府県等から厚生労働省への速報の対象に「重篤な患者が発生した場合」及び「化学物質に起因する場合」を追記(本年4月)。

[2] 事業者対応

・  昨年来、薬品異臭苦情が散見されていたものの、中毒発生後も輸入者や販売者が問題の共通性を認識できず、結果的に複数の中毒が発生したことを踏まえ、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関するガイドライン」を改正し、食品等事業者が苦情等を精査して危害情報を保健所等に速やかに報告する旨を追記(本年4月)。また、輸入者が生産段階に遡った安全管理体制の確保等の向上を図るよう、「輸入加工食品の自主管理に関する指針(ガイドライン)」を策定(本年6月)。

[3] 医療機関対応

・  中毒事案発生時に、医師から保健所への食中毒の届出がなかった事案が見受けられたことを踏まえ、食品衛生法に基づく食中毒の届出の遵守を徹底するよう、医師会及び都道府県等を通じて医療機関に要請(本年2月)。

2.中国産冷凍食品による薬物中毒事案の実態把握に関する検討会 中間報告

(1) 経緯

昨年12月から本年1月までの間に千葉県及び兵庫県で3家族10名の有機リン中毒患者が発生した中国産冷凍食品による薬物中毒事案について、今後の類似事案発生時の早期対応に資するよう、全体像を把握するため、「中国産冷凍食品による薬物中毒事案の実態把握に関する検討会」(座長:品川邦汎 岩手大学農学部教授)を設置し、食品による有機リン中毒の健康影響に関する知見を集積するとともに、確定事例(=有機リン中毒と確定された事例)及び相談・報告事例(=都道府県等に相談・報告があった事例)の分析並びに回収食品の検査結果の把握を実施した。

(2) 概要

[1] 確定事例の把握

確定事例として届け出られた10例における患者の臨床経過について、医療機関、都道府県等に対する聞き取り調査を実施したところ、ほとんどの症例で来院時から通常の食中毒と異なる強い症状を呈したことや、有機リン中毒と診断された後のコリンエステラーゼ(=有機リン中毒の重症度の指標とされる、肝実質細胞で産生されてコリンエステルをコリンと有機酸とに加水分解する酵素)の回復が極めて速いことが特徴的であった。

[2] 相談・報告事例の分析

都道府県等の既存の相談・報告受付記録に基づき、医療機関を受診したものの有機リン中毒が否定された報告・相談事例1,086件について、必要に応じて都道府県等に照会しながら、再確認を行ったところ、必ずしも必要な情報をすべて収集できた訳ではないが、現時点では、確定事例として届け出られた10例以外に有機リン中毒を疑わせる事例は認められなかった。

[3] 回収食品の検査結果の把握

都道府県等より報告された回収食品の検査結果を集計するとともに、関係事業者に対する聞き取り調査を実施した。

具体的には、都道府県等及び関係事業者が5,917検体の検査を実施した結果、確定事例及び薬品異臭苦情に関連する製品以外では、49検体から5農薬(メタミドホス、ジクロルボス、クロルピリホス、ピリメタニル及びプロシミドン)が検出されたが、いずれの検出値も原料由来と考えられる残留農薬のレベルであり、高濃度の汚染は確認されていない。

したがって、現時点での断定は困難であるが、高濃度に汚染されていた食品は非常に限られていたものと考えられる。


トップへ