概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和6年(不再)第5号
コーシンコーポレーション外1社不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y1会社、Y2会社(「会社ら」) |
再審査被申立人 |
X組合(「組合」) |
命令年月日 |
令和6年12月18日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、Y1会社及びY2会社(会社ら)が、組合の組合員5名に対し、個別に面談し、組合からの脱退を勧告する旨記載した文書(本件勧告書)を提示し、組合からの脱退を勧奨したこと(本件行為)が不当労働行為であるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、本件行為は、労働組合法(労組法)第7条第3号の不当労働行為に該当するとして、会社らに対し文書交付を命じたところ、会社らは、これを不服として再審査を申し立てたものである。
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命令主文 |
本件再審査申立てをいずれも棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 争点(Y1会社の常務取締役(当時)であり、Y2会社の代表取締役であるB社長が、令和5年4月12日及び同月13日に、Y2会社の従業員(Y1会社に出向)である組合員5名に対し、当該組合員が加入している組合から脱退するよう本件勧告書を示して勧奨したこと(本件行為)は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか)について
ア 会社らは、連名で本件勧告書を作成し、B社長自らが、これを示しながら、組合員5名に対して個別に組合からの脱退を勧奨したものである。本件行為は、組合員5名に組合からの脱退を促して組合の人的基盤を弱体化するおそれのある行為であり、組合の運営に対する支配介入に当たる。
イ これに対し、会社らは、本件行為は申立外C協同組合からの依頼を契機としてされたものであり、B社長は、組合からの脱退を任意に検討してもらう趣旨で「考えてみてほしい」と述べたにすぎず、本件勧告書も事情を説明するための資料にすぎなかったことなどからすれば、B社長に支配介入の意思はなかったなどと主張する。
ウ しかしながら、C協同組合からの依頼はあくまでも「依頼」であり、組合からの脱退を勧奨する本件行為は、会社らの判断で行われたものである。また、本件勧告書には、「当社は貴殿に対し、貴殿が加入している組織から脱退することを勧告致します。」と記載されているのであるから、同文書が事情を説明するための文書にとどまるものでないことは明らかである。さらに、B社長は、組合員5名に対し、本件勧告書を示しつつ、組合からの脱退を自分なりに考えてみてくれと述べたのであるから、これが支配介入に当たることは明らかである。
エ したがって、B社長に支配介入の意思はなく、本件行為は不当労働行為に当たらないとする会社らの主張を採用することはできない。
(2) 救済方法について
会社らは、本件行為による脱退勧奨におけるY2会社の立場は名目的、形式的、副次的なものであるから、同社に対してまで謝罪文の交付を命ずる必要性はない旨主張する。
しかしながら、本件行為者のB社長は、組合員5名の雇用主であるY2会社の代表取締役でもあることやY2会社はY1会社と共に本件勧告書の作成名義人になっていることに加え、Y2会社は、協定書において、組合及び分会に対し不当労働行為を行わない旨を約束していることなどの事情を考慮すると、Y2会社に対しても、文書交付を命ずるのが相当である。
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掲載文献 |
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