労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和元年(不)第14号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年11月10日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合員1名に対し、会社前代表取締役が有罪判決を受けた刑事事件の共犯として逮捕、起訴されたことを理由に解雇したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  争点(会社が、A組合員に対して、平成31年4月4日をもって解雇したことは、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いに当たるか。)
1 会社は、A組合員に対し、本件懲戒解雇通知をし、その後団交を経て、本件普通解雇扱いに変更したことが認められる。本件において不当労働行為の成否を判断する対象は、A組合員を平成31年4月4日をもって解雇したことであるところ、本件普通解雇扱いへの変更は、会社が退職手続を進める上での形式上のものと考えられることから、判断の上で、本件懲戒解雇通知及び本件普通解雇扱いは一体的なものとして取り扱うのが相当である。
 そして、A組合員は組合活動に従事し、勤務実態がなかったことを別にして、本件懲戒解雇通知の時点で、A組合員と会社の間に雇用関係があったことに争いはなく、社員としての地位を失う解雇は、A組合員にとって不利益取扱いに当たるといえる。
 そこで、本件懲戒解雇通知に合理的な理由があるか否か、本件懲戒解雇通知当時の労使関係はどのようなものであったかを検討し、その上で、本件懲戒解雇通知の後、本件普通解雇扱いに変更した経緯はいかなるものであったかを検討することとする。
2 はじめに、本件懲戒解雇通知についてみる。
ア ①会社の平成27年版就業規則及び平成31年版就業規則の第45条第2項には「従業員が、次のいずれかに該当するときは、諭旨解雇・懲戒解雇する。ただし、情状により減給又は出勤停止とすることがある。」として、同項第10号には「刑事上の罪に問われた者で懲戒解雇するのが適当と認めたとき」と規定されていること、②平成31年3月2日、会社は、C弁護士に対し、31.3.2解雇予告通知書を送付し、就業規則第45条第2項第10号によるとして、本件懲戒解雇通知を行ったことが認められる。
イ 会社が、平成31年版就業規則第45条第2項第10号を適用する根拠とした事実は、A組合員が前社長の恐喝未遂被告事件の共犯者として起訴されたことであるといえる。
 会社が、本件懲戒解雇通知を行ったことは、その手続に問題なしとはいえないものの一定の合理性があるといえ、また、本件組合コンプライアンス活動を巡って、組合と会社の間には立場の相違が生じたものの、会社が組合を嫌悪していたとまではいえないのであるから、かかる会社の行為は、組合を嫌悪して行われた不利益取扱いに相当するものとはいえない。
3 次に、本件普通解雇扱いへの変更についてみる。
 本来、懲戒解雇を普通解雇に変更する場合であっても、就業規則の該当条文を示すべきであるところ、本件審問において、社長は、本件懲戒解雇通知は就業規則どおりなので撒回はできないが、建退共からの支給金や有給休暇の手続をとって少しでも擁護できるように、懲戒解雇ではなくて普通解雇にした旨陳述していることから、本件普通解雇扱いは、就業規則によらない会社の裁量による変更といえるが、一般的に普通解雇は懲戒解雇に比して被解雇者にとって不利となるものではない。
 そうすると、使用者が労働者を解雇するに当たり、被解雇者や労働組合の合意までは必要ではない上、本件普通解雇扱いへの変更をもって、A組合員を不利益に取り扱ったものとはいえない。
 とすれば、本件普通解雇扱いへの変更をもって、会社が新たな不当労働行為を行ったともいえない。
4 以上を総合的に判断すると、会社が、A組合員に対し、平成31年4月4日をもって解雇したことは、組合を嫌悪してA組合員を不利益に取り扱ったものとはいえないのであって、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為ということはできず、本件申立てを棄却する。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委令和2年(不再)第53号 棄却 令和4年10月5日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約428KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。