労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  令和7年(行ウ)第74号
不当労働行為救済命令取消請求事件
 
原告  X1会社(「X1」)、X2会社(「X2」)、(併せて「会社ら」)
 
被告  国(処分行政庁 中央労働委員会(「中労委」
 
被告補助参加人  Z組合(「組合」)  
判決年月日  令和7年11月26日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社らが、組合の組合員5名(「本件組合員ら」)に対し、個別に面談し、組合からの脱退を勧告する旨記載した文書(「本件勧告書」)を提示し、組合からの脱退を勧奨したこと(「本件行為」)が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。

2 初審大阪府労働委員会(「府労委」)は、本件行為は、労働組合法(労組法)第7条第3号の不当労働行為に該当するとして、会社らに対し文書交付を命じた。(「初審命令」)

3 会社らは、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、会社らの申立てを棄却した。(「本件命令」)

4 会社らは、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社らの請求を棄却した。
 
判決主文  1 原告らの請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用も含め、原告らの負担とする。
 
判決の要旨  1 争点(本件行為が労組法7条3号の不当労働行為に該当するか否か)について
⑴ 本件において、会社らは、本件組合員らに対して、①組合の構成員が多数逮捕・起訴され、幹部を含め一部の者が有罪判決を受けたこと及び組合が労働運動と称して周囲に多大な迷惑をかけてきたことを摘示した上で、②C協同組合(「C協」)は、組合を法令や社会的ルールを守ることができない組織と認識しており、組合に属する者を雇用し続けることが会社らとC協との間の契約に違反するとの答申を出したとして、③会社らは本件勧告書を示し、会社らがC協の意向・依頼に沿って脱退勧告を行う旨を告げている。

 本件勧告書は、本件組合員らの雇用主側である会社らが、組合にまつわる否定的な事実・評価を具体的に明示した(①②)上で、組合からの脱退を直截的に勧告する(③)ものであり、このような書面を個々の組合員に示すこと自体、組合からの脱退を決意させ、あるいはそれに至らなくとも引き続き組合に参加することに迷いや躊躇等を覚えさせかねないという意味で、組合を弱体化させてその団結力、組織力を損なうおそれのある行為といえる。会社らの代表取締役BがC協の意向・依頼に言及したことも、会社らがC協と意を通じて組合からの脱退を勧めていることのあらわれとして、上記のおそれを増加させこそすれ、低減させるものではない。
 そうすると、本件行為は、組合の結成又は運営を支配し又はこれに介入したものとして労組法7条3号所定の不当労働行為に該当すると認められる。

⑵ これに対し、会社らは、本件行為は、C協が、口頭で各社の従業員に対して組合からの脱退を勧告するよう依頼し、また、C協勧告依頼書を郵送したこと(「本件依頼」)を説明した上で、本件組合員らに任意の検討を促したにとどまる、会社らはC協に忖度せざるを得なかったなどとして、本件行為の態様は軽微かつ消極的であり、組合に対する支配介入意思も存在しない旨主張する。

 しかし、会社らは、C協から本件依頼を受けた後、自らの判断により、前記⑴判示のとおり組合を弱体化させるおそれのある内容の本件勧告書を作成した上、分会の組合員6名のうち副会長以下5名を個別に呼び出して本件行為に及んでいるのであるから、Bが個別面談の際に形式的には強制ないし強要にわたる言辞を用いていないことを踏まえても、本件行為が軽微であるとか消極的なものにとどまるとはいえない。また、本件行為がC協の依頼に基づくもので、会社らがC協に忖度せざるを得なかったとしても、上記に照らし本件行為が支配介入に当たらないとはいえない。そして、会社らは、典型的に組合を弱体化させるおそれのある行為であるといえる脱退の勧告という行為を本件勧告書を提示するなどして行っているのであり、支配介入の意思にも欠くところはなかったというべきである。
 したがって、会社らの上記主張を採用することはできない。

2 小括
 以上によれば、本件行為が労組法7条3号の不当労働行為に該当するとした府労委の初審命令は正当であり、会社らの再審査申立てをいずれも棄却した本件命令は適法である。

3 結論
 よって、会社らの請求は理由がないから、これらをいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和5年(不)第24号 全部救済 令和6年2月2日
中労委令和6年(不再)第5号 棄却 令和6年12月18日
 
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