労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和5年(不)第24号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y1会社・Y2会社 
命令年月日  令和6年2月2日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、Y1会社及びY2会社(併せて「会社ら」)が、組合員5名に対し、加入している組織からの脱退を勧告する旨記載した「勧告書」を示し、組合からの脱退を勧奨したことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である(Y1会社の全就労者はY2会社から出向しており、このほかにY2会社に従業員はいない)。
 大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社らに対し、文書交付を命じた。 
命令主文  1 Y1会社は、X組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
 年 月 日
X組合
 執行委員長 A1様
Y1会社     
代表取締役 B
 当社が、令和5年4月12日及び同月13日に貴組合員5名に対し、貴組合からの脱退を勧奨したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

2 Y2会社は、X組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
 年 月 日
X組合
 執行委員長 A1様
Y2会社     
代表取締役 B
 当社が、令和5年4月12日及び同月13日に貴組合員5名に対し、貴組合からの脱退を勧奨したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  1 Y1会社常務取締役(当時)兼Y2会社代表取締役である社長Bが、令和5年4月12日に組合員A2に対し、また同月13日に組合員A3、組合員A4、組合員A5及び副分会長A6に対し、それぞれ、組合員らが加入している組織からの脱退を勧告する旨記載された会社ら連名の勧告書(以下「本件勧告書」)〔注1〕を提示し、会社はC協同組合〔注2〕から仕事をもらっている、これからのことを自分なりに考えるように、などと述べたことが認められる。
 そして、本件勧告書に記載された「貴殿が加入している組織」が組合を指し、また社長Bの上記行為が組合からの脱退を勧奨するものであったことについて、当事者間に争いはない。

〔注1〕本件勧告書の要旨
「令和5年4月4日、当社が加盟するC協同組合にてコンプライアンス委員会が開催され、貴殿が加入している組織は法令や社会的ルールを守ることができない組織であると再認識されたことを受け、当該組織に属する人物を雇用し続けることは当社とC組合で締結済みの契約『反社会的組織の排除』に違反する状況であるとの答申が出されました。
 よって、当社は貴殿に対し、貴殿が加入している組織から脱退することを勧告致します。」

〔注2〕生コンクリートの共同販売を事業目的として中小企業等協同組合法に基づき設立された協同組合(Y1会社は加盟し、Y2会社は加盟していない)。
 C協同組合は、令和5年4月5日付けで、Y1会社を含む加盟社数社に対し、「貴社従業員が加入している組織」に関し、「当該従業員に対し、加入している組織から速やかに脱退することを勧告するよう依頼」する「勧告書の交付について」と題する書面を交付している。

2 一般に、使用者による脱退勧奨が組合に対する支配介入に当たることはいうまでもないところ、会社らは、社長Bが行った令和5年4月12日及び13日の組合からの脱退勧奨について、①脱退勧奨の対応が消極的かつ軽微であること、②支配介入意思が存在しないこと、から、支配介入の不当労働行為に該当しない旨主張する。
 しかしながら、会社らが自らの名の下に作成し、組合員らに提示した本件勧告書には、組合員らが加入する組合について、労働運動の名の下に違法な活動を行う反社会的存在であることを殊更印象付ける記載に加えて、組合からの脱退を勧告する旨明記されていたことが認められる。
 そうすると、組合員らにとって、Y1会社の役員とY2会社の代表者を兼任する社長Bからこのような本件勧告書を提示されること自体が組合脱退を促す相当強い圧力となったことは、容易に推認できるのであって、このような社長Bによる明白な脱退勧奨行為について、行為の態様が消極的かつ軽微であるとはいえず、支配介入意思が存在しないともいえない。したがって不当労働行為に該当しないとする会社らの主張は、採用できない。

3 以上のとおりであるから、会社らが、令和5年4月12日及び同月13日に組合員5名に組合からの脱退を勧奨したことは、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。 
   

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