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「平成15年版 働く女性の実情」のあらまし

厚生労働省 雇用均等・児童家庭局
I 働く女性の状況(平成15年)
 M字型カーブの底の30〜34歳層の労働力率は引き続き6割を超えた。また、既婚者の労働力率は25〜29歳層で上昇(第1図、本文第1-1図)。
 女性の就業者数は6年ぶりに増加。失業者、失業率ともに13年ぶりに低下。
 雇用者総数に占める女性割合は引き続き上昇し40.8%(前年40.5%)。
 女性の平均勤続年数は9.0年(男性13.5年)と前年に比べ0.2年伸びた。
 大卒技術系の女性の初任給が男性を100として100.1と初めて男性を上回った。
 女性雇用者に占める短時間雇用者の割合が初めて4割を超え40.7%(前年39.7%)(本文第1-24図)。
 女性の一般労働者とパートタイム労働者の賃金格差は5年ぶりに縮小し65.7(第2図、本文1-25図)。

第1図  女性の年齢階級別労働力率
第1図 女性の年齢階級別労働力率
資料出所:総務省「労働力調査」(平成14、15年)
第2図  女性パートタイム労働者と女性一般労働者の賃金格差の推移
第2図 女性パートタイム労働者と女性一般労働者の賃金格差の推移
資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」


II 均等法と労働環境の変化〜世代別にみた女性の就業実態の変化〜
【 高まる若い女性の就業意欲、積極化する意識 】
 若年男性の就業意欲はやや低下しているが、若い世代の女性ほど就業意欲が高まっている(第3図、本文第2-4図)。
 女性の潜在的な就業希望が実現すれば815万人、M字型カーブが解消すれば112万人の労働力が確保される。
 理想とするライフコースが「両立」である者の割合は男女とも若い世代ほど高い。
 新入社員の意識においても世代が高まるにつれて役職に就きたいとする女性の割合は上昇している(第4図、本文第2-67図)。

第3図  女性の有業率・潜在的有業率(コーホート〈同一世代に生まれた層〉比較)
第3図 女性の有業率・潜在的有業率(コーホート〈同一世代に生まれた層〉比較)
資料出所:総務省「就業構造基本調査」(昭和52、57、62、平成4、9、14年)
第4図  どのポストまで昇進したいか (女性新入社員)
第4図 どのポストまで昇進したいか (女性新入社員)
資料出所: 社会経済生産性本部「働くことの意識」(昭和51、61、平成8、15年)
(1)均等法前20年世代  昭和41(1966)年に18〜22歳
(2)均等法前10年世代  昭和51(1976)年に18〜22歳
(3)均等法世代  昭和61(1986)年に18〜22歳
(4)均等法後10年世代  平成 8(1996)年に18〜22歳


【 就業分野等からみた特徴 】
 若い世代ほど新規大卒者の職域の男女差は、産業別、職業別ともに縮小(第5図、本文第2-17図)。
 若い世代については、新規学卒者で一般労働者として就職していない者の相当数がパートタイム労働者として就職する結果、新規学卒者のうち、パートタイム労働者として就職する者の割合は上昇。新規高卒では男女差も拡大(第6図、本文第2-24図)。

第5図  学歴別就職先の分離指数
<産業別>の図 <職業別>の図
注)  分離指数とは、産業や職業など何らかの属性について男性の分布と女性の分布を一致させるためにどの程度の割合の労働者が職を変えなければならないかを百分率で示すもので、数値が大きいほど分離度が高いことを意味し、男女の分布が完全に一致するとき0になる。

資料出所:文部科学省「学校基本調査」(昭和41、51、61、平成8、14年)から試算
第6図  パートタイム労働者として入職する学歴別新規学卒者割合
第6図 パートタイム労働者として入職する学歴別新規学卒者割合
注)  昭和51、61年については新規学卒者のうち20〜24歳を新規大卒者、19歳以下を新規高卒者として算出した。
資料出所: 厚生労働省「雇用動向調査」(昭和51、61、平成8、14年)


【 ライフスタイルからみた女性の就業の変化 】
 結婚又は出産・育児を理由に離職する均等法後10年世代の割合は、均等法世代に比べ低下(第7図、本文第2-30図)。
 均等法世代は同一企業での継続就業者割合が高いが、均等法後10年世代は転職率が高い。育児を理由に転職する者が前の世代に比べ上昇。転職後の雇用形態ではパートタイム比率が上昇。
 妻がフルタイムで働く世帯は、均等法前の世代よりも若い世代において三世代同居の割合は低く、親の援助が得られ難い世帯構成となりつつある(第8図、本文第2-47図)。

第7図  結婚又は出産・育児を理由に離職する女性割合の推移(25〜29歳時点)
第7図 結婚又は出産・育児を理由に離職する女性割合の推移(25〜29歳時点)
資料出所:厚生労働省「雇用動向調査」
第8図  子を有する世帯で妻がフルタイムのうち「夫婦と子世帯」と「夫婦と子と親世帯」割合(妻が25〜34歳時点)
第8図 子を有する世帯で妻がフルタイムのうち「夫婦と子世帯」と「夫婦と子と親世帯」割合(妻が25〜34歳時点)
資料出所: 総務省「就業構造基本調査」(昭和62、平成9、14年)


【 職場における男女均等度合いの変化 】
 企業の雇用管理についての考え方は、均等法前10年世代が就職した頃は、女性については、補助的な分野での活用、特定の業務範囲でのみとしていた企業がそれぞれ40.0%、35.7%もあり、結婚退職制等もあった(第9図、本文第2-65図)。実際の雇用管理も募集、採用、配置、昇進等において男女別雇用管理が一般的であった。
 意識調査によると、最近時点の平成14年調査では、均等法施行前の昭和54年調査と比べ職場で不当に差別されていると回答した女性の割合は若い年代層を中心に低下(第10図、本文第2-66図)。
 職域面では、均等法施行前10年世代が就職した頃の昭和52年には、女性を配置しない職域がある企業は91.5%であったのが、女性を配置していない企業割合が高かった営業職も含め、女性の配置は進んでいる。
 女性の役職がいる企業割合も上昇(第11図、本文第2-62図)。係長や課長比率は男性に比べて水準は低いものの、均等法施行後、均等法施行前の世代も含め上昇。しかし、世代間の差は残っている(第12図、本文第2-70図)。

第9図 結婚退職制等のある企業割合の推移
第9図 結婚退職制等のある企業割合の推移
資料出所: 労働省「女子労働者の雇用管理に関する調査」(昭和46、52、56年)
第10図 「職場で女性は不当に差別されている」とする女性割合
第10図 「職場で女性は不当に差別されている」とする女性割合
資料出所: 内閣府「婦人(II部)に関する調査」(昭和54年)、「男女共同参画に関する世論調査」(平成14年)
第11図 女性の役職者がいる企業割合の推移
第11図 女性の役職者がいる企業割合の推移
資料出所: 労働省「女子労働者の雇用管理に関する調査(昭和52、59年)、「女子雇用管理基本調査」(平成元、7年)、厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成12年)
第12図 女性労働者に占める女性管理職割合(コーホート)
<係長>の図 <課長>の図
資料出所: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(昭和53、58、63、平成5、10、15年)


【 まとめ 】
 若い世代の積極的な就業意欲を活かすために、均等確保徹底とポジティブ・アクションの実施が求められる。また、ポジティブ・アクションについては、均等法施行前の世代に特段の配慮がなされるべき。
 若い世代は、親の援助が得られにくい世帯類型であることをも踏まえ、仕事と育児との両立支援策の充実が図られるべき。男性を含めた働き方の見直しが一層図られることも必要。
 パートタイム労働者とフルタイム労働者の処遇の均衡の一層の推進が必要。
 就業意欲が高まっている女性の能力が充分発揮される社会の実現は、少子高齢社会の担い手の確保のためにも重要な課題。


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