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厚生労働省発表
平成16年3月
担当 雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課
課長  石井 淳子
課長補佐  都築 輝繁
電話03(5253)1111 内線7837、7834
夜間03(3595)3271


平成15年版働く女性の実情



 厚生労働省雇用均等・児童家庭局では、毎年、働く女性に関する動きを取りまとめ、「働く女性の実情」として紹介している。
 今年は、「I 働く女性の状況」において、平成15年を中心に働く女性の実態とその特徴を明らかにし、「II 均等法と労働環境の変化〜世代別にみた女性の就業実態の変化〜」では、女性の就業環境に大きな影響を与えた男女雇用機会均等法施行の時期を念頭に、世代別に女性の就業を取り巻く環境、職業に対する意識、就業実態等について比較・分析を行った。
→ 概要 → あらまし
《 ポイント 》


I 働く女性の状況
(1)  平成15年の女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は、前年に比べ0.2%ポイント低下し48.3%と、6年連続で低下している (第1-1表)
(2)  M字型カーブの底である30〜34歳層の労働力率は前年と同様の60.3%であった。また、M字型カーブの左山である25〜29歳層は、引き続き上昇した (第1-1図)
(3)  女性の就業者数は2,597万人で、平成9年以来6年ぶりに増加(対前年差3万人増、対前年比0.1%増)した。就業者のうち雇用者数は2,177万人で前年に比べ16万人増加、雇用者総数に占める女性の割合は前年からさらに上昇し、40.8%になった (第1-2表第1-4図)
(4)  女性の完全失業者数は135万人(男性215万人)、完全失業率は4.9%(男性5.5%)で、いずれも平成2年以来13年ぶりに減少、又は低下した。完全失業者数については男性も13年ぶりの減少となった (第1-3図)
(5)  女性の平均勤続年数は9.0年(男性13.5年)と前年に比べ0.2年伸び、勤続10年以上の者の割合は35.2%(対前年差0.8%ポイント上昇)と3人に1人以上は10年以上の勤続者 (第1-3表)
(6)  一般労働者の所定内給与額の男女間賃金格差は66.8(平成14年は66.5)となり、長期的には緩やかな縮小傾向が続いている (第1-5図)
(7)  大卒技術系の女性の初任給の平均は男性を100として100.1と初めて男性を上回った。
(8)  女性の非農林業雇用者に占める短時間雇用者の割合はさらに上昇し、40.7%と初めて4割を超えた (第1-6図)
(9)  女性の一般労働者とパートタイム労働者の賃金格差は5年ぶりに縮小し65.7(平成14年は64.9)であった (第1-7図)

II 均等法と労働環境の変化〜世代別にみた女性の就業実態の変化〜
1 女性の就業の変化

(1)高まる若い女性の就業意欲、積極化する意識
 ○  若年男性の就業意欲はやや低下しているが、若い世代の女性ほど就業意欲が高まっている (第2-2図)
 ○  平成15年現在で、女性の潜在的な就業希望が実現すれば815万人、M字型カーブが解消すれば112万人の労働力が確保される。
 ○  理想とするライフコースが「両立」である者の割合は男女とも若い世代ほど高い (第2-10図)
 ○  新入社員の意識においても世代が高まるにつれて役職に就きたいとする女性の割合は上昇している (第2-23図)
(2)就業分野等からみた特徴
 ○  若い世代ほど新規大卒者の職域の男女差は、産業別、職業別ともに縮小 (第2-7図)
 ○  若い世代については、新規学卒者で一般労働者として就職していない者の相当数がパートタイム労働者として就労する結果、新規学卒者のうち、パートタイム労働者として就職する者の割合は上昇。新規高卒では男女差も拡大 (第2-8図)

2 ライフスタイルの観点からみた女性の就業の変化
 ○  結婚又は出産・育児を理由に離職する均等法後10年世代の割合は、均等法世代に比べ低下 (第2-12図)
 ○  均等法世代は同一企業での継続就業者割合が高いが、均等法後10年世代は転職率が高い (第2-14図)。育児を理由に転職する者が前の世代に比べ上昇。転職後の雇用形態でパートタイム比率が上昇。
 ○  妻がフルタイムで働く世帯は、均等法前の世代よりも若い世代において三世代同居の割合は低く、親の援助が得られ難い世帯構成となりつつある (第2-16図)

3 職場における男女均等度合いの変化
 ○  企業の雇用管理についての考え方は、均等法前10年世代が就職した頃は、女性については、補助的な分野での活用、特定の業務範囲でのみとしていた企業がそれぞれ40.0%、35.7%もあり、結婚退職制等もあった。実際の雇用管理も募集・採用、配置、昇進等において男女別雇用管理が一般的。
 ○  意識調査によると、最近時点の平成14年調査では、均等法施行前の昭和54年調査と比べ職場で不当に差別されていると回答した女性の割合は若い年代層を中心に低下 (第2-22図)
 ○  職域面では、均等法施行前10年世代が就職した頃の昭和52年には、女性を配置しない職域がある企業は91.6%であったのが、女性を配置していない企業割合が高かった営業職も含め、女性の配置は進んでいる (第2-19図)
 ○  女性の役職がいる企業割合も上昇 (第2-20図)。係長や課長比率は男性に比べて水準は低いものの、均等法施行後、均等法施行前の世代も含め上昇。しかし、世代間の差は残っている (第2-25図)

4 まとめ
 (1)  若い世代の積極的な就業意欲を活かすためにも、均等確保徹底とポジティブ・アクションの実施が求められる。また、ポジティブ・アクションについては、均等法施行前の世代に特段の配慮がなされるべき。
 (2)  若い世代は、親の援助が得られにくい世帯類型であることをも踏まえ、仕事と育児との両立支援策の充実が図られるべき。男性を含めた働き方の見直しが一層図られることも必要。
 (3)  パートタイム労働者とフルタイム労働者の処遇の均衡の一層の推進が必要。
 (4)  就業意欲が高まっている女性の能力が充分発揮される社会の実現は、少子高齢社会の担い手としての確保のためにも重要な課題。



《 概要 》
I 働く女性の状況
1 労働力人口、就業者、雇用者の状況
  (1) 労働力人口
 総務省統計局「労働力調査」によると、平成15年の女性労働力人口は2,732万人で、前年に比べ1万人の減となり、平成13年にはいったん増加に転じたものの、平成10年をピークとした減少傾向が続いている。
 平成15年の女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は、前年に比べ0.2%ポイント低下して48.3%となり、平成9年をピーク(50.4%)として低下を続けている。男性の労働力率も前年より0.6%ポイント低下し、74.1%となった (第1-1表)
 女性の労働力率を年齢階級別にみると、前年と比べ労働力率が大幅に上昇したのは25〜29歳層(1.6%ポイント上昇)、35〜39歳層(1.3%ポイント上昇)であった。また、M字型カーブのボトムである30〜34歳層は前年に引き続き60.3%であった (第1-1図)
 平成14年と15年の女性の年齢階級別労働力率の変化について未既婚比率変化と労働力率の変化を要因分解してみると、労働力率が上昇傾向にある25〜29歳層では、他の年齢階級に比べて未既婚比率の要因が大きいものの、労働力率自体の変化要因も同程度あり、双方あいまって労働力率の上昇につながっていることがわかる (第1-2図)
  (2) 就業者及び完全失業者
 総務省統計局「労働力調査」によると、平成15年の女性の就業者数は2,597万人で、平成9年以来6年ぶりに増加に転じ、前年に比べ3万人の増加(0.1%増)となった。女性の就業者を従業上の地位別にみると、家族従業者及び自営業主は減少傾向が続いているが、雇用者は、前年に比べ16万人増加し、就業者に占める雇用者の割合についても引き続き上昇している (第1-2表)
 平成15年の女性の完全失業者数は135万人(前年差5万人減)で、男性(215万人、前年差4万人減)とともに平成2年以来、13年ぶりの減少となった。女性の完全失業率は4.9%(前年比0.2%ポイント低下)となり、これも13年ぶりの低下であった(男性は前年同) (第1-3図)
  (3) 雇用者
 総務省統計局「労働力調査」によると、平成15年の女性雇用者数は2,177万人となり、前年に比べ16万人の増加(0.7%増)と、再び増加した(昨年は前年比0.3%減)。男性の雇用者数は3,158万人で前年より12万人の減少(0.4%減)であった。雇用者総数に占める女性の割合は前年からさらに0.3%ポイント上昇し、40.8%になった (第1-4図)
 平成15年の労働力調査は、新産業分類による数値であるため、前年との比較はできないが、平成15年の女性の雇用者数を産業別にみると、卸売・小売業が487万人と最も多く、次いで医療,福祉が373万人、製造業が351万人、サービス業(他に分類されないもの)が299万人となっており、これら4業種で女性雇用者の69.4%を占めている。
 職業別にみると、事務従事者が705万人と最も多く、次いで、専門的・技術的職業従事者が378万人、保安・サービス職業従事者が332万人、製造・製作・機械運転及び建設作業者が296万人、販売従事者が269万人となっている。前年に比べ、専門的・技術的職業従事者及び保安・サービス職業従事者における増加が著しく、販売従事者は減少した。
 雇用形態別にみると、常雇(常用雇用)が1,680万人、臨時雇が414万人、日雇が66万人で、常雇については減少した前年から再び増加に転じた(11万人増加、0.7%増)。臨時雇は2万人(前年比0.5%増)の増加であった。
 配偶関係別にみると、有配偶者は1,227万人(非農林業女性雇用者総数に占める割合56.8%)、未婚者は706万人(同32.7%)、死別・離別者は220万人(同10.2%)で、前年度上昇した有配偶者の割合は、再び低下に転じた。
 平成15年の女性労働者の平均勤続年数(パートタイム労働者を除く)は9.0年(男性13.5年)で、前年に比べ0.2年長くなった。

2 労働市場の状況
 (1) 求人・求職及び入職・離職状況
 新規学卒及びパートタイムを除く一般労働市場の動きを厚生労働省「職業安定業務統計」によりみると、平成15年の新規求人数(男女計)は、月平均44万7,653人(前年比13.1%増)となった。新規求職者数(男女計)は51万9,080人で、前年比3.2%減となった。
 厚生労働省「雇用動向調査」によると、平成14年の女性の入職者数(一般及びパートタイム労働者計)は306万1,500人(前年差8万5,300人減)、離職者数は341万7,400人(同7万3,500人減)と、入職者は4年ぶり、離職者は6年ぶりの減少となった。
  (2) 新規学卒者の就職状況
 高校新卒者の就職決定率を厚生労働省「高校新卒者就職内定状況等調査」によりみると、平成15年3月卒業者の就職率は女子が94.0%(前年93.4%)、男子が96.1%(同96.0%)であり、大学新卒者の就職率について厚生労働省・文部科学省「大学等卒業予定者就職内定状況等調査」によりみると、平成15年3月卒業者の就職率(平成15年4月1日現在)は女子が92.2%(前年91.5%)、男子が93.2%(同92.5%)であった。
 文部科学省「学校基本調査」(平成15年度)により女性の新規学卒者に占める就職者割合を学歴別にみると、女性の大学進学率の上昇に伴い大卒者の割合が年々上昇しており44.0%、次いで、高卒者32.3%、短大卒22.7%と続く。

3 労働条件等の状況
 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、平成15年6月のパートタイム労働者を除く女性一般労働者(平均年齢38.1歳、平均勤続年数9.0年)のきまって支給する現金給与額は、23万9,400円(前年比0.3%増)、うち所定内給与額は22万4,200円(同0.3%増)であり、ともに前年より増加したが、伸び率については前年(同0.7%増、0.5%増)を下回った。
 一方、男性一般労働者(平均年齢41.2歳、平均勤続年数13.5年)のきまって支給する現金給与額は、36万8,600円(前年比0.2%増)、うち所定内給与額は33万5,500円(同0.2%減)であり、所定内給与額は2年連続で前年を下回った。
 男女間の賃金格差(男性=100.0として算出)は、長期的にはきまって支給する現金給与額でも所定内給与額でも緩やかな縮小傾向が続いており、きまって支給する現金給与額で64.9、所定内給与額で66.8となっている (第1-3表第1-5図)
 また、初任給についての男女間賃金格差(男性=100.0として算出)をみると、高卒で93.3(前年差1.2ポイント低下)、高専・短大卒で96.3(同0.6ポイント低下)、大卒事務系で94.1(同0.2ポイント低下)、大卒技術系で100.1(同1.3ポイント上昇)と大卒技術系で初めて女性が男性を上回った。

4 パートタイム労働者の状況
 総務省統計局「労働力調査」によると、平成15年の女性の短時間雇用者数(非農林業で週間就業時間が35時間未満の者)は861万人(前年比26万人増)で、女性の非農林業雇用者2,118万人(休業者を除く)に占める短時間雇用者の割合は40.7%と初めて4割を超えた (第1-6図)。ただし、短時間雇用者数に占める女性の割合は平成12年をピークとしてやや低下の傾向にあり、平成15年は68.4%と前年に比べ0.6%ポイント低下した。
 「賃金構造基本統計調査」により女性パートタイム労働者の賃金をみると、1時間当たりの所定内給与額は893円で、前年に比べ2円増加している。
 パートタイム労働者と一般労働者との賃金格差は50.3であるが、女性パートタイム労働者と女性一般労働者との賃金格差についてみると、平成15年は、一般労働者の所定内給与額を時給換算したものを100.0とした場合、パートタイム労働者は65.7と5年ぶりに縮小に転じた (第1-7図)

II 均等法と労働環境の変化〜世代別にみた女性の就業実態の変化〜

 働く女性を取り巻く状況はここ四半世紀の間、大きく変化し、国際婦人年以降の国際的な男女平等を目指す動きの中で、女性の就業についても法的整備や施策の充実が図られ、女性の職域も拡大した。女性の就業に対する社会の意識も変化し、女性が子供を産み育てながら働き続けることを積極的に評価する人は増えつつあるが、今日なお、我が国の女性の年齢階級別就業状況は30歳台後半で低下するM字型カーブを描いており、M字の底は上昇しつつあるとはいえ、諸外国の逆U字型とは異なる形状のままである。
 第II部では、世代によりこうした課題の内容に違いがあるのかどうかを把握するため、男女雇用機会均等法施行の時期を念頭に、4つの世代を取り出し、それぞれの世代毎の女性の就業を取り巻く環境、職業に対する意識、就業実態等について比較・分析を試みることとした。
(1)均等法前20年世代   昭和41(1966)年に18〜22歳
(2)均等法前10年世代 昭和51(1976)年に18〜22歳
(3)均等法世代 昭和61(1986)年に18〜22歳
(4)均等法後10年世代 平成 8(1996)年に18〜22歳

1 女性の就業の変化
 (1)女性の就業意欲の変化について
 (高まる若年女性の就業意欲、若年男性は低下)
 まず、総務省統計局「就業構造基本調査」により、有業者(ふだん収入を得ることを目的として仕事をしており,調査日以降もしていくことになっている者,及び仕事は持っているが,現在は休んでいる者。なお,家族従業者は,収入を得ていなくても,ふだんの状態として仕事をしていれば有業者に含まれる。)数や有業率(15歳以上人口に占める有業者の割合)をみると、男性の有業率は低下傾向にあり、有業者数についても頭打ちとなっている。
 一方、女性の有業率は、平成4年以降低下しているが、昭和49年から平成4年まで上昇傾向にあった点が男性とは異なる (第2-1図)
 年齢階級別の女性の有業率について昭和62年、平成4年、平成14年で比較すると、有業率が低い25〜29歳層、30〜34歳層における上昇が目立つ。潜在的有業率(<有業者+無業者のうちの就業希望者>/15歳以上人口)についてみると、女性は、25〜64歳までの各年齢階級で上昇し、平成4年以降男女ともに年齢計の有業率が低下するなかで、40歳以上についても、女性の潜在的有業率は上昇しており、女性が就業に対して積極的な意欲を有していることがわかる。
 一方、男性については各年齢階級で有業率は低下、潜在的有業率についてもほとんどの年齢階級で低下しており、女性とは対照的な動きとなっている。昭和62年から平成14年までの男性の潜在的有業率の変化をみると、特に25〜34歳層で低下しており(25〜29歳層で1.0%ポイント、30〜34歳層で0.6%ポイント低下)、若い年代層において男性の就業意欲が低下する中で女性の就業意欲は高まるという動きが目立つ (第2-2図)
 (若い世代ほど高まる女性の有業率と潜在的有業率)
 次に、世代間の動きの違いをみるために、コーホート(同一世代に生まれた層)の比較(以下、「コーホート分析」という。)により同様のことをみる。これをみても女性の有業率はM字型の形状となっているが、有業率も潜在的有業率もいずれも概ねどの年齢でみても若い世代ほど高くなっている。特に均等法前10年世代から均等法世代の変化は大きい。しかし、35〜39歳時点では均等法世代も、潜在的有業率は世代の中で最も高い値となっているが、実際の有業率は均等法前10年世代よりも低くなっている (第2-3図)
 一方男性は、有業率も潜在的有業率もいずれも女性のように世代間の顕著な差は認められず、年齢にかかわらず高い水準にあるが、25〜29歳層についてはコーホート分析によっても潜在的有業率の低下が他の年齢層に比べ大きくなっている。
 また、意識調査によれば、現在働いていない女性のうち「働くつもりはない」と回答した者の割合は、年齢が若いほど低く、また、同じ年齢でも若い世代ほど低くなっている。
 (M字型カーブの解消に見込まれる労働力の増加は112万人)
 我が国の女性の労働力率を年齢階級別にみると、20〜24歳層と45〜49歳層を左右のピークとし、30〜34歳層をボトムとするM字型カーブを描いているが、先にみたように、女性の就業希望そのものは出産・子育て期も高い。
 こうした就業希望が実現できることとなれば少子高齢社会の担い手の確保にもつながるものである。仮に、潜在的に就業希望を有する女性の就業が実現した場合、平成14(2002)年現在では、815万人の増加が見込まれ、この場合の労働力率は63.0%となる。これは、日本の昭和30年の56.7%を上回るが、アメリカ(60.1%:2001年)並みの値である。また、就業希望の完全な実現に至らなくても、仮に先進諸国並みにM字型が解消され、労働力率のピークとピークを結んだ年齢階級別労働力率が実現した場合 (注1)、どの程度の労働者が労働市場に参加できるのかを試算すると平成15(2003)年現在で112万人、労働力率は50.3%とバブル期の頃の水準となる。このようにM字型カーブの解消により見込まれる労働力率を算出し、女性の15歳以上人口全体に対する比率で示すと、昭和50年の6.1%をピークに直線的に低下が続き、平成15年には2.0%まで下がっている。この低下傾向が今後も同じように推移すれば、平成29年(2017年)には、M字は解消されることになる。また、年齢階級別にM字型カーブ解消により見込まれる労働力人口(実数)の推移をみると25〜29歳層については急速に減少しているところであるが、なお30〜34歳層と35〜39歳層の比較的若い層があわせて100万人以上であり、今みられる傾向を維持することができれば、若い層の働き手の確保にもつながることが期待できる (第2-4図)
(注1) M字型カーブの解消により見込まれる増加労働力人口及び増加労働力率の推計の方法M字カーブについて



左右のピークにあたる年齢階級の労働力率 P1、P2
ピークに挟まれた谷の各年齢階級の労働力率 R、労働力人口 L、階級の個数 N
谷が解消された場合の各年齢階級の労働力率 R'



谷が解消された場合の、i番目の年齢階級の労働力率R'iは R'i=P1−(P1−P2)/(N+1)×i
谷が解消された場合に増加する各年齢階級の労働力人口は  (L/R)×(R'−R)
 (2)就業分野、就業形態の実態と変化について
〈1〉産業、職業別にみた特徴
 (職務分離は拡大傾向、国際的には小さい我が国の男女別職務分離)
 産業構造の変化とともに就業分野には変化が生じるが、産業別、職業別のいずれについても昭和62年以降分離指数 (注2)は上昇しており、男女間の職務分離が拡大する傾向にあることがわかる (第2-5図)
 就業構造基本調査により産業別の動向をみると、有業者の割合は男女とも製造業が昭和46年以降少しずつ低下し、平成4年以降低下のテンポが高まっている。その一方、サービス業は男女ともその割合が高まる傾向にあり、女性の上昇テンポが著しい。卸売・小売業,飲食店は、昭和52年までは男女とも有業者割合は上昇していたが、男性は昭和52年以降横ばい状態となり、女性のみ緩やかながら上昇傾向が続いている。
 職業別にも同様にその内訳をみると、〈1〉男性については横ばい傾向にある事務従事者の割合が、女性については高まっていること、〈2〉男性は横ばいである技能労務者が女性については昭和62年以降その割合が低下していること、という違いはあるが、専門的・技術的職業従事者、サービス職業従事者は男女とも割合が上昇している。
 次に参考までに男女間の職務分離の国際比較を、産業別、職業別の分離指数の推移により示すと、単純な比較は慎重を期すべきであるが、産業別では、国際的に分離度が大きいのはイギリス、ドイツ等であり、日本は最近上昇しつつあるも、なお、これらの国に比べて小さい。また、職業別にみても産業別と同様、日本の分離度は相対的に小さくなっている (第2-6図)
(注2) 分離指数
 男女間の分離指数とは、産業や職業など何らかの属性について男性の分布と女性の分布を一致させるためにどの程度の割合の労働者が職を変えなければならないかを百分率で示すもので、数値が大きいほど分離度が高いことを意味し、男女の分布が完全に一致するとき0になる。算出方法は以下のとおり。
 分離指数=Σ(|Pf−Pm|)/2
  Pf=女性有業者総数に占める各職業(各産業)の女性有業者数の構成比(%)
Pm=男性有業者総数に占める各職業(各産業)の男性有業者数の構成比(%)
職業及び産業の分類は大分類をベースに一部を統合した区分を用いて算出している。
〈2〉新規学卒者の産業、職業別にみた特徴
 (新規大卒者の職務分離は縮小、高卒についてはやや上昇傾向)
 学歴別の新規学卒者の就職先が男女間で産業別、職業別にみてどのようになっているのかについても分離指数でみると、〈1〉産業別、職業別ともに大卒の方が高卒よりも分離指数が低く、かつ、長期的に低下傾向にあること、〈2〉しかし、産業別については、大卒は平成8年以降比較的低い水準で横ばいの状態となっていること、〈3〉高卒については、産業別、職業別ともに分離指数はやや上昇傾向にあること、がわかる (第2-7図)
 (若い世代の女性ほど進む新規学卒者のパートタイム就職)
 新規学卒者について雇用形態別(一般労働者、パートタイム労働者別)に入職状況をみると、男女ともに昭和58年頃から一般労働者で入職する者の割合が低下し、パートタイムでの入職者の割合が上昇し、平成8年以降その変化度合いが高まっている。このことは、世代別には、若い世代ほど新規学卒者がパートタイムで就職していることを意味しており、男女差も表れている。この動きを新規大卒者と新規高卒者に分けてみると、いずれもパートタイム労働者で就職する者の割合は上昇しており、 例えば、直近時点の平成 14年でみて、高卒者の男女差は10.3%ポイントとなっており、高卒女性の上昇が著しい (第2-8図)。新規学卒者で一般労働者として就職していない者の相当数がパートタイム労働者として就職する結果、新規学卒者のうち、パートタイム労働者として就職する者の割合は上昇しているが、平成8年から14年の間に高卒のパートタイム労働者数は女性は74.8%、男性は180.8%伸びているところ、男女とも、卸売・小売業,飲食店による増加が寄与している。また、厚生労働省「パートタイム労働者総合実態調査」によれば、男女とも「正社員として働ける会社がないからパートを選んだ」とする者が増加している。

2 ライフスタイルの観点からみた女性の就業の変化
 (1)継続就業と離職の状況
 (女性の就業に対する考え方は積極化)
 女性は就職後、結婚、出産を機に退職し、子育てが一段落した後、パートタイム労働で再就職する者が多いが、こうしたライフスタイルにも変化の兆しがみられる。
 女性の就業についての意識の変化を内閣府の世論調査により世代別にみると、現在働いていない女性が、働いていない理由としてあげた項目としては、「家にいるのが当然だから」とする者の割合は均等法前20年世代では高かったが、均等法世代では低くなっている。また、同じ調査で働き方についての問に対する回答として「子供ができても仕事を続ける方がよい」とした女性の割合は年代が若い層ほど高く、かつ、各年代層ともに最近時点になるほどその割合は高い (第2-9図)。こうした結果から、世代間の変化とともに時代による考え方の変化が同時に進行していることがわかる。
 (男性よりも低い「正規職員で働きたい」就業希望)
 国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向調査」により未婚女性が理想とするライフコース(理想のライフコース)、実際になりそうなライフコース(予定のライフコース)、未婚男性が女性に期待するライフコース(期待のライフコース)についてみると、ライフコースを専業主婦、再就職、両立、DINKS、非婚就業に分けた場合、理想(男性は「期待」)とするライフコースが「専業主婦」である者の割合をコーホートでみると、世代間の比較が可能な25〜29歳層、35〜39歳層についてみるが、男女ともその割合は世代が若くなるほど低くなっており、各世代ともに最近時点になるほど理想とする者(又は期待する者)の割合が低下する傾向が男女ともにみられている (第2-10図)
 また、理想(又は期待)とするライフコースが「両立」である者の割合についても、世代間の比較が可能な25〜29歳層及び35〜39歳層に注目すると、上記とは逆に男女とも世代が若くなるほど高くなっている (第2-10図)。世代が若くなるほど、両立を理想とする者(又は期待する者)の割合は男女とも高くなっている可能性が高いことをこれは意味している。
 なお、女性については明瞭ではないが、男性については各世代とも最近時点になるほど「両立」を期待する者の割合が高まっている。
 さらに、理想とするライフコースが「再就職」である者の割合については傾向的には「両立」と同様であるが、男性については世代間による差はあまり認められない (第2-10図)
 次に、就業構造基本調査により無業者の就業希望形態についてコーホートでみてみる。
 「正規職員で働きたい」無業女性はわずかながら若い世代ほどその割合は高くなっているがその割合は40%に満たず、どの世代も年齢を重ねるごとにその割合が低くなる傾向にある。「パート・アルバイトで働きたい」無業女性も若い世代ほどその割合が高く約50%以上で、最も高い割合では均等法世代の35〜44歳層の73.2%となっている。そして、どの世代も年齢を重ねるごとにその割合が高くなる傾向にある。これらは、「正規職員で働きたい」無業男性の割合はどの世代も高く、「パート・アルバイトで働きたい」無業男性が均等法後10年世代、均等法世代の15〜24歳層を除いてどの世代も低くなっているのと対照的である (第2-11図)
 (結婚、出産による離職者は減少)
 それでは、女性の就業の実態は、こうした意識と比べてどのようになっているのであろうか。
 女性が継続就業となるかどうかの大きな岐路は、かつては結婚、近年は出産、育児であったが、それらを理由とする女性の離職者は減少傾向にある。
 これを、厚生労働省「雇用動向調査」により均等法世代が25〜29歳であった平成4年と均等法後10年世代が25〜29歳層であった平成14年で比較すると、25〜29歳層の時点で結婚又は出産・育児で離職した者の割合の推移をみると、平成4年にはそれぞれ20.2%、16.2%であったのが、平成14年には14.5%、9.3%と大きく減少している (第2-12図)
 また、厚生労働省「女性雇用管理基本調査」により「妊娠又は出産による退職者の割合」をみても、昭和41年において52.8%であったのが平成9年には19.0%と大きく低下している。こうした変化の背景には、女性自身の就業意識もあるが、女性の若年定年制や結婚、出産退職制度の存在も影響していたとみられる。
 (同一企業での継続就業者の割合が高い均等法世代)
 女性の働き方に大きく影響を与える結婚、出産、育児を理由として離職する女性が減少したことにより、実際の女性の就業継続の状況はどう変化しているのであろうか。
 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」により常用労働者に占める標準労働者(学校卒業後直ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者をいう。)の割合を高卒者と大卒者についてコーホートでみると、特に大卒者については均等法世代までは、標準労働者の割合がいずれの年代層でみても高く、継続就業者の割合が高くなっている。特に、均等法世代については、就職後10年以上経過することになる35〜39歳層で標準労働者、すなわち同一企業に継続勤務している者の割合は40%近くにも達している。ただし、均等法後10年世代については均等法世代や均等法前10年世代よりも標準労働者の割合が低くなっている。これは、後述のように、均等法後10年世代は転職率が高まっていることが影響しているとみられる。なお、高卒者についても大卒者ほど顕著ではないものの、同様の傾向となっている (第2-13図)
 (転職派が多い均等法後10年世代)
 総務省統計局「就業構造基本調査」により、男女別の転職率をコーホートでみると、男女とも若い世代ほどいずれの年代層においても転職率は高く、特に均等法後10年世代が含まれる15〜24歳層の女性の転職率は13.3%と、年齢合計(女性6.3%、男性4.4%)の2倍以上の転職率となっている (第2-14図)
 若年者の転職率の上昇傾向は男女共通にみられるものであるが、総務省統計局「就業構造基本調査」により、若い世代の転職希望の理由をみるため、25〜29歳層の理由をみると、男女とも「収入が少ない」、「時間的・肉体的に負担が大きい」、「知識や技能を生かしたい」が多く、男性については、「事業不振や先行き不安」とする者の割合も多い。これを、均等法後10年世代と同年代であったときの均等法前10年世代(25〜29歳)、均等法前20年世代(25〜34歳)と比べると、世代による違いは、若い世代になるほど「知識や技能を生かしたい」が希望理由として増え、「一時的についた仕事だから」は減少しているということにあらわれている。
 さらに、同じく総務省統計局「就業構造基本調査」により、転職者の前職の離職理由を均等法前10年世代(昭和57年の25〜34歳層)、均等法世代(平成4年の25〜29歳層)、均等法後10年世代(平成14年の25〜34歳層)についてみてみると、3つの世代を通じて、「結婚のため」を理由とする転職者の割合はほとんど変わらないが、平成14年では、「育児のため」に転職した者の割合が10.3%と昭和57年の4.9%、平成4年の2.8%と比べて大きく上昇している。後に述べるが、若い世代は三世代同居率が低く、親の援助が昔の世代ほど期待できないことや、継続就業が増加していることから、離職し専業主婦となることではなく、転職により、仕事と家庭の両立を図ろうとしていることが伺える。また、「定年又は雇用契約の満了のため」に転職した者の割合も、平成14年には増えており、有期契約や派遣労働者として働く者が増えていることが、ここからも伺われる。
 この他、近年の特徴として、正規就業者から非正規就業者へ転職後の雇用形態を替えるケースが増加しており、過去5年間に正規就業者から転職した女性のうち54.7%(男性25.0%)が非正規就業者に転換している。
 転職入職者の一般・パート別割合をコーホートでみてみると、パートタイム労働者は、若い世代ほどその割合が高く、いずれの世代も年齢が高まるにつれてその割合が上昇する傾向にある。
 先に、均等法後10年世代が均等法世代ほど同一企業での継続就業をしていない背景に転職の上昇があることを指摘したが、その層は、転職後の就業形態としてパートタイム比率が高いことに留意する必要があろう。
 (2)女性の就業と結婚、育児
 (結婚、育児による負担の増加)
 近年婚姻率が低下し、平均初婚年齢は男女ともに上昇している。国勢調査を用いて有配偶者割合、すなわち、既婚者割合についてコーホートでみても、若い世代ほどその割合が低くなっている。
 こうした晩婚化に伴い、第1子の平均出産年齢も上昇傾向にあり、昭和41年には第1子の平均出産年齢は25.7歳であったが、昭和51年には25.9歳、均等法が施行された昭和61年には26.8歳となり、均等法後10年世代が就職した平成8年には27.6歳となっている。
 このように、若い世代において、既婚者割合は前の世代より低いという状況があるが、結婚した者の婚姻後の生活にはどのような変化が生じているであろうか。最近の調査では、結婚前後の生活の変化として、男女とも多くの者が回答をしているのが「人間的に成長する」、「精神的な安らぎを感じられるようになる」であるが、女性についてはこれらの事項に加えて「自由な時間が減る」や「家事の負担が増える」をあげる者が多い。また、子ができた後については概して女性の方が男性よりもそうであると回答した者の割合が高くなっているが、「人間的に成長する」、「自由な時間が減る」、「家事の負担が増える」が多くなっている。
 (若い世代ほど進む夫の育児への参加)
 男性の家事、育児の分担はあまり進まず、その多くは女性が担っているといわれているが、世代別に有業者の男性についてみると、若い世代ほど若干ではあるが、どの年齢の時点をとっても家事関連時間は増えている。また、いずれの世代も最近時点になるほど、概ね家事関連時間は増えている。
 また、有業の父親の育児、家事行動者率(15歳以上人口に占める行動者数の割合)を年齢別にみても、最近時点の調査ほど、同じ年齢でも各々の値は上昇しており、若い世代ほど年齢にかかわらず家事や育児に参加していることが伺える。特に、育児行動者率については、子育て期と考えられる25〜29歳層、30〜39歳層についてみると、昭和61年にはそれぞれ3.0、4.0であったのが、平成13年には5.5、8.7とかなりの上昇が見られる (第2-15図)
 (親との同居の世帯構成が多い均等法前世代)
 総務省統計局「就業構造基本調査」により、子を有する世帯において、妻がフルタイムで働く世帯、パート・アルバイトで働く世帯、無業である世帯の「夫婦と子と親」の世帯割合と「夫婦と子」の世帯割合の状況を子供が小さい場合が多い25〜34歳時点で年代別にみると、いずれの世代も、妻がフルタイムで働いている世帯において、妻がパート・アルバイト、無業である世帯よりも、「夫婦と子と親」世帯の割合が高く、妻がフルタイムで働く上で親の援助が期待されていることが伺われる。特に、均等法前10 年世代においては、「夫婦と子と親世帯」の割合は 42.6 %と4割以上となっており、この時代には均等法はもとより育児休業も法制化されておらず、親の援助を得つつフルタイムでの就業継続を行っていたものが多かったとみられる。「夫婦と子と親世帯」割合と「夫婦と子世帯」割合の差をみると、若い世代ほど「夫婦と子と親世帯」の割合が低くなり、その一方で、「夫婦と子世帯」の割合が高くなっており、このように、若い世代においては総体的に親の援助が得られにくい世帯構成となりつつある (第2-16図)
 こうした状況は、親との同居でなくても育児をしながら就業継続が可能な環境が整いつつあるとの見方も可能であろうが、平成12年(財)女性労働協会「育児・介護を行う労働者の生活と就業の実態に関する調査」において、子供が病気の時の対応として最も多いのは「親、兄弟姉妹など親族に見てもらう」(子供と配偶者の場合72.2%)であることからも、現在でもなお、親等が頼りにされていることには変わりはないことがわかる。
 (家族から保育施設へシフトする若い世代の子育て)
 均等法が施行された時期に就職した世代については、第1子出産の時に育児休業法(同法の施行は平成4年4月1日、全事業所への適用は平成7年4月1日)による育児休業が適用されていなかった者もいるが、概ね均等法後10年世代が第1子出産の際には、育児休業が全事業所で適用されていたことになる。
 そこでまず、女性の育児休業取得率をみると、平成5年は48.1%(事業所規模30人以上で育児休業規定のある事業所における割合)であったのが、平成14年は64.0%(事業所規模5人以上。事業所規模30人以上で育児休業規定のある事業所における割合は73.7%)と上昇している。均等法世代については、このような制度の利用により両立を図った者は少なくないとみられる。一方、男性の育児休業取得率は低水準にとどまっており、平成14年で5人以上事業所規模で0.33%にとどまっている。
 (財)女性労働協会(平成11年3月までは(財)婦人少年協会)が実施した「幼児期の子の母親の生活と就業の実態に関する調査」(平成6年)と「育児・介護を行う労働者の生活と就業の実態等に関する調査」(平成12年)により、小学校入学前の子供のため、一番長い時間子どもを預けている預け先を調査しているが、これによれば、平成6年から12年にかけて、親等親族に預ける者の割合が低下する一方、保育施設に預ける者の割合が上昇していたことから、均等法世代と均等法後10年世代の間でも、親等に頼る度合いが低下していることが伺われる。
 (3)女性の就業と介護
 (男女とも介護のために仕事にでられないこと想定)
 経済企画庁「国民生活選好度調査」(平成8年)によれば、「女性が働き続けることを困難にしたり障害になること」として「育児」と回答した者は76.3%と最も高く、次いで「老人や病人の世話」をあげる者の割合が高かった(53.8%)。また、平成14年の内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」によれば、20歳以上の無職の者が「働いていない理由」として、「親や病気の家族の世話をするため」と回答した者は女性9.0%、男性1.9%となっており、平成4年「男女平等に関する世論調査」(女性7.4%、男性0.4%)に比べてその割合は高まっている。
 次に、内閣府の「高齢者介護に関する世論調査」(平成15年7月)によれば、「家族に介護が必要になった場合に、どのようなことに困るか」について「仕事に出られない、仕事を辞めなければならないこと」とする者は男性26.8%、女性32.5%で、年齢階級別割合をみてみると、30代(均等法世代)、40代(均等法前10年世代)、50代(均等法前20年世代)とも男女に大きな差はなく、実際には女性が家族の介護を行う割合が高い現実と異なり、男性も介護のために仕事を休まなければならない、あるいは辞めなければならない場合を想定していることが伺える。
 (介護を理由とした離職は少ないが現実に離職する者の割合が高いのは女性)
 平成14年に介護を理由として離職した者の割合は男性0.1%、女性1.1%であるが、年齢階級別にみてみると、30代(均等法世代)、40代(均等法前10年世代)、50代(均等法前20年世代)で男女に若干差があり、女性は2.0%、2.4%、1.4%で、男性は0.4%、0.6%、0.6%となっており、女性の方が介護を理由として離職する者の割合が高い。

3 均等取扱いの状況と変化について
 (1)雇用管理の見直しの動向
 (企業の女性の雇用管理に関する考え方の変化)
 均等法は昭和61年に施行されているが、平成11年に改正均等法が施行されるまでは、募集・採用及び配置、昇進・昇格は事業主に対する努力義務規定とされていた。しかし、均等法施行を機にこれら努力義務とされた事項も含めて男女の区別なく能力や適性に応じて取り扱う企業が増えるなど雇用管理の状況は均等法施行前と比べて進展した。
 企業の女性の雇用管理に関する考え方の変化を年代別に追ってみることとするが、均等法前10年世代が就職した頃にあたる昭和52年の労働省「女子労働者の雇用管理に関する調査」によれば、女性の活用方針として最も多いのは「女子は補助的な分野で活用を図っていく」(40.0%)で、次いで、「女子の活用は特定の業務範囲のみ(35.7%)となっており、「女子に教育訓練や昇進の機会を与えて積極的活用を図っていく」は16.0%にとどまっていた。この傾向は昭和56年に実施された調査結果をみてもほとんど変化はなかったが、均等法施行の昭和61年に実施された調査結果をみると、女性の活用方針として「法施行前から男女区別なく扱う方針できており、今後もその方針で行く」が61.0%と最も多くなっている。
 また、女性の活用にあたっての問題点としては「女子の勤続年数が平均的に短い」(51.1%)を5割以上の企業が挙げていた (第2-17図)。実際、調査が行われた昭和56年当時の女性の平均勤続年数をみると6.2年となっており、均等法前20年世代が就職した頃の昭和41年の4.0年に比べて長くなったとはいえ、男性が11.0年であったのと比べ大きく乖離していた(勤続年数についてはその後伸長し、平成15年では9.0年、男性との差は4.5年となっている) (第2-18図)
 その後の均等法施行後10年世代が就職した頃の調査である平成7年「女子雇用管理基本調査」においても、女性の活用にあたっての問題点として多くあげられたのは「女性の勤続年数が平均的に短い」(46.6%)等であったが、同時に女性の能力活用のための取組が必要とする企業も66.4%と6割以上の企業がその必要性を認識している。
 なお、改正均等法においてポジティブ・アクション(過去の雇用慣行や性別役割分担意識などが原因で男女間に事実上生じている格差の解消を目的として行う措置)の規定が設けられたところ、平成12年度の調査によればこの措置に既に取り組んでいる企業は26.3%、今後取り組むこととしている企業は13.0%であり、特に5,000人以上規模企業では67.7%が既にポジティブ・アクションに取り組んでいると回答している。
 (世代により異なった新規学卒の就職活動時における募集・採用条件)
 均等法前10年世代の頃の募集・採用に係る雇用管理を労働省「女子労働者の雇用管理に関する調査」(昭和52年)でみると、採用を予定する企業のうち例えば4年生大卒の場合、企業の57.2%は男性のみの採用方針であり、男女とも採用する方針の企業は42.6%にとどまっていた。
 また、男女とも採用する企業についても採用条件について異なる企業割合は大卒では34.8%、高卒で29.4%にのぼり、その内容として多いのは「資格、技能、条件が男女で異なる」で大卒、高卒それぞれ25.9%、22.9%であった。こうした傾向は均等法施行前の昭和59年の調査にもおいても基調としてあまり変わっていない。
 しかし、均等法が施行された昭和61年の調査によると、新規学卒について高卒では12.8%の企業が、また大卒では27.0%の企業が募集、採用について女子に不利な条件の見直しを図っている。
 さらに均等法後10年世代が就職活動をした時期にほぼ重なる平成7年の「女性雇用管理基本調査」によれば新規学卒者の募集状況については大卒事務・営業系で69.7%の企業が「いずれの職種・コースとも男女とも募集した」と回答しており技術系では56.3%となっている。また、高卒については「いずれの職種、コースとも男女とも募集した」と回答した企業割合は、事務・営業系、技能系でそれぞれ50.4%、44.5%であった。ただ、結果としての採用については大卒事務・営業系は55.1%、技術系の37.0%、高卒事務・営業系の43.3%、技術系の35.0%が「いずれの職種・コースとも男女とも採用した」と回答し、「男性のみ採用の職種・コースあり」としたのは、それぞれ36.2%、61.7%、13.6%、58.1%となっている。
 その後改正均等法が施行され、女性保護規定の見直しにより女性の就業制限が緩和されるとともに、募集・採用について男女に均等な機会付与が義務づけられている。
 (職域は拡大傾向)
 均等法前10年世代とともに均等法前20年世代も適用されていたと思われる配置に係る雇用管理の状況を昭和52年の労働省「女子労働者の雇用管理に関する調査」からみると、女性を配置しない職種又は部門があるとした企業は91.5%となっていた。その後均等法施行直前の昭和59年にはこれが63.0%と低下している。
 均等法世代が就職した直後の平成元年の調査においては、具体的な職務区分ごとに配置状況を聞いているが、女性を配置していない企業割合が大きい職務区分としては「研究・開発」(61.2%)、「営業」(53.6%)、「企画・調査」(49.7%)、「人事・教育訓練」(47.7%)、「広報」(44.4%)等であり、少ないのは「総務・経理」(3.5%)であった。
 しかし、均等法後10年世代が就職した頃の雇用管理の状況を示す平成7年の調査によれば、いずれも状況はさらに改善していた。特に従前、女性が配置されることの少なかった営業職に女性を配置していない企業割合はこの間に12.6%ポイントも変化をし41.0%になるなど、女性の配置が進みつつある。
 なお、平成12年調査でも営業職についてはさらに改善がみられたが、女性の配置が遅れた営業職について男女とも配置している企業割合の推移を企業規模別にみると、いずれの規模についても増加しており、特に企業規模5,000人以上では99.0%の企業が営業職に男女とも配置していた (第2-19図)
 (昇進機会に影響していた募集・採用の条件)
 均等法前20年世代が就職後において当時適用されていたと思われる昇進・昇格に係る雇用管理の状況を昭和46年に実施した労働省「女子労働者の雇用管理に関する調査」からみると、役付への昇進の機会が女性にもある事業所割合は59.2%、ない事業所割合は32.9%、資格昇進の機会について女性にもある事業所割合は54.5%、女性にはない事業所割合は16.8%であった。そして女性の役付は係長以上で役職者総数の3.0%、女性労働者に占める割合はわずか0.4%にとどまっていた。
 これが均等法前10年世代が就職した頃の状況を先と同様、昭和52年「女子労働者の雇用管理に関する調査」からみると、状況の改善はあまり見られず、役職への昇進の機会がある企業割合は47.7%、ない企業は52.3%であり、女性に昇進の機会がない企業ではその理由として「女子の補助的業務の性格から無理」が60.1%と最も多く、以下「女子は勤続年数が短い」(47.3%)、「女子は管理能力・統率力が劣る」(12.7%)、「女子には法律上の制約がある」(7.5%)となっていた。結局、募集・採用条件の男女間の相違が女性の昇進の機会を制限する主な理由となっていた。なお、実際に女性の役職者がいる企業は全企業の35.2%であった (第2-20図)
 その後の均等法施行直前の昭和59年の調査でも「女子に対して役付手当、管理職手当等が支給される役職への昇進の機会」がある企業は56.3%、ない企業は43.7%とあまり改善はみられず、その理由も同様の傾向であったが、昭和61年の調査結果では、女性の昇進の機会、昇進可能な範囲を4.8%の企業が変更し、11.5%の企業が検討を行っているとされていた。また、昭和59年調査によれば、実際に役職についている女性がいる企業は全企業の37.3%と昭和52年調査結果よりは若干増加していた (第2-20図)
 均等法後10年世代に相当する者が就職をした頃の状況を示す平成7年調査によれば、係長以上の女性管理職を有する企業割合は58.5%で、かなり大きく上昇しており、均等法施行後10年世代が就職した頃には女性の管理職がいる企業は10社のうち6社になっていたことをこれは示している (第2-20図)
 (教育訓練の状況)
 均等法前20年世代が就職して数年経過後の状況について、昭和46年「女子労働者の雇用管理に関する調査」によってみると、新規学卒入職者、中途採用入職者、在職労働者への教育訓練のうちいずれかの教育訓練を女性労働者に対し実施した事業所の割合は71.8%(全事業所に占める割合)であったが、その内容についてみると、「採用時の導入教育」が83.0%、「一般的な知識技能の向上のための教育」は55.4%と比較的多いものの、「リーダー等の養成、役付の再教育」については24.0%、「配置転換のための教育」については12.1%とその割合は低かった。
 また、均等法前10年世代が就職した頃の昭和52年「女子労働者の雇用管理に関する調査」によると、職場を離れて受講させる研修等職業のための教育訓練を「男女全く同じに受けさせている」企業は19.4%(教育訓練を実施している企業に占める割合は29.7%)、「女子にも受けさせるが教育訓練の種類は男子と異なる」とする企業は32.7%(同50.1%)であり、52.1%(同79.8%)の企業が女性に対して何らかの教育訓練を実施していたが、「女子には受けさせない」企業は、全企業に占める割合で13.2%(同20.2%)にものぼっていた。なお、昭和50年「女子労働者の雇用管理に関する調査」においては、女性には教育訓練を受けさせない理由を聞いているが、「男女の職種が異なるから」、「勤続年数が短いから」、「管理職養成訓練のみ行うので、該当者がいない」等の例が見られた。
 均等法施行前の昭和56年「女子労働者の雇用管理に関する調査」により教育訓練を実施している企業に占める割合で見てみると、「女子には受けさせない」企業割合は20.7%であるものの、「男女全く同じに受けさせている」企業は40.0%と改善の動きも見られる中で、均等法が施行された昭和61年の「女子労働者の雇用管理に関する調査」によれば、当該研修を実施している企業に占める割合でみると、「新入社員研修」、「管理職研修」、「業務の遂行に必要な能力を付与する研修」ともに、均等法施行に伴い何らかの変更を行った企業は1割未満であった。
 そして、均等法後10年世代が就職した頃の平成7年「女子雇用管理基本調査」によれば、教育訓練を男女とも対象で実施している企業は、「新入社員研修」、「管理職(予定を含む)研修」、「業務の遂行に必要な能力を付与する研修」について、85.4%、63.8%、77.4%と多くの企業で男女均等な取扱いが行われるようになっている。
 (定年、退職、解雇の状況)
 定年、退職、解雇の状況は均等法前10年世代から均等法世代にかけて、女性の雇用管理が大きく変化した事項である。
 均等法前20年世代が就職した当時には、女性に対して結婚退職制、妊娠、出産退職制や若年退職制を有する企業が1割程度存在し、これは均等法前10年世代が就職した頃になっても大きく変わることはなく、昭和52年調査によれば、結婚、妊娠、出産退職制等女性のみに適用される退職制度がある企業は7.4%、男女別定年制についても22.7%の企業が実施していた。男女別に定めている理由としては「一般的に行われていることだから」(46.1%)、「男女の体力差による」(33.8%)、「女性の就いている業務の特殊性による」(20.5%)、「男女の能力差による」(17.7%)があげられていた。
 しかし、昭和56年調査によれば女性のみに適用される退職制度がある企業は2.0%になっている (第2-21図)
 均等法の施行とともにこれらの制度・慣行は禁止され、女性の勤続年数の伸長にも影響したとみられる。
 (コース別雇用管理の導入状況)
 均等法の施行とともに一部の企業において導入されたといわれているコース別雇用管理の状況について初めて調査した平成元年「女子雇用管理基本調査」によれば、コース別雇用管理制度を導入している企業は2.9%に過ぎなかったが、その後、徐々に導入が進み、均等法後10年世代が就職した頃にあたる平成7年には導入割合が4.7%、平成12年度においては7.1%となっている。しかし、大規模企業の導入割合が大きいという基本構造に変化はないものの、平成12年の調査結果においては300人以上規模企業でいずれも導入企業割合が低下している状況もみられている。
 (2)女性の側の意識面でみた変化
 (昇進・昇格にかかる意識の高まり)
 内閣府「男女共同参画に関する世論調査」等で職場における平等感について、均等法施行前の昭和54年調査と最近時点の平成14年調査を比較すると、「職場で女性は不当に差別されている」と回答した女性の割合は50歳台を除きいずれも低下している。特に平成14年調査の20歳台においては11.1%と昭和54年調査の19.4%から大きく低下しており、雇用管理改善が進んだ最近時点に就職した若い世代を中心に差別感が薄らいでいることが伺われる (第2-22図)
 ちなみに同じ調査の昭和47年、54年、62年及び平成14年のデータを用いて「職場で女性は不当に差別されているか」という項目についての回答状況をコーホートでみると、20〜29歳時点で「差別されている」と回答した女性の割合は均等法前20年世代(昭和47年調査)が21.3%、均等法前10年世代(昭和54年調査)は19.4%、均等法世代(昭和62年調査)が13.5%、均等法後10年世代(平成14年調査)が11.1%と若い世代ほど低くなっている。
 (財)社会経済生産性本部「働くことの意識」によれば、新入社員がどのポストまで昇進したいかについて、社長、重役、部長、課長のそれぞれについて尋ねた結果をみると、均等法前10年世代が入社した昭和51年、均等法世代の昭和61年、均等法後10年世代の平成8年、そして最近の世代の平成15年のそれぞれで役職につきたいと思う女性社員の割合が高まっていることがわかる (第2-23図)
 ただし、若い世代についても昨年の「働く女性の実情」で指摘したように、企業内での配置や割り振られている仕事の内容について、業務の習熟度が高くなるほど男女とも就いている事業所の割合は低いという調査結果もあり、また、女性の側から見ても、コース別雇用管理制度の下で総合職として働く女性の6割が男性総合職と比べて昇進、仕事の与え方などの人事管理面で差があると感じている等問題も残っている。
 上記に関連して、実際に管理職になった女性に対して実施された調査である「管理職のキャリア形成についてのアンケート」結果((財)21世紀職業財団が平成15年1月に実施)によれば、管理職になった女性は、優れた職務遂行能力を身につけるのに最も重要な要因は「仕事上の経験」としており、また、女性管理職としての悩みとしては「仕事の量」(19.3%)や「仕事の質」(17.7%)が男性同様高くなっているが(男性はそれぞれ19.1%、18.4%)、「仕事と個人生活の両立」(女性17.1%、男性7.6%)及び「将来のキャリア昇進・昇格」(女性11.7%、男性8.2%)で男女差が大きくなっているとの結果となっている。
 これらのことは、昇進意欲が高まっている若い世代が現実に管理職になる上で、仕事上の経験を積むことが重要であり女性に特有の課題として仕事と家庭の両立の問題と企業の女性の活躍推進に係る姿勢があることを示していると思われる。
 (3)管理職の増加
 (高まりつつある管理職の中の女性比率)
 役職者に占める女性の割合の推移を総務省統計局「労働力調査」及び厚生労働省「賃金構造基本統計調査」からみると管理的職業従事者の割合は年々上昇しており、均等法施行後18年目になる平成15年には9.9%と均等法前20年世代が就職した昭和41年の4.2%の2倍以上の値となっており、役職別にもそれぞれのレベルで上昇が見られる。
 これを年代別にみると、係長の中の女性比率をプロットしたカーブは若い世代ほど高い値に位置しており、若い世代ほど同じ年齢でも係長の女性割合が高い傾向にあることを示している。これは男女均等な条件で採用や配置が行われ、昇進につながるようになってきていることを意味するものと考えられる。また、均等法前20年世代をみると、この世代は、38〜42歳層の時に均等法が施行された昭和61年を迎えているが、それ以降係長に占める女性割合を示すカーブがやや急になっている。同様の傾向は、これは均等法前10年世代についてもみられる。しかし、均等法前20年世代についてみると、この世代の女性労働者割合は年齢が高くなっても20%程度と安定的であり、40〜44歳層以上については均等法前10年世代よりもむしろ女性労働者割合は高くなっているのにもかかわらず、女性係長比率について均等法前10年世代を上回ることはない。このことから、均等法施行後、管理職の女性割合は高まったものの、後の世代の割合を上回るほどまでの改善はなされなかったことが読みとれる。
 他方、均等法前20年世代及び均等法前10年世代については最近時点になるほど、女性の係長割合が高まる傾向がみられたが、均等法世代については女性労働者比率自体の変動もあり、30〜34歳層よりも35〜39歳層の方が女性の係長割合は低くなっている。すなわち、ここで用いたデータ上、均等法世代については女性労働者比率は25〜29歳層、30〜34歳層、35〜39歳層と年齢が高くなるにつれ低下しており、係長の女性比率もこれに伴い低下しているものとみられる。
 課長についても、係長ほど明確ではないものの課長の中の女性比率をプロットしたカーブはやはり若い世代ほど高い値に位置しており、同じ年齢層でも若い世代ほど課長の中に占める女性の割合は高い。また、係長女性比率同様、均等法前20年世代や均等法前10年世代の課長女性比率は均等法が施行された年齢以降、やや上昇率が高まっている (第2-24図)
 (労働者に占める管理職比率も若いほど高い傾向)
 性別・世代別に、労働者に占める管理職割合を係長、課長のそれぞれについてみると、男性については係長の割合は35〜39歳層をピーク(約15%)に、また課長は45〜49歳層をピーク(約18%)とする山形になっており、世代による相違はほとんどみられない。
 一方、女性については男性と比べ数値自体が低いという特徴とともに、年齢を追うごとになお役職につく者の割合は高まる面も残しており、さらに、世代間による差が大きいという特徴がある。また、世代による差は、先ほどの役職の中の女性割合と同様、若い世代ほど係長、又は課長割合をプロットしたカーブは上方移動していることにより示されており、世代別に見て同じ年齢における係長、課長割合は若い世代ほど高い。
 このほか、特に均等法前10年世代については均等法が施行された昭和61年以降、特に係長割合が急上昇しており、均等法施行より前に就職した世代についても係長登用が積極的に行われたことが伺われる。
 そして同様のことは課長についてもみられ、男性とは異なり、また係長とは異なり年齢を追うにつれなお役職に就く者の割合は上昇し続けており、また、世代による差も残る結果となっている (第2-25図)
 以上から、〈1〉均等法前に就職した女性についても均等法後改善がなされたこと、〈2〉しかし、これらの女性はそれまでの配置、職務経験の差などにより若い世代より後れをとった状態となっているとみられる。
 (ポジティブ・アクションと女性の活躍)
 女性雇用管理基本調査により産業別に女性管理職比率とポジティブ・アクションの取組企業比率の関係をみてみると、係長については、ポジティブ・アクションに取り組んでいる企業ほど女性係長比率が高いことがわかる (第2-26図)
 なお、平成15年度から(財)21世紀職業財団が実施しているベンチマーク事業(「女性の活躍推進状況診断表」への記入を通じ、同業他社と比較した個々の企業の女性の活躍状況や取組内容について診断するもの)を通じて得られた情報によれば、女性の活躍が進んでいると診断された企業で「取り組んでよかった」と回答した取組内容をみると、例えば「職域拡大」の項目については「これまで女性従業員が就業していなかった職域へ新たに女性従業員を配置する際に女性従業員の受け入れ経験の少ない管理職に対する研修等を実施している」であり、また、「登用」の項目については「昇進・昇格試験がある場合には試験に関する情報を全ての該当従業員に知らせている」であった。
 (4)賃金格差の改善
 (管理職の賃金格差は小さい)
 一般労働者についての男女間の賃金格差をコーホートでみてみると、若い世代ほど格差が縮小している傾向にある。規模別でも同じ傾向であるが、規模が大きいほど世代間格差は小さいが、1,000人以上規模の企業では均等法前10年世代から賃金格差改善の動きは停滞している。
 職種別(製造業の生産労働者、管理・事務・技術労働者)にみてみると、若い世代ほど賃金格差が縮小しており、また、生産労働者の賃金格差の方が大きい。産業別についても、若い世代ほど賃金格差が縮小しており、特に製造業についての縮小が顕著である。金融・保険業では男女間格差が拡大する傾向にあるが、世代によっても格差縮小の傾向が見られず、むしろ若い世代の方が格差が大きいという点が特徴的である。
 係長、課長の男女間賃金格差は、労働者全体の格差より低い水準にあり、高い年齢層でも格差は大きく広がっていない。世代別にみると、均等法世代まで格差は徐々に縮小しているが、均等法後10年世代では停滞している (第2-27図)

4 まとめ
 今年は男女雇用機会均等法が制定されて20年目に当たる。男女雇用機会均等法制定以降の女性雇用を巡る環境変化は、法制度の整備を含め、それ以前の20年とは比べようがないほど急ピッチで進んだ。
 そうした急激な変化は、女性に等しく影響を与えたというよりも、世代別には異なるものがあったのかもしれない。特に女性は男性に比べて出産、育児等から就労面で影響を受けやすく、どの時期にどのようなライフステージにあったのかということがその後の働き方にも尾を引く可能性がある。
 今回はそのような問題意識から男女雇用機会均等法制定の年を念頭に、男性との比較を交えながら世代別に女性の就労の状況、意識の変化や違いを追ってみた。
 まず、均等法世代以降の若い世代の女性に特徴的であるのは、職場における男性との差が縮小し、差別されていると感じる者の割合も低くなっているという均等面での進展の評価と、仕事に対する積極的な意識の高まりである。特に、後者については、若年層の男性は就労意欲がやや低下しつつある中で、若年層の女性は就労意欲が高まっているという動きに着目したい。自らの人生において女性は仕事を益々積極的に位置づけるようになってきており、その積極性は単に就労するというのにとどまらず、昇進したいポストも高いポストとなるというように質的な面にも表れている。実際、その背景にあると思われる社会の追い風は、新規大卒については産業別、職業別のいずれをみても就職先の男女差が縮小していることからもみて取れよう。かつて均等法施行20年前の世代の女性の職域が学校の先生など極めて限られていたのを思えば様変わりの様相となっていると言える。
 しかし、若い世代も決して良いことばかりではなく、職場における男女均等の面についても、なお男性との差を認識する女性も少なくない。特に管理職になった女性が仕事の経験を通じて自分の職務遂行能力が高まったとしているのに対し、現在就いている仕事の内容が男性と比べ熟練度を要さない仕事であるとする女性が少なくない。男性に比べて管理職になって活躍している女性が少なく、管理職でなくても女性が就くことが少ない職域などで働く女性にとっては、目標としたり、種々相談に乗ってもらえる相手が不足しているという状況もつとに指摘されていることである。
 また、女性は就業継続に関し、育児との両立をどう図るかという課題をどのようにクリアするかは男性よりも切実である。確かに育児・介護休業法の制定や保育サービスの充実の動き等により、若い世代はこの面についても均等法施行前の世代よりも恵まれた環境にあると言える。しかし、最近の若い世代は親との同居割合が低く、親の支援を得難い世帯類型の者が多い。また、頼りとしたい親についても、親自身が定年延長等により勤務継続するようになれば、期待どおりにはならなくなるということも考えられる。
 若い世代について、もう一つ気になる点は、均等法施行前の世代とは異なり、新規学卒者として就職する若い世代の雇用形態として、パートタイムの割合が上昇しており、男性に比べても高いことである。新規学卒者がパートタイムという雇用形態で働くことそのものを問題視するものではないが、現在のところ、フルタイム労働者と比べパートタイム労働者の処遇は一般的には低く、教育訓練もフルタイム労働者のようには体系立てて行われることは少ない。OJT、OFF−JTを通じ職務遂行能力の基礎固めが必要な時期に、充分な教育訓練を得られないことになれば、彼らのその後にどのように影響するのか、その後のキャリア、職業生活の送り方に制約条件となるのではないか、新たな男女格差につながるのではないかが気になるところである。
 一方、均等法施行前の世代についても、法施行後、均等面での進展はみられている。例えば、均等法世代や施行後の世代と同様、昇進し、管理職になる者の割合も特に均等法施行後、着実に増えている。均等法施行前20年世代からすれば、彼女たちが就職した頃には、女性の管理職がいるどころか、女性に対してのみ適用される結婚、出産退職制・慣行や男女別定年制・慣行が1割近くの企業で行われていた。また、女性に対する雇用管理の方針として「女性は補助的な分野のみ」「特定の業務範囲のみ」が一般的であったり、「一般的に女性は企業が求める職業能力・意欲を備えていない」とされていた等、多くの点で雇用管理が男女別であったことから、最も変化を実感している年代であろう。
 意識面においても、これらの世代を含め、職場で不当に差別されていると感じる者の割合は低下している。しかし、最近時点の調査では、均等法前20年世代に相当する50〜59歳層について、差別されていると感じる者の割合が均等法施行前の昭和54年時点の50〜59歳より高いことは注意を要する。コーホートによる分析結果でも、係長や課長の女性割合は均等法施行前の世代を含め均等法施行後上昇が見られたが、それでも均等法後に就職した世代よりは年齢が高くなってようやく同じ割合であり、それまでの職務上の経験の差などが影響しているとしても、世代間の差は残ったままである。
 加えてこれらの世代については、再就職した者はパートタイム労働者が多く、処遇面でフルタイム労働者に比べ低い状態で働く者が少なくなく、老親等の介護の問題が就業に影響を与えるかもしれないという不安も抱えている。
 以上から、次のような課題が見えてくる。
 一つは、若い世代の意欲的な姿勢を活かしていくため、均等の確保の徹底とあわせて、ポジティブ・アクションに積極的に取り組むことが望まれるということである。また、特に均等法施行前の世代においてなかなか解消していない、過去の雇用管理の経緯から生じている格差を縮小するため、この年代層に対してはポジティブ・アクションについて特段の配慮がなされるべきであろう。
 二つ目としては、若い世代については、これまでの世代とは異なり、家族の支援が得られにくい環境で仕事と家庭の両立を図らなければならない状況をも理解しつつ、子供が病気等いざという場合のバックアップをどう図るかということも含め、例えば看護休暇の制度化等も含めた育児と仕事との両立支援策の充実が求められるということである。最近の若い世代においては夫の育児への参加が増えつつあるという面もあり、男性を含めた働き方の見直しが一層図られることが必要である。昨年7月に成立した次世代育成支援対策推進法に基づき、企業等が策定・実施を求められている一般事業主行動計画づくりがこうした観点も含めてなされることが期待される。
 三つ目としては、パートタイム労働者とフルタイム労働者の処遇の均衡の推進である。特に若い世代のうち、新規学卒でパートタイム労働で就職した層については、企業においても教育訓練の機会を積極的に提供していく、または自ら教育訓練を受けたいとする労働者に対し配慮することが期待される。また、働く側も、自らの職業能力を高めるため、将来のキャリアを考えながら自ら積極的にその実現に向けて努力することが求められよう。
 今や女性の活躍で知られる北欧諸国も昔からそうであったのはなく、これらの諸国において今日の状況に至ったのは人手不足という経済的要因による部分も大きいと言われている。いわば経済的状況を背景に女性の力が発揮できる社会づくりが進められてきたというのである。翻って日本の状況をみるに、日本の女性の労働力率水準は他の先進諸国と比べて必ずしも高くなく、その年齢階級別形状も他の諸国ではみられないM字のままである。しかし、仮に現在M字型になっている年齢別労働力率のM字が解消されれば112万人、そして潜在的に就業希望がある女性の就業が実現されれば815万人の労働者が確保されることになる。また、そうした状況が、女性労働者が差別されることなく意欲と能力を十分発揮できるという状況で実現できれば、女性労働者は少子高齢社会の担い手として力強い存在となるはずである。就業意欲が上昇している女性の能力が十分発揮される社会を実現することは少子高齢社会の担い手の確保という面からも、また、経済の活性化という面からも重要な課題であり対策の強化が急がれる。


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