会長ご挨拶

ごあいさつ

中央労働委員会会長 荒木尚志
中央労働委員会会長
あらき  たかし
荒木 尚志

 第38期中央労働委員会の会長を務めております荒木尚志です。

 中央労働委員会は、国家行政組織法第3条第2項に基づいて、厚生労働大臣の所轄の下に設置されている委員会(厚生労働省の外局)です。その任務は、労働者が団結することを擁護し、労働関係の公正な調整を図ることです(労働組合法(以下「労組法」といいます。)第19条の2第2項)。

 このような任務の前提として、憲法第28条の団結権等の保障を実効的なものとするために労働組合や労働者に対する使用者の一定の行為が不当労働行為として禁止(労組法第7条)されています。不当労働行為があったと都道府県労働委員会に救済申立てがあった場合、申立てのあった都道府県労働委員会は事実関係を調査し、認定した事実に基づいて救済命令を発し、又は申立てを棄却します(不当労働行為事件の審査)。中央労働委員会は、都道府県労働委員会の処理した不当労働行為事件について、当事者から再審査の申立てがあった場合に再審査を行っています。

 また、労働組合と使用者との間で労働関係上の事項に関する主張の不一致が原因で紛争が生じ、労使当事者の一方又は双方から労働委員会に紛争の調整を求められた場合に、当事者間を取り持つなどして事件が解決するよう努めています(労働争議の調整。あっせん・調停・仲裁の3種類あり。)。中央労働委員会は複数の都道府県にわたる事件又は全国的に重要と認めた事件を扱っています。

 さらに、都道府県労働委員会では、都道府県知事の委任を受けて個々の労働者と使用者との間の紛争(個別労働関係紛争)の解決も行っています。中央労働委員会は、都道府県労働委員会に対し必要な情報提供、助言・指導を行っています。

 中央労働委員会及び都道府県労働委員会は、公益委員、労働者委員、使用者委員の三者によって構成される機関です(労組法第19条)。不当労働行為事件の審査において、公益委員は調査・審問を指揮しますが、労使紛争の円満な解決のため、労使委員と協力して当事者の意向を把握して和解の可能性を探るなど公労使三者委員が一体となって当事者と意思疎通を図り、事件の解決に努めています。労働争議の調整事件や個別労働関係紛争事件でも同様です。労働委員会の特質は、この三者構成に体現されています。

 中央労働委員会としても、このような特質を活かし、労使関係の専門的な紛争解決機関として労使紛争の迅速で的確かつ公正な解決を導き、もって安定した労使関係の構築を図るという任務を果たしていけるよう、尽力していく所存です。

 ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

中央労働委員会会長 荒木 尚志

略歴

昭和 34年 5月生    
  58年 3月      東京大学法学部卒業
  60年 3月      同   大学院法学政治学研究科修士課程修了
    4月      同   法学部助手
  63年 7月      同   法学部助教授
平成 4年 11月      同 大学院法学政治学研究科博士(法学)授与
  13年 9月      同   大学院法学政治学研究科教授
  14年 9月      東京都労働委員会公益委員(平成25年8月まで)
  23年 1月      東京大学大学院法曹養成専攻長(平成24年3月まで)
  24年 2月      東京都労働委員会会長(平成25年8月まで)
  29年 2月      中央労働委員会公益委員(非常勤)(令和5年2月まで)
  29年 4月      労働政策審議会労働条件分科会公益委員(会長)
令和 7年 2月      中央労働委員会会長
このページのトップへ