概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和2年(不再)第53号
北川建材工業不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和4年10月5日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、組合員Aに対し、刑事事件の共犯者として逮捕及び起訴されたことを理由として解雇したこと(本件解雇)が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労委は、本件申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 組合員Aを懲戒解雇にするとした会社の判断の合理性について
組合員Aは、前社長の恐喝未遂事件の共犯者として逮捕及び起訴されたが、前社長の恐喝未遂事件については、組合員Aが逮捕及び起訴された時点において有罪判決が確定していた。この確定判決には、犯罪事実として、前社長が組合の関係者である氏名不詳者らと共謀し、工事現場において、上記氏名不詳者らが軽微な不備に因縁を付けて嫌がらせを繰り返したことが挙げられている。そして、組合員Aは、同じ工事現場において組合コンプライアンス活動を行っていた。会社は、これらの事実を踏まえ、組合員Aの組合コンプライアンス活動が前社長の恐喝未遂行為と共謀関係にある行為に含まれると考え、組合員Aが有罪になる蓋然性が高いとして、就業規則に定める懲戒解雇事由に該当すると判断し、懲戒解雇にする旨の予告通知をしたものである。
上記の事実関係を踏まえると、組合員Aを懲戒解雇にするとした会社の判断は、不合理とまではいえない。
(2) 本件解雇の手続の相当性について
会社は、懲戒解雇予告通知前には組合員Aに弁明の機会を与えていないが、これは、組合員Aの解雇を議題とする団体交渉において示された組合の意向を尊重したためである。そして、懲戒解雇予告通知後本件解雇の日までに、組合員Aは、自らの解雇を議題とする団体交渉に複数回出席しているから、懲戒解雇予告通知に対し組合員A本人が意見を述べる機会はあったということができる。そうすると、本件解雇の手続に相当性がないということはできない。
(3) 当時の組合と会社との関係について
前社長が逮捕及び起訴されて有罪判決を言い渡されたことから、会社は、組合コンプライアンス活動について、正当な組合活動ではないとの認識に変わり、同活動にはもはや与しないとの立場に立っていたものと認められ、組合員Aが逮捕及び起訴された当時、組合コンプライアンス活動をめぐり組合と会社との間に立場の相違が生じていたといえる。しかし、会社の上記の方針転換は、その経緯に照らし、会社が社内の不祥事を受けて企業秩序と社会的信用の回復を図ろうとするものとして合理性が認められ、会社が上記の方針転換をしたことをもって直ちに会社が組合を嫌悪していたとまではいえない。
(4) 結論
以上によれば、組合員Aを懲戒解雇にするとした会社の判断は不合理とまではいえない上、会社が組合を嫌悪していたとまではいえないことからみて、本件解雇は組合員Aが組合の組合員であることや労働組合の正当な行為をしたことの故をもってされたものとはいえず、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。 |
掲載文献 |
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